(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B65D77/04 A
(21)【出願番号】P 2020182839
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 浩通
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-035077(JP,U)
【文献】実開昭51-122838(JP,U)
【文献】特開2020-050425(JP,A)
【文献】特表平06-511218(JP,A)
【文献】特開2020-164202(JP,A)
【文献】特開2006-131234(JP,A)
【文献】特開2019-081595(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
B65D 83/76
A45D 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外容器(10)の内側に内容器(20)が収容された二重容器であって、
前記外容器(10)は、外周面に周設された環状凹部(16)と、内周面に形成された雌ネジ部(18)とを備えた外筒体(11)で形成され、
前記内容器(20)は、内容物(P)が収容される収容部(21)と、前記外容器(10)の外周面に対向配置された状態で周方向に回転可能に設けられた操作筒部(22)と、該操作筒部(22)の下端と前記収容部(21)の外周面に突設された支持突起(21a)とを連結する弾性変形可能な連結部(23)とを有して形成され、
前記支持突起(21a)と前記雌ネジ部(18)とが噛み合う状態で前記外容器(10)の内側に前記内容器(20)が組み付けられており、前記操作筒部(22)を回転させると、前記雌ネジ部(18)によって前記支持突起(21a)がネジ送りされ、前記収容部(21)が移動するように構成されていることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記外容器(10)と操作筒部(22)とが対向する部分に、操作筒部(22)の正方向への回転のみを許容する逆回転防止手段が設けられている請求項1記載の二重容器。
【請求項3】
逆回転防止手段が、互いに対向配置された外筒体(11)の内面と操作筒部(22)の内面の一方に形成された凹凸部(17)と、他方に形成された係止凸部(24)とによって形成されている請求項2記載の二重容器。
【請求項4】
雌ネジ部(18)が多条ネジで形成され、収容部(21)の外周面に前記多条ネジの条数と同数の支持突起(21a)が形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二重容器。
【請求項5】
連結部(23)が円弧状に形成されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーム等が収容される二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薬用又は化粧用のクリーム等の内容物を収容する容器として、外容器の内部に内容物が収容された内容器を有して構成される合成樹脂製の二重容器が広く使用されている。
例えば、以下の特許文献1に記載の二重容器は、内容器を挟持したときに外容器側係止突起と内容器側係止突起とによる係合が容易に外れやすい構造とすることにより、内容器の交換作業をスムーズに行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような二重容器では、内容物は指に付着させて取り出すか、スパチュラ等で取り出すのが一般的であるところ、内容物の取り出しに指を使用するタイプの二重容器では、内容器の底が深すぎると内容物の量が減少した場合に指先が底に届かず、あるいは届いたとしても使用する指以外の指や手のその他の部分に内容物が付着して汚してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、内容物が減少しても底に残留している内容物を最後まで容易に取り出せるようにした二重容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
外容器の内側に内容器が収容された二重容器であって、
外容器は、外周面に周設された環状凹部と、内周面に形成された雌ネジ部とを備えた外筒体で形成され、
内容器は、内容物が収容される収容部と、外容器の外周面に対向配置された状態で周方向に回転可能に設けられた操作筒部と、操作筒部の下端と収容部の外周面に突設された支持突起とを連結する弾性変形可能な連結部とを有して形成され、
支持突起と雌ネジ部とが噛み合う状態で外容器の内側に内容器が組み付けられており、操作筒部を回転させると、雌ネジ部によって支持突起がネジ送りされ、収容部が移動するように構成されていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、内容物が減少した際に、操作筒部を回転させる操作を行うと収容部を上昇させることができるため、指先を収容部の奥深くまで挿入しなくても収容部の底に残留している内容物を容易に取り出すことができる。
【0007】
本発明の他の手段は、上記主たる手段に、外容器と操作筒部とが対向する部分に、操作筒部の正方向への回転のみを許容する逆回転防止手段が設けられている、との手段を加えたものである。
具体的には、上記手段に、逆回転防止手段が、互いに対向配置された外筒体の内面と操作筒部の内面の一方に形成された凹凸部と、他方に形成された係止凸部とによって形成することが可能である。
