(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/01 213
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021108171
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】梶原 祐人
(72)【発明者】
【氏名】中川 純一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-175595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0155494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の液室からインクが供給され、第1の方向に複数のノズルが配列す
る第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列す
る第2のノズル列と、を備え、前記第1のノズル列に対して前記第2のノズル列が前記第1の方向にずれて配置された記録ヘッドと、
画像データを取得する取得手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1及び第2のノズル列のうち一方のノズル列を使用し、他方のノズル列を使用しないことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記1回の相対走査において、前記バーコードの非エッジ領域に対しては、前記第1のノズル列及び前記第2のノズル列を使用することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のノズル列において、一方のノズル列は前記第1の方向に配列する奇数番目のノズルから構成され、他方のノズル列は偶数番目のノズルから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記画像データから、前記エッジ領域を検出する検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記複数のバーのうち前記第1の方向に延びる辺についてのみ、エッジ領域として検出することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記1回の相対走査により前記エッジ領域に対する記録を完成させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、複数回の相対走査により前記エッジ領域に対する記録を完成させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記複数回の相対走査に対応するパスマスクを用いて前記画像データを分割することにより、前記複数回の相対走査の各々に対応する記録データを生成し、
前記エッジ領域に対しては、前記第1のノズル列に対応する画素に対しては記録を許容し、前記第2のノズル列に対応する画素に対して記録を許容しないように設定されたパスマスクが用いられることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記第1のノズル列と前記第2のノズル列は、前記第2の方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録媒体に対して、前記第2の方向に前記記録ヘッドを移動させるキャリッジを更に備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記第1のノズル列のノズルからインク滴を吐出した場合、前記記録ヘッドにおいて当該吐出動作に係るエネルギーの一部が前記共通の液室を介して伝搬し、前記第2のノズル列のノズルのうち、前記第1の方向において当該吐出動作を行ったノズルと隣接するノズルに供給されたインクを振動させることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
共通の液室からインクが供給され、第1の方向に複数のノズルが配列す
る第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列す
る第2のノズル列と、を備え、前記第1のノズル列に対して前記第2のノズル列が前記第1の方向にずれて配置された記録ヘッドと、
画像データを取得する取得手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1及び第2のノズル列のうち一方のノズル列からインクを吐出する割合と、他方のノズル列からインクを吐出する割合と、の差が第1の値となるように制御し、前記バーコードの非エッジ領域に対しては、前記一方のノズル列からインクを吐出する割合と、前記他方のノズル列からインクを吐出する割合と、の差が前記第1の値よりも小さい第2の値となるように制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
共通の液室からインクが供給され、第1の方向に複数のノズルが配列す
る第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列す
る第2のノズル列と、を備え、前記第1のノズル列に対して前記第2のノズル列が前記第1の方向にずれて配置された記録ヘッドと、前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、を用いたインクジェット記録方法であって、
画像データを取得する取得工程と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御工程と、
を備え、
1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1及び第2のノズル列のうち一方のノズル列を使用し、他方のノズル列を使用しないことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項14】
共通の液室からインクが供給され、第1の方向に複数のノズルが配列す
る第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列す
る第2のノズル列と、を備え、前記第1のノズル列に対して前記第2のノズル列が前記第1の方向にずれて配置された記録ヘッドと、前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、を用いたインクジェット記録方法であって、
