(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/14 20060101AFI20240112BHJP
G03G 5/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G03G5/14 101E
G03G5/06 371
G03G5/14 101D
G03G5/14 101F
(21)【出願番号】P 2020011253
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019026909
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】久野 純平
(72)【発明者】
【氏名】榊原 彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽太
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修平
(72)【発明者】
【氏名】牧角 康平
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045138(JP,A)
【文献】特開2003-177561(JP,A)
【文献】特開2002-229237(JP,A)
【文献】特開2008-250083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層直上に形成された電荷発生層、及び該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体であって、
該下引き層が、
下記式(1)
で示される化合物、下記式(2)で示される化合物、下記式(3)で示される化合物、下記式(4)で示される化合物、下記式(5)で示される化合物、下記式(6)で示される化合物、下記式(7)で示される化合物、及び下記式(8)で示される化合物から
なる群より選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子と、
ポリアミド樹脂と
、
を含有し、
該電荷発生層が
、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する
、
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式(1)~(8)中、R
1~R
8は
、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はアセチル基を示す。X
1~X
4は
、それぞれ独立に、水素原子
、又はメチル基を示す。nは
、1から3の何れかの整数である。)
【請求項2】
前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンが、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°
及び28.3°にピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶である
、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子が、アルミナ処理されていないか、又はアルミナ処理がされている場合はAl元素存在量が0.50%以下である
、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物が、
前記式(1)で示される化合物
、又は
前記式(5)で示される化合物
である
、請求項1~
3の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記有機ケイ素化合物が、
前記式(1)で示され
、前記式(1)中のnが1又は2である化合物
、又は
前記式(5)で示され
、前記式(5)中のnが1又は2である化合
物
である
、請求項
4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の平均一次粒径をa(μm)とし、前記下引き層における、前記ポリアミド樹脂に対する、前記有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の体積比をcとしたとき、式(B):14.0≦c/a≦21.0を満足する
、請求項1~
5の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記下引き層の膜
厚をd(μm)としたとき、式(C):0.5≦d≦3.0を満足する
、請求項1~
6の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記下引き層
における、前記ポリアミド樹脂に対する、前記有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の体積比をcとしたとき、式(D):0.15≦c/d≦0.55を満足する
、請求項
7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記酸化チタン粒子が
、ルチル型酸化チタン粒子である
、請求項1~
8の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と
、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在である
、ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~
9の何れか1項に記載の電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段
、及び転写手段を有する
、ことを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、並びに、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスカートリッジや電子写真装置に搭載される電子写真感光体として、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する電子写真感光体が用いられている。電子写真感光体は、一般的に、支持体、支持体上に形成された感光層を有し、感光層には、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有している。
【0003】
感光層の中でも、電荷発生物質を含有する電荷発生層上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層している積層型の感光層が好ましく用いられている。さらに、支持体と感光層との間の接着力を高め、また、繰り返し使用時の静電的安定性を目的として、支持体と電荷発生層との間には下引き層が設けられることが多い。
【0004】
上記課題に対し、ポリアミド樹脂に表面処理が施されている酸化チタンを分散させた下引き層が用いられている。特許文献1では、酸化チタン粒子に一次処理(シリカ・アルミナ等)及び、二次処理(反応性有機ケイ素化合物等)を行って疎水化度を調整し、黒ポチを改善する技術が記載されている。また、特許文献2では、ポリアミド樹脂と表面処理が施されている酸化チタンを下引き層に用い、ガリウムフタロシアニンを電荷発生物質として用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-287396号公報
