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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】フローリアクター
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240112BHJP
   B01J 19/02 20060101ALI20240112BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20240112BHJP
   F28D 7/02 20060101ALI20240112BHJP
   F28F 19/04 20060101ALI20240112BHJP
   F28F 19/02 20060101ALI20240112BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/02
F28D1/06 A
F28D7/02
F28F19/04 A
F28F19/02 501A
F28F19/02 501Z
F28D7/10 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021565315
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050217
(87)【国際公開番号】W WO2021124583
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0315117(US,A1)
【文献】特開2000-297991(JP,A)
【文献】特表平09-512894(JP,A)
【文献】米国特許第02374609(US,A)
【文献】米国特許第03332446(US,A)
【文献】米国特許第05148861(US,A)
【文献】米国特許第02993682(US,A)
【文献】米国特許第02456775(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/08-10
B01J 14/00、19/00-32
B81B 1/00
C02F 1/30-32
C12M 1/24
F28D 1/06、7/00-16
F28F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応用流体を流すための螺旋状に周回する反応用流路を備えたフローリアクターにおいて、
同芯の内筒と外筒の間に形成される空間内に伝熱体が配置され、
前記内筒と前記外筒との少なくともいずれか一方は、軸方向断面図において円形の筒体であり、
前記伝熱体は、螺旋状に周回していると共に軸方向断面図において断面形状が略三角形であり、
前記伝熱体によって、前記空間が前記反応用流路と第二流路とに区画されると共に、前記反応用流路内を流れる前記反応用流体と前記第二流路内を流れる熱媒との間で前記伝熱体を介して熱交換が行われるよう構成され、
前記反応用流路と前記第二流路とはそれぞれ螺旋状に周回していることを特徴とするフローリアクター。
【請求項2】
反応用流体を流すための螺旋状に周回する反応用流路を備えたフローリアクターにおいて、
同芯の内筒と外筒の間に形成される空間内に螺旋状に周回する伝熱体が配置され、
前記伝熱体によって、前記空間が前記反応用流路と第二流路とに区画されると共に、前記反応用流路内を流れる反応用流体と前記第二流路内を流れる熱媒との間で前記伝熱体を介して熱交換が行われるように構成され、
前記内筒と前記外筒と前記伝熱体とは前記外筒の側と前記内筒の側とに分離可能に組付けられており、
前記外筒の側と前記内筒の側とに分離された状態で、前記反応用流路を規定する流路構成面は、前記外筒の側と前記内筒の側とに分離されると共に、前記反応用流路を規定する前記流路構成面の全ての表面が軸方向と直交する半径方向から見て他の部分に隠れることなく直接露出して、前記反応用流路を規定する流路構成面が清掃しやすいように構成され、
前記反応用流路と前記第二流路とは、それぞれ螺旋状に周回する流路であり、
半径方向における前記反応用流路の最大流路幅(λ)と前記反応用流路の最小流路幅(μ)との比率(λ/μ)が2以上である(2<λ/μ<∞)ことを特徴とするフローリアクター。
【請求項3】
前記伝熱体は、前記外筒の側と前記内筒の側との何れか一方に固定され、前記外筒の側と前記内筒の側との何れか他方には固定されていないと共に、少なくとも一つの屈曲部分を有してその内面側と外面側との双方に流体を流すことができる空間を形成できる立体形状部を備えたものであり、
前記反応用流路を規定する前記流路構成面に現れる全ての前記屈曲部分の外角が90度以上であることを特徴とする請求項2に記載のフローリアクター。
【請求項4】
前記反応用流路は前記反応用流体が溜まる可能性のある水平部を備えていないことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項5】
記反応用流路の、軸方向において隣り合う周回と周回との間に隙間を備えないか或いは半径方向に4mm以下の隙間を備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項6】
前記反応用流路と前記第二流路とは軸方向断面図において断面形状が、その頂角θが30度以上125度以下である略三角形であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項7】
前記内筒の側と前記外筒の側は軸方向への移動のみで回転させずとも分離可能に組付けられており、前記伝熱体は前記軸方向への移動の際に他の部分と干渉しないように構成されたことを特徴とする請求項2、3又は請求項2又は3を引用する請求項4~6の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項8】
前記反応用流路と前記第二流路とは軸方向断面図において断面形状が、二つの斜面と底面と頂部とを備えた略三角形であり、前記頂部の軸方向長さ(a)が前記斜面の軸方向長さ(b)よりも短いことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項9】
前記反応用流路と前記第二流路との少なくとも何れか一方の前記頂部が前記軸方向に長さ(a)を備えていることにより、前記頂部が前記軸方向に長さ(a)の無い頂点である場合に比べて、流路の断面積が拡大されていることを特徴とする請求項8に記載のフローリアクター。