画像データを取得する取得工程と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御工程と、
を備え、
1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1及び第2のノズル列のうち一方のノズル列からインクを吐出する割合と、他方のノズル列からインクを吐出する割合と、の差が第1の値となるように制御し、前記バーコードの非エッジ領域に対しては、前記一方のノズル列からインクを吐出する割合と、前記他方のノズル列からインクを吐出する割合と、の差が前記第1の値よりも小さい第2の値となるように制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項15】
共通の液室からインクが供給される複数のノズルが第1の方向に配列された記録ヘッドと、
画像データを取得する取得手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御手段と、
を備え、
第1のノズルからの吐出動作に係るエネルギーの一部が、前記記録ヘッドにおいて前記共通の液室を介して伝搬し、前記第1方向において前記第1のノズルに隣接する第2のノズルに供給されたインクを振動させ、
前記制御手段は、1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1のノズルからインク滴を吐出し、前記第2のノズルからインク滴を吐出しないように前記吐出動作を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記記録ヘッドは、前記第1の方向に複数のノズルが配列する第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列し、前記第1のノズル列に対して前記第1方向にずれて配置された第2のノズル列と、を備え、
前記共通の液室から前記第1のノズル列及び第2のノズル列にインクが供給され、
前記第1のノズルは前記第1のノズル列に含まれ、前記第2のノズルは前記第2のノズル列に含まれることを特徴とする請求項15に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記第1のノズル列は、前記第1の方向において奇数番目のノズルを含み、前記第2のノズル列は、前記第1の方向において偶数番目のノズルを含むことを特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記制御手段は、前記1回の相対走査において、前記バーコードの非エッジ領域に対しては、前記第1のノズル及び前記第2のノズルからインク滴を吐出するように前記吐出動作を制御することを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
共通の液室からインクが供給される複数のノズルが第1の方向に配列された記録ヘッドと、前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、を用いたインクジェット記録方法であって、
画像データを取得する取得工程と、
前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御工程と、
を備え、
第1のノズルからの吐出動作に係るエネルギーの一部が、前記記録ヘッドにおいて前記共通の液室を介して伝搬し、前記第1方向において前記第1のノズルに隣接する第2のノズルに供給されたインクを振動させ、
1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1のノズルからインク滴が吐出され、前記第2のノズルからインク滴が吐出されないことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項20】
前記記録ヘッドは、前記第1の方向に複数のノズルが配列する第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列し、前記第1のノズル列に対して前記第1方向にずれて配置された第2のノズル列と、を備え、
前記共通の液室から前記第1のノズル列及び第2のノズル列にインクが供給され、
前記第1のノズルは前記第1のノズル列に含まれ、前記第2のノズルは前記第2のノズル列に含まれることを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録方法。
【請求項21】
前記第1のノズル列は、前記第1の方向において奇数番目のノズルを含み、前記第2のノズル列は、前記第1の方向において偶数番目のノズルを含むことを特徴とする請求項20に記載のインクジェット記録方法。
【請求項22】
前記1回の相対走査において、前記バーコードの非エッジ領域に対しては、前記第1のノズル及び前記第2のノズルからインク滴を吐出されることを特徴とする請求項19から21のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するためのインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、単位領域に対する複数回の走査により画像を記録する、所謂マルチパス記録方式を実行するインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置は、記録媒体の搬送制御と記録ヘッドを搭載したキャリッジの走査とを繰り返し行うように制御することにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0003】
特許文献1には、記録媒体上にバーコードを記録する記録装置が記載されている。特許文献1に記載されているように、記録媒体上に記録されたバーコードは光学的に読み取られることが想定されているため、記録されるバーコードは高精度なものであることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、インクジェット記録装置で画像を記録する際に、隣接したノズルから同時にインクの吐出動作を行おうとすると、吐出安定性が低下してしまう可能性がある。吐出安定性が低下すると、記録媒体上に着弾する精度が低下し、本来インクを着弾させたい位置からずれた位置に着弾してしまうことが考えられる。
