(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】プラズマ照射装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20240112BHJP
H01T 23/00 20060101ALI20240112BHJP
H01T 19/00 20060101ALI20240112BHJP
A61N 1/44 20060101ALI20240112BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H05H1/24
H01T23/00
H01T19/00
A61N1/44
A61B17/32 510
(21)【出願番号】P 2020112848
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-241890(JP,A)
【文献】特開2001-017817(JP,A)
【文献】特開2005-320895(JP,A)
【文献】特開2007-207475(JP,A)
【文献】特開2008-198583(JP,A)
【文献】特開2012-176347(JP,A)
【文献】特開2013-033603(JP,A)
【文献】特開2020-136112(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108410(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098603(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020434(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193997(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0012589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
H01T 23/00
H01T 19/00
A61N 1/44
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記第1電極に電気的に接続される配線部を備え、
前記配線部は、前記通気部材の内部に配置されて
おり、
前記第1電極は、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する放電電極であり、
前記第2電極は、自身の電位がグラウンド電位とされる接地電極であり、
前記配線部は、前記放電電極に電気的に接続されており、
前記接地電極に電気的に接続された第2配線部が、前記通気部材の外側に配置されている
プラズマ照射装置。
【請求項2】
前記通気部材の少なくとも一部には、導電性を有するとともに前記放電電極とは絶縁された構成をなし且つ前記放電電極とは異なる電位状態とされるシールド部が設けられている
請求項
1に記載のプラズマ照射装置。
【請求項3】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記第1電極に電気的に接続される配線部を備え、
前記配線部は、前記通気部材の内部に配置されて
おり、
使用者によって把持される把持部を有するとともに前記沿面放電部の外部に配置されるケース体を備え、
前記ケース体には、グラウンド電位とされる第3電極が設けられている
プラズマ照射装置。
【請求項4】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記第1電極に電気的に接続される配線部を備え、
前記配線部は、前記通気部材の内部に配置されて
おり、
前記誘電体層は、前記第1電極が配される電極配置面を有し、
前記配線部と前記第1電極は、前記電極配置面上で接合されている
プラズマ照射装置。
【請求項5】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記第1電極に電気的に接続される配線部を備え、
前記配線部は、前記通気部材の内部に配置されて
おり、
前記流路と前記通気部材との間の空間を囲みつつ前記通気部材から供給されるガスを前記流路に導く構成をなし、前記ガス誘導路を構成する構造体及び前記通気部材が嵌り込む構成をなすシール部材を備える
プラズマ照射装置。
【請求項6】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記通気部材は、導電性を有するとともに前記第1電極に電気的に接続される配線部として構成されて
おり、
使用者によって把持される把持部を有するとともに前記沿面放電部の外部に配置されるケース体を備え、
前記ケース体には、グラウンド電位とされる第3電極が設けられている
プラズマ照射装置。
【請求項7】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記通気部材は、導電性を有するとともに前記第1電極に電気的に接続される配線部として構成されて
おり、
前記誘電体層は、前記第1電極が配される電極配置面を有し、
前記配線部と前記第1電極は、前記電極配置面上で接合されている
プラズマ照射装置。
【請求項8】
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記通気部材は、導電性を有するとともに前記第1電極に電気的に接続される配線部として構成されて
おり、
前記流路と前記通気部材との間の空間を囲みつつ前記通気部材から供給されるガスを前記流路に導く構成をなし、前記ガス誘導路を構成する構造体及び前記通気部材が嵌り込む構成をなすシール部材を備える
プラズマ照射装置。
【請求項9】
前記第1電極は、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する放電電極であり、
前記第2電極は、自身の電位がグラウンド電位とされる接地電極であり、
前記通気部材は、前記放電電極に電気的に接続されており、
前記接地電極に電気的に接続された第2配線部が、前記通気部材の外側に配置されている
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のプラズマ照射装置。
【請求項10】
前記通気部材の外周面には、平坦形状とされた第1平坦面が形成されており、
前記第1電極の厚さ方向一方側の外面には、平坦形状とされた第2平坦面が形成されており、
前記第1平坦面と前記第2平坦面とが対向しつつ接合されている
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載のプラズマ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、沿面放電型のプラズマ放電を行うプラズマ表面処理装置が開示されている。この装置は、反応部構成体にプラズマ生成用ガスの流路が設けられており、この流路の壁面に沿面放電用電極が配置される。沿面放電用電極は、プラズマ生成用ガスの進行方向の側面に配置される放電電極と誘電体と介して放電電極と対向する誘導電極とによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沿面放電型の放電部は、空間放電型の放電部と比較してコンパクト化しやすく、放電のための印加電圧を下げやすいというメリットがある。しかし、放電部自体はコンパクト化しやすいが、放電部から外れた周辺部分は、ガスを供給する通気部材や電極に電圧を印加するための配線部などを配置する必要があるため嵩張りやすい。このように周辺部分が嵩張ってしまうと、せっかく放電部をコンパクト化できるのにそのメリットを最大限に生かしきれず、装置全体の一層の小型化を図る上で問題となる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、沿面放電型の放電部を備えるプラズマ照射装置において放電部から外れた周辺部分の嵩張りを抑制し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のプラズマ照射装置は、
