(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ブレ補正制御装置、撮像装置及びブレ補正制御方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240112BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20240112BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240112BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240112BHJP
H04N 23/667 20230101ALI20240112BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/18
H04N23/68
H04N23/63
H04N23/667
(21)【出願番号】P 2019215447
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】梶村 文裕
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-126164(JP,A)
【文献】特開2012-095206(JP,A)
【文献】特開2010-171564(JP,A)
【文献】特開2012-004899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0124064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00-5/08
G03B 17/18
H04N 23/68
H04N 23/63
H04N 23/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を備える撮像装置により撮像されたライブビュー画像と、前記撮像装置の姿勢の検出結果に基づいて前記撮像装置の姿勢を示すガイドと、を表示可能な表示手段に対して、前記ガイドを表示させるモードと、前記ガイドを表示させないモードとを設定可能な設定手段と、
前記撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正を制御するブレ制御手段と、を備え、
前記ブレ制御手段は、前記ガイドを前記表示手段に表示させるモードが設定されている場合、前記ガイドを前記表示手段に表示させないモードが設定されている場合よりも、ライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを低くすることを特徴とするブレ補正制御装置。
【請求項2】
前記撮像装置のユーザーの視線の検出結果を取得する取得手段を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により前記ガイドを表示させるモードが設定されており、且つ、前記取得手段により取得したユーザーの視線が前記ガイドの表示位置と一致する場合、前記ガイドを表示しないモードが設定されている場合よりも、ライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを低くすることを特徴とする請求項1に記載のブレ補正制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記設定手段により、前記表示手段によるライブビュー表示中に前記ガイドを表示させるモードが設定されている場合、前記姿勢の検出結果が示す前記撮像装置の姿勢に応じて前記回転ブレの補正度合いを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレ補正制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記姿勢の検出結果が示す前記撮像装置の姿勢の、水平方向に対する傾きが閾値以下であるか否かを判定し、
前記設定手段により前記ガイドを表示させるモードが設定されており、且つ、前記傾きが閾値より大きいと判定した場合、前記ガイドを表示させないモードが設定されている場合よりもライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを低くすることを特徴とする請求項3に記載のブレ補正制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記設定手段により前記ガイドを表示させるモードが設定されており、且つ、前記傾きが前記閾値以下であると判定した場合、前記傾きが前記閾値より大きいと判定した場合よりもライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを高くすることを特徴とする請求項4に記載のブレ補正制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記設定手段により前記ガイドを表示させるモードが設定されており、且つ、前記傾きが前記閾値以下であると判定した場合、ライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを、前記ガイドを表示させないモードが設定されている場合以下とすることを特徴とする請求項5に記載のブレ補正制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
撮影準備指示に応じて、前記撮影準備指示が入力される前よりも前記回転ブレの補正度合いを高くすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のブレ補正制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記ガイドを表示させるモードが設定されている場合、
前記ライブビュー表示中は前記回転ブレの補正量の上限を、
前記ガイドを表示させないモードが設定されている場合の上限よりも小さくすることで前記補正度合いを低くすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のブレ補正制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記ガイドを表示させるモードが設定されている場合、前記ライブビュー表示中は前記補正手段による前記回転ブレの補正を停止することを特徴とする請求項8に記載のブレ補正制御装置。
【請求項10】
前記ガイドは、前記撮像装置の傾き量を示す情報を表示し、
前記制御手段は、
前記ガイドを表示させるモードが設定されている場合、前記ライブビュー表示中は前記補正手段による前記回転ブレの補正量の上限を、前記ガイドにより表示可能な傾きの角度の分解能に対応する補正量よりも小さい値とすることで前記補正度合いを低くすることを特徴とする請求項8に記載のブレ補正制御装置。