【請求項10】
前記同芯に配置された前記内筒と前記外筒の間に形成される前記空間が同芯上に複数あることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項11】
前記反応用流路を含む前記反応用流体の流れる通過流路と前記第二流路を含む熱媒の流れる通過流路との少なくとも何れか一方が耐食材料でのコーティングがなされていることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載のフローリアクター。
【請求項12】
前記耐食材料でのコーティングがグラスライニングもしくはフッ素樹脂コーティング、セラミックコーティングの内の一つであることを特徴とする請求項11に記載のフローリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フローリアクター、特に反応用流体を流すための螺旋状に周回する反応用流路を備えたフローリアクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学及び医薬品製造の工程やトナーやインクジェット等の反応工程には急冷や高速加熱もしくは精密温度制御等の要求が多い。また出来るだけ必要な設置スペースを小さくし、機器自体の大きさも小型化する要求があり、熱交換器の高性能化が求められている。そして付着が少なく洗浄性に優れ、耐圧性、耐食性、かつ低コストであるフローリアクターが要求される。
【0003】
従来、特許文献1に開示されているように、複数のステージを持つシェルアンドチューブリアクターが知られている。このリアクターは少なくとも2つのタイプの領域を備え、両者は、システムの要求に応じて、システムから熱を除去またはシステムへ熱を供給するのに寄与する。リアクターは反応領域のグループを備え、これは反応を促進するための触媒が備えられ、また同時に熱を除去または供給するチューブを備える。
【0004】
ところがこの特許文献1の何れかに記載のにあっては、チューブ内に付着等が発生した場合、洗浄がし難いし、洗浄できたか否かなど洗浄状態が簡単には確認できない。
【0005】
また、シェル側の熱媒の保有量が多く、オーバーシュートやアンダーシュートの発生が起こりやすく基本的には古典的な熱交換器であるため総括伝熱係数を画期的に増やすことが難しい。さらにチューブシートにチューブが取り付けられているため、熱に対する膨張と伸縮を繰り返す反応には、採用しづらい。また、細管状の伝熱管の内部にコーティングやライニングの施工は実質的に不可能であるし、その構造上他の流路においても耐食材のコーティングやライニングの施工が難しく、耐食性などの観点からも改善が求まられている。特に前記伝熱管内を耐食材でコーティングやライニングすることは実質的に不可能であり、たとえできたとしても量産性が悪くコスト面から実用性のない物とならざるを得ない。
【0006】
特許文献2には、複数の供給路量を通して1本の反応流路に合流し、これらの流体を流通させつつ反応を行うマイクロリアクターで、反応流路は丸棒上の芯部材の外周面と断面円形な内周面を有する外筒部材の内周面の何れか一方に螺旋ネジを切って芯部材の外周面と外筒部材の内周面を密着篏合させることにより螺旋状流路として形成されている事を特徴とすることが記載されている。しかしながら伝熱面積が余りにも小さく、せっかく切ったネジ状壁面が直接の熱交換面に用いられず、フローリアクターとして必須の伝熱抵抗を出来るだけ減らして総括伝熱係数を増加させるような観点を持っていない。また、微少量の反応に用いられるマイクロリアクターに特化されており、大型化を行う装置として設計されていない。スケールアップは難しいが、このまま大型化されたとしても分解性や洗浄性等の問題が多いし、精密温度制御等が実現出来ない。
【0007】
特許文献3には、螺旋特徴を持つ少なくとも二つの同心チューブを備えているチューブ状流れモジュールで、内側チューブは、外側チューブの内側に同軸に配されており、内側チューブの最大直径は外側チューブの最小直径よりも大きく、内側チューブと外側チューブとの間の空間が流体の流れ経路になるチューブ状流れモジュールが記載されている。螺旋特徴を有している外側および内側チューブは、スクリューとナットのように係合され、螺旋特徴はねじのように作用することから、すなわちネジ状篏合を持っているチューブ状流れモジュールである。このチューブ状流れモジュールは、平均流れ方向は軸方向にあり改良プラグ流れ状況を作り出すものである(特許文献段落00018参照)。よって特許文献3のチューブ状流れモジュールは、螺旋流の向流流れが可能なものではなく、
特許文献2と同じように大型化には向いていないし、精密温度制御も難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2012-529626号公報
【文献】特開2005-46652号公報
【文献】特表2015-502842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑み本発明の課題は、適正な温度管理の下で、即ち反応用流体が温度制御された状態で、反応用流体の反応処理を進行させることができるフローリアクターを提供することにある。
【0010】
本発明の他の課題は、反応を促進させて反応時間の短縮を図ることができるフローリアクターを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、伝熱部に反応用流体や発生ガスが滞留することを抑制するのに適した構造を有するフローリアクターを提供することにある。
本発明の他の課題は、洗浄性の良いフローリアクターを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、分解可能なフローリアクターを提供することである。
