(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電極前駆体、電極前駆体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240112BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240112BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240112BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240112BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20240112BHJP
B29C 64/336 20170101ALI20240112BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240112BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M10/058
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y80/00
B29C64/141
B29C64/336
H01M10/04 Z
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2023075780
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2019022618の分割
【原出願日】2019-02-12
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018024117
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】久保 健太
(72)【発明者】
【氏名】谷内 洋
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-100443(JP,A)
【文献】特表2018-523595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/336
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 80/00
B29C 64/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池に適用される電極
シートであって、
樹脂を含む
樹脂基材と、前記
樹脂基材上に設けられ
アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む保持層と、
を含むシート状基材と、
前記シート状基材より高い熱分解温度を有する活物質を含み前記保持層により保持される複数の活物質粒子と、
を備える電極
シート。
【請求項2】
二次電池に適用される電極シートであって、
活物質を含む複数の活物質粒子と、
樹脂を含む樹脂基材と、前記樹脂基材上に設けられアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含み、前記複数の活物質粒子を保持する保持層と、を有するシート状基材と、を備え、
前記活物質は、前記シート状基材より高い熱分解温度を有することを特徴とする電極シート。
【請求項3】
前記複数の活物質粒子の平均粒径は、前記保持層の層厚より大きい請求項1
または2に記載の電極
シート。
【請求項4】
前記複数の活物質粒子は、前記保持層と接する第1の粒子表面と前記保持層と接しない第2の粒子表面とを含む請求項1
~3のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項5】
酸素を含む雰囲気下における熱分解温度において、前記
樹脂基材は前記活物質粒子をより低い熱分解温度を呈する請求項1~
4のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項6】
前記
樹脂基材は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)の少なくともいずれかを含む請求項1~
5のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項7】
前記活物質粒子と組成が異なる複数の第2の活物質粒子をさらに備える請求項1~
6のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項8】
前記複数の第2の活物質粒子は、少なくとも一部が前記保持層に
保持される請求項
7に記載の電極
シート。
【請求項9】
前記複数の第2の活物質粒子は、前記活物質粒子と組成が異なる請求項
7または
8に記載の電極
シート。
【請求項10】
前記保持層のうち前記活物質粒子が配置されていない位置において
保持され
前記シート状基材より高い熱分解温度を有する
無機固体電解質を含む電解質粒子をさらに備える請求項1~
6のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項11】
前記電極
シートは、酸素ガスを含有する雰囲気下における加熱により前記保持層と前記
樹脂基材の重量が減少することにより前記二次電池に適用される電極となる請求項1~
10のいずれか1項に記載の電極
シート。
【請求項12】
二次電池に適用される電極
シートの製造方法であって、
樹脂を含む
樹脂基材上に粘着性を有する粘着層を設ける工程と、
前記粘着層上に活物質を含む複数の活物質粒子を配置する工程と、
経時、および、前記粘着層を硬化する工程を含むこと、の少なくともいずれかにより前記粘着層の粘着力を低下させる工程と、を含む電極
シートの製造方法。
【請求項13】
酸素を含む雰囲気下における熱分解温度において、前記活物質粒
子より低い熱分解温度を呈する樹脂シートを前記
樹脂基材として準備する工程をさらに有する請求項
12に記載の電極
シートの製造方法。
【請求項14】
前記電極
シートは、酸素ガスを含有する雰囲気下における加熱により前記
粘着層と前記
樹脂基材の重量が減少することにより前記二次電池に適用される電極と
する請求項
12または13に記載の電極
シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料層の製造方法、立体物の製造方法、材料層、積層体、材料層形成装置、および、積層造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属、セラミック、樹脂等の各種材料によって形成された材料層を積み上げることによって所望の形状の立体物を形成する、積層造形法が注目されている。近年では、積層造形法の適用分野は広がりを見せており、単一種類の材料からなるモックアップやパーツを形成するだけでなく、複数種類の材料からなる電池や電子部品、配線基板などの各種デバイスを形成することが行われつつある。
【0003】
特許文献1には、正極活物質を含む正極インクと、高分子電解質を含む電解質インクと、負極活物質を含む負極インクと、を用いて全固体電池を製造する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法では、各インクをインクジェット法で塗り分けて、所望の材料がパターン状に配置された層を形成する。得られた層を乾燥させて材料層とした後、その材料層の上にさらに同様にして材料層を形成する。これを繰り返すことにより、正極活物質、高分子電解質、負極活物質が3次元的に任意のパターンで配置された構造を有する全固体電池が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、1つの材料層を形成する際に2種類のインクを用いることで、2種類の材料が任意のパターンで配置された材料層を形成することができる。しかしながら、インクジェット法によって正極用、負極用、電解質用の電池の構成要素となる材料のインクを塗布する場合にはバインダー樹脂や溶剤、分散剤などの目的外の材料をインクに含める必要がある。その結果、形成される材料層中における各構成要素となる材料の密度が低くなってしまうという課題があった。
【0006】
そこで本発明では、上述の課題に鑑み、所望の材料が任意のパターンで配置され、該所望の材料を高い密度で含む材料層を形成できる材料層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る電極シートは、二次電池に適用される電極シートであって、
樹脂を含む樹脂基材と、
前記樹脂基材上に設けられアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含む保持層と、を含むシート状基材と、
前記シート状基材より高い熱分解温度を有する活物質を含み前記保持層により保持される複数の活物質粒子と、
を備える電極シート。
また、本発明の実施形態に係る電極シートは、二次電池に適用される電極シートであって、活物質を含む複数の活物質粒子と、
樹脂を含む樹脂基材と、前記樹脂基材上に設けられアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含み、前記複数の活物質粒子を保持する保持層と、を有するシート状基材と、を備え、
前記活物質は、前記シート状基材より高い熱分解温度を有することを特徴とする。
また、本発明の実施形態に係る電極シートの製造方法は、二次電池に適用される電極シートの製造方法であって、
樹脂を含む樹脂基材上に粘着性を有する粘着層を設ける工程と、
前記粘着層上に活物質を含む複数の活物質粒子を配置する工程と、
経時、および、前記粘着層を硬化する工程を含むこと、の少なくともいずれかにより前記粘着層の粘着力を低下させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の材料が任意のパターンで配置され、該所望の材料を高い密度で含む材料層を形成できる材料層の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施形態に係る材料層形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】第1の基材上で搬送される充填剤を模式的に示す図である。
【
図5】第1の充填装置による充填プロセスにおける第1の基材の表面近傍の拡大図である。
【
図6】担持材としてブラシ繊維を用いた場合の充填装置の構成を模式的に示す図と、担持材として弾性材を用いた場合の充填装置の構成を模式的に示す図である。
【
図8】第2の充填装置による充填プロセスにおける第2の基材の表面近傍の拡大図である。
【
図9】転写部によって第1の粒子が転写された後の第2の基材と、転写部によって第2の粒子が転写された後の第2の基材と、を模式的に示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る材料層形成装置の構成を模式的に示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係る積層造形システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図12】積層ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図13】除去ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図14】表面に凹凸パターンを形成した第1の基材の構造を模式的に示す図である。
【
図15】ポリエステル製のシートの熱重量分析結果を示す図である。
【
図16】第1の粒子を転写した後に、第1の粒子より平均粒径が小さい第2の粒子を転写した材料層を備える実施形態を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている各部材の寸法、材質、形状、その相対位置などは、特に特定的な記載が無い限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態である材料層の製造方法および材料層形成装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る材料層の製造方法のフローチャートである。
【0013】
本実施形態に係る材料層の製造方法は、下記の工程(1)~(2)を有する。各工程の詳細については後述する。
工程(1):基材上に第1の粒子をパターン状に配置する第1の工程(S101)
工程(2):基材上の第1の粒子が配置されていない領域に第2の粒子を配置する第2の工程(S102)
また、第2の工程S102は、第2の粒子を担持させた担持材を、第1の粒子が配置された基材に摺擦する工程を有する。
