(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】マルチチャネル光学機械アドレス指定部
(51)【国際特許分類】
G02B 27/09 20060101AFI20240112BHJP
G02B 27/10 20060101ALI20240112BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B27/09
G02B27/10
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2022501066
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020068966
(87)【国際公開番号】W WO2021004994
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】102019210041.4
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100134119
【氏名又は名称】奥町 哲行
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒター・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ホーファー・ベルント
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー・ピーター
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520292(JP,A)
【文献】特表2015-523597(JP,A)
【文献】特開2002-277765(JP,A)
【文献】特開2016-085429(JP,A)
【文献】特開2007-156057(JP,A)
【文献】特表2009-503593(JP,A)
【文献】特開昭61-025120(JP,A)
【文献】米国特許第06044096(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/09
G02B 27/10
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1の物体側ビーム束セット(S1)を結像面上に結像するための光学装置(100)であって、
光ビーム拡張部(161、162)と、
互いに平行を維持しながら、互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)を再配置して、互いに平行な第2のビーム束セット(S2)を得るように構成された光再配置部(130、140)と、
前記光ビーム拡張部(161、162)が第3のビーム束セット(S3)に到達するように、1つまたは複数の前記第2のビーム束セット(S2)を束ねることにより前記光ビーム拡張部(161、162)上に向けるように構成された光学素子(150)であって、前記光ビーム拡張部(161、162)は、拡張された第4のビーム束セット(S4)を得るように、前記第3のビーム束セット(S3)の各ビーム束を拡張するように構成されている、光学素子(150)と、
前記結像面(190)上に前記拡張された第4のビーム束セット(S4)を結像するように構成された結像光学部(170)と、
を備える、光学装置(100)。
【請求項2】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の各ビーム束のための光源(110)であって、そこから前記各ビーム束が前記光再配置部(130、140)に衝突する、光源(110)、
を備える、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の各ビーム束の前記光源(110)が、
モノモード光源、または
マルチモード光源、
を含む、請求項2に記載の光学装置(100)。
【請求項4】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の前記各ビーム束が前記光再配置部(130、140)の方向に通過する、前記第1の物体側ビーム束セット(S1)のビーム束ごとのコリメータ(120)
を備える、請求項3に記載の光学装置(100)。
【請求項5】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)のビーム束ごとに、コリメータとしてGRINレンズを備えるモノモードファイバを備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項6】
前記光学素子(150)は、前記光ビーム拡張部(161、162)の入力側光学素子(T1)の前方または後方において、前記光ビーム拡張部(161、162)の前記入力側光学素子(T1)の焦点距離(
)の2倍よりも小さい所定の距離で互いに平行な前記第2のビーム束セット(S2)を束ね、それにより、前記第3のビーム束セット(S3)の前記ビーム束が互いに重なり合うように構成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項7】
前記所定の距離は、前記入力側光学素子(T1)の前記焦点距離(
)の0.5倍以上1.5倍以下である、
請求項6に記載の光学装置(100)。
【請求項8】
前記所定の距離は、
として、
+Δの0.5以上1.5倍以下になり、式中、f
T1は前記入力側光学素子(T1)の前記焦点距離(
)であり、f
T2は前記光ビーム拡張部(161、162)の
出力側光学素子(T2)の前記焦点距離(
)であり、f
T1およびf
T2は共に望遠鏡を構成する、
請求項6または7に記載の光学装置(100)。
【請求項9】
前記結像光学部(170)は、前記拡張された第4のビーム束セット(S4)のビーム束の断面の1.5倍以上の直径を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記光学素子(150)は、一段または多段の屈折光学素子として構成されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項11】
前記光学素子(150)は、反射光学部として構成されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項12】
前記光再配置部(130、140)は、互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)と比較して、互いに平行な前記第2のビーム束セット(S2)の再配置を設定するために、制御され得る、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項13】
前記光再配置部(130、140)が、機械的に調整可能なミラー(130)を備えている、請求項1から12のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項14】
