(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20240112BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20240112BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20240112BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F30/23
(21)【出願番号】P 2022526410
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 CN2019126355
(87)【国際公開番号】W WO2021088215
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】201911069845.5
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522178717
【氏名又は名称】エーアイエスエヌ イノベイティブ デザイン アンド マニュファクチュアリング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AISN INNOVATIVE DESIGN AND MANUFACTURING CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.2 Shuiwan Road, LiuDong New District, Liuzhou, Guangxi, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン カイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン プー
(72)【発明者】
【氏名】ワン クオチュン
(72)【発明者】
【氏名】フー チャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シャオビン
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-316828(JP,A)
【文献】特開2011-018368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0274537(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109190233(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/20
G06F 30/10
G06F 30/23
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぞ接ぎ構造設計に用いられる
、コンピュータにより実行される選択式トポロジー最適化方法であって、具体的には、
有限要素分析ソフトウェアで、最適化対象構造の有限要素モデルを作成し、モデルは、ほぞ穴(1)、ほぞ(2)、左側支持構造(3)、右側支持構造(4)、支持体(5)、下向き力荷重(6)、及び支持体への拘束(7)を含み、そのうち、ほぞ穴(1)とほぞ(2)のセルは最適化問題の設計領域である、ステップ1と、
前記有限要素モデルで、ほぞ穴(1)及びほぞ(2)が位置する領域を設計領域として選択し、設計領域内のセルの帰属状態を設計変数とし、即ち、各セルは、ほぞ穴(1)に帰属するか又はほぞ(2)に帰属するかとの二つの帰属状態が存在する、ステップ2と、
前記有限要素モデルで、基本セルを選択し、ほぞ(2)とほぞ穴(1)の基本構造形式を決定し、前記基本セルとは、最適化反復プロセスでは移動が許可されないセルを指し、即ち、基本セルの帰属状態に変化が生じることが許可されない、ステップ3と、
一回の有限要素分析を実行し、セル歪みエネルギーξ
iを取得し、且つ構造の総歪みエネルギーE、ほぞ穴(1)の総歪みエネルギーE
1及び平均歪みエネルギーe
1、ほぞ(2)の総歪みエネルギーE
2及び平均歪みエネルギーe
2を算出する、ステップ4と、
ステップ4によって算出されたセル歪みエネルギーをフィルタリングして平均化し、即ち、中央セル近傍領域内に帰属状態が中央セルと同じ全てのセルの歪みエネルギーの平均値又は加重平均値を用いて元歪みエネルギーの数値を代替し、依然としてξ
iと表され、そのうち、近傍領域とは、中央セル周りの特定距離R以内の全てのセルのセットを指し、Ω
iと表される、ステップ5と、