先端側に向かってガスを流す流路と、前記流路の先端側において前記流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、前記誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、前記第1電極又は前記第2電極の一方が直接又は他部材を介して前記流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が前記第1電極又は前記第2電極に印加されることに応じて前記流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、前記ガス誘導路の前記流路に向けて前記ガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
前記第1電極に電気的に接続される配線部を備え、
前記配線部は、前記通気部材の内部に配置されている。
【0007】
第1態様のプラズマ照射装置は、ガス誘導路の流路に向けてガスを流す通気部材が設けられ、この通気部材の内部に配線部が配置されている。このプラズマ照射装置は、通気部材の外側に配線部が設けられる構成(通気部材と別に配線部が設けられる構成)と比較して一層のコンパクト化を図ることができ、放電部から外れた周辺部分の嵩張りを確実に抑えることができる。
【0008】
上記の第1態様のプラズマ照射装置において、第1電極は、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する放電電極であってもよい。そして、第2電極は、自身の電位がグラウンド電位とされる接地電極であってもよい。更に、配線部は、放電電極に電気的に接続されていてもよく、接地電極に電気的に接続された第2配線部が、通気部材の外側に配置されていてもよい。
このプラズマ照射装置は、放電電極に電気的に接続される配線部が通気部材の内部に配置される構成であるため、グラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に変化する電線の周りを通気部材によって囲んだ構成とすることができる。よって、配線部の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に変化しても、その変化に起因する悪影響がプラズマ照射装置の外部に及びにくくなる。
【0009】
また、配線部が放電電極に電気的に接続されてなるプラズマ照射装置において、通気部材の少なくとも一部には、導電性を有するとともに放電電極とは絶縁された構成をなし且つ放電電極とは異なる電位状態とされるシールド部が設けられていてもよい。
このプラズマ照射装置は、放電電極に電気的に接続された配線部の周りを通気部材によって囲むだけでなく、その配線部の周りに放電電極とは絶縁されたシールド部材を配置することができるため、配線部の電位が外部に及ぼす悪影響をより一層抑えることができる。
【0010】
本発明の第2態様のプラズマ照射装置は、
先端側に向かってガスを流す流路と、流路の先端側において流路を流れたガスを放出する放出口と、を有するガス誘導路と、
誘電体層と、誘電体層を介在させて互いに対向して配置される第1電極及び第2電極と、を有し、第1電極又は第2電極の一方が直接又は他部材を介して流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が第1電極又は第2電極に印加されることに応じて流路内で沿面放電を発生させる沿面放電部と、
管状に構成され、ガス誘導路の流路に向けてガスを流す通気部材と、
を備えるプラズマ照射装置であって、
通気部材は、導電性を有するとともに第1電極に電気的に接続される配線部として構成されている。
【0011】
第2態様のプラズマ照射装置は、ガス誘導路の流路に向けてガスを流す通気部材が設けられ、この通気部材が第1電極に電気的に接続される配線部として構成されている。このプラズマ照射装置は、通気部材の外側に配線部が設けられる構成と比較して一層のコンパクト化を図ることができ、放電部から外れた周辺部分の嵩張りを確実に抑えることができる。
【0012】
上記第2態様のプラズマ照射装置において、第1電極は、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する放電電極であってもよい。そして、第2電極は、自身の電位がグラウンド電位とされる接地電極であってもよい。そして、通気部材は、放電電極に電気的に接続されていてもよい。更に、接地電極に電気的に接続された第2配線部が、通気部材の外側に配置されていてもよい。
このプラズマ照射装置は、放電電極に電圧を印加する経路を通気部材によって兼用することができ、この経路の配線を効果的に削減することができる。一方で、接地電極に電気的に接続される第2配線部については、通気部材とは別で配線を設けることができるため、通気部材の配置に大きく依存しすぎることなくグラウンド経路を確保しやすくなる。
【0013】
上記第2態様のプラズマ照射装置において、通気部材の外周面には、平坦形状とされた第1平坦面が形成されていてもよい。そして、第1電極の厚さ方向一方側の外面には、平坦形状とされた第2平坦面が形成されていてもよい。更に、第1平坦面と第2平坦面とが対向しつつ接合されていてもよい。
このプラズマ照射装置は、通気部材の外周面を第1電極の外面に対して直接的に接合することができるため、通気部材と第1電極との間に介在する中間部材を省略又は削減することができ、通気部材と第1電極との接合を簡素化することができる。更に、このプラズマ照射装置は、第1平坦面と第2平坦面とを対向させた接合を採用しているため、接合面積を増やすことができ、接合の安定化を図ることができる。
【0014】
上記のいずれのプラズマ照射装置においても、使用者によって把持される把持部を有するとともに沿面放電部の外部に配置されるケース体が設けられていてもよい。そして、ケース体には、グラウンド電位とされる第3電極が設けられていてもよい。
このプラズマ照射装置は、沿面放電部の電位(特に、放電電極の電位)がケース体の外側に悪影響を及ぼすことを第3電極によって抑えやすくなる。
【0015】
上記のいずれのプラズマ照射装置においても、誘電体層は、第1電極が配される電極配置面を有していてもよい。そして、配線部と第1電極は、電極配置面上で接合されていてもよい。
このプラズマ照射装置は、誘電体層に設けられた電極配置面上で配線部と第1電極とを接合する構成であるため、製造を行いやすく且つ小型化を図りやすい構成となる。
【0016】
上記のいずれのプラズマ照射装置においても、流路と通気部材との間の空間を囲みつつ通気部材から供給されるガスを流路に導く構成をなし、ガス誘導路を構成する構造体及び通気部材が嵌り込む構成をなすシール部材が設けられていてもよい。