軸受を備え、前記機械的に調整可能なミラー(130)が前記軸受を介して直線的に移動可能である、
請求項13に記載の光学装置(100)。
【請求項15】
前記光再配置部(130、140)は、機械的および/または圧電的および/または磁気的に駆動可能な作動素子を含む、
請求項1から14のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項16】
前記光再配置部(130、140)は、互いに平行な前記第2のビーム束セット(S2)のビーム束になるか、またはそれに寄与するように前記光再配置部(130、140)を通過するとき、互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の各ビーム束が、前記再配置のいかなる設定からも独立した経路長をカバーするように、経路長を維持する方法で、再配置を達成するように構成されている、
請求項1から15のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項17】
前記光再配置部(130、140)は、前記光学装置(100)の光路に沿って前記
機械的に調整可能
なミラー(130)の背後に配置された剛性ミラー(140)を含む、
請求項
13または
14に記載の光学装置(100)。
【請求項18】
前記光再配置部(130、140)は、互いに平行な前記第2のビーム束セット(S2)が
ビーム方向と平行になるように、互いの、および前記ビーム方向との平行性を維持しつつ、
前記ビーム方向と平行な、互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)を再配置するように構成されている、
請求項1から17のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項19】
前記光ビーム拡張部(161、162)は、屈折望遠鏡として構成されている、
請求項1から18のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項20】
前記光ビーム拡張部(161、162)は、反射望遠鏡として構成されている、
請求項1から18のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項21】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の前記ビーム束は単色光を含む、
請求項1から20のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項22】
前記光ビーム拡張部は、前記拡張された第4のビーム束セット(S4)の各ビーム束によって前記結像光学部(170)の50%超を照射する、
請求項1から21のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項23】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の前記ビーム束は、前記光学素子(150)によって相殺されない弱い発散で前記光学素子に衝突し、その結果、前記第3のビーム束セット(S3)の前記ビーム束は、弱く発散する、
請求項1から22のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【請求項24】
互いに平行な前記第1の物体側ビーム束セット(S1)の前記ビーム束は、前記光学素子(150)の前方でウエストと弱収束となるように生成され、または、弱発散となるように生成されている、
請求項1から23のいずれか一項に記載の光学装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な物体側ビーム束セットを結像面上に結像するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの光ファイバによって提供され得る多数の光源からの光が、結像面内の非常に小さな領域に向けられる用途の場合がある。この例として、光ビームが適切なイオントラップ内に位置するイオンに向けられる量子コンピューティングがある。イオン間距離は数マイクロメートルになる。使用される光の波長は、使用されるイオンの仕様に依存し、典型的にはUV~NIRの範囲である。トラップ内のイオン間の距離は、様々なパラメータに依存する。トラップに異なる数のイオンが装填されると、イオン間距離の顕著な変化が生じる。例えば、トラップ内の干渉場のために、わずかな変化が生じる。したがって、焦点位置の高度に正確な追従性と同時に、可変に調整可能であり得る方法でイオントラップ面内の領域にビームを向けることが可能であるべきである。
しかしながら、例えば光通信などの他の技術分野においても同様の問題が生じる。
【0003】
異なるイオンをアドレス指定する単純な変形は、Crain、S.et al.、「Individual addressing of trapped 171Yb+ion qubits using a microelectromechanical systems-based beam steering system」、Applied Physics Letters、pp.181115、1~4、2014に記載されているように、単一の光源を使用して個々のイオンを順次アドレス指定することにある。しかしながら、イオン数が増加するにつれて、様々なイオン位置でQubit演算を高速に実行するためのボトルネックになる。さらに、Crain、S.et al.、またはKnoernschild、C.et al.、「MEMS-based optical beam steering system for quantum information processing in two-dimensional atomic systems」、Optics Letters、pp.273~275、2008にも記載されているように、より大きなイオン数を含めることに関してスキームを拡張すると、中間像面のサイズが増大し、したがって、後続の結像光学部に課される要求が増大する。
【0004】
MEMSミラーアレイでは、マルチチャネル入力の位置を受信機平面内の目標位置に関連付けることができる。ファイバスイッチ構成では、コリメーションおよび同一の集束レンズが、典型的には、実現されるべき1:1画像形成のための入力側チャネルおよび出力側チャネルにおいて使用される。この文脈内で、ミラーアレイは、入力と出力との任意の関連付けについて、束が出力側で、中心上かつ垂直に対応するチャネル位置に衝突することをもたらした。これは、出力チャネルの固定配置に従って出力側ミラーの所定の固定された位置決めを必要とする。その結果、出力チャネルの可変位置は、そのような構成では達成することが困難である。
【0005】
