(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】位置検出装置、位置検出方法、リソグラフィ装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240112BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20240112BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01B11/00 C
G03F9/00 H
G03F9/00 Z
H01L21/30 507R
(21)【出願番号】P 2019183925
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】村山 元気
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-338455(JP,A)
【文献】特開2001-022098(JP,A)
【文献】特開2003-057853(JP,A)
【文献】特開2000-260699(JP,A)
【文献】国際公開第2005/008753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G03F 9/00
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に形成された、第1パターン要素と第2パターン要素を有するパターンを検出する位置検出装置であって、
前記第1パターン要素に対応する特徴点を有する第1サブテンプレートと前記第2パターン要素に対応する特徴点を有する第2サブテンプレートを含むテンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンを検出するパターンマッチングを行う制御部を有し、
前記制御部は、前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を決定し、前記第2サブテンプレートの特徴点を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第2サブテンプレートの特徴点の位置を決定する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1サブテンプレートの第1特徴点と第2特徴点の位置を変更して前記パターンマッチングを行った後、前記第1サブテンプレートの第3特徴点と第4特徴点の位置を変更して前記パターンマッチングを行うことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1サブテンプレートの第1特徴点の位置を予め定められた第1位置に変更して前記パターンマッチングを行った後、前記第1特徴点の位置を予め定められた第2位置に変更して前記パターンマッチングを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1サブテンプレートが有する前記第1パターン要素に対応する前記特徴点の位置を、前記第1パターン要素の中心、または重心に対して、遠ざける方向、または近づける方向に変更し、前記第2サブテンプレートが有する前記第2パターン要素に対応する前記特徴点の位置を、前記第2パターン要素の中心、または重心に対して、遠ざける方向、または近づける方向に変更することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記第1パターン要素と前記第2パターン要素を撮像して画像を取得する撮像部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
物体に形成された、第1パターン要素と第2パターン要素を有するパターンをパターンマッチングにより検出する位置検出方法であって、
前記パターンマッチングにおいて、前記第1パターン要素に対応する特徴点を有する第1サブテンプレートと前記第2パターン要素に対応する特徴点を有する第2サブテンプレートを含むテンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンが検出され、
前記第1サブテンプレートが有する特徴点の位置を繰り返し変更しながら行われた、前記テンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンを検出するパターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を決定し、前記第2サブテンプレートの特徴点を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第2サブテンプレートの特徴点の位置を決定する工程と、
前記画像と前記第1サブテンプレート及び第2サブテンプレートの特徴点が決定されたテンプレートとの間の前記パターンマッチングを行い、前記パターンを検出する工程と、を有する
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項7】
基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板を保持して移動するステージと、
