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特許7418127平坦化装置、平坦化方法及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】平坦化装置、平坦化方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/00 20060101AFI20240112BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240112BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B29C59/00 D
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
H01L21/30 578
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020052545
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151720
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】寺島 茂
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-313708(JP,A)
【文献】特開2012-134214(JP,A)
【文献】特開2013-78860(JP,A)
【文献】特開2014-004826(JP,A)
【文献】特開2017-168833(JP,A)
【文献】特開2019-102606(JP,A)
【文献】特開2020-043315(JP,A)
【文献】特表2012-507138(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2051569(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29
G02B
H01L
H10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を有する型を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化装置であって、
保持面に型を吸着保持する型保持部と、
処理対象の基板を保持する基板保持部と、
前記型保持部で保持される型と、前記基板保持部で保持される前記基板との相対位置を調整する駆動部と、
前記型保持部による前記型の吸着を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板上の組成物に接触させる接触動作の際に、前記保持部の保持面から前記型を開放するように制御し、前記基板上の組成物から離型させる離型動作の際に、前記型を前記保持部の保持面に吸着するように制御し、
前記保持面の少なくとも一部は、前記型の側に突出する曲面を有することを特徴とする平坦化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記離型動作の際に、前記曲面の領域で最初に前記型を吸着させることで、離型を開始することを特徴とする請求項1に記載の平坦化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記離型動作の際に、前記型保持部と型との接触領域を拡大させる動作に連動して、前記型を吸着する領域を拡大させることで、前記基板上の組成物から前記型を離型させることを特徴とする請求項2に記載の平坦化装置。
【請求項4】
前記型保持部の保持面の一部は、当該保持面に沿う一方向において、曲率を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項5】
前記型保持部の保持面は、前記曲率を持つ方向に区分けされた複数の吸着領域を構成しており、前記複数の吸着領域は領域ごとに前記型の吸着を行えることを特徴とする請求項4に記載の平坦化装置。
【請求項6】
前記複数の吸着領域には、それぞれ静電吸着素子が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の平坦化装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記接触動作の際に、前記曲面の領域から最初に前記型を組成物に接触させ、前記型の開放を開始することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記接触動作の際に、前記型と組成物との接触領域を拡大させる動作に連動して、前記型を開放する領域を拡大させて前記基板上の組成物に前記型を接触させることを特徴とする請求項7に記載の平坦化装置。
【請求項9】
組成物を硬化させる硬化部をさらに有し、
前記硬化部は、前記型と前記基板上の組成物とが接触している状態で、組成物を硬化させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項10】
前記離型動作の際に、前記型保持部が前記型を吸着したかを検知する検知手段を有しており、
前記制御部は、前記検知手段による検知結果に応じて、前記離型動作のリトライ処理が行われるように制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項11】
平坦面を有する型を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化方法であって、
型を保持面に吸着保持する型保持部の前記保持面から前記型を開放させて、前記基板上の組成物に接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に、前記型を前記保持部の保持面に吸着させて、前記基板上の組成物から離型させる離型工程と、を有し、
前記保持面の少なくとも一部は、前記型の側に突出する曲面を有しており、