ファイバアレイ内の固定入力側光源位置に基づいて、MEMSミラーアレイは、中間結像が使用されることなくイオン位置をアドレス指定するための下位光学素子に関連して使用され得る:Rickert、J.、「Simultaneous and individual ion addressing for quantum information processing」、Leopold-Franzens-Universitat Innsbruck、Institute of Experimental Physics、2018を参照されたい。この文脈内では、ファイバから始まるコリメートされた束が膨張される。次の対物レンズは、その焦点面内の束を結像タスクの要件に適合したガウスウエストに変換する。しかしながら、光軸の外側に位置する光源位置、ならびに焦点面内の位置の所望のシフトを実現する光軸に向かう傾斜は、光学部が広く開かれていない場合に伝送損失をもたらす。したがって、光学装置のサイズが制限されている場合、チャネルの数は最初から制限されたままであるため、光部の直径自体をチャネルの数でスケーリングする手法は適切ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Crain、S.et al.、「Individual addressing of trapped 171Yb+ion qubits using a microelectromechanical systems-based beam steering system」、Applied Physics Letters、pp.181115、1~4、2014
【文献】Crain、S.et al.、or Knoernschild、C.et al.、「MEMS-based optical beam steering system for quantum information processing in two-dimensional atomic systems」、Optics Letters、pp.273~275、2008
【文献】Rickert、J.、「Simultaneous and individual ion addressing for quantum information processing」、Leopold-Franzens-Universitat Innsbruck、Institute of Experimental Physics、2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、結像面上に互いに平行なビーム束の第1の物体側セットを結像するための光学装置を提供することであり、それにより、前記結像が行われる結像面内の位置の調整可能性は、必要に応じて、例えば機械的構成要素による調整可能性の形態で、および/またはより多数のビーム束へのより容易なスケーラビリティを可能にする形態でも実施することがより容易になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的の解決策は、請求項1に記載の光学装置によって達成される。
【0009】
本発明のコア概念は、ビーム束が入力側で平行に延在するようにビーム束が提供されるとき、およびビーム束が再配置されるとき、後続の結像光学部とのビーム拡張の前に平行性を維持しながら、かつ再配置されたビーム束間のビーム拡張への移行が、再配置されたビーム束を光ビーム拡張部上に向ける光学素子を介して束ねること(すなわち集光)によって、すなわち相互の重ね合わせによって行われるとき、ビーム束の数および/または再配置とは本質的に無関係な形態で後続の結像光学部との光ビーム拡張部が実装され得るように、ビーム束の結像位置および/または数に関してより効果的である、ビームの第1の物体側セットを画像面上に結像する概念が達成され得ることにある。これは、例えば、光ビーム拡張部を用いて、例えばそれぞれがガラスファイバ端部に由来する、互いに平行な第1の物体側ビーム束セットを結像面上に結像するための光学装置であって、互いに平行を維持しながら第1の物体側ビーム束セットを再配置して、互いに平行な第2のビーム束セットを得るように構成された光再配置部と、光ビーム拡張部が第3のビーム束セットのビーム束によって到達されるように、第2のビーム束セットの1つまたは複数のビーム束を束ねることにより光ビーム拡張部上に向けるように構成された光学素子であって、光ビーム拡張部は、拡張された第4のビーム束セットを得るように第3のビーム束セットの各ビーム束を拡張するように構成されている、光学素子と、拡張された第4のビーム束セットを結像面上に結像するように構成された結像光学部、例えば対物レンズと、を備えた、光学装置につながる。
【0010】
言い換えれば、実施形態は、複数の入力側光源点と出力側目標点との高精度の光学的関連付けを達成することを可能にし、本質的にそれぞれ1つの平面内に配置され得る目標点および/または端点は、これにおいて、すなわち、横方向、方向において必ずしも静止しておらず、光源点と目標点との間隔比は、距離を明確に増加または減少させる結像を必要とし得る。
【0011】
例えば、光線光学的な意味での弱収束または弱発散の束は、コリメータ、例えば収束レンズによって入力側の各チャネルに対して生成され得る。例えば、コリメータは、光源の発散性の高い光を取り込み、発散性が低減されたビームを生成する。したがって、低い発散度を有するビームの互いに平行な束がチャネル内で発生する。
【0012】
前記ビーム束は、適切な曲げ手段を介して個々に曲げられ(方向転換され)てもよく、それにより、それらは、複数の互いに平行な弱く発散する束として、例えば収束レンズまたは放物面ミラーなどの結像光学素子に衝突する。
【0013】
この複数の大きく平行な束、弱く収束した束、または弱く発散した束の場合、束の様々な反射角度は、例えば、結像光学素子への個々の衝突位置のために生じ、その結果、例えば、焦点面内に位置するディスク内など、光学素子の焦点面内で互いに大きく重なり合う。束は、結像光学素子のために、光線光学的な意味であっても、それらの非コリメート特性、収束性、または発散性を失わないが、焦点面内で束であるというそれらの特性を保持し、各場合において1つの点で一致しない。
【0014】
束断面は、例えば望遠鏡として実装される光ビーム拡張部によって拡張されてもよい。入力側では、光ビーム拡張部は、束直径の少なくとも1.5倍に相当するサイズを有するべきであり、これらは互いに重なり合うようになる。出力側では、光ビーム拡張部のサイズは、1つには、結像光学素子の後の中心束の伝播方向から生じる光軸に応じたその位置合わせによって、および別の1つには、結像光学素子からのその距離から最小化されてもよく、この距離は、望遠鏡がビーム拡張に使用される場合には、結像光学素子の焦点距離および望遠鏡内の入力側レンズの焦点距離から生じる。この文脈内では、光源点の相互距離および目標点の相互距離から生じる必要な拡張スケール(それぞれの場合に適合される非等距離および平均値を有する)は、対物レンズの焦点距離および結像光学素子の焦点距離の比によって、ならびにビーム拡張の拡張率によって設定されてもよく、同時に、出力側、光ビーム拡張部、および入力側、対物レンズに存在する束直径は、入力束の発散を適合させることによってそれぞれの要件に適合されてもよい。
【0015】