ステップ5によって得られたフィルタリングし平均化されたセル歪みエネルギーに基づいて、増幅係数scaleを設定し、基本セルと増幅セルを増幅する、ステップ6と、
ステップ6によって得られた増幅されたセル歪みエネルギーに基づいて、設計領域内の各セルの近傍領域状態を算出する、ステップ7と、
局所制御パラメータを設定し、局所制御ルールを構成し、セルの帰属状態を更新し、即ち、設計変数の更新を行う、ステップ8と、
ほぞ穴(1)とほぞ(2)の総歪みエネルギーEを目標関数として収束判定を行い、収束公差εを設定し、収束基準の定義は、連続した二回の反復では総歪みエネルギーEの平均値の変化量がε以下である時に収束し、現在の反復ステップでは目標関数が収束しない場合、ステップ4に移行して、次回の反復プロセスを開始し、現在の反復ステップでは目標関数が収束した場合、最適化プロセスを終了し、現在のグリッドモデルを保存して、最適化した結果とする、ステップ9と、
最適化結果を分析し評価して、ほぞ穴(1)とほぞ(2)の最大応力値、最大歪み値、総歪みエネルギー数値、及び構造キーポイント変位を評価する、ステップ10と、を含む、ほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【請求項2】
ステップ1では、作成された有限要素モデルは、ほぞ(2)とほぞ穴(1)は接触面にて完全に接着されることを確保し、且つほぞ(2)とほぞ穴(1)の接触面におけるグリッドノードは互いに重ね合わせることを特徴とする、請求項1に記載のほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【請求項3】
ステップ4では、次の
数1の式で算出
し、
【数1】
ことを特徴とする、請求項1に記載のほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【請求項4】
ステップ7では、セルiについて、近傍領域状態には、[N
i1、N
i2、n
i1、n
i2]という情報が含まれ、そのうち、N
i1はセルi近傍領域内に帰属状態が1であるセルであり、即ち、ほぞ穴(1)に帰属するセルの歪みエネルギーの合計であり、N
i2はセルi近傍領域内に帰属状態が2であるセルであり、即ち、ほぞ(2)に帰属するセルの歪みエネルギーの合計であり、n
i1はセルi近傍領域内に帰属状態が1であるセルであり、即ち、ほぞ穴(1)に帰属するセルの歪みエネルギーの平均値であり、n
i2はセルi近傍領域内に帰属状態が2であるセルであり、即ち、ほぞ(2)に帰属するセルの歪みエネルギーの平均値であり、そのうち、
【数2】
ことを特徴とする、請求項1に記載のほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【請求項5】
ステップ8では、局所制御パラメータは、通常移動係数m1、増幅移動係数m2、及び歪みエネルギー比率制御係数rtを含み、前記局所制御ルールは、この反復ステップでは、各セルの帰属状態が変化するか否かを判定する一連の基準であることを特徴とする、請求項1に記載のほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【請求項6】
ステップ9では、目標関数表現式は、
数3の式で示され
、
【数3】
数3の式では、Oは目標関数であり、目標関数値が収束公差ε以下である場合、目標関数は収束と判定され、最適化が完成され、itは現在の反復ステップであり、そのうち、最初の二回の反復では収束性判定を行わず、E
itは第it次回目の反復の後のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計であり、E
it-1とE
it-2はそれぞれ第it-1目と第it-2回目の反復の後のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計であり、E
1は最適化されていない時のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計であり、即ち、初期構造の歪みエネルギーであることを特徴とする、請求項1に記載のほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2019年11月5日に提出された、発明名称「ほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法」の中国発明特許出願2019110698455の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、トポロジー最適化方法に関し、特に、組み立て式部品、ドッキング式部品、ほぞ構造、又は他の構造自体の形状によって互いに支持、位置決め及び力伝達を行う構造を組み合わせるための最適化設計方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エンジニアリング技術の発展に伴い、加工精度の向上と組み立て技術の更新により、組み合わせ式、ドッキング式部品などは、その組み立て効率が高く、接続性能が安定するなどの利点を備えるから、機械部品の接続箇所の設計に多く用いられるようになってきた。例えば、ほぞ構造は、従来の木製構造の用途に限定されるものではなく、機械構造の設計及び製造などの幅広い分野で採用されている。これを踏まえて、このような快速接続構造の最適化は、重要な実際的意義を有する。