【請求項11】
前記ブレ制御手段により制御される補正手段は、光軸に垂直な方向を中心とする第2の回転ブレの補正が可能であり、前記ガイドを表示させるモードが設定されている場合と前記ガイドを表示させるモードが設定されていない場合との前記第2の回転ブレの補正度合いの差は、前記光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正度合いの差よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のブレ補正制御装置。
【請求項12】
撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を備える撮像装置により撮像されたライブビュー画像を表示手段に表示させるように制御する表示制御手段と、
前記撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正を制御するブレ制御手段と、
前記撮像装置の姿勢の検出結果を取得し、検出結果が示す前記撮像装置の姿勢に基づいて、前記撮像装置の水平方向に対する傾きが閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記ブレ制御手段は、
前記撮像装置による静止画撮影前のライブビュー表示中において、
前記判定手段により、前
記傾きが
前記閾値以下である
と判定される前の前記回転ブレの補正度合いを、前
記傾きが
前記閾値以下であると判定された後の前記回転ブレの補正度合いよりも低く
し、
前記静止画撮影時の前記回転ブレの補正度合いを、前記傾きが前記閾値以下であると判定された後の前記回転ブレの補正度合いよりも低くしないことを特徴とするブレ補正制御装置。
【請求項13】
前記ブレ制御手段は、
前記回転ブレの補正量の上限を小さくすることで前記補正度合いを低くすることを特徴とする請求項12に記載のブレ補正制御装置。
【請求項14】
前記ブレ制御手段は、
ライブビュー表示中に前記傾き検出手段により前
記傾きが前記閾値以下になったと判定されると、前記回転ブレの補正を開始することを特徴とする請求項13に記載のブレ補正制御装置。
【請求項15】
前記ブレ制御手段は、
補正する前記回転ブレの周波数帯域を狭くすることで、前記補正度合いを低くすることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のブレ補正制御装置。
【請求項16】
前記撮像素子と、
前記姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記ライブビュー画像を表示する表示手段と、
前記回転ブレを補正する補正手段と、
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のブレ補正制御装置と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
前記補正手段は、前記撮像素子を前記撮像光学系の光軸に垂直な平面において回転移動させることで前記光軸に平行な軸を中心とした回転ブレを補正することを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記補正手段は、電子的に前記回転ブレを補正する手段であることを特徴とする請求項16に記載の撮像装置。
【請求項19】
撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を備える撮像装置により撮像されたライブビュー画像と、前記撮像装置の姿勢の検出結果に基づいて前記撮像装置の姿勢を示すガイドとを表示可能な表示手段に対して、前記ガイドを表示させるモードと、前記ガイドを表示させないモードとを設定する設定工程と、
前記撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正を制御するブレ制御工程と、を有し、
前記ブレ制御工程において、前記ガイドを前記表示手段に表示させるモードが設定されている場合、前記ガイドを前記表示手段に表示させないモードが設定されている場合よりも、ライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを低くすることを特徴とするブレ補正制御方法。
【請求項20】
撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を備える撮像装置により撮像されたライブビュー画像を表示手段に表示させるように制御する表示制御工程と、
前記撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正を制御するブレ制御工程と、
前記撮像装置の姿勢の検出結果を取得し、検出結果が示す前記撮像装置の姿勢に基づいて、前記撮像装置の水平方向に対する傾きが閾値以下であるか否かを判定する判定工程と、を有し、
前記ブレ制御工程は、
前記撮像装置による静止画撮影前のライブビュー表示中において、前記判定工程により、前
記傾きが
前記閾値以下である
と判定される前の前記回転ブレの補正度合いを、前
記傾きが
前記閾値以下であると判定された後の前記回転ブレの補正度合いよりも低く
し、前記静止画撮影時の前記回転ブレの補正度合いを、前記傾きが前記閾値以下であると判定された後の前記回転ブレの補正度合いよりも低くしないことを特徴とするブレ補正制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレ補正制御装置、撮像装置及びブレ補正制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラで撮影する際、撮影者の手ブレの影響により生じ得る画像の劣化を防止する手ブレ補正手段として様々な方式が提案されている。手ブレ補正手段の方式として、補正レンズを光軸に対して略直交する方向にシフトさせる光学手ブレ補正方式や、撮像素子を光軸に対して略直交する方向にシフトさせる撮像面(センサ)手ブレ補正方式、電子手ブレ補正方式が知られている。また、撮像面手ブレ補正方式においては、撮像素子を撮像光学系の光軸に平行な軸に対して回転させることで、光軸に平行な軸を中心とした回転ブレ(以下、ロールブレ)を補正することができる方式も提案されている。特許文献1には、光軸方向のロールブレを補正する機構を有する撮像装置が記載されている。
【0003】