光学装置のさらなる実施形態およびさらなる有利な態様は、それぞれ従属請求項に記載されている。以下で説明される実施形態の特徴の効果および利点は、光学装置全体に関して光学装置の光学素子の個々のグループに等しく適用され、互いに交換および/または組み合わせることができる。
有利には、光学装置は、第1の物体側ビーム束セットの各ビーム束用の光源を含み、そこからそれぞれのビーム束が光再配置部に衝突する。
【0016】
好ましくは、モノモードファイバは、ビーム束の光源として使用される。しかしながら、他の実施形態によって定義されるように、たとえこの場合にはコリメーションのための横方向寸法も明らかに大きくなるとしても、マルチモード光源が使用されてもよい。例えば、モノモードファイバに用いられるコリメータは、屈折率分布型レンズであってもよい。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、ビームの弱収束または発散束を生成するための光学装置は、それぞれのビーム束が光再配置部の方向に通過する第1の物体側ビーム束セットの各ビーム束に対してコリメータを含む。コリメーションレンズは、例えば光ファイバから、高度に発散するレーザパワーを捕捉し、発散が低減されたビームを生成し、これにより、適度な伝播距離を可能にする。
【0018】
有利には、光学装置の光学素子は、第2の
ビーム束セットのビーム束と平行に入射する光を、入力側光学素子の前方または後方の光ビーム拡張部の入力側光学素子の焦点距離の2倍よりも小さい点に向かって、またはほぼ2倍よりも小さい距離で束にするように構成される。この文脈内で、第3のビーム束セットのビーム束は、それらの依然として存在する収束または発散のために、所定の領域内の点、例えば円で互いに重ね合わされる。言い換えれば、所定の領域内の焦点面内で互いに重なり合う束は、それぞれ収束および発散のために、光線光学的な意味でも束であるというそれらの特性を維持し、それぞれ1つの点で一致しない。互いに重なり合うように光学素子を通過した各束は、好ましくは、わずかに発散しており、したがって光ビーム拡張部に衝突する。軸から様々な距離で互いに平行に光学素子に向かって収束するビーム束は、光学素子によって偏向され、光学素子の焦点距離において互いに重なり合う。したがって、元の位置/向き、すなわち様々な横方向位置および等しい角度-ビームの近軸束-は、光学素子によって移送されて、光学素子の焦点面で同じ位置を共有するが、それぞれの角度および方向に関して異なる束セットを形成する。
ビーム束の光源は、1次元または2次元の方法で配置されてもよく、再配置は、1次元または2次元の方法で実施されてもよい。
特に好ましい実施形態では、重ね合わせが行われる光学素子の焦点面の上記距離は、入力側光学素子の焦点距離の0.5倍~1.5倍の範囲である。
さらにより好ましい実施形態では、距離は、
として、f
T1+Δの0.5倍~1.5倍の範囲であり、
式中、f
T1は入力側光学素子の焦点距離であり、f
T2は光ビーム拡張部の出力側光学素子の焦点距離であり、f
T1およびf
T2は共に望遠鏡を構成する。
【0019】
このように光ビーム拡張部の入力側光学素子の前方に束を重畳させることで、出力側光学素子の照明を効果的に重畳させることができ、多数のビーム束であっても出力側光学素子を小型に構成することができる。
【0020】
有利な実施形態によれば、結像光学部は、その点における第4のビーム束セットのビーム束の断面の1.5倍以上の直径を有する。この位置では、ガウス束の完全な重ね合わせが可能である。
有利な実施形態による単純で低コストの設計は、光学素子が一段または多段屈折光学部として構成されることを可能にする。
有利な実施形態による特にコンパクトな設計は、光学素子が反射光学部、好ましくは放物面ミラーとして構成されることを可能にする。
【0021】
好ましい実施形態によれば、光再配置部は、第1の物体側ビーム束セットと比較して、ビーム束の横方向の配置に関して、第2のビーム束セットの再配置を設定するように制御されてもよい。結果として、ビームの個々の束は、例えば、ビーム束の特に密な配置を達成するように、またはビームの元の束を互いに規定の距離に配置するように、重ね合わせられ、元の位置から変位され得る。換言すれば、再配置部は、1つおきのビームの出力側の束が到来する第1のビーム束のうちの1つと排他的に関連付けられるように、かつビーム束の横方向の相互配置が第1の物体側ビーム束セットと第2のビーム束セットとの間で変化するように、互いに平行性を維持しながら到来するビーム束を再配置する。
製造および設定が簡単な実施形態によれば、光学装置の光再配置部は、機械的に調整可能なミラーを備える。
【0022】
機械的に調整可能なミラーの容易な調整または設定のために、一実施形態による光学装置は、ベアリング、例えばばね接続または可動ベアリングを含み、それを介して機械的に調整可能なミラーは、入射ビーム束と平行になど、直線的に移動可能である。直線運動によって、ビーム束は、それらの相互平行性が維持されながら再配置され得る。結果として、光源
から発生し、異なる空間位置に位置するビームの近軸束の本来の剛性位置は、互いに平行に変位することができる。
【0023】
可能な限り正確なビーム束の再配置または整列を保証するために、光再配置部は、例えばミラーの直線運動のための機械的および/または圧電的および/または磁気的に制御可能な作動素子を備えることができる。そのような作動素子によって、ビーム束の非常に正確な制御を達成することができる。
【0024】
好都合には、光学装置の光再配置部は、第1のビーム束の各ビーム束が、第2のビーム束のビーム束になるように光再配置部を通過するときに、再配置のいかなる設定にも依存しない、または一旦再配置されるとビーム束のいかなる位置にも依存しない距離をカバーするように、カバーされる距離が維持されるように再配置を達成するように構成される。したがって、カバーされる距離に依存する束のいかなる変化も回避される。したがって、それらは、選択されたまたは設定された再配置にかかわらず、同じ直径および/またはウエスト位置を有する光学素子に衝突する。
【0025】
有利な実施形態によれば、光再配置部は、光学装置の光路に沿って調整可能なミラーの背後に配置された剛性ミラーを備える。配置は、剛性ミラーおよび調整可能なミラーを用いて、曲げ角度が各場合で90°になるようにすることができる。このようなミラーを配置することは、ビーム束のすべてが調整可能なミラーを離れると同じ方法で曲げられる場合に特に有利である。
【0026】
別の有利な実施形態によれば、光再配置部は、第2のビーム束セットがビーム方向、すなわち第1の束セットにも平行になるように、互いにおよびビーム方向との平行性を維持しながら、ビーム方向に平行な第1の物体側ビーム束セットを再配置するように構成される。平行度を維持することは、ビーム束の特性および/または配向の本質的に均一な変化の観点から、反射または屈折光学素子への衝突に関して特に好都合である。
一実施形態によれば、光ビーム拡張部は屈折望遠鏡として構成される。
【0027】
さらに好ましい実施形態によれば、光ビーム拡張部は、反射望遠鏡として構成される。このような反射望遠鏡を用いた光学装置は、光ビーム拡張部内の色収差を回避する。
【0028】