【0004】
現在、接続箇所の最適化には、一般的には、形状最適化の方法が用いられている。この方法では、形状変数を予め設定する必要があり、且つ形状変化の方向と範囲が制限されているため、最適化プロセスは初期構造のトポロジーと形状に過度に依存し、示唆のある新しい構造形式を与えることができない。従って、この方法は、応力集中の改善、接触条件の最適化などのみに用いられ、構造の力伝達経路を変更することができない。
【0005】
トポロジー最適化技術は、示唆のある新しい構造形式を提供することができるが、従来のトポロジー最適化技術は、可変密度法、漸進構造最適化法、セルオートマトン法又はレベルセット方法のいずれであっても、単一可撓体の最適化にしか応用できず、最適化反復における構造の境界条件が変わらないか、又は僅かで規則的な変化しかないことが特徴で、このため、ほぞ接ぎ構造などの最適化問題において境界条件が激しく変化する状況には適用することができない。
【0006】
上記の状況に鑑み、開発される新しい最適化方法は、以下の技術課題を解決しなければならない。(1)形状最適化とは異なり、新しい最適化方法は全局最適化能力を向上させ、示唆のある新しい構造形式を提供する必要がある。(2)この最適化方法は、従来のトポロジー最適化方法とは異なり、相互にマッチングされる二つの構造の最適化、即ち接触条件及び境界条件は激しく且つ予測不能に変化する状況に対処できる必要があり、従来の境界条件可変トポロジー最適化技術はこのような問題を対応することが困難である。(3)最適化反復では、二つの部品のそれぞれの接続箇所のトポロジーと形状は、関連付けて協働に変化することができる必要があり、二つの部品の合理的なマッチングを確保する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、新型のトポロジー最適化方法を開発し、グリッドセルの帰属状態を採用し、即ち、セルが帰属する部品の番号を設計変数とし、特定の制御ルールに従って状態選択を行うことにより設計を最適化する目的を達成する。この方法は、組み立て式部品、ドッキング式部品、ほぞ構造を組み合わせる接続箇所又はほぞ接ぎ特徴を有する接続構造の最適化設計に用いられることができる。この方法は、一定の全局最適化能力を備え、接触条件及び境界条件は激しく且つ予測不能に変化する状況に対処できる。
【0008】
本発明の技術案は、次の通りである。
【0009】
ほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法であって、具体的には、
最適化対象構造の有限要素モデルを作成し、モデルは、ほぞ穴、ほぞ、左側支持構造、右側支持構造、支持体、下向き力荷重、及び支持体への拘束を含み、そのうち、ほぞ穴とほぞのセルは最適化問題の設計領域である、ステップ1と、
ほぞ穴及びほぞが位置する領域を設計領域とし選択し、設計領域内のセルの帰属状態を設計変数とし、即ち、各セルは、ほぞ穴に帰属するか又はほぞに帰属するかとの二つの帰属状態が存在する、ステップ2と、
基本セルを選択し、ほぞとほぞ穴の基本構造形式を決定し、前記基本セルとは、最適化の反復プロセスでは移動が許可されないセルを指し、即ち、基本セルの帰属状態に変化が生じることが許可されない、ステップ3と、
一回の有限要素分析を実行し、セル歪みエネルギーξiを取得し、且つ構造の総歪みエネルギーE、ほぞ穴の総歪みエネルギーE1及び平均歪みエネルギーe1、ほぞの総歪みエネルギーE2及び平均歪みエネルギーe2を算出する、ステップ4と、
ステップ4によって算出されたセル歪みエネルギーをフィルタリングして平均化し、即ち、中央セル近傍領域内に帰属状態が中央セルと同じ全てのセルの歪みエネルギーの平均値又は加重平均値を用いて元歪みエネルギーの数値を代替し、依然としてξiと表され、そのうち、近傍領域とは、中央セル周りの特定距離R以内の全てのセルのセットを指し、Ωiと表される、ステップ5と、
ステップ5によって得られたフィルタリングし平均化されたセル歪みエネルギーに基づいて、増幅係数scaleを設定し、基本セルと増幅セルを増幅する、ステップ6と、