上記手段では、一度開口端に向かって上昇移動した収容部が下方の位置に戻ることを防止することが可能となるため、使用するたびに収容部を初期状態の下方位置から移動させるという無駄な操作を不要とすることができる。
【0008】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、雌ネジ部が多条ネジで形成され、収容部の外周面に前記多条ネジの条数と同数の支持突起が形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、収容部を多点支持する支持突起を、それぞれネジ送りすることが可能となるため、収容部を傾くことなく安定的に上昇移動させることができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、連結部が円弧状に形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、連結部が弾性変形しながら回転方向に沿って伸長できるため、操作筒部と外容器との連結を維持しながら、操作筒部に与えられた回転力を支持突起に伝達して収容部を上方に向かって移動させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、操作筒部を正方向に回すという簡単な転操を行うことで収容部を開口部側に上昇移動させることができるため、指先を収容部の奥深くまで挿入しなくでも、収容部の底に残留している内容物を最後まで取り出すことができる。よって、内容物が使用する指以外の指や手のその他の部分に付着して汚してしまう虞を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例としての二重容器を構成する外容器を示し、(a)は外容器の平面図、(b)は外容器の部分縦断面図である。
【
図2】本発明の実施例としての二重容器を構成する内容器を示し、(a)は内容器の底面図、(b)は内容器の縦断面図である。
【
図3】内容物が減少する前の初期状態における二重容器を示し、(a)は二重容器の縦断面図、(b)は外容器の内周面と内容器の外周面との関係を示す部分縦断面図である。
【
図4】減少状態にある二重容器を示し、(a)は二重容器の縦断面図、(b)は外容器の内周面と内容器の外周面との関係を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
尚、以下の説明において、正方向とは操作筒部を周方向に回転させたときに収容部が上昇移動する場合の回転方向を意味し、逆方向とは正方向は反対方向となる回転方向を意味する。
【0013】
本発明は、合成樹脂製の外容器10及び内容器20と、これらの上部開口端を閉塞する蓋体(図示せず)を有して構成されるが、以下の説明では本発明の二重容器1を構成する主要部である外容器10及び内容器20を中心に説明する。
【0014】
図1に示すように、外容器10は円筒状の外筒体11を有して構成されている。
外筒体11の外周面の上部には段差部12が形成され、この段差部12の上に外筒体11よりも小さな外形寸法を有して成る口部14が立設されている。そして、この口部14の外周面には図示しない蓋体が螺合するための雄ネジ15が形成されている。口部14の上端は外容器10の開口端10aを形成し、口部14の内側は外容器10の口部内周面10bを構成している。
【0015】
また外筒体11の下部側の外周面には環状凹部16が周設され、この環状凹部16の内部表面には周方向に沿って一定の間隔で配置されて成る凹凸部17(逆回転防止手段)が形成されている。更に外筒体11の内周面には多条ネジ構造(本実施例では3条ネジ構造)を有して構成される雌ネジ部18が形成されている。
【0016】
図2に示すように、内容器20はクリーム等の内容物を収容するカップ状の収容部21と、内容器20の径方向外側の位置に配置された短円筒状から成る操作筒部22と、操作筒部22の下端と内容器20との間を連結する3本の弾性変形可能な連結部23とを有して形成されている。収容部21の外形寸法は、外容器10の口部内周面10bよりも僅かに小さな寸法で形成されている。これにより、内容器20の収容部21の外周面を外容器10の口部内周面10bに密接させることができ、使用中における内容物Pの漏れを防止することが可能となっている。
【0017】
3本の連結部23は円弧状であり、径方向外側の一端23aは操作筒部22の下端に夫々連結され、径方向内側の他端23bは収容部21の外周面に120度の中心角を有して突設された3ケの支持突起21aに夫々連結されている。
また操作筒部22の内周面には、周方向にアンダーカット状に形成されて成る係止凸部24(逆回転防止手段)が複数形成されている。
【0018】
図3(a)に示すように、二重容器1は、内容器20を外容器10の下端側から挿入し、外容器10の内側に組み付けることにより構成される。すなわち、内容器20の収容部21を外容器10の口部14に挿入する、同時に、内容器20の操作筒部22を外筒体11の外周面に対向配置させると共に、操作筒部22の係止凸部24を外筒体11の環状凹部16内に装着して凹凸部17に係合させることにより、二重容器1を初期状態に設定する。
【0019】
