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特許7418125シート給送装置、画像読取装置、および画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】シート給送装置、画像読取装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/04 20060101AFI20240112BHJP
   B65H 1/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B65H7/04
B65H1/04 310Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020018274
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123462
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓也
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238158(JP,A)
【文献】特開2004-307107(JP,A)
【文献】特開2011-046497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0244208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/04
B65H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート載置される載置面を有する載置部と、
前記載置部に載置されたシート給送する給送手段と、
前記載置面から突出するように配置され、前記載置部に載置されたシートに押圧されて軸部を中心に回動する回動部材を有し、前記回動部材の回動に基づいて前記載置部に載置されたシートを検知するシート検知部と、
前記軸部を支持する支持部と、
を備え、
前記軸部は、軸方向から視た場合に凹形状である凹部を有し、
前記支持部は、前記凹部に係合して前記回動部材が回動可能であるように前記軸部を支持する凸部を有すること、
を特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記凸部は第1の円弧部を有し、前記凹部は前記第1の円弧部より曲率の大きい第2の円弧部と、前記第2の円弧部の一端から延びる第1の平面部と、前記第2の円弧部の他端から延びる第2の平面部を有し、
前記第1の円弧部が、前記第1の平面部と前記第2の平面部に接触することによって、前記回動部材は、前記支持部に支持されること、
を特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記第1の円弧部が前記第1の平面部と前記第2の平面部に接触する位置は、前記軸部を形成する最下点よりも上側に配置されること、
を特徴とする請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記シート検知部は、前記回動部材の回動を検知するセンサを有し、
前記回動部材は、前記センサの光路を遮断する遮断部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記回動部材は、前記載置面から突出してシートに当接する当接部と、前記載置部にシートが載置されていない状態において前記当接部が前記載置面から突出するように、前記回動部材を自重によって付勢する錘部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
シートが給送される給送方向において前記給送手段よりも下流側に設けられ、前記載置部に載置されたシートの先端を規制する先端規制部材を備え、
前記回動部材は、前記給送方向における前記給送手段と前記先端規制部材との間の位置において、前記載置面に設けられた穴部から突出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置によって給送されたシートの画像を読み取る読取部と、