光学装置の一実施形態では、第1の物体側ビーム束セットは、高強度の単色光を含む。単色光は、光学装置の様々な光学素子によって誘導されるビームの個々の束の特性が本質的に同じままであり、したがって同じ方法で制御され得るので、結像面内の物体の正確な測定および/または位置特定を可能にする。
いくつかの実施形態は、例として図面に示されており、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】ガウスビームおよび/またはガウスビーム束の従来のモデルを説明するための概略図である。
【
図3】一実施形態による、直線的に配置されたモノモードファイバを有する再配置部の図である。
【
図4】有利な実施形態による、ビーム拡張のための望遠鏡によるビーム束の束重ね合わせおよびビーム拡張を説明するための簡略図である。
【
図5】束の不利な重畳を伴う望遠鏡によるビーム拡張を説明するための簡略図である。
【
図6】有利な実施形態による、ビーム束を重ね合わせるための最適条件を説明するための、望遠鏡による束の重ね合わせおよびビーム拡張を説明するための簡略図である。
【
図7】不都合なことに高度にコリメートされたビーム束による対物レンズの非最適照明を説明するための、望遠鏡による束の重畳およびビーム拡張を説明するための簡略図である。
【
図8】ビームウエストのサイズに関する表示を含む、
図1の実施形態による望遠鏡によるビーム拡張を説明するための簡略図である。
【
図9】一実施形態による屈折光ビーム拡張部を使用している間の光学装置の光路を説明するための簡略図である。
【
図10】さらなる実施形態による、反射光ビーム拡張部を使用している間の光学装置の光路を示すための簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図面を参照して実施形態をより詳細に説明するが、同一または類似の機能を有する要素には同一の参照番号が付されている。
【0031】
図1は、一実施形態による光学装置100の概略図を示す。これに関連して、光学装置100は、複数の相互に平行なビーム束を
結像面190上に
結像するためのマルチチャネル光学機械アドレス指定部に対応する。光源110から開始して、ビームの1つの束である第1の
物体側ビーム束セットS1を形成するいくつかのビーム束が、光学装置100を介して
結像面190上に向けられる。第1の
物体側ビーム束セットS1の個々のビーム束は、互いに平行になるように整列される。言い換えれば、入力平面内の異なる光源点
は、
結像面190内の特定の目標点
に関連付けられるか、または画像化される。
【0032】
1つまたは複数のモノモード光源は、第1の物体側ビーム束セットS1のビーム束の光源110として機能し得る。レーザ源からの光は、例えば、スプリッタを介して、1つのモノモードファイバからいくつかのモノモードファイバに伝送され、その端部は、その後、セットS1のビームの個々の束の源として機能するか、またはビーム束のセットS1を提供するために、ファイバ結合なしまたはファイバ結合ありのいくつかのモノモードレーザを使用する。
【0033】
第1の物体側ビーム束セットS1のビーム束は、再配置部130、140に転送される。これは、例えば、束および/またはチャネルごとに、屈折率分布型レンズなどのコリメータ120によって行われてもよい。
【0034】
第1の物体側ビーム束セットS1は、単色光を含み得る。モノクロ特性は、量子コンピュータにおけるような光学装置100の応用の技術分野に起因し得るが、色収差を回避するために他の応用分野においても有利であり得る。
【0035】
上記の説明の代替として、第1の物体側ビーム束セットS1のビーム束はまた、マルチモード光源、すなわちマルチモードレーザまたはマルチモードファイバから生じてもよい。セットS1の各チャネルおよび/または束に対して、適切なコリメータを設けることができる。この場合、ビーム束をコリメートするための寸法は、おそらくモノモードの変形例よりも大きくなり得る。例えば、セットS1の各束は、マルチモードファイバ、VCSEL、またはVCSELアレイのチャネルに由来する。マルチモード生成の場合、セットS1の束は、VCSELのアレイによって生成され、続いて各VCSELのマイクロレンズアレイおよび/または1つ以上のマイクロレンズによって生成され得る。
【0036】
再配置部は、互いに平行を維持したまま、互いに平行な第1の物体側ビーム束セットS1を再配置することにより、互いに平行な第2のビーム束セットS2を得る。続いて、再配置部が機械的に調整可能であるか、または異なる再配置に設定され得る実施形態について説明する。
【0037】
互いに平行な第2のビーム束セットS2は、再配置部130、140を介して、光ビーム拡張部161、162が第3のビーム束セットS3によって到達されるように、光ビーム拡張部161、162上に1つまたは複数のビーム束の第2の
ビーム束セットS2を束ねて導くように構成された光学素子150に導かれる。光学素子150は、
第2の
ビーム束セットS2と平行に入射する光を、入力側光学素子T1の前後の光ビーム拡張部161、162の入力側光学素子T1の焦点距離
の2倍以下の距離
+Δの地点Xの位置に向かって束ねるように構成されている。好ましくは第2の
ビーム束セットのビーム束の各々に固有の発散のために、第3の
ビーム束セットS3のビーム束は、拡張領域内の点Xにおいて互いに重なり合う。換言すれば、セットS2の各ビーム束は、光学素子150によって曲げられ、セットS3の束のうちの1つの束として点Xに向けられ、それにより、セットS3の他の束と重ね合わされる。重畳は、拡張された表面積内で行われる。第3の
ビーム束セットS3の束が点Xに向けられる方向は、セットS2のビームの対応する束が光学素子に衝突する横方向の位置に双方向に依存する。
【0038】
図1の実施形態では、光学素子150は、一段屈折光学部として構成されている。さらなる実施形態によれば、光学素子150はまた、多段屈折光学部または反射光学部として構成されてもよい。
【0039】
図1の本実施形態では、
第3の
ビーム束セットS3の重ね合わせの点Xは、入力側光学素子T1、例えば、光ビーム拡張部161、162によって形成された望遠鏡の収束レンズの前に位置する。光ビーム拡張部161、162は、
第4の
ビーム束セットS4を得るように、
第3の
ビーム束セットS3の各ビーム束を拡張するように構成されている。
図1において、光ビーム拡張部161、162は、入力側にレンズT1を備え、出力側にレンズT2を備える望遠鏡から形成される。
第4の
ビーム束セットS4は、光ビーム拡張部161、162の下流に配置された
結像光学部170を介して
結像面190上に
結像される。これに関連して、
結像光学部170は、
図1の実施形態では、拡張された
第4の
ビーム束セットS4を
結像面190上に集束させるように構成される。
【0040】
ここでは2つの光学素子またはレンズT1、T2を備える望遠鏡として示されている光ビーム拡張部161、162によって、ここでは結像光学部170の入力側表面である平面上に第3のビーム束セットS3のうちの望遠鏡の前の点Xで本質的に互いに重ね合わされるビーム束を重ね合わせて、第3のビーム束セットと比較して拡張された束直径を有し、束間の束伝播方向のばらつきが少ない第4のビーム束セットS4を形成することを管理し、第4のビーム束セットS4は、結像光学部170によって結像面190上に集束される。