このプラズマ照射装置は、ガス誘導路を構成する構造体と通気部材を別々に構成しつつ、構造体と通気部材の間の境界部分においてガス漏洩を抑制しつつガス通路を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、沿面放電型の放電部を備えるプラズマ照射装置において放電部から外れた周辺部分の嵩張りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態のプラズマ照射装置を備える先端デバイス及び手術用装置を概略的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す拡大図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体及びシール部材等を概念的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体からシール部材、通気部材、配線部を分解した構成を、構造体を三分割した構成と共に示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体を第3方向(幅方向)中心位置にて第3方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体を第1方向中心位置にて第1方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体を第2方向(厚さ方向)中心位置にて第2方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図8】
図8は、
図5で示される構造体に対してシール部材、通気部材、及び配線部が組み付けられた断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図9】
図9は、
図3の構成からシール部材、通気部材、配線部を省略した構成を概略的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の構成に配線部を追加した構成を概略的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体を第3方向(幅方向)中心位置にて第3方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を、シール部材及び通気部材の断面構成と共に概略的に示す断面概略図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体からシール部材、通気部材を分解した構成を、構造体を三分割した構成と共に示す分解斜視図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態のプラズマ照射装置を構成する構造体及び通気部材を概念的に示す斜視図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態と同様のプラズマ照射装置が設けられた先端デバイス及び手術用装置についての
図1とは異なる例を示す概略図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態と同様のプラズマ照射装置が設けられた先端デバイスについての
図1、
図15とは異なる例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
1-1.手術用装置の概要
図1で示される手術用装置1は、施術対象の生体組織に対して切開、剥離又は止血を行い得る処置装置として構成されている。手術用装置1は、先端デバイス3と、超音波振動部12(駆動部)を制御する装置である制御装置5と、先端デバイス3内のガス誘導路30(
図6)に対してガスを供給するガス供給装置7と、プラズマ照射装置20に対して電圧を印加し得る電源装置9とを備える。
【0020】
制御装置5は、超音波振動部12に対して超音波振動を発生させるための電気信号を与える装置である。制御装置5は、先端デバイス3と制御装置5との間に介在する図示しない可撓性の信号ケーブルを介して超音波振動部12に電気信号を与え得る構成となっている。
【0021】
ガス供給装置7は、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの不活性ガス(以下、単にガスともいう)を供給する装置である。ガス供給装置7は、例えば、先端デバイス3とガス供給装置7との間に介在する可撓性の通気部材120(
図3参照、
図1では図示を省略)を介して後述するガス誘導路30に不活性ガスを供給する。ガス供給装置7は、例えばボンベ等から供給される高圧ガスを減圧するレギュレータと、流量制御を行う制御部とを含む。
【0022】
電源装置9は、高周波電圧発生回路11に電力を供給する装置であり、昇圧トランスなどを含む回路である。高周波電圧発生回路11は、後述する放電電極42(
図5)と接地電極44(
図5)との間に所望の電圧を印加する装置であり、接地電極44をグラウンド電位に保ちつつ、放電電極42と接地電極44との間に所定周波数の交流電圧を印加する。高周波電圧発生回路11は、高周波数(例えば、20kHz~300kHz程度)の高電圧(例えば、振幅が0.5kV~10kVの高電圧)を生成し得る回路であれば、公知の様々な回路を採用し得る。なお、高周波電圧発生回路11が発生させる高電圧の周波数は、一定値に固定された周波数であってもよく、変動してもよい。また、高周波電圧発生回路11が接地電極44と放電電極42との間に印加する電圧は、周期的に変化する電圧であればよく、正弦波の交流電圧であってもよく、非正弦波(例えば、矩形波、三角波など)の交流電圧であってもよい。
【0023】
図1では、高周波電圧発生回路11がケース体14の内部に設けられた先端デバイス及び手術用装置が例示されているが、高周波電圧発生回路11がケース体14の外部(例えば、先端デバイス3の外部)に設けられていてもよい。
【0024】
先端デバイス3は、手術を行う術者によって把持されて使用される装置であり、主に、ケース体14、把持器具15、プラズマ照射装置20、超音波振動部12、などを備える。ケース体14、把持器具15、プラズマ照射装置20、及び超音波振動部12は、使用者に把持される把持ユニットとして一体的に構成されており、可撓性を有する部材を介して不活性ガスや電力が供給されるようになっている。
【0025】
ケース体14は、円筒状に構成され所定方向に延びており、主として、基部14Bと、基部14Bと一体的に構成されるとともに所定方向に延びる円筒状の延出部14Aとを備える。基部14Bの内部には、超音波振動部12などが収容され、延出部14Aにはプラズマ照射装置20が固定又は一体化されている。
【0026】
超音波振動部12は、公知の超音波振動子として構成され、上述した制御装置5によって所定の電気信号が与えられたときに駆動して超音波振動を発生させ、後述する作用部材16に対して超音波振動を伝達するように動作する。超音波振動部12は、駆動部の一例に相当し、作用部16A付近において生体組織を切開、剥離又は熱凝固止血する作用が生じるように作用部材16を駆動する。
【0027】
把持部60は、先端デバイス3を使用する使用者によって把持される部分であり、公知の可動機構を採用した可動部材変位機構として構成されている。把持部60は、ケース体14の基部14Bに固定されてケース体14と一体化された固定把持部62と、固定把持部62に対して相対移動可能に取り付けられる軸状の作用部材64とによって構成されている。
【0028】
把持器具15は、生体組織を挟んで把持するように使用し得る器具であり、作用部材16と作用部材64とを有する。
【0029】
作用部材16は、軸状の部材であり、生体組織に作用する作用部16Aを自身の先端側に備える部材である。作用部16Aは、作用部材16の先端部付近において固定刃として機能する部位である。作用部材16は、作用部16Aと、超音波振動部12から与えられた振動を作用部16Aに伝達する軸部16Bとを有し、超音波振動部12で発生した振動が軸部16Bを介して作用部16Aに伝達されることにより作用部16Aが振動する。作用部材16は、作用部16Aが生体組織に接近又は接触している状態で作用部16Aが振動することにより生体組織に対して切開作用、剥離作用又は止血作用を生じさせるように動作する。