【0014】
本実施形態に係る材料層の製造方法では、第1の粒子を基材上に配置した後に、その基材に第2の粒子を担持させた担持材を摺擦することによって、基材上の第1の粒子が配置されていない領域に第2の粒子を緻密に配置することができる。第2の粒子は担持材とともに基材に摺擦される間に、基材表面による付着力や基材表面に配置された第1の粒子や第2の粒子による付着力によって拘束され、緻密に配置されていく。これにより、複数の粒子が任意のパターンで配置され、かつ、緻密度の高い材料層を形成することができる。
【0015】
なお、「担持材を基材に摺擦する」とは、担持材が基材そのものと直接接触しない場合も含む。すなわち、上記表現は、第2の粒子を担持した担持材を基材に摺擦して、第2の粒子のみが基材そのものと直接接触する場合も含むものである。
【0016】
第1の工程S101において基材上に第1の粒子をパターン状に配置する方法は特に限定はされない。例えば、表面に凹凸パターンが形成された転写用基材を用意し、第1の粒子を担持させた担持材を該転写用基材に摺擦して凹凸パターンの凹部に第1の粒子を緻密に配置し、これを別の基材に転写することで、基材上に第1の粒子をパターン状に配置してもよい。あるいは、基材上にパターン状に液体を塗布した後に該液体に第1の粒子を含む粉末を付着させる方式によって、基材上に第1の粒子をパターン状に配置してもよい。以下、第1の粒子を担持させた担持材を転写用基材に摺擦して転写用基材の表面の凹部に第1の粒子を緻密に配置した後に、この第1の粒子を基材に転写する場合について説明する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る材料層形成装置の構成を模式的に示す図である。
【0018】
本実施形態に係る材料層形成装置1は、第1の基材11aを格納供給する第1の格納容器21aと、第1の基材11aを搬送する第1のベルト装置22aと、第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するパターン形成装置23と、を有する。材料層形成装置1は、第1の基材11a上に形成された凹凸パターンの凹部に第1の粒子P1を配置する第1の充填装置24aを有する。材料層形成装置1は、第2の基材11bを格納供給する第2の格納容器21bと、第2の基材11bを搬送する第2のベルト装置22bと、を有する。材料層形成装置1は、第1のベルト装置22aと第2のベルト装置22bがそれぞれ有するローラが対向した転写部25aを有しており、転写部25aにおいて第1の基材11aから第2の基材11bへと第1の粒子P1が転写される。さらに、材料層形成装置1は、第2の基材11b上の非転写部に第2の粒子P2を配置する第2の充填装置24bを有する。なお、本件の効果を説明する上で関連性の低い装置、例えば転写後の第1の基材11aを第1のベルト装置22aから剥離回収するための剥離回収装置や各クリーニング装置等は、図示および詳細説明を省略する。
【0019】
材料層形成装置1においては、パターン形成装置23および第1の充填装置24a、転写部25aが、第2の基材11b上に第1の粒子P1をパターン状に配置する第1の配置手段に相当する。また、第2の充填装置24bが、第2の基材11b上の第1の粒子P1が配置されていない領域に第2の粒子P2を配置する第2の配置手段に相当する。
【0020】
以下、材料層形成装置1による基材11上への材料層12の形成方法を、プロセスごとに流れに沿って説明する。
【0021】
まず、供給手段(不図示)によって第1の格納容器21aから第1のベルト装置22aに第1の基材11aが供給される。
【0022】
第1の基材11aの材質は特に限定はされないが、パターン形成装置23(後述)によって紫外線硬化性インクが塗布される場合には、少なくともその表面は、当該紫外線硬化性インクの濡れ性が高い材料で構成されていることが好ましい。また、第1の基材11aの表面は平滑であることが好ましい。第1の基材11aとしては、典型的には、使用する紫外線硬化性インク(水系または油系)に合わせて親水処理または親油処理が施されたポリエステルなどの樹脂製のシートを用いることができる。なお、第1の基材11aは、カット紙のように個別に切り離された基材を用いてもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材を用いてもよい。
【0023】
第1のベルト装置22aは、供給された第1の基材11aをパターン形成装置23のパターン形成位置へと搬送する。第1のベルト装置22aは、駆動ローラ221a,222a、加圧ローラ223aと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224aと、を有する。このとき、加圧ローラ223aは従動で回転している。
【0024】
搬送部材224aは、樹脂製や金属製などから選択されることが好ましく、例えば、ポリイミド製の樹脂ベルトを用いることができる。駆動ローラ221a,222aは、金属製の金属ローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の金属ローラを用いることができる。加圧ローラ223aは、表層に弾性層を有するソフトローラを用いることが好ましく、例えば、ステンレス製の芯金の表面にシリコーンゴムの弾性層を設けたソフトローラを用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では第1の基材11aを搬送する搬送装置として第1のベルト装置22aを用いているが、ベルト装置の代わりにローラ装置を用いることもできる。後述する第2のベルト装置21bについても同様である。
【0026】
パターン形成装置23は、パターン形成位置へと搬送された第1の基材11aに微細な凹凸パターンを形成する。凹凸パターンを形成する方法としては、特に限定はされないが、UVインプリント方式、熱インプリント方式、UVインクジェット方式、印刷方式、レーザーエッチング方式等を用いることができる。パターン形成装置23がUVインプリント方式によって凹凸パターンを形成する場合には、パターン形成装置23は、第1の基材11a上に紫外線硬化性組成物を塗布する塗布手段を有する。また、パターン形成装置23は、表面に凹凸パターンが形成されたモールドを第1の基材11a上の紫外線硬化性組成物に押印する押印手段と、紫外線硬化性組成物に紫外線を照射する光源と、を有する。典型的には、紫外線硬化性組成物としては、紫外線硬化タイプの液状シリコーンゴム(PDMS)や樹脂を用い、モールドとしてはフィルムモールドを用い、光源としてはUVランプを用いることができる。
【0027】
第1の充填装置24aが第1の粒子P1を担持した担持材S1を用いて第1の粒子P1を凹部に充填する場合、第1の基材11a上の凹凸パターンの凹部の開口径は、第1の粒子P1のメジアン径よりも大きく担持材S1の平均サイズよりも小さいことが好ましい。ここで、凹凸パターンの凹部の開口径は、凹部の短手方向の開口径であることが好ましく、凹部の短手方向の最大開口径であることがより好ましい。これにより、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部(典型的には底面)に接触することができ、担持材S1は該凹部の底部には接触することができない。これにより、凹部の底部に接触した第1の粒子P1を該凹凸パターンで捕捉することができ、一方で、担持材S1は該凹凸パターンで捕捉しないようにすることができる。なお、換言すれば、第1の粒子P1は凹凸パターンの凹部の底部に接触でき、第1の担持材S1は凹凸パターンの凹部の底部に接触できないことが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態においてはパターン形成装置23によって第1の基材11a上に凹凸パターンを形成するが、これに限定はされず、表面に凹凸パターンが予め形成された基材を第1の基材11aとして用いてもよい。また、第1のベルト装置22aの搬送部材224aの表面に直接、パターン形成装置23によって凹凸パターンを形成してよいし、搬送部材224aとしてその表面に凹凸パターンを有する搬送部材を用いてもよい。この場合は、耐久性を鑑みて、ステンレスやアルミニウムなどの金属ベルトを用い、レーザーエッチングやウェットエッチング、ドライエッチングなどの微細加工技術により表面に凹凸パターンを形成することが好ましい。
【0029】
表面に凹凸パターンが形成された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって第1の充填装置24aの充填位置へと搬送される。
【0030】
図3は、本実施形態に係る充填装置の構成を模式的に示す図である。以下、第1の充填装置24aの構成について説明するが、第2の充填装置24bについても同様である。
【0031】
第1の充填装置24aは、充填剤241aを収容する充填容器242a、充填剤241aを撹拌搬送する撹拌スクリュー部材243a、充填剤を回収する回収部材244aと、磁性部材247aと、を有する。
【0032】
充填剤241aは、第1の粒子P1と、第1の粒子P1を担持する担持材S1と、を有する。充填剤241aは、複数の第1の粒子P1によって構成される粉体と、複数の担持材S1によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。充填容器242aに収容された充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送される際に十分に混ざり合い、摩擦帯電する。これにより、担持材S1の表面に第1の粒子P1が担持される。
【0033】
第1の粒子P1は、第1の基材11a上に形成された凹凸パターンの凹部に充填される粒子であり、その材質は特に限定はされない。第1の粒子P1は、金属粒子、セラミック粒子、ガラス粒子などの粒子状の無機材料であってもよいし、樹脂粒子などの粒子状の有機材料であってもよい。
【0034】
担持材S1は、磁性粒子である。担持材S1は、フェライトコア粒子や磁性体が分散された樹脂粒子の表面を、樹脂組成物で被覆した粒子であることが好ましい。担持材S1の粒径や材質は、第1の粒子P1の粒径や材質に合わせて適宜選択される。これにより、第1の粒子P1を安定して担持することができる。
【0035】
また、帯電性や凝集性を改善するために、充填剤241a中に第1の粒子P1および担持材S1以外の粒子を添加したり、第1の粒子P1の表面を樹脂組成物で被覆したりしても構わない。また、粒子P1の導電性の改善するために、導電助剤として、アセチレンブラック等のカーボンブラックや金属、合金粉末を含有する形態、第1の粒子P1の表面にかかる導電助剤が被覆された形態が、本実施形態の変形例として含まれる。
【0036】
回収部材244aは、図中の矢印d2方向に回転可能なローラ245aと、ローラ245aの内部に配置され、充填容器242aに対して固定された磁石246aと、を有している。また、磁性部材247aは、搬送部材224aを介して充填容器242aと対向して配置されており、その内部に磁石248aを有している。磁石246aは、回収部材244aの回転方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。磁石248aは、搬送部材224aの搬送方向に沿って交互に配置された複数のN極とS極を有している。また、磁石246aは、磁石248aの最下流の磁極(本実施形態ではS1極)と最も近接して対向する位置に異極の磁極(本実施形態ではN1極)を有しており、最下流の位置でN1極と同極のN2極が配置されている。なお、磁石246aおよび磁石248aは複数の磁石から構成されていてもよく、磁石246aおよび磁石248aを構成する磁石の種類は特に限定はされない。例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などの希土類磁石、プラスチック磁石等の永久磁石や、電磁石などの磁界を発生する手段を用いることができる。なお、磁石248aは、第1の基材11aの搬送方向またはその逆方向に移動可能に構成してもよい。
【0037】
なお、回収部材244aの、搬送部材224aの搬送方向の上流または下流に、第1の基材11a上の充填剤241aを規制する規制部材や、回収部材244aによって回収しきれない充填剤241aを再度回収する回収部材を設けても構わない。再度回収する回収部材としては、回収部材244aと同様の部材のほか、固定磁石や規制部材のような簡易な部材からエアブローによる回収を行う回収部材などを用いることができる。
【0038】
次に、第1の充填装置24aによって第1の基材11a上の凹部に第1の粒子P1を充填するプロセスについて、
図3~5を用いて説明する。
【0039】
第1の搬送部材224aが
図3中の実線矢印d1方向に移動することにより、第1の搬送部材224aによって担持搬送されている第1の基材11aが搬送され、第1の充填装置24aの充填位置へと搬送される。