ステップ6によって得られた増幅されたセル歪みエネルギーに基づいて、設計領域内の各セルの近傍領域状態を算出する、ステップ7と、
局所制御パラメータを設定し、局所制御ルールを構成し、セルの帰属状態を更新し、即ち、設計変数の更新を行う、ステップ8と、
ほぞ穴とほぞの総歪みエネルギーEを目標関数として収束判定を行い、収束公差εを設定し、収束基準の定義は、連続した二回の反復では総歪みエネルギーEの平均値の変化量がε以下である時に収束し、現在の反復ステップでは目標関数が収束しない場合、ステップ4に移行し、次回の反復プロセスを開始し、現在の反復ステップでは目標関数が収束した場合、最適化プロセスを終了し、現在のグリッドモデルを保存して、最適化した結果とする、ステップ9と、
最適化結果を分析し評価して、ほぞ穴とほぞの最大応力値、最大歪み値、総歪みエネルギー数値、及び構造キーポイント変位を評価する、ステップ10と、を含む。
【0010】
さらに、ステップ1では、作成された有限要素モデルは、ほぞ(2)とほぞ穴(1)は接触面にて完全に接着されることを確保し、且つほぞとほぞ穴の接触面におけるグリッドノードは互いに重ね合わせる。
【0011】
さらに、ステップ4では、次の式で算出する。
【数1】
【0012】
さらに、ステップ7では、セルiについて、近傍領域状態には、[N
i1、N
i2、n
i1、n
i2]という情報が含まれ、そのうち、N
i1はセルi近傍領域内に帰属状態が1であるセルであり、即ち、ほぞ穴(1)に帰属するセルの歪みエネルギーの合計であり、N
i2はセルi近傍領域内に帰属状態が2であるセルであり、即ち、ほぞ(2)に帰属するセルの歪みエネルギーの合計であり、n
i1はセルi近傍領域内に帰属状態が1であるセルであり、即ち、ほぞ穴(1)に帰属するセルの歪みエネルギーの平均値であり、n
i2はセルi近傍領域内に帰属状態が2であるセルであり、即ち、ほぞ(2)に帰属するセルの歪みエネルギーの平均値であり、そのうち、
【数2】
さらに、ステップ8では、局所制御パラメータは、通常移動係数m1、増幅移動係数m2、及び歪みエネルギー比率制御係数rtを含み、前記局所制御ルールは、この反復ステップでは各セルの帰属状態に変化が生じるか否かを判定する一連の基準である。
【0013】
さらに、ステップ9では、目標関数表現式は、次に示される。
【数3】
【0014】
式では、Oは目標関数であり、目標関数値が収束公差ε以下である時、目標関数は収束と判定され、最適化が完成される。itは現在の反復ステップであり、そのうち、最初の二回の反復では収束性判定を行わない。Eitは第it回目の反復の後のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計である。Eit-1とEit-2はそれぞれ、第it-1回目と第it-2回目の反復の後のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計である。E1は最適化されていない時のほぞ穴(1)とほぞ(2)の歪みエネルギーの合計であり、即ち、初期構造の歪みエネルギーである。
【0015】
本発明の有益な効果は、次の通りである。
【0016】
1、本発明の方法は、ほぞ接ぎ構造における互いにマッチングし接続する箇所の基本形状形式を変更することにより、比較的に広い範囲内で最適化することができ、さらに、ほぞ接ぎ構造の力伝達経路を最適化し、且つステップ8では、各セル近傍領域内の全てのセルの歪みエネルギー情報を参照し、歪みエネルギー分布が比較的に均一な構造形式を求め、それにより、接触条件と応力集中の問題を改善する。本発明によって提供される実施例の最適化結果は、この方法の実現可能性と有効性も証明する。
【0017】
2、本発明の方法は、組み立て式部品、ドッキング式部品、ほぞ構造又は他の構造自体の形状によって互いに支持、位置決め及び力伝達を行う構造を組み合わせて最適化することができ、例えば、バンプ式ジョイント、部品ドッキング材、ピン及びピン孔、スライドレール、スナップなどがある。これは、これらの構造がいずれもほぞ接ぎ構造の特徴と性質、例えば、二つの構造の形状の相互間のマッチングによって位置決め、支持及び力伝達を行うことを備えるからである。従って、この方法は、このような部品の最適化設計にも適用される。
【0018】
3、形状最適化技術に比べて、本発明の方法は形状変数を予め設定する必要がなく、モデリング作業を簡略化するとともに、使用者のエンジニアリング経験への依存度を低減させる。
【0019】