一方、撮影時に撮像装置が水平方向に対して傾いていることをユーザーに報知する手段として、水平方向に対する傾き情報を表示部に表示する機能(水準器機能)を有する撮像装置が提案されている。ユーザーは、傾き情報を見ながら撮像装置の傾きを補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の撮像装置で水準器機能を実行すると、次のような課題がある。特許文献1のロールブレを補正する機構を有する撮像装置において、静止画撮影露光前に、表示部の傾き情報を見ながら構図を調整するライブビュー状態からロールブレを含む手ブレ補正を行なうことが考えられる。この時、ユーザーが傾き情報を見てカメラの傾きを調整しようとした場合でも、ユーザーがカメラを傾けた動作をロールブレとして検出し、ロールブレ補正を行なってしまい、ユーザーによる傾きの調整動作を妨げる可能性がある。
【0006】
そこで本発明では、ロールブレを補正する機能を有する撮像装置において、ユーザーによる傾き調整動作を妨げにくい撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのブレ補正制御装置は、撮像光学系からの光を撮像する撮像素子を備える撮像装置により撮像されたライブビュー画像と、前記撮像装置の姿勢の検出結果に基づいて前記撮像装置の姿勢を示すガイドと、を表示可能な表示手段に対して、前記ガイドを表示させるモードと、前記ガイドを表示させないモードとを設定可能な設定手段と、前記撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とした回転ブレの補正を制御するブレ制御手段と、を備え、前記ブレ制御手段は、前記ガイドを前記表示手段に表示させるモードが設定されている場合、前記ガイドを前記表示手段に表示させないモードが設定されている場合よりも、ライブビュー表示中の前記回転ブレの補正度合いを低くすることを特徴とする。本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロールブレを補正する機能を有する撮像装置において、ユーザーによる傾き調整動作を妨げにくい撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施例における撮像装置の構成を示す図
【
図2】第1の実施例における表示部及び傾き情報の表示例を示す模式図
【
図3】第1の実施例における撮像装置の動作を示すフローチャート
【
図4】第2の実施例における撮像装置の構成を示す図
【
図5】第2の実施例における撮像装置の動作を示すフローチャート
【
図6】第3の実施例における撮像装置の動作を示すフローチャート
【
図7】変形例における撮像装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する一実施形態は、交換レンズ(レンズユニット)をカメラに装着することで撮像可能なレンズ交換式のデジタルカメラに本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、撮像光学系の光軸に平行な軸を中心とする回転ブレを補正する機能と、撮像装置の水平方向に対する傾き(姿勢)に関する情報を表示する機能とを備える任意の機器に適用可能である。例えば、レンズ一体型のデジタルカメラや、ビデオカメラ、撮影機能付きのスマートフォンやゲーム機器に適用することもできる。
【0011】
<第1の実施例>
以下、
図1から
図4を参照して、本発明の第1の実施例に係る撮像装置について説明する。
【0012】
[撮像システムの構成]
図1は、本実施例に係る撮像装置の構成を示す図である。本実施例の撮像装置は、カメラ1に交換レンズ3を装着することで構成される。
図1(a)は本実施例に係る撮像装置ブロック図であり、
図1(b)は撮像装置の中央断面図である。
図1(a)および
図1(b)で同一の符号が付してあるものはそれぞれ対応している。
【0013】
カメラ1は、交換レンズ3を通過した光線を受光する撮像素子11、撮像素子11で光電変換された情報から画像を生成する画像処理部12、画像情報などの情報が記録されるメモリ部13、撮像素子11への光線の遮光・通過を制御するシャッター14を備える。カメラ1はさらに、ユーザーの操作を認識する操作部15、画像などの表示を行う表示部16、ファインダ光学系21を有する。表示部16は、
図1(b)で示すようにカメラ1の背面に配された背面液晶部16aとファインダ光学系21に配され接眼レンズ21aから覗くことができるファインダ表示部16bを有する。ファインダ光学系21とファインダ表示部16bとで、電子ビューファインダを構成することができる。表示部16は、撮像素子11により撮像されたライブビュー画像と、後述のカメラ1の姿勢を示すガイドとを表示可能である。表示部16による表示は、表示制御手段23により制御され、ユーザーは背面液晶部16aとファインダ表示部16bのどちらにライブビュー画像やガイドやカメラの設定に関する情報等の表示を行うかを任意に切替えることができる。
【0014】
カメラ1はさらに、撮像素子11を撮像光学系32の光軸31に垂直な平面(xy平面)において並進移動及び回転移動させることが可能なブレ補正手段17を備える。ブレ補正手段17は、各種モータなどのアクチュエータを有し、撮像素子11を基準位置からXY平面内で並進移動させるとともにZ軸(光軸に平行な方向)を中心として回転移動させることができる機構である。
【0015】
カメラ1はさらに、カメラ1の回転ブレの角速度を検出するジャイロセンサ18、カメラ1にかかる加速度成分を検出する加速度センサ19、ブレ補正手段17を制御するブレ補正制御手段24を有する。ブレ補正制御手段24は、ジャイロセンサ18の検出結果に基づいてブレ補正手段17を制御することで、手ブレ補正を行う。手ブレ補正の詳細については後述する。さらに、カメラ1は、カメラ全体の制御を司るカメラシステム制御部10を有する。なお、表示制御手段23およびブレ補正制御手段24はカメラシステム制御部10の中に包括される。
【0016】
交換レンズ3は撮像光学系32、撮像光学系32が有するフォーカスレンズや絞りを駆動させるレンズ駆動手段33、交換レンズ全体の制御を司るレンズシステム制御部30を有している。レンズシステム制御部30からの命令に基づきレンズ駆動手段33により撮像光学系32の調整が行われる。また、カメラ1と交換レンズ3は電気的に接続されるレンズ接点20を介して電気的な信号のやり取りを行うことができる。
【0017】
シャッター14はフォーカルプレーンシャッターを用いることができる。また、シャッタ-14は先幕と後幕からなるシャッター幕を有し、それぞれのシャッター幕をシャッター開口部内で走行させることで、撮像光学系32からの撮像素子11への光線の遮光及び通過を制御する。シャッター14はカメラシステム制御部10により駆動が制御される。
【0018】