前記接触工程および前記離型工程の少なくとも一方では、前記曲面の領域から前記型の開放もしくは吸着を開始することを特徴とする平坦化方法。
【請求項12】
前記離型工程では、前記型保持部と前記型との接触領域を拡大させる動作に連動して、前記型を吸着する領域を拡大させることで、前記基板上の組成物から前記型を離型させることを特徴とする請求項11に記載の平坦化方法。
【請求項13】
前記接触工程では、前記型と組成物との接触領域を拡大させる動作に連動して、前記型を開放する領域を拡大させて前記基板上の組成物に前記型を接触させることを特徴とする請求項11または12に記載の平坦化方法。
【請求項14】
前記接触工程と前記離型工程との間に、
前記基板上の組成物を硬化させる硬化工程をさらに有することを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の平坦化方法。
【請求項15】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の平坦化装置を用いて、前記基板を平坦にする工程と、前記工程で平坦にされた前記基板を加工する工程と、を含み、
前記加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平坦化装置、平坦化方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上の未硬化の組成物を型で成形して硬化させ、基板上に組成物のパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術は、インプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術の1つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、基板上のショット領域に供給された光硬化性の組成物を型で成形し、光を照射して組成物を硬化させ、硬化した組成物から型を引き離すことで、基板上にパターンを形成する。
【0004】
また、近年では、デバイス基板の製造途中で基板上の組成物を平坦化する技術が提案されている(特許文献1参照)。基板の平坦化技術に関しては、一般的には、既存の塗布装置(スピンコーター)を用いてすでに凹凸がある基板上に塗布膜を形成することで基板の段差を平坦化する技術が知られているが、ナノスケールで平坦化するには不十分である。特許文献1には、基板の段差に基づいて組成物を滴下し、滴下した組成物に型の平面を接触させた状態で組成物を硬化することで平坦化の精度向上を図る技術が開示されており、従来の平坦化技術と比較して、平坦化の精度を向上できることがわかっている。
【0005】
ところで、このような平坦化装置では、組成物と平坦化用型とを接触させた状態で組成物を硬化させるため、硬化した組成物と平坦化用型とが密着し離型しにくいという課題が生じている。この課題に対し、特許文献2には、平坦化用の型を2つに折り曲げ可能に構成し、組成物への接触時および離型時に型を変形させることが開示されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-219679号公報
【文献】特開2019-102606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら引用文献2に開示の方法でも、型と組成物との接触領域が広いため十分に離型力を削減させることはできず、基板上に形成されているパターンの破損が発生したり、基板上の組成物で正常に平坦化できないという可能性が残る。
【0008】
そこで本発明では上記課題を鑑み、平坦面を有する型を用いて組成物を平坦化処理する際に、基板のパターンや型の平坦面を破損させることなく、基板上の組成物を平坦化するのに有利な構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、平坦面を有する型を用いて基板上の組成物を平坦化する平坦化装置に関し、保持面に型を吸着保持する型保持部と、処理対象の基板を保持する基板保持部と、前記型保持部で保持される型と、前記基板保持部で保持される基板との相対位置を調整する駆動部と、前記型保持部による型の吸着を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記基板上の組成物に接触させる接触動作の際に、前記保持部の保持面から型を開放するように制御し、前記基板上の組成物から離型させる離型動作の際に、型を前記保持部の保持面に吸着するように制御し、前記保持面の少なくとも一部は、型の側に突出する曲面を有することを特徴としてする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平坦面を有する型を用いて組成物を平坦化処理する際に、基板のパターンや型の平坦面を破損させることなく、基板上の組成物を平坦化するのに有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】平坦化装置の構成を示す概略図である。
図2】平坦化処理の概要を説明するための図である。
図3】平坦化装置における平坦化処理を説明するためのフローチャートである。
図4】基板から平坦化用の型を離型させる離型処理を説明する模式図である。
図5】平坦化装置の型保持部(チャック)の三面図である。
図6】基板から平坦化用の型を離型させる離型処理を説明する模式図である。
図7】平坦化装置の型保持部(チャック)を三面図である。
図8】剥離開始の判断を行う検知手段を示す概略図である。
図9】平坦化用の型を基板上の組成物に接触させる接触処理を説明する図である。
図10】平坦化用の型を基板上の組成物に接触させる接触処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、平坦化装置100の構成を示す概略図である。平坦化装置100は、平坦面を有する型15(モールド、テンプレート、スーパーストレート)を用いて基板11上の組成物を成形する成形装置で具現化され、本実施形態では、基板上の組成物を平坦化する。平坦化装置100は、基板上の組成物と型とを接触させた状態で組成物を硬化させ、硬化した組成物と型を引き離すことで基板上に組成物の大局的又は局所的な平坦面を形成する。