【0030】
作用部材64は、可動部材として機能する軸状の部材であり、生体組織に作用する作用部64Aを自身の先端側(一端側)に備える部材である。作用部64Aは、可動刃として機能する部位である。作用部材64は、自身の後端側(他端側)の端部付近に可動把持部64Cを備えている。把持器具15では、軸状の作用部材64が延出部14Aの先端部付近の回動軸Zを中心として回動可能とされ、作用部16Aと作用部64Aとが接近及び離間自在に構成されている。把持器具15は、可動把持部64Cを固定把持部62側に近づけようとする操作がなされることに応じて作用部64A(可動刃)が作用部16A(固定刃)に近づくように作用部材64が回動する。逆に、可動把持部64Cを固定把持部62から離間させようとする操作がなされることに応じて作用部64Aが作用部16Aから離れるように作用部材64が回動する。
【0031】
このように構成された先端デバイス3は、超音波振動を用いた生体組織の切開処置、剥離処置、止血処置を行いうる。例えば、作用部16A(固定刃)と作用部64Aとによって生体組織が挟み込まれたときに作用部16Aに超音波振動が伝達されることにより生体組織を切除することができる。また、超音波振動が伝達される作用部16Aを生体組織に接触させて摩擦熱を生じさせ、止血を行うこともできる。作用部材16に対して超音波振動を与えながら、又は与えずに、作用部16Aと作用部64Aとによって生体組織を挟持し、剥離処置を行うこともできる。このように、先端デバイス3では、超音波振動による切開、剥離又は熱凝固止血が可能となっており、更に、後述するプラズマ照射装置20からの低温プラズマの照射によって低侵襲な止血を併用することもできる。
【0032】
1-2.プラズマ照射装置の基本構成
図1に示されるように、プラズマ照射装置20は先端デバイス3の一部として組み込まれ、先端デバイス3の内部で誘電体バリア放電を生じさせる装置として構成されている。なお、
図1の例では、プラズマ照射装置20は、保持部18によって保持された構成でケース体14に固定されている。
図2に示されるように、プラズマ照射装置20の内部で発生した低温プラズマPは、作用部材16の先端部に設けられた作用部16A付近に照射される。なお、
図2では、作用部16Aと作用部64Aとが接触するときの作用部材64の位置が二点鎖線によって概念的に示されている。
【0033】
図3で示されるように、プラズマ照射装置20は、所定の立体形状(例えば、板状且つ直方体状)として構成された構造体20Aを有し、構造体20Aの長手方向の端部に形成された放出口34から低温プラズマを照射するように構成されている。
【0034】
図4にて概念的に示されるように、構造体20Aは、厚さ方向中央部に第3誘電体層53が設けられ、第3誘電体層53よりも厚さ方向一方側に第4誘電体層54が設けられている。更に、構造体20Aは、第3誘電体層53よりも厚さ方向他方側に第1誘電体層51及び第2誘電体層52が設けられている。第1誘電体層51及び第2誘電体層52によって構成された誘電体領域の内部には、第1電極の一例に相当する放電電極42及び第2電極の一例に相当する接地電極44が埋め込まれている。
図4では、構造体20Aが3分割された構成が分解斜視図として概念的に示されているが、実際の構成は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54の各々が、一体的な誘電体部50(
図6)の一部として構成されている。
【0035】
図5に示されるように、構造体20Aは、ガス誘導路30と、沿面放電部40とを備える。
【0036】
ガス誘導路30は、ガスを導入する導入口32と、ガスを放出する放出口34と、導入口32と放出口34との間に設けられる流路36と、を有する。放出口34は、流路36の先端側において流路36を流れたガスを放出するように機能する。流路36は、先端側に配された放出口34に向かってガスを流すように機能する。ガス誘導路30は、先端デバイス3の外部に設けられたガス供給装置7(
図1)から供給される不活性ガスを導入口32から導入し、導入口32側から導入されたガスを流路36内の空間を通して放出口34に誘導する誘導路となっている。ガス誘導路30は、放出口34から作用部16A(
図2)側にガスを放出する流路構成となっており、ガスと共に低温プラズマP(
図2)を放出口34から作用部16A側に放出するように機能する。
【0037】
図5で示されるように、本明細書では、プラズマ照射装置20においてガス誘導路30が延びる方向が第1方向であり、第1方向と直交する方向のうち誘電体部50の厚さ方向が第2方向であり、第1方向及び第2方向と直交する方向が第3方向(
図6)である。
図5の構成では、誘電体部50と放電電極42と接地電極44とが一体的に設けられた構造体20Aの長手方向が第1方向である。そして、
図6のように、構造体20Aを第1方向と直交する平面方向に切断した切断面(
図6)での構造体20Aの短手方向が第2方向であり、この切断面の長手方向が第3方向である。第3方向は構造体20Aの幅方向であり、第2方向は構造体20Aの高さ方向又は厚さ方向である。なお、以下の説明では、第1方向において放出口34側が構造体20Aの先端側であり、第1方向において導入口32側が構造体20Aの後端側である。
【0038】
図5で示されるように、構造体20Aは、所定方向(第1方向)に沿ってガスを流すようにガス誘導路30が構成され、この所定方向(第1方向)と直交する第2方向を積層方向とする構成で放電電極42と接地電極44と誘電体部50とが積層された構成をなす。
【0039】
沿面放電部40は、第1誘電体層51と、第1誘電体層51を介在させて互いに対向して配置される放電電極42及び接地電極44と、を有する。沿面放電部40は、放電電極42と接地電極44との電位差に基づく電界をガス誘導路30内で発生させて沿面放電による低温プラズマ放電を発生させるように機能する。
【0040】
沿面放電部40は、放電電極42又は接地電極44の一方が直接又は他部材を介して流路36に面しつつ、周期的に変化する電圧が放電電極42に印加されることに応じて流路36内で沿面放電を発生させるものである。なお、「放電電極42又は接地電極44の一方が直接流路36に面する構成」とは、放電電極42又は接地電極44の一方が流路36内の空間に露出し当該一方が流路の内壁の一部をなすような構成が該当する。また、「放電電極42又は接地電極44の一方が他部材を介して流路36に面する構成」とは、放電電極42又は接地電極44のうちの一方が流路36に近い位置に配置されるとともに当該一方の一部又は全部が他部材によって覆われる構成が該当する。このように他部材を介する構成では、当該他部材が流路の内壁の一部をなし、上記の「一方」の主面が流路36に向いて配置される。なお、
図5、
図6で示される構成は、放電電極42が上記の「一方」に該当し、「放電電極42が他部材を介して流路36に面する構成」であるが、
図5では、他部材の一例に相当する第2誘電体層52が省略された形で示されている。
【0041】
図6で示されるように、沿面放電部40は、放電電極42が誘電体部50の一部(第2誘電体層52)を介して流路36に面しており、具体的には、誘電体部50内において第2方向の第1位置に第1の厚さで配置されている。接地電極44は、誘電体部50内において第2方向の第2位置に第2の厚さで配置されており、具体的には、放電電極42に対して流路36とは反対側に設けられるとともに放電電極42よりも流路36から離れている。沿面放電部40は、接地電極44の電位を一定の基準電位(例えば、0Vのグラウンド電位)に保ちつつ、周期的に変化する電圧が放電電極42に印加されることに応じて流路36内で沿面放電を発生させ、低温プラズマを生じさせる。