【0006】
このようなインクジェット記録装置を用いてバーコードを記録しようとした場合、着弾位置のずれに起因してバーコードを形成する各バーの幅が変わってしまい、読み取り結果に影響する可能性がある。
【0007】
このような課題に対し、本発明は、バーコードを構成するバーの幅がユーザー所望の幅となるような記録物を記録可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、共通の液室からインクが供給され、第1の方向に複数のノズルが配列する第1ノズル列と、前記第1の方向に複数のノズルが配列する第2のノズル列と、を備え、前記第1のノズル列に対して前記第2のノズル列が前記第1の方向にずれて配置された記録ヘッドと、画像データを取得する取得手段と、前記第1の方向と交差する第2の方向において、記録媒体との相対走査を行う走査手段と、前記記録ヘッドからのインクの吐出動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、1回の相対走査において、前記第1の方向の長さが前記第2の方向の長さよりも長い複数のバーからなるバーコードのエッジ領域に対しては、前記第1及び第2のノズル列のうち一方のノズル列を使用し、他方のノズル列を使用しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、バーコードを構成するバーの幅がユーザー所望の幅となるような記録物を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】記録ヘッド303をノズル形成面から観察した場合の概略図
【
図3】インクジェット記録システムの制御の構成のブロック図
【
図5】画像処理装置が行う画像データ処理のフロー図
【
図6】記録ヘッド303のインクの流れを示すインク流路の断面図
【
図7】インクの着弾精度が低下した場合のバーコードを示した図
【
図8】2値データに対しインク滴の数を割り当てる例を示した図
【
図9】第1の実施形態における吐出安定性を良化させるためのフロー図
【
図10】第1の実施形態においてインクの着弾精度が良化したバーコードを示した図
【
図11】2回に分割して記録を行う場合のパスマスクの例を示した図
【
図12】第2の実施形態における吐出安定性を良化させるためのフロー図
【
図13】記録ヘッド303をノズル形成面から観察した場合の概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
以下より、第1の実施形態について説明する。なお、以下の記載はプリンタ本体内部の画像処理を想定して説明を行うが、これはあくまで実施の1つの形態を例として示したものであり、本発明は以下の実施に限定されるものではない。
【0013】
(インクジェット記録装置の説明)
図1は、本実施形態の記録装置を説明するための図である。本実施形態の記録装置は、所謂シリアル記録方式のインクジェットプリンタであり、記録媒体Pに対する記録ヘッド303の複数回の相対走査によって、単位領域に対する画像の記録を完成させるマルチパス記録を実行する。
【0014】
記録部に給送された記録媒体Pは、搬送経路上に配置された搬送ローラ101と、これに従動するピンチローラ102とのニップ部によって、搬送ローラ101の回転に伴い、図中矢印Y方向(副走査方向)に搬送される。プラテン103は、インクジェット記録方式の記録ヘッド303の吐出口(ノズル)が形成された吐出口面と対向する位置に設けられている。そして、記録媒体Pの裏面を下方から支持することで、記録媒体Pの表面と記録ヘッド303の吐出面との距離を一定に維持する。画像が記録された記録媒体Pは、排出ローラ105とこれに従動する拍車106とにニップされながら、排出ローラ105の回転に伴ってY方向に搬送され、排紙トレイ107に排出される。
【0015】
記録ヘッド303は、吐出口面をプラテン103ないし記録媒体Pに対向させた姿勢で、キャリッジ108に着脱可能に搭載される。キャリッジ108は、キャリッジモータの駆動力により、2本のガイドレール109及び110に沿ってX方向に往復移動する。その移動の過程で、記録ヘッド303が記録信号に応じて吐出口からインク滴を吐出する吐出動作を実行し、記録媒体上にインクを付与する。
【0016】
図2は、記録ヘッド303を吐出口面側から観察した場合の概略図である。本実施形態において、シアンノズル列21、マゼンタノズル列22、イエローノズル列23およびブラックノズル列24は、図のようにX方向に並列している。夫々のノズル列には、インクを吐出するための吐出口(ノズル)が等間隔でY方向に配置されている。
【0017】
また、各吐出口の内部には記録素子が設けられており(不図示)、電気エネルギーによって記録素子が駆動されることで熱エネルギーが生成される。この熱エネルギーによってインクが発泡し、その結果吐出口からインクが滴として吐出される。なお、以降の説明では、簡単のため、同じ色かつ同じ量のインクを吐出する複数の吐出口が並ぶ列をノズル列と称する。
【0018】
キャリッジ108が移動するX方向は、記録媒体が搬送されるY方向と交差する方向であり、主走査方向と呼ばれる。一方、記録媒体が搬送されるY方向は、副走査方向と呼ばれる。そして、キャリッジ108及び記録ヘッド303の主走査である記録を伴う移動と、記録媒体の搬送(副走査)と、を交互に繰り返すことにより、記録媒体Pに段階的に画像が形成されるマルチパス記録が行われる。
【0019】
図14は、マルチパス記録時の記録媒体Pと画像の記録に使用されるノズル(吐出口)との関係を説明するための図である。ここでは、ブラックノズル列24を例に挙げて説明するが、他のノズル列についても同様である。
【0020】
まず、第1走査において、キャリッジ108と共に記録ヘッド303を+X方向(往路方向)に移動させつつ、全ノズルを使用して領域A1に画像を記録する、往路記録を実行する。第1走査の後、記録媒体Pを+Y方向に搬送する。この時の搬送量は、全ノズルに対応する長さである。そして、キャリッジ108と共に記録ヘッド303を-X方向に戻した後、第2走査による往路記録を実行する。第2走査では、再び、キャリッジ108と共に記録ヘッド303を+X方向に移動させ、全ノズルを使用して領域A2に画像を記録する。第2走査の後、記録媒体Pを+Y方向に搬送する。この時の搬送量も、全ノズルに対応する長さである。その後、記録媒体Pを+Y方向に排出し、記録動作を終了する。
【0021】