前記基板に形成された複数のパターンを検出する請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の位置検出装置と、を有し、
前記位置検出装置により検出された前記パターンに基づき、前記ステージの位置合せを行う
ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項8】
複数の基板上にパターンを形成する場合、前記位置検出装置は、前記複数の基板のうち少なくとも1つの基板に形成された前記複数のパターン要素について前記特徴点の位置を決定することを特徴とする、請求項7に記載のリソグラフィ装置。
【請求項9】
同一条件で処理される複数の基板からなるロットに含まれる基板上にパターンを形成する場合、前記位置検出装置は、前記ロットに含まれる一部の基板に形成された前記複数のパターン要素について前記特徴点の位置を決定することを特徴とする、請求項8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
基板に形成された、第1パターン要素と第2パターン要素を有するパターンをパターンマッチングにより検出する工程と、
検出された前記パターンに基づき、前記基板を保持して移動するステージの位置合せを行う工程と、
位置合せされた前記ステージに保持された前記基板にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する工程と、を含み、
加工された前記基板から物品を製造し、
前記パターンマッチングにおいて、前記第1パターン要素に対応する特徴点を有する第1サブテンプレートと前記第2パターン要素に対応する特徴点を有する第2サブテンプレートを含むテンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンが検出され、
前記パターンを検出する工程は、
前記第1サブテンプレートが有する特徴点の位置を繰り返し変更しながら行われた、前記テンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンを検出するパターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を決定し、前記第2サブテンプレートの特徴点を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第2サブテンプレートの特徴点の位置を決定する工程と、
前記画像と前記第1サブテンプレート及び第2サブテンプレートの特徴点が決定されたテンプレートとの間の前記パターンマッチングを行い、前記パターンを検出する工程と、を有する、
ことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、位置検出方法、リソグラフィ装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、MEMS、カラーフィルターまたはフラットパネルディスプレイなどの物品の製造において、基板上に形成されるパターンの微細化が進み、基板を高精度に位置合せ(アライメント)することが要求されている。
【0003】
基板を位置合せするための技術として、基板上に設けられたマークを撮像した画像に対してパターンマッチングを行い、マークを検出する方法が用いられる。
【0004】
特許文献1では、マークの誤認を防止し、所定のマークをより確実に検出可能とするために、マークの変形等に対応したテンプレートの自動変形による最適化を行ない、パターンマッチングを行い、マークを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体デバイスの後工程等において、マークだけでなく、基板に形成された凹凸や孔などの形状をパターン要素として有するパターンを検出して、基板をアライメントすることが求められている。この場合、画像に同様の形状を有するパターン要素が複数、撮像されて、1つのパターン要素だけでは位置を特定することが困難なことがある。そこで、画像に撮像された複数のパターン要素に対してパターンマッチングを行い、位置を特定する必要がある。
【0007】
特許文献1には、個別のマークが撮像された画像に対してパターンマッチングを行う場合にテンプレートを自動で変更することについて記載されている。しかし、特許文献1には、複数のパターン要素を有するパターンが撮像された画像に対してパターンマッチングを行う場合にテンプレートを自動で変更することについては記載されていない。
【0008】