また本発明はコーティングやライニングの施工も可能なフローリアクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、反応用流体を流すための螺旋状に周回する反応用流路を備えたフローリアクターにおいて、同芯の内筒と外筒の間に形成される空間内に伝熱体が配置され、前記伝熱体は、螺旋状に周回していると共に軸方向断面図において断面形状が略三角形であり、前記伝熱体によって、前記空間が前記反応用流路と第二流路とに区画されると共に、前記反応用流路内を流れる前記反応用流体と前記第二流路内を流れる熱媒との間で前記伝熱体を介して熱交換が行われることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、反応用流体を流すための螺旋状に周回する反応用流路を備えたフローリアクターにおいて、同芯の内筒と外筒の間に形成される空間内に螺旋状に周回する伝熱体が配置され、前記伝熱体によって、前記空間が前記反応用流路と第二流路とに区画されると共に、前記反応用流路内を流れる反応用流体と前記第二流路内を流れる熱媒との間で前記伝熱体を介して熱交換が行われるように構成され、前記内筒と前記外筒と前記伝熱体とは前記外筒の側と前記内筒の側とに分離可能に組付けられており、前記外筒の側と前記内筒の側とに分離された状態で、前記反応用流路を規定する流路構成面は、前記外筒の側と前記内筒の側とに分離されると共に、前記反応用流路を規定する前記流路構成面の全ての表面が軸方向と直交する半径方向から見て他の部分に隠れることなく直接露出するように構成されたことを特徴とするものである。
【0013】
前記内筒と前記外筒との少なくともいずれか一方は、軸方向断面図において円形の筒体とすることが適当である。これによって、断面形状が略三角形の前記伝熱体と、
前記内筒又は前記外筒とによって規定される反応用流路を流れる反応用流体に、螺旋流の向流流れを発生させることができる。
【0014】
また、半径方向における前記反応用流路の最大流路幅(λ)と前記反応用流路の最小流路幅(μ)との比率(λ/μ)が2以上である(2<λ/μ<∞)ものとすることも適当である。これによって、前記内筒又は前記外筒の軸方向に向かう流れよりも、螺旋方向に向かう流れを大きくすることができ、反応用流体の全体としての流れの向きを、螺旋方向とすることができる。
【0015】
また、本発明は、前記伝熱体は、前記外筒の側と前記内筒の側との何れか一方に固定され、前記外筒の側と前記内筒の側との何れか他方には固定されていないと共に、少なくとも一つの屈曲部分を有してその内面側と外面側との双方に流体を流すことができる空間を形成できる立体形状部を備えたものであり、前記反応用流路を規定する前記流路構成面に現れる全ての前記屈曲部分の外角が90度以上であるものとして実施することができる。
また、本発明は、前記反応用流路は前記反応用流体が溜まる可能性のある水平部を備えていなものとして実施することができる。
【0016】
また、本発明は、前記反応用流路と前記第二流路とはそれぞれ螺旋状に周回しているものであり、前記反応用流路の、軸方向において隣り合う周回と周回との間に隙間を備えないか或いは半径方向に4mm以下の隙間を備えるものとして実施することができる。
【0017】
また、本発明は、前記反応用流路と前記第二流路とは軸方向断面図において断面形状が、その頂角θが30度以上125度以下である略三角形であるものとして実施することができる。
【0018】
また、本発明は、前記内筒の側と前記外筒の側は軸方向への移動のみで回転させずとも分離可能に組付けられており、前記伝熱体は前記軸方向への移動の際に他の部分と干渉しないように構成されたものとして実施することができる。
【0019】
また、本発明は、前記反応用流路と前記第二流路とは軸方向断面図において断面形状が、二つの斜面と底面と頂部とを備えた略三角形であり、前記頂部の軸方向長さ(a)が前記斜面の軸方向長さ(b)よりも短いものとして実施することができる。
【0020】
また、本発明は、前記反応用流路と前記第二流路との少なくとも何れか一方の前記頂部が前記軸方向に長さ(a)を備えていることにより、前記頂部が前記軸方向に長さ(a)の無い頂点である場合に比べて、流路の断面積が拡大されているものとして実施することができる。
また、本発明は、前記同芯に配置された前記内筒と前記外筒の間に形成される前記空間が同芯上に複数あるものとして実施することができる。
【0021】
また、本発明は、前記反応用流路を含む前記反応用流体の流れる通過流路と前記第二流路を含む熱媒の流れる通過流路との少なくとも何れか一方が耐食材料でのコーティングがなされているものとして実施することができ、前記耐食材料でのコーティングがグラスライニングもしくはフッ素樹脂コーティング、セラミックコーティングの内の一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、適正な温度管理の下で、即ち反応用流体が温度制御された状態で、反応用流体の反応処理を進行させることができるフローリアクターを提供することができたものである。
本発明は、反応を促進させて反応時間の短縮を図ることができるフローリアクターを提供することができたものである。
本発明は、伝熱部に反応用流体や発生ガスが滞留することを抑制するのに適した構造を有するフローリアクターを提供することができたものである。
本発明は、洗浄性の良いフローリアクターを提供することができたものである。
本発明は、分解し易い構造を備えたフローリアクターを提供することができたものである。
本発明はコーティングやライニングの施工も可能なフローリアクターを提供することができたものである。
【0023】
より具体的に説明すると、化学及び医薬品製造の工程やトナーやインクジェット等の反応工程には急冷や高速加熱もしくは精密温度制御等の要求が多い。その対象物すなわち反応用流体は、高粘度液体や微粒子を含むスラリー、付着物質も多く含まれる。また反応工程において蒸発を伴う加熱操作を行うは、発生ガスが滞留すると熱伝導率が発生ガス気単相流と同程度の低いオーダーまで低下する。この現象は、ドライアウトと呼ばれ、伝熱面に沿って流れていた液膜が蒸発して消失し,気相が直接伝熱面に接することにより起こってしまう。またフローリアクターは確実にスケールアップが必要とされ、高性能化はもちろんの事、大型になっても計算通り処理されなければならない。
【0024】
これらを解決する為に、反応用流体の流速と圧力損失の関係を見直し反応用流体の流速を上げても圧力損失が大きくなり過ぎない構造を有するフローリアクターを提供できたものである。特に反応用流体が高粘度液体や沈降し易いスラリーの場合効果が大きいし、汚れや付着が少ないものである。
【0025】
また、伝熱面の断面形状を略三角形にすることにより液だまりや発生ガスのたまりが無く、かつ伝熱面積を大きくとる事ができ、反応用流体の物理的性質から伝熱体の断面として略三角形の形状を選択し設計の自由度も有している。
【0026】