このように、本実施形態における記録方式は、記録媒体上の所定領域(A1,A2)の画像を記録ヘッド303の片方向の1回の走査によって完成させる1パス片方向の記録方式である。
【0022】
なお、上述の例では、+X方向への第1走査の後、記録動作を伴わない-X方向への走査によって記録ヘッド303を戻し、+X方向への第2走査を行ったが、-X方向への走査の走査を、記録動作を伴う第2走査としても良い。すなわち、第1走査の後にキャリッジ108及び記録ヘッド303を-X方向に戻さず、記録媒体Pを+Y方向に全ノズル長分搬送する。その後、-X方向への第2走査において、全ノズルを利用して領域A2に画像を記録する形態であっても良い。
【0023】
図3は、本実施形態のインクジェット記録システムの制御構成を説明するためのブロック図である。記録装置主制御部301は、記録装置全体を制御し、CPU、ROM、RAMなどによって構成される。記録バッファ302は、記録ヘッド303に転送する前の画像データを、ラスターデータとして格納する。記録ヘッド303は、インク滴を吐出可能な複数のノズルを有するインクジェット記録方式の記録ヘッドであり、記録バッファ302に格納された画像データに従って、各ノズルからインクを吐出する。給排紙モータ制御部304は、記録媒体の搬送や給排紙を制御する。インタフェイス(I/F)305は、I/F信号線313によって画像処理装置と接続され、データ信号を授受する。データバッファ306は、画像処理装置から受信した画像データを一時的に格納する。システムバス307は、記録装置の各機能を接続するバスである。
【0024】
画像処理装置主制御部308は、画像処理装置における画像の作成や画像データの制御を主に司り、CPU、ROM、RAM等から構成される。インタフェイス(I/F)309は、記録装置との間でデータ信号を授受する。表示部310は、ユーザーに対し様々な情報を表示し、例えばLCDなどを適用することが出来る。操作部311は、ユーザーからの操作・指示を受け付けるための操作部であり、例えばキーボードやマウスを適用することが出来る。システムバス312は、画像処理装置主制御部308と各機能とを結ぶバスである。
【0025】
(記録システム概要説明)
図4は、本実施形態の記録システムの概要を説明するためのブロック図である。本図に示す記録システムは、ホストとなるPC401と、PC401から送信された記録データに基づいて画像を記録する記録装置(プリンタ)407と、を備えている。PC401は、アプリケーション402、OS403、プリンタドライバ404、記録データ送信部406から構成される。本実施形態において、プリンタ407に送られる記録データは、バーコードの画像を含む記録データである。
【0026】
アプリケーション402は、画像内にバーコードデータを挿入できるアプリケーションである。プリンタドライバ404からの指示により、OS403が提供する画像処理に必要な機能とアプリケーション402より得られるデータを合わせて記録データへ変換する。
【0027】
プリンタドライバ404は、受け取った記録データをラスタライズ部405において、記録ヘッドに合わせた解像度の画像にラスタライズ(ビットマップ化)し、プリンタが受け取ることができる形の記録データに変換する。変換された記録データは、記録データ送信部406に送られ、プリンタ407に送信される。
【0028】
次に、本実施形態の記録システムにおいて、既定の文字列が、バーコードデータとしてプリンタに送られるまでの過程について説明する。バーコードデータは、バーとスペースの組み合わせで構成される所謂バーコードが含まれる画像データである。そして、バーコード画像は、既定の文字列を、バーコードフォントによって、バーとスペースからなる形式に変換することによって生成される。
【0029】
アプリケーション402に文字列が入力されると、OS403を介して、プリンタドライバ404が呼び出される。そしてプリンタドライバ404に格納されているバーコードフォント情報を要求し、ユーザーが指定のバーコードフォントを設定する。
【0030】
バーコードフォントの情報には、予め登録されている複数のバーコード種類から選択されたバーコードフォント名、バーコードフォントの高さや幅などの情報が含まれる。例えば、JANコードやCODE39、CODE128等である。そして、アプリケーション402から、その設定値と画像データを合わせて、OS403を介してプリンタドライバ404に送られる。
【0031】
その後、ラスタライズ部405において、指定のバーコードフォントを用いて、一次元のバーとスペースの組み合わせからなるバーコードデータにラスタライズされる。ラスタライズされたデータは、プリンタ407が受け取り可能な形の記録データに変換され、記録データ送信部406を介してプリンタ407に送信される。
【0032】
なお、本実施形態では、アプリケーションからOSを介してプリンタドライバのバーコードフォントを呼び出す形式の構成を説明したが、これに限定されるものではない。
【0033】
(全体フロー概要説明)
図5は、本実施形態の画像処理装置が行う画像データの処理を説明するためのフローチャートである。本図に示す処理は、ホストとなるPC401で行っても良く、プリンタ407内で行っても良く、その処理を部分的に分担して実行する形態であっても良い。
【0034】
ステップS501において、画像データが入力される。入力される画像データは、ベクターデータであっても良く、ビットマップデータであっても良い。
【0035】
ステップS502において、入力された画像データがレンダリング処理され、ベクターデータはラスタライズされる。ここでは、画像が記録される記録媒体のサイズに合わせたマッピングや面付けなどが行われる場合もある。
【0036】
なお、マトリクス上に配置された画素のうち、所定方向に並ぶ1列分の画素に対応する画素データをラスターデータと呼ぶ。さらに、その列が複数列並んだものをバンドデータと呼ぶ。プリンタ407においてこれらの画像処理を行う場合には、少ないROMやRAM容量で処理されることがあるが、バンドデータを逐次処理していく構成をとることが多い。
【0037】
ステップS503において、バーコード検出部によりバーコード領域が検出される。ここで、検出されたバーコードの位置を取得する。バーコードデータは、バーコードフォントからラスタライズされて形成される方法でも良く、ビットマップデータやベクターデータとして初めから形成されていても良い。そのため、ステップS502のレンダリング時にバーコード情報を取得しても良く、ビットマップ化した後にエッジ情報などから検出しても良い。また、ユーザーがパネル上やホスト側で指定するなどする方法もあり、本実施形態では限定されない。