【0041】
例えばイオンへの集束に適したモノモードガウス束は、ガウスビーム光学の法則に従う。例えば、
図1の実施形態などの本発明の実施形態は、
結像面190上に集束された束のウエストサイズを生成することを管理し、これは非常に小さく、
結像光学部170のサイズまたは直径および波長のみに本質的に依存し得るが、セットS1~S4内のビーム束の数とは本質的に無関係である。これを説明するために、最初に
図2を参照する。
【0042】
図2は、本明細書に列挙された実施形態による、ビーム束の挙動を計算し描写するための近似の目的で使用されるガウスビームまたはビームのガウス束の従来のモデルを示す図である。
したがって、波長のビーム束は、
(1)
に従って、対応するウエストw
0および角度
によって特徴付けられ、また、ウエスト
からの距離
に応じたビーム半径
(2)
によって特徴付けられ、式中、z
0はレイリー長であって、
(3)
であり、これにより、ビーム半径はウエスト値
の√2倍に拡大される。
光学素子によって、ガウス形のウエストが互いに変換され、束断面はウエスト
から離れるにつれてサイズが増大し、ウエスト
に向かって先細になる。
【0043】
光学経路または光束経路内に配置された光学素子の照射領域は、ビーム束の開口角
およびウエスト平面からの距離
に関連する。ウエストサイズが小さいほど、束の開口の角度が大きくなり、これは、光学素子およびウエストから所与の距離を有すると、それに応じて光学素子の照明領域が大きくなることを意味する。ビームのガウス束内に99%より大きい十分なエネルギー包含を確保するために、光路内に配置され、束を制限する効果を潜在的に有する要素は、この点に存在する束半径の少なくとも3倍の直径をさらに有する必要がある。
【0044】
既知の技術的手法では、点線で示されている、光軸OAに向かって著しく傾斜した軸外束または束は、光学素子のそれぞれのサイズおよび品質に課される要件が増加する傾向、または光学素子のサイズが限られていると、ビーム強度のガウス分布の部分的遮断によって引き起こされる伝送損失が生じる傾向を有する。対応する効果は、例えば、光源点
を目標点
に関連付けるために必要な光源側配置またはビーム偏向のために生じる。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、例えば、対物レンズとして構成された
結像光学部170の直径は実質的に大きくなく、焦点距離は、
結像面190内の目標点
の空間分解されたアドレス指定を可能にするサイズw
targetのウエストを生成するために必要なもの、およびガウス束の99%より大きい透過を達成するために必要なものよりも実質的に小さくない。対物レンズ170は、焦点距離
および直径D
objを含み、
結像面190に対応するその焦点面内のビーム束を、
結像タスクの要件に適合したガウスウエストW
targetに変換する。
例えば対物レンズの
結像光学部170の開口部は、この文脈では、
(4)
によってサイズが規定される開口数(NA)と呼ばれる。
(1)および(4)によれば、99%より大きい透過率の要求を考慮しながら、対物レンズが最小で有さなければならない開口角は、
(5)、
【0046】
によって決定され、目標面からの対物レンズの距離および/または目標面の拡張などの設定の技術的条件は、対物レンズの焦点距離および/または直径を指定する。
【0047】
したがって、光学機械システムの実施形態では、各チャネルについて、対物レンズに衝突する拡張された束が、技術的条件に従って決定された対物レンズの直径内に留まり、対物レンズをほぼ完全に照明するように、光再配置部による光学機械ビーム曲げおよび光ビーム拡張部によるビーム拡張が構成されてもよい。
【0048】
上記のようにして、本発明の実施形態は、複数の入力側光源点
と、目標平面または
結像面内の出力側目標点
との高精度の関連付けを同時に可能にし、目標点
は必ずしも静止していない。例えば、漂遊磁場によって影響を受ける負荷依存イオン間距離またはイオン位置は、例えばイオントラップ内で追跡することができる。対物レンズによって光軸OAに関して中心合わせされ、その直径に関して設定され、適切な微小光学機械によって可能にされる光学的全体配置は、開口数に関する仕様が本質的に目標面内の分解能要件のみに依存し、それらの焦点距離に関して、本質的に構造関連の理由による作動距離のみに依存する対物レンズの使用を可能にする。例えば、
結像面190がイオントラップ内にある場合、上述の作動距離は、例えば、真空窓の厚さおよび窓からのトラップの距離によって与えられ得る。したがって、より大きなイオン数へのスケーリング動作は、より大きな開口数またはより大きな直径を有する明らかにより高価な対物レンズによって、他の光学機械的アプローチの場合のように制限されない。同様に、装置100を適用する他の技術例についても同様である。本発明の実施形態で使用することができる限定された対物レンズ開口数は、さらに、より大きな焦点深度に起因して、例えばイオン面などの
結像面190に関して対物レンズを長手方向に調整するために必要な費用を制限する。折り畳まれ、対物レンズとは別に純粋に反射性である光学部は、独立した波長でもあるコンパクトな構成を可能にし、したがって、例えば
40Ca
+、
138Ba
+または他のイオンを含むイオントラップなどの様々な用途の場合に使用することができる。
【0049】
特定の実施態様では、
図1の装置は、簡単にするために
結像面190内の線形配置、例えばポールトラップなどのイオントラップ内の
40Ca
+イオンの線形配置のために、光学機械アドレス指定部を実現するために以下のように寸法決めされてもよい。互いに平行に延在する第1の物体側ビーム束セットS1の光源110として、入力側モノモードファイバの適切な線形配置を使用することができる。光源110の距離については、ファイバ径、コリメーションレンズ120の直径、および必要なチャネル距離が、機械システムの部分で考慮されるべきである。機械的システムによって決定される500μmの基準グリッドを想定する場合、500μm未満の直径を有するコリメーションレンズ120が選択されるべきである。光源が異なる、例えば反対側に位置する平面内に配置され得る場合、1mm未満の直径を有するコリメーションレンズ120が可能である。イオントラップ内の
40Ca
+イオンの距離について、例えば約5μmの平均値を推定することができ、これにより、それらの距離について100:1の画像化スケールが得られる。
40Ca
+イオンの光学装置100または光学アドレス指定部の波長は、729nmになる。約2.5μmの供給モノモードファイバ110のモードフィールド半径は、近似的に、入力ガウスウエストであると考えることができる。再配置部130、140は、光路内に配置され、その側がチャネル距離によって設定される上限を有するが、ビーム束径を制限する。したがって、この位置では、束半径を150μm未満に保つ必要がある。イオントラップの中心における個々のイオン間距離が5μm未満である場合、例えば調整可能なミラー130の曲げ要素のサイズを500μm未満になるように選択することが有利である。すなわち、好ましくは、曲げ要素130、140における束直径
