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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20240112BHJP
【FI】
H02K11/215
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023568178
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2023004698
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022026265
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【弁理士】
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】小寺 優太
(72)【発明者】
【氏名】由利 侑弥
(72)【発明者】
【氏名】安藤 朗義
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-34732(JP,A)
【文献】特開2012-244855(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103619(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、
前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、
センサ基板と、
このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、
この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の内面には第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面、及び前記周方向当接面より前記センサ基板側に向けて第2方向側に傾斜し前記ホールセンサが前記鞘部の内面に第1方向に挿入される際にまず当接して前記ホールセンサを前記周方向当接面にガイドする周方向ガイド面及び前記径方向当接面より前記センサ基板側に向け第4方向側に傾斜し前記ホールセンサが前記鞘部の内面に第1方向に挿入される際にまず当接して前記ホールセンサを前記径方向当接面にガイドする径方向ガイド面の少なくともいずれかのガイド面を形成して前記ホールセンサが前記鞘部の内面に第1方向に挿入される際に前記鞘部と前記ホールセンサとの位置関係を定め
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【請求項2】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、
前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、
センサ基板と、
このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、
この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面、及び前記周方向当接面より前記センサ基板側に向けて第2方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記周方向当接面にガイドする周方向ガイド面及び前記径方向当接面より前記センサ基板側に向け第4方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記径方向当接面にガイドする径方向ガイド面の少なくともいずれかのガイド面を形成し、
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定され、
前記鞘部の第2方向の面と第3方向の周方向面及び第4方向と第5方向の径方向面の少なくともいずれかの面は、中心線を挟んで周方向に略左右対称に形成され、
前記ホールセンサが前記周方向当接面及び前記径方向当接面の少なくともいずれかの当接面に当接した状態では、前記ホールセンサは前記鞘部の中心線より第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの側に位置している回転電機。
【請求項3】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、
前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、
センサ基板と、
このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、
この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面、及び前記周方向当接面より前記センサ基板側に向けて第2方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記周方向当接面にガイドする周方向ガイド面及び前記径方向当接面より前記センサ基板側に向け第4方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記径方向当接面にガイドする径方向ガイド面の少なくともいずれかのガイド面を形成し、
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定され、
前記ホールセンサの外周には、前記ホールセンサと共に前記鞘部に挿入される当接部材が配置され、
この当接部材は第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの方向の厚みが異なる複数の部材から選択された部材である回転電機。
【請求項4】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、
前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、
センサ基板と、
このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、
この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面を形成すると共に、この当接面を第1方向に向かうにつれて角度が変化するねじり面に形成し、
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【請求項5】
周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、
複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、
前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、
センサ基板と、
このセンサ基と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、
この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記保持部は、前記センサ基板及び前記ホールセンサとは別部材の保持部材として形成され、前記保持部材は第1方向の長さの異なる複数の部材から選択された部材であり、第1方向の長さの異なる複数の前記保持部材から選択した前記保持部材を用いることで前記ホールセンサの第1方向の位置を調整することができ、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【請求項6】
前記センサ基板には、ケース係止穴が形成され、