【0014】
基板は、シリコンウエハが代表的な基材であるが、これに限定されるものではない。基板11は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、チッ化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。なお、基板11には、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理により密着層を形成し、硬化性組成物との密着性を向上させた基板を用いてもよい。なお、基板11は、典型的には、直径300mmの円形であるが、これに限定されるものではない。
【0015】
型15としては、光照射工程を考慮して光透過性の材料で構成された型を用いるとよい。型15を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA(Polymethyl methacrylate)、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。なお、型15は、300mmよりも大きく、500mmよりも小さい直径の円形が好ましいが、これに限られない。また、型15の厚さは、好適には、0.25mm以上2mm未満であるが、これに限られない。
【0016】
組成物としては、光照射工程を考慮してUV硬化性液体を用いるとよい。典型的にはアクリレートやメタクリレートのようなモノマーを用いてもよい。
【0017】
平坦化装置100は、基板チャック12、基板ステージ13、ベース定盤4、支柱5、天板6、ガイドバープレート7、ガイドバー8、型駆動部9、支柱10、型チャック16、ヘッド17と、アライメント棚18を有する。また、平坦化装置100は、液滴供給部20、オフアクシスアライメント(OA)スコープ21、基板搬送部22、アライメントスコープ23、光源24、ステージ駆動部31、型搬送部32、制御部200を有する。基板チャック12及び基板ステージ13は、基板11を保持する基板保持部を構成し、型チャック16及びヘッド17は、型15を保持する型保持部を構成する。ここでは、水平面をXY平面とし、鉛直方向をZ軸方向とするようにXYZ座標系が定義されている。
【0018】
平坦化処理対象の基板11は、搬送ハンドなどを含む基板搬送部22によって、平坦化装置100の外部やウエハが格納された格納箱から搬入され、基板チャック12に保持される。基板ステージ13は、ベース定盤4に支持され、基板チャック12に保持された基板11を所定の位置に位置決めするために、X軸方向及びY軸方向に駆動される。ステージ駆動部31は、例えば、リニアモータやエアシリンダなどを含み、基板ステージ13を少なくともX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)が、基板ステージ13を2軸以上の方向(例えば、6軸方向)に駆動する機能を有していてもよい。また、ステージ駆動部31は、回転機構を含み、基板チャック12および基板ステージ13をZ軸方向に平行な軸周りに回転駆動する(回転させる)。
【0019】
型15は、搬送ハンドなどを含む型搬送部32によって、平坦化装置100の外部や型が格納された格納箱から搬入され、型チャック16に保持される。型15は、例えば、円形又は四角形の外形を有し、下面に平面部を含む。平面部は、基板上の組成物に接触して基板11の表面形状に倣うような剛性を有する。平面部は、基板11と同じ大きさ、又は、基板11よりも大きい大きさを有する。型チャック16は、ヘッド17に支持され、型15のZ軸周りの傾きを補正する機能を有する。型チャック16及びヘッド17のそれぞれは、光源24からコリメータレンズを介して照射される光(紫外線)を通過させる開口を含む。また、型チャック16又はヘッド17には、基板上の組成物に対する型15の押し付け力(押印力)を計測するためのロードセルが配置されている。
【0020】
このような型チャック16は、型15を吸着保持することができ、具体的には、静電引力によって型15の吸着保持を行う静電チャック機構や、真空吸引力によって型15の真空チャック機構などを用いることができる。本実施形態においては、静電チャック機構の例を用いて説明を行う。
【0021】
ベース定盤4には、天板6を支持する支柱5が配置されている。ガイドバー8は、天板6を貫通し、一端がガイドバープレート7に固定され、他端がヘッド17に固定される。型駆動部9は、ガイドバー8を介して、ヘッド17をZ軸方向に駆動して、型チャック16に保持された型15を基板上の組成物に接触させたり、基板上の組成物から引き離したりする機構である。また、型駆動部9は、ヘッド17をX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)機能、及び、型チャック16又はヘッド17をZ軸方向に平行な軸周りに回転駆動する機能、さらに型チャック16及びヘッド17をY軸方向に回動可能な機能を有する。
【0022】
すなわちステージ駆動部31と型駆動部9とによって、平坦化処理の際に型チャック16によって保持される型15と基板チャック12によって保持される基板11との相対位置が調整されるように、制御部200によって制御される。
【0023】
アライメント棚18は、支柱10を介して天板6に懸架される。アライメント棚18には、ガイドバー8が貫通している。また、アライメント棚18には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、基板チャック12に保持された基板11の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測系(不図示)が配置されている。
【0024】