そこで、本発明は、複数のパターン要素を有するパターンをより精度よく検出する位置検出装置、位置検出方法、リソグラフィ装置、及び物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一側面としての位置検出装置は、物体に形成された、第1パターン要素と第2パターン要素を有するパターンを検出する位置検出装置であって、前記第1パターン要素に対応する特徴点を有する第1サブテンプレートと前記第2パターン要素に対応する特徴点を有する第2サブテンプレートを含むテンプレートを前記パターンの画像において順次、移動させながら算出される、前記画像と前記テンプレートとの相関度に基づき前記パターンを検出するパターンマッチングを行う制御部を有し、前記制御部は、前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第1サブテンプレートの特徴点の位置を決定し、前記第2サブテンプレートの特徴点を繰り返し変更しながら行われた前記パターンマッチングにおいて算出された最も高い相関度に基づき前記第2サブテンプレートの特徴点の位置を決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のパターン要素を有するパターンをより精度よく検出する位置検出装置、位置検出方法、リソグラフィ装置、及び物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】位置検出装置を備えた露光装置を示す図である。
【
図2】テンプレートを作成する処理を示すフローチャートである。
【
図3】パターンマッチングの対象となるパターンを含む画像を示す図である。
【
図4】特徴点が配置されたテンプレートを示す図である。
【
図5】テンプレートを用いてパターンを検出する処理を示すフローチャートである。
【
図6】テンプレートとパターンとの位置関係を示す図である。
【
図7】テンプレートTPの特徴点の位置を変更する処理を示すフローチャートである。
【
図8】特徴点の位置が変更されたテンプレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において、同一の部材については、同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施に有利な具体例を示すにすぎない。また、以下の実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の課題解決のために必須のものであるとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の位置検出装置について説明する。
図1は、位置検出装置200を備えた露光装置100を示す図である。露光装置100は、半導体デバイスや液晶表示素子の製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。
【0014】
また、以下では、基板を保持して移動する、後述の基板ステージSTGが基板を保持する保持面に垂直な方向をZ方向(第2方向)とし、基板の表面に沿う方向(第1方向)であって互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。また、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。
【0015】
本実施形態の露光装置100は、照明系ILと、投影光学系POと、基板ステージSTGと、位置検出装置200と、を含む。露光装置100は、原版であるレチクルRと基板Wをアライメントした後に、照明系ILでレチクルRに露光光を照射してレチクルRのパターンを基板Wに投影光学系POを介して転写する装置である。
【0016】
照明系ILは、光源からの光でレチクルRを照明する。投影光学系POは、所定の投影倍率(例えば、1倍や1/2倍)を有し、レチクルRに形成されたパターンを基板Wに投影する。
【0017】
基板ステージSTG上には基板を吸着(固定)するチャックCHが配置され、基板ステージSTGはチャックCHを介して基板Wを保持して移動する保持部である。基板ステージSTGは、基板WをX軸方向およびY軸方向に移動させて基板WとレチクルRとの位置合わせを行う。基板ステージSTGは、露光光のフォーカス調整用にZ軸方向にも移動可能である。さらに、基板WのθZ(さらに好ましくはθX、θY、およびθZ)方向位置調整機能、基板Wの傾きを補正するためのチルト機能を有していても良い。また、ホスト制御部HPは、検出されたパターンPTに基づいてステージ制御部STCを介して基板ステージSTGの位置合わせをする。
【0018】
位置検出装置200は、スコープSC、計測部AC、および、ホスト制御部HPを備える。位置検出装置200は、基板W(物体)に形成されたパターンPTを検出する。
【0019】
スコープSCは、基板Wに形成されたマーク、凹凸、孔などの形状を有するパターンPTを撮像して、パターンPTを含む画像を取得する撮像手段(撮像部)である。光源LIから発せられた光は、NDフィルタ等のフィルタFLを介して光量が調整され、不図示のファイバや専用光学系でハーフミラーMに導かれ、不図示の投影光学系等を介してパターンPTを照射する。光源LIやフィルタFLの制御は光量調整手段LPにて行われる。パターンPTの像は、ハーフミラーMを通過してマーク撮像用カメラCAM内のフォトセンサSに投影される。フォトセンサSで受光したパターンPTの像は光電変換される。この時、光を蓄積する時間は、ホスト制御部HPよりパターンPTの位置や光量の算出手段としての計測部AC内の計測処理部APに伝えられ、センサ制御部AMPによって制御される。また、光を蓄積するタイミングは、ステージ制御手段としてのステージ制御部STC内のステージ処理部SPより計測処理部APに伝えられ、センサ制御部AMPに指示される。ステージ処理部SPは、基板ステージSTGをモーターMOTで駆動し、位置を干渉計PMで計測する。フォトセンサSで光電変換された信号は、センサ制御部AMPにてA/D変換され、デジタル信号情報である画像として計測部ACへ出力される。