前記センサケースには、このケース係止穴と係合して第1方向の抜け止めを行うケーススナップフィットが形成され、
前記ケース係止穴は、前記ケーススナップフィットが第2方向及び第3方向の周方向及び第4方向と第5方向の径方向の少なくともいずれかの方向に移動可能な長穴である請求項1ないし5のいずれかに記載の回転電機。
【請求項7】
前記シャフトは、内燃機関の駆動力を受けて回転し、
前記コイルは、三相に巻線されており、
前記ホールセンサは、前記内燃機関の基準位置を測定するホールセンサと、三相の巻線の出力位相を検知するホールセンサとの、複数のホールセンサであり、
前記センサケースは、複数のホールセンサに対応した鞘部を備える請求項1ないし5のいずれかに記載の回転電機。
【請求項8】
前記ホールセンサは単一であり、前記鞘部も単一である請求項1ないし5のいずれかに記載の回転電機。
【請求項9】
第1方向の厚さの異なる複数の部材から選択されるシムを用い、このシムを前記センサケースと前記センサ基板との間に配置する請求項4又は請求項5に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2022年2月23日に日本に出願された特許出願第2022-026265を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本明細書の記載は回転電機に関し、例えば二輪車の発電機や始動機として使用して有用である。
【背景技術】
【0003】
二輪車の発電機や始動機として使用可能な回転電機として、三相のブラシレスモータを用い、ロータに設けられた磁石の磁束変化よりロータの回転位置を検出したり、内燃機関の点火制御のための基準位置信号を用いたりすることは、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6112259号公報
【文献】特開2015-100221号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載の回転電機は、センサケースとホールセンサとの位置関係は常に一定であることを前提として、センサケースにリブ等を形成してセンサケースの変形を抑制し、取付け位置の精度向上を図っている。ただ、センサケースとホールセンサとの間には、組付け作業を行うための隙間があり、また、製造上の公差も必要となっている。
【0006】
本件の開示は、センサケースとホールセンサとの位置関係をより精度良く定めることを課題とする。
【0007】
本開示の一つは、周方向に永久磁石を複数配置しシャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを有しティース部の径方向外方端部が磁石と対向するステータとを備える回転電機である。
【0008】
また、本開示の一つの回転電機は、複数のコイルの隣接するコイル間に磁石と対向して配置されて磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板とホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、センサ基板及びホールセンサを収納するセンサケースとを備えている。
【0009】
そして、本開示の一つは、ホールセンサ及び保持部はセンサ基板より磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、センサケースには、ホールセンサ及び保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、ホールセンサ及び保持部は、鞘部内に第1方向に挿入して配置されている。
【0010】
また、本開示の一つは、この鞘部の内面には第1方向と周方向に直交する第2方向の面及び鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面、及び周方向当接面よりセンサ基板側に向けて第2方向側に傾斜しホールセンサが鞘部の内面に第1方向に挿入される際にまず当接してホールセンサを周方向当接面にガイドする周方向ガイド面及び径方向当接面よりセンサ基板側に向け第4方向側に傾斜しホールセンサが鞘部の内面に第1方向に挿入される際にまず当接してホールセンサを径方向当接面にガイドする径方向ガイド面の少なくともいずれかのガイド面を形成してホールセンサが鞘部の内面に第1方向に挿入される際に鞘部とホールセンサとの位置関係を定めている。そして、鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面とホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成されている。即ち、本開示の第1では、ホールセンサが鞘部に第1方向に挿入される際に、周方向ガイド面及び径方向ガイド面のいずれかのガイド面によってガイドされ確実に周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面に当接させることができる。
【0011】
また、本開示の一つは、保持部、センサ基板及びホールセンサがセンサケースに収納された状態で、保持部、センサ基板及びホールセンサは樹脂材料で固定されている。上述の周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面にホールセンサが当接した状態は、樹脂材料によって固定される。
【0012】
本開示の他の開示は、鞘部の第2方向の面と第3方向の周方向面及び第4方向と第5方向の径方向面の少なくともいずれかの面は、中心線を挟んで周方向に略左右対称に形成されている。そして、ホールセンサが当接面に当接した状態では、ホールセンサは鞘部の中心線より第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの側に位置している。
【0013】
本開示の更に他の開示では、鞘部に鞘部とは別部材の当接部材を配置している。そして、この当接部材は第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの厚みが異なる複数の部材から選択された部材としている。この更に他の開示では、ホールセンサの位置の微調整は、当接部材を交換することで達成することができる。換言すれば、鞘部を形成する型を一定として同一の鞘部を用いることが可能となる。
【0014】
本開示の他も、周方向に永久磁石を複数配置しシャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを有しティース部の径方向外方端部が磁石と対向するステータとを備える回転電機である。
【0015】
そして、本開示の他の回転電機も、複数のコイルの隣接するコイル間に磁石と対向して配置されて磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板とホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、センサ基板及びホールセンサを収納するセンサケースとを備えている。
【0016】
また、本開示の他も、ホールセンサ及び保持部はセンサ基板より磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、センサケースには、ホールセンサ及び保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、ホールセンサ及び保持部は、鞘部内に第1方向に挿入して配置されている。
【0017】
本開示の他の開示では、鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面が形成されている。そして、この当接面を第1方向に向かうにつれて角度が変化するねじり面に形成している。
【0018】