また反応用流体の保有量も少なく急速加熱や急速冷却にも対応しやすく、同時に熱媒や冷媒も同じように保有量が少ない為、機器の小型化や高性能化、制御の容易化が実現できた。
【0027】
また、反応用流体の流れの場もその送り量を制御することにより、乱流流れや層流流れも自由に決められ、熱媒や冷媒の流路は、乱流流れとしレイノルズ数を大幅に上昇させ、総括伝熱係数の増加により反応速度を著しく向上することが可能である。
本構造上、非常に簡単なため分解や組み立てが容易であり、耐食材料でコーティングやライニングも可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本願発明の第1の実施の形態に係るフローリアクターの軸方向断面図である。
図2図1の内筒と外筒とを分離した状態の要部拡大断面図である。
図3】本願発明の第2の実施の形態に係るフローリアクターの軸方向断面図である。
図4】(A)~(F)は、それぞれ本願発明の実施の形態に係るフローリアクターの変更例を示す要部の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を参照して本発明の実施の形態に係るフローリアクターについて説明する。なお、図2図4(A)~(F)に記載の中心線は、軸方向を示している。
(流体)
【0030】
実施の形態では、反応の処理対象となる物質が含まれている流体を反応用流体F1として説明する。反応用流体F1が例えば2流体から構成される場合、それぞれの流体を反応用流体F1(A)と反応用流体F1(B)として説明し、両者が合流している場合は合流後の流体を反応用流体F1として説明する。以下、反応用流体F1は1流体で構成されているか、2流体以上で構成される場合には2流体以上が合流した合流後の流体を言う。また、反応用流体F1に対して熱交換を行う熱媒体を第二流体F2として説明する。さらに、反応用流体F1に対して熱交換を行う他の熱媒体を第三流体F3として説明する。
【0031】
この反応用流体F1としては、気体や液体やスラリーや高粘性液体など様々な流体を例示することができる。第二流体F2及び第三流体F3には、水蒸気や温水などの加温用の熱媒体を例示することができるが、冷却用の熱媒体であっても構わない。
(第1の実施の形態の概要)
【0032】
図1に示す第1の実施の形態に係るフローリアクターは、同芯に配置された内筒10と外筒20とを備えたもので、必要に応じて内筒10のさらに内側に同芯に配置された第3筒30を備えている。
外筒20の内周面には螺旋状に周回するように設けられた伝熱体41が配置されている。
【0033】
内筒10と外筒20の間の空間は、伝熱体41によって二つの空間に区画される。区画された二つの空間のうち伝熱体41の内側(半径方向の内側)が、反応用流体F1の流路である反応用流路11を構成し、区画された二つの空間のうち伝熱体41の外側(半径方向の外側)が、第二流体F2の流路である第二流路21を構成する。
【0034】
伝熱体41は、外筒20の内周面に対して溶接などによって気密性および液密性を保った状態で固定されることで、反応性流体F1と第二流体F2とが混合しないように、内筒10と外筒20の間の空間を反応用流路11と第二流路21とに区画し、反応性流路11と第二流路21とが螺旋状に周回する流路となる。この伝熱体41を介して反応用流体F1と第二流体F2との間で熱交換が行われる。
【0035】
内筒10と外筒20は分離可能に組付けられており、図2に示すように、分離した状態で、伝熱体41は外筒20と共に、内筒10と分離される。この分離状態で、反応用流路11を規定する流路構成面は、内筒10の側と外筒20の側とに分離される。
【0036】
またこの例では、内筒10と第3筒30の間の空間が第三流体F3のための第三流路31を構成し、内筒10を介して反応用流体F1と第三流体F3との間で熱交換が行われる。なお第3筒30の外周面には流路体42が螺旋状に周回して固定されているため、第三流路31も螺旋状に周回した流路となる。
(筒の固定と分離)
【0037】
内筒10、外筒20及び第3筒30は、筒上端のフランジ部40で互いに分離可能に固定されている。この例では2枚のフランジ部40がシール部材を挟んで上下に重ねられ、ボルトなどの着脱可能な固定部材(図示ぜず)によって分離可能に組付けられて一体化されている。上部のフランジ部40には内筒10と第3筒30の上端が(必要に応じて着脱可能に)固定され、下部のフランジ部40には外筒20の上端が(必要に応じて着脱可能に)固定され、上下2枚のフランジ部40、40を分離することによって、内筒10と外筒20を分離することができる。さらに内筒10と第3筒30の少なくともいずれか一方を、上部のフランジ部40に対して着脱可能にしておくことによって、内筒10と第3筒30を分離することもできる。
【0038】
前述のように、伝熱体41は外筒20の内周面に溶接などによって固定されている。従って、フランジ部40での組付けを解いて熱交換器を分解すると、内周面に伝熱体41が固定されたままの外筒20と、内筒10及び外周面に流路体42を備えた第3筒30とに分離される。その際、伝熱体41に対して干渉するものがないため、伝熱体41の付いた外筒20を下部のフランジ部40と共に図の下方に引き抜くことができる。
(伝熱体41について)
【0039】
伝熱体41は、螺旋状に周回しながら内筒10と外筒20の間を軸方向に進むもので、図1及び図2に示すように軸方向断面図において断面形状が略三角形である。この実施の形態では、伝熱体41は外筒20の内周面に溶接などによって固定されている。
【0040】
上記の伝熱体41の軸方向断面図における略三角形の頂角θは、これが大きくなるに従い、反応用流路11及び第二流路21の断面積(流路面積)が大きくなるが、内筒10と外筒20の一定の軸方向長さ単位における螺旋の周回数が減少する。また、頂角θが90度から離れるに従って、反応用流路11と第二流路21における狭隘な部分が増えるため、流体の詰まりが生ずるおそれが高くなるため、これらを勘案すると頂角θは30度以上125度以下である事が適当である。
なお前記略三角形の頂角θに対する外角(360-θ)は、90度以上であり、235度以上330度以下である事が適当である。
【0041】