【文献】特開2009-151329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、更なる省ランニングコスト/小型化の為、電位変動抑制に加え、トナー消費量の低減が必要である。その為により高いレベルの電位変動抑制と、ベタ白部にトナーが現像されてしまう現象(以下、「カブリ」ともいう)の抑制が要望されている。
【0007】
本発明者らが検討を行った結果、特許文献1及び2に開示されている技術では、長期間の繰り返し使用において、電位変動抑制とカブリの抑制が十分でないためにトナー消費量が増加してしまう場合があることがわかった。
【0008】
本発明の目的は、長期間の繰り返し使用による電位変動とカブリを抑制し、トナー消費量を抑制した電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層直上に形成された電荷発生層、及び該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有し、該下引き層が、式(1)~式(8)で示される化合物から選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子と、ポリアミド樹脂とを含有し、該電荷発生層がヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0010】
【0011】
(式(1)~(8)中、R1~R8はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はアセチル基を示す。X1~X4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。nは1から3の何れかの整数である。)
【0012】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0013】
また、本発明は、上記電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期間の繰り返し使用による電位変動とカブリを抑制し、トナー消費量を抑制した電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【
図2】電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層直上に形成された電荷発生層、及び該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有し、該下引き層が、下記式(1)で示される化合物、下記式(2)で示される化合物、下記式(3)で示される化合物、下記式(4)で示される化合物、下記式(5)で示される化合物、下記式(6)で示される化合物、下記式(7)で示される化合物、及び下記式(8)で示される化合物からなる群より選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子と、ポリアミド樹脂と、を含有し、該電荷発生層が、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する、ことを特徴とする。
【0017】
【0018】
(式(1)~(8)中、R1~R8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はアセチル基を示す。X1~X4は、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基を示す。nは、1から3の何れかの整数である。)
【0019】
係る電子写真感光体が、長期間の繰り返し使用による電位変動とカブリを抑制し、トナー消費量を抑制される理由について、本発明者らは、以下のように推測している。
トナー消費量抑制のためにはカブリの抑制が肝要である。なぜなら、カブリは、トナーの余分な消費であり、長期の繰り返し使用で影響が大きくなり、改善が要求されている。本発明者らの検討の結果、特には、高温多湿環境において、この問題が顕著となることが判明した。
【0020】
本発明の感光体は高温多湿環境において、カブリが抑制される。カブリの発生原因として、電荷発生層と下引き層の界面に存在する水分が原因となり、局所的な電荷の注入が起こることが考えられる。
【0021】
本発明においては、式(1)~式(8)で示される化合物から選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子を含有する下引き層とヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する電荷発生層を組み合わせることにより、界面の水分が電荷発生層側に移行することで、局所的な電荷の注入が発生しにくくなり、カブリが抑制さいると推測している。表面処理が、メチルトリメトキシシランなど炭素数の少ない有機ケイ素化合物で行われた場合、疎水化が足りず、水分の移行効果が不足し、十分な効果が得られない。一方で、表面処理がヘキシルトリメトキシシランなど炭素数の多い有機ケイ素化合物の場合は、その嵩高さより酸化チタン表面への反応量が減少し、表面に未反応のOH基が残留することで、水分の移行効果が不足し、十分な効果が得られない。
【0022】
一方で、トナー消費量抑制のために電位(明部電位)変動の抑制も肝要である。明部電位は、所望の画像濃度を達成するために設定されるが、明部電位が大きく変動する場合、画像品質を担保するためには最低濃度を確保するよう設定する必要が生じる。すると、結果的には過剰な濃度で現像される機会が増え、トナー消費量が増加する。
【0023】
長期間の繰り返し使用による電位変動を抑制するために、電荷の蓄積を抑制する必要がある。下引き層に滞留する電荷の蓄積を抑制するためには、下引き層中に酸化チタン粒子が均一に分散されていること及び、長鎖のアルキル基や酸化アルミナのような抵抗の高い層で覆われていないことが好ましい。式(1)~式(8)で示される化合物から選択される何れか1種の有機ケイ素化合物を選択することで、抵抗の高い層で覆われることなく。酸化チタン粒子の表面の疎水性を高め均一分散ができ、電荷の蓄積が抑制されていると考えている。
【0024】
以上、トナー消費量抑制のためには、繰り返し使用による電位変動とカブリの抑制が必要である。これらを両立させるために、式(1)~式(8)で示される化合物から選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子とポリアミド樹脂とを含有する下引き層と、その直上にヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する電荷発生層を積層した形態をとることが、本発明の感光体の特徴である。
【0025】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、該下引き層直上に形成された電荷発生層、該電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する。
【0026】
図1は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
図1中、電子写真感光体は、支持体101、下引き層102、電荷発生層104、電荷輸送層105を有する。
【0027】
〔支持体〕
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金などの金属又はこれら金属の合金の支持体を用いることができる。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、クロム、銀、金などの金属の薄膜を形成した支持体又は酸化インジウム、酸化スズなどの導電性材料の薄膜を形成した支持体が挙げられる。支持体の表面には、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化などの電気化学的な処理や、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