【0040】
撹拌スクリュー部材243aにより、充填剤241aが搬送され、第1の基材11a上に供給される(
図3中点線a)。このとき、磁性部材248aと回収部材244aによって磁界が形成されており、磁性粒子である担持材S1を含む充填剤241aはその磁界によって第1の基材11a上で複数の磁気穂を形成する。第1の基材11a上に供給された充填剤241aは、第1の基材11aの移動に伴い、磁気穂を形成した状態で第1の基材11a上で搬送される(
図3中点線b)。
【0041】
図4は、第1の基材11a上で搬送される充填剤241aの模式図である。説明上、一本の磁気穂を形成している充填剤以外の充填剤241aは、図示を省略している。第1の基材11a上の充填剤241aは、上述のとおり、形成されている磁界の磁力線に沿って磁気穂を形成しており、第1の基材11aの移動に伴って
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)のように磁気穂の形状を変えながら搬送される。このとき、磁石248aの近傍では特に強い磁気力が作用するため、充填剤241aの搬送速度v2は、充填剤241aが磁極から遠ざかる場合には第1の基材11aの移動速度v1よりも小さく、その逆の場合は大きくなる。すなわち、第1の基材11a上の充填剤241aは第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有する。
【0042】
図5は、
図4の第1の基材11aの表面近傍の拡大図である。
図4では図示を省略したが、
図5に示すように第1の基材11a上には凹凸パターン111aが形成されている。充填剤241aは、この凹凸パターン111aに接触し、第1の基材11aの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第1の基材11aに対して0ではない相対速度を有しつつ、第1の基材11aと共に搬送される。これにより、担持材S1に担持された第1の粒子P1は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aに摺擦されながら搬送される。このとき、第1の粒子P1の粒径は凹凸パターン111aの凹部の開口径よりも小さく、第1の担持材S1の粒径は該凹部の開口径よりも大きいため、凹凸パターン111aの凹部の底面(底部)には、第1の粒子P1は接触できるが、担持材S1は接触できない。すなわち、充填剤241aの中で第1の粒子P1のみが選択的に凹部の底面に接触する。凹部の底面に接触した第1の粒子P1は、凹凸パターン111aの構造による物理的な拘束力や、第1の基材11aおよび凹凸パターン111aを構成する構造材料との静電的付着力や粘着力により強く拘束され、担持材S1から脱離する。
【0043】
磁性部材247aの下流には、
図3に示すように、回収部材244aが第1の搬送部材224aと間隙を有して配置されている。第1の基材11aの移動に伴い、磁石248aの最下流の磁極(S1極)の近傍に搬送された充填剤241aは、磁石246aによって形成される磁界の影響を受けて、第1の基材241aから回収部材244aへと移動し、回収される(
図3中点線c)。
【0044】
以上のように搬送過程(
図3中点線a,b,c)において、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部は、複数の充填剤241aと十分に接触する。そのため、回収部材244aによって充填剤241aが回収された後の凹凸パターン111aの凹部には第1の粒子P1が選択的に緻密に配置される。
【0045】
なお、
図4および
図5では第1の粒子P1をすべて同一の粒径で図示しているが、実際には粒度分布があり、さらに、材料によっては凝集した二次粒子を形成している場合もある。このような場合でも、凹凸パターン111aの凹部の底面に接触できる粒子のみが選択的に緻密に充填されるため、材料層形成に悪影響を及ぼし得る粗粉や二次粒子等は除外される。
【0046】
このように、凹凸パターン111aの凹部への第1の粒子P1の充填量は、凹部のサイズ(面積、幅、深さ)と第1の粒子P1の粒径により制御可能となる。具体的には、凹部の面積が略充填面積になり、充填された第1の粒子P1の層厚は凹部の深さで決定される。例えば、基材面積に対し50%の薄層(単層)を得るためには、凹部の面積比(凹凸パターンの全体に対する凹部の面積率)を50%、凹部の深さを第1の粒子P1の粒径以下に制御すればよい。このとき、凹部の開口幅は、第1の粒子P1のメジアン径よりも大きく、担持材S1の平均サイズ(ここでは平均粒径)よりも小さくする。なお、第1の粒子P1は広い粒度分布(ブロードな粒度分布)を有していてもよいが、担持材S1は狭い粒度分布を有していることが好ましく、単分散であることがより好ましい。これにより、担持材S1を、凹部の底部(または底面)に接触させないようにしやすい。凹部の底部に担持材S1が接触できる場合、凹部に担持材S1も拘束され充填されてしまう恐れがある。
【0047】
さらに、凹凸パターン111aの凹部の開口幅は、第1の粒子P1の粒径の4倍より小さいことが好ましい。該開口幅を第1の粒子P1の粒径の4倍より小さくすることで、第1の粒子P1が凹凸パターン111aの凹部の底面および側壁面の2か所に接触する確率を高めることができる。このように、凹凸パターン111aと多点接触した第1の粒子P1は凹凸パターン111aに強く拘束されるため、凹凸パターン111aへの第1の粒子P1の充填の効率を高めることができる。なお、後述する第2の粒子P2の粒径と、第1の粒子P1によって形成される凹凸パターンの凹部のサイズについても同様である。また、担持材としてブラシ繊維を用いる場合には、上述の説明における「担持材の平均粒径」は「担持材の平均繊維径」となる。
【0048】
回収部材244aによって回収された充填剤241aは、回転するローラ244aにより搬送される(
図3中点線d)。ローラ244aによって搬送された充填剤241aは、隣接し、反発しあう2つの同極の磁極(N1、N2)による磁界、および重力の影響によって充填容器242a中に落下する(
図3中点線e)。その後、再び撹拌スクリュー部材243aにより撹拌搬送されて、以後これを繰り返す。
【0049】
充填容器242a内における充填剤241a中の第1の粒子P1と担持材S1の重量比は、電子写真装置で一般的な、透磁率を用いて測定するインダクタンスセンサや、基材上等の反射濃度を測定して予測するパッチ濃度センサ等により決定される。そして、必要に応じて補給手段(不図示)によって第1の粒子P1および担持材S1の少なくとも一方が補給される。これにより、長期にわたり安定した充填が可能となる。
【0050】
なお、ここでは磁性粒子を担持材として用いていわゆる磁気ブラシを形成することで粒子材料を凹部に充填する方式の充填装置について説明したが、充填装置の方式はこれに限定はされない。担持材として、ブラシ繊維を用いることもできる。あるいは、担持材として、少なくとも表面が弾性体で構成された弾性材を用いることもできる。
【0051】
図6(a)は、担持材としてブラシ繊維を用いた場合の充填装置24cの構成を模式的に示す図である。
【0052】
充填装置24cは、表面にブラシ繊維を有するローラ2410を有する。ローラ2410は、その表面にブラシ繊維が植毛された、いわゆるブラシローラである。ローラ2410の有するブラシ繊維を構成する繊維の材質は特に限定はされず、例えば、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン、ポリエステル、塩化ビニルなどを用いることができる。帯電性や剛性を調整する目的で、繊維の表面に表面処理を施してもよい。
【0053】
充填装置24cは、ローラ2410に充填剤241aを供給する供給部材を有する。なお、充填剤241aは、複数の第1の粒子P1によって構成される粉体を含んでおり、充填容器242aに収容されている。またこの例において、充填剤241aは磁性粒子である担持材S1は含まない。充填剤241aは、撹拌スクリュー部材243aによって撹拌、搬送され、供給部材249に供給される。
【0054】
供給部材249は、充填剤241aをローラ2410に供給する部材であり、その構成は特に限定はされない。供給部材249は、例えば、少なくとも表面が、弾性を有する多孔性の発泡材で構成されたローラを用いることができる。典型的には、発泡骨格構造を有し、比較的低硬度なポリウレタンフォームを芯金上に形成した弾性スポンジローラを用いることができる。なお、発泡材の材質としては、ウレタン以外にも、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの各種ゴム材料を用いることができる。
【0055】
供給された充填剤241aは、供給部材249の表面の発泡材に充填され、ローラ2410と接触する供給部まで搬送される。供給部において、発泡材に充填された充填剤241aはローラ2410の有するブラシ繊維との接触により帯電し、ローラ2410の有するブラシ繊維に担持される。さらに、供給部材249は、ローラ2410に残留する充填剤241aを剥ぎ取り、リフレッシュする機能を兼ね備えてもよい。ローラ2410に供給された充填剤241aはブラシ繊維の移動により、第1の基材11aと接触する。
【0056】
このとき、第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部の底面には、充填剤241a中の第1の粒子P1は接触できるが、ブラシ繊維は接触できないようにしておく。すなわち、ブラシ繊維の繊維径を凹凸パターン111aの凹部の開口幅よりも大きくしておく。なお、ブラシ繊維の繊維径は、ローラ2410の表面にガラスを当て、光学顕微鏡によってガラス越しに取得されたブラシ繊維の画像から測定することができる。このとき、100本程度のブラシ繊維の繊維径を測定し、繊維径の分布を計測して、平均径を算出する。
【0057】
搬送部材224aの移動および/またはローラ2410の回転によってローラ2410のブラシ繊維は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、ブラシ繊維に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
【0058】
図6(b)は、担持材として弾性材を用いた場合の充填装置24dの構成を模式的に示す図である。
【0059】
充填装置24dは、充填装置24cと同様の構成を有するが、ブラシ繊維を有するローラ2410の代わりに弾性材を有するローラ2411を用いる点で異なる。ローラ2411は、表面に弾性層が形成されたローラである。弾性層は、シリコーンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料などの弾性を有する材料で形成されている。弾性層は、球形状樹脂などの微粒子を添加して、表面形状が制御されていてもよい。弾性層が表面に凸部を有する場合、弾性層の凸部のサイズは凹凸パターン111aの凹部のサイズよりも大きくしておく。弾性層の凸部のサイズは、上述のブラシ繊維の繊維径と同様の方法で測定することができる。
【0060】
搬送部材224aの移動および/またはローラ2411の回転によってローラ2411の表面の弾性材は第1の基材11aの表面に摺擦される。これにより、弾性材に担持されていた第1の粒子は第1の基材11aの表面の凹凸パターン111aの凹部に緻密に配置される。
【0061】
図6(a)や
図6(b)のように担持材としてブラシ繊維や弾性材を用いることで、充填剤中に磁性粒子を含ませる必要がなくなり、また、充填装置の構成を簡便化することができる。一方で、
図3のように担持材として磁性粒子を用いる場合には、ブラシ繊維や弾性材の場合よりも担持材のサイズや形状の自由度が高い。また、磁性粒子の場合には基材上における担持材の移動の自由度が高い。これらの理由により、磁性粒子を担持材として用いた場合には、第1の粒子P1等の粒子を基材上により効率的に供給して、基材上の凹部により効率的に充填することができる。また、担持材として磁性材料を用いた場合には、プロセスの途中で担持材が劣化した場合にも、プロセスを止めずに担持材を補充したり入れ替えたりすることもできる。
【0062】
本実施形態のように、粒子を担持させた担持材を摺擦することによって凹部に粒子を充填する方法によれば、ブレード等の規制部材による充填方法に比べて、分散させた粒子を凹部により多く供給することができ、安定的かつ緻密に充填を行うことができる。このメリットは、充填する粒子の粒径が小さいほど、粒子が凝集しやすくなるために顕著になる。
【0063】
第1の充填装置24aによって凹凸パターン111aの凹部に第1の粒子1が充填された第1の基材11aは、第1のベルト装置22aによって、転写部25aへと搬送される。
【0064】
ここで、第2のベルト装置22bは