【0042】
図6で示されるように、誘電体部50は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、第4誘電体層54を備え、全体として中空状に構成されている。第1誘電体層51は、流路36の空間よりも第2方向(厚さ方向)一方側に配置されるとともに接地電極44が埋め込まれるように構成される。つまり、第1誘電体層51を介して放電電極42及び接地電極44が対向している。第2誘電体層52は、セラミック材料によって放電電極42を覆うように構成されたセラミック保護層であり、第1誘電体層51よりも流路空間側において放電電極42を覆うように配置される。第1誘電体層51及び第2誘電体層52は、流路36における第2方向一方側の内壁部を構成する。第4誘電体層54は、流路36の空間よりも第2方向(厚さ方向)他方側に配置され、流路36における第2方向他方側の内壁部を構成する。第3誘電体層53は、第2方向において第1誘電体層51と第4誘電体層54との間に配置され、流路36における第3方向一方側の側壁部及び第3方向他方側の側壁部を構成する。つまり、流路36は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54により画成されている。第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54の材料は、例えばアルミナなどのセラミック、ガラス材料や樹脂材料を好適に用いることができる。なお、機械的強度が高いアルミナを誘電体として用いることで、沿面放電部40の小型化を図りやすくなる。
【0043】
図7で示されるように、流路36は、第2方向(
図6)両側及び第3方向両側が囲まれた空間が第1方向に続くように構成され、第1方向に沿って延びる第1流路36Aと、第1流路36Aの下流側に設けられる第2流路36Bとを備える。第1流路36Aは、構造体20Aにおいて第1方向の第1領域AR1に設けられている。第2流路36Bは、構造体20Aにおける第1方向の第2領域AR2に設けられている。
図7では、第1方向において第1流路36Aが設けられる範囲が第1領域AR1として表され、第1方向において第2流路36Bが設けられる範囲が第2領域AR2として表されている。
【0044】
第1流路36Aは、第1方向と直交する方向に切断した切断面での内壁部の形状が長方形状に構成された流路である(
図6参照)。
図7で示されるように、第1流路36Aは、第1方向の第1領域AR1にわたって内壁面の幅が一定の幅となっており且つ第1方向の第1領域AR1にわたって内壁面の高さが一定の高さとなっている。
【0045】
図7で示されるように、第2流路36Bは,第1方向において第1流路36Aよりも放出口34側(下流側)に配置され、第1流路36Aよりも狭い幅で構成されている。第2流路36Bは、縮幅流路36Cと一定流路36Dとを備える。縮幅流路36Cは、第1方向において第2領域AR2の一部領域AR21にわたって設けられ、放出口34側に近づくにつれて内壁面の幅が次第に狭くなっている。縮幅流路36Cの高さは、領域AR21の全範囲にわたって一定である。一定流路36Dは、第1方向において第2領域AR2の一部領域AR22にわたって設けられ、領域AR22の全範囲にわたって内壁面の幅及び高さが一定となっている。
【0046】
図7で示されるように、接地電極44は、流路36に沿うように第1方向に直線状に延びており、第1方向の所定領域に配置されている。接地電極44は、自身の先端側の一部が放電電極42よりも放出口34側に配置されている。接地電極44の一部は、第1方向において第2流路36Bの配置領域AR2に位置しており、
図7の例では、接地電極44の先端が縮幅流路36Cの先端(一定流路36Dの後端)よりも先端側に位置している。つまり、接地電極44の一部は、第1方向において一定流路36Dの配置領域AR22に位置している。接地電極44の後端は、第1流路36Aの先端よりも後端側に位置し、放電電極42の先端よりも後端側且つ放電電極42の後端よりも先端側に位置している。接地電極44は、第3方向において第1流路36Aの配置領域AR3内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の全部)が位置する。具体的には、接地電極44は、第3方向において一定流路36Dの配置領域AR4内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の一部)が位置し、第3方向において放出口34の形成領域内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の一部)が位置する。
【0047】
図7のように、放電電極42は、直線状に構成された複数本(具体的には、3本)の直線状電極部42Aを備え、これら直線状電極部42Aが流路36に沿うように第1方向に直線状に延びており、各々の直線状電極部42Aがライン状の電極として機能する。各々の直線状電極部42Aは、一定の幅且つ一定の厚さの導体によって構成され、第1方向の所定領域に配置されている。複数本の直線状電極部42Aは後端部で連結され、互いに電気的に接続され、互いに同電位とされる。放電電極42は、第1方向において第1流路36Aの配置領域にのみ位置する。つまり、放電電極42は、第1領域AR1及び第2領域AR2のうちの第1領域AR1にのみ位置する。放電電極42の先端は、第1流路36Aの先端よりも後端側に位置し、放電電極42の後端は第1流路36Aの後端よりも先端側に位置する。更に、各々の直線状電極部42Aの幅(第3方向の長さ)は、接地電極44の幅(第3方向の長さ)よりも小さくなっている。
【0048】
1-3.通気部材、配線部、シール部材等の構成
図8で示されるように、プラズマ照射装置20は、上述した基本構成に加え、シール部材110、通気部材120、配線部130、を備えている。
【0049】
図8のように、通気部材120は、管状に構成され、ガス誘導路30の流路36に向けてガスを流す管路として構成されている。通気部材120は、自身の一端側が構造体20A側に配されるとともに自身の他端側がガス供給装置7(
図1)側に配されている。なお、シール部材110からガス供給装置7(
図1)までの管路全体が通気部材120であってもよく、シール部材110から上記管路の途中までが通気部材120であってもよい。
図8の例では、通気部材120を概念的に示しているが、通気部材の一端120Aから他端までの長さは様々に変更できる(
図3、
図4、
図9も同様)。また、通気部材120は、単一の管状部材によって構成されていてもよく、複数の管状部材が連結された形で設けられていてもよい。
【0050】
通気部材120のうち、一端120Aから所定位置までの間の部位は、一部又は全部がシールド部として構成されている。上記所定位置は、通気部材120の他端(シール部材110に連結される端とは反対側の端)であってもよく、通気部材120の端部間の位置であってもよい。つまり、通気部材120の端部間の全体にシールド部が設けられていてもよく、端部間の一部領域のみに設けられていてもよい。通気部材120において上記一端120Aから上記所定位置までの全部の領域をシールド部とする構成としては、例えば、当該全部の領域を導電材料からなる筒部として構成する例が挙げられる。通気部材120において上記一端120Aから上記所定位置までの一部領域をシールド部とする構成としては、例えば、当該一部領域に絶縁材料からなる筒部を設け、この筒部内に所定形状(例えば、配線部130を囲む筒状)の導電部材を埋め込む例が挙げられる。
【0051】