【0028】
支持体と下引き層との間には、導電層を設けてもよい。導電層は、導電性粒子を樹脂に分散させた導電層用塗布液の塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで得られる。
【0029】
〔下引き層〕
支持体と電荷発生層との間に、下引き層が設けられる。
【0030】
下引き層は、ポリアミド樹脂と式(1)~式(8)で示される化合物から選択される何れか1種の有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子を含有する。
【0031】
ポリアミド樹脂としては、アルコール系溶剤に可溶なポリアミド樹脂が好ましい。例えば、3元系(6-66-610)共重合ポリアミド、4元系(6-66-610-12)共重合ポリアミド、N-メトキシメチル化ナイロン、重合脂肪酸系ポリアミド、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、ジアミン成分を有する共重合ポリアミドなどが好ましく用いられる。
【0032】
酸化チタン粒子としては、電荷の蓄積の抑制という観点から、結晶構造がルチル型又はアナターゼ型であることが好ましく、光触媒活性の弱いルチル型酸化チタン粒子であることがより好ましい。ルチル型である場合、ルチル化率90%以上であることが好ましい。酸化チタン粒子の形状は球形であることが好ましい。
【0033】
また、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の平均一次粒径a(μm)は、電荷の蓄積の抑制と均一分散性という観点から、0.006以上0.180以下であることが好ましく、0.015以上0.085以下であることがより好ましい。
【0034】
酸化チタン粒子を表面処理する有機ケイ素化合物は、式(1)で示される化合物又は式(5)で示される化合物であることが、表面処理の均一性という観点から好ましく、更には、nが1~2であることがより好ましい。具体的には、n-エチルトリメトキシシラン、n-エチルトリエトキシシラン、n-エチルメチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルメチルジメトキシシランから選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0035】
また、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子は、アルミナ処理されていないか、またはアルミナ処理がされている場合はAl元素存在量が0.50%以下であることが好ましい。
【0036】
また、下引き層における、酸化チタン粒子のTi元素に対する、有機ケイ素化合物のSi元素の元素比をb(%)、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の平均一次粒径をa(μm)としたとき、式(A):0.010≦a×b≦0.050を満足することが好ましい。式(A)は、有機ケイ素化合物による表面処理量に相当する数値である。
【0037】
下引き層における、ポリアミド樹脂に対する、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の体積比をcとしたとき、式(B):14.0≦c/a≦21.0を満足することが、下引き層に滞留する電荷の蓄積の抑制と感光体のカブリの抑制という二つの効果を高水準で両立することができるため好ましい。
【0038】
また、ポリアミド樹脂に対する、有機ケイ素化合物で表面処理された酸化チタン粒子の体積比cは、0.2以上1.0以下であることが好ましく、0.3以上0.8未満であることがより好ましい。0.2より小さいと、本発明における電荷の蓄積の抑制効果が十分に得られない場合があり、1.0より大きいと、本発明におけるカブリの抑制効果が十分に得られない場合がある。
【0039】
下引き層の膜厚d(μm)は、式(C):0.5≦d≦3.0を満足することが好ましい。dが0.5以上であると、感光体のカブリの抑制効果が高まり、3.0以下であると、下引き層に滞留する電荷の蓄積の抑制効果が高まる。
【0040】
更に、式(D):0.15≦c/d≦0.55を満足することが好ましい。
【0041】
式(A)と式(D)の関係式を同時に満たすことで、感光体のカブリの抑制と下引き層に滞留する電荷の蓄積の抑制という二つの効果を更なる高水準で両立することができる。
【0042】
本発明における下引き層は、上記ポリアミド樹脂や酸化チタン粒子以外にも、電子写真感光体の干渉縞防止効果を高めたり、下引き層の成膜性を高めたりする目的で、有機物粒子やレベリング剤などの添加剤を含有してもよい。但し、下引き層における添加剤の含有量は、下引き層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0043】
〔電荷発生層〕
下引き層の直上には、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有する電荷発生層が設けられる。
【0044】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.3°にピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶であることが好ましい。
【0045】
電荷発生層は、更に、水酸基を有する水酸基価50mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。係る樹脂として、例えば、ポリビニルブチラール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエステルポリオール樹脂などのポリオール樹脂などが挙げられる。本発明における感光層の剥離の抑制効果をより高めるためには、100mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基を有する水酸基価50mgKOH/g以上の熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5,000~400,000の範囲であることが好ましい。
【0046】
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との質量比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1~1/10の範囲であることが好ましく、5/1~1/5の範囲であることがより好ましい。
【0047】
電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0048】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤又は芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0049】
〔電荷輸送層〕
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
【0050】
電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、トリフェニルアミンなどが挙げられる。また、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマーも挙げられる。
【0051】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。結着樹脂の重量平均分子量は、10,000~300,000の範囲であることが好ましい。