図2に示すように、第1のベルト装置22aと同様に、駆動ローラ221b,222bと、加圧ローラ223bと、それらに懸架されたベルト状の搬送部材224bと、を有する。このとき、加圧ローラ223bは従動で回転している。転写部25aでは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223aと第2のベルト装置22bの加圧ローラ223bとが対向している。
【0065】
第2のベルト装置22bには、第2の格納容器21bより第2の基材11bが供給され、
図2中の矢印方向に搬送される。供給された第2の基材11bは、第1の基材11aが転写部25aに搬送されるタイミングに合わせて搬送される。転写部25aでは、第1の基材11aに充填された第1の粒子P1が第2の基材11bへと転写される。すなわち、第1の基材11aは、第2の基材11bへと第1の粒子P1を転写するための転写用基材と言うこともできる。また、第1の基材11aの表面に形成されている凹凸パターンは、転写用凹凸パターンと言うこともできる。以下、この転写プロセスについて、
図7を参照して説明する。
【0066】
図7は、転写部25aの構成を模式的に示す図である。転写部25aは、第1のベルト装置22aの加圧ローラ223aおよび搬送部材224aと、第2のベルト装置22bの加圧ローラ223bおよび搬送部材224bと、で構成されている。上述のように、加圧ローラ223a,223bは従動で回転し、2つのローラは搬送部材224a,224bを介して接触している。加圧ローラ223a,223bの少なくとも一方は、表層に弾性層を有するソフトローラであり、2つのローラが接触した部分にはニップ部が形成されている。
【0067】
第1の充填装置24aにより第1の粒子P1が充填された第1の基材11aと第2の基材11bは、それぞれの搬送部材(224a,224b)によって略等速で搬送され、加圧ローラ223a,223bが接触して形成されるニップ部に侵入する。ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は第2の基材11bと接触し、第2の基材11b上に転写される。
【0068】
第2の基材11bは、第1の粒子P1に対する付着力が、第1の基材11aの第1の粒子P1に対する付着力よりも大きな基材である。換言すれば、第1の粒子P1の第2の基材11bに対する付着力は、第1の粒子P1の第1の基材11aに対する付着力よりも大きい。これにより、ニップ部において、第1の基材11a上の第1の粒子P1は、第2の基材11b上へと転写される。
【0069】
第2の基材11bの材質は特に限定はされず、第1の基材11aと同様の材質の基材を用いることができる。なお、第2の基材11bも第1の基材11aと同様に、カット紙のように個別に切り離された基材であってもよいし、ロール紙のようにロール状に巻かれた連続した基材や、連続用紙のように交互に折りたたまれた連続した基材であってもよい。
【0070】
第2の基材11bは、接触した第1の粒子P1を転写するために、付着力を高めるための表面処理が施されていることが好ましい。例えば、第2の基材11bは、その表面に粘着剤が塗布された粘着層を有していることが好ましい。粘着剤としては、アクリル系粘着剤や、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤であってもよいし、熱や光等の外乱により粘着力が変化する熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂等であってもよい。なお、第2の基材11bの両面に粘着剤を塗布しても構わない。
【0071】
また、材料層形成装置1は、搬送中の第2の基材11bの表面に粘着剤を塗布するディスペンサーやインクジェットヘッドなどの塗布手段を有していてもよい。
【0072】
粘着剤の種類や塗布量は使用する凹凸パターンの形状や材質、第1の粒子P1および第2の粒子P2の粒径や材質などによって適宜調整されるが、凹凸パターン111aに比べて粘着剤の粘着力が大きいことが好ましい。粘着力の比較は、ナノインデンターを用いる一般的な手法により測定可能である。
【0073】
ニップ部において、第1の粒子P1は第2の基材11bとの間に生じる付着力によって拘束される。ニップ部を過ぎて両搬送部材224a,224bが離間すると、第1の基材11a上にあった第1の粒子P1は、第2の基材11bへと転写される。
【0074】
第1の粒子P1が転写された第2の基材11bは、搬送部材224bによって第2の充填装置24bの充填位置へと搬送される。
【0075】
第2の充填装置24bは、充填容器242a中に、第1の粒子P1と担持材S1を有する充填剤241aの代わりに第2の粒子P2と担持材S2を有する充填剤241bが収容されている点以外は、第1の充填装置24aと同様の構成および機能を有する。
【0076】
第2の充填装置24bは、第2の基材11b上の、第1の粒子P1が配置されていない部分に、第2の粒子P2を充填する。上述のように、転写部25aを通過した第2の基材11b上には第1の粒子P1が配置されているが、第1の粒子P1が配置されていない部分には、いわば凹部が形成されている。第2の充填装置24bは、この凹部に、第1の充填装置24aと同様のプロセスで、第2の粒子P2を充填する。なお、ここでは担持材として磁性粒子を用いる場合について説明するが、第1の充填装置24aと同様に、ブラシ繊維や弾性材を担持材として用いてもよい。
【0077】
充填剤241bは、第2の粒子P2と、第2の粒子P2を担持する担持材S2と、を有する。充填剤241bは、複数の第2の粒子P2によって構成される粉体と、複数の担持材S2によって構成される粉体と、を含む複数の粉体の混合物である。第2の粒子P2の材質は特に限定はされず、第1の粒子P1と同様に、金属粒子、セラミックス粒子、ガラス粒子などの粒子状の無機材料であってもよいし、樹脂粒子などの粒子状の有機材料であってもよい。また、第1の粒子P1と第2の粒子P2とは同じ材質であってもよい。また、担持材S2についても、担持材S1と同様のものを用いることができる。なお、第1の粒子P1および第2の粒子P2は、リチウムイオン電池や全固体電池の正極材料、固体電解質を含む材料、負極材料から選択されることが好ましい。
【0078】
図8は、第2の充填装置24bによる充填プロセスにおける第2の基材11bの表面近傍の拡大図である。第2の基材11b上には、第1の粒子P1が配置されて形成された凸部と、第1の粒子P1が配置されていない凹部と、を有する凹凸パターンが形成されている。充填剤241bは、この凹凸パターンに接触し、第2の基材11bの表面に対して垂直な方向への磁力(図中実線Fm)を受けながら、第2の基材11bに対して0ではない相対速度を有しつつ、第2の基材11bと共に搬送される。これにより、担持材S2に担持された第2の粒子P2は第2の基材11bの表面の凹凸パターンに摺擦されながら搬送される。このとき、第2の基材11b上に形成されている凹凸パターンの凹部の開口幅を、凹部の底面(第2の基材11b)に、第2の粒子P2は接触できるが、担持材S2は接触できないサイズとしておく。これにより、充填剤241bの中で第2の粒子P2のみが選択的に凹部の底面(第2の基材11b)に接触する。凹部の底面に接触した第2の粒子P2は、凹凸パターンの構造による物理的な拘束力や、第2の基材11bおよび凹凸パターンを構成する構造材料(ここでは第1の粒子P1)との静電的付着力や粘着力により強く拘束され、担持材S2から脱離する。
【0079】
図9(a)は、転写部25aによって第1の粒子P1が転写された後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。
図9(a)に示すように、第2の基材11b上には、正六角形状に第1の粒子P1が配置された配置領域が整列したハニカムパターンが形成されている。この正六角形の領域内には第1の粒子P1が緻密に配置されており、それ以外の部分(
図9(a)の白地部分)には第1の粒子P1は配置されておらず、第2の基材11bの表面が露出している。かかる第1の粒子P1が保持される正六角形の領域は第一のパターン部、第2の粒子P2が保持され、第一のパターン部の間隙に相当するハニカムパターンの領域は第二のパターン部であると換言される。
【0080】
図9(b)は、第2の充填装置24bによって第2の粒子P2を充填した後の第2の基材11bを模式的に示す図であり、第2の基材11bを基材面に垂直な方向から見た図である。
図9(b)に示すように、第1の粒子P1が配置されていなかった領域には第2の粒子P2が緻密に配置されている。また、第1の粒子P1が配置されている領域と第2の粒子P2が配置されている領域との間の境界部においても、第1の粒子P1と第2の粒子P2とが緻密に配置されている。なお、第1の粒子P1間の僅かな隙間にも同様の方法で粒子を充填することができる。この場合、第1の粒子P1間の隙間に相当する粒径の粒子を含む充填剤を用いて、上述の同様の方法で充填することが可能であり、さらに緻密な薄膜を形成することができる。
【0081】
互いに異なる平均粒径を呈する第1、第2の粒子群P1、P2が基材11b上に敷き詰められた第一のパターン部と第二のパターン部を有している実施形態の平面図と断面図を
図16(a)、(b)に示す。
図16(b)に示す断面図は、
図16(a)中に示すB-B区間を見た断面図に相当する。
【0082】
図16(a)に示すように、第1の粒子群P1と第2の粒子群P2に対応する第一のパターン部と第二のパターン部は、x方向において、互いに等しい繰り返し周期L/5を有している。同様にして、x方向に対して+1/3πラジアン(+60度)、-1/3πラジアン(‐60度)だけ、それぞれ回転した方向においても、第一のパターン部と第二のパターン部は、互いに等しい繰り返し周期L/5を有している。
【0083】
本実施形態において、
図16(b)に示すように、第一のパターン部と第二のパターン部には異なる平均粒径の粒子群P1、P2が敷き詰められるため、各パターン部に保持される粒子群の面密度において、第一のパターン部と第二のパターン部とは異なっている。本実施形態において、第一のパターン部における第1の粒子群P1が配置される面密度は、第二のパターン部における第2の粒子群P2の面密度より低い。
【0084】
なお、本実施形態において、第2の粒子群P2は、基材11と接する部分のみならず基材11の基材厚方向(z方向)にも積み上げられて、第二のパターン部に充填されている。第1の粒子群P1、第2の粒子群P2を二次電池の機能要素として選択する場合、正極活物質同士、負極活物質同士、電解質同士の同種材料の組み合わせとして選択しても良いし、正極活物質と電解質、負極活物質と電解質のように異種材料を選択しても良い。
【0085】
なお、本実施形態において、
図16(b)に示すように、第1の粒子群P1、第2の粒子群P2は、粘着層15により基材11bに保持される。粒子が基材に保持される形態は、粘着層15の層厚tと粒子の粒径Φとに依存する。本実施形態では、第1の粒子群P1(Φ1>t)は、基材11bの側の一部において粘着層15に接している。第2の粒子群P2(Φ2<t)は、基材11b側に位置する第1層目の粒子群と第2層の粒子群の一部が粘着層15に接する部分を有している。粘着層13の層厚tが、第1の粒子群P1、第2の粒子群P2それぞれの平均粒径より大きい場合は、第1の粒子群P1、第2の粒子群P2が粘着層13に埋没する形態となることがある(不図示)。
【0086】
なお、粘着層15は、第1の粒子群P1、第2の粒子群P2を基材11b上に保持した形態を維持する範囲において、持続的に粘着性を維持する必要はなく、粘着力が低下しても良い。従って、粘着層15は、保持層15と換言される場合がある。保持層15(粘着層15)は、経時的に粘着力が低下する形態、事後処理により粘着力が低下する形態が含まれる。経時的な粘着力の低下の作用としては、乾燥、架橋等が含まれ、事後処理としては、熱硬化処理、光硬化処理等が含まれる。保持層15(粘着層15)の粘着力は、第1の粒子群P1、第2の粒子群P2を基材11b上に保持した後に低下することにより、環境からの塵、汚染物質等の付着が軽減され、材料層12の純度を維持する点において好ましい。
【0087】
このように、本実施形態の材料層形成装置1によれば、第2の基材11b上に、第1の粒子P1および第2の粒子P2がパターン状に緻密に配置された材料層を形成することができる。具体的には、本実施形態によれば、各材料層のそれぞれにおいて、粒子による基材のカバー率を80%以上とすることができる。なお、粒子による基材のカバー率は、材料層が形成されている領域を基材鉛直方向から光学顕微鏡により撮影し、当該領域内における粒子の面積率を画像処理ソフトによって算出することで測定することができる。
【0088】
本実施形態では材料層形成装置1が2種類の粒子材料を用いて材料層を形成する場合について説明したが、これに限定はされず、1種類の粒子材料を用いて材料層を形成してもよいし、3種類以上の粒子材料を用いて材料層を形成してもよい。
【0089】