OAスコープ21は、アライメント棚18に支持される。OAスコープ21は、基板11の複数のショット領域に設けられたアライメントマークを検出し、複数のショット領域のそれぞれの位置を決定するグローバルアライメント処理に用いられる。
【0025】
アライメントスコープ23は、基板ステージ13に設けられた基準マークと、型15に設けられたアライメントマークとを観察するための光学系及び撮像系を含む。但し、型15にアライメントマークが設けられていない場合には、アライメントスコープ23がなくてもよい。アライメントスコープ23は、基板ステージ13に設けられた基準マークと、型15に設けられたアライメントマークとの相対的な位置を計測し、その位置ずれを補正するアライメントに用いられる。アライメントスコープ23によって型15と基板ステージ13との位置関係を求め、OAスコープ21によって基板ステージ13と基板11との位置関係を求めることで、型15と基板11との相対的なアライメントを行うことができる。
【0026】
液滴供給部20は、基板11に未硬化(液状)の組成物を吐出する吐出口(ノズル)を含むディスペンサで構成され、基板上に組成物の液滴を滴下して配置(供給)する。液滴供給部20は、例えば、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板上に微小な容積の液滴状の組成物を供給することができる。また、液滴供給部20における吐出口の数は、限定されるものではなく、1つ(シングルノズル)であってもよいし、100を超えてもよい。即ち、リニアノズルアレイでもよいし、複数のリニアノズルアレイを組み合わせてもよい。
【0027】
制御部200は、CPUや他のプロセッサ、FPGAなどの処理部や、メモリなどの記憶部を含み、平坦化装置100の全体を制御する。制御部200は、平坦化装置100の各部を統括的に制御して平坦化処理を行う処理部として機能する。ここで、平坦化処理とは、型15の平坦面を基板上の組成物に接触させて平坦面を基板11の表面形状に倣わせることで組成物を平坦化する処理である。なお、平坦化処理は、一般的には、ロット単位で、即ち、同一のロットに含まれる複数の基板のそれぞれに対して行われる。
【0028】
次に、図2(a)乃至図2(c)を参照して、一般的に行われる平坦化処理について概要を説明する。ここでは、基板全面上に組成物を滴下して、その組成物と型を接触させて、組成物を平坦化させる処理について説明するが、基板の一部の領域上の組成物と型を接触させて、組成物を平坦化させてもよい。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、下地パターンが形成されている基板11に対して、液滴供給部20から組成物IMの複数の液滴を滴下する。図2(a)は、基板上に組成物IMを供給し、型15を接触させる前の状態を示している。次いで、図2(b)に示すように、基板上の組成物IMと型15の平面部15aとを接触させる。図2(b)は、型15の平面部15aが基板上の組成物IMにすべて接触し、型15の平面部15aが基板11の表面形状に倣った状態を示している。そして、図2(b)に示す状態で、光源24から、型15を介して、基板上の組成物IMに光を照射して組成物IMを硬化させる。次に、図2(c)に示すように、基板上の硬化した組成物IMから型15を引き離す。これにより、基板11の全面で均一な厚みの組成物IMの平坦化層を形成することができる。図2(c)は、基板上に組成物IMの平坦化層が形成された状態を示している。
【0030】
このような平坦化処理を行う際、大面積の型15と基板11全面の組成物とを接触させてから、当該全面において引きはがすことは困難である。接触面積が大きければ大きいほど引きはがすのに要する力(離型力)大きくなる。離型力が大きくなると離型動作自体を正常に行うことができなかったり、基板上に形成されているパターンの破損が発生したり、基板上の組成物が正常に平坦化されなかったりする可能性がある。また、平坦化処理の接触工程では、型15と基板上の組成物との間に気泡が残存しないように接触させることが必要である。
【0031】
このような課題に対して本発明では、以下に示すような型チャック16の形状を用いることで平坦化処理を良好に行うことができる。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態においては図3、4、5を参照して、本実施形態における平坦化装置100の平坦化処理について具体的に説明する。図3は平坦化処理のフローチャートである。平坦化処理は、上述したように制御部200が平坦化装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0033】
図3のステップS1において、制御部200は、基板搬送部22によって基板11を平坦化装置100内に搬入し、基板チャック12の上に載置する。
【0034】
次にステップS2において、制御部200は、液滴供給部20によって基板チャック12に載置された基板11上に組成物の液滴を滴下することで、基板11に組成物を塗布する(塗布工程)。この際に、基板11上に既に構成されているパターン等による段差情報に基づいて、組成物の塗布量を調整しながら供給する。
【0035】
適切な量の組成物が基板上に塗布されるとステップS3に進み、制御部200は、型チャック16で保持された型15を基板上の組成物に接触させる接触処理(接触動作)を開始する。具体的には、制御部200は、型チャック16によって吸着保持された型15が下降するようにヘッド17を下降させ、基板11の上の組成物と型15との接触を開始する。この際に制御部200は、型15と基板11との間に気泡が残存しないように型チャック16による型15の吸着を徐々に開放していき、最終的に完全に開放することで組成物上に型15を載置する。
【0036】
基板上の組成物と型15とが全面にわたって接触し、型15の平面部15aが基板11の表面形状に倣った後に、ステップS4に進み、制御部200は、型15を透過させて光源24からの硬化光(紫外線)を組成物に照射させ、組成物を硬化させる(露光工程)。なお、本実施形態では光源24が硬化部として機能しているが、光源以外を硬化部として用いてもよい。