【0020】
計測部ACは、メモリMEM、および、計測処理部APを含む。計測部ACへと出力された検出対象のパターンPTの画像は、メモリMEMに記憶される。メモリMEMに記憶された画像から計測処理部APでパターンPTの検出を行う。パターンPTの検出の手法としてパターンマッチングを用いるため、まず、メモリMEMに記憶された画像と計測処理部APが保存しているテンプレートTPとの相関度を演算器CMPで算出して取得する。その後、算出結果に基づき、第1方向におけるパターンPTを検出する。検出されたパターンPTは、ホスト制御部HPに伝送される。
【0021】
ここで、蓄積型光電変換素子を含むフォトセンサSを用いて撮像された画像を二値化してパターンマッチングを行うことができる。また、濃淡情報を持つ画像のまま、正規化相互相関法などを用いて濃淡情報を持つテンプレートTPとのパターンマッチングを行ってもよい。
【0022】
次に、テンプレートTPを作成する処理について説明する。
図2は、テンプレートTPを作成する処理を示すフローチャートである。このフローチャートでは、ホスト制御部HPによる各部の制御よって実行される例を説明するが、ホスト制御部HPだけに限らず、各ステップのうち少なくとも1つが計測部AC、ステージ制御部STCなどの他の情報処理装置で実行されてもよい。
【0023】
S101において、ホスト制御部HPは、不図示の基板搬送部により基板Wを基板ステージSTGに搬入させる。
【0024】
S102において、ホスト制御部HPは、テンプレートTPを作成するためのパターンPTをスコープSCにより撮像するための位置に基板ステージSTGを移動させる。より具体的には、ホスト制御部HPは、テンプレートTPを作成するためのパターンPTがスコープSCの視野内に入るように基板ステージSTGを移動させる。
【0025】
S103において、ホスト制御部HPは、基板WのパターンPTを撮像して、パターンPTの画像を取得する。ここで、パターンPTの撮像条件として、例えば、パターンPTに照射する光量、フォーカス位置などの条件があり、それらの条件は事前の撮像により決定されているものとする。また、ホスト制御部HPは、外部の装置で撮像されたパターンPTの画像を取得してもよい。
【0026】
ここで、検出対象となるパターンPT(模様)について説明する。
図3は、パターンマッチングの対象となるパターンPTを含む画像を示す図である。XY座標系において画像の中心Oの座標を(0,0)とする。撮像された画像における検出範囲ARに検出対象となるパターンPTが表れる。
図3の例では、パターンPTには5つのパターン要素PT11~PT15(複数のパターン要素、第1乃至5パターン要素)が含まれる。ここでは、パターン要素PT11~PT15の例として、基板Wに形成された円形の孔として説明をするが、孔に限られない。例えば、パターン要素PT11~PT15は、基板Wに形成されたマーク、溝などでもよい。また、
図3の例では、パターン要素PT11~PT15は、撮像された画像において、円形として表れるが、円形に限られない。パターン要素PT11~PT15は、撮像された画像において、半円、楕円、又は三角形、四角形などの多角形など、円形以外の形状として表れてもよい。また、パターン要素PT11~PT15は、撮像された画像において、閉じた領域を有する独立した形状を有し、パターン要素PT11~PT15は、異なる中心、または重心を有する。そのため、パターン要素PT11~PT15のそれぞれは、撮像された画像において、同様の形状であり、異なる位置に配置されているため、1つのパターン要素だけでは、パターンPTの位置を特定することが困難になりうる。
【0027】
ここで、
図2の説明に戻る。S10
4において、ホスト制御部HPは、取得したパターンPTの画像から、パターン要素PT11~PT15のエッジに配置される特徴点を抽出する。ここで、例えば、パターン要素PT11~PT15を撮像した画像をX方向、Y方向に微分することで、パターン要素PT11~PT15のエッジ部分が強調された画像に基づき特徴点を抽出することができる。このエッジ部分が強調された画像における信号強度、予め定められた特徴点の総数から求めた特徴点同士の間隔などに基づいて特徴点を抽出する。本実施形態において特徴点の抽出方法は前述の方法に限定したものではなく、パターンの特徴を示す特徴点を抽出できる方法であればよい。
【0028】
S10
5において、ホスト制御部HPは、テンプレートTPの位置を決定するため、パターン要素PT11~PT15の位置を計測する。テンプレートTPの中心POをパターン要素PT11~PT15の中心とするため、
図3に示す円形状のパターン要素PT11~PT15のそれぞれの中心O1~O5の位置を計測する。中心POの位置の計測方法は、例えば、パターン要素PT11~PT15のそれぞれの中心O1~O5を重心計算で算出して、中心O1~O5の位置の平均位置を複数のパターン要素PT11~PT15の位置として取得する。複数のパターン要素PT11~PT15の位置と重なる位置をテンプレートTPの中心POの位置として決定する。また、例えば、中心O1と中心O5の中間点O15、中心O2と中心O4の中間点O24、及びパターン要素PT13の中心O3の位置の平均値を、複数のパターン要素PT11~PT15の位置としてもよい。
【0029】