この他の開示では、ホールセンサの位置を第1方向にずらすことで、ホールセンサの角度を調節することが可能となる。そして、調節した角度はホールセンサが当接面に当接することで所定角度に保持することができる。
【0019】
また、本開示の他も、保持部、センサ基板及びホールセンサがセンサケースに収納された状態で、保持部、センサ基板及びホールセンサは樹脂材料で固定されている。従って、周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面にホールセンサが当接した状態は、この他の開示でも、樹脂材料によって固定される。
【0020】
本開示の別の開示も、周方向に永久磁石を複数配置しシャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを有しティース部の径方向外方端部が磁石と対向するステータとを備える回転電機である。
【0021】
そして、本開示の別の開示の回転電機も、複数のコイルの隣接するコイル間に磁石と対向して配置されて磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板とホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、センサ基板及びホールセンサを収納するセンサケースとを備えている。
【0022】
また、本開示の別の開示も、ホールセンサ及び保持部はセンサ基板より磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、センサケースには、ホールセンサ及び保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、ホールセンサ及び保持部は、鞘部内に第1方向に挿入して配置されている。
【0023】
本開示の別の開示では、保持部は、センサ基板及びホールセンサとは別部材の保持部材として形成され、保持部材は第1方向の長さの異なる複数の部材から選択された部材としている。
【0024】
この別の開示では、保持部材を第1方向の長さの異なる複数の部材から選択することで、ホールセンサの位置を第1方向にずらすことが可能となる。即ち、ホールセンサの第1方向の位置を調節することができる。
【0025】
また、本開示の別の開示も、保持部、センサ基板及びホールセンサがセンサケースに収納された状態で、保持部、センサ基板及びホールセンサは樹脂材料で固定されている。従って、ホールセンサの第1方向位置が調整された状態は、この別の開示でも、樹脂材料によって固定される。
【0026】
本開示の更に他の開示では、鞘部の周方向面及び径方向面の少なくともいずれかの面は、中心線を挟んで周方向に左右対称に形成されているので、いずれの方向での位置合わせも可能である。換言すれば、ホールセンサが当接する面が存在する方向が第2方向で、その逆の方向が第3方向となる。
【0027】
本開示の更に他の開示は、センサ基板には、取付穴が形成され、センサケースには、この取付穴と係合して第1方向の抜け止めを行うスナップフィットが形成されている。そして、取付穴は、スナップフィットが第2方向及び第3方向の周方向及び第4方向と第5方向の径方向の少なくともいずれかの方向に移動可能な長穴となっている。
【0028】
本開示の更に他の開示では、スナップフィットは取付穴内で周方向及び径方向に移動可能であるので、ホールセンサが周方向ガイド面に沿って第3方向に移動したり、径方向ガイド面に沿って第5方向に移動したりするのが容易となる。
【0029】
本開示の更に他の開示は、シャフトは内燃機関の駆動力を受けて回転し、コイルは三相に巻線されている。そして、ホールセンサは、内燃機関の基準位置を測定するホールセンサと、三相の巻線の出力位相を決定するための三相コイルに入力される励磁磁極を検知するホールセンサとの複数のホールセンサである。また、センサケースは、複数のホールセンサに対応した鞘部を備えている。本開示の更に他の開示では、複数のホールセンサを同時に鞘部の周方向面及び径方向面の少なくともいずれかに位置合わせすることができる。
【0030】
本開示の更に他の開示は、ホールセンサは単一であり、鞘部も単一である。単一であるため、位置合わせが容易である。
【0031】
本開示の更に他の開示では上述の別の開示と同様、保持部は、センサ基板及びホールセンサとは別部材として形成されている。且つ、保持部は第1方向の長さの異なる複数の部材から選択された部材としている。保持部を構成する部材を複数の部材から選択することで、第1方向の位置調整をすることが可能となる。特に、本開示の他の開示のように当接面を第1方向に向かうにつれて角度が変化するねじり面に形成する際、第1方向の位置調整をより的確に行うことで、ホールセンサの角度調整が正確となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、回転電機がクランクシャフト及びエンジンカバーに組み合わされた状態の断面図である。
図2図2は、ロータ、ステータ及びセンサケースを示す斜視図である。
図3図3は、ステータとセンサケースを示す正面図である。
図4図4は、ステータとセンサケースを示す斜視図である。
図5図5は、センサケースを示す斜視図である。
図6図6は、ホールセンサ、保持部及びセンサ基板を示す断面図である。
図7図7は、ホールセンサ、保持部、センサ基板及びセンサケースを分解して示す斜視図である。
図8図8は、第1実施例に係るホールセンサの鞘部の断面図である。
図9図9は、ホールセンサの出力位相とコイルの誘起電圧との関係を説明する図である。
図10図10は、センサ基板とホールセンサの第1実施例に係る他の例を示す斜視図である。
図11図11は、図10図示センサ基板とセンサケースを示す正面図である。
図12図12は、ホールセンサの鞘部の第2実施例の断面図である。
図13図13は、ホールセンサ、保持部、センサ基板及びセンサケースの第6実施例を分解して示す断面図である。
図14図14は、センサ基板とホールセンサの第2実施例に係る他の例を示す斜視図である。
図15図15は、図14図示センサ基板とセンサケースを示す正面図である。
図16図16は、第1実施例に係るホールセンサを鞘部に収納した状態の断面図である。
図17図17は、図16とは軸方向で径方向に直交する方向の断面図である。
図18図18は、ホールセンサ、保持部、センサ基板及びセンサケースの第3実施例を分解して示す斜視図である。
図19図19は、図18図示鞘部の断面図である。
図20図20は、センサケースの第4実施例を示す正面図である。
図21図21は、図20図示センサケースの断面図である。
図22図22は、図20図示センサケースのねじり面を示す断面図である。
図23図23は、ホールセンサ、保持部、センサ基板及びセンサケースの第5実施例を分解して示す斜視図である。
図24図24は、センサ基板とセンサケースの他の例を示す正面図である。
図25図25は、図24図示例の組付け状態を示す断面図である。
図26図26は、センサ基板とセンサケースの他の例を示す正面図である。
図27図27は、センサ基板とセンサケースの他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。図1は、回転電機1がクランクシャフト100に組み合わされた状態の断面図である。101は、シリンダブロックであり、シリンダブロック101内では図示しないピストンが図示しないシリンダ内を往復動する。そして、ピストンの動きは、図示しないコンロッドを介して、クランクシャフト100を回転させる。クランクシャフト100は、直径20ミリメートル程度の鉄材からなり、シリンダブロック101に軸受102で回転支持されている。
【0034】