交換レンズ3の撮像光学系32及びシャッター14の開口を通過し撮像素子11で受光した光線を光電変換することで、撮影が行われ、不図示のA/D変換器により光電変換出力に対し量子化処理が行われる。画像処理部12は、内部にホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、カメラシステム制御部10の命令を受けて、撮像素子11の撮影動作により取得した信号から画像データを生成する。画像処理部12で生成されたデータは、メモリ部13で記憶される。また、ライブビュー表示用の画像(ライブビュー画像と呼ぶ)も同様に、撮像光学系32とシャッター14の開口を通過した光が光電変換され、A/D変換、各種画像処理を経て生成される。
【0019】
カメラシステム制御部10はCPU(中央演算処理装置)等を備え、交換レンズ3との通信を含むカメラ1の制御を統括する。カメラシステム制御部10は、撮像の際のタイミング信号等を生成して各部に出力する。カメラシステム制御部10は、操作部15に含まれるレリーズ釦が押下され操作指示を受け付けた場合、該指示に応じて撮像素子11の制御及び、レンズシステム制御部30へ命令信号を送信する。レリーズ釦は押し込み量が1段階目のいわゆる半押し動作と、そこからさらに押し込んだ押し込み量が2段階目のいわゆる全押し動作を検出することができる。カメラシステム制御部10は、レリーズ釦の半押し動作を検出すると、ユーザーから撮影準備指示が入力されたと判断し、オートフォーカス(以下、AF)動作などの撮影準備動作を開始させ、撮像装置は撮影準備状態となる。さらにその状態からレリーズ釦の全押し動作が検出されるとシャッター14を駆動させて静止画撮影の露光動作を開始する。
【0020】
[手ブレ補正動作]
次に、手ブレ補正動作について説明する。カメラ1は、ブレ補正制御手段24が、ジャイロセンサ18の検出結果に基づいてブレ補正手段17を制御することで、手ブレ補正を行う。ジャイロセンサ18は角度ブレセンサであり、カメラの回転により生じる角速度を検出することで、回転ブレ量を検出する。検出した角速度を、ブレ補正制御手段24でフィルタ処理、積分処理を行なうことでカメラの回転ブレ成分を取得し、ブレ補正手段17の駆動信号を生成する。
図1(b)で示すように、光軸31の交換レンズ3がある側をZ軸の正の方向、カメラ上方向をY軸の正の方向、残りの軸の紙面手前側をX軸の正の方向とした時、ジャイロセンサ18はX、Y、Zの各軸を中心とした回転により生じる角速度を検出できる。ジャイロセンサ18は1つのパッケージで3軸の回転ブレを検出するように構成されていても、1軸の回転ブレを検出するジャイロセンサが角軸方向に3つ設置されるように構成されていてもよい。カメラ1のZ軸と平行な軸中心の回転をロール、Y軸と平行な軸中心の回転をヨー、X軸中心の回転をピッチと呼ぶこととし、ロール方向の手ブレをロールブレ、ヨー方向の手ブレをヨーブレ、ピッチ方向の手ブレをピッチブレと呼ぶ。
【0021】
ブレ補正手段17は、上述したようにジャイロセンサ18の検出結果に基づく信号を用いて、撮像素子11を光軸略直交するXY平面のシフト移動および光軸31であるZ軸略並行な軸中心に回転移動させることで手ブレの補正を行なう。撮像素子11をXY平面にシフト移動させることで、カメラのピッチ・ヨー方向の回転ブレを補正し、撮像素子11を光軸31であるZ軸略並行な軸中心に回転させることでロールブレの補正を行なう。
【0022】
[姿勢検出と電子水準器機能]
次にカメラ1の姿勢の検出及び電子水準器機能について説明する。本実施例では、カメラ1は、加速度検出手段である加速度センサ19を用いてカメラ1の姿勢を検出する。ここで、カメラ1の姿勢とは、鉛直方向に垂直な方向である水平方向に対する姿勢であり、水平方向に対するカメラの基準方向の傾き(以下、単にカメラの傾きと呼ぶ)である。加速度センサ19は、カメラ1にかかる加速度を検出することができるので、加速度センサ19の検出結果に基づいてカメラシステム制御部10がカメラ1にかかる重力方向を検出することで、水平方向に対するカメラの傾きを検出することができる。次に、上述の傾き検出と表示制御手段23とによる表示部16への電子水準器の表示について説明をする。
図2は、カメラ1を表示部16である背面液晶部16a側から見たときの模式図で、
図2(a)はカメラ1が水平方向に保たれている状態を、
図2(b)はカメラ1が水平方向に対してある角度で傾いている状態を示している。
図2の各図((a)~(c))の紙面右側に示した座標系はカメラ1の相対座標系であり、カメラ1が水平方向に保たれているとは、カメラ1の相対座標系のXZ平面が、鉛直方向に垂直な地面に平行な状態であり、水平状態と呼ぶこととする。また、カメラの基準方向はX軸方向であり、水平状態では、水平方向と基準方向とが一致するものとする。
【0023】
背面液晶部16aには、静止画撮影露光前にユーザーが構図を確認するために撮像素子11で受光した被写体画像を表示する、いわゆるライブビュー表示がされている。
図2において、電子水準器機能により、表示内の中央下部には傾き情報を示すガイド101が表示されている。ガイド101は、検出した鉛直方向に対して垂直な水平基準101aと、カメラの傾き量を示す傾きメモリ101bとカメラの基準方向を示すカメラ基準101cで表示される。傾きメモリ101bは、カメラの傾き量を示すための指標であり、例えば1メモリが2度に相当するように表示が設定されている。
図2(a)においては、カメラ基準101cは、水平基準101aと重なって表示されている。
図2(b)に示すようにカメラ1が水平方向から傾くと、加速度センサ19の結果よりカメラ1の傾き量が算出され、表示制御手段により水平基準101aの表示を回転させて、水平方向に対するカメラ1の相対的な傾き量を表示する。一方、傾きメモリ101b、カメラ基準101cは、カメラ1が傾いても表示を変えない。このように表示をすることで、ユーザーはカメラ1の水平方向に対する傾き量を知ることができ、ガイド101を確認しながらカメラ1が水平状態なるように調整を行なうことができる。なお、
図2では、背面液晶部16aへライブビュー表示を行う場合を例に挙げたが、上述する背面液晶部16aの表示を表示制御手段によりファインダ表示部16bにしても同様の表示ができる。ガイド101の表示/非表示はユーザーの操作により設定可能である。
【0024】
次に、傾き情報を示すガイド101を見ながらユーザーが傾き調整を行なう際に、ロールブレ補正を行なった場合の課題について説明をする。カメラ1の電源がONにされ、
図2(b)に示すような傾いた状態でカメラ1がロールブレ補正を開始したとする。ユーザーは、ガイド101を見ながらカメラ1をロール方向に回転させて傾きを調整する。しかしながら、傾きを調整するユーザの動作をジャイロセンサ18が手ブレによるロールブレとして検出し、ブレ補正手段17によりロールブレ補正をしてしまうことが考えられる。
図2(c)は、
図2(b)の状態からユーザーによりカメラ1の傾き調整動作をされて水平状態になった時に、傾き調整による回転量分のロールブレ補正を行なった場合の背面液晶部16aの表示を表している。