S106において、ホスト制御部HPは、S104において抽出した特徴点と、S105において決定された中心POの位置とに基づいて、中心POを原点として特徴点が配置されたテンプレートTPを作成する。
【0030】
ここで、テンプレートTPについて説明する。
図4は、特徴点が配置されたテンプレートTPを示す図である。
図4において特徴点はFP1~FP20(複数の特徴点、第1乃至20特徴点)で示されており、パターンPTの誤検出を抑制するためにパターン要素PT11~PT15のそれぞれに対して複数の特徴点が配置されている。また、
図4の例では、パターン要素PT11~PT15のそれぞれに対して4つずつ、パターン要素PT11~PT15のエッジに配置されているが、特徴点の数と位置はこれに限られない。また、ホスト制御部HPは、特徴点FP1~FP20のそれぞれが、パターン要素PT11~PT15のうちのいずれに対応するかという情報を取得する。特徴点がパターン要素PT11~PT15のうちのいずれに対応するかを判定する方法として、例えば、事前に取得したパターン要素PT11~PT15の設計情報を用いる方法がある。ホスト制御部HPは、パターン要素PT11~PT15の設計情報からパターン要素PT11~PT15のそれぞれが含まれる複数の領域を取得しておく。そして、例えば、パターン要素PT11が含まれる領域に対応するサブテンプレートTP1を定義して、サブテンプレートTP1に対応する特徴点として特徴点FP1~FP4を登録しておく。また、同様にパターン要素PT12~PT15についても対応するサブテンプレートTP2~TP5を定義して、
図4に示されるようにそれぞれのサブテンプレートに対応する特徴点を登録しておく。そして、ホスト制御部HPは、サブテンプレートTP1~TP5のいずれかに含まれるかによって、特徴点がパターン要素PT11~PT15のうちのいずれに対応するかを判別する。なお、
図4の例ではパターン要素PT11~PT15の位置が画像の中心Oに対して対象に配置されているため、テンプレート中心POは画像の中心Oと重なっている。
【0031】
ここで、
図2の説明に戻る。S10
7において、ホスト制御部HPは、作成したテンプレートTPに関する情報をメモリMEM、又は不図示の記憶装置に保存する。
【0032】
また、
図2において、ホスト制御部HPがテンプレートを作成してメモリMEM等に保存するだけでなく、ホスト制御部HPは、例えば、外部の装置で作成されたテンプレートTPに関する情報を取得して、メモリMEM等に保存してもよい。
【0033】
次に、テンプレートTPを用いてパターンを検出する処理について説明する。
図5は、テンプレートTPを用いてパターンを検出する処理を示すフローチャートである。このフローチャートでは、ホスト制御部HPによる各部の制御よって実行される例を説明するが、ホスト制御部HPだけに限らず、各ステップのうち少なくとも1つが計測部AC、ステージ制御部STCなどの他の情報処理装置で実行されてもよい。
【0034】
S201において、ホスト制御部HPは、不図示の基板搬送部により基板Wを基板ステージSTGに搬入させる。ここで、搬入される基板Wには、
図2においてテンプレートTPを作成するために搬入された基板Wと同様のプロセスでパターンPTが形成されているものとする。
【0035】
S202において、ホスト制御部HPは、パターンマッチングによりパターンPTを検出するためのパターンPTをスコープSCにより撮像するための位置に基板ステージSTGを移動させる。より具体的には、ホスト制御部HPは、パターンマッチングにより検出するためのパターンPTがスコープSCの視野内に入るように基板ステージSTGを移動させる。
【0036】
S203において、ホスト制御部HPは、基板WのパターンPTを撮像して、パターンPTの画像を取得する。ここで、S103と同様に、パターンPTの撮像条件は事前の撮像により決定されているものとする。
【0037】
S204において、ホスト制御部HPは、S107において保存されたテンプレートTPの情報を用いて、S203において取得された画像に対してパターンマッチングを実行する。パターンマッチングでは、S203において取得された画像の検出範囲AR内において、テンプレートTPを複数の位置に移動させながら相関度が演算器CMPにより算出される。ここで、例えば、テンプレートTPを検出範囲ARの画像においてX軸方向とY軸方向に順次、移動させながら、テンプレートTPの複数の位置における相関度が算出される。ここで、テンプレートTPに登録された複数の特徴点には、位置とエッジの方向を示す情報が設定されている。そして、複数の特徴点のそれぞれの位置においてエッジ方向を示す情報と合致するエッジが画像に存在するかを判定する。例えば、エッジが存在する場合には100%、存在しない場合には0%として、それぞれの特徴点において算出された値に基づき相関度が算出される。そして、テンプレートTPの複数の位置において算出された相関度のうち、最も相関度が高いテンプレートTPの位置をパターンPTの位置として検出される。
【0038】
ここで、パターンマッチングが行われている際のテンプレートTPとパターンPTとの位置関係について説明する。