クランクシャフト100には、回転電機1のロータ300が、基部301(図2図示)で固定されている。従って、ロータ300はクランクシャフト100と一体に回転する。ロータ300は、鉄材料製で、クランクシャフト100と係合する基部301より径方向外方に延びる円盤部302と、この円盤部302の径方向外方部に形成される円筒部303を備えている。図2に示すように、円筒部303の内方には、永久磁石304が12個、周方向に並んで配置されている。永久磁石304の厚みは、4~5ミリメートル程度である。なお、永久磁石304の数は、12個に限らず、20個や24個等要求性能に応じて適宜設定できる。
【0035】
ロータ300の内部には、図1に示すように、ステータ400が配置されている。図2は、ステータ400をシリンダブロック101側から見た斜視図である。ステータ400は、複数の磁性鋼板を積層してなり、シリンダブロック101に取り付けられる基盤部401、この基盤部401より径方向外方に延びる複数のティース部402(図1図示)を一体に形成している。ステータ400の外径は、110~130ミリメートル程度となっており、従って、ロータ300の内径は、ステータ400の外径と永久磁石304との間に微小間隙が形成される大きさとなっている。
【0036】
基盤部401には、シリンダブロック101にステータ400を固定するためのステータボルト通し穴403が3か所形成されている。また、基盤部401には、後述するセンサケース500をステータ400に固定するためのセンサケースボルト通し穴(図示しない)も2カ所形成されている。但し、センサケースボルト通し穴は、後述するセンサケース500のボルト穴に対応した数であればよく、1カ所でもよい。
【0037】
ティース部402はポリアミド等の絶縁樹脂からなるインシュレーター410で電気絶縁され、インシュレーター410の上に銅線若しくはアルミニウム線からなるコイル404が巻装されている。図3は、図2からロータ300を外して、ステータ400とセンサケース500を示す正面図である。図4は、図3とは逆の方向から、ステータ400とセンサケース500を示す斜視図である。
【0038】
図3に示すように、隣接するコイル404の間には隙間405が形成され、その隙間405は径方向外側に向けて広くなっている。また、図4に示すように、この隙間405にセンサケース500が配置されている。センサケース500は、上述のインシュレーター410と同様ポリアミド等の樹脂でモールド成形されている。
【0039】
図6に示すように、第1ないし第4ホールセンサ502~505は、2ミリメートル程度×3ミリメートル程度の大きさで、それぞれ電源線511、接地線512とセンサ出力線510と共に組付けられている。第1ないし第4ホールセンサ502~505のそれぞれの電源線511、接地線512とセンサ出力線510は、第1ないし第4保持部520~523によって保持されている。第1ないし第4保持部520~523の長さは10~20ミリメートル程度で、所定間隔を維持するスペーサ524に保持されている。なお、スペーサ524はセンサケース500と同様ポリアミド等の樹脂でモールド成形されている。
【0040】
第1ないし第4ホールセンサ502~505のそれぞれの電源線511、接地線512とセンサ出力線510は、センサ基板530にハンダ固定される。図7は各部品を分解して示す斜視図であるが、図7でハンダを符号531でしめす。このハンダ付けにより第1ないし第4ホールセンサ502~505のそれぞれの電源線511、接地線512とセンサ出力線510がセンサ基板530のプリント配線と電気接続される。
【0041】
センサケース500は、図5に示すように、センサ基板530を収容するセンサ本体部501と、第1ないし第4ホールセンサ502~505を収容する第1ないし第4鞘部541~544を備える。第1ないし第4鞘部541~544は、隣接するコイル404間の隙間405に配置される。
【0042】
上述のように、センサ本体部501内には、第1ないし第4ホールセンサ502~505からの電源線511、センサ出力線510、及び接地線512が結線されるセンサ基板530が配置されている。そして、センサ基板530は、第1ないし第4保持部520~523とともにポッティング材によって埋込されている。ポッティング材としては、エポキシ樹脂等が用いられる。
【0043】
第2ないし第4ホールセンサ503、504、505はN極とS極とが交互に着磁された永久磁石304と対向して、N極とS極とが交互に変動する位置を検出する。第2ないし第4ホールセンサ503、504、505のそれぞれの検出位置は、V相、W相、U相の通電時期に対応しており、この検出位置を基準として、回転電機1が始動機としてモータ使用されるときには、U相、V相、W相に対応するコイル404への電圧の供給を制御する。回転電機1が発電機として使用される際にもU相、V相、W相に対応するコイル404からの電流を制御するためのタイミング信号として用いられる。
【0044】
第1ホールセンサ502は、内燃機関の点火制御のための基準位置を検出する。第1ホールセンサ502は、他の第2ないし第4ホールセンサ503、504、505とは、クランクシャフト100の軸方向で異なる位置に配置されている。より具体的には、第1ホールセンサ502は、ティース部402間の隙間405の軸方向の中央位置に配置されている。それに対し、第2ないし第4ホールセンサ503、504、505とは、隙間405のシリンダブロック101側に配置されている。
【0045】
第1ホールセンサ502の配置位置では、基準位置でN極からS極への反転がなく、N極が3つの永久磁石304で連続する。なお、この永久磁石304の配置に関しては、例えば特開2015-100221号公報が参照できる。この3つのN極の連続を検知することで、基準位置が検出できる。ロータ300はクランクシャフト100と一体回転するので、基準位置はクランクシャフト100の回転方向の位置を示すことになる。クランクシャフト100が基準位置にあることと他のホールセンサの磁極の切り替わりを利用して、エンジンのシリンダに配置された図示しないスパークプラグの点火タイミングを制御する。
【0046】
図5に示すように、センサケース500は、センサ本体部501の径方向内方にステータ固定部506が形成されている。そして、このステータ固定部506には、ステータ400の基盤部401に設けられたセンサケースボルト通し穴と対応する位置に、固定部ボルト穴507が形成されている。
【0047】
このステータ400とセンサケース500とをシリンダブロック101に組付ける手順を説明する。まず、図4に示すように、第1ないし第4鞘部541~544が所定のコイル404間の所定の軸方向の位置に来るように、センサケース500をステータ400に組付ける。この組付け時に、第1ないし第4鞘部541~544はコイル404に直接触れるのではなく、コイル404との間に間隙が生じるようにしている。尤も、第1ないし第4鞘部541~544がコイル404と接触する場合もありうる。その状態では、図3に示すように、ステータ400のセンサケースボルト通し穴とセンサケース500の固定部ボルト穴507とが一定の公差内で一致させる。一致させた状態で、ボルトがセンサケースボルト通し穴を通って、センサケース500の固定部ボルト穴507と螺合し、ステータ400とセンサケース500とを固定する。
【0048】
環境規制に応じ、内燃機関は適切なタイミングで点火制御がなされる。ただ、仮に内燃機関が失火した場合にはその失火を検出してアラームを行う必要がある。また、回転電機1は正方向にも逆方向にも回転可能であるため、正回転と逆回転とを正確に検出する必要がある。その為、第1ないし第4ホールセンサ502~505の出力には精度が求められる。
【0049】
図9でホールセンサの出力電圧Vhとコイル404の誘起電圧Vcとの関係を説明する。図に示すように、ホールセンサの出力電圧Vhの中央値とコイル404の誘起電圧Vcの中央値との間には、例えば機械角5度の位置のずれが、要求される制御仕様を満たすために求められる。
【0050】