図2(c)に示すように、ガイド101の水平基準101aとカメラ基準101cは一致している。しかしながら、傾き調整によるカメラ1の回転を補正するロールブレ補正により、撮像素子11がカメラの基準方向に対して傾くため、被写体画像が傾いてしまい、ユーザーの意図しない動作となってしまうことがある。
【0025】
そこで本実施例では、ライブビュー表示時において、ガイドを表示させているときと表示させていないときでブレ補正手段17による制御を切り替え、ガイドを表示させているときは、表示させていないときよりもロールブレの補正度合いを低くする。ロールブレの補正度合いとは、生じたロールブレ量に対するロールブレの補正量のことである。水平姿勢を保っているときに同じロールブレが生じたとき、ライブビュー画像の水平に対する傾きが大きいほうが補正度合いが低く、傾きが小さいほうが補正度合いが高いものとする。また、補正量の上限値を低く設定することも、補正度合い低くすることに含まれる。これは、補正量の上限値を超えるような大きなロールブレが生じたとき、上限値が低いほうがロールブレの補正量が小さくなり、ライブビュー画像の傾きが大きくなるためである。
【0026】
[撮影動作]
次に、
図3を用いてブレ補正制御手段の制御を含む撮影動作ついて説明する。
図3は静止画撮影時の撮影動作を説明するフローチャートである。下記フローは、カメラシステム制御部10がカメラ1の各手段を制御することにより実行される。
【0027】
カメラ1の電源がONになるとフローが開始する。ステップS101において、カメラシステム制御部10は、カメラの傾き情報を示すガイド101を表示部16に表示する設定になっているか否かを判定する。ガイド101の表示がOFFに設定されている場合はステップS102に進み、表示がONに設定されている場合はステップS103に進む。ガイド101の表示がされないモードが設定されているため、ステップS102では、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨー・ロールの3方向における回転ブレの補正(3軸ブレ補正駆動)を行ない、ステップS104で進む。尚、本ステップから以降のステップに進んだ場合、レリーズ釦の全押しが検出された(つまり、撮影指示が検出された)と判定されるまで、本ステップを継続して行ってもよい。一方、ステップS103では、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨーの2方向における回転ブレの補正(2軸ブレ補正駆動)を行ない、ステップS104へ進む。つまり、ステップS103では、ロール方向の回転ブレの補正は行なわず、停止させておく。尚、ステップS102と同様、本ステップから以降のステップに進んだ場合、レリーズ釦の全押しが検出された(つまり、撮影指示が検出された)と判定されるまで、本ステップを継続して行ってもよい。
【0028】
ステップS104において、カメラシステム制御部10は、操作部15のレリーズ釦がユーザーにより半押しされたか否かを判定する。レリーズ釦の半押し操作が検出されたと判定した場合はステップS105に進み、レリーズ釦の半押しが検出されるまではステップS102またはS103処理を並行して行いながら、ステップS104のフローを繰返して待機する。
【0029】
レリーズ釦の半押しが検出されると、カメラ1はカメラシステム制御部10の指示に応じて撮影準備状態に入り、ステップS105において、AF動作が行われフォーカスレンズが駆動される。ステップS106において、カメラシステム制御部10は、レリーズ釦が全押しされたか否かを判定する。レリーズ釦の全押し操作が検出されたと判定した場合はステップS107に進み、レリーズ釦の全押しが検出されたと判定するまでは、ステップS102またはS103処理を並行して行いながら、ステップS106のフローを繰返し待機する。ステップS101からステップS106の期間が、静止画撮影露光前のライブビュー表示中に相当する。
【0030】
レリーズ釦の全押し操作が検出されると、ステップS107において、ブレ補正制御手段によりブレ補正手段17を駆動しブレ補正ピッチ・ヨー・ロールの3方向の回転ブレの補正を開始してステップS108へ進む。ステップS108において、システム制御部10は、シャッター14および撮像素子11を制御し、静止画撮影露光を行なう。そして、画像処理部12を制御して取得された信号に対して上述したような各種画像処理が行い、生成された画像データをメモリ部13又はSDカードなどの取り外し可能な記録媒体(不図示)に記録する。
【0031】
ステップS109において、操作部15に含まれる電源スイッチが操作され、電源がOFFにされたか否かを判定する。電源がOFFにされたと判定されるとフローを終了し、OFFにされていないと判定されるとステップS101に戻りフローを繰り返す。
【0032】
以上説明したように、本実施例では静止画撮影露光前のライブビュー表示時において、傾き情報を示すガイド101を表示させるモードが設定されているときはブレ補正制御手段によりロールブレ補正を行なわないように制御している。これにより、
図2(c)で説明したような、ブレ補正手段17がユーザーの意図しない動作を行うことを防ぐことができる。
【0033】
<第2の実施例>
図4、
図5を用いて本発明の第2の実施例に係る撮像装置について説明する。
【0034】
図4(a)は、本実施例に係る撮像装置のブロック図であり、
図4(b)は撮像装置の中央断面図である。
図4(a)および
図4(b)で同一の符号が付してあるものはそれぞれ対応しており、
図1の撮像装置と同じ機能を有するものについては、同じ符号を付している。本実施例の撮像装置と
図1に示す第1の実施例の撮像装置との差異は、本実施例のカメラ1が視線検出部22を有する点であるため、視線検出部22以外の構成の説明は省略する。本実施例では、後述する視線検出部22によりユーザーが表示部16のどの範囲を注視しているかを検出する。そして、ライブビュー表示中に表示部16のガイド101近傍を注視していると判定した場合は、ユーザーがガイド101を見ながら構図の傾きを調整していると推定し、ブレ補正手段17によるロールブレの補正をせずにピッチ・ヨーの2軸の補正を行う。一方で、ガイド101を表示するモードが設定されている場合であっても、ユーザがガイド101を注視していない場合は、ガイド101が表示されないモードが設定されている場合と同様にロール方向を含めた3軸の補正を行う。
【0035】