三角形は数学的な意味では、頂点で2斜辺が交わるが、金属板の加工など工業的な生産を前提とすれば、頂点にはアールが付されたり、軸方向に長さのある断面形状となるのが一般的である。したがって略三角形とは、数学的な三角形の意味だけではなくこれらの工業的生産を前提とした形状を含めて理解されるべきである。従って略三角形の頂角θは、二つの斜辺の交点のみならずそれらの延長線の交点を意味すると理解すべきである。なお、軸方向に長さのある断面形状となる場合、その軸方向長さが長くなるに従って、伝熱体41と内筒10の外周面との間に反応用流体F1が詰まる恐れが高まるため、その軸方向長さは、1つの斜辺の軸方向長さよりも短いことが適当である。
【0042】
次に、伝熱体41の厚みtは、伝熱体41を介して反応用流体F1と第二流体F2との間で熱交換が行われるので、熱交換の効率を考えて、0.2mm~3mmであることが好ましく、0.5mm~2mmであることがより好ましい。内筒10や外筒20、第3筒30の厚みも同様としてもよい。但し、内筒10や外筒20、第3筒30が構造体として作用する強度を考えて変更してもよく、これに限られない。
【0043】
この伝熱体41は、少なくとも一つの屈曲部分(直線が角度を持って曲がっているものの他、弧状に湾曲している湾曲部分を含めて屈曲部分と言う)を有する立体形状部43から構成されているとも言える。立体形状部43は、少なくとも一つの屈曲部分を有してその内面側と外面側との双方に流体を流すことができる空間(反応用流路11と第二流路21)を形成できる形状を備えたものである。具体的には立体形状部43は、多角形の角筒や円筒をその軸方向に沿って割ったような形状を備えた長尺状体であり、この例では立体形状部43は、四角筒を、その軸方向に沿って、断面四角形の対角線上で割ったような形状を備えた長尺状体である。立体形状部43は、外筒20の内周面に巻き付けられて、その上下の端辺46が外筒20の内周面に固定されている。上下の端辺46それぞれにおける立体形状部43と外筒20の内周面とがなす外角θoは、90度以上であることが適当であり、105≦θo≦160がより好ましい。なお、端辺46における立体形状部43が湾曲している場合には、その接線と外筒20の内周面とがなす角度とする。
【0044】
なお、立体形状部43の屈曲部分の外角とは、前記略三角形の頂角θに対する外角(360-θ)と上下の端辺46それぞれにおける立体形状部43と外筒20の内周面とがなす外角θoとをいう。
(反応用流路11について)
【0045】
反応用流路11は、断面形状が略三角形の流路を構成するもので、外筒20の内周面にて螺旋状に周回する伝熱体41と、内筒10の外周面との間の空間であり、熱交換の主たる対象となる反応用流体F1の流路となる。
【0046】
この反応用流路11は、内筒10の外周面で構成される底面12と、第1斜面13及び第2斜面14の二つの斜面と、第1斜面13と第2斜面14の間の頂部15によって規定される。頂部15は外筒20の内周面で構成されており、この部分では伝熱体41の螺旋の周回間における軸方向の空間となっている。なお、この軸方向の空間が生じないように伝熱体41を密な螺旋状とした場合には、頂部15は軸方向断面形状において長さのない点状の頂点となる。
【0047】
この実施の形態では、内筒10は、軸方向断面図において円形の円筒体であり、その外周面は凹凸のない円筒状の外周面となっている。また、この例では、外筒20も軸方向断面図において円形の円筒体であり、その内周面は凹凸のない円筒状の円筒面となっている。
【0048】
この頂部15の軸方向長さ(a)を長くすれば反応用流路11の断面積(流路面積)を増やすことができるが、長くしても熱交換に直接関係する伝熱体41の面積は変わらないため、全体的な熱交換率は低下してしまう恐れがある。そのため、頂部15の軸方向長さ(a)は斜面13、14の軸方向長さ(b)よりも短い方が望ましい。
【0049】
第1斜面13と第2斜面14とは軸方向断面図において直線状であることが適当であるが、弓状などに湾曲した曲線であっても構わない。ただし、上記の断面形状が略三角形の流路(反応用流路11と第二流路21)は、反応用流体F1や第二流体F2の被処理流体もしくは気体が溜まる可能性のない形状であることが好ましい。例えば平坦な水平部や凹部が流路の一部に設けることは、特別な目的がない限り避ける方が好ましい。
【0050】
またこの例では、図2に示すように、伝熱体41は、反応用流路11を構成する軸方向の断面略三角形の基底部側に隙間(μ)を備えるものである。言い換えれば、第1斜面13の内周側の端部と底面12との間に空間を備えると共に、第2斜面14の内周側の端部と底面12との間に空間を備える。この隙間(μ)を設けずに実施しても構わないし、この隙間(μ)を設ける場合には4mm以下とすることが適当である。さらに言い換えれば、螺旋状に周回する反応用流路11の、軸方向において隣り合う周回と周回との間、即ち軸方向において隣り合う略三角形の断面形状と略三角形の断面形状との間に隙間(μ)を備える。この隙間(μ)を設けずに実施しても構わないし、隙間(μ)を設ける場合には半径方向に4mm以下とすることが適用である。
【0051】
この隙間(μ)を設けることによって熱交換器を分解する場合外筒20と内筒10との分離を円滑に行うことができる。ところが、あまりにも大きな隙間とした場合には、反応用流体F1が螺旋状に流れることなく軸方向にショートパスして流れる流体の量が多くなり、熱交換の効率を低下させる恐れが生じる。
【0052】
この隙間(μ)は、半径方向における反応用流路11の最小流路幅(μ)であると理解できるとともに、反応用流路11の頂部15と底部18との間の長さが半径方向における反応用流路11の最大流路幅(λ)を規定すると理解することができる。ここで、反応用流路11の最大流路幅(λ)と最小流路幅(μ)との比率(λ/μ)は2以上であることが適当であり、10以上であることが好ましい。上記隙間μがない場合(言い換えれば伝熱体41と内筒10が接触している場合)はμ=0となり、λ/μ=∞となる。
なお、軸方向断面図における略三角形の頂角θなどの前述の伝熱体41についての説明は、反応用流路11にも適用される。
【0053】
この反応用流路11には、反応用流体F1として気体や液体やスラリーや高粘性液体など様々な流体が流れることが想定される。その際、流体の種類によっては反応用流路11中に高粘度の物質(高粘稠物)や沈降し易いスラリーが付着する恐れがある。この実施の形態では反応用流路11が軸方向の断面略三角形をなしていると共に、行き止まりとなった狭隘部分が存在しないため、高粘度の物質(高粘稠物)や沈降し易いスラリーが付着の発生を抑制することができる構造となっている。
【0054】
また、分解清掃を行う場合にも、内筒10と外筒20とを分離すれば、内筒10の外周面が露出することはもちろん、軸方向の断面略三角形の伝熱体41の全体が外筒20の内周面とともに露出する。