を備える画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置によって給送されたシートに画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置されたシートの検知機構、載置されたシートを1枚ずつ分離して給送するシート給送装置と、給送されたシートの画像を読み取る画像読取装置、及びこれらを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置等に搭載される画像読取装置には、トレイに置かれたシートを1枚ずつ分離し給送するシート給送装置が備えられている。このようなシート給送装置においては、トレイに置かれたシートの有無を検知するため、トレイ上または給送入口の近傍にシート検知部を設けている。特許文献1に記載されるシート検知部は、載置されたシートに当接し回動する回動部材と、回動する回動部材の一端を検知する検知センサと、を備えている。そして、載置されるシートの自重によって回動部材を回動させ、検知センサによってシートの有無を検知する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-196545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年のシート給送装置は、製品仕様の拡張にともなって、薄紙から厚紙まで、さらにはレシートや名刺のような幅の狭いシートからA3のような幅の広いシートまで、給送することが求められている。この場合、例えば、薄紙で幅の狭いシートをトレイにセットした場合に、シートの自重が小さいため、シート検知部に設けられる回動部材を回動させることが出来ない虞がある。つまり、シートをトレイにセットした場合に、回動部材の一端を検知センサで検知する検知位置まで移動させることができず、シートを検知するこが出来なくなる。
【0005】
これらを鑑みて、本発明の目的は、シートをトレイにセットした時に、回動部材を回動させることによりシートの有無を検知する構成において、シートの自重が小さいシートでも検知できるシート給送手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、シート載置される載置面を有する載置部と、前記載置部に載置されたシート給送する給送手段と、前記載置面から突出するように配置され、前記載置部に載置されたシートに押圧されて軸部を中心に回動する回動部材を有し、前記回動部材の回動に基づいて前記載置部に載置されたシートを検知するシート検知部と、前記軸部を支持する支持部と、を備え、前記軸部は、軸方向から視た場合に凹形状である凹部を有し、前記支持部は、前記凹部に係合して前記回動部材が回動可能であるように前記軸部を支持する凸部を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートの自重が小さいシートを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る画像形成装置を示す断面図
図2】実施形態1に係る画像読取装置の断面図
図3】実施形態1に係る画像読取装置の外観図
図4】実施形態1に係る原稿搬送部の給紙部の側面図
図5】実施形態1に係る原稿搬送部の給紙部の断面図
図6】実施形態1に係る原稿検知部の構成部品の外観図
図7】実施形態1に係る原稿検知部の回動部材の動作を示す断面図
図8】実施形態1に係る回動部材の軸部を示す断面図
図9】実施形態1に係る回動部材に作用するモーメントを示す図
図10】実施形態1と比較構成とにおけるモーメントを示す図
図11】実施形態1と比較構成におけるモーメントを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に関して、図を参照して説明する。但し、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって変更されるべきであり、本発明の適用範囲をこれらに限定するものではない。
【0010】
[実施形態1]
<画像形成装置>
図1は、本発明の実施形態1に係る画像形成装置を示す断面図である。図1において、201は画像形成装置である。画像形成装置は、画像を形成する画像形成本体装置201Aと、画像形成本体装置201Aの上部に配置され、原稿の画像を読み取る画像読取装置201Bと、から構成される。ここで、画像形成装置本体201Aで搬送されるシートは用紙Pとし、画像読取装置201Bで搬送されるシートは、原稿Sとした。
【0011】
まず、画像形成本体装置201Aに関して説明する。画像形成本体装置201Aは、画像形成部201Cと用紙搬送部201Dとに分類される。画像形成部201Cは、4ドラムフルカラー方式を採用しており、レーザスキャナ210と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの計4色のトナー画像を形成するためのプロセスカートリッジ211を備えている。このプロセスカートリッジ211は、感光体ドラム212、帯電器213、現像を行うための現像器214を内包しており、トナー像を形成する。さらに、画像形成部201Cは、プロセスカートリッジ211の上方に中間転写ユニット218と、定着部220と、現像器214にトナーを供給するトナーカートリッジ215を備えている。