上述のように、センサケース500とコイル404とは位置決めされるが、実際には正確に位置を定めるのは困難である。この位置を正確に維持するのが困難となるのには、様々な要因がある。例えば、永久磁石304は、磁性材料をロータ300に配置した後で、電流を加えて着磁する。その際の磁性材料の配置位置や着磁するための電流に不可避的なバラツキが生じる。また、ティース部402の幅には一定の公差があり、コイル404の巻装においても一定のバラツキが生じる。
【0051】
第1ないし第4ホールセンサ502~505に付いても、その感度に不可避的なバラツキが生じるし、第1ないし第4保持部520~523及びスペーサ524の寸法にも一定の公差がある。センサケース500にも、第1ないし第4鞘部541~544やセンサ本体部501の寸法に所定の公差がある。かつ、スペーサ524や、センサケース500をモールド成形する際の温度、圧力、冷却速度等にもバラツキが生じる。
【0052】
このような種々のバラツキは、結果的に第1ないし第4ホールセンサ502~505の出力位相を異ならせることになる。また、これらのバラツキによりコイル404の誘起電圧の立ち上がりや立ち下がり磁気を早めたり遅くしたりすることにもなる。これらが相乗的に組み合わさることで、基準値から所定量(A量)外れてしまう恐れがある。
【0053】
その結果、U相、V相、W相に対応する第2ないし第4ホールセンサ503~505からの出力も相毎にバラツキとなる。同時に、U相、V相、W相に対応する各コイル404からの出力も相毎にバラツキとなる。好ましい制御を行うためには、U相、V相、W相に対応する第2ないし第4ホールセンサ503~505及び各コイル404ができる限り基準値に近いことが求められる。仮に所定量(A量)のずれが不可避であるとしても、その所定量(A量)は一定であることが望ましい。
【0054】
従って、実際に回転電機1を大量に製造する際には、これらのバラツキを考慮してある程度の生産を行ったうえで、所定数量の個数を統計処理して、第1ないし第4ホールセンサ502~505とコイル404との位置を調整している。即ち、実際に生産された所定数の回転電機1を統計処理して、バラツキをある値に収束させている。
【0055】
これは、実際に回転電機1の大量生産を開始する時点のみでなく、所定のタイミングでも見直しを行っている。例えば、永久磁石304の型やステータ400のティース部402の型をメンテナンスや更新する時期がそのタイミングとなる。また、各部材の材料を変更したり、要求性能に変化があったりした場合にも統計処理を行う。
【0056】
その為、統計処理した値を用いて各種バラツキの影響が最も少なくなる位置に、第1ないし第4ホールセンサ502~505が保持できるようにしている。具体的には、ある程度の個数を生産したうえで、センサケース500の第1ないし第4鞘部541~544の形状を微調整している。より具体的には、所定数量(例えば、30~100個程度)の生産をした後、必要に応じてセンサケース500をモールド成形する型を微調整している。微調整の方法としては、第1鞘部ないし第1鞘部541~544を形成する型を入れ子構造として、部分的に型を交換する方法もある。
【0057】
これにより、センサケース500の第1ないし第4鞘部541~544の調整した位置に第1ないし第4ホールセンサ502~505を固定する。そして、コイル404と第1ないし第4ホールセンサ502~505との間の位置のバラツキの影響を最も少なくなるようにしている。
【0058】
以下に、本開示の第1実施例に係る第1ないし第4ホールセンサ502~505を第1ないし第4鞘部541~544に位置決めする手順を説明する。スペーサ524には、スペーサスナップフィット525が2カ所に形成されている。スペーサスナップフィット525には、図7に示すように、スペーサ係止部526が形成されており、このスペーサ係止部526がセンサ基板530のスペーサ係止穴532に係合する。まず、スペーサスナップフィット525をスペーサ係止穴532に係合させて、第1ないし第4保持部520~523とセンサ基板530とを固定する。図6は固定後のスペーサ524とセンサ基板530を示している。
【0059】
なお、スペーサスナップフィット525は、端部にスペーサスリット5250が形成されている。このスペーサスリット5250によってスペーサ係止部526が弾性変形可能となっている。スペーサ係止部526は、スペーサスリット5250による弾性変形でスペーサ係止穴532を通り抜け、スペーサスリット5250の復元力でセンサ基板530のスペーサ係止穴532の周囲に嵌り合う。
【0060】
スペーサ524をセンサ基板530にスペーサスナップフィット525で固定する際、電源線511、接地線512及びセンサ出力線510の先端が、センサ基板530のプリント配線穴535(図7図示)に挿入される。その状態で、ハンダ531で固定する。この固定により、電源線511、接地線512及びセンサ出力線510は、センサ基板530のプリント配線に電気接続する。
【0061】
図8は、センサケース500の第1鞘部541を示す断面図である。図8において、第1ホールセンサ502がセンサ基板530から延出する方向(図8の上方向)を第1方向とする。この第1方向に対してロータ300の周方向で直交する方向(図8の左に向かう方向)を第2方向とし、ロータ300の周方向でこの第2方向と逆方向(図8の右に向かう方向)を第3方向とする。なお、周方向とは円周状に配置されたステータ400の周方向に接する接線方向を指している(図4図示)。
【0062】
センサケースの第1鞘部541の内面には第1方向に平坦な当接面551が形成されている。そして、この当接面551からセンサ基板530側に向けて第2方向側に傾斜するガイド面552が形成されている。なお、図8のガイド面552は、傾斜の大きい第1ガイド面5520と、この第1ガイド面5520より傾斜の少ない第2ガイド面5521により形成されている。ただ、ガイド面552は第2方向に傾斜していればよく、1本の直線でも、3本以上の直線でも、曲線でも良い。また、第2方向及び第3方向は図8の左、右方向である必要は無い。第2方向は当接面551とガイド面552が形成される方向を指している。そして、第3方向はこの第2方向と反対の方向を指している。
【0063】
ガイド面552が形成されている為、第1ホールセンサ502を第1鞘部541に第1方向に挿入する際には、第1ホールセンサ502の先端部は、まず、ガイド面552と当接する。次いで図16に示すように、このガイド面552にガイドされて当接面551に当接することとなる。これにより、センサケース500の第1鞘部541と第1ホールセンサ502との位置関係は正確に定めることができている。
【0064】
第1ホールセンサ502がガイド面552に沿って第1方向に挿入される際、スペーサ524と第1鞘部541との相対位置関係は、第3方向にずれることとなる。ただ、このずれはさほど大きくはない。最大でも0.1ミリメートル程度である。そして、スペーサ係止穴532の内径の方が、スペーサスナップフィット525の外径より大きく設定している。その為、スペーサスナップフィット525とスペーサ係止穴532との間の隙間によって吸収できる。また、ずれは第1保持部520が撓み変形することによっても吸収できる。尤も、第1保持部520の撓み変形は、ハンダ531等の品質に影響を及ぼさない範囲の変形で、最大でも0.1ミリメートル程度である。
【0065】
第1ホールセンサ502が当接面551に当接している状態で、第1ホールセンサ502と当接対向面553との間には、0.1ミリメートル程度以上の間隙が形成されている。また、第1ホールセンサ502が当接面551に当接している状態では、第1ホールセンサ502の先端と第1鞘部541の最奥部との間には空間554が形成されている。なお、この空間554部分の第1鞘部541の肉厚は、当接面551や当接対向面553の肉厚と同様となっており、樹脂成形時にセンサケース500の成型ひずみを抑えている。