【0055】
言い換えれば、反応用流路11を規定する流路構成面は、外筒20の側では、外筒20の内周面と伝熱体41の半径方向内側の表面であり、内筒10の側では内筒10の外周面である。これらの全ての表面は、軸方向と直交する半径方向から見て他の部分に隠れることなく直接露出するように構成されている。
【0056】
従って、反応用流路11を隅々まで清掃することができるし、清掃完了時の状態も確認しやすい。これに対して、前掲の特許文献1に記載のシェルアンドチューブリアクターにあっては、洗浄が困難であるし、洗浄状態が簡単には確認できない。
【0057】
反応用流路11などの反応用流体F1の通過経路を規定する各面の素材は、金属など反応用流体F1の種類に応じて選択して実施することができる。さらに、その表面を耐食材料でコーティングしておくことが好ましい。耐食材料でのコーティングとしては、グラスライニングもしくはフッ素樹脂コーティング、セラミックコーティングを例示することができる。その際、外筒20の内周面に伝熱体41を溶接などで固定した後で耐食材料でのコーティングを行うとともに、内筒10の外周面に同様のコーティングを行なった後、内筒10を外筒20内に挿入して組付ければ、反応用流路11の内面全体、すなわち反応用流路11を規定する流路構成面全体を確実にコーティングすることができる。
(第二流路21について)
【0058】
伝熱体41の半径方向の外側の空間(言い換えれば、伝熱体41と外筒20の内周面との間の空間)が、軸方向断面形状略三角形の第二流路21を構成する。この第二流路21は、外筒20の内周面で構成される底面22と、第1斜面23及び第2斜面24の二つの斜面と、第1斜面23と第2斜面24の間の頂部25によって規定される。頂部25は軸方向断面形状において長さのない点状の頂点であっても構わないし、軸方向断面形状において長さのある直線状や曲線状の頂部であっても構わない。頂部25を軸方向断面形状において長さのある直線状や曲線状の頂部とした場合、頂部25の軸方向長さ(a)は斜面23、24の軸方向長さ(b)よりも短いことが望ましい。第1斜面23と第2斜面24とは軸方向断面図において直線状であることが適当であるが、弓状などに湾曲した曲線であっても構わない。
なお、軸方向断面図における略三角形の頂角θなどの前述の伝熱体41についての説明は、第二流路21にも適用される。
【0059】
この第二流路21は、反応用流路11と異なり、軸方向断面図において閉ざされた空間であるため、内筒10と外筒20を分離しただけでは、閉ざされた状態が維持される。ところが第二流路21は通常、水蒸気や温水や冷水や窒素ガスなどの熱媒体が第二流体F2として通されるため、反応用流路11とは異なり流体などの付着が生ずるおそれが少ない。
(第三流路31について)
【0060】
第3筒30の外周面には螺旋状に伸びる板状の流路体42が溶接などによって固定されており、これによって第三流路31は螺旋状の空間となる。第三流路31の周回方向は、反応用流路11、第二流路21の周回方向と同じであっても構わないし、異なるもの(例えば時計回りと反時計回り)であっても構わない。
【0061】
この第三流路31は、内筒10と第3筒30を分離しなければ、閉ざされた状態が維持される。ところが第三流路31は通常、水蒸気や温水や冷水や窒素ガスなどの熱媒体が第三流体F3として通されるため、反応用流路11とは異なり流体などの付着が生ずるおそれが少ない。
(流入部及び流出部について)
【0062】
内筒10、外筒20及び第3筒30はそれぞれドーム状の底部18、底部28及び底部34を備えている。内筒10の底部18と外筒20の底部28との間の空間は螺旋状の反応用流路11の下部につながっており、内筒10の底部18と第3筒30の底部との間の空間は螺旋状の第三流路31の下部につながっている。
【0063】
図1における反応用流路11の下端は、流入部16を介して外部流路と導通している。この例では、流入部16は外筒20の底部28に開口した貫通孔にT字型の接続管を取り付けたものとして実施されている。T字型の接続管は枝管と枝管が合流する合流部とからなり、図1に示すように、T字型の接続管の合流部にスタティックミキサーや各種連続式ミキサーなどの混合器101を配してもよい。反応用流路11の上端は、流出部17を介して外部流路と導通している。この例では、流出部17はフランジ部40に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。反応用流体F1(A)及びF1(B)は流入路16を構成するT字型の接続管の枝管からそれぞれ導入され、合流部で同一流路に合流し、合流後の反応用流体F1が、螺旋状の反応用流路11内に流入して螺旋状に旋回しながら上昇して流出部17から外部へ流出する。
【0064】
次に、第二流路21の上端は、流入部26を介して外部流路と導通している。この例では、流入部26は外筒20に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。第二流路21の下端は、流出部27を介して外部流路と導通している。この例では、流出部27は外筒20に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。第二流体F2は、流入部26から螺旋状の第二流路21内に流入して螺旋状に下降して流出部27から外部へ流出する。
【0065】
次に、第三流路31の上端は、流入部32を介して外部流路と導通している。この例では、流入部32はフランジ部40に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。第三流路31の下端は、流出部33を介して外部流路と導通している。この例では、流出部33は底部34の中央に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されているが、この接続管は、反応用流路11の流出部17や第二流路21の流入部26と軸方向の位置が略同じ高さになるまで第3筒30の内部の筒状空間内を伸ばされている。第三流体F3は、流入部32から螺旋状の第三流路31内に流入して螺旋状に下降して流出部33から外部へ流出する。
なお、各流路の流入部と流出部は逆にして実施することもできる。
【0066】