4、形状最適化技術に比べて、本発明の方法は、形状変数の上下限制限が存在せず、且つステップ6では、セルの増幅及び増幅の幅の減衰ルールを導入し、全局最適化能力を向上させる。従って、この方法は、最適化問題を接触条件及び応力集中の改良などに限定せず、且つ構造全体の力伝達経路を改良し、より示唆のある構造形式を得ることができる。
【0020】
5、形状最適化技術に比べて、ステップ2において指定される設計変数はセル帰属状態であり、ノードの移動及びセルの変形に係らないため、本発明の方法では、反復プロセスにおいてグリッドが変形することがなく、グリッドの過度変形による不合格なセル品質及び不十分な算出精度という問題が存在しない。
【0021】
6、本発明の方法は、ステップ2において指定される設計領域は単一の連通材ではなく、二つ又は複数の互いに関連されるサブ領域であるため、本発明の方法は、トポロジー最適化技術を複数の可撓体関連最適化のレベルまで拡張し、トポロジー最適化技術を、単一の可撓体のトポロジー最適化だけに限定しない。
【0022】
7、セルが帰属する部品の番号を設計変数とし用いて、可撓体の間のほぞ接ぎ構造を最適化する時に、ほぞとほぞ穴の形状を関連して変化させる必要がある問題を解決した。
【0023】
8、現在最も広く使われる可変密度法に比べて、本発明の方法はグレーセルを採用せず、即ち、中間密度という概念を採用しないため、各反復ステップによって得られた構造と構造性能は、正確な物理的且つ実用的な意義を有する。
【0024】
9、上述した、セル帰属状態によって構成される設計変数、基本セル、増幅及び増幅の幅の減衰ルール、局所制御ルールなどの概念又は具体的な方法は、本発明によって初めて提出され、記述され、そして実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の最適化プローの全体アーキテクチャブロック図である。
【
図3】最適化対象構造の有限要素モデルの概略図である。
【
図4】最適化対象箇所(設計領域)の概略図である。
【
図6】最適化された後のほぞ接ぎ構造の概略図である。
【
図7】以前の各回の反復における構造変化の状況図である。
【
図8】以前の各回の反復における総歪みエネルギー、部品1の総歪みエネルギー、部品2の総歪みエネルギーの変化曲線である。
【
図9】以前の各回の反復における部品1と部品2の最大応力の変化曲線である。
【
図10】以前の各回の反復における部品1と部品2の最大歪みの変化曲線である。
【
図11】以前の各回の反復におけるキーポイントの変位の変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下は、
図1~
図11を結び付けながら、本発明に係る技術案を詳細に説明する。
【0027】
図1に示すように、この実施例は、ほぞ接ぎ構造設計に用いられる選択式トポロジー最適化方法を提供する。具体的には、次のステップを含む。
【0028】
ステップ1:最適化対象構造の有限要素モデルを作成する。
図3に示すように、このモデルは、ほぞ穴1、ほぞ2、左側支持構造3、右側支持構造4、支持体5、下向き力荷重6、及び支持体への拘束7を含み、そのうち、ほぞ穴1とほぞ2のセルは最適化問題の設計領域である。設計領域の選択及び設計変数の定義について、ステップ2では詳しく説明する。
【0029】
作成された有限要素モデルは、ほぞ2とほぞ穴1が接触面で完全に接着されることを確保する必要があり、好ましくは、ほぞ2とほぞ穴1の接触面におけるグリッドノードが互いに重なり合うようにすることである。この要求の目的は、設計変数を容易に更新することであり、即ち、グリッドセルの帰属状態を容易に変化させて、且つ帰属状態が変化された後にグリッドが依然として合理的連続性を維持することを確保することである。
【0030】
図3は、本実施例において作成された有限要素モデルを示す。そのうち、ほぞ穴1と左側支持構造3は一体であり、ほぞ2と右側支持構造4は一体であり、二つ部分の構造はほぞ穴1とほぞ2によって接続され、支持体5に支持され、構造全体には、下向きの均一に分布される下向き力荷重6が付与される。本実施例では、計算を簡略化するために、システム内の各部品の横断面を抽出し、有限要素モデルを平面歪み問題として簡略化させる。
【0031】
図4は、設計領域の局所状況を示す。ほぞ穴1とほぞ2は接触面で接着され且つノードは重ね合わせる。
【0032】
ステップ2:ほぞ穴1、ほぞ2が位置する領域を設計領域として選択し、設計領域内のセルの帰属状態を設計変数とし、即ち、各セルは、ほぞ穴1に帰属するか又はほぞ2に帰属するかとの二つの帰属状態が存在する。
設計変数の形式は次の通りである。
【数4】
である時、セルiがほぞ穴1に帰属することを表し、
【数5】
である時、セルiがほぞ2に帰属することを表し、iはセル番号を表し、1≦i≦n:
【数6】