【0037】
次にステップS5では、制御部200は、型チャック16のZ方向の位置制御を行いながら、型チャック16に型15を再び吸着保持させ、基板上の硬化した組成物から型15を分離させる(離型処理)。このとき、単にヘッド17を鉛直方向(Z軸方向)に上昇させて組成物から型15を分離しようとすると、数百N(ニュートン)もの大きな力が必要となる。このような大きな力が型15や基板11に加わると、基板11が有するパターンの破損や組成物の剥離や型15の破損等が引き起こされる可能性がある。そのため詳細は後述するが、本実施形態においては図5に示すような型チャック16構造とし、さらに図4に示すような離型方法を用いることで離型処理を行う。
【0038】
次にステップS6では、制御部200は、平坦化装置100による1枚の基板の平坦化処理が完了したものとして、基板搬送部22によって基板チャック12上の基板11を平坦化装置100内から搬出し、基板搬送用容器などに戻す。
【0039】
ステップS7では、制御部200は、基板11から剥離された型15の平坦面に異物付着などの異常の有無の検査を行う(型検査処理)。具体的には不図示の撮像手段などにより検査を行う。そしてステップS8で異常がないと判断されるような場合には、ステップS9に進み、処理予定の基板が残っているかを判断し、残っているような場合には、再度ステップS1から処理を開始する。
【0040】
一方ステップS8で異物付着などの異常があると判断された場合には、不図示の洗浄手段による洗浄処理や、新しい型への変更を行う必要があるため、エラーとして一連の処理を終了する。
【0041】
なお、上記フローチャートを用いて説明した平坦化処理は一例にすぎず、平坦化装置100内で組成物を塗布する例を用いて説明を行ったが、装置外で塗布した基板11を用いて平坦化処理を行ってもよい。なお型検査処理は必須の工程ではなく、必要なタイミングで行われればよい。
【0042】
次に、図4および図5を用いて離型処理について詳細に説明する。図4は、図3のステップS5に示す離型処理における様子を説明する図であり、(a)(b)(c)(d)の順に時系列に沿って並んでいる。図5(a)(b)(c)は、型チャック16の構造を説明する三面図である。型チャック16は、図5(a)(c)からわかるように、型チャックの保持面が型の側に凸(突出する)となるようなX軸方向に沿って曲率をもった湾曲した曲面を有している。本例では、X軸方向(紙面左右)断面が円弧を形成する曲線で、Y方向(紙面上下)断面は直線状であり、型チャック16の全体としては円筒形の一部をなす曲面を有している。言い換えると、型チャック16の保持面の少なくとも一部が、保持面に沿う一方向において曲率を有して設けられており、保持面に沿う他の一方向においては曲率を有さないように(一直線となるように)設けられている。なお、曲率を有さないというのは完全な直線状である必要はなく、接触処理の際に吸着素子が接触できれば多少の凹凸が生じていたとしても問題はない。
【0043】
型チャック16の型15を保持する保持面には、X軸方向に沿って短冊状に区分けされた、複数の吸着領域が設けられている。各吸着領域には静電吸着素子(以下吸着素子と称する)が設けられており、それぞれに対して個別に電力を供給して型15の吸着(ON)/開放(OFF)を制御することができる。この際には、制御部200が吸着制御手段として機能することになる。なお、静電吸着素子は吸着面に電極が設けられているが、型チャック16を介して型の保持状態を観察したいような場合には、透明電極を採用してもよい。
【0044】
型15と組成物14を介して密着している基板11は、硬化工程後に基板ステージ13にて露光位置から型チャック16の対向面位置まで移動して、離型工程が行われる。この工程では、型チャック16により型15を吸着保持することで、硬化した組成物14から型15の剥離を行う。型15と組成物14とは気泡などを含まないように接触させていることから硬化処理により密着している状態であるため簡単に剥離することができない。
【0045】
そのため、図4(a)に示すように、型15を型チャック16で保持開始する際に、型チャック16のZ軸方向から見た外周端部の一つの吸着素子から吸着保持を開始する。上述のように型チャック16はX軸方向に沿って湾曲した保持面を有しているが、基板11に組成物14を介して密着している型15は、ほぼ平面の状態であるため、曲面を持つ型チャック16と型15とは一部の領域しか接触しない。最初に接触する領域は、型15の外周部の一か所、より厳密にはY軸方向に沿った一直線であるが、静電吸着素子にはわずかに弾力性があるため、その周囲の領域も含む細長い領域が型チャック16と最初に接触し、吸着が開始される。言い換えるとX軸方向において最も端に位置する吸着素子の領域が最初に接触する領域となる。
【0046】
図4(a)の例では、図5に示す吸着素子161から接触が開始される。この際に制御部200は、接触している吸着素子161に外部から電力を供給させて吸着力を発生させ、接触していないその他の吸着素子には電力を供給せずに吸着力を発生させないように制御する。これにより、図4(a)の状態では、最初に接した吸着素子161の領域だけが型チャック16と型15との間に吸着力を発生して吸着している状態となる。
【0047】
この状態から型駆動部9の型チャック16およびヘッド17をY軸方向への回動機能を用いて型15の中心方向に向けてわずかに回動させる。この接触領域を拡大させる回動動作と連動させて吸着素子161に隣接する吸着素子162も吸着力が発生するように電力が供給される。これにより、図4(b)に示すように、吸着面が型15の中心方向(内側)に少し拡大する。このとき、吸着素子161と吸着素子162は吸着力が発生され、それ以外の吸着素子には吸着力が発生しないように制御されている。これにより型15は型チャック16の曲面に倣うように縁部がわずかに持ち上がり、硬化した組成物からの剥離が開始する。