図8のように、配線部130は、放電電極42に電気的に接続される導電路として機能し、放電電極42に電圧を印加するための経路を構成する。配線部130は、導体によって構成される電線部132と、電線部132の外周面を被覆する絶縁体(樹脂等)からなる被覆部134とを備える。
【0052】
配線部130は、管状に構成された通気部材120の内部に配置されている。通気部材120の内径は、配線部130の外径よりも大きくなっており、配線部130の外周面と通気部材120の内周面との間には、空間(隙間)が構成されている。そして、配線部130の外周面と通気部材120の内周面との間に構成された空間を介してガス供給装置7(
図1)から供給される放電用ガスが流れるようになっている。配線部130は、通気部材120内において構造体20A側の一端120Aからガス供給装置7(
図1)側の他端まで全体にわたるように配置されていてもよい。或いは、配線部130は、通気部材120内において一端120Aから中間位置(一端120Aと他端(通気部材120における一端120Aとは反対側の端)との間の中間位置)まで配置されていてもよい。配線部130が一端120Aから上記中間位置まで配置される構成としては、通気部材120における上記中間位置に形成された孔部を介して通気部材120の内部から外部に引き出されるように配線部130が配置されていればよい。この場合、上記孔部と配線部130との間からガスが漏洩されないように適切なシール処理が施されていればよい。
【0053】
図8のように、シール部材110は、構造体20A及び通気部材120に密着して配置され、通気部材120の一端120Aとガス誘導路30の導入口32との間のガス流路を構成する部材である。このシール部材110は、流路36と通気部材120との間の空間を囲みつつ通気部材120から供給されるガスを流路36に導く構成をなし、ガス誘導路30を構成する構造体20A及び通気部材120が嵌り込む構成をなす。
【0054】
シール部材110は、一方側及び他方側開放した略筒状形態をなし、一方側には構造体20Aが嵌り込む構造体嵌合部112及び開口部112Aが形成され、他方側には通気部材120が嵌り込む通気部材嵌合部114及び開口部114Aが形成されている。構造体20Aは、自身の第1方向の所定領域(第1方向において導入口32よりも先端側の所定位置から自身の後端までの領域)が開口部112Aから挿入されて構造体嵌合部112と嵌まり合っている。そして、構造体嵌合部112の内周面と上記所定領域の外周面は、これらの面の間からガスが漏れないように密着している。また、通気部材120は、一端120A付近の端部側領域が開口部114Aから挿入されて通気部材嵌合部114と嵌まり合っている。そして、通気部材嵌合部114の内周面と上記端部側領域の外周面は、これらの面の間からガスが漏れないように密着している。シール部材110の材料は特に限定されないが、例えば、熱収縮材料(熱収縮チューブ)、粘度の高い充填剤(接着剤等)、ゴム材料などを好適に用いることができる。
【0055】
図8のように、構造体20A、通気部材120、及びシール部材110の外側には、第2配線部140が設けられている。第2配線部140は、接地電極44に電気的に接続された導電路であり、グラウンド電位で維持される導電路である。なお、第2配線部140は、上述のシールド部に電気的に接続されていてもよい。第2配線部140の構成は、導電路を確保できる構成であればよく、配線部130と同様の配線(電線部と被覆部とを備えた配線)であってもよく、その他の構成であってもよい。また、接地電極44と第2配線部140とを電気的に接続するための接続構造も様々であり、例えば、誘電体部50において接地電極44に電気的に接続されるビアホールを形成し、ビアホールを介して第2配線部140と接地電極44とを電気的に接続してもよい。或いは、接地電極44の一部を誘電体部50の第3方向端部又は第1方向端部から露出させ、この露出部に第2配線部140が接合されてもよい。
【0056】
1-4.配線部の接合構造
図9は、構造体20Aを概略的に示す斜視図であり、
図3から、シール部材110、配線部130、通気部材120を省略した図である。
図9のように、構造体20Aには、電極配置面50Aが設けられている。この電極配置面50Aは、第1誘電体層51における厚さ方向一方側(具体的には、流路36側)の板面(主面)であり、放電電極42が配置される面である。放電電極42では、上述した直線状電極部42Aなどは第2誘電体層52に被覆されているが、少なくとも後端側の一部はシール部材110内の空間に露出する露出部42Cとして構成されている(
図8も参照)。露出部42Cは、接地電極44(
図8)よりも後端側に配置され、上述した直線状電極部42Aよりも後端側に配置されている。
【0057】
図9のように、誘電体部50は、後端側の一部が切欠き部50Bとして構成されている。切欠き部50Bは、誘電体部50における後端側且つ第3方向中央側の一部領域において露出部42Cよりも第2方向片側(他方側)を開放するように切り欠いた部分である(
図8も参照)。このような切欠き部50Bが設けられているため、露出部42Cの一部又は全部が、誘電体部50を介在させずにシール部材110の内面と対向して配置され、露出部42Cとシール部材110の間に配線部130の一部を配置するスペースが確保される。
【0058】
このように電極配置面50A、露出部42C、及び切欠き部50Bが設けられた構成に対し、
図10のように配線部130と放電電極42とが接合されている。
図10は、
図9の構成に対して配線部130を追加した斜視図であり、
図3から、シール部材110、通気部材120を省略した図である。
図10の例では、切欠き部50B内における電極配置面50A上で、配線部130と放電電極42とが接合されている(
図8も参照)。具体的には、配線部130における電線部132と放電電極42における露出部42Cとが接合され、放電電極42と配線部130との電気的接続が確保されている。そして、
図10のように接合がなされた構成に対し、更に、
図11のように配線部130を覆う形で通気部材120が配置されている。なお、
図11は、
図10の構成に対して通気部材120を追加した斜視図であり、
図3から、シール部材110を省略した図である。通気部材120は、図示しない固定手段(接着剤等の接着媒体やその他の固定手段)によって構造体20Aに固定されていてもよく、シール部材110によって構造体20Aに固定されていてもよい。そして、
図11の構成を部分的に覆う形でシール部材110(
図3)が設けられ、プラズマ照射装置20(
図3)が構成されている。
【0059】
1-5.本構成の効果の例示
プラズマ照射装置20は、ガス誘導路30の流路36に向けてガスを流す通気部材120が設けられ、通気部材120の内部に配線部130が配置されている。このプラズマ照射装置20は、通気部材の外側に配線部が設けられる構成と比較して一層のコンパクト化を図ることができ、沿面放電部40から外れた周辺部分の嵩張りを確実に抑えることができる。
【0060】
プラズマ照射装置20において、第1電極に相当する放電電極42は、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する電極とされている。そして、第2電極に相当する接地電極44は、自身の電位がグラウンド電位とされる電極とされている。そして、配線部130は、放電電極42に電気的に接続されている。そして、接地電極44に電気的に接続された第2配線部140が、通気部材120の外側に配置されている。このプラズマ照射装置20は、放電電極42に電気的に接続される配線部130が通気部材120の内部に配置される構成であるため、グラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に変化する電線の周りを通気部材120によって囲んだ構成とすることができる。よって、配線部130の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に変化しても、その変化に起因する悪影響がプラズマ照射装置20の外部に及びにくくなる。