【0052】
電荷輸送層において、電荷輸送物質と結着樹脂との質量比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、10/5~5/10の範囲であることが好ましく、10/8~6/10の範囲であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0053】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤又は芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0054】
また、電荷輸送層上には、導電性粒子又は電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層(表面保護層)を設けてもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の結着樹脂自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該結着樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより硬化させてなる硬化性樹脂であってもよい。
【0055】
導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層などの電子写真感光体を構成する各層を形成する方法としては、以下の方法が好ましい。すなわち、各層を構成する材料を溶剤に溶解及び/又は分散させて得られた塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥及び/又は硬化させることによって形成する方法である。塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、リング法などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布法が好ましい。
【0056】
〔プロセスカートリッジ及び電子写真装置〕
図2に、本発明の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0057】
図2に示す電子写真装置は、円筒状の電子写真感光体1を有し、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面(周面)は、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、均一に帯電された電子写真感光体1の表面は、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光(画像露光光)4で露光される。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0058】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
【0059】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。
【0060】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、清浄面化された電子写真感光体1の表面は、前露光手段(不図示)からの前露光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、
図2に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0061】
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数の構成要素を選択して容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持する。このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成することができる。
図2では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0062】
以下、実施例と比較例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例と比較例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0063】
(実施例1)
長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS H 4000:2006 A3003P、アルミニウム合金)を切削加工(JIS B 0601:2014、十点平均粗さRzjis:0.8μm)し、それを支持体(導電性支持体)として用いた。
【0064】
次に、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)100部をトルエン500部と攪拌混合し、式(1)において、R1がメチル基、n=1であるエチルトリメトキシシラン5.0部を添加し、8時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、3時間120℃で乾燥させることによって、エチルトリメトキシシランで表面処理済みのルチル型酸化チタン粒子を得た。
【0065】
前記エチルトリメトキシシランで表面処理済みのルチル型酸化チタン粒子18部、N-メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF-30T、ナガセケムテックス製)4.5部、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ製)1.5部を、メタノール90部と1-ブタノール60部の混合溶剤に加えて分散液を調整した。
この分散液を、直径1.0mmのガラスビーズを用いて縦型サンドミルにて5時間分散処理することにより、下引き層用塗布液を調整した。この下引き層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が2.0μmの下引き層を形成した。
【0066】
この下引き層において、パラメータa=0.050、b=0.50、c=0.78、d=2.0であり、式(A):a×b=0.025、式(B):c/a=15.6、式(C):d=2.0、式(D):c/d=0.39であった。aの値は、電子写真感光体作製後、電子写真感光体の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM、商品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた顕微鏡像から求めた。bの値は、表面処理済みのルチル型酸化チタン粒子作製後、粒子を波長分散型蛍光X線分析装置(XRF、商品名:Axios advanced、PANalytical製)を用いた分析結果から、検出されたTi元素のみを酸化物であると仮定し、ソフトウェア(SpectraEvaluation、vertion5.0L)にてTiO-2に対するSi元素の含有量(質量%)を換算して元素比を求めた。
【0067】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)を用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、水酸基価:173mgKOH/g、積水化学工業製)5部及びシクロヘキサノン260部を、直径1.0mmのガラスビーズを用いて縦型サンドミルに入れ、1.5時間分散処理した。次に、これに酢酸エチル240部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間80℃で乾燥させることによって、膜厚が0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0068】