【0048】
さらに、型駆動部9による型チャック16およびヘッド17をY軸方向へゆっくりと回動させる。そしてこの接触領域を拡大させる回動動作に連動させて吸着素子による吸着力の発生領域を広げていくことで、吸着面が型15の中心方向(内側)に徐々に広がっていく。これに伴い型15と組成物14との剥離が進む。このような動作を順次進めている途中状態が図4(c)の様子である。そして最終状態が図4(d)の様子であり、型15の剥離開始した位置(縁)と反対側の位置(縁)にまで離型領域が進んでいる。図4(d)では、型15の全域が型チャック16に吸着保持されており、型15は組成物14から大半の領域は離れている。最後に型15をZ軸方向に持ち上げることにより、縁の領域の組成物14から型15が完全に剥離され、剥離工程が完了する。硬化した組成物14が再表面となった基板11は、次のプロセス工程(不図示)に運ばれる。
【0049】
このように、型チャック16の形状の少なくとも最初に接触する部分について、型チャックの保持面が型の側に凸となる曲面となっている。そして上述のような離型制御を行うことにより離型時に基板のパターンや平坦面を破損させることなく型を離型することができ、基板上の組成物を平坦化するのに有利な構成を提供することができる。
【0050】
なお、図4の例では、型チャック16の保持面は円筒面の一部形状として示しており、説明のために曲率を大きくして図示している。しかし型15の材料として用いられる石英等は脆弱性を有する材料であるため、大きな曲率で湾曲させると破断してしまう可能性があるため、型15に使用する材料や厚みによって最適な曲率をもった保持面を適用することが重要である。保持面の形状は、円筒面の一部形状以外にも、楕円筒面や放物面、あるいはその他の曲面でも良いし、曲面から平面につながる面形状でも良い。
【0051】
また、型15は何度も平坦化処理に用いられるため、毎回同じ位置から剥離開始するとその部分が変形疲労により脆くなる可能性もあるので、剥離開始箇所が適宜変更されるように設けることが好ましい。すなわち剥離処理工程において、最初に型チャック16の吸着素子161が接する位置が変更されるよう制御することが好ましい。具体的には剥離処理を開始する前に、ステージ駆動部31で基板チャック12および基板ステージ13をZ軸方向に平行な軸周りに回転させたり、型駆動部9に型チャック16やヘッド17をZ軸方向に平行な軸周りに回転させることで、場所をずらすことができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、型チャック16の保持面の形状が常に円筒形の形状である例を用いて説明したが、保持面の形状を可変に設け、離型工程(および接触工程)の際に上記保持面の形状となるように制御してもよい。すなわち、離型工程が進むにつれて型の側に突出する曲面を構成していき型15の外周部から順に組成物から離型していくように離型処理を進める。その際には、両端部から離型処理が開始することも可能である。
【0053】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、第1の実施形態とは別の型チャック16の形状の例を示す。本実施形態では、型チャック16の保持面が曲面から平面につながる面形状である場合を示している。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0054】
本実施形態における型チャック16の構造および離型処理について図6および図7を用いて詳細に説明する。図6は、図3のステップS5に示す離型処理における様子を説明する図であり、(a)(b)(c)(d)の順に時系列に沿って並んでいる。図7(a)(b)(c)は、型チャック16の構造を説明する三面図である。
【0055】
型チャック16は、図7(a)(c)からわかるように、型チャックの保持面の一部が型の側に凸(突出する)となるようなX軸方向に沿って曲率をもった湾曲した曲面と当該曲面に連続的に連なる平面を有している。すなわち、X軸方向(紙面左右)断面は、円弧を形成する曲線と平面とで形成され、Y方向(紙面上下)断面は直線状で形成され、型チャック16全体としては円筒形の一部をなす曲面と平面とからなる形状となっている。なお、曲面領域は、型チャック16のZ軸方向から見た外周端部のうち、少なくとも一部が含まれるように設けられていればよい。
【0056】
型チャック16の型15を保持する保持面には、X軸方向に沿って短冊状に区分けされた、複数の吸着領域が設けられている。各吸着領域には吸着素子が設けられており、それぞれに対して個別に電力を供給して型15の吸着(ON)/開放(OFF)を制御することができる。図7(b)に示す吸着素子161~167のうち、吸着素子161~166は、型チャック16の曲面領域を曲線方向に対して複数の短冊状に区分けされた領域に設けられており、第1の実施形態の吸着素子形状とほぼ同様である。一方、図7(b)に示す吸着素子167は、型チャック16の平面領域に設けられている。なお、この平面領域の吸着素子は、必ずしも1つである必要はなく、複数の吸着素子が設けられていてもよい。
【0057】
以上のような構成としても、型チャック16の曲面領域の端部に位置する一つの吸着素子から吸着を開始することにより、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0058】
型チャック16の一部はX軸方向に沿って湾曲した保持面を有しているが、基板11と組成物14を介して密着している型15は、ほぼ平面の状態であるため、曲面を持つ型チャック16と型15とは一部の領域しか接触しない。最初に接触する領域は、型15の外周部の一か所、より厳密にはY軸方向に沿った一直線であるが、静電吸着素子にはわずかに弾力性があるため、その周囲の領域も含む細長い領域が型チャック16と最初に接触し、吸着が開始される。図6(a)の例では、図7に示す吸着素子161から接触が開始される。この際に制御部200は、接触している吸着素子161に外部から電力を供給させて吸着力を発生させ、接触していないその他の吸着素子には電力を供給せずに吸着力を発生させないように制御する。これにより、図6(a)の状態では、最初に接した吸着素子161の領域だけが型チャック16と型15との間に吸着力を発生して吸着している状態となる。