内容器20側の操作筒部22の係止凸部24と外容器10側の外筒体11の凹凸部17とは逆回転防止手段を構成している。すなわち、操作筒部22を正方向に回転させた場合には、係止凸部24が凹凸部17を周方向に乗り越えて次の凹凸部17に係合しながら環状凹部16内を周方向に移動できるが、操作筒部22を逆方向に回転させた場合には係止凸部24が凹凸部17を周方向に乗り越えることが不能となることから、これ以上の逆方向への回転は許容されない構成(正方向への回転のみを許容する構成)となっている。
【0020】
また
図3(a)に示すように、初期状態では、収容部21の外周面に120度の中心角で配置された3ケの支持突起21a(
図2(a)参照)が、外筒体11の下部位置にあって、外筒体11の内周面には形成された3条ネジからなる雌ネジ部18に夫々噛み合う状態に設定されている。
【0021】
この初期状態において、収容部21内にクリーム等の内容物が収容され、また図示しない蓋体が口部14に螺合されることにより、二重容器1は商品流通過程に置かれることとなる。
そして、商品を購入した使用者は、従来同様、図示しない蓋体を螺脱させ、指先を口部14内に挿入することにより、クリーム等の内容物を指先に付着させて取り出すことができる。
【0022】
次に、内容物が減少した状態において、収容部21の底に残留した内容物の取り出しについて説明する。
減少状態では、外容器10の開口端10aから収容部21の底21Aまでの高さ方向の距離Hが長くなるため、指先を収容部21の奥深くまで延ばさなければ底21A上に残留している内容物Pを取り出すことができない。
【0023】
そこで、
図4(a)(b)に示すように、一方の手で外容器10の外筒体11を保持すると共に、他方の手で操作筒部22を把持して正方向に回す操作を行うと、係止凸部24が環状凹部16に案内されるため、操作筒部22を周方向にスムーズに回転させることができる。すると、収容部21の外周面に突設されている各支持突起21aが、外筒体11の内周面に形成されている各雌ネジ部18によって相対的に夫々ネジ送りされる。この際、各連結部23が弾性変形しながら回転方向に沿って伸長するため、操作筒部22と外容器10との連結を維持すると共に、操作筒部22に与えられた回転力を支持突起21aに伝達して収容部21を上方に向かって移動(上昇)させることができる。またこの際には、収容部21は3ケの支持突起21aで支持(3点支持)された状態で移動できるため、収容部21を安定的に移動させることが可能である。これにより、外容器10の開口端10aから収容部21の底21Aまでの高さ方向の距離Hを短くすることが可能となるため、指先を収容部21の奥深くまで挿入しなくても底21Aに残留している内容物Pを容易に取り出すことができる。
【0024】
また収容部21の上方への移動量は、内容物Pの残量に応じて、操作筒部22を正方向に回転させる操作量(回転量又は回転角度)を調整することで適宜設定することが可能であることから、使用者は指先を奥深く挿入しなくても必要とする量の内容物を簡単に取り出すことができる。
【0025】
また操作筒部22が回転する際には、上述したように、逆回転防止手段を構成する係止凸部24と凹凸部17とが係止され、一度正方向に回転した操作筒部22が逆方向に回転することが防止されるので、一度開口端10aに向かって上昇移動した収容部21が下方の位置に戻ることがない。よって、使用するたびに収容部21を初期状態の下方位置から移動させるという無駄な操作が不要となるため、この点においても操作性を向上させることができる。
【0026】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば上記実施例では、3条ネジからなる雌ネジ部18と、収容部21の周囲に120度の中心角を有して配置された3ケの支持突起21aとが噛み合う構成の場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その他の多条ネジ及びこの多条ネジの条数と同数から成る支持突起21aから成る構成であってもよい。
【0027】
また上記実施例では、弾性変形可能な連結部として、円弧状の連結部23を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、操作筒部22の下端と収容部21の支持突起21aとの間を連結し且つ弾性変形可能な部材であればその他の形状であってもよい。
【0028】
また上記実施例では、逆回転防止手段として、外容器10側の外筒体11の外周面に凹凸部17を形成し、内容器20側の操作筒部22の内周面に係止凸部24を形成した場合を示して説明したが、外容器10側の外筒体11に係止凸部を形成し、内容器20側の操作筒部22に凹凸部を形成する構成であってもよい。
【0029】
更に上記実施例では、螺合により口部14を閉塞するネジキャップ式の蓋体の場合について説明したが、蓋体はこれに限定されるものではなく、二重容器1の口部4側に設けられた凸部と蓋体側に設けられた凸部とが係合することで閉塞されるタイプの蓋体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、クリーム等の内容物を最後まで取り出したい容器の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 : 二重容器
10 : 外容器
10a: 開口端
10b: 口部内周面
11 : 外筒体
12 : 段差部
14 : 口部
15 : 雄ネジ
16 : 環状凹部
17 : 凹凸部
18 : 雌ネジ部
20 : 内容器
21 : 収容部
21A: 底
21a: 支持突起
22 : 操作筒部
23 : 連結部
23a: 連結部の一端
23b: 連結部の他端
24 : 係止凸部
P : 内容物
H : 開口端から底までの高さ方向の距離