は、100μmよりも小さくなるように選択されなければならない。
図1は、コリメーションレンズ120の背後で弱く収束する束を有する有利な実施態様を示す。
【0050】
結像スケールを実現するために、光ビーム拡張部、光学素子150の焦点距離
、および対物レンズの焦点距離
は、適切な寸法にされるべきである。一般性を失うことなく、光源点
の距離と目標点
の距離との間の相関については、いずれの場合もy方向における線形配置として、
結像光学素子150が焦点距離
を有し、光ビーム拡張部161、162が焦点距離f
T、1およびf
T、2の2つのレンズT1、T2を有する望遠鏡であると仮定すると、以下の相関が式の形で見出され得る。
(6)
結像光学素子150が曲率半径R
c_mirrを有する放物面ミラーとして構成されている場合、(6)は適切な相関をもたらす。
(7)
【0051】
(6)および/または(7)について、平行に整列された線源平面としてのファイバの距離は、平行性を維持しながら、適切な再配置部130、140および/または光学機械システムの部分で、結像光学素子150の光軸OAからの距離に1:1の比で平行移動されると仮定するものとする。
【0052】
再配置部130、140が、上述の平行度要件を維持しながら、光軸OAからの距離を表す
結像光学素子上で
によって指定された位置への光源位置
の変換を可能にする場合、光源点と目標点との自由な関連付けは、
(8)
によって、
および/または、
結像光学素子としての放物面ミラーの場合、
(9)
によってアドレス指定され得る。
【0053】
光源位置
と位置
との関連付けの可能な実装形態は、例として
図3に概説されている。関連付けの変動性を示す目的で、様々な可能性が例示的な方法で示されており、適用の場合は、N個の光源チャネルまたは光源点
とN個の目標チャネルまたは目標点
との全単射関連付けを提供する。
【0054】
一例として、0.3のNAを有する対物レンズを仮定すると、イオン面内の729nmの波長に対して1.5μm未満のウエストサイズを生成することができる。前記ウエストサイズは、約5μmの距離に位置するイオン位置の正確なアドレス指定を可能にする。10mmを超える厚さの真空窓の背後でのイオントラップの動作を可能にする30mmの焦点距離を想定し続け、10:1の
結像スケールに典型的な光ビーム拡張部161、162を使用する場合、光源点
の距離と目標点
の距離との比に対応する100:1の
結像スケールは、300mmの焦点距離を有する光学素子150、例えば600mmの曲率半径を有するミラーを用いて実施される。
【0055】
例えば、
図1などの本出願の実施形態では、光ビーム拡張部161、162は、放物面ミラーからf
OE+f
T1+Δの適切な距離に配置される。したがって、束の重ね合わせの位置または点Xは、望遠鏡の第1のレンズT1の前の距離f
T、1+Δにあり、その結果、束は、例えば
図1および
図4に示されるように、望遠鏡の出力側の中心に置かれる。Δを決定する可能性は以下で推定される。
【0056】
それに応じて与えられるおよび/または要求される光ビーム拡張部の対物レンズおよび/または出力直径の照射は、本質的にファイバ側光コリメーション部120で設定される。従来のマイクロレンズが使用される場合、設定は、所望のわずかな収束または発散が達成されるように、物体距離が公称焦点距離fから数%逸脱するように選択されるという事実から生じる。例えば、レーザまたはファイバ出力などの光源とコリメータとの間の距離は、公称焦点距離の0.9倍~1.1倍の範囲である。
【0057】
本発明の実施形態の意図された適用分野は、既に上述したように、イオントラップ内の複数のイオンの同時アドレス指定が必要な部分的タスクを提示する量子技術である。様々な他の応用分野内にも同等のタスクがあり、それらは通信技術内、センサシステム内、または産業応用におけるビーム誘導の分野内にあり得る。
【0058】
図3は、ここでは例として直線的に配置されているモノモードファイバに由来するビーム束を備える再配置部130、140の概要を示している。
図3の実施形態では、それぞれのモノモードファイバは、光学的意味で弱収束性および/または弱発散性であるビーム束を生成する個々のコリメータ120a~120dを備える。光源点
に対応するビーム束の個々の位置pos.1~4は、ビーム束ごとに適切に移動可能および/または調整可能なミラー130a~130dおよびビーム束のすべてに設けられた剛性ミラー140によって、光学素子150上の位置pos1’~4’に関連付けられる。この文脈内で、ビームの個々の束は、相互に変位されるだけでなく、再配置されてもよい。
図3では、位置pos1~4からpos.1’~4’への個々の変位が矢印で示されている。調整可能ミラー130a~130bは、好ましくは直線運動を可能にするように支持される。実施形態に応じて、光再配置部130、140全体またはその一部は、機械的および/または圧電的および/または磁気的に制御可能な作動素子によって制御されてもよい。光学装置100の光路に沿って、光再配置部130、140は、光路において調整可能ミラー130の背後に配置され、ビーム束がそれを介して光学素子150に向けられる剛性ミラー140を備える。
【0059】
図3の例によって示されるように、光再配置部130、140は、カバーされる距離が維持されるように、位置の再配置、ここではpos1~4からpos.1’~4’の再配置を達成するように構成されてもよく、第2のビーム束セットS2のビーム束になるか、またはそれに寄与するように光再配置部130、140を通過するときに、第1の
物体側ビーム束セットS1の各ビーム束が、再配置の任意の設定とは無関係の距離をカバーする。さらに、光再配置部130、140は、第2のビーム束セットS2がビーム方向と平行になるように、またはビーム方向と平行になり続けるように、互いに、かつビーム方向と平行を維持しながら、ビーム方向と平行な第1の
物体側ビーム束セットS1を再配置するように構成されている。
【0060】
目標点
の最適な照明を可能にする光学装置100の個々の光学部品に関する好ましい設定について、いくつかの連続図を参照して以下に説明する。
【0061】
図4は、有利な実施形態による、望遠鏡によるビーム束の束重ねおよびそれらのビーム拡張を説明するための簡略図を示す。問題を単純化するために、図示されているのは、個々のビーム束のコリメータ120から始まる光路であり、再配置部130、140は図示されていない。光学素子150に向けられたビーム束は、わずかな収束または発散のみを示し、図では点線として示されている光軸OAと平行に延在する。ビームの個々の束は、光学素子150によって偏向される。次いで、ビーム束が収束するのは光学素子150の焦点距離
内であり、すべてのビーム束の共通の中心は、光学素子150の焦点内に位置する点Xによって画定される。この文脈内で、点Xの位置は、光ビーム拡張部161、162の入力側光学素子または入力側レンズT1の前に所定の距離