【0066】
センサケース500にも、ケーススナップフィット555が形成されている。このケーススナップフィット555も上述のスペーサスナップフィット525と同様ケーススリット5550が形成されている。そして、このケーススナップフィット555は、センサ基板530のケース係止穴533に嵌合する。この嵌合によって、センサケース500とセンサ基板530との固定がなされる。なお、ケーススナップフィット555もその外径が、ケース係止穴533の内径より小さく設定している。第1ホールセンサ502がガイド面552に沿って第1方向に挿入される際には、ケーススナップフィット555とケース係止穴533との相対位置関係が第3方向にずれるが、このずれもケーススナップフィット555とケース係止穴533との間の間隙で吸収できる。
【0067】
ケーススナップフィット555とケース係止穴533とを嵌合して、センサケース500とセンサ基板530とを固定した後、センサ基板530が埋まるように、ポッティング材をセンサケース500に注入する。上述のように、第1ホールセンサ502と当接対向面553との間には間隙が形成されている。また、スペーサスナップフィット525とスペーサ係止穴532との間にも隙間があり、ケーススナップフィット555とケース係止穴533との間も同様に隙間がある。それらの隙間にポッティング材が流入する。その為、ポッティング材を流入することで、第1ホールセンサ502が当接面551から離れるのを効果的に抑制できる。即ち、第1ホールセンサ502の位置ずれがポッティング材によって防止できる。
【0068】
なお、図8では、第1鞘部541の周方向を示しているが、第1鞘部541の形状は、径方向においても同様の形状となっている。図17に第1鞘部541を径方向から見た断面図を示す。ここで、径方向とはクランクシャフト100の中心軸から見た径方向であり、第1方向を中心軸として周方向とは直交する方向である(図4図示)。
【0069】
第1鞘部541の第1方向と軸方向に直交する第4方向の面に、第1ホールセンサが当接する径方向当接面が形成されている。図17における第4方向は、図8の第2方向に対応する方向であり、径方向当接面は、図8の当接面551と同じである。即ち、当接面551は周方向で見た際には周方向当接面となり、径方向で見た際には径方向当接面となる。
【0070】
同様に、径方向当接面551よりセンサ基板側に向け第4方向側に傾斜し第1ホールセンサ502が第1方向に挿入される際に径方向当接面551にガイドする径方向ガイド面も形成している。この図17における径方向ガイド面も、図8のガイド面552と同様である。即ち、径方向ガイド面は、図8のガイド面552と同じである。当接面551と同様、周方向で見た際には周方向ガイド面552となり、径方向で見た際には径方向ガイド面552となる。
【0071】
かつ、第1鞘部541の第4方向とは軸方向に逆方向となる第5方向の当接対向面553と第1ホールセンサ502との間には、第1ホールセンサ502が径方向当接面551に当接した状態で径方向間隙が形成されている。この径方向間隙も0.1ミリメートル程度以上である。また、図17における第5方向は、図8の第3方向に対応する方向である。
【0072】
上述の第2方向及び第3方向と同様、第4方向及び第5方向も図17の右や左に拘わらない。当接面551やガイド面552が形成される面に向かう方向が第4方向である。そして、当接対向面553に向かう方向が第方向である。
【0073】
従って、本開示の当接面551やガイド面552は周方向(第2方向)か径方向(第4方向)の少なくともいずれかの面に形成されていれば良い。周方向(第2方向)と径方向(第4方向)の双方に、本開示の当接面551及びガイド面552を形成しても良い。図8では第2方向と第3方向を記載し、括弧書きで第4方向と第5方向を記載している。これは、図8及び図19は周方向を図示しているが、当接面551やガイド面552の形状は径方向にも適用できることを示している。同様に、図17では第4方向と第5方向を記載し、括弧書きで第2方向と第3方向を記載している。これも、図17は径方向を図示するものの、当接面551やガイド面552の形状は径方向にも適用できることを示している。
【0074】
また、図8図16及び図17では第1ホールセンサ502を示しているが、第2ないし第4ホールセンサ503~505でも同様である。第1ホールセンサ502ないし第4ホールセンサ502~505を収容する第1ないし第4鞘部541~544の樹脂成形型は別々の入れ子型となっている。そのため、第1ホールセンサ502ないし第4ホールセンサ502~505は、夫々が別々に微調整可能となっている。
【0075】
次に、本開示の他の例を説明する。第2実施例においては、図12に示すように、第1鞘部541の第3方向の面は、第2方向の面と略線対称となっている。即ち、当接面551と対向する当接対向面553は第1方向に平坦な面であり、ガイド面552と対向するガイド対向面556は、当接対向面553からセンサ基板530側に向けて第3方向側に傾斜する面となっている。この図12の例は、勿論周方向(第2方向及び第3方向)に限定されない。径方向(第4方向及び第5方向)に形成しても良く、周方向と径方向の双方に形成しても良い。その為、図12でも第2方向と第3方向を記載し、括弧書きで第4方向と第5方向を記載している。
【0076】
また、上述の第1実施例では、センサ基板530のケース係止穴533を丸穴としていたが、この第2実施例では、図10に示すように、ケース係止穴533を第2方向及び第3方向に長い長穴5330としている。そして、センサケース500のケーススナップフィット555は、このケース係止穴533(長穴5330)に対向する位置に設けられている。
【0077】
ケーススナップフィット555は、センサケース500から第1方向とは逆の方向に延び、端部にケーススリット5550が形成される。このケーススリット5550によって係止肩部5551が弾性変形可能となっている。係止肩部5551は、ケーススリット5550による弾性変形でケース係止穴533を通り抜け、ケーススリット5550の復元力でセンサ基板530のケース係止穴533の周囲に嵌り合う。
【0078】
前述の例と同様、第1ホールセンサ502の先端部は、まず、ガイド面552と当接し、このガイド面552にガイドされて第3方向にずれて、当接面551と当接する。そして、この組付け時の第3方向へのずれは、ケース係止穴533が長穴5330であることによって許容される。
【0079】
ただ、第2実施例では、ガイド面552のみでなく、ガイド対向面556も傾斜面としているので、このガイド対向面556に沿って第1ホールセンサ502を、第1鞘部541に挿入するようにしても良い。その場合は、完全に挿入した後で、センサ基板530ごと第2方向にずらすこととなる。センサ基板530をずらすことにより、第1ホールセンサ502が、第1鞘部541の当接面551に当接することとなる。図11は、センサ基板530を長穴5330に沿ってずらした状態を示している。
【0080】
第2実施例においては、第1ホールセンサ502は、第1鞘部541のガイド面552かガイド対向面556のいずれかの面でガイドされれば良いこととなる。第1鞘部541に挿入した後で第2方向にずらすことで、第1ホールセンサ502が、第1鞘部541の当接面551に当接する。
【0081】
なお、図12では第2方向を左に向かう方向としているが、図12において右に向かう方向を第2方向としても良い。この場合には、当接面551は図12の右側の面となる。本開示において、第2方向とは当接面551に向かう方向を指している。
【0082】
また、図12に示す第2実施例においては、第1ホールセンサ502を、第1鞘部541のガイド対向面556でガイドして、第1鞘部541に挿入し、そのままとしてもよい。この場合は、第1ホールセンサ502が、第1鞘部541の図12の右側の面に当接することとなる。そして、この第1ホールセンサ502が当接している面が当接面551となる。第1ホールセンサ502を第1鞘部541に挿入してそのままとする場合には、ケース係止穴533を図10図11に示す長穴5330としなくても良い。ケース係止穴533は、図7に示すような丸穴でも良い。