1種類の粒子材料で材料層を形成する場合、第1の充填装置24aおよび第2の充填装置24bの両方で、同じ材質の粒子材料を充填するようにすればよい。これにより、1種類の材料がより緻密に配置された材料層を形成することができる。このとき、第1の充填装置24aにおける第1の粒子P1と、第2の充填装置24bにおける第2の粒子P2とで、同じ材質だが粒径の異なる粒子を用いてもよい。例えば、第2の粒子P2として、第1の粒子P1よりも粒径の小さな粒子を用いることで、より一層緻密な材料層を形成することができる。
【0090】
一方、3種類以上の粒子材料で材料層を形成する場合は、第1の充填装置24aまたは第2の充填装置24bの下流側は上流側に、第3の充填装置を追加すればよい。このとき、上流側の充填装置において充填する粒子の粒子径は、下流側の充填装置において充填する粒子の粒子径より大きくしておくことが好ましい。また、基材上にサイズの異なる凹部を複数設け、上流側の充填装置において充填する粒子はそのうちの一部の凹部の底部にのみ接触するようにしておくことが好ましい。これにより、3種類以上の粒子材料を用いて、それぞれの粒子がパターン状に緻密に配置された材料層を形成することができる。
【0091】
また、構成上複雑になるが、第1のベルト装置22aを複数設け、それぞれの装置から第2の基材11b上にそれぞれ異なる粒子を転写する構成としてもよい。あるいは、第3の充填装置を有する第3のベルト装置を設け、第2のベルト装置22bと第3のベルト装置とで形成される転写部において、第1および第2の粒子が配置された第2の基材11bから第3の基材上へとそれらの粒子を転写する構成としてもよい。その後、第3の基材上の第1および第2の粒子がいずれも配置されていない部分に第3の充填装置によって第3の粒子を充填すれば、3種類以上の粒子材料で材料層を形成することができる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る材料層の製造方法は、任意のパターンで基材上に粒子を緻密に配置することが可能な乾式プロセスであり、大気下で行うことができる。これにより、従来の湿式プロセス(例えば塗布法、インクジェット法)や気相成長法で必須であった溶剤の管理、空調設備や真空度の調整などの必要がなくなり、容易な構成、環境で実現可能な方法である。また、本実施形態に係る材料層の製造方法では、使用する粒子の粒径や凹凸パターンの凹部の深さを調整したり、複数の基材を積層したりすることで、材料層の厚さを容易に調整することができるというメリットもある。
【0093】
このように、本実施形態の材料層形成装置1によれば、基材11b上に単数種あるいは複数種の粒子が任意のパターンで配置され、それらの粒子が緻密に配置された材料層を形成することができる。
【0094】
(凹凸パターンの構造の判定方法)
本実施形態における凹凸パターン111aは、基材11aの表面(凹凸パターン111aの凹部の底面)に第1の粒子P1が接触でき、かつ第1の粒子P1を担持する担持材S1が接触できないことが好ましい。
【0095】
凹凸パターンの構造の判定は、AFM(Pacific nanotechnology社製Nano-I)を用いて行うことができる。なお、凹凸パターンがローラ等の部材の表面に形成されている場合は、平滑な基材上に紫外線硬化樹脂や熱可塑性樹脂等により該凹凸パターンの複製を作製し、その複製した凹凸パターンを構造の判定に用いても構わない。
【0096】
凹凸パターンの構造の判定の際には、AFMのカンチレバー(探針)として、第1の粒子P1の粒径rに相当する半球状の先端を有するカンチレバーAと、担持する担持材S1の粒径rcに相当する半球状の先端を有するカンチレバーBと、を用いる。この2種類のカンチレバーをそれぞれ用いて対象の凹凸パターンの計測を行う。第1の粒子P1が凹凸パターンの凹部の底面に接触できる場合には、カンチレバーAを用いた計測により、凹凸構造が観測され、典型的には凹部のフラットな面が観測される。一方、担持材S1が凹凸パターンの凹部の底面に接触できない場合には、カンチレバーBを用いた計測により、カンチレバーAを用いた計測結果よりも凹凸パターンの凹部の深さが小さく計測される。このように、2種類のカンチレバーを用いて凹凸パターンの凹部の深さ等を計測してそれを比較することで、凹凸パターンの底面に接触できるか否かを判定することができる。
【0097】
第1の実施形態によれば、所望の基材上にパターン層が設けられている材料層を提供することが可能となる。
【0098】
パターン層は、例えば、第1の無機材料を含み構成され、焼結処理される前の複数の第1の粒子が配置されている第1の領域と、第2の無機材料を含み構成され、焼結処理される前の複数の第2の粒子が配置されている第2の領域とを含み構成される。
【0099】
(無機材料)
第1の無機材料の例としては、正極材料、電解質材料、負極材料の少なくともいずれかである。具体的には、正極材料としては、例えば、リチウムを含有する複合金属酸化物、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウムを含有する複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物または、金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。ここで、異種元素としては、例えば、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられる。異種元素は1種でも2種以上でも構わない。これらのなかでも、リチウムを含有する複合金属酸化物が好ましい。リチウムを含有する複合金属酸化物は、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyMn1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4が挙げられる。リチウムを含有する複合金属酸化物は、さらに、LixMn2-yMyO4、LiMPO4、Li2MPO4F、が挙げられる。式中のMは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V及びBよりなる群から選ばれる少なくとも1種。式中のx,y,zは、0<x≦1.2、0<y<0.9、2.0≦z≦2.3。リチウムを含有する複合金属酸化物は、さらに、LiMeO2(式中のMeは、Me=MxMyMz:MeおよびMは遷移金属、x+y+z=1)が挙げられる。リチウムを含有する複合金属酸化物の具体例は、LiCoO2(LCO:コバルト酸リチウム)、LiNi0.5Mn1.5O4(LNMO:ニッケルマンガン酸リチウム)が挙げられる。また、リチウムを含有する複合金属酸化物の具体例は、LiFePO4(LFP:リン酸鉄リチウム)、Li3V2(PO4)3(LVP:リン酸バナジウムリチウム)が挙げられる。また、上記正極材料は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、が挙げられる。また、導電助剤としては、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維等の導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末、酸化亜鉛等の導電性ウィスカー、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘電体等の有機導電性材料、が挙げられる。
【0100】
電解質材料としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、錯体水素化物系固体電解質等が挙げられる。酸化物系固体電解質は、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3やLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3などのナシコン型化合物、Li6.25La3Zr2Al0.25O12などのガーネット型化合物が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li0.33Li0.55TiO3などのペロブスカイト型化合物、が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li14Zn(GeO4)4などのリシコン型化合物、Li3PO4やLi4SiO4、Li3BO3などの酸化合物が挙げられる。硫化物系固体電解質の具体例としては、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5等が挙げられる。また、固体電解質は、結晶質であっても非晶質であってもよく、ガラスセラミックスであっても構わない。なお、Li2S-P2S5等の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料を用いて成る硫化物系固体電解質を意味する。
【0101】
負極材料としては、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物、各種合金材料等が挙げられる。これらの中でも、容量密度の観点から、酸化物、炭素材料、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物等が好ましい。酸化物としては、例えば、Li4Ti5O12(LTO:チタン酸リチウム)等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛(グラファイト)、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素等が挙げられる。珪素化合物としては、例えば、珪素含有合金、珪素含有無機化合物、珪素含有有機化合物、固溶体等が挙げられる。錫化合物としては、例えば、SnOb(0<b<2)、SnO2、SnSiO3、Ni2Sn4、Mg2Sn等が挙げられる。また、上記負極材料は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックが挙げられる。導電助剤としては、他に、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維等の導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末、酸化亜鉛等の導電性ウィスカー、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘電体等の有機導電性材料等が挙げられる。
【0102】
第1の無機材料と第2の無機材料とは、同じ材料を選択することもできるし、互いに異なる材料を選択することもできる。第1の領域には、複数種の粒子を混在させてもよい。
【0103】
第1の無機材料と第2の無機材料との好ましい組み合わせとしては、電極用基材の場合、第1の無機材料として、正極材料や負極材料、第2の無機材料として、電解質材料とするのがよい。電解質用基材の場合、第1の無機材料と第2の無機材料を同じ該電解質材料としてもよいし、異なる電解質材料としてもよい。
【0104】
第1及び第2の粒子の粒子径(平均粒径)は、例えば、0.05μm以上100μm以下(大レンジ)、好ましくは、0.1μm以上、50μm以下(中レンジ)、更に好ましくは、0.5μm以上、25μm以下(小レンジ)である。緻密性の観点から、より小粒径化することが好ましいが、下限については、材料コストや凝集性の悪化により設定される。上限については、緻密性の低下により設定される。該平均粒径は、例えばレーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置により測定される。
【0105】
第1の粒子群の平均粒径と第2の粒子群の平均粒径とを互いに異ならせることもできる。例えば、第1の領域を先に形成して、その後に、第2の領域を形成する場合には、両領域に配置する粒子群の粒径の関係は、第1の粒子群の平均粒径 ≧ 第2の粒子群の平均粒径になるようにするのがよい。・第2の粒子群は、基材11b上で第1の粒子群が配置されない空隙、隙間に充填される。第2の粒子群が基材11b上に配置、充填される理由としては、基材11b表面の付着力、および基材11b上で第1の粒子群により構成される凹凸パターンによる拘束力による。このため、安定かつ緻密に充填するためには、第1の粒子群に対し第2の粒子群の平均粒径は小さいことが望ましい。
【0106】
第1の領域への第1の粒子の充填密度は、例えば、30%以上(大レンジ、充填密度は高いことが望ましく、上限の規定が現状難しいため、下限のみ記載しました)、好ましくは、50%以上、更に好ましくは、70%以上である。この充填密度は、例えば光学顕微鏡や電子顕微鏡で基材上を撮影して得た画像に対して、画像処理ソフトにより、基材上第1の領域内において、粒子の有無を2値化処理して、画像全体のピクセル数に対する粒子像の総ピクセル数の割合(%)によって測定される。