次に、下記式(CTM-1)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)10部、及び下記式(CTB-1)で示される構造単位と、下記式(CTB-2)で示される構造単位とを5/5の割合で有し、重量平均分子量が100,000であるポリアリレート樹脂10部を、ジメトキシメタン30部及びクロロベンゼン70部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を60分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0069】
【0070】
【0071】
以上のようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真感光体を製造した。
【0072】
(カブリの評価)
評価機としてヒューレットパッカード製のレーザービームプリンター(商品名:HP LaserJet Enterprise Color M553dn、非接触現像方式、プリント速度:A4縦71枚/分)を改造し、カブリ(画像カブリ)の評価を行った。製造した電子写真感光体は、HP LaserJet Enterprise Color M553dn用のプロセスカートリッジに装着した。温度30℃、湿度80%RHの環境下にて、A4サイズの普通紙で印字比率1%の画像を、2枚画像形成するごとに停止する間欠モードにより、20,000枚の画像形成を行った。また、4000枚毎にベタ白画像を出力して、画像カブリの評価を行った。紙は、A4の普通紙(GF-C081A4:キヤノンマーケティングジャパン社製)を用いて行った。
【0073】
「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」(東京電色社製)を用いて、標準紙とプリントアウト画像の白地部分の反射率を測定して、下記式によりカブリ(反射率;%)を算出した。(フィルターは、ブルーフィルターを装着して測定した。)なお、評価基準は耐久を通しての最悪値を以下の基準により判断した。
かぶり(反射率;%)=(標準紙の反射率;%)-(サンプルの反射率;%)
A:かぶりが0.8%未満であった
B:かぶりが0.8%以上1.6%未満であった
C:かぶりが1.6%以上2.1%未満であった
D:かぶりが2.1%以上であった。
【0074】
(電位変動分の評価)
製造した電子写真感光体を、HP LaserJet Enterprise Color M553dn用のプロセスカートリッジに装着し、現像位置に電位プローブ(商品名:model6000B-8、トレック・ジャパン製)を装着できるよう改造した。その後、電子写真感光体の中央部(約130mm位置)の電位を表面電位計(商品名:model344、トレック・ジャパン製)を使用して測定した。電子写真感光体の表面電位は、温度15℃、湿度10%RHの環境下にて、初期暗部電位(Vd0)が-600V、初期明部電位(Vl0)が-150Vになるよう、画像露光の光量を設定した。その状態(現像機の部分に電位プローブがある状態)で設定した露光量において、上記カブリの評価と同様にして、20,000枚の画像形成を行い、繰り返し使用後の明部電位(Vl)を測定した。その明部電位の電位変動分ΔVl=Vl-Vl0(単位:V)を、表1に示す。
【0075】
(実施例2~6、9~14)
実施例1のエチルトリメトキシシラン(酸化チタンの表面処理剤)及び、添加量5部(処理量5%)を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0076】
(実施例7)
実施例2のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、シリカ・アルミナによる表面処理を行ったルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0077】
(実施例8)
実施例13のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(酸化チタンの基材を)を、シリカ・アルミナによる表面処理を行ったルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)に変更した以外は実施例13と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0078】
(実施例15)
実施例2のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:80nm、テイカ製)に、添加量5部(処理量5%)を表1のように変更し、分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を24部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0079】
(実施例16)
実施例2のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:15nm、テイカ製)に、添加量5部(処理量5%)を表1のように変更し、分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を6部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0080】
(実施例17)
実施例2の分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を24部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0081】
(実施例18)
実施例2のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)に変更し、分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を11.4部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0082】
(実施例19)
実施例2の分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を27部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0083】
(実施例20)
実施例2の分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を6部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0084】
(実施例21~24)
実施例2の下引き層の膜厚を表1のように変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0085】
(実施例25)
実施例2のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、アナターセ型酸化チタン粒子(平均一次粒径:30nm、テイカ製)に変更し、分散液調整時における表面処理済みルチル型酸化チタン粒子18部を12部に変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0086】
(実施例26)