図6は、テンプレートTPとパターンPTとの位置関係を示す図である。パターン要素PT21~PT25(複数のパターン要素、第1乃至5パターン要素)はテンプレートを作成したパターン要素PT11~PT15と同じ設計情報に基づき形成されている。しかし、実際に基板Wに形成される際にパターン要素PT21~PT25の形状がパターン要素PT11~PT15とは異なることがある。そのため、テンプレートTPのすべての特徴点がパターン要素PT21~PT25のエッジ上に配置されることがなく、算出された相関度が許容範囲内に収まらないことがある。このような場合、相関度が最も高い位置にテンプレートTPが配置されても、実際のパターンPTの中心は中心Oであるが、パターンマッチングによりテンプレートTPの位置として検出される中心POは中心Oとずれた位置となりうる。また、パターンPTの中心Oを通るX、Y軸も、テンプレートTPの中心POを通るXT、YT軸とずれた位置になりうる。
【0039】
そこで、本実施形態では、相関度が許容範囲内に収まらない場合、テンプレートTPの特徴点の位置を変更する。ここで、
図5の説明に戻る。S205において、ホスト制御部HPは、S204において算出された複数の相関度のうち、最も高い相関度が予め定められた許容範囲内に収まっているか判断する。最も高い相関度が予め定められた許容範囲内に収まっていないと判断された場合、S206において、ホスト制御部HPは、テンプレートTPの特徴点の位置を変更する。S206については後述する。また、最も高い相関度が予め定められた許容範囲内に収まっていると判断された場合、S207において、ホスト制御部HPは、S204において検出されたパターンPTに基づき、基板ステージSTGの駆動を制御する。
【0040】
ここで、同一条件で処理される複数の基板Wからなるロットを処理する場合には、すべての基板WについてテンプレートTPの特徴点の位置を変更する処理を行う必要はない。つまり、ロットに含まれる一部の基板WについてテンプレートTPの特徴点の位置を変更する処理を行い、残りの基板Wについては特徴点の位置が変更されたテンプレートTPを用いてパターンマッチングを行ってもよい。例えば、ロットにおいて最初に処理される基板WについてテンプレレートTPの特徴点の位置を変更する処理を行い、2枚目以降の基板Wについては、特徴点の位置が変更されたテンプレートTPを用いてパターンマッチングを行ってもよい。これにより、テンプレートTPの特徴点の位置を変更する処理を省略することができ、基板Wを処理する時間を短縮することができる。
【0041】
次に、S206におけるテンプレートTPの特徴点の位置を変更する処理について説明する。
図7は、テンプレートTPの特徴点FPの位置を変更する処理を示すフローチャートである。また、この後にパターンマッチングによる検出より取得された位置よりも精度の高い計測により取得されたパターン(マーク)の位置に基づき基板ステージSTGの駆動を制御して、基板ステージSTGの位置合せ(ファインアライメント)を実行してもよい。
【0042】
S301において、ホスト制御部HPは、パターンPTに含まれる複数のパターンのうちのいずれか1つを選択する。
図6の例では、ホスト制御部HPは、パターン要素PT21~PT25のうちの1つを選択する。また、ホスト制御部HPは、パターン要素PT21~パターン要素PT25を順次、選択してもよいし、ランダムな順番で選択してもよい。また、ホスト制御部HPは、パターン要素PT21~PT25をすべて選択するのではなく、パターン要素PT21~PT25の一部の中から選択してもよい。
【0043】
S302において、ホスト制御部HPは、S301において選択されたパターンに対応する複数の特徴点のうち少なくとも1つ以上の特徴点を選択する。
図6において、例えば、パターン要素PT21が選択された場合、パターン要素PT21に対応する特徴点FP1~FP4のうち少なくとも1つ以上の特徴点を選択する。例えば、特徴点FP1、特徴点FP1及びFP3、又は特徴点FP1~FP4が選択される。また、複数の特徴点FP、または複数の特徴点FPの組み合わせを順次、選択してもよい。例えば、特徴点FP1~FP4を順次、選択してもよいし、特徴点FP1及び特徴点FP2の組み合わせと、特徴点FP3及び特徴点FP4の組み合わせとを順次、選択してもよい。
【0044】
S303において、ホスト制御部HPは、テンプレートTPにおいて、S303において選択された特徴点FPの位置を予め定められた複数の位置(第1位置、第2位置)に変更する。このとき、特徴点FPは、パターンの中心(重心)に対して近づく方向、または遠ざかる方向に移動させるとよい。例えば、特徴点FP1の位置を変更する場合、特徴点FP1を+Y軸方向に移動した位置と、特徴点FP1を-Y軸方向に移動した位置とが予め定められるとよい。また、例えば、特徴点FP1及びFP3の位置を変更する場合、特徴点FP1を+Y軸方向に移動して特徴点FP3を-Y軸方向に移動した位置と、特徴点FP1を-Y軸方向に移動して特徴点FP3を+Y軸方向に移動した位置とが予め定められるとよい。また、例えば、特徴点FP1~FP4の位置を変更する場合、それぞれの特徴点FPがパターン要素PT21の中心に対して近づく位置と、遠ざかる位置とが予め定められるとよい。また、特徴点FPを変更する距離も特徴点FPごとに任意の距離を定めてもよく、特徴点FPを移動する方向は同じで互いに異なる距離だけ変更した複数の位置を予め定めてもよい。また、特徴点FPの位置を変更しない位置を予め定めてもよい。
【0045】