【0038】
ステップS504において、エッジ検出部により、バーコードに含まれるバーのエッジ情報が検出される。ここでは、エッジ情報として、バーのエッジ領域に相当する画素と、エッジの内部領域である非エッジ領域に相当する画素の情報が検出される。そして、ステップS503において取得されたバーコードの位置情報と、検出されたエッジ情報とを用いて、後述するバーコードのエッジ領域に対する制御が実行される。エッジ検出処理は、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタ等の既知の手法を用いて行うことができる。エッジ検出処理は、入力された画像データ全域に対して処理を行っても良く、検出されたバーコード領域のみに対して行っても良い。
【0039】
ステップS505において、プリンタ407が記録可能な形式の画像データとするための画像処理が行われる。ここでは、S504において生成された画像データが、プリンタ407の色再現域に対応した画像データに変換される。
【0040】
入力される画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。そして、各8ビットのR、G、Bの入力画像データが、マトリクス演算処理や三次元LUTを用いた処理等の既知の手法によって、プリンタの色再現域の画像データ(R´,G´,B´)に変換される。
【0041】
次に、R´、G´、B´各8ビットの画像データは、プリンタ407で用いられるインク色にそれぞれ対応する色信号データからなる画像データに変換される。本実施形態のプリンタ407は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いて画像を記録する。従って、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、三次元ルックアップテーブルと補間演算を併用して行われる。なお、他の変換手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いても良い。また、インクの色数はK、C、M、Yの4色に限られず、濃度の薄いライトシアン(Lc)やライトマゼンタ(Lm)、グレー(Gy)のインク、透明インクや特色のインクなど、その他の種類のインクをさらに有する形態であってもよい。
【0042】
次に、各8ビットの画像データを補正することにより、記録媒体に記録されるドット数を調整する処理が行われる。記録媒体上に付与されるドット数と、そのドット数で記録媒体上に再現される光学濃度との関係は線形ではないため、線形関係とするための調整である。この調整処理において入力データに対する出力データに変換する方法として、1次元のルックアップテーブル(LUT)を用いることができる。
【0043】
次に、各8ビット256値のインク色の画像データに対して量子化処理が行われる。量子化処理により、各画素に対して記録「1」もしくは非記録「0」を表す1ビットの2値データが生成される。量子化処理の出力は、ある単位面積当たりのインク滴の数としても良く、記録「1」または非記録「0」からなる1ビットの2値データに限定されない。2ビット以上の多値データに量子化される形態であってもよい。また、量子化処理の方法として誤差拡散法やディザ法が知られているが、どのような方法を用いても構わない。
【0044】
そして、ステップS505において生成された画像データに基づいてインクを付与することにより、記録媒体上に画像が記録される。
【0045】
(バーコードの説明)
バーコードは、バーとスペースの組み合わせによって構成され、バーやスペースの形状はそれぞれ平行かつ長方形である。バーやスペースの幅の最小単位は、基本モジュール幅もしくは最小エレメント幅と呼ばれ、この幅を基準に構成される。バーコードの種類によってバーやスペースの幅に特徴があり、バイナリレベルのバーコードでは2段階(基準の2倍まで)の幅から構成され、マルチレベルのバーコードでは4段階(基準の4倍まで)等の複数種類の幅から構成される。一般に、バイナリレベルのバーコードよりもマルチレベルのバーコードの方が、バーの幅の種類が多い。従って、幅のばらつきに対する許容範囲が狭く、より高い記録精度が求められる。
【0046】
バーコードの左右の領域には、クワイエットゾーンと呼ばれる余白領域が必要である。バーコードの種類によって余白領域として必要なサイズは異なるが、余白領域が必要なサイズ未満であると、バーコードとして読み取られない可能性がある。
【0047】
バーコードの読み取り機には赤色の光源が用いられており、その光源からの光がバーコードに向けて照射され、その反射光が読み取られる。従って、バーコードを適切に読み取るためには、バーの領域の色は赤色の波長を吸収する色であり、スペースの領域の色は赤色の波長を反射する色であることが必要である。一般的に、バーコードは黒色のバーと白色のスペースで構成されることが多いが、例えば、青や緑などの赤色の波長を吸収する色でバーを形成し、赤や黄色などの赤色の波長を反射する色でスペースを形成することができる。
【0048】
バーコードの読み取り機がバーコードを適切に読み取るため、記録されたバーコードの品質に求められる要素は、ISO/IEC 15416によって以下のように規格化されている。
【0049】
最小反射率とは、バーコード全体の中の最小の反射率である。最大の反射率の50%以下であれば、バーコードが読み取れることを示す。
【0050】
シンボルコントラストとは、バーコード全体の最大反射率と最小反射率との差である。スペースの最も明るい反射率からバーの最も暗い反射率を引いた値で表され、その値が大きい程、バーコードが読み取りやすいことを示す。
【0051】
最小エッジコントラストとは、スペースの反射率とそれに隣り合うバーの反射率との差の中で最小の値である。最小の値が15%以上であれば、バーコードが読み取れることを示す。
【0052】
モジュレーションとは、シンボルコントラストに対する最小エッジコントラストの比である。スペースの反射率とそれに隣り合うバーの反射率との差が大きい程、バーコードが読み取りやすいことを示す。
【0053】
欠陥とは、バーの中の欠け(ボイド)やスペースの中の汚れ(スポット)である。スペースの中の最大反射率となる1つの山の部分に対して不均一となる様な反対の谷が生じた際に、その山部の最大反射率と谷部の反射率の差が小さい程、バーコードが読み取りやすいことを示す。バーの場合は、スペースの山と谷の部分が反対になる。
【0054】