【0061】
特に、グラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に変化する電線とグラウンド電位となる部分との空間距離をより大きく確保することができるため、配線部130からの漏れ電流をより抑えることができる。また、配線部130が通気部材120内に収まる程度に細くなっているため、グラウンド電位となる部分との対向面積をより抑えることができ、この点でも漏れ電流の抑制を図ることができる。しかも、これらの特徴が沿面放電方式の特徴(放電電圧を抑えやすいという特徴)と相乗的に作用するため、漏れ電流の一層の抑制を図ることができる。更に、配線部130に印加する高電圧を発生させるための高周波電圧発生回路11(昇圧トランス等)を手持ち部(具体的にはケース体14)内に設ければ、高圧配線の長さを短くすることができるため、漏れ電流の更なる抑制を図ることができる。
【0062】
プラズマ照射装置20において、通気部材120の少なくとも一部にはシールド部が設けられている。そして、シールド部は、導電性を有するとともに放電電極42とは絶縁された構成をなし且つ放電電極42とは異なる電位状態とされている。このプラズマ照射装置20は、放電電極42に電気的に接続された配線部130の周りを通気部材120によって囲むだけでなく、その配線部130の周りに放電電極42とは絶縁されたシールド部材を配置することができる。よって、配線部130の電位が外部に及ぼす悪影響をより一層抑えることができる。
【0063】
また、誘電体部50のうちの第1誘電体層51(誘電体層)は、放電電極42が配される電極配置面50Aを有している。そして、配線部130と放電電極42は、電極配置面50A上で接合されている。このプラズマ照射装置20は、誘電体層に設けられた電極配置面50A上で配線部130と放電電極42とを接合する構成であるため、製造を行いやすく且つ小型化を図りやすい構成となる。
【0064】
また、プラズマ照射装置20には、シール部材110が設けられている。そして、シール部材110は、流路36と通気部材120との間の空間を囲みつつ通気部材120から供給されるガスを流路36に導く構成をなし、ガス誘導路30を構成する構造体20A及び通気部材120が嵌り込む構成をなす。このプラズマ照射装置20は、ガス誘導路30を構成する構造体20Aと通気部材120を別々に構成しつつ、構造体20Aと通気部材120の間の境界部分においてガス漏洩を抑制しつつガス通路を確保することができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、
図12等を参照して第2実施形態のプラズマ照射装置220について説明する。
図12で示すプラズマ照射装置220は、
図8等で示すプラズマ照射装置20における通気部材120及び配線部130の代わりに通気部材230が設けられた点が第1実施形態のプラズマ照射装置20と異なり、その他の点はプラズマ照射装置20と同一である。よって、以下の説明では、通気部材230に関連する構成について詳述し、プラズマ照射装置20と同一の各部分についてはプラズマ照射装置20の各部分と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、
図12で示すプラズマ照射装置220は、
図1で示す手術用装置1及び先端デバイス3においてプラズマ照射装置20に代えて設けることができ、このようにすれば、プラズマ照射装置220を備えた先端デバイス及び手術用装置を構成し得る。以下では、
図1の先端デバイス3及び手術用装置1においてプラズマ照射装置20に代えてプラズマ照射装置220が適用された場合を前提として説明する。なお、
図1におけるプラズマ照射装置20以外の部分については適宜
図1の構成を参照することとする。
【0066】
2-1.通気部材の構成
図12で示されるように、プラズマ照射装置220は、第1実施形態と同様の構造体20A及びシール部材110に加えて、通気部材230を備えている。
【0067】
図12のように、通気部材230は、管状に構成され、ガス誘導路30の流路36に向けてガスを流す管路として構成されている。通気部材230は、自身の一端側が構造体20A側に配されるとともに自身の他端側がガス供給装置7(
図1)側に配されている。なお、シール部材110からガス供給装置7(
図1)までの管路全体が通気部材230であってもよく、シール部材110から上記管路の途中までが通気部材230であってもよい。
図12の例では、通気部材230を概念的に示しているが、通気部材230の一端230Aから他端までの長さは様々に変更できる(
図13、
図14も同様)。また、通気部材230は、単一の管状部材によって構成されていてもよく、複数の管状部材が連結された形で設けられていてもよい。
【0068】
通気部材230のうち、一端230Aから所定位置までの間の部位は導電性を有する金属の筒部として構成されており、配線部として機能する。この通気部材230は、放電電極42に電気的に接続される導電路として機能し、放電電極42に電圧を印加するための経路を構成する。通気部材230は、外径が相対的に小さい円筒状の第1筒部232と外径が第1筒部よりも相対的に大きい円筒状の第2筒部234とを備える。そして、第1筒部232が第2筒部234よりも構造体20A側に配置されている。そして、第1筒部232と第2筒部234の間には、先端側(構造体20A側)に向かって外径が次第に小さくなる第3筒部236が設けられている。
図12の例では、第1筒部232と第2筒部234と第3筒部236とが一体的な金属筒として構成されており、第1筒部232、第2筒部234、第3筒部236の内径は同一となっている。なお、第1筒部232、第2筒部234、第3筒部236の内径が異なっていてもよい。
【0069】
図12のように、シール部材110は、構造体20A及び通気部材230に密着して配置され、通気部材230の一端230Aとガス誘導路30の導入口32との間のガス流路を構成する。このシール部材110は、流路36と通気部材230との間の空間を囲みつつ通気部材230から供給されるガスを流路36に導く構成をなし、ガス誘導路30を構成する構造体20A及び通気部材230が嵌り込む構成をなす。通気部材230は、一端230A付近の端部側領域が開口部114Aから挿入されて通気部材嵌合部114と嵌まり合っている。そして、通気部材嵌合部114の内周面と上記端部側領域の外周面は、これらの面の間からガスが漏れないように密着している。
【0070】
図12の例でも、構造体20A、通気部材230、及びシール部材110の外側には、第2配線部140が設けられている。第2配線部140は、接地電極44に電気的に接続された導電路であり、グラウンド電位で維持される導電路である。
【0071】
2-2.配線部の接合構造
図13のように、プラズマ照射装置220は、第1実施形態と同様の構造体20A及びシール部材110を備えており、これらに対して通気部材230が取り付けられる構成をなす。通気部材230において、第1筒部232の外周面には、外面が平坦面(第1平坦面232A)として構成された平坦部が形成されており、
図14のように、この平坦部を放電電極42の露出部42Cに対向させて接合する構成をなしている。具体的には、露出部42Cにおける厚さ方向一方側の外面が平坦形状とされた第2平坦面42Dとして構成されている。そして、切欠き部50B内における電極配置面50A上で、第1平坦面232A(
図13)と第2平坦面42Dとを対向させつつ通気部材230と放電電極42とが接合されている(