S304において、ホスト制御部HPは、特徴点FPの位置を変更したテンプレートTPを用いて、パターンマッチングを行い、パターンPTの位置を検出する。また、ホスト制御部HPは、特徴点FPの位置を変更したテンプレートTPの情報と、パターンPTを検出した時の相関度の情報とを対応付けて、メモリMEM、又は不図示の記憶装置に保存する。
【0046】
S305において、ホスト制御部HPは、予め定められたすべての位置に特徴点を変更して、パターンマッチングを実行したかを判断する。予め定められたすべての位置に特徴点を変更したと判断された場合、ホスト制御部HPは、S306に処理を進める。予め定められたすべての位置に特徴点を変更していないと判断された場合、ホスト制御部HPは、S303に処理を戻す。
【0047】
S306において、ホスト制御部HPは、すべての特徴点FP、またはすべての特徴点FPの組み合わせを選択して、パターンマッチングを実行したかを判断する。すべての特徴点FP、またはすべての特徴点FPの組み合わせを選択されたと判断された場合、ホスト制御部HPは、S307に処理を進める。すべての特徴点FP、またはすべての特徴点FPの組み合わせを選択されていないと判断された場合、ホスト制御部HPは、S302に処理を戻す。
【0048】
S307において、ホスト制御部HPは、S304において保存されたテンプレートTPの情報とそれに対応する相関度の情報に基づき、S301で選択されたパターンPTに対応する特徴点FPの位置を決定する。予め定められた許容範囲内に収まる相関度の情報に対応するテンプレートTPにおける選択されたパターンPTに対応する特徴点FPの位置を、選択されたパターンPTに対応する特徴点FPの位置として決定する。さらに好ましくは、予め定めた許容範囲内に収まる相関度のうち、最も高い相関度の情報に対応するテンプレートTPにおける選択されたパターンPTに対応する特徴点FPの位置を、選択されたパターンPTに対応する特徴点FPの位置として決定する。また、S304におけるパターンマッチングで取得された相関度が予め定められた許容範囲内に収まっている場合には、その時点で特徴点FPの位置を決定して処理を終了してもよい。これにより、残りのパターンについてパターンマッチングをする必要がなく、残りの特徴点、または特徴点の組み合わせについて位置を変更してパターンマッチングをする必要がないので、処理時間を短縮することができる。
【0049】
S308において、ホスト制御部HPは、すべてのパターンPTを選択して、パターンマッチングを実行したかを判断する。すべてのパターンPTが選択されたと判断された場合、ホスト制御部HPは、処理を終了する。すべてのパターンPTが選択されていないと判断された場合、ホスト制御部HPは、S301に処理を戻す。
【0050】
次に、特徴点FPの位置が変更されたテンプレートTPについて説明する。
図8は、特徴点の位置が変更されたテンプレートTPを示す図である。
図8に示された例では、パターン要素PT21、PT22は、
図3におけるパターン要素PT11、PT12より大きさが小さいため、特徴点FP1~FP4はパターン要素PT21の中心に近づく方向に位置が変更される。また、特徴点FP5~FP8はパターン要素PT22の中心に近づく方向に位置が変更される。また、パターン要素PT23は、
図3におけるパターン要素PT13と同じ大きさのため、特徴点FP9~FP12の位置は変更されない。また、パターン要素PT24、PT25は、
図3におけるパターン要素PT14、PT15より大きさが大きいため、特徴点FP13~FP16はパターン要素PT24の中心から遠ざかる方向に位置が変更される。また、特徴点FP17~FP20はパターン要素PT25の中心から遠ざかる方向に位置が変更される。そして、特徴点FPの位置が変更されたテンプレートTPによりパターンマッチングが行われた結果、パターンPTが検出されたときのテンプレートTPの中心POとパターンPTの中心Oとの距離は、
図6における中心POと中心Oとの距離よりも短くなる。つまり、
図7に示した方法により特徴点FPの位置が変更されることにより、パターンマッチングにより検出される位置の精度がよくなる。
【0051】
以上、本実施形態の位置検出装置によれば、複数のパターン要素を有するパターンをより精度よく検出することができる。
【0052】
また、リソグラフィ装置の一例として、露光装置について説明したが、これらに限定されるものではない。リソグラフィ装置の一例として、凹凸パターンを有するモールド(型、テンプレート)を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であっても良い。また、リソグラフィ装置の一例として、凹凸パターンがない平面部を有するモールド(平面テンプレート)を用いて基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置であってもよい。また、リソグラフィ装置の一例として、荷電粒子光学系を介して荷電粒子線(電子線やイオンビームなど)で基板に描画を行って、基板にパターン形成を行う描画装置などの装置であっても良い。
【0053】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置)を用いて基板上にパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。