第二流路21、第三流路31など、第二流体F2、第三流体F3の通過経路を規定する各面の素材は、金属など第二流体F2と第三流体F3の種類に応じて選択して実施することができるが、その表面を耐食材料でコーティングしておくことも好ましい。耐食材料でのコーティングとしては、グラスライニングもしくはフッ素樹脂コーティング、セラミックコーティングを例示することができる。
(第2の実施の形態)
【0067】
図3に第2の実施の形態に係るフローリアクターの軸方向断面図を示す。この実施の形態に係るフローリアクターは、第3筒30が外筒20の外側に配置されている点が第一の実施の形態に係るフローリアクターと相違する。以下の説明では、相違する点について中心に説明し、説明を施さない事項については先の第一の実施の形態に関する説明を適用することができる。
【0068】
この第2の実施の形態に係るフローリアクターでは、半径方向の外側に向けて内筒10、外筒20、第3筒30の3本の筒が同芯状に配置されている。上部のフランジ40には内筒10と伝熱体41の上端が(必要に応じて着脱可能に)取り付けられ、下部のフランジ40には外筒20の上端が(必要に応じて着脱可能に)取り付けられ、両フランジ部40、40が上下に分離分解可能に接合されている。第3筒30の上端は外筒20の上端寄りの外周面に溶接などによって接合され、第3筒30の下端は外筒20の底部28の外周面に溶接などによって接合されている。
【0069】
伝熱体41の内面側の空間、言い換えれば伝熱体41と内筒10の間の空間が、第二流路21とされており、伝熱体41の外面側の空間、言い換えれば伝熱体41と外筒20の間の空間が、反応用流路11とされており、外筒20と第3筒30の間が第三流路31とされている。
【0070】
伝熱体41は、軸方向断面図において断面形状が略三角形の立体形状部43同士が、平板状をなす筒状部分44を介して接続され一体化されている。言い換えれば、全体として伝熱体41も筒状をなしており、筒状の壁面の形状が立体形状部43と平坦部分44とを備えた凹凸形状をなしているもので、立体形状部43と平坦部分44とは螺旋状に周回しながら軸方向に進むものである。
(各流路について)
【0071】
反応用流路11は、外筒20の内周面によって構成される底面12と、第1斜面13及び第2斜面14の二つの斜面と、第1斜面13と第2斜面14の間の頂部15によって規定される。頂部15は平坦部分44によって構成されており、軸方向断面形状において長さのある線状の頂部であるが、長さのない点状の頂点であっても構わない。
【0072】
第二流路21は、内筒10の外周面によって構成される底面22と、第1斜面23及び第2斜面24の二つの斜面と、第1斜面23と第2斜面24の間の頂部25によって規定される。頂部25は軸方向断面形状において長さのない点状の頂点であっても構わないし、長さのある線状の頂部であっても構わない。
【0073】
第3筒30の内周面には、螺旋状に伸びる板状の流路体42が溶接などによって固定されており、これによって第三流路31は螺旋状の空間となる。第三流路31の周回方向は、反応用流路11、第二流路21の周回方向と同じであっても構わないし、異なるもの(例えば時計回りと反時計回り)であっても構わない。
(流入部及び流出部について)
【0074】
外筒20、第3筒30及び伝熱体41はそれぞれドーム状の底部28、底部34及び底部45を備えているが、内筒10はドーム状の底部を備えておらず、その底端が伝熱体41の底部45の内面側に溶接などによって固定されている。
【0075】
反応用流路11は、その下端が、流入部16を介して外部流路と導通している。この例では、流入部16は外筒20の底部28に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。
【0076】
また、図3に示すように、反応用触媒200を触媒保持板201と共にドーム状底部に配位しても良い。この場合反応用触媒200の入れ替えなどの操作が容易である効果もある。また、触媒保持板201により反応用触媒200の流出を防止する。
【0077】
反応用流路11の上端は、流出部17を介して外部流路と導通している。この例では、流出部17はフランジ部40に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。反応用流体F1は、流入部16から螺旋状の反応用流路11内に流入して螺旋状に上昇して流出部17から外部へ流出する。
【0078】
次に第二流路21は、その上端が流入部26を介して外部流路と導通している。この例では、流入部26は内筒10の上端寄りの内壁面に開口した貫通孔にL状の屈曲接続管を取り付けたものとして実施されている。第二流路21の下端は、流出部27を介して外部流路と導通している。この例では、流出部27は内筒10の下端寄りの内壁面に開口した貫通孔にL状の屈曲接続管を取り付けたものとして実施されているが、この屈曲接続管は、流入部26と軸方向の位置が略同じ高さになるまで内筒10の内部の筒状空間内を伸ばされている。
第二流体F2は、流入部26から螺旋状の第二流路21内に流入して螺旋状に旋回しながら下降して流出部27から外部へ流出する。
【0079】
次に、第三流路31は、その上端が流入部32を介して外部流路と導通している。この例では、流入部32は第3筒30の上端寄りの外周面に開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。第三流路31の下端は、流出部33を介して外部流路と導通している。この例では、流出部33は第3筒30の底部34の下端寄りに開口した貫通孔に接続管を取り付けたものとして実施されている。第三流体F3は、流入部32から螺旋状の第三流路31内に流入して螺旋状に下降して流出部33から外部へ流出する。
なお、各流路の流入部と流出部は逆にして実施することもできる。
(筒の分離)
【0080】
上下のフランジ部40、40のボルトなどの着脱可能な接合部材(図示ぜず)による接合を解除して熱交換器を分解すると、第3筒30が接合された外筒20とを、内筒10及び伝熱体41とに分離することができ、第3筒30が接合された外筒20を下部のフランジ部40と共に図の下方に引き抜くことができる。これによって反応用流路11は内外二つに分離された状態となり、反応用流路11を規定する流路構成面は、内筒10の側と外筒20の側とに分離される。反応用流路11を規定する流路構成面は、外筒20の側では、外筒20の内周面であり、内筒10の側では伝熱体41の半径方向外側の表面である。これらの全ての表面は、軸方向と直交する半径方向から見て他の部分に隠れることなく直接露出するように構成されている。従って第1の実施の形態と同じく、反応用流路11は清掃が極めて簡単な状態となる。