【0083】
図12の例では第1ホールセンサ502を示しているが、第2ないし第4ホールセンサ503~505でも同様であることは、既述の通りである。第1ホールセンサ502ないし第4ホールセンサ502~505は、夫々が別々に微調整可能である。
【0084】
次に、本開示の第3実施例を説明する。上述の実施例では、第1鞘部541ないし第4鞘部544の位置の調整を、型を入れ子とすることで行っていた。それに対し、この第3実施例では型の交換による位置調整ではなく、図18及び図19に示すような当接部材560を用いて第1ないし第4ホールセンサ502~505の位置を調節する。
【0085】
即ち、図18に示すように、第1ホールセンサ502ないし第4ホールセンサ505の全てに対して当接部材560は用いられる。また、図19は、第4ホールセンサ505に用いる当接部材560を示している。図19に示すように、当接部材560は第1ないし第4ホールセンサ502~505の第1方向の挿入を容易にするよう、第1方向に向かうにつれて傾斜するR形状となっている。
【0086】
当接部材560は第1ないし第4ホールセンサ502~505を挟持するU字形状となっている。図19は、当接面551及びガイド面552が周方向の第2方向に形成されている。この例では、当接部材560の当接部材面561は、第2方向に形成される。当接部材560は、当接部材面561の厚みが異なる複数の部材の中から第2方向の厚みが最適となるものを選んで用いることとなる。例えば、当接部材面561の第2方向の厚さは、1ミリメートル程度を基準に0.1ミリメートルずつ厚さを増やしたり、厚さを減らしたりしたものを複数種類用意しておき、その中から第1ないし第4ホールセンサ502~505の夫々が最適ずれ量となるものを選んで第1ないし第4ホールセンサ502~505に装着する。そして、当接部材560を装着した状態で第1ないし第4ホールセンサ502~505を第1ないし第4鞘部541~544に挿入すると、当接部材560がガイド面552に導かれて当接面551に当接する。ここで、用意する当接部材560の種類は厚、中、薄の3種類程度が妥当である。種類をあまり多くしても公差のバラつきいより所定の効果を得るのが困難である。
【0087】
なお、当接部材560は第1ないし第4ホールセンサ502~505を挟持するため、U字形状とするのが望ましいが、必ずしもU字形状に限定されない。四角形状として第1ないし第4ホールセンサ502~505を囲んでも良いし、L字形状やI字形状として第1ないし第4ホールセンサ502~505に接着しても良い。
【0088】
また、図18図19では当接面551やガイド面552を周方向の第2方向に形成したが、前述の実施例と同様、当接面551及びガイド面552を径方向の第4方向に形成しても良い。かつ、当接面551及びガイド面552を周方向の第2方向と径方向の第4方向の両方に形成しても良い。その為、この図19も上述の例と同様、第2方向と第3方向を記載し括弧書きで第4方向と第5方向を記載している。
【0089】
次に、本開示の第4実施例を説明する。上述の実施例では、第1ないし第4ホールセンサ502~505の位置を、周方向の第2方向と径方向の第4方向の少なくともいずれかの方向で修正して、第1ないし第4ホールセンサ502~505の出力を調整していた。第4実施例では、第1ないし第4ホールセンサ502~505の調整を、周方向の第2方向や径方向の第4方向ではなく、第1ないし第4ホールセンサ502~505の傾き(角度)を修正して行うようにしている。
【0090】
図20はセンサケース500の正面図であり、図21はセンサケース500を第3鞘部543の位置で断面図示した断面図である。第4実施例では、第1ないし第4鞘部541~544の当接面551をねじり面5510に形成している。ねじり面5510は、図22に示すように、当接面551の角度が第1方向に応じて変化する形状となっている。図22の例は径方向である第4方向に当接面551を形成している。この例では、基準位置5511では当接面551は周方向である第2方向及び第3方向に延びる平面である。そして、この基準位置5511から第1方向(図22の上方向)に所定距離例えば0.3ミリメートルずれた第1比較位置5512になると、ねじり面5510は周方向から所定角度例えば1.0度傾く。同様に、基準位置から第1方向に所定距離例えば0.6ミリメートルずれた第2比較位置5513になると、径方向から所定角度例えば3.0度傾く形状となっている。このように、ねじり面5510は、第1方向に変位するにつれて徐々にねじり角度が大きくなる面となっている。
【0091】
第1ないし第4ホールセンサ502~505の特性は、永久磁石304の磁束に対する検知角度が変化するとそれに応じて変動する。その為、第1ないし第4ホールセンサ502~505の出力の調整は、周方向や径方向の位置の修正に代えて、第1ないし第4ホールセンサ502~505の角度を修正することによっても達成できる。なお、第1方向の位置の調整は、第1ないし第4鞘部541~544を形成する型を入れ子として、各部位を取り換えることで行う。
【0092】
また、この第4実施例の第1ないし第4ホールセンサ502~505の角度の修正による出力調整は、第1ないし第4ホールセンサ502~505の周方向や径方向の位置調整と合わせて用いることも可能である。かつ、当接面551の位置は径方向の第4方向の位置に限らず、周方向の第2方向としても良いのは勿論である。
【0093】
次に、この第4実施例と共に用いて好適な第5実施例を説明する。第4実施例では、型を入れ子として、第1方向の位置の変更を行っていた。それに対し、第5実施例では、第1ないし第4保持部520~523の第1方向の長さを変更することで、第1ないし第4ホールセンサ502~505の第1方向の位置を調節する。
【0094】
図23に示すように、第5実施例では、第1ないし第4保持部520~523に、第1ないし第4ホールセンサ502~505やセンサ基板530とは別部材として形成された、第1保持部材5200、第2保持部材5210、第3保持部材5220及び第4保持部材5230を設けている。また、第5実施例では、第1ないし第4保持部520~523は、夫々の基部である第1保持基部5201、第2保持基部5221、第3保持基部5231及び第4保持基部5241を形成している。そして、これらの第1ないし第4保持部材5200~5230を各基部(第1ないし第4保持基部5201~5231)に嵌合することで、第1ないし第4保持部520~523を構成する。
【0095】
第1ないし第4保持部520~523の夫々用いる第1ないし第4保持部材5200~5230は、同一形状の部材を共通使用している。共通使用する部材の第1方向の基本長さは5ミリメートル程度である。そして、第1方向の長さを異ならした複数の部材を用意しておき、その中から第1方向長さが最適となる部材を選択する。用意する部材としては、基本長さに対して第1方向長さを0.1ミリメートルずつ伸ばした部材を複数種類揃えておく。第3実施例と同様、用意する種類は3種類程度が妥当である。
【0096】
第1方向長さを選択した第1ないし第4保持部材5200~5230を用いることで、第1ないし第4ホールセンサ502~505の第1方向の位置を調整することができる。なお、第1ないし第4ホールセンサ502~505のそれぞれの電源線511、接地線512とセンサ出力線510は、この第1方向の位置調整に対応できる長さとしている。
【0097】