デコーダビリティとは、各バーコードで定められたデコードルールに従って値を求めるときの余裕度である。各バーとスペースの幅の実測値が理論値に対して近い程、バーコードが読み取りやすいことを示す。
【0055】
(バーコード記録の課題)
上述した要素のうち、インクジェット記録装置において課題となるのはモジュレーションである。インクジェット記録装置では、多くのノズルから同時にインク滴を吐出することで、インクの吐出安定性が低下してしまう場合があり、この結果、モジュレーションに影響する可能性がある。以下に、記録ヘッドの吐出安定性について詳細を説明する。
【0056】
図6は、記録ヘッド303において、液体としてのインクの流れを示すインク流路の断面模式図である。不図示のインクタンクから、インク供給口61を介して共通液室62にインクが供給される。共通液室62に供給されたインクは、流路を介してノズル64aへ充填される。そして、ノズル64aの上部に設けられた、記録素子としてのヒーター63に電圧が印加されることによって発砲が起こり、ノズル64aからインク滴が吐出される。
【0057】
発砲によるエネルギーの多くはインク滴の吐出に変換されるが、エネルギーの一部は、ノズル64aから共通液室62へと伝搬する。そして、伝搬したエネルギーは、共通液室62のインクを振動させ、ノズル64aに隣接するノズル64bに充填されているインクのメニスカス振動にも影響を与える。このように、共通液室62からノズル64a及びノズル64aと隣接するノズル64bにインクが供給されているヘッド構成において、ノズル64aのインク滴の吐出動作によってノズル64bの内部のインクが振動する。この結果、ノズル64bからのインクの吐出動作が不安定となってしまう。
【0058】
図7は、このような吐出安定性の低下によって記録媒体上でのインクの着弾位置がずれた場合を説明するための図である。
図7(a)は、理想的な位置にインク滴が着弾した場合を示しており、
図7(b)は、隣接ノズルの吐出動作の影響を受け、インク滴の着弾位置がずれた場合を示している。
図7(b)では、着弾位置のずれによってバーコードを構成するバーの幅が、画像データ上のバーの幅よりも太くなっている。特に、バーとバーの間のスペース領域をインクが付与されない余白領域で表現する場合には、
図7(a)のように理想的に着弾した場合と異なり、
図7(b)のように、バーの幅が太くなることによってスペース領域が狭められてしまう。
【0059】
バーコード画像は複数のバーと複数のスペースで構成され、バー及びスペースの幅は様々である。特に、幅の狭いスペース領域に隣接するバーにおいて上述の着弾ずれが生じると、スペース領域が潰れ、十分な反射率が得られない。スペースの反射率が低くなったことにより、接するバーの反射率との差が小さくなり、モジュレーションが低下してバーコードを正しく読み取れなくなってしまう。このような課題を解決するための本実施形態の特徴構成について、以下に説明する。
【0060】
(記録制御の説明)
図8(a)は、記録「1」または非記録「0」を表す1ビットの2値データが入力されたときの、単位面積当たりに付与されるインク滴の数を表した図である。本図のように、パターンA及びBの2つを用意する。バーコード画像のバーの非エッジ領域に対しては、パターンA及びBのいずれにおいても、記録「1」の場合に1ドット記録されるように定められている。一方、バーコードのエッジ領域に対しては、記録「1」の場合に、一方のパターンにおいて1ドット記録され、他方のパターンにおいて0ドット記録、すなわち記録されないことが定められている。
【0061】
図8(b)は、入力画像データに割り当てられるパターンであり、このパターンによって、入力値に対してパターンA及びBのどちらが割り当てられるかを制御することができる。本実施形態では、パターンとノズルのピッチとを同期させることにより、対象領域に対して隣接する2ノズルから同時にインクを吐出しないように制御することができる。ここでは、2値データの値が記録を示す「1」の値であったとしても、パターンBの画素に対してはインクが吐出されない。すなわち、エッジ領域に対しては、奇数番目のノズルからのみインクが吐出され、偶数番目のノズルからはインクが吐出されないように制限される。
【0062】
図9は、記録制御部が画像データの記録を行う処理のフローチャートである。
【0063】
ステップS901において、2値データの形式の画像データと、検出されたバーコードのエッジ領域を示す情報が入力される。
【0064】
ステップS902において、各画素について、検出されたバーコードのエッジ領域に該当するかどうかの判定が行われる。
【0065】
ステップS903およびS904において、
図8のように記録パターンが割り当てられ、単位面積当たりに付与されるインク滴の数が決定する。この結果、バーコードの非エッジ領域に対しては、記録を示す「1」の画素に1ドット付与されるが、バーコードのエッジ領域に対しては、記録を示す「1」の画素であってもドットが付与されない画素が発生する。
【0066】
最後にステップS905において、割り当てられたインク滴の数に応じた記録が行われ、インクが付与される。
【0067】
図10は、記録媒体上に記録されたバーコードのドット配置を示す図である。バー領域1001及びバー領域1003のエッジ領域に対し、図の縦方向に隣接する2ノズルから同時にインクが吐出されないよう、制限されている。人間の目で見た場合、バーのエッジ領域において縦方向の直線性が失われると、バーコードとしての読み取り精度が低下するように感じられる。しかし、バーコードにはエッジ領域の縦方向の直線性は不要であるため、このような処理を行っても読み取り精度が低下することはない。
【0068】