【0012】
中間転写ユニット218は、中間転写ベルト216、1次転写ローラ219、駆動ローラ216a、テンションローラ216bを備えており、中間転写ベルト216は、図1の矢印の方向に回転する。中間転写ユニット218の駆動ローラ216aと対向する位置には、中間転写ベルト216上に形成されたカラー画像を用紙Pに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ217が設けられている。この2次転写ローラ217の上部には、定着部220が配置されており、カラー画像が転写されたトナー像を用紙Pに定着させる。
【0013】
次に、用紙搬送部201Dに関して説明する。画像形成本部201Cの下部には、給紙装置230が配置されている。給紙装置230は、複数段のカセットに積載された用紙Pを一枚毎に繰り出し、レジストローラ240でタイミングをとり、用紙Pにトナー像を転写するため2次転写部に向かって用紙Pを搬送する。トナー像が転写された用紙Pは、定着部220によってトナー像が用紙Pに定着される。定着部220の上部には、第1排紙ローラ対225a、第2排紙ローラ対225b及び反転ローラ対225cが配置されている。用紙Pの片面だけにトナー像を印刷する場合には、第1排紙ローラ対225aあるいは第2排紙ローラ対225bによって用紙Pは搬送され、排紙トレイ250に排出される。排紙トレイ250は、排紙延長トレイ251を備えており、排紙延長トレイ251を適宜延長させることができる。この結果、排紙された用紙Pが、装置の機外へ落下する等の積載性の悪化を防ぐことが可能となる。一方、用紙Pの両面に画像を印刷する場合には、反転ローラ対225cによって用紙Pが搬送される。そして、搬送される用紙Pの先端と後端が入れ替わるように、反転ローラ対225cの回転を正逆転させることによって、用紙Pはスイッチバックされる。スイッチバックされた用紙Pは、両面搬送路Rを通過し、再度レジストローラ240に搬送され、用紙Pの裏面に画像が形成される。
【0014】
以上、上記の画像形成部201Cによる画像形成と用紙搬送部201Dによるシート搬送の一連の動作が連動して実施されることによって、用紙Pの上に画像を形成し、排紙トレイ250上に画像形成された用紙Pが排出される。
【0015】
<画像読取装置>
次に、画像読取装置201Bに関して、図2および図3を用いて詳細に説明する。図2は、図1における画像読取装置201Bの詳細な断面図を示す。図3は、画像読取装置201Bの外観図である。図2に示すように、画像読取装置201Bは、原稿を読み取るリーダ部301と原稿をリーダ部に搬送する原稿搬送部302(ADF(Auto Document Feeder))とを備えている。
【0016】
画像読取装置201Bを用いて、原稿の画像を読み取る場合、以下の2種類の方法がある。1つ目は、原稿を搬送させながら画像を読み取る「原稿流し読み」であり、2つ目は、読み取る原稿を原稿台303に載置させて、原稿の画像を読み取る「原稿固定読み」である。それぞれの読み取り方法に関して、以下に説明する。
【0017】
まず、「原稿固定読み」に関して、説明する。上述したように、原稿固定読みを実施する際には、原稿台303に読み取る原稿を載置する必要がある。図3に示すように、原稿台303に対して図示しないヒンジが装置本体の奥側に設けられており、原稿搬送部302は、リーダ部301に対して、把手部320を持ち上げることによって、R1方向に開閉可能となっている。
【0018】
原稿搬送部302をリーダ部301に対して開いた状態で、原稿台303の上に読み取りを実施したい原稿を載置する。その後、開いた原稿搬送部302を閉じ、読取開始を実施する。図2に示すように、原稿台303の下部のリーダ部301の内部には、画像を読み取るための第1画像読取手段304が備えられている。第1画像読取手段304は、リーダ部の内部に設けられた図示しないレール上を矢印T方向(副走査方向)へ位置Aから位置Bに移動可能に設けられている。つまり、原稿台303の上に載置された原稿Sに対して、第1画像読取手段304が副走査方向に移動することによって、載置された原稿Sを読み取ることが可能である。
【0019】
次に、「原稿流し読み」に関して、説明する。原稿流し読みを実施する場合、原稿搬送部302(ADF)を用いる。図2および図3に示すように、原稿搬送部302には、原稿Sが積載されるトレイである原稿トレイ306が設けられており、原稿トレイ306には原稿Sの幅方向の位置を規制するサイド規制板321がスライド自在に配置されている。サイド規制板321は、原稿トレイ306に積載された原稿Sの幅方向を規制することによって、原稿搬送時において、幅方向の位置を揃えて原稿Sを搬送できるようにしている。
【0020】