図12も参照)。通気部材230は、図示しない固定手段(接着剤等の接着媒体やその他の固定手段)によって構造体20Aに固定されていてもよく、シール部材110によって構造体20Aに固定されていてもよい。そして、
図14の構成を部分的に覆う形でシール部材110(
図13)が設けられ、プラズマ照射装置220(
図12)が構成されている。
【0072】
2-3.本構成の効果の例示
プラズマ照射装置220は、ガス誘導路30の流路36に向けてガスを流す通気部材230が設けられ、この通気部材230が放電電極42(第1電極)に電気的に接続される配線部として構成されている。このプラズマ照射装置220は、通気部材230の外側に配線部が設けられる構成と比較して一層のコンパクト化を図ることができ、沿面放電部40から外れた周辺部分の嵩張りを確実に抑えることができる。
【0073】
プラズマ照射装置220は、放電電極42が第1電極とされており、自身の電位がグラウンド電位よりも大きい又は小さい電位に周期的に変化する電極となっている。そして、接地電極44が第2電極とされており、自身の電位がグラウンド電位とされる電極となっている。そして、通気部材230は、放電電極42に電気的に接続されている。そして、接地電極44に電気的に接続された第2配線部140が、通気部材230の外側に配置されている。このプラズマ照射装置220は、放電電極42に電圧を印加する経路を通気部材230によって兼用することができ、この経路の配線を効果的に削減することができる。一方で、接地電極44に電気的に接続される第2配線部140については、通気部材230とは別で配線を設けることができるため、通気部材230の配置に大きく依存しすぎることなくグラウンド経路を確保しやすくなる。
【0074】
プラズマ照射装置220において、通気部材230の外周面には、平坦形状とされた第1平坦面232Aが形成されている。放電電極42(第1電極)の厚さ方向一方側の外面には、平坦形状とされた第2平坦面42Dが形成されている。そして、第1平坦面232Aと第2平坦面42Dとが対向しつつ接合されている。このプラズマ照射装置220は、通気部材230の外周面を放電電極42(第1電極)の外面に対して直接的に接合することができる。よって、通気部材230と放電電極42(第1電極)との間に介在する中間部材を省略又は削減することができ、通気部材230と放電電極42(第1電極)との接合を簡素化することができる。更に、このプラズマ照射装置220は、第1平坦面232Aと第2平坦面42Dとを対向させた接合を採用しているため、接合面積を増やすことができ、接合の安定化を図ることができる。
【0075】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態の各態様に限定されるものではなく、例えば、矛盾しない範囲で、複数の実施形態の特徴を組み合わせることが可能である。また、次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0076】
上記したいずれのプラズマ照射装置20,220においても、使用者によって把持される把持部を有するとともに第3電極を備えてなるケース体が沿面放電部40を囲むように外部に配置されていてもよい。例えば、
図15で示すプラズマ照射装置320は、第1実施形態のプラズマ照射装置20に加え、構造体20Aの外側にケース体314を配置したものである。ケース体314は、使用者によって把持される把持部314Cを有するとともに沿面放電部40の外部に配置され、自身の表面部にはグラウンド電位とされる第3電極319が設けられている。ケース体314は、例えば、筒状の樹脂ケース体318と、樹脂ケース体318の外周面を覆う導電性メッキなどからなる第3電極319とを有しており、沿面放電部40の周囲を第3電極319が囲む構成をなしている。なお、
図15の例では、樹脂ケースに金属メッキが施されたケース体314を示したが、金属ケースに樹脂メッキが施されたケース体であってもよく、この場合、金属ケースが第3電極の一例に相当する。また、
図15のような構成は、
図1の構成に適用してもよく、この場合、
図1のケース体14に代えて
図15のケース体314を用い、
図1でのプラズマ照射装置20の配置に代えて
図15のようにケース体314の内部にプラズマ照射装置20を配置すればよい。
【0077】
上述した実施形態では、超音波振動を行い得る先端デバイスにプラズマ照射装置が組み込まれた構成を例示したが、他の電気的機能を有する先端デバイスに上述したいずれかの構成のプラズマ照射装置が組み込まれた構成であってもよい。例えば、
図1で開示されるデバイス3とは異なる構造、機能を有する電気メスに上述したいずれかの構成のプラズマ照射装置が組み込まれていてもよい。或いは、電気的な機能を有さない既知の手術用器具(例えば、鉗子等)として構成される先端デバイスに上述したいずれかの構成のプラズマ照射装置が組み込まれた構成であってもよい。
【0078】
上述した実施形態では、プラズマ照射装置が組み込まれた先端デバイスの一例を示したが、プラズマ照射装置は上記実施形態とは異なる先端デバイスに組み込まれていてもよく、先端デバイスに組み込まれていなくてもよい。例えば、
図1で示す構成から一部を省略し、
図16で示すように、プラズマ照射装置20と制御装置5とガス供給装置7と電源装置9とを備えた構成でプラズマ照射システム401を構築してもよい。このプラズマ照射システム401は、手術用のシステムとして用いてもよく、手術以外の用途で用いてもよい。
図16の例では、第1実施形態のプラズマ照射装置20と同様の構成とケース体414とを備えた形でプラズマ照射装置420が構成され、このプラズマ照射装置420が組み込まれた構成で先端デバイス403が構成されている。そして、ケース体414、構造体20A、通気部材120、配線部130等が一体化した形で把持ユニット(手持ち部)が構成されている。この場合、制御装置5には、超音波振動部12の制御に代えて他の制御を行う機能をもたせればよい。また、この例でも、ケース体414は、使用者によって把持される把持部414Cを有するとともに沿面放電部(
図5で示す沿面放電部40と同様の構成)の外部に配置され、自身の表面部にはグラウンド電位とされる第3電極419が設けられている。ケース体414は、例えば、筒状の樹脂ケース体418と、樹脂ケース体418の外周面を覆う導電性メッキなどからなる第3電極419とを有しており、構造体20Aの周囲を第3電極419が囲む構成をなしている。高周波電圧発生回路11は、
図16のようにケース体414の内部に設けてもよく、ケース体414の外部に設けてもよい。
【0079】
明細書において、「生体組織に作用する」とは、作用部材が生体組織に影響を及ぼし、切開と剥離と止血との少なくとも1つを為すことを意味する。上述した実施形態で例示された作用部材はあくまで一例であり、作用部材が生体組織に影響を及ぼし、切開、剥離、止血の少なくとも1つを行い得るようになっていれば、上述した実施形態以外の様々な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0080】
20,220,320,420…プラズマ照射装置
20A…構造体
30…ガス誘導路
34…放出口
36…流路
40…沿面放電部
42…放電電極(第1電極)
42D…第2平坦面
44…接地電極(第2電極)
50A…電極配置面
51…第1誘電体層(誘電体層)
52…第2誘電体層(誘電体層)
53…第3誘電体層(誘電体層)
54…第4誘電体層(誘電体層)
110…シール部材
120…通気部材
130…配線部
140…第2配線部
230…通気部材(配線部)
232A…第1平坦面
314,414…ケース体
314C,414C…把持部
319,419…第3電極