視線検出部22について説明する。視線検出部22は受光レンズ、受光センサ、赤外光源を有する視線検出センサユニット22aと可視光を透過し赤外光を反射させるハーフミラー22bを有する。視線検出部22は、視線検出センサユニット22aの赤外光源から照射される赤外光を、ファインダ光学系21内に挿入されたハーフミラー22bで反射し、接眼レンズ21a側に投光する。そして、接眼レンズ21a外のユーザーの眼球で反射した接眼レンズ21a側からの赤外光束をハーフミラー22bで反射し、視線検出センサユニット22aの受光レンズを通過し受光センサに集光させる。一方、ファインダ表示部16bの可視光はハーフミラー22bを透過し接眼レンズ21a側に届く。ユーザーが接眼レンズ21aを覗いてファインダ表示部16bを見ているときに、視線検出センサユニット22aによりユーザーの眼球の動きが検出される。これにより、ユーザーがファインダ表示部16bのどこを注視しているかを検出することができる。視線検出の詳細な説明については、公知技術のため説明を省略する。
【0036】
[撮影動作]
次に、
図5を用いて本実施例における撮影動作について説明する。
【0037】
図5は本実施例における静止画撮影時の撮影動作を説明するフローチャートである。下記フローは、カメラシステム制御部10がカメラ1の各手段を制御することにより実行される。
【0038】
カメラ1の電源がONになるとフローが開始する。
【0039】
ステップS201において、カメラシステム制御部10は、ライブビューの表示がファインダ表示部16bへ表示される設定か否かを判定する。ライブビュー表示がファインダ表示部16bへの表示であればステップS202に進み、背面液晶部16aへの表示であればステップS205に進む。
【0040】
ステップS202において、カメラシステム制御部10は、カメラの傾き情報を示すガイド101を表示部16に表示する設定になっているか否かを判定する。ガイド101の表示がONに設定されていればステップS203に進み、表示がOFFに設定されていればステップS205に進む。
【0041】
ステップS203において、カメラシステム制御部10は、視線検出部22の検出結果を取得し、ユーザーが傾き情報のガイド101が表示されている位置を注視しているか否か(ユーザーの視線がガイド101の表示位置と一致しているか否か)を判定する。ガイド101の位置を注視していると判定されたらステップS204に進み、注視していないと判定された場合はステップS205に進む。
【0042】
ステップS204において、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨーの2方向における回転ブレの補正(2軸ブレ補正駆動)を行ない、ステップS206へ進む。本ステップは、第1の実施例のS103と同じ処理である。つまり、ステップS204では、ユーザーがまだ、ガイド101を参照しながら構図の傾きを調整していると推定し、構図の調整の妨げにならないようにロール方向の回転ブレ補正は行なわない。
【0043】
一方、ステップS205においては、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨー・ロールの3方向における回転ブレの補正(3軸ブレ補正駆動)を行ない、ステップS206へ進む。つまり、ユーザーがガイド101を注視していないため、ユーザーが構図の傾き調整を済ませたと推定し、以降のロール方向の回転は手ブレと判定してロールブレ補正を行なう。
【0044】
ステップS206において、カメラシステム制御部10は、操作部15のレリーズ釦がユーザーにより半押し操作がされたか否かを判定する。レリーズ釦の半押し操作がされたと判定した場合はステップS207に進み、レリーズ釦の半押しが検出されるまではステップS203に戻りフローを繰返す。
【0045】
ステップS207において、カメラシステム制御部10の指示によりAF動作が行われフォーカスレンズが駆動される。ステップS208において、カメラシステム制御部10は、レリーズ釦が全押しされたか否かを判定する。レリーズ釦の全押し操作が検出されたと判定した場合はステップS209に進み、レリーズ釦の全押しが検出されたと判定するまでは、ステップS204またはS205処理を並行して行いながら、ステップS208のフローを繰返し待機する。ステップS201からステップS208の期間が、静止画撮影露光前のライブビュー表示中に相当する。
【0046】
ステップS209からステップS211は、第1の実施例のステップS107からステップS109と同じ処理であるため、詳細な説明は省略する。カメラシステム制御部10は、ステップS209において、ブレ補正制御手段24を制御してピッチ・ヨー・ロールの3方向の回転ブレの補正を開始し、ステップS210において、シャッター14および撮像素子11を制御し、静止画撮影露光を行なう。ステップS211において、電源がOFFにされたか否かを判定し、電源がOFFにされたと判定されるとフローを終了し、OFFにされていないと判定されるとステップS201に戻りフローを繰り返す。
【0047】
以上説明したように、第2の実施例では静止画撮影露光前のライブビュー表示時において、視線検出部22によりユーザーが傾き情報を示すガイド101を注視しているか否かを判定する。ユーザーがガイド101を注視している場合は、ユーザーによる構図調整が終了していない可能性が高いため、ユーザによる構図調整動作を妨げないようにロール方向の回転ブレの補正を行わない。一方で、ガイド101が表示されている場合であっても、ユーザがガイド101を注視していない場合は、今後構図調整が行われる可能性が高くないと考えられるため、ロール方向の回転ブレの補正を行う。
【0048】
なお本実施例では、視線検出部22をファインダ光学系21に配し、ユーザーがファインダ表示部16bを見ながら撮影する場合について述べた。しかしながら、背面液晶部16aを見ているユーザーの視線を検出する手段を用いて、背面液晶部16a表示時にも同様に、ガイド101を注視しているか否かを判定し、注視している場合は2ブレ補正、していない場合は3軸ブレ補正を行ってもよい。また、ライブビュー表示が背面液晶部16aへの表示が設定されている場合(S201でNo)、ステップS205へ進む代わりに、
図3のステップS101へ進み、ガイド表示がされている場合は2軸ブレ補正としてもよい。
【0049】
<実施例3>
図6を用いて本発明の第3の実施例に係る撮像装置について説明する。
【0050】
本実施例における撮像装置の構成は第1の実施例で
図1を用いて説明した構成と同様のため説明を省略する。本実施例は、ガイド101を表示するモードが設定されている状態においてカメラ1が起動した直後は、ブレ補正手段17によるロールブレの補正を行なわないが、カメラ1の傾きが略水平状態になったと判定したら、以降はロールブレの補正を行なう。これにより、ユーザーが構図調整によりカメラ1を水平状態に調整した後は、手ブレによって生じるロールブレを補正し、構図の水平状態からの傾きを軽減することができる。
【0051】
[撮影動作]
次に、
図6を用いて本実施例における撮影動作について説明をする。
図6は本実施例における静止画撮影時の撮影動作を説明するフローチャートである。下記フローは、カメラシステム制御部10がカメラ1の各手段を制御することにより実行される。