【0059】
この状態から型駆動部9の型チャック16およびヘッド17をY軸方向への回動機能を用いて型15の中心方向に向けてわずかに回動させる。この接触領域を拡大させる回動動作と連動させて吸着素子161に隣接する吸着素子162も吸着力が発生するように電力が供給される。これにより、図6(b)に示すように、吸着面が型15の中心方向(内側)に少し拡大する。このとき、吸着素子161と吸着素子162は吸着力が発生され、それ以外の吸着素子には吸着力が発生しないように制御されている。これにより型15は型チャック16の曲面に倣うように縁部がわずかに持ち上がり、硬化した組成物からの剥離が開始する。
【0060】
さらに、型駆動部9による型チャック16およびヘッド17をY軸方向へゆっくりと回動させる。そしてこの回動動作に連動させて吸着素子による吸着力の発生領域を広げていくことで、吸着面が型15の中心方向(内側)に徐々に広がっていく。これに伴い型15と組成物14との剥離が進む。このような動作を順次進めていくと図6(c)の状態となる。
【0061】
このような状態となったら保持面の平面部分に位置する吸着素子167による吸着力が発生するように電力が供給される。この状態で型駆動部9により型チャック16およびヘッド17をY軸方向に回動させることで、吸着素子167に対応する型15の接触領域を剥離させる。型15の剥離開始した位置(縁)と反対側の位置(縁)にまで離型領域が進んだ様子が図6(d)の状態である。最後に型15をZ軸方向に持ち上げることにより、縁の領域の組成物14から型15が完全に剥離され、剥離工程が完了する。硬化した組成物14が再表面となった基板11は、次のプロセス工程(不図示)に運ばれる。
【0062】
このように、本実施形態のような型チャック16形状としても上述のような離型制御を行うことにより離型時に基板のパターンや平坦面を破損させることなく型を離型することができ、基板上の組成物を平坦化するのに有利な構成を提供することができる。
【0063】
さらに、本実施形態のように、型チャック16の一部を平面形状とすることで、平面領域に設ける吸着素子の形状を適宜変更できるという自由度を確保することができる。具体的には、型チャック16の平面部分の内側を気体供給や吸引が可能な構造とし、接触処理時に型15を加圧変形させて凸形状に膨らました状態で基板上の組成物に接触させる。そして平面部分は、このような凸形状で接触開始させ、曲面部は平面部分が接触された後に、型駆動部9により型チャック16およびヘッド17をY軸方向へ回動させながら接触させる。このように接触処理を行うことで接触処理時の気泡混入を低減させることができる。
【0064】
また、型チャック16の一部を平面形状とすることで型15の多くの部分に余計な曲げストレスがかからなくなるめ、型15の長寿命化に寄与することもできる。
【0065】
(第3の実施形態)
本実施形態では、剥離開始の有無を検知することができる検知手段を設け、離型処理が開始されたかを判断する場合を説明する。本実施形態の剥離検知は、第1の実施形態および第2の実施形態の離型処理に適用することができる。
【0066】
図8に検知手段を設けた場合の概略図を示す。検知手段として機能するセンサー部51は、基板11と型15の端面状態を検知することができる。制御部200は、センサー部51からの検知結果(情報)に基づいて端面状態を判断し、型駆動部9による型チャック16およびヘッド17をY軸方向での回動動作を制御することができる。
【0067】
センサー部51は発光部と受光部を備えており、発光部は基板11と型15のそれぞれのエッジ部に観察光を照射し、当該エッジ部で反射して帰ってくる反射光を受光部で受光することで、エッジ部の変化を検知することができる。これによって、制御部200は、型15と組成物14との剥離が開始されたかどうかを判断することができる。剥離が開始されると、基板11のエッジ部からの反射光には変化は生じないが、型15のエッジ部からの反射光は光軸が変わるためセンサー部の受光部で検知できる光量に変化が生じる。すなわち予め剥離が正常に行われる際の光量の変化と比較することで、正常に剥離が行われているかを判断することができる。剥離が開始しない状況としては、基板11も型15と一緒に持ち上がる場合や、基板11も型15も持ち上がらない場合が考えられるが、このような場合には、正常な剥離の場合と光量の変化が異なるため、剥離が行えていないと判断することができる。
【0068】
剥離が正常に行えていない状態で第1及び第2の実施形態で示したような離型処理を進めてしまうと、再度離型処理を最初から行う必要があるため時間のロスとなるし、型15の破損といったトラブルを誘発する可能性もある。そのため、剥離が正常に行えていないような場合には、離型処理を一旦停止し、再度剥離処理を開始するリトライ処理を行うことが好ましい。具体的には検知手段で剥離が行えないと判断した場合には、型チャック16の回動を戻して、端部から再度離型処理が開始されるように試みる。これを複数回繰り返すことで剥離を促すことができる。
【0069】
なお、リトライ処理としては、型チャック16の回動を戻すだけでなく、いったん型チャック16を型15から完全に離間し、型15の外周部の他の位置から離型処理を開始するようにしてもよい。具体的には、ステージ駆動部31で基板チャック12および基板ステージ13をZ軸方向に平行な軸周りに回転させたり、型駆動部9に型チャック16やヘッド17をZ軸方向に平行な軸周りに回転させることで、剥離位置を変更することができる。このとき例えば45度程度回転させるようにし、これを繰り返すことで、剥がれやすい位置から離型処理を開始させることができる。
【0070】