【0081】
第1の実施の形態でおいては、外角θoは立体形状部43と外筒20とがなす角度であったが、この実施の形態においては外角θoは立体形状部43と平坦部分44とがなす角度となる。いずれの場合でも、外角θoが90度以上の鈍角であるため、分離した状態では、狭隘な部分がない状態に解放されるため、反応用流路11の清掃が極めて簡単であるし、清掃状態の確認も容易となる。
図4について)
本発明は上述の実施の形態の他種々変更して実施することができる。これらの変更例を図4を参照しながら説明する。
【0082】
伝熱体41は、図4(A)に示すように内筒10の外周面に配置しても構わないし、図4(B)に示すように外筒20の内周面に配置しても構わない。また、伝熱体41は、平坦部分44を備えずに立体形状部43を筒の周面に固定しても構わないし、立体形状部43と平坦部分44を備えて全体として筒状をなすものとしても構わない。
【0083】
図4(A)に示すように、内筒10と外筒20との間の空間における半径方向の幅Sは、4mm~75mmであることが好ましく、10mm~50mmであることがより好ましい。
【0084】
この図4(B)は第2の実施の形態の変形例であるとも言える。第2の実施の形態においては伝熱体41の頂部25と内筒10の外周面とが向かい合うものであるに対し、この変形例においては伝熱体41の頂部25が外筒20の内周面と向かい合うものである。この例では、伝熱体41の平坦部分44の外周面と外筒20の内周面との間に隙間(d)を備えるものであり、言い換えれば、立体形状部43の端辺46と外筒20の内周面との間に空間を備える。この隙間(d)を設けずに実施しても構わないが、この隙間(d)は3mm以下とすることが適当である。さらに言い換えれば、螺旋状に周回する第二流路の、軸方向において隣り合う周回と周回との間、即ち軸方向において隣り合う略三角形の断面形状と略三角形の断面形状との間に隙間(d)を備える。この隙間(d)を設けずに実施しても構わないし、隙間(d)を設ける場合には半径方向に3mm以下とすることが適用である。この隙間(d)を設けることによって第二流路21を拡大することができる反面、あまりにも大きな隙間とした場合には、第二流体F2が螺旋状に流れることなく軸方向にショートパスして流れる流体の量が多くなり、熱交換の効率を低下させる恐れが生じる。
【0085】
次に、第3筒30は、図4(C)に示すように外筒20の外側に配置して固定してもよいし、図4(D)に示すように内筒10の内側に配置し固定してもよいし、また第3筒30設けずに反応用流路11と第二流路21だけで実施しても構わない。
【0086】
図4(E)に示すように、伝熱体41を2組用いても構わない。この場合一方の伝熱体41は内筒10の外周面に固定され、他方の伝熱体41は外筒20の内周面に固定された形態を示すことができる。2組の伝熱体41、41の間の空間が、反応用流体F1が流れる反応用流路11を構成するようにすれば、内筒10と外筒20とを分離させると反応用流路11は内外二つに分離された状態となり、反応用流路11を規定する流路構成面は、内筒10の側と外筒20の側とに分離される。反応用流路11を規定する流路構成面は、外筒10の側では、伝熱体41の半径方向内側の表面であり、内筒20の側では伝熱管41の半径方向外側の表面である。これらの面は軸方向と直交する半径方向から見て他の部分に隠れることなく直接露出するように構成されている。
【0087】
一方の伝熱体41と内筒10との間の空間と、他方の伝熱体41と外筒20との間の空間とが、第二流路、第三流路を構成する。なお図4(E)では、2組の伝熱体41は、軸方向断面の略三角形の頂部同士が向かい合うように配置されているが、両者のピッチをずらすなどしても構わない。
【0088】
図4(F)は第2の実施の形態の変形例であり、内筒10のさらに内側に同芯に第4筒50を配置し、内筒10と第4筒50との間の空間に伝熱体41を配置してもよく、このように複数の伝熱体41を配置することができる。同芯に配置された内筒10と第4筒50においては、半径方向の内外の関係で見ると、内筒10は第4筒50よりも外側に配置され、第4筒50は内筒10よりも内側に配置されていることから、内筒10は外筒20、第4筒50は内筒10に相当する。このことから、図4(F)は、同芯に配置された内筒10と外筒20との間に形成される空間が同芯上に2つあるものであり、同芯に配置された内筒と外筒の間に形成される空間を同芯上に複数備えることができるものである。
【0089】
以上、何れの例においても、内筒10の側と外筒20の側とは、軸方向(上下方向)への移動のみで回転させずとも分離することができるように組付け可能な形態を備えるものであり、伝熱体41は軸方向(上下方向)への移動の際に他の部分と干渉しない大きさを備えている。具体的には、その半径が一定な円筒形の内筒10及び外筒20の場合、伝熱体41が内筒10の側に固定されているとすると、伝熱体41の最大外径が外筒20の内径よりも小さく設定される。また伝熱体41が外筒20の側に固定されているとすると、伝熱体41の最小内径が内筒20の外径よりも大きく設定される。また、本発明は、内筒10及び外筒20が軸方向に 向かうに従ってその半径が変化する略円錐筒形のものとしても実施することができる。この場合、図の上方向へ内筒10を移動させることにより外筒20と分離できるとすると、伝熱体41が内筒10の側に固定されている場合には、軸方向と直交する各断面における伝熱体41の最大外径が、当該断面より上方の外筒20の内径よりも小さく設定される。また伝熱体41が外筒20の側に固定されているとすると、軸方向と直交する各断面における伝熱体41の最小内径が当該断面より上方の内筒20の外径よりも大きく設定される。
【符号の説明】
【0090】
F1 反応用流体
F2 第二流体
F3 第三流体
10 内筒
11 反応用流路
12 底面
13 第1斜面
14 第2斜面
15 頂部
16 流入部
17 流出部
18 底部
20 外筒
21 第二流路
22 底面
23 第1斜面
24 第2斜面
25 頂部
26 流入部
27 流出部
28 底部
30 第3筒
31 第三流路
32 流入部
33 流出部
34 底部
40 フランジ部
41 伝熱体
42 流路体
43 立体形状部
44 平坦部分
45 底部
λ 反応用流路の最大流路幅
μ 隙間(反応用流路の最小流路幅)
d 隙間
図1
図2
図3
図4