【0052】
カメラ1の電源がONになるとフローが開始する。
【0053】
ステップS301において、カメラシステム制御部10は、カメラの傾き情報を示すガイド101を表示部16に表示する設定になっているか否かを判定する。ガイド101の表示がONに設定されていればステップS302に進み、表示がOFFに設定されていればステップS304に進む。
【0054】
ステップS302において、カメラシステム制御部10は、加速度センサ19の検出結果を取得し、現在のカメラ1の水平方向に対する傾き量が、閾値θa以下であるか否かを判定する。傾き量は、カメラの基準方向と水平方向とがなす角度を示す量であり、ガイド101でユーザーに通知する量に対応する。傾き量がθa以下である場合はステップS303に進み、θaを越える場合はステップS305に進む。閾値θaは傾き量が閾値θa以下であれば略水平とみなすことができる値に予め設定される。第1の実施例で説明をしたように、傾きメモリ101bの最小表示分解能(ユーザに通知できる傾き量の単位)が2度の場合、例えば1度など、傾きメモリ101bの最小表示分解能よりも小さい値に設定される。
【0055】
ステップS303において、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨーの2方向における回転ブレの補正(2軸のブレ補正駆動)を行ない、ステップS305へ進む。つまりステップS204のように、ユーザーがまだ、ガイド101を参照しながら構図の傾きを調整していると推定し、構図の調整の妨げにならないようにロール方向の回転ブレ補正は行なわない。
【0056】
一方、ステップS304においては、ブレ補正制御手段24によりブレ補正手段17を駆動し、ピッチ・ヨー・ロールの3方向における回転ブレの補正(3軸ブレ補正駆動)を行ない、ステップS206へ進む。つまり、カメラ1の傾きが一度閾値以下になったため、ユーザーが構図の傾きの調整を済ませたものと推定する。そして、これ以降のロール方向のカメラ1の動きは手ブレと判定してロール方向の回転ブレ補正を行なう。
【0057】
ステップS305において、カメラシステム制御部10は、操作部15のレリーズ釦がユーザーにより半押し操作がされたか否かを判定する。レリーズ釦の半押しが検出された場合はステップS306に進み、レリーズ釦の半押しが検出されるまではステップS301に戻りフローを繰返す。
【0058】
ステップS306からステップS310は、第1の実施例のステップS105からS109と同じ処理であるため、詳細な説明は省略する。カメラシステム制御部10は、ステップS306においてAF動作を指示し、フォーカスレンズが駆動される。そして、ステップS307でレリーズ釦の全押し操作を検出すると、ステップS308において、ブレ補正制御手段24を制御してピッチ・ヨー・ロールの3方向の回転ブレの補正を開始し、ステップS309において、静止画撮影露光を行なう。ステップS310において、電源がOFFにされたと判定するとフローを終了する。
【0059】
以上説明したように、第3の実施例では静止画撮影露光前のライブビュー表示時において、ガイド101が表示されるモードが設定されている場合は、カメラ1の傾き量が略水平とみなせる閾値θa以下になるまでロール方向の回転ブレ補正は行なわない。そして、カメラ1の傾き量がθa以下になってからロール方向の回転ブレ補正を行なうように制御する。これにより、ブレ補正手段17がユーザーの構図調整動作を妨げにくくしつつも、手ブレによるロールブレの影響を軽減することができる。
【0060】
なお、本実施例ではステップS301でガイド101の表示がONの設定で、カメラ1の傾き量が略水平とみなせる閾値θa以下になるまでロールブレ補正は行なわないが、ステップS301のステップを省略してもよい。つまり、ガイド101の表示の有無依らず、静止画撮影露光前において、カメラ1の傾き量が略水平とみなせる閾値θa以下になるまでロールブレ補正は行なわず、θa以下になってからロールブレ補正を行なうように制御してもよい。
【0061】
また、本実施例では、ガイド表示がオフであっても、カメラの傾き量が閾値以下であっても、同様に3軸ブレ補正駆動を行った。しかしながら、ガイド表示がオフである場合(S301でNo)とガイド表示がONで傾き量が閾値以下の場合(S302でYES)とでロールブレの補正度合いを変更してもよい。この場合、ガイド表示がONで傾き量が閾値以下の場合の補正度合いがガイド表示がオフである場合以下であることが好ましい。
【0062】
<変形例>
上述第1~第3の実施例では、ステップS103、S204、S303の各ステップに進んだ場合は、ロール方向の回転ブレ補正量を0として、結果としてロール方向の回転ブレ補正を行なわないようにブレ補正手段17を制御した。しかしながら、ステップS103、S204、S303の各ステップにおけるロールブレの補正度合いを、ステップS102、S205、S304の各ステップにおけるロールブレの補正度合いよりも低くすれば、本発明の効果を奏することができる。補正度合いを低く設定する方法の具体例を説明する。
【0063】
補正するブレの周波数帯域を狭くすることで、補正度合いを低くすることができる。
【0064】
第1の実施例の場合、例えば、ガイド101を表示している場合は、ジャイロセンサ18により検出されたロールブレ量にHPF(ハイパスフィルタ)処理をし、通過した高い周波帯域のみロールブレ補正を行なっても良い。これにより、ロール方向の高周波帯域の細かい回転ブレは手ブレの影響であるのとみなしブレ補正を行ない、低周波帯域のブレはユーザーの構図の傾き調整に伴う回転動作として切り分けてブレ補正を行なわないように制御される。HPFのカットオフ周波数は例えば1Hzなどに設定されている。これにより、ブレ補正手段17によるユーザーの意図しない動作を防ぐことができる。なお、低周波帯域をHPFで遮断すると、一般的には同じロールブレ量が発生している場合は、ガイド101を表示している場合のロールブレ補正量が、表示していない場合よりも小さく設定されることとになる。よって、本発明では、HPF処理を加えることも、ブレの補正度合いを低くすることに含まれるものとする。また、HPF処理の有無の代わりに、HPFのカットオフ周波数を変更することで補正度合いを変更してもよい。よって、本発明では、HPFのカットオフ周波数を上げること、及びLPFのカットオフ周波数を下げることも、補正度合いを低くすることに含まれるものとする。
【0065】
また、上述のように、ロールブレ補正量の上限値を下げることで補正度合いを低くしてもよい。第1の実施例の場合、例えば、傾きメモリ101bの最小表示分解能である1メモリが2度とすると、ガイド101を表示させている時は、ブレ補正手段17によるロールブレ補正量の最大値を2度よりも小さくすることが考えられる。これにより、ロール方向の手ブレによる細かいロールブレは補正しつつも、ユーザーの構図の傾き調整による回転動作を反映させることができる。