さらに、他のリトライ処理としては、吸着素子161の隣の吸着素子162の吸着力を発生させるように制御する方法も考えられる。型チャック16の保持面は曲面であるため、最初に接触する領域の吸着素子161以外は型15に接触しないが、近接した位置にあるため、吸着力は発生する。そのため、吸着力が作用する面積を増やすことで型15の端部領域を吸着する力を大きくすることができ、剥離を促すことができる。さらに、他のリトライ方法としては、吸着素子161に供給する電圧を高くすることで、静電吸着力を大きくすることで、剥離を促す方法もある。
【0071】
すなわち、離型処理が正常に行えていないと判断された場合には、上述のような様々なリトライ処理を適宜組み合わせて剥離を促すことで、確実に離型させることができる。
【0072】
なお、剥離開始を検知する方法は上記例に限るものではないが、型チャック16及び型15に非接触で検知する方法が望ましい。上記例以外の手法としては、例えば型チャック16が剥離開始の回動を始めた時点で、型15と型チャック16との間に隙間ができるかを、型外周の接線方向(図4のY方向)から光を照射して通過する光量で判断する方法も採用することができる。
【0073】
(第4の実施形態)
第1の実施形態乃至第3の実施形態では、離型処理について説明したが、本実施形態においては上記実施形態で示した形状の型チャック16を用いた場合の接触処理について説明する。以下では図5に示す型チャック16を用いて説明を行う。
【0074】
図9及び図10を用いて本実施形態における接触処理の詳細に説明する。図9及び図10は、それぞれ図3のS3に示す接触処理における様子を説明する図であり、(a)(b)(c)(d)の順に時系列に沿って並んでいる。
【0075】
組成物が塗布された基板11に塗布されると、平坦化装置は接触処理を開始する。型15は、円筒形状に型チャック16に保持されているので、組成物14との最初の接触箇所を決める必要がある。型チャック16の保持面は図5に示すようにX軸方向に沿って短冊状に区分けされた、複数の吸着領域が設けられている。各吸着領域には静電吸着素子が設けられており、それぞれに対して個別に電力を供給して型15の吸着(ON)/開放(OFF)を制御することができる。
【0076】
接触処理では、例えば図9に示すように図4に示す離型処理と逆方向に型チャック16を回動させながら組成物14が塗布された基板11に接触させてもよいし、図10に示すように離型処理と同じ方向に型チャック16を回動させながら接触させてもよい。
【0077】
基板11の端部に曲面となっている型15の一部を接触させ、型15の表面に組成物14をなじませた後、その部分に対応する吸着素子の吸着力を開放するように制御する。このとき隣の吸着素子162は、吸着力を維持するように制御しておく。これにより、型15は型チャック16の保持面から一部だけ離れ、その部分は組成物上で型15の平坦性を取り戻す。
【0078】
その後、型チャック16の円筒面が組成物14の面上を転がるように回動させる制御を行い、型15を平面化させながら基板11上の組成物14に密着領域の拡がりに連動させて、接触領域の吸着素子の吸着力を開放するように制御を行う。そして型15の全面が組成物14に接触したら型チャック16から型15を完全に分離する。
【0079】
なお、貼り付けの際には必ずしも外周端から始めなくともよい。基板11は円形であるため外周端の一か所から接触を開始して接触工程を進める場合には、特に接触初期に接触面積が急激に広がるため気泡を混入しやすくなるという懸念がある。この懸念を回避するため、複数の吸着素子のうち少し内側の吸着素子の位置から接触を開始することが好ましい。
【0080】
図10(a)は吸着素子163から接触処理を開始する場合を示している。このとき、組成物14が塗布された基板11に対して、型チャック16は保持面の吸着素子163が最初に接触するように型駆動部9で角度調節をして基板11の対応箇所に近づけていき、図10(a)のように組成物14に接触させる。このとき吸着素子161と吸着素子162及び吸着素子164とそれ以降の吸着素子は、まだ接触しておらず組成物14との間に隙間が存在している。
【0081】
次に制御部200は、吸着素子162の吸着力が開放されるように制御し、その直後に吸着素子161の吸着力も開放されるように制御する。この時間差はほんのわずかで良く、吸着面の曲率と原版の材質と厚みによって最適な時間差を設定する。型15は型自身の平面に戻る力で型チャック16から離れ、型15と組成物14との接触面は外周端方向に向かって広がり、図10(b)に示すように吸着素子163の紙面左側の型15の領域が組成物14の平面に密着する。この際、型駆動部9は動かさなくても良い。
【0082】
次に型駆動部9により型チャック16の保持面を基板上の組成物14に沿うように回動駆動させながら、当該回動動作と連動して吸着素子163、164、165と順に時間差をつけて吸着力を開放して、型15は組成物14と平面状に密着させる。途中経過である図10(c)の状態を経て、図10(d)のように基板11の右側の外周部まで進ませ、最後に型15をZ軸方向に持ち上げることにより、型15の接触工程が完了する。
【0083】
このように接触工程を行うことで、図5に示すような離型処理に有用な型チャック16の形状であったとしても、型15と基板上の組成物との間に気泡が残存しないように接触させることができる。
【0084】
(物品製造方法)
次に、前述の平坦化装置又は平坦化方法を利用した物品(半導体IC素子、液晶表示素子、カラーフィルタ、MEMS等)の製造方法を説明する。当該製造方法は、前述の平坦化装置を使用して、基板(ウェハ、ガラス基板等)に配置された組成物と型を接触させて平坦化させ、組成物を硬化させて組成物と型を離す工程とを含む。そして、平坦化された組成物を有する基板に対して、リソグラフィ装置を用いてパターンを形成するなどの処理を行う工程と、処理された基板を他の周知の加工工程で処理することにより、物品が製造される。他の周知の工程には、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。本製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10