、そのうち、iは1~nであり、1~n個のxのうちの第i個のxを表し、各xの値の範囲はいずれも(1又は2)である。
【0033】
ステップ3:基本セルを選択し、ほぞとほぞ穴の基本構造形式を決定する。
【0034】
前記基本セルとは、最適化反復プロセスでは移動が許可されないセルを指し、即ち、基本セルの帰属状態に変化が生じることが許可されない。
【0035】
これらの基本セルによって、構造の基本形式は、左側が二つのほぞ穴である構造形式であり、右側が二つのほぞである構造形式であることを指定する。基本セルは、最適化反復において構造が暴走することを防止する機能を発揮し、最適化プロセスの安定性と制御性を効果的に確保することができ、特定の方向に構造を最適化する。
【0036】
最適化反復では基本セルの帰属状態に変化が生じないようにするために、基本セルを増幅する必要がある。前記増幅とは、基本セルの歪みエネルギーに十分に大きな値を人為的に加えて、基本セルは効率的なセルとして判定され、それによって、帰属状態に変化が生じないことを指す。セルの増幅の具体的な内容について、ステップ6では詳細に記述する。
【0037】
図5に示すブラック領域内のセルは本実施例における基本セルである。これらの基本セルの帰属状態は最適化反復において変化が生じないため、ほぞ穴1は最適化された後も二つのほぞ穴の構造形式を維持することができ、ほぞ2は最適化された後も二つのほぞの構造形式を維持することができる。なお、実際の需要に応じて特定の基本セルを選択し最適化して、望まれる構造形式を得ることができ、基本セルの設定により、最適化アルゴリズムの制御性と安定性が確保される。
【0038】
ステップ4:一回の有限要素分析を実行し、セル歪みエネルギーξiを取得し、且つ構造の総歪みエネルギーE、ほぞ穴1の総歪みエネルギーE1及び平均歪みエネルギーe1、ほぞ2の総歪みエネルギーE2及び平均歪みエネルギーe2を算出する。
【0039】
各パラメータは、次の式に従って算出される。これらのパラメータは、ステップ5ではセルをフィルタリングし平均化し、及びステップ6では近傍領域状態を算出するために用いられる。
【数7】
【0040】
ステップ5:ステップ4によって算出されたセル歪みエネルギーをフィルタリングして平均化し、即ち、中央セル近傍領域内に帰属状態が中央セルと同じ全てのセルの歪みエネルギーの平均値又は加重平均値を用いて、元歪みエネルギーの数値を代替し、依然としてξiと表される。そのうち、近傍領域とは、中央セル周りの特定距離R以内の全てのセルのセットを指し、Ωiと表される。
【0041】
本ステップにおいて記述されたフィルタリング平均化する意味と操作方法は、従来の可変密度トポロジー最適化方法(SIMP)におけるセルのフィルタリング平均化技術と全く同じである。その機能は、設計領域内の歪みエネルギーの分布をより均一で滑らかにし、それによって、最適化された後のほぞ穴1とほぞ2との境界を比較的に滑らかにし、鋸歯又は孔などの小さな構造特徴を回避し、最適化結果にプロセス上の合理性と実現可能性を持たせることである。
【0042】
本実施例では、近傍領域半径R=0.35mmを選択し、セル距離はセル重心の間の距離で示される。近傍領域は、あるセル重心との距離が0.35mm以下である全てのセルのセットで示されることができる。セルiについて、フィルタリング平均化の算出プロセスは、次の式に示される。
【数8】
【0043】
式では、ξiはフィルタリング平均化された後のセルiの歪みエネルギーを表し、ξjはフィルタリング平均化される前のセルi近傍領域内のセルjの歪みエネルギーを表し、mはセルi近傍領域内の帰属状態がiと同じセル数(セルiを含み)を表す。例えば、ほぞ穴1に帰属するセルiについて、ここに含まれるセルには、1に帰属するセルのみが含まれ、ほぞ2に帰属するセルは無視される。
【0044】
ステップ6:ステップ5によって得られたフィルタリングし平均化されたセル歪みエネルギーに基づいて、増幅係数scaleを設定し、基本セルと増幅セルを増幅する。前記基本セルはステップ3において選択された基本セルである。前記増幅セルは、前回の反復ステップにおいて帰属状態に変化が生じたセルであり、初回の反復において増幅セルを設置しない。前記増幅は、選択されたセルの歪みエネルギーの数値に一つの値を人為的に加えることである。
【0045】
本ステップにおいて、セルを増幅する目的は、次の二つの側面に反映される。
【0046】
(1)基本セルを増幅する目的は、基本セルが効率的なセルであると判断され、帰属状態に変化が生じないことを確保し、最終のほぞ穴1はダブルほぞ穴の基本構造形式であることが確保され、ほぞ2はダブルほぞの基本構造形式であり、同時に、アルゴリズムの安定性と制御性を向上させる。増幅の幅は、反復回数の増加に伴って変化しない。