【0107】
第1の領域への第1の粒子の充填密度と、第2の領域への第2の粒子の充填密度を互いに異ならせることもできる。例えば、第1の領域を先に形成して、その後に、第2の領域を形成する場合には、粒径差を利用した選択的な粒子パターニングから、第2の領域(第二のパターン部)が第1の領域(第一のパターン部)より高い充填密度とする形態とすることができる。
【0108】
尚、焼結処理される前の複数の第1の粒子は、所定の焼結温度以上で、焼成することにより焼結するものである。
【0109】
尚、第1及び第2の領域に配置される粒子は、必ずしも無機材料に限定されるものではなく、本実施形態や他の実施形態あるいは実施例に記載した材料(金属材料、有機材料など)を用途に応じて適宜利用することができる。
【0110】
(パターン層)
パターン層は、基材の面内方向に、複数の第1の領域が所定の周期で繰り返して配置されている繰り返しパターンであり、第1の領域間に第2の領域が設けられているように構成することもできる。
【0111】
パターン層が有するパターンは、第1の領域と第2の領域(場合によっては更に別な領域があってもよい。)を含み構成されるパターンである。例えば、ハニカム形状のハニカムパターンが挙げられる。ハニカムパターンの他にも、円形が面内方向に繰り返して配置されるホールパターン、四角形が配置される四角パターン、三角形が配置される三角パターン、形状以外についても繰り返して配置されるパターンは含まれる。また、パターンのように孤立した各形状が面内に配置されたパターンに対して、縦、横、斜め、或いはそれらが混ざったラインが繰り返して配置されるラインパターンの場合についても同様である。
【0112】
パターンの態様としては、例えば、基材の面内方向に繰り返し構造を有する繰り返しパターンや、ランダムパターン、あるいはグラデーションなどが挙げられる。基材の面内方向に繰り返し構造を有する繰り返しパターンは、パターン層の層内において、繰り返し構造を有する繰り返しパターンと換言される。
【0113】
更に、パターンが有する基本周期に加え、他の周期のパターンが混在するような構成も利用することができる。このようなパターンを有するかどうかは、例えば、基材上の面内方向の画像を取得し、その画像の特徴点を画処理で抽出し、フーリエ解析等を行い、空間周波数スペクトルを取得することで判定できる。
【0114】
なお、基材上に第1の領域あるいは第2の領域で設けるパターンは、そのサイズ(例えば第1の領域の面内方向のサイズ)が小さい場合は、本実施形態に示す製造方法が有効である。例えば、基材上の第1の領域は最小幅が第1の粒子P1の平均粒径より大きく、且つ平均粒径の4倍より小さいことが好ましい。ここで、最小幅とは第1の領域内に収まる円において最大円の直径である。つまり、ハニカムパターンの場合、六角形に収まる最大円の直径であり、ホールパターンの場合、円に収まる最大円の直径であり、四角パターン、三角パターンについても同様である。また、ラインパターンの場合についても、ラインに収まる最大円の直径、つまりラインの短辺の長さである。
【0115】
また、パターンを形成する第1の領域(及び/又は第2の領域)における高さのバラつきは、高さの範囲が第1の粒子P1の平均粒径の3倍以下、好ましくは、平均粒径の2倍以下、更に好ましくは平均粒径以下である。ここで、高さの範囲とは第1の領域における高さの最大値と最小値の差である。
【0116】
(基材)
基材は、シート状のパターン層を構成する第1及び第2の領域とは、異なる熱分解性あるいは溶媒に対する溶解性を有するように構成することが好ましい。例えば、第1及び第2の領域は、主として無機材料で構成し、基材は有機材料で構成することができる。
【0117】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルなどを利用できる。
【0118】
なお、基材の、第1の領域及び/又は第2の領域におけるカバー率は、80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0119】
(積層体)
パターン層を備えた基材を複数積層して構造物を形成し、当該構造物から基材を熱分解あるいは溶媒により溶解させることにより、パターン層が複数積層された積層体を形成することができる。
【0120】
第1の領域と、第2の領域とを含み構成されているパターン層を備え、且つ該パターン層が複数積層されていることを特徴とする積層体を提供できる。
【0121】
ここで、第1の領域と第2の領域とで構成される面内方向のパターンは、積層方向に見た場合に、パターン層間でその位相が整合していない部分を含むように構成することもできる。例えば、ハニカムパターンの場合には、パターン層間の位相を敢えてずらしたり、ラインパターンの場合には、同様に位相をずらしたり、またはパターン層間のライン角度をずらすことにより、位相が整合していない部分を含むように構成することができる。これにより、パターン層間の粒子位置がずれ、積層時の粒子の緻密性を改善する効果がある。また、積層体が全固体電池を形成する一部分、例えば電極の場合、パターン層間の粒子位置がずれることにより、以下のような効果が期待できる。すなわち、パターン層間の粒子位置がずれることにより、積層方向で電極活物質と固体電解質が接触し易くなり、電極内で固体電解質と接触できずに孤立する電極活物質が減少し容量を改善することができる。また、充放電に伴う電極活物質の体積変化に対しても、それを緩和する固体電解質や導電助剤と接触し易くなるため、サイクル特性が改善する効果がある。
【0122】
本実施形態により得られた材料層は、パターン層と、及び、パターン層が設けられている基材と、を有する。係るパターン層は、第1の無機材料を含み構成され、焼結処理される前の複数の第1の粒子が配置されている第1の領域と、第2の無機材料を含み構成され、焼結処理される前の複数の第2の粒子が配置されている第2の領域とを含み構成されている。
【0123】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態である材料層の製造方法および材料層形成装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、第1の工程S101において、基材上にパターン状に液体を塗布した後に該液体に第1の粒子を含む粉末を付着させる方式によって、基材上に第1の粒子をパターン状に配置する。
【0124】
図10は、本実施形態に係る材料層形成装置2の構成を模式的に示す図である。材料層形成装置1と同じ部分については同じ番号の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0125】
材料層形成装置2は、基材11上に材料層12を形成する装置であって、基材11を格納供給する格納容器21と、基材11を搬送するベルト装置22と、を有する。また、材料層形成装置2は、基材11上にパターン状に液体を配置する液体付与装置201と、液体がパターン状に配置された基材11上に、第1の粒子P1を含む粉末を付与する粉末付与装置202と、を有する。さらに、材料層形成装置2は、第1の実施形態の第2の充填装置24bと同様の構成の充填装置24を有している。
【0126】
材料層形成装置2においては、液体付与装置201および粉末付与装置202が、基材11上に第1の粒子P1をパターン状に配置する第1の配置手段に相当する。また、充填装置24が、基材11上の第1の粒子P1が配置されていない領域に第2の粒子P2を配置する第2の配置手段に相当する。
【0127】
液体付与装置201は、基材11上に液体をパターン状に配置して、基材11上に液体のパターンL1を形成する。液体付与装置201としては、典型的にはインクジェット装置を用いることができるが、これに限定はされず、フレキソ版などの有版方法を適用することもできる。例えば同じ形状のパターンを大量に形成する場合には、有版を用いたほうが効率的な場合もある。なお、液体付与装置201は、吐出するための流動性を有する範囲において、液体の代わりにジェルを塗布するように構成したものであっても良い。パターン状に配置したパターンL1の乾燥速度、基材11との親和性、粒子P1の固定の安定性等を考慮して、吐出流体の粘度が適宜、調整される。すなわち、液体付与装置201は、流体付与装置201と換言することが可能である。本実施形態の液体付与装置201は、二次電池の機能成分である正極、負極、電解質の材料を基材11に吐出しない点において、背景技術で説明したインクジェットを用いたパターニング装置と相違する。本実施形態の液体付与装置201は、二次電池の機能成分である正極、負極、電解質の材料を粒子として基材11に保持させるための保持層をパターニングする点において、背景技術で説明したインクジェットを用いたパターニング装置と相違する。かかる保持層は機能材料としての粒子と異なる物性を与えることにより、二次電池を構成する要素としない形態とすることができる。
【0128】
液体付与装置201として適用可能なインクジェット装置としては、サーマルタイプ、ピエゾタイプ、静電タイプ、コンティニュアスタイプなど様々な方式のインクジェット装置を用いることができる。インクジェット装置としては、液体を吐出しうるものであれば特に限定はされない。インクジェット装置の有するノズル(吐出口)の数に関しても特に限定はされず、ディスペンサーのように単数であってもよいし、ライヘッドのように複数であってもよいが、生産性の面ではインクジェット装置のノズルは複数あることが好ましい。
【0129】
液体付与装置201が付与する液体としては、特に限定はされず、第1の粒子P1を付着できる材料であればよく、水性液体(例えば水系インク)であっても油性液体(例えば油系インク)であってもよい。また、液体付与装置201は、複数種類の液体によってパターンL1を形成してもよい。例えば、液体付与装置201は、基材11上で反応させて粘着性を高めるような2種類の液体材料を付与してもよい。
【0130】
粉末付与装置202は、液体がパターン状に配置された基材11に、第1の粒子P1を含む粉末を付与する。これにより、基材11上の液体によって第1の粒子P1が固定され、パターンL1に対応したパターン状に第1の粒子P1が固定される。
【0131】
粉末付与装置202による粉末の付与手段は特に限定はされず、粉末を基材11に向けて吹き付ける手段や、振りかける手段を用いることができる。粉末付与装置202は、液体によって基材11上に固定されなかった第1の粒子P1を、振動や送風、吸引等の手段で除去する手段をさらに備えていてもよい。
【0132】
材料層形成装置2は、液体付与装置201によって付与された液体の少なくとも一部を蒸発させて、基材11上の液体の量やパターンL1の厚さなどを制御する乾燥装置をさらに有していてもよい。この乾燥装置は、液体付与装置201の下流側であって、粉末付与装置202の上流側に設ければよい。
【0133】
また、材料層形成装置2は、粉末付与装置202によって第1の粒子P1が付与された基材11を加熱する加熱手段をさらに有していてもよい。加熱手段の加熱方式は特に限定はされず、例えば接触式のヒートローラを用いてもよいし、非接触式の赤外線やマイクロ波を照射する方式であってもよい。他にも、レーザ光のようなエネルギー線を走査して加熱することもできる。なお、加熱手段はベルト装置22の有するベルト224の裏面側に設けられていてもよいし、表面側(基材11が担持される側)に設けられていてもよい。
【0134】
本実施形態によれば、液体付与装置201および粉末付与装置202によって、基材11上に第1の粒子P1をパターン状に配置することができる。そして、第1の粒子P1がパターン状に配置された基材11は、ベルト装置22によって充填装置24の充填位置まで搬送される。充填装置24は、基材11上の第1の粒子P1が配置されていない部分に、第2の粒子P2を充填する。充填装置24による第2の粒子P2の充填は、第1の実施形態(第2の充填装置24b)と同様なので、以下の説明を省略する。
【0135】
以上のように、本実施形態の材料層形成装置2によれば、第1の実施形態と同様に、基材11上に単数種あるいは複数種の粒子が任意のパターンで配置され、それらの中止が緻密に配置された材料層を形成することができる。
【0136】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態である立体物の製造方法および積層造形システムについて、図面を参照して説明する。
【0137】
図11は、第3の実施形態に係る積層造形システム100の全体構成を模式的に示す図である。
【0138】