原稿トレイ306に載置された原稿Sの原稿Sの先端の上方には、ADF302の原稿搬送路を開閉する給送カバー322が設けられている。給送カバー322には、給送ローラであるピックアップローラ101が設けられており、図示しない駆動源である給紙モータによりピックアップローラ101が下方向に落下し、原稿Sに当接する。そして、図示しない給紙モータにより、ピックアップローラ101が回転することで、原稿Sを読取部304、308に向けて給送する。
【0021】
図2に示すように、ピックアップローラ101は、通常、ホームポジションである原稿Sから上方に離間する離間位置に待避しており、ユーザーが原稿トレイ306に原稿Sを載置する時に、原稿Sのセットの邪魔にならないようにしている。原稿トレイ306に載置された原稿Sは、給送する際に、ピックアップローラ101を離間位置から下降させ、原稿Sの上面に当接する給送位置へ移動させる。そして、ピックアップローラ101が回転することによって、原稿Sは、シート給送方向である原稿給送方向の下流側に設けられた分離部に搬送される。分離部は、搬送ローラであるフィードローラ102と、分離部材であるリタードローラ103とで構成され、ニップ部を形成する。フィードローラ102は、ピックアップローラ101で給送された原稿Sを原稿給送方向の下流側へ搬送するローラであり、リタードローラ103は、フィードローラ102に圧接しピックアップローラ101で給送された原稿束を1枚ずつ分離するローラである。
【0022】
1枚ずつに分離された原稿Sは、フィードローラ102の原稿搬送方向の下流側に配置された引抜ローラ対311によって搬送される。さらに、引抜ローラ対311によって搬送された原稿Sは、搬送ローラ対312によってレジローラ対313まで搬送される。レジローラ対313は一時的に停止しており、原稿Sの先端をレジローラ対313のニップ部に突き当てることで、原稿Sを撓ませて原稿Sの先端の斜行を補正する。この原稿Sの先端の斜行を補正する際の原稿Sの撓みは、ループ空間307の内側に収まるようになっている。さらに、レジローラ対313の下流側には、第1リードローラ対314、第1プラテンローラ315、第2リードローラ対316、第2プラテンローラ317、第3リードローラ対318、そして排出ローラ319が順に設けられている。
【0023】
斜行補正された原稿Sは、第1リードローラ対314によって、第1プラテンガラス305上の表面画像読取位置に搬送される。表面画像読取位置において、前述の通り上記リーダ部301の備えられた第1画像読取手段304によって搬送されながら原稿Sの表面である第1面の画像が読み取られる。この時、第1画像読取手段304は、Aの位置に停止している。表面の画像が読み取られた原稿Sは、第2プラテンローラ317によって第2プラテンガラス309上に送り込まれ、第2画像読取手段308によって、裏面画像が読み取られる。つまり、原稿流し読みを実施した場合、第1画像読取手段304と第2画像読取手段308によって原稿Sの表裏の画像を同時に読み取ることができる。すなわち、第1画像読取手段304は、原稿搬送部302によって搬送された原稿Sの表面の画像を読み取り、第2画像読取手段308は原稿搬送部302によって搬送された原稿Sの裏面の画像を読み取る。第2画像読取手段308で裏面画像が読み取られた後、第3リードローラ対318および排出ローラ対319によって原稿Sを、排紙トレイ310へ排出する。
【0024】
以上、原稿搬送部302は原稿を搬送しながら、原稿上の画像を読み取ることが出来る。なお、原稿トレイ306に載置された原稿Sは、順次、自動で読取部304、308へ原稿を送り込まれ、連続的に原稿を読み取ることが可能である。なお、ピックアップローラ101は、ジョブ中において原稿Sと当接した給送位置を保持しており、ジョブが終了した時点で上昇する。
【0025】
<原稿搬送部における給紙部の構成>
次に、原稿搬送部302における給紙部に関して、図4および図5を用いて説明する。図4は、図3において、原稿トレイ306側から原稿が給紙される給紙部Dを示した図である。図5は、図4におけるA-A断面図を示した図である。
【0026】
給送カバー部322には、原稿Sを給送するための給送ローラ101と、原稿トレイ上に載置された時の原稿の先端を規制する先端規制部材であるストッパー60と、が設けられている。また、原稿トレイ306には、載置された原稿の有無を検知する原稿検知部70が設けられている。
【0027】
まず、図4に示すように、ストッパー60が、原稿Sを給送する給送方向と直交する原稿の幅方向において、給送ローラ101を介して手前側と奥側の2か所に設けられている。この結果、セットされる原稿Sは、原稿の先端を2か所で突き当てることができ、セット時の原稿の斜行を低減することが可能となる。また、図5に示すように、ストッパー60は、原稿を給送する給送方向において、給送ローラ101とフィードローラ102との間に設けられている。これにより、原稿Sをストッパー60に突き当て時に、フィードローラ102とリタードローラ103とのニップ部に原稿Sの先端を突き当てられないようにしている。なお、ストッパー60は、給送ローラ101が離間位置にある時に、図5にある位置に保持され、給送ローラ101が給送位置にある時に、解除される。解除されたストッパー60は、給送ローラ101によって給送される原稿の先端が、ストッパー60を押し上げ給送される。