上述したように、インクジェット記録装置において、隣接する2ノズルから同時にインクを吐出しようとした場合に吐出が不安定になり、着弾精度が低下する。これに対し、隣接する2ノズルからの同時吐出を制限することによって、吐出を安定させ、着弾精度の低下を抑制することが可能になる。このように両側のバーのエッジ領域に対する着弾ずれを抑制することで、バーに隣接するスペース領域1002の反射率の低下を抑制することができる。また、本実施形態では、バーのエッジ領域以外の領域に対しては、隣接した2ノズルからの同時吐出を制限しないように制御する。これは、バーコードに求められる要素の1つであるモジュレーションは、スペースの反射率と、それに隣り合うバーの反射率との差が大きい方が良いためである。バーのエッジ領域以外の領域に対しては、隣接する2ノズルから同時吐出を行うことにより、バー領域の反射率を下げることができ、バーコードを読み取る際のモジュレーションの低下を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては隣接する2つのノズルからの同時吐出を制限するための構成として、インクを付与するかどうかを示す2値の記録データを変更したが、他の方法でも同様の効果を得ることが可能となる。例えば、ステップS505において、画像処理部が1次元のルックアップテーブル(LUT)を用いて記録媒体に記録されるドット数を調整する際、バーコードのエッジ領域であるかの情報に基づいて調整後の値が異なるLUTに切り替える方法でもよい。また、量子化処理を行う際、バーコードのエッジ領域であるかの情報に基づいて、隣接する2ノズルのうちの一方のノズルに該当する画素が非記録「0」となるように量子化処理を行う方法でもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、バーコードのエッジ情報としてエッジ領域と非エッジ領域を検出したが、バーコード以外の領域については、バーコードの非エッジ領域と同様の処理を行うことが好ましい。すなわち、バーコードのエッジ領域に対してのみ、隣接する2ノズルからの同時吐出を制限し、他の領域については制限しなくてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、エッジ検出フィルタ等を用いてバーコードのエッジ領域を抽出し、エッジ領域に対して隣接する2ノズルからの同時吐出を制限したが、エッジ領域全てに対して制限する必要はない。本発明が課題とするのは、複数のノズルが配列する方向であるY方向に延びるエッジ領域におけるインクの滲みである。従って、Y方向に延びるバー、すなわち、Y方向の長さがX方向の長さよりも長いバーとスペースからなるバーコードのエッジ領域のみを検出する形態であってもよい。また、X方向のエッジについては滲みに起因する読み取り時の課題は生じないため、各バーのY方向に延びる辺(
図7の上下方向)についてのみをエッジ領域として検出する形態であってもよい。
【0072】
また、バーコードは、光が照射された箇所の反射光が読み取られる構成であり、バーコードのエッジ領域の大半の部分において隣接するノズルからの同時吐出が制限できていれば良い。例えば、エッジ領域のうち一部分に隣接するノズルからの同時吐出が行われたとしても、本実施形態の効果を得ることができる。
【0073】
図8に示した例では、パターンAが割り当てられる奇数番目のノズルからインクが吐出され、パターンBが割り当てられた偶数番目のノズルからインクが吐出されないように制御される。従って、同時吐出されるインクのうち、奇数番目のノズルからインクが吐出される割合が100%、偶数番目のノズルからインクが吐出される割合が0%である。上述したように、同時吐出による影響を抑えることができれば、奇数番目ノズルと偶数番目のノズルのうち一方を0%としなくてもよい。偶数番目のノズルからインクが吐出されてもよい。本実施形態では、非エッジ領域に対して奇数番目のノズルからインクが吐出される割合が100%であり、偶数番目のノズルからインクが吐出される割合が100%であり、その差は0%である。一方、エッジ領域に対して奇数番目のノズルからインクが吐出される割合が100%であり、偶数番目のノズルからインクが吐出される割合が0%であり、その差は100%である。エッジ領域に対して隣接する2ノズルからインクが吐出される割合の差が、非エッジ領域に対して隣接する2ノズルからインクが吐出される割合の差よりも大きいことが好ましい。なお、奇数番目のノズルと偶数番目のノズルとの関係は逆であってもよく、エッジ領域に対して偶数番目のノズルから多くインクが吐出される形態であってもよい。
【0074】
また、本実施形態では、8ビット256値の画像データに対して、記録を示す「1」または非記録を示す「0」の2値データに量子化される形態について説明したが、3値以上の多値データに量子化する形態であってもよい。多値データに量子化された場合、多値データの1画素をさらにインデックスを用いてさらに複数画素に変換することで、2値の記録データを生成することができる。例えば、多値データの1画素を、縦2画素×横2画素の4画素の記録または非記録のデータを生成する。このインデックス展開を行う際に、バーコードのエッジ領域に対しては同時吐出が行われないようなインデックスを適用してもよい。例えば、縦2画素×横2画素からなる4画素の記録データにおいて、隣接する2つのノズルのいずれか一方のみからインクが吐出され、他方からはインクが吐出されないようなデータが生成されるインデックスを適用することができる。すなわち、上2画素もしくは下2画素のいずれか一方のみにインクの吐出を示すデータが入るようなインデックスを用いることで、同時吐出を制限することが可能である。
【0075】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態との差分となる構成について説明する。第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付してその詳細説明を省略し、異なる部分についてのみ詳細な説明を加える。
【0076】
第1の実施形態では、バーコードのエッジ領域を検出し、1回の走査で隣接する2ノズルから同時にインクを吐出しないように制限することで吐出安定性を高め、1回の走査でバーコード画像の記録を完成させる、所謂1パス記録を行った。本実施形態では、画像データを複数回の走査に分割し、複数回の走査で画像を記録する、所謂マルチパス記録によりバーコード画像の記録を完成させる構成について説明する。
【0077】
図11は、2回の走査に分割して記録する際に、画像データを分割するために用いるパスマスクを示す図である。
図11(a)は、バーコードの非エッジ領域に対して用いられるパスマスクであり、
図11(b)は、バーコードのエッジ領域に対して用いられるパスマスクである。斜線で示された画素は、その走査においてインクの付与が許容される記録画素、白い画素はインクの付与が許容されない非記録画素が設定されている。2つのマスクは排他の関係になっており、2回の走査で全ての画素に記録を行うことが可能である。
【0078】
図11(a)において、バーコードの非エッジ領域に対する1回目の走査時は、マスク1101を用いて生成された記録データに基づいて記録され、2回目の走査時は、マスク1102を用いて生成された記録データに基づいて記録される。