本実施形態に係る積層造形システム100は、制御ユニットU1と、材料層形成ユニットU2と、積層ユニットU3と、除去ユニットU4と、後処理ユニットU5と、を有する。制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部の制御などを担う。材料層形成ユニットU2は、基材11上に材料層12を形成する。積層ユニットU3は、材料層形成ユニットU2でそれぞれ材料層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の材料層12と複数の基材11とを含む積層体13を形成する。除去ユニットU4は、積層ユニットU3で形成された積層体13から、基材11を除去して立体物14を形成する。後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物14の後処理を行う。なお、
図11に示したユニット構成はあくまでも一例であり、他の構成を採用しても構わない。以下、各ユニットの構成と動作について説明する。
【0139】
[制御ユニット]
制御ユニットU1は、積層造形システム100の各部、具体的には、材料層形成ユニットU2、積層ユニットU3、除去ユニットU4、および、後処理ユニットU5の制御などを担う。
【0140】
制御ユニットU1は、外部装置(例えばパソコンなど)から積層造形システム100によって形成する立体物(以下、「造形対象物」と称することがある)の3次元形状データの入力を受け付ける、3次元形状データ入力部を備えていてもよい。3次元形状データとしては、3次元CAD、3次元モデラー、3次元スキャナなどで作成・出力されたデータを用いることができる。そのファイル形式は問わないが、例えば、STL(StereoLithography)ファイル形式を好ましく用いることができる。
【0141】
制御ユニットU1は、3次元形状データを所定のピッチでスライスして各層の断面形状を計算し、その断面形状を基に材料層形成ユニットU2で像形成に用いる画像データ(「スライスデータ」と称する)を生成する、スライスデータ計算部を備えていてもよい。さらに、スライスデータ計算部は、3次元形状データまたは上下層のスライスデータを解析して、オーバーハング部(宙に浮く部分)の有無を判断し、必要に応じてスライスデータにサポート材料用の像を追加してもよい。
【0142】
詳しくは後述するが、本実施形態の材料層形成ユニットU2は複数種類の材料を用い、それぞれの材料がパターニングされた材料層を形成可能である。そのため、スライスデータとしてはそれぞれの材料の像に対応するデータが生成されてもよい。スライスデータのファイル形式としては、例えば、多値の画像データ(各値が材料の種類を表す)やマルチプレーンの画像データ(各プレーンが材料の種類に対応する)を用いることができる。
【0143】
また、図示しないが、制御ユニットU1は、操作部、表示部、記憶部も備える。操作部は、ユーザからの指示を受け付ける機能である。例えば、電源のオン/オフ、装置の各種設定、動作指示などの入力が可能である。表示部は、ユーザへの情報提示を行う機能である。例えば、各種設定画面、エラーメッセージ、動作状況などの提示が可能である。記憶部は、3次元形状データ、スライスデータ、各種設定値などを記憶する機能である。
【0144】
制御ユニットU1は、ハードウエア的には、CPU(中央演算処理装置)、メモリ、補助記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリなど)、入力デバイス、表示デバイス、各種I/Fを具備したコンピュータにより構成することができる。上述した各機能は、補助記憶装置などに格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行し、必要なデバイスを制御することで実現されるものである。ただし、上述した機能のうちの一部または全部をASICやFPGAなどの回路で構成したり、あるいは、クラウドコンピューティングやグリッドコンピューティングなどの技術を利用して他のコンピュータに実行させたりしてもよい。
【0145】
[材料層形成ユニット]
材料層形成ユニットU2は、基材11上に材料層12を形成するユニットである。材料層形成ユニットU2としては、上述の第1の実施形態の材料層形成装置1や第2の実施形態の材料層形成装置2を用いることができる。
【0146】
積層造形システム100は、材料層形成ユニットU2を複数有していてもよい。これにより、基材11上への材料層12の形成を同時並行的に行うことができ、積層体および立体物の形成のスループットをさらに向上させることができる。また、立体物を構成する材料の種類が多数である場合などには、材料種ごと、あるいは材料種のグループごとに材料層形成ユニットU2を設けることで、材料層形成ユニットU2内での材料種やプロセスの切り替えを省略することもできる。これにより、立体物の製造を連続的に行うことができる。
【0147】
以下、材料層形成ユニットU2が、凹凸パターンの凹部への材料の充填と、充填された材料の基材への転写と、を組み合わせた方式によって、基材11上に材料層12を形成する場合について説明する。
【0148】
[積層ユニット]
積層ユニットU3は、材料層形成ユニットU2でそれぞれ材料層12が形成された複数の基材11を積層し、複数の材料層12と複数の基材11とを含む積層体13を形成するユニットである。
【0149】
図12は、積層ユニットU3の構成を模式的に示す図である。積層ユニットU3は、材料層12が形成された基材11を搬送する搬送装置31と、不図示のアクチュエータによって垂直方向に相対移動可能なステージ32と、を有する。
【0150】
搬送装置31は積層ユニットU2から材料層12が形成された基材11を受け取ってステージ32へと搬送する。搬送装置31は、基材11を搬送可能な装置であれば特に限定はされず、ベルトコンベアやローラであってもよいし、ロボットアームであってもよい。
【0151】
搬送装置31によって基材11がステージ32に搬送されると、ステージ32は基材11および材料層12の厚さ分、垂直方向に移動する。搬送装置31による搬送とステージ32の移動とを繰り返すことで、材料層12がそれぞれ形成された複数の基材11が積層され、積層体13が形成される。
【0152】
積層ユニットU3は、形成された積層体13を除去ユニットU4等へと搬送する搬送装置33や、積層体13を積層方向に加圧する加圧装置(不図示)をさらに有していてもよい。搬送装置33は、搬送装置31と同様の構成であってもよい。
【0153】
[除去ユニット]
除去ユニットU4は、積層ユニットU3で形成された積層体13から、基材11を除去して立体物14を形成するユニットである。
【0154】
除去ユニットU4が積層体13から基材11を除去する方法は特に限定はされない。除去ユニットU4は、積層体13を加熱することで基材11を除去してもよいし、溶剤によって基材11を溶解して除去してもよいし、風圧や水圧によって機械的に基材11を除去してもよい。基材11を機械的に除去する場合には、加熱や溶剤によって基材11を脆くした後に、脆くなった基材11を機械的に除去してもよい。これらの中でも、除去ユニットU4は、積層体13を加熱することで基材11を除去することが好ましい。加熱による除去によれば、除去の際に除去対象の基材の上下の材料層に加わる力を低減することができ、材料層の構造を維持しやすい。また、積層体の内部にも熱を加えることができるため、積層体の内部の基材も除去しやすく、基材の除去率を高めやすい。以下、除去ユニットU4が加熱により基材11を除去する場合について説明する。
【0155】
図13は、除去ユニットU4の構成を模式的に示す図である。除去ユニットU4は、積層体13を搬送する搬送装置41と、積層体13を加熱する加熱炉42と、を有する。
【0156】
搬送装置41は積層ユニットU3から積層体13を受け取って加熱炉42へと搬送する。搬送装置41は、搬送装置31と同様に、積層体13を搬送可能な装置であれば特に限定はされず、ベルトコンベアやローラであってもよいし、ロボットアームであってもよい。
【0157】
加熱炉42は、積層体13を加熱する炉である。加熱炉42は、加熱手段421と、加圧手段422と、雰囲気調整手段423と、を有する。加熱炉42としては、セラミック等の焼成に用いられる焼成炉を用いることができる。加圧手段422は、加熱炉42において加熱されている積層体13を加圧したり、加熱前後の積層体13を加圧したりする。なお、加圧手段422は、積層体13を加圧する加圧部が気体を通過させやすい多孔質体で形成されていることが好ましい。雰囲気調整手段423は、雰囲気ガス供給手段423aおよび減圧手段423bを有し、加熱炉42の処理空間内の雰囲気ガスの調整を行う。
【0158】
除去ユニットU4は、積層体13中の基材11の熱分解温度以上の温度であって、積層体13中の各材料層の熱分解温度未満の温度で加熱を行う。これにより、積層体13中の基材を選択的に分解して、基材を除去することができる。なお、積層体13中に異なる材質の複数種類の基材11が含まれている場合には、除去ユニットU4による加熱温度は、複数の基材のそれぞれの熱分解温度のうち、最も高い熱分解温度以上の温度とすればよい。
【0159】
なお、本明細書において、熱分解温度とは、除去ユニットU4の加熱時の雰囲気下で温度を徐々に上げていった際に、その材料の重量減少が始まる温度のことである。したがって、基材11の熱分解温度以上の温度で積層体を加熱することで、積層体中の基材11を分解してその重量を減らすことができ、積層体から基材11を除去することができる。除去工程における加熱温度は基材11の熱分解温度以上の温度であることが好ましいが、熱分解温度よりもさらに高い温度で加熱することが好ましい。具体的には、除去ユニットU4の加熱時の雰囲気(典型的には空気)下で室温(25℃)から5℃/分の割合で昇温させて熱重量分析を行ったときに、初期重量の70%となるときの温度以上の温度で加熱することが好ましい。また、同様に熱重量分析を行ったときに、初期重量の50%となるときの温度以上の温度で加熱することがより好ましく、初期重量の20%となるときの温度以上の温度で加熱することがさらに好ましい。これにより、基材11の除去に要する時間を短縮したり、基材11の除去率を高めたりすることができる。
【0160】
すなわち、除去ユニットU4が加熱により基材11を除去する場合には、第1の粒子P1および第2の粒子P2は、基材11よりも高い熱分解温度を有する材質であることが好ましい。一般に、無機材料は有機材料よりも熱分解温度が高い傾向にあるため、第1の粒子P1および第2の粒子P2の材質は無機材料であり、基材11の材質は樹脂などの有機材料であることが好ましい。また、除去ユニットU4が加熱により基材11を除去する場合には、第1の粒子P1および第2の粒子P2は、基材11の熱分解温度より高い軟化点温度を有する材料であることが好ましい。また、上述のように、第1の粒子P1と第2の粒子P2としては、リチウムイオン電池や全固体電池の正極材料、固体電解質を含む材料、負極材料から選択される材質の粒子を用いることが好ましい。これにより、全固体電池や、正極シートや負極シートなどの電極シート、固体電解質シートなどを製造することができる。
【0161】
除去ユニットU4は、加熱により、積層体13中の基材の90重量%以上を消失させることが好ましく、95重量%以上を消失させることがより好ましく、97重量%以上を消失させることがさらに好ましい。このとき基材は燃焼またはガス化して気体として外部に放出されることが好ましい。なお、基材として樹脂などの有機材料で形成された基材を用いることで、加熱による基材の除去を容易にすることができる。基材を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等を用いることができる。中でも、分解温度や熱分解時に発生する気体の低有害性の観点から、PETを用いることが好ましい。
【0162】
除去ユニットU4は、減圧手段423bによって、放出された気体を加熱炉42の外部に排気することが好ましい。雰囲気ガス供給手段423a等によって加熱炉42の内部を酸化雰囲気、すなわち、空気などの酸素ガスを含む雰囲気としておくことで、基材を燃焼させて除去することができる。
【0163】
積層体13から基材が熱分解によってガス化して気体として放出されると、積層体13中の各材料層が押し上げられて形状が変化してしまうことがある。そのため、加熱炉42において加熱を行う際には、加熱の前後または加熱中、あるいは加熱後の冷却または放熱中に、加圧手段422によって積層体13を加圧しておくことが好ましい。
【0164】
[後処理ユニット]
後処理ユニットU5は、除去ユニットU4で形成された立体物14の後処理を行うユニットである。
【0165】
後処理ユニットU5が行う後処理の種類は特に限定されないが、例えば、立体物14をさらに加熱して焼成を行う処理が挙げられる。なお、後処理ユニットU5が後処理として加熱処理を行う場合には、除去ユニットU4がその機能を兼ねていてもよい。立体物14を焼成することにより、各材料層中の粒子材料等の材料同士を焼結することができる。
【0166】
なお、後処理ユニットU5も、除去ユニットU4と同様に、立体物14を加熱する加圧手段を有していてもよい。後処理ユニットU5は、後処理としての加熱の前または加熱中、あるいは加熱後の冷却または放熱中に、加圧手段によって立体物14を加圧してもよい。