【0028】
次に、原稿トレイ306にセットされた原稿を検知する原稿検知部70に関して、説明する。上述したストッパー60と同様に、原稿検知部70もまた、原稿が給送される給送方向と直交する幅方向の略中央に配置されている。
【0029】
図6は、原稿検知部70の構成部品を示している。図6(a)は、回動部材であるフラグ71の外観図を示す。図6(b)は、フラグを検知する検知センサである原稿検知センサ72の外観図を示す。図6に示すように、フラグ71は、トレイに載置される原稿に当接する当接部711と、錘部712と、軸部713と、検知センサ72の光軸721を遮断する遮断部714と、で構成される。本実施形態において、検知センサは、光学式透過型センサであるフォトセンサを採用した。
【0030】
図7は、図4における原稿検知部70のフラグ71の動作を示す断面図である。フラグ71の軸部に対して、軸方向に直交する断面方向の図である。図7(a)は、原稿トレイ306に原稿Sを載置する前のフラグ71の状態である。図7(b)は、原稿トレイ306に原稿Sを載置した後のフラグ71の状態である。
【0031】
原稿トレイ306は、フラグ71の軸部713を回動可能に支持する支持部80が、原稿給送方向に2か所で1対に設けられており、フラグ71は、原稿の給送方向に直交する断面において、回動するように支持されている。フラグ71の一端は、原稿と当接する当接部711が設けられ、フラグ71の他端は、錘部712と検知センサの光軸721を遮断する遮断部714が形成されている。フラグ71は、軸部713を回動中心として回動可能であり、原稿Sが原稿トレイ306の上にセットされていない場合、錘部712の重さによって当接部711は、原稿トレイ306の表面から突出するように付勢される。この時、フォトセンサ72の光線はフラグ71の遮断部714によって遮断されている(図7(a))。なお、原稿トレイ306の表面部には、フラグ71の当接部711が突出できる穴部であるスリット306aが設けられている。また、フラグ71は、当接部711に設けられた突き当て部715がトレイ306の下面に接触し、所定の位置で静止する。そして、原稿Sが原稿トレイ306にセットされた場合、原稿Sが当接部711を押圧し、フォトセンサ72の光線を透過し、原稿がセットされたことを検知可能となっている(図7(b))。
【0032】
また、本実施形態において、図5に示すように、原稿給送方向において、上流側から給送ローラ101、フラグ71、ストッパー60、搬送ローラ102の順に設けられている。そのため、原稿Sの先端をストッパー60に突き当てるように原稿トレイ306にセットした時、原稿検知部70によって、原稿を検知できるように配置されている。
【0033】
<原稿検知部の回動部材の支持方法>
次に、フラグ71とフラグ71の軸部713を支持する支持部80について、図8を用いて説明する。図8は、図7のフラグ71の軸部713を拡大した図である。図8(a)は、原稿を原稿トレイにセットする前の軸部を示す。図8(b)は、原稿を原稿トレイにセットした後の軸部を示す。
【0034】
図8に示すように、フラグ71の軸部713は、第1の平面部である軸部側の平面部713aと、第2の平面部である軸部側の平面部713bと、第1の円弧部である軸部側の円弧部713cと、を有する凹部Aが設けられている。一方、支持部80には、第2の円弧部である支持部側の円弧部80aと、を有する凸部Bが設けられている。軸部側の円弧部713cは、支持部側の円弧部80aの曲率に対して、大きく設定されている。つまり、フラグ71の軸部側の平面部713a、713bが、支持部側の円弧部80aに接触することで、回動可能に支持される。図8において、支持部80と軸部713とが接触する支持位置は、黒丸にて2か所示す。本実施形態において、軸部側の円弧部713cの中心位置と支持部側の円弧部80aの中心位置は、互いに略同一となるように配置されており、フラグ71は、支持部側の円弧部80aの中心に対して回動可能に構成されている。ここで、支持方法に関して、簡潔に述べると、軸部が凹形状を有し支持部が凸形状を有しており、凸形状の先端部が凹形状の底部に係合されることによって、ヤジロベエのような構成で揺動可能に支持されている。また、フラグ71の軸部713と支持部80との支持位置(黒丸部)は、軸部713の最下点よりも上側に位置されている。つまり、軸部713は支持部80を挟み込むように支持されている。