【0047】
(2)増幅セルを増幅する目的は、この部分のセルがこの以降の三回の反復では比較的に効率的なセルであると判定されるように確保することであり、それにより、新しく生成されたほぞ穴1とほぞ2との接触面における小さな構造特徴は、応力集中などの問題によって速やかに消えることがなく、構造の全局最適化能力を向上させるために有利であり、ほぞ接ぎ構造の力伝達経路を改良させる。増幅セルを増幅する具体的な原理は、次の式で示される。
【数9】
【0048】
本実施例では、増幅係数scaleは1の値を取り、セルiを例とする。
【0049】
(1)セルiが基本セルである場合、フィルタリングし平均化された後のセルiの歪みエネルギーに基づいて、一倍のセルi近傍領域内の平均歪みエネルギーの数値を加える必要があり、この以降の全ての反復ではこの増幅操作は永続的に有効である。
【0050】
(2)セルiが基本セルではなく、且つ第it-1回目の反復ではセルiの帰属状態に変化が生じたと想定される場合、第it回目の反復ではセルiが増幅セルとして選択され、且つ第it回目の反復から第it+3回目の反復まで、その歪みエネルギーは、上記の式に従って相応な増幅と修正を行う必要がある。
【0051】
ステップ7:ステップ6によって得られた増幅されたセル歪みエネルギーに基づいて、設計領域内の各セルの近傍領域状態を算出する。セルiについて、近傍領域状態は、[N
i1、N
i2、n
i1、n
i2]という情報を含む。そのうち、N
i1はセルi近傍領域内の帰属状態が1であるセル(即ち、ほぞ穴1に帰属するセル)の歪みエネルギーの合計であり、N
i2はセルi近傍領域内の帰属状態が2であるセル(即ち、ほぞ2に帰属するセル)の歪みエネルギーの合計であり、n
i1はセルi近傍領域内の帰属状態が1であるセル(即ち、ほぞ穴1に帰属するセル)の歪みエネルギーの平均値であり、n
i2はセルi近傍領域内の帰属状態が2であるセル(即ち、ほぞ2に帰属するセル)の歪みエネルギーの平均値である。各パラメータは次の式で算出される。算出された近傍領域状態[N
i1、N
i2、n
i1、n
i2]は、ステップ8における局所制御と設計変数更新に用いられる。
【数10】
【0052】
ステップ8:局所制御パラメータを設定し、局所制御ルールを構成し、セル帰属状態を更新し、即ち、設計変数を更新する。前記局所制御パラメータは、通常移動係数m1、増幅移動係数m2、及び歪みエネルギー比率制御係数rtを含む。前記局所制御ルールは、この反復ステップでは各セルの帰属状態に変化が生じるか否かを判定する一連の基準である。
【0053】
例えば、ほぞ穴1に帰属するあるセルiについて、局所制御ルールに基づいてこのセルの帰属状態に変化が生じる必要があると判定された場合、セルiの帰属状態xiを1から2に変更し、それに応じてこのセルの近くのグリッドの連続性と接触条件を更新する。
【0054】
本発明に記述される局所制御ルールの基本原理は、あるセル近傍領域Ω
i内の全てのセルの歪みエネルギーの大きさ、ほぞ穴1とほぞ2の平均歪みエネルギーの大きさの比などの情報を参照して、設計領域全体内の歪みエネルギーを均一に分布させる設計方案を探し、それによって、接触条件を改良し、応力集中を減少し、各位置の材料はいずれも比較的に大きな支持機能を発揮することができ、ほぞ構造の接続性能を向上させる。前記局所制御ルールの判定基準及びプローは
図2に示され、具体的なステップ及び原理は、次の通りである。
【0055】
ステップ8.1:ほぞ穴1とほぞ2内の全てのセルが処理されたか否かを判定し、処理が完了された場合、局所制御を終了し、設計変数の更新を終了する。処理が完了されなかった場合、現在制御されているセルiの帰属状態を判定し、1である場合、ステップ8.2に移行し、2である場合、制御ルールは、次のステップ8.2~8.6のように構築される。
【0056】
ステップ8.2:セルiの近傍領域内にほぞ2に帰属するセルが存在するか否かを判定し、存在しない場合、制御ルールを終了し、ステップ8.1に移行して次のセルの制御を開始する。存在する場合、ステップ8.3に移行する。
【0057】
ステップ8.3:セル歪みエネルギーξi、ほぞ穴1の平均歪みエネルギーe1、ほぞ2の平均歪みエネルギーe2及び歪みエネルギー比率制御係数rtが次の式を満たすか否かを判定する。
ξi<e1<rt*e2
【0058】
満たさない場合、制御ルールを終了し、ステップ8.1に移行して次のセルの制御を開始する。満たす場合、ステップ8.4に移行する。
【0059】
ステップ8.4:セルiの近傍領域内に、ほぞ穴1に帰属するセルの歪みエネルギーの合計Ni1とほぞ2に帰属するセルの歪みエネルギーの合計Ni2は、次の式を満たすか否かを判定する。
Ni1<Ni2
【0060】