+Δで配置される。本実施形態では、入力側レンズT1からの点Xの距離は、光ビーム拡張部161、162によるビーム束の拡張が、出力側レンズT2を実質的に完全に照明するように、ならびにその下流に配置された例えば対物レンズなどの
結像光学部170が、例えば拡張された各ビーム束に関して50%超、具体的には例えば50%超を照明するように設定される。光学素子150によって、ビーム束の元の位置/向き、すなわち、ビームの近軸束の様々な位置および同一の角度は、同じ位置および様々な角度に伝達される。光源110、例えばモノモード光源はまた、一次元または二次元に配置されてもよい。
【0062】
図5は、さらなる実施形態による、望遠鏡によるビーム束の束重ねおよびそれらのビーム拡張を説明するための簡略図を示す。
図4とは異なり、
図5では、望遠鏡の入力側光学素子または入力側レンズT1から距離を置いた点Xの位置は、出力側光学素子または出力側光学レンズT2または下流対物レンズ170においてビーム束が必ずしも互いに重なり合わないように決定される。したがって、
図5は、光ビーム拡張部161、162の光学素子150と入力側光学素子161との間の距離が適合されていない束の光路を示す。
【0063】
光軸OAから異なる距離にある光源から平行に発するすべてのビーム束の事実を考慮した、光学装置の有利な設定または寸法設定は、
図6によって説明されるように、出力側光学素子162または出力側レンズT2において、ならびに光ビーム拡張部161、162の下流に接続された対物レンズ170において互いに完全に重なり合う。
図4および
図5を見ると、光学装置100を通って延びる光路の違いを明確に識別することができる。
【0064】
図6によって、一実施形態によるビーム束の最適な重ね合わせのための上述の寸法が示される。この目的のために、事項を簡単にするために、個々のビーム束の重ね合わせの位置に点Xを含む
図4および
図5の部分、ならびに光ビーム拡張部161、162のみが示されている。要求される条件は、
結像光学素子150の後の距離
で一致するビーム束の束中心が、望遠鏡の出力側光学素子または出力側レンズT2の平面内で再び一致することである。
図6では、個々のビームは、
結像光学素子150の異なる位置から発生し、光ビーム拡張部161、162に向かって延びるビームの個々の束のそれぞれの中心を表す。条件は、以下が適用される
結像タスクとして定式化することができる。
【0065】
点X、すなわち物体点は、光軸OA上に位置し、ビーム束の中心、すなわち束中心のすべてが一致する位置である。点Xは、レンズT1によって像距離
+
で、同じく光軸上に位置する像点に結像される。
結像タスクを満たすための定義量は、物体点XとT1との間の距離である。
この目的のために、
(ED1):
オブジェクト幅sとして、量f
T1+Δ
画像距離s’として、量f
T1+f
T2
焦点距離fとして、量f
T1、
が
結像方程式に挿入され、その結果、決定されるべき量Δは、
(ED2)
になる。
代替実施形態によれば、Δは、ED2による値の±50%の範囲内に位置すれば十分である。
【0066】
対物レンズ170内の束重畳の場合、T2と対物レンズ170との間の有限距離が考慮されるべきとき、例えばさらなる光学素子がそこで光路に導入されるべきとき、Δのわずかな修正が生じる。
【0067】
図7は、ビーム束が極度にコリメートされた場合に対物レンズ170の照明が不十分であることを説明するために、前述の
図4~
図6と同様にレンズT1、T2を備える望遠鏡の手段である束重畳およびビーム拡張を説明するための簡略図を示す。光ビーム拡張部161、162および/または光ビーム拡張部161、162の下流に接続された対物レンズ170の出力側光学素子または出力側レンズT2の照射は、
結像光学素子150に衝突するビームの平行な束が特定の収束または発散を示すように、言い換えれば、それらが理想的にコリメートされないように設定される。これは、
図4において、
結像光学素子150の左から、ビームのガウス束を示すビームの個々の束の曲線を集めてもよい。
【0068】
図7から、非常に強くコリメートされたビーム束の場合、ビーム束は、出力側光学素子T2および/または光ビーム拡張部161、162の下流に接続された対物レンズ170のごく一部のみを照射することを認識することができる。
【0069】
図8は、
図2のガウスビームの説明に関連して、一実施形態による望遠鏡によるビーム拡張を説明するための簡略図を示す。
図8は、光源点
と目標点
との距離が100倍異なる実施形態を説明する。したがって、
図8のウエストサイズから収集され得るように、ビーム束、または束ウエストのサイズも縮小される。サイズを100:1に縮小するための開始点は、光源110のビーム束のウエストではなく、理想的なコリメーションを実行するように設定されていないコリメーションレンズ120によって生成されるウエストである。実施形態では、後者は89マイクロメートルに達し、対物レンズの焦点面内のサイズの100:1の縮小によって、0.89マイクロメートルのウエストサイズに変換される。
【0070】
図9は、一実施形態による屈折光ビーム拡張部161、162を使用している間の光学装置100の光路を説明するための簡略図を示す。
図1の実施形態とは異なり、
図9の実施形態は、反射光学素子150を備える。反射
結像光学素子150は、例えば放物面ミラーであってもよい。反射
結像光学素子150(放物面ミラー)を含む実施形態では、光源110またはコリメータ120は、シャドーイングが生じないように特定の角度で配置される。
【0071】
図10は、反射光ビーム拡張部165、166を使用している間の光学装置100の光路を説明するための簡略図を示す。
図1および
図3から
図9の上記で説明した実施形態とは異なり、
図10の実施形態は再配置部130、140を含まない。ビーム源110の個々の平行なビーム束は、コリメータ120を介して、
結像光学素子155に直接導かれ、そこからビーム束は、2つの放物面ミラーを含む反射望遠鏡の形態の光ビーム拡張部165、166を介して対物レンズ170に送られ、対物レンズを介して
結像面190にビームが集束される。
これらの結果をもたらした研究は、欧州連合によって支援されている。
【符号の説明】
【0072】
100 光学装置
110 光源
120a~120b コリメータ
130a~130b 調整可能なミラー
140 静止剛性ミラー
150
結像光学素子
155
結像光学素子(放物面ミラー)
170
結像光学部、対物レンズ
190
結像面
161、162 光ビーム拡張部(屈折望遠鏡)
165、166 光ビーム拡張部(反射望遠鏡)
POS1~POS4 再配置前のビーム束の位置
POS1’~POS4’ 再配置後のビーム束の位置
T1 入力側光学素子(161)または入力側レンズ鏡筒
T2 出力側光学素子(162)または出力側レンズ鏡筒
光学素子(150)の焦点距離
入力側素子光学系T1の焦点距離
出力側光学素子T2の焦点距離
D 直径
Δ 偏差
角度
波長
光源点または光源位置
結像面(190)上の目標点または目標位置
放物面ミラーの半径(焦点距離)
結像光学素子上の位置
結像光学素子上の位置