【0035】
また、軸部713の外周部と支持部80の内周部には、隙間Xが設けてあり、フラグ71が回動中に接触することがないように構成されている。一方で、フラグ71の軸部713が支持部80から脱落しないように、支持部80の内周部は、軸部713の案内部材としても機能する。もし、充分な隙間Xがない場合、軸部713の外周部と支持部80の内周部とが、フラグ71の回動中に接触してしまい、摺動抵抗が大きくなる。
【0036】
<回動部材の摺動抵抗の低減メカニズム>
次に、本実施形態において、フラグ71の軸部713と支持部80に作用する摺動抵抗の低減に関して、図9図10、および図11を用いてメカニズムを説明する。具体的には、フラグ71に作用する回転モーメントに着目する。図9は、フラグ71に作用するモーメントを示す図である。図10は、フラグ71の軸部713に作用するモーメントを示す図である。図11は、図10におけるモーメントを示すグラフである。
【0037】
まず、図9に示すように、支持部80に支持されたフラグ71には、軸部713を支点として、錘部712の自重によるモーメントMgが作用している。また、この自重によるモーメントMgに対する抗力として、軸部713における摩擦力によるモーメントMsが作用している。ここで、自重によるモーメントMgと軸部713における摩擦力によるモーメントMsは、次の式の関係を満たす必要がある。
Mg>Ms (1)
【0038】
つまり、自重によるモーメントMgは、摩擦力によるモーメントMsよりも大きくなるように設定される。この条件は、シートをセットする際に、フラグの当接部711がトレイの載置面よりも突出し、フラグ71の遮断部714がセンサの光軸を遮断するために必要となる条件となる。なお、フラグ71は、当接部711に設けられた突き当て部715がトレイ306の下面に接触し、所定の位置で静止する。
【0039】
次に、原稿が原稿トレイにセットされ、原稿の自重により、当接部711が押し下げられる。この場合、軸部713を支点として、原稿の重さによるモーメントMpが発生する。原稿の重さによるモーメントMpが、自重によるモーメントMgよりも大きくなると、フラグ71が支持部713を支点として回転しようとする方向と反対方向へと支持部の摩擦力によるモーメントMs´が発生する。なお、MsとMs´は、方向が逆で大きさは同じであり動作方向に対しての反対方向に働く力である。以降、Ms´はMsと表記する。ここで、原稿トレイに原稿を載置した際に、原稿を検知する条件は、次の式の関係を満たす必要がある。
Mp>Mg+Ms (2)
【0040】
つまり、原稿をセットした時に作用する原稿の重さによるモーメントMpは、フラグ71の自重によるモーメントMgと軸部713における摩擦力によるモーメントMsとの和よりも大きくなる。その結果、フラグ71は原稿によって回動することができ、光学式透過型センサの光線を遮断し、原稿がセットされたことを検知することが可能となる。
【0041】
以上のように、フラグ71が必ず待機位置に戻るためには、(1)を満たす必要があり、フラグ71が必ず原稿を検知するためには(2)を満たす必要がある。もし、MpよりもMgが大きい場合、原稿Sは、先端部711から上矢印方向への反力を受け、原稿Sは先端部711を起点にして上方にうねりがある形状になることがある。その結果、遮断部714が検知センサ72の光軸721を透過することが出来ず、原稿を載置したにも関わらず、原稿を」検知できず原稿が無いと判断される。特に、レシートなどの薄紙であって幅の狭いシートは、原稿の重さによるモーメントMpが従来の原稿よりも遥かに小さくなる傾向がある。例えば、本実施形態において、普通紙(A6R、80gsm紙)が原稿検知フラグ70にかかる重量が0.34gであるのに対して、薄紙幅狭紙(58×85mm、37gsm紙)は0.02gである。このため(1)及び(2)を両方とも満たすためには、支持部における摩擦力によるモーメントMsを小さくすることが最重要である。
【0042】
次に、軸部における摩擦力によるモーメントMsを低減に関して、本実施形態の構成と比較例の構成と比較して説明する。図10(a)は本実施形態の構成を表し、図10(b)は比較例の構成を表している。比較例の構成とは、一般的によく用いられる軸部713が円形状の軸であるフラグ71を支持する構成である。
【0043】
図10の(a)において、フラグ71が原稿の重さによるモーメントMpの方向に回転しようとすると、軸部の摩擦力によるモーメントMsが作用する。軸部の摩擦力によるモーメントMsは、支持部側の円弧部80aの半径をrとし、軸部713が支持部80から受ける垂直抗力を垂直抗力R1及び垂直抗力R2とし、摩擦力をμとすると、以下の式で表される。
Ms=r×(μR1+μR2) (3)
【0044】