【0167】
また、後処理ユニットU5は、立体物14から立体物14を構成する少なくとも一種類の材料を除去する処理を行ってもよい。例えば、第1の粒子材料P1と、第2の粒子材料P2とで立体物14を形成した場合に、第1の粒子材料P1同士のみを焼結させるなどして固着または一体化させた後に、エアブロー等によって第2の粒子材料P2のみを選択的に除去してもよい。このとき、第2の粒子材料P2は、積層造形法におけるいわゆるサポート材料として機能し、積層時に第1の粒子材料P1をサポートする機能を有する。これにより、第1の粒子材料P1を用いて立体物を造形することができる。なお、第1の粒子材料P1同士のみを固着させる場合には、例えば、第2の粒子材料P2として第1の粒子材料P1よりも焼結温度の高い材料を用いて、第1の粒子材料P1の焼結温度以上、第2の粒子材料P2の焼結温度未満の温度で加熱すればよい。
【0168】
以上のように、本実施形態によれば、立体物を積層造形によって製造する際のスループットを向上させることができる。
【0169】
本実施形態によれば、リチウムイオン電池や全固体電池の正極材料または負極材料または固体電解質を含む材料を用いて基材上に材料層を形成することで、正極シートや負極シートなどの電極シートや固体電解質シートを製造することができる。本実施形態によれば粒子状の材料を任意のパターンで緻密に配置することができるので、電気化学特性の高い電極シートや固体電解質シートを提供することが可能となる。また、電極シートを製造する際に、正極材料または負極材料に加えて固体電解質を含む材料をパターニングすることで、正極材料または負極材料と固体電解質を含む材料との間に良好な界面を形成することができる。また、正極材料、負極材料、固体電解質を含む材料を用いて立体物を形成することで、全固体電池を製造することもできる。
【実施例】
【0170】
(実施例1~9)
上述の材料層形成装置1を用いて材料層1~9を形成した。
【0171】
第1のベルト装置22aおよび第2のベルト装置22bにおいて、搬送部材224としてはポリイミド製の樹脂ベルトを用いた。また、駆動ローラ221および駆動ローラ222としてはステンレス製の金属ローラを用い、加圧ローラ223としてはステンレス製の芯金にシリコーンゴムの弾性層を設けたソフトローラを用いた。
【0172】
第1の基材11aとしては、ポリエステル(PET)製のシートを用いた。第1の基材11a上には、パターン形成装置23によってハニカムパターン状の凹凸パターンを形成した。まず、第1の基材11a上に紫外線硬化性樹脂(紫外線硬化性液状シリコーンゴム、PDMS、信越化学工業株式会社製)を塗工した。その後、第1の基材11a上の紫外線硬化性樹脂に、形成したい凹凸パターンに対応した、ハニカムパターン状の凹凸パターンを表面に有するフィルムモールド(標準モールド、綜研化学株式会社製)を押し当てた。フィルムモールドを押し当てた状態で、UVランプによって紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて、フィルムモールドを離型した。
【0173】
表面に凹凸パターン111aを形成した第1の基材11aの構造を
図14に示す。
図14(a)は第1の基材11aの上面図であり、
図14(b)は
図14(a)のA-A断面図である。
図14に示すように、第1の基材11aの表面には、六角形の枠状の凸部を有する、ハニカムパターン状の凹凸パターンが形成されている。ここで、
図14(b)に示すように、隣接する凸部の間隔(すなわち、凹部の幅)をk(μm)、隣接する凸部のピッチをs(μm)、凸部の高さ(すなわち、凹部の深さ)をd(μm)とする。なお、以下の実施例において、凹凸パターンの形状測定は、非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製 VertScan2.0)を用いて行った。
【0174】
第2の基材11bとしては、表面にアクリル系粘着剤を塗布したポリエステル(PET)製のシートを用いた。
【0175】
第1の粒子P1及び第2の粒子P2は、LiCoO2(以下LCO)、Li1.5Al0.5Ge1.5P3O12(以下LAGP)、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12(以下LLZ)、Li3BO3(以下LBO)、黒鉛のいずれかを用いた。なお、コバルト酸リチウムLCOは正極材料、アルミニウム置換リン酸ゲルマニウムリチウムLAGP、LLZ、およびホウ酸リチウムLBOは固体電解質を含む材料、黒鉛は負極材料である。なお、コバルト酸リチウムLiCoO2は、日本化学工業株式会社製のものを用いることが可能である。同様にして、Li1.5Al0.5Ge1.5P3O12を用いることができる。また、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12は、株式会社豊島製作所製を用いることが可能である、また、略称をLLZのかわりにLLZNbとする場合がある。また、ホウ酸リチウムLi3BO3は、株式会社豊島製作所製を用いることが可能である。黒鉛は、SECカーボン株式会社製SGP-5を用いることが可能である。
【0176】
また、担持材S1および担持材S2としては、磁性粒子である標準キャリア(日本画像学会製 標準キャリアP02)または自社キャリア(キヤノン製)のいずれかを用いた。なお、自社キャリアは、多孔質のフェライト粒子の孔に樹脂を充填した粒子である。材料層1の形成の際には、充填剤241aにおける第1の粒子P1の割合は17重量%とし、充填剤241bにおける第2の粒子P2の割合は45重量%とした。
【0177】
第1の基材11a上に形成する凹凸パターン111aのサイズ(間隔k、ピッチs、深さd)と充填剤を表1に示すように変えて、第1の実施形態に基づいて、第2の基材11b上に材料層1~9を形成した。なお、材料層8の形成の際には、第1の基材11aとしてポリエステル製のシートを用い、紫外線硬化性樹脂としてDIC株式会社製のOP-4003を用いた。
【0178】
【0179】
なお、各材料層を形成する際に用いた充填剤中の各粒子の粒径は、表2のとおりであった。表2において、各粒子の粒径(r10,r50,r90)は、体積基準における粒径分布における累積分布の粒径であり、r10は累積10%、r50は累積50%、r90は累積90%の粒径である。すなわち、r50はメジアン径である。なお、粒径の測定は、レーザ回析散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製 LA-960)を用いて行った。
【0180】
【0181】
形成した材料層1~9の緻密さを下記の方法で評価した。具体的には、各材料層を形成した第2の基材11b上を材料層側から光学顕微鏡により撮影し、観察領域に占める粒子のカバー率を画像処理ソフト(アドビシステムズ製フォトショップ(登録商標))により計測した。評価は、カバー率が85%以上であった場合にはA、カバー率が85%未満80%以上であった場合にはB、カバー率が80%未満であった場合にはCとした。カバー率が80%未満であると、形成した材料層に対して焼結処理などの後処理を施しても、十分に緻密な材料層を形成することが困難である。
【0182】
表2に示すように、材料層1~9のいずれも、カバー率は80%以上となり、緻密な材料層を形成できていることがわかった。なお、材料層2および材料層4については、第2の粒子P2のサイズが他の材料層の場合と比べて大きい。材料層2の場合には、第2の粒子P2のメジアン径r50が第1の粒子P1によって形成されている凹凸パターンの凹部よりも大きいため、第2の粒子P2のうち凹部の底部に接触できる粒子の割合が小さい。また、材料層4では、第2の粒子P2のメジアン径r50は第1の粒子P1によって形成されている凹凸パターンの凹部よりも小さいものの、その差は小さく、他の材料層の場合と比べて第2の粒子P2のうち凹部の底部に接触できる粒子の割合が小さい。そのため、材料層2および材料層4については他の材料層に比べてわずかにカバー率が低かったものと考えられる。
【0183】
(実施例10~20)
次に、上述の積層造形システム100を用いて立体物を形成した。具体的には、
図2に示す材料層形成装置1を材料層形成ユニットU2として用いて基材上に材料層を形成し、材料層が形成された基材を積層し、積層体から基材を加熱により除去することで、立体物である電極シート、電解質シート、および全固体電池を形成した。
【0184】
実施例1~9と同様にして各材料層をそれぞれ形成した第2の基材11bを、表3に示すように複数枚積層して、積層体を形成した。そして、積層体を加熱炉に移送し、加熱炉中で加熱した。加熱前後で積層体の重量をそれぞれ測定し、加熱前後での基材の重量比(wt%)を評価した。また、加熱後の積層体の上下面を金でスパッタし、上下面にテスターを当ててリークするか否かを調査し、リークしたものをB、リークしなかったものをAとした。結果を表3に示す。なお、リークするものは抵抗値でおよそ10Ω以下であると評価できる。
【0185】
【0186】
図15は、第2の基材11bであるポリエステル(PET)製のシートの熱重量分析結果を示す図である。熱重量分析は、示差熱天秤(株式会社リガク製 TG-DTA)を用い、空気中で室温(25℃)から5℃/分の割合で昇温させて行った。
図15から、初期重量の50%となるときの温度は約400℃であり、初期重量の20%となるときの温度は約500℃であった。また、LCO、LAGP、LLZ、LBO、黒鉛のいずれも、熱分解温度は510℃以上であった。
【0187】
表3に示すように材料層と積層枚数、加熱条件を変えて積層体を形成したところ、いずれの実施例においても、立体物を形成することができた。また、加熱処理の温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりした場合には、基材の除去率をより高めることができた(実施例10~20)。なお、実施例10,11の積層体1,2は、加熱炉における加熱処理後に基材が10重量%より大きく残存していた。そのため、加熱によって基材が熱分解した際にガス化が不十分で基材が積層体中に煤として残存し、積層体が低抵抗化したものと考えられる。一方、実施例12~20の積層体3~11は、加熱炉における加熱処理後の基材の残存率が10重量%以下であり、リーク試験においてもリークが確認されなかった。
【0188】
(実施例21~23)
次に、各材料層をそれぞれ形成した第2の基材11bを複数枚積層して積層体を形成した。そして、積層体を加熱炉に移送し、加熱炉中で加熱した。さらに、積層体を焼成炉に移送し、焼成炉中で加熱して焼成した。これにより、全固体電池を作製した。
【0189】
(実施例21)
表面に金をスパッタしたSi基板上に、材料層9(黒鉛)を4枚、材料層5(LAGP)を2枚、材料層1(LCO+LAPG)2枚、基材ごと順に積層した。そして、形成した積層体を加熱炉に入れ、加熱炉中で、空気(大気)下、500℃で30分間加熱し、基材を消失させた。その後、焼結炉中で、真空下、700℃で1時間加熱した。これにより、全固体電池1を作製した。
【0190】
(実施例22)
黒鉛の成形体上に、材料層5(LAGP)を2枚、材料層1(LCO+LAPG)を2枚、基材ごと順に積層した。そして、形成した積層体を加熱炉に入れ、加熱炉中で、空気(大気)下、500℃で30分間加熱し、基材を消失させた。その後、焼結炉中で、真空下、700℃で1時間加熱した。これにより、全固体電池2を作製した。なお、黒鉛の成形体は、黒鉛の粉末を油圧プレス機により250MPaで加圧して成形することで形成した。
【0191】
(実施例23)
LLZの成形体の下に、材料層9(黒鉛)を4枚、基材ごと積層し、LLZの成形体の上に、材料層7(LCO+LBO)を2枚、基材ごと積層した。そして、形成した積層体を加熱炉に入れ、加熱炉中で、空気(大気)下、500℃で30分間加熱し、基材を消失させた。基材を消失させた後に積層体を加圧した後、焼結炉中で、真空下、700℃で1時間加熱した。これにより、全固体電池3を作製した。なお、LLZの成形体は、LLZの粉末を油圧プレス機により250MPaで加圧して成形した後に、大気下、1150℃で36時間焼成を行うことで形成した。また、形成したLLZの成形体は上面と下面をサンドペーパーで研磨した。
【0192】
表4は実施例21~23の全固体電池の評価結果である。
【0193】
【0194】
各全固体電池の評価は、電気化学装置(ソーラトロン社製1255WB型)により充放電試験を行って評価した。具体的には、充電容量が10mAh/g以上であり、放電容量がその1/10以上であった場合にAとした。いずれの全固体電池も、充放電が行われ、二次電池として動作することが確認された。
【0195】
以上、本実施例によれば、電池の電極シート、電解質シートの製造や、全固体電池の製造が可能であった。それぞれを構成する粒子のパターニングが可能なため、面方向および積層方向に粒子がパターニングされた3次元構造を有する電池が製造できた。