満たさない場合、制御ルールを終了し、ステップ8.1に移行して次のセルの制御を開始する。満たす場合、ステップ8.5に移行する。
【0061】
ステップ8.5:セルiの近傍領域内に、ほぞ2に帰属するセルの歪みエネルギーの平均値ni2、ほぞ2の平均歪みエネルギーe2及び通常移動係数m1は、次の式を満たすか否かを判定する。
ni2>m1*e2
【0062】
満たす場合、ステップ3に記述されるセル移動方法を呼び出して、セルiをほぞ穴1からほぞ2に移動させる。満たさない場合、ステップ8.6に移行する。
【0063】
ステップ8.6:セルiの近傍領域内に、ほぞ穴1に帰属するセルの歪みエネルギー平均値ni2、ほぞ2の平均歪みエネルギーe2及び増幅移動係数m2は、次の条件を満たすか否かを判定する。
ni2<m2*e2
【0064】
満たす場合、セルiの帰属状態を1から2に変更させて、即ち、セルiをほぞ穴1からほぞ2に移動させて、セルが移動された後のグリッド連続性と接触条件を更新するとともに、セルiを増幅セルとして規定し、ステップ6に記述される方法に従ってこの以降の三回の反復では増幅と修正を行う。満たさない場合、制御ルールを終了し、ステップ8.1に移行して次のセルの制御を開始する。
【0065】
本実施例では、局所制御パラメータの値はそれぞれ、通常移動係数m1=1.05、増幅移動係数m2=0.95、歪みエネルギー比率制御係数rt=1.1である。上述したプローに従って、ほぞ穴1とほぞ2の各セルの帰属状態を更新し、且つセルが移動された後のグリッド連続性と接触条件を更新し、今回の最適化反復が完了する。
【0066】
ステップ9:ほぞ穴1とほぞ2の総歪みエネルギーEを目標関数として収束判定を行い、収束公差εを設定する。
【0067】
収束基準の定義は、連続した二回の反復では総歪みエネルギーEの平均値の変化量はε以下である場合収束することである。現在の反復ステップでは目標関数が収束しない場合、ステップ4に移行し、次回の反復プロセスを開始する。現在の反復ステップでは目標関数が収束する場合、最適化プロセスを終了し、現在のグリッドモデルを保存して、最適化された結果とする。目標関数表現式は、次のように示す。
【数11】
【0068】
式では、Oは目標関数であり、目標関数値が収束公差ε以下である時、目標関数は収束と判定され、最適化が完成される。itは現在の反復ステップであり、そのうち、最初の二回の反復では収束性判定を行わない。Eitは第it回目の反復の後のほぞ穴1とほぞ2の歪みエネルギーの合計であり、本実施例では、第it回目の反復は現在の反復ステップである。Eit-1とEit-2はそれぞれ、第it-1回目と第it-2回目の反復の後のほぞ穴1とほぞ2の歪みエネルギーの合計であり、本実施例では、第it-1回目と第it-2回目の反復はそれぞれ現在の反復ステップの前の二つの反復ステップであり、E1は最適化されていない時のほぞ穴1とほぞ2の歪みエネルギーの合計であり、即ち、最初の構造の歪みエネルギーである。
【0069】
本実施例では、反復ステップit=8である場合、Ob=0.0083、収束条件を満たし、最適化プロセスを終了する。最適化された構造形状は
図6に示される。以前の各回の反復の後の構造の形状は
図7に示される。総歪みエネルギーEの変化曲線は
図8に示され、本最適化方法の効果をより詳細に記述するために、ここに最初の10回の反復の歪みエネルギー変化曲線を示す。総歪みエネルギーは最終に7.0×10
-4N・mmの近くに収束し、第8回の反復ステップではこの収束値の近くに十分に接近し且つ安定していることが分かる。
【0070】
ステップ10:最適化結果を分析し評価する。ほぞ穴1とほぞ2の最大応力値、最大歪み値及び総歪みエネルギー数値、構造キーポイント変位(即ち、硬度性能)などを評価する。
【0071】
本実施例では、反復プロセスでは主な性能変化状況は、次の通りである。
【0072】
図8はほぞ穴1とほぞ2の総歪みエネルギーEの変化曲線を示す。
【0073】
図9はほぞ穴1とほぞ2の最大応力値の変化曲線を示す。
【0074】
図10はほぞ穴1とほぞ2の最大歪み値の変化曲線を示す。
【0075】
図11はキーポイント(本実施例では、応力点である)の最大変位値の変化曲線を示す。
【0076】
最適化結果は、最適化された後、構造総歪みエネルギー、最大応力、最大歪み、キーポイント変位(本実施例では、即ち応力点の変位)はいずれも様々な程度で減少することがあり、接続構成がより高く、構造性能がより良く、構造最適化の目的が達成され、この方法の実現可能性及び有効性が証明されることが示される。
【符号の説明】
【0077】
1 ほぞ穴
2 ほぞ
3 左側支持構造
4 右側支持構造
5 支持体
6 下向き力荷重
7 支持体への拘束