【0066】
また、検出したロールブレ量に対して掛ける係数を変更することで、補正度合いを変更してもよい。第1~第3の実施例では、撮像素子11をXY平面に並進移動および回転移動させることができるブレ補正手段17を用いてロールブレ補正を行なったが、ロールブレの補正方法はこれに限定されない。例えば、ブレ量をキャンセルするように画像の一部を切り出すことで電子的にブレを補正する、いわゆる電子防振でも構わない。つまり、ガイド101を表示している場合と表示していない場合で、電子防振によるロールブレの補正度合いを変更してもよい。
【0067】
また、ガイド101は
図2に示したような表示以外に、水平に対する傾き量を数値で表現するなど、その他の表示方法も含まれる。
【0068】
また、ガイド101を表示している場合でもライブビュー表示中にロールブレ補正を行なうモードを用意しておき、ユーザーがカメラ1の設定画面においてガイド表示時のロールブレ補正のON、OFFを選択できるようにしておいてもよい。
【0069】
また、第1~第3の実施例ではジャイロセンサ18の検出結果によりカメラ1の手ブレによるピッチ・ヨー・ロール方向の回転ブレ補正を行なったが、それに加えて、加速度センサ19の検出結果を用いてブレ補正を行なってもよい。加速度センサ19はカメラ1にかかる加速度を検出することができるので、ユーザーの手ブレによるカメラ1の
図1(b)に示すX軸、Y軸、Z軸に対する並進方向のブレ(以下、並進ブレ)を検出することができる。加速度センサ19で検出されたX軸方向、Y軸方向の加速度を2階積分及びフィルタ処理を行なうことで、XY方向の並進ブレ量を算出することができる。そして、算出されたXY方向の並進ブレに応じて撮像素子11をXY方向にシフト移動させることでブレ補正を行なうことができる。一方で、上述の第1~第3の実施例では、ブレ補正手段17及びブレ補正制御手段24はピッチ、ヨー、ロールの3つの軸の回転ブレを補正する構成としたが、ピッチ方向及びヨー方向の回転ブレ補正のいずれか又は両方は行わない構成としてもよい。また、ピッチ方向及びヨー方向の回転ブレの補正度合いも、ガイド101の表示の有無、静止画撮影のための露光中か否か、撮影シーンなどに応じて変更してもよい。例えば、第1の実施例の場合、ステップS103でのピッチ方向及びヨー方向の回転ブレ補正の補正度合いと、ステップS102やS107でのピッチ方向及びヨー方向の回転ブレ補正の補正度合いを変更してもよい。ただし、補正度合いの差は、ピッチ方向及びヨー方向の回転ブレの補正度合いよりも、ロール方向の回転ブレの補正度合いのほうが大きくなるように制御する。HPFのカットオフ周波数を変更することで補正度合いを変更する場合を例に具体的に説明をする。ステップS102ではピッチ・ヨーブレの補正量の取得に用いるカットオフ周波数と、ロールブレの補正量の取得に用いるカットオフ周波数が同じものとする。この場合、ステップS103におけるロールブレの補正量の取得に用いるカットオフ周波数を、ピッチ・ヨーブレの補正量の取得に用いるカットオフ周波数よりも高くすれば、ピッチ・ヨーブレの補正度合いの差をロールブレの補正度合いの差よりも小さくできる。
【0070】
また、上述の第1~第3の実施例では加速度センサ19を用いてカメラ1の水平方向に対する傾きを検出していたが、カメラ1による静止画撮影露光前に取得した画像を利用し画像認識処理により傾きを検出しても良い。例えば、機械学習により取得画像内の被写体を人、動物、建物、地面、海のように認識する画像認識手段を有し、建物や海など動きがなく地面を基準とした水平を示唆する画像を抽出する。そして海の画像であれば水平線を水平な基準とし、建物の画像であれば柱の建っている方向の垂直な方向を水平な基準として、その時のカメラ1の傾きを検出するなどである。
【0071】
また、上述の第1~第3の実施例では、静止画撮影露光前のライブビュー中に、ロールブレの補正度合いを低くする例について説明をしたが、動画撮影における記録開始前のライブビュー中にも同様にロールブレの補正度合いを低くしてもよい。
【0072】
また、レリーズ釦の半押し前と後、及び静止画露光中である全押し後でロールブレ補正の補正度合いを変更してもよい。上述の実施例1を例に、レリーズ釦の半押し前と後、及び静止画露光中である全押し後でロールブレ補正の補正度合いを変更する例について説明をする。
図7のフローチャートを用いて、本変形例における撮影動作を説明する。
【0073】
カメラ1の電源がONになるとフローが開始する。
【0074】
ステップS121からステップS124までは、第1の実施例のステップS101からステップS104までと基本的に同じ処理である。しかしながら、ステップS122において3軸補正駆動を行う際に、ロールブレの補正度合いがこの後の静止画露光中のロールブレ補正度合いよりも小さい点がS102と異なる。補正度合いを小さくする方法は特に問わず、上述のように、検出したブレ量に対してかけるゲインを小さくしたり、補正量の上限値を小さくしたり、一部の周波数帯域のブレ量のみを補正したりすればよい。
【0075】
ステップS124でレリーズ釦の半押し操作が検出されたと判定されると、ステップS125において、ブレ補正制御手段によりブレ補正手段17を駆動しピッチ・ヨー方向の回転ブレの補正、及びロールブレ補正を含む3軸のブレ補正駆動を開始する。この時、ロールブレ補正度合いはこの後の静止画露光中のロールブレ補正度合いよりも小さく設定されている。補正度合いは、ステップS122と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
ステップS126からステップS130までも、第1の実施例のステップS105からステップ109までと基本的に同じ処理である。しかしながら、ステップS128において3軸補正駆動を行う際のロールブレの補正度合いがステップS122、S125での補正度合いよりも大きいことステップS107と異なる。ただし、ここでの補正度合いは、特に制限する必要はないため、ステップS107と同様の補正度合いとすることができる。
【0077】
このように、撮影準備指示(レリーズ釦の半押し操作)を受け付けたことに応じて、ロール方向における回転ブレの補正度合いを受け付ける前よりも高くする。このような制御により、ユーザーがレリーズ釦を半押し操作前に構図を調整し、レリーズ釦を半押し操作後は構図を変更せずに静止画露光の撮影タイミングを見計らい全押しするような場合において、ユーザーの意図を反映したブレ補正を行なうことができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 カメラ
3 交換レンズ
10 カメラシステム制御部
11 撮像素子
14 シャッター
16 表示部
17 ブレ補正手段
18 ジャイロセンサ
19 加速度センサ
30 レンズシステム制御部