摩擦力μは、互いに接触する材料によって決まる値であり、垂直抗力R1及び垂直抗力R2は、フラグ71の自重によって概ね決まる値である。このため、軸部の摩擦力によるモーメントMsは、支持部の円弧部の半径rによって決まる。
【0045】
一方で、比較例の構成におけるフラグ71の摩擦力によるモーメントMsは、軸部713の半径をr´とし、軸部713が支持部80から受ける垂直抗力をそれぞれ垂直抗力R1´及び垂直抗力R2´とし、摩擦力をμとすると、以下の式で表される。
Ms=r´×(μR1´+μR2´) (4)
【0046】
式(3)と同様に、摩擦力μは、接触する材料によって決まる値であり、垂直抗力R1´及び垂直抗力R2´は、フラグ71の自重によって概ね決まる値である。このため、軸部の摩擦力によるモーメントMsは、支持部の半径r´によって決まる。
【0047】
ここで、式(3)において、支持部側の円弧部80aの半径rは限りなく小さく、例えば量産型で製造した場合、r=0.1mm程度まで小さくすることが可能である。一方で、式(4)の軸部の半径をr´は、例えば量産型で製造した場合、成形上r=1.5mm程度が限界である。これは、フラグ71の支持部として、強度を持つ必要があるためある程度の太さが必要であるためである。よって、支持部側の円弧部80aの半径rは、軸部713の半径をr´の1/15程度にすることが可能であり、その結果、軸部の摩擦力によるモーメントMsも1/15にすることが可能である。実際に、上述したように、普通紙(A6R、80gsm紙)が原稿検知フラグ70にかかる重量が0.34gであるのに対して、薄紙幅狭紙(58×85mm、37gsm紙)は0.02gであり、本実施形態において、薄紙幅狭紙の原稿を検知することが可能となる。
【0048】
次に、各種モーメントに関して、本実施形態の構成と比較例の構成とにおけるグラフを図11に示す。図11(a)は本実施形態の構成を示し、図11(b)は比較例の構成を示している。図において、幅58mm長さ85mmの64gsmの普通紙を想定して、式(1)および式(2)を満たす領域があるかを検証した結果を示す。具体的には、同重量のフラグ71に対して、フラグ71の重心位置Hgを横軸にとり、式(1)および式(2)に示した条件を満たす領域があるかの計算をした。
【0049】
図11のグラフにおいて、式(1)を満たす領域を灰色塗潰部で示し、式(2)を満たす領域をドット部で示す。両図において、MgとMpは、フラグの自重および原稿の自重によるモーメントであり、それぞれ同じ値を示す。軸部の構成の違いで差が出るのは、MsとMg+Msである。つまり、軸部における摩擦によるモーメントである。Msに関して、図11(a)の構成は0.25gfmmに対して、図11(b)の構成は2gfmmである。約10倍もの差があることを確認した。
【0050】
図11(a)のグラフに示すように、本実施形態の構成では、軸部の摩擦力によるモーメントMsが小さくなることで、式(1)および式(2)を満たす成立範囲が存在することが分かる。一方で、図11(b)のグラフに示すように、比較例の構成では、軸部の摩擦力によるモーメントMsが大きいため、式(1)および式(2)を同時に満たすことはできない。図11(b)において、式(2)の領域は、もはや存在しない構成である。
【0051】
以上、本実施形態のように、フラグ71の軸部713を支持部80に支持することによって、摺動抵抗を低減することができ、シートをトレイに載置した際に、確実にフラグ71を回動させることが可能となり、シートを検知することが出来る。本実施形態において、軸部713が凹部とし、支持部80が凸部として示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、軸部713が凸部で支持部80が凹部として示す形態においても、同様の効果を発揮することができる。本実施形態では、原稿搬送部のフラグ71について記載したが、原稿搬送部を備える画像読取装置や、その他画像形成装置のシート給送部に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0052】
101 ピックアップローラ(給送ローラ)
306 原稿トレイ(トレイ)
70 原稿検知部(シート検知部)
71 フラグ(回動部材)
711 当接部
712 錘部
713 軸部
713a 軸部側の平面部(第1の平面部)
713b 軸部側の平面部(第2の平面部)
713c 軸部側の円弧部(第1の円弧部)
714 遮断部
72 原稿検知センサ(検知センサ)
80 支持部
80a 支持部側の円弧部(第2の円弧部)
A 凹部
B 凸部
r 支持部側の円弧部の半径
Mg フラグの自重によるモーメント
Mp 原稿の重さによるモーメント
Ms、Ms´ 軸部の摩擦力によるモーメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11