実施例2の支持体と下引き層の間に、以下の導電層を形成した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を、表1に示す。
【0087】
酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子214部、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業製)132部を1-メトキシ-2-プロパノール50部の溶剤に加えて分散液を調整した。
【0088】
この分散液を、直径1.0mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、3時間分散処理を行い、ガラスビーズを取り除いた後、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)29部、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング製)0.03部を加えることにより、導電層用塗布液を調整した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0089】
(実施例27)
実施例2の支持体と下引き層の間に、以下の導電層を形成した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を、表1に示す。
【0090】
リンドープ酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子207部、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業製)144部を1-メトキシ-2-プロパノール98部の溶剤に加えて分散液を調整した。
【0091】
この分散液を、直径1.0mmのガラスビーズを用いて縦型サンドミルにて4.5時間分散処理を行い、ガラスビーズを取り除いた後、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)44部、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング製)0.03部を加えることにより、導電層用塗布液を調整した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0092】
(実施例28)
実施例2の支持体と下引き層の間に、以下の導電層を形成した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を、表1に示す。
【0093】
芯材粒子として、平均一次粒径が200nmのアナターゼ型酸化チタン粒子を使用した。チタンをTiO2換算で33.7g、ニオブをNb2O5換算で2.9g含有するチタンニオブ硫酸溶液を調製した。芯材粒子100gを純水に分散して1Lの懸濁液とし、60℃に加温した。チタンニオブ硫酸溶液と10mol/L水酸化ナトリウムとを懸濁液のpHが2~3になるように3時間かけて滴下した。全量滴下後、pHを中性付近に調整し、凝集剤を添加して固形分を沈降させた。上澄みを除去し、ろ過及び洗浄し、110℃で乾燥し、凝集剤由来の有機物をC換算で0.1wt%含有する中間体を得た。この中間体を窒素ガス中800℃で1時間焼成を行って、金属酸化物粒子1を作製した。
【0094】
前記金属酸化物粒子1を100部、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業製)80部を1-メトキシ-2-プロパノール60部の溶剤に加えて分散液を調整した。
【0095】
この分散液を、直径1.0mmのガラスビーズを用いて縦型サンドミルにて2時間分散処理を行い、ガラスビーズを取り除いた後、シリコーン樹脂粒子(商品名:KMP-590、信越化学工業製)15部、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング製)0.015部を加えることにより、導電層用塗布液を調整した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0096】
(比較例1)
実施例1のエチルトリメトキシシラン(酸化チタンの表面処理剤)を、メチルトリメトキシシランに、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)をルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)に変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0097】
(比較例2)
実施例1のエチルトリメトキシシラン(酸化チタンの表面処理剤)を、ヘキシルトリメトキシシランに、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)をルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)に変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0098】
(比較例3)
実施例1のエチルトリメトキシシラン(酸化チタンの表面処理剤)を、イソブチルトリメトキシシランに、ルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)をルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)に変更し、電荷発生層の形成方法を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0099】
特開2003-262968に記載の方法を参照し、CuKα特性X線回折のブラッグ角(2θ±0.2°)の9.0°、14.2°、23.9°及び27.1°に強いピークを有するオキシチタニルフタロシアニン4部及びポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM2、積水化学製)2部及びシクロヘキサノン60部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後にエチルアセテート100部を加えて電荷発生層用塗布液3を調製した。この電荷発生層用塗布液を、下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間80℃で乾燥させることによって、膜厚が0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0100】
(比較例4)
比較例3のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、シリカ・アルミナによる表面処理を行ったルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:50nm、テイカ製)に変更した以外は比較例3と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0101】
(比較例5)
比較例3のルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)(表面処理済酸化チタンの基材)を、シリカ・アルミナによる表面処理を行ったルチル型酸化チタン粒子(平均一次粒径:35nm、テイカ製)に変更し、イソブチルトリメトキシシラン(酸化チタンの表面処理剤)をヘキシルトリメトキシシランに変更した以外は比較例3と同様にして電子写真感光体を製造し、同様にカブリと電位変動の評価を行った。結果を、表1に示す。
【0102】