図11(b)において、バーコードのエッジ領域に対する1回目の走査時は、マスク1103を用いて生成された記録データに基づいて記録され、2回目の走査時は、マスク1104を用いて生成された記録データに基づいて記録される。このエッジ領域に対する各走査の記録において、隣接する2ノズルからの同時吐出が行われないように、各マスクの記録画素及び非記録画素が配置されている。
【0079】
図12は、本実施形態における画像データの記録を行う処理のフローチャートである。
【0080】
ステップS1201において、2値データの形式の画像データと、検出されたバーコードのエッジ領域を示す情報が入力される。
【0081】
ステップS1202において、単位面積当たりに付与されるインク滴の数が決定される。本実施形態においては、バーコードのエッジ領域であるか非エッジ領域であるかにかかわらず、記録を示す「1」の画素に対して1ドット付与される。
【0082】
ステップS1203において、各画素について、バーコードのエッジ領域に該当するかどうかの判定が行われる。
【0083】
ステップS1204およびS1205において、2値データに対してパスマスクが割り当てられる。この処理により、バーコードのエッジ領域に対しては、同一走査において隣接した2ノズルからの同時吐出が行われないように設定されたパスマスクが割り当てられる。
【0084】
最後にステップS1206において、2回の走査に対応する各記録データに基づいて、画像が記録される。
【0085】
本実施形態では、バーコードのエッジ領域に対し、一回の走査中に隣接する2ノズルからの同時吐出が行われないように記録画素と非記録画素が配置されたパスマスクが用いられる。隣接する2ノズルからの同時吐出が行われないように制限されたことにより、各ノズルからのインクの吐出動作が安定し、着弾精度の低下を抑制することができる。
【0086】
また、画像データを複数回の走査に分割して記録することにより、隣接する2ノズルからの同時吐出に制限を加えても、記録媒体上に付与される総ドット数を維持することができる。従って、バーコードに求められる要素の1つであるモジュレーションに対し、バー領域の反射率を下げたまま、スペース領域の反射率を上げることが可能となり、読み取り精度を維持することが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態においては、画像データを分割して2回の走査でバーコードを含む画像を記録する構成について説明したが、3回以上の走査に分割して記録する構成に対しても同様に適用可能である。すなわち、一回の走査で隣接する2ノズルからの同時吐出を制御することで、インク吐出安定性を得つつ、高画質なバーコード画像を得ることができる。
【0088】
(その他の実施形態)
前述の実施形態では、隣接する2ノズルからの同時吐出を制限することで吐出安定性を維持する方法について説明を行った。記録ヘッドのノズル間隔や液室までの流路長によっては、共通液室を介したインクの振動が2つ以上離れたノズルの吐出動作にまで影響する可能性がある。本発明は、吐出動作に影響を与える範囲のノズルについて、同時吐出を制限する形態であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、隣接する2ノズルから同時吐出を行わないように制限したが、記録媒体上でノズル配列方向(図中Y方向)に並ぶ同一列(同一カラム)の画素に対してインクを吐出することを同時吐出と定義した。記録ヘッドの駆動周波数やインクの組成によって隣接ノズルからのインクの振動の影響の程度が異なるため、X方向における1画素分の記録に対する隣接ノズルの吐出制限だけでは課題を解決できない可能性がある。このため、X方向に連続する2画素以上の領域について同時吐出を制限する構成であってもよい。
【0090】
また、複数のノズル列が共通の液室に接続された構成においても、同様の課題が生じる可能性がある。例えば、
図13に示すように、偶数番目のノズルからなるノズル列と奇数番目のノズルからなるノズル列が共通液室に接続され、X方向にずれて配置された構成の記録ヘッドにおいても、本発明を適用可能である。このとき、インクの同時吐出による影響が及ぶのは、共通液室上での隣接する2ノズル間のインクの吐出動作であると考えられる。例えば、ノズル群1321に含まれる2列のノズル列が1つの共通液室からインクが供給されている場合、ノズル1321aに吐出動作によって、ノズル1321bの吐出動作にも影響が及ぶと考えられる。すなわち、同一の共通液室からインクが供給される複数列のノズル列については、図のY方向における位置が隣接する2ノズル(本図の場合はノズル1321aとノズル1321b)について、同時吐出を制限することが必要である。
【0091】
なお、上述の実施形態では、インクを吐出するための記録素子として電気熱変換素子を用いたサーマル方式の記録ヘッドについて説明を行ったが、圧電素子に対して電圧を加えることで体積を変化させてインクを吐出するピエゾ方式の記録ヘッドであってもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、複数のノズルが並ぶ記録ヘッドをノズルの配列方向と交差する方向に走査させて画像を記録する、所謂シリアル記録方式のインクジェット記録装置についての説明を行った。本発明は、記録媒体と記録ヘッドとの相対走査によって画像が記録される形態に適用可能である。例えば、ノズルの配列方向と交差する方向に記録媒体が搬送され、記録媒体の幅全域に対して1回の走査で画像を記録可能なラインヘッドを用いて画像を記録する、所謂フルマルチ形式のインクジェット記録装置に適用しても構わない。フルマルチ形式のインクジェット記録装置の場合においても、ノズルが並ぶ方向にバーが延びるバーコードについて、上記構成を適用することが好ましい。
【0093】
また、上述の実施形態では、バーコードのエッジ領域の幅を1画素として説明を行ったが、エッジ領域として検出する画素数は2画素以上であっても良い。この場合、ノズル配列方向に並ぶ1画素分の領域について、隣接する2ノズルの同時吐出の制限をすることが好ましい。すなわち、エッジ領域に対して隣接する2ノズルからインクを吐出する割合の差が、非エッジ領域に対して隣接する2ノズルからインクを吐出する割合の差よりも大きくなることが好ましい。
【0094】
また、第1の実施形態の構成と、第2の実施形態の構成を組み合わせて、複数回の走査に分割して記録を行った上で記録媒体上にも記録を行わないような制御を行うことでも実現可能である。
【符号の説明】
【0095】
101 搬送ローラ
108 キャリッジ
303 記録ヘッド
401 PC
407 プリンタ