上述のように、図23の第5実施例では、第1ないし第4保持基部5201~5231を形成して、第1ないし第4保持部材5200~5230を各基部に嵌合している。第1ないし第4保持部520~523を形成する上で望ましい態様である。第1ないし第4保持基部5201~5231を廃止したのでは、第1ないし第4保持部材5200~5230をそれぞれセンサ基板530に固定することとなり、固定が困難である。
【0098】
第5実施例は上述した第4実施例と組み合わせて用いれば、第1ないし第4ホールセンサ502~505の角度調整が容易となって望ましい。ただ、第5実施例は第4実施例との組み合わせが必須となるものではない。何故なら、第1ないし第4ホールセンサ502~505が検知する永久磁石304の磁束は、第1方向に均一とはならず、永久磁石304の中心部で磁束が高くなる傾向にあるからである。そのため、第1ないし第4ホールセンサ502~505の角度が一定であっても、第1方向の位置を修正することで、第1ないし第4ホールセンサ502~505のセンサ特性を調整することは可能となる。
【0099】
また、第5実施例は第1実施例ないし第3実施例や後述する第6実施例と組み合わせて用いることも、勿論可能である。周方向の第2方向や径方向の第4方向の位置調整と第1方向の位置調整とを組合すことで、第1ないし第4ホールセンサ502~505のセンサ特性をより正確に調整することが可能となる。
【0100】
上述の第5実施例では第1ないし第4保持部材5200~5230を用いて第1方向の位置を修正していた。第1ないし第4ホールセンサ502~505の夫々の第1方向位置を調節することができ、望ましい実施例である。ただ、第1方向位置の調整自体は他の方法でも可能である。前述の型を入れ子構造とするのも一例である。
【0101】
他に、図24に示すようなシム570を用いることも可能である。シム570は0.5ミリメートル程度を基本厚さとして、0.1ミリメートルずつ厚さを熱くしたり、薄くしたりしたものを複数種類用意する。そして、図24及び図25に示すように、シム570をケーススナップフィット555とセンサ基板530との間に介在させる。これにより、シム570を交換することで、センサケース500とセンサ基板530との第1方向の位置関係が調節できる。そして、第1ないし第4ホールセンサ502~505はスペーサ524に設けられており、スペーサ524はスペーサスナップフィット525でセンサ基板530に固定されているので、シム570の交換により第1ないし第4ホールセンサ502~505とセンサケース500の第1ないし第4鞘部541~544との第1方向の位置関係を調整することが可能である。
【0102】
上述の第4実施例では、ねじり面5510を用いることで、第1ないし第4ホールセンサ502~505の角度を個々に修正していた。図26に示す例は、センサ基板530のケース係止穴533を長穴5330とすることで、センサ基板530をセンサケース500に対して捩ることができるようにしている。
【0103】
即ち、この例では、第1ないし第4ホールセンサ502~505はセンサ基板530と一体可動するようセンサ基板530に固定されている。また、この例では、第1ないし第4ホールセンサ502~505は、第1ないし第4鞘部541~544内に角度調整可能に配置されている。そして、この例では、センサ基板530を捩ることで、第1ないし第4ホールセンサ502~505の全体の角度を調整することが可能となっている。
【0104】
図27に示す例では、長穴5330を用いるのではなく、ケース係止穴533の位置を変えることで、センサケース500に対するセンサ基板530の角度を変更している。即ち、図27の例では型に入れ子を用いて、ケース係止穴533の位置を変え、それによりセンサ基板530のねじり量を変更している。センサ基板530を捩ることで、第1ないし第4ホールセンサ502~505の全体の角度を調整することは、図26の例と同じである。
【0105】
なお、本開示は上述の第1ないし第5実施例以外にも種々に変形可能である。センサケース500とセンサ基板530との固定は、ケーススナップフィット555に加えて、若しくは、ケーススナップフィット555に代えてネジ止めを用いても良い。
【0106】
また、図示の例では、センサケース500のステータ固定部506がセンサ本体部501のほぼ中央に位置しているが、必要に応じ、周方向の位置は適宜変更可能である。ステータ固定部506はセンサ本体部501の径方向内方であればよい。
【0107】
上述の第1ないし第5実施例では、各ホールセンサ502~505毎に別々の鞘部541~544を設けたが、一つの鞘部に複数のホールセンサを配置することもありうる。例えば、第1ホールセンサ502は、第2ないし第4ホールセンサ503~505とは異なる目的で使用されるので、第2ないし第4ホールセンサ503~505と同じ鞘部に配置することも可能である。
【0108】
また、上述の第1ないし第5実施例ではホールセンサ4個を用いる方式を記述したが、ホールセンサの個数は異なる場合がある。例として第2、第3、第4ホールセンサ503、504、505は、U、V、W相、各コイルへの通電のタイミングの基準となる信号を得るが、1つのロータの磁束を測定しているため、それぞれの角度方向の位置ズレを時間軸に反映した信号が出力される。この為、いずれか1つのホールセンサの信号から、ほかの信号を推定することが可能である。
【0109】
また、第1ホールセンサ502は点火の基準信号を出力するが、ホールセンサ以外から点火の基準信号を得る場合も考えられる。例えば、クランク角センサからのクランク角信号を用いることも可能である。クランク角センサとは、クランク軸の回転と共に回転する検出用ロータを用い、ロータの外周に形成された突起より、所定のクランク角を検出可能なパルス状のクランク角信号を出力するものである。クランク角センサは、クランクシャフト100の1回転中に、通過パルスが連続する部分と通過パルスの存在しない部分とを有する出力信号を生じるようにしている。
【0110】
このためホールセンサの数は最小1個になる。第6実施例は、図13に示すように、第1ホールセンサ502と第1鞘部541のみを有するセンサケース500とした例である。図13の第6実施例では、第1鞘部541の形状は図8と同様である。第1ホールセンサ502は第1鞘部541のガイド面552に沿ってガイドされ、当接面551に当接する。
【0111】
第1ホールセンサ502のみの第6実施例でも、ケース係止穴533を長穴5330とすることは可能である。図14に、ケース係止穴533を長穴5330したセンサ基板530を示す。この例で第1鞘部541の形状は図12と同じである。従って、図15に示すように、ケーススナップフィット555を長穴5330に挿入した後に、センサ基板530を第3方向にずらすことができる。もしくは、長穴5330に挿入した後に、センサ基板530を第4方向にずらすこともできる。
【0112】
第1鞘部541の形状を図12と同様にした際に、センサ基板530をずらすことなくそのままとしても良いのは、上述の例と同様である。この場合、第1ホールセンサ502はガイド面552もしくはガイド対向面556でガイドされ、当接面551もしくは当接対向面553に当接する。そして、第1ホールセンサ502が当接している面が当接面551となる。
【0113】
また、径方向に径方向当接面や径方向ガイド面を形成しているのは、第1鞘部ないし第4鞘部541~544を備えた例と同様である。
【0114】
技術的思想の開示
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0115】
(技術的思想1)周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースと、を備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面、及び前記周方向当接面より前記センサ基板側に向けて第2方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記周方向当接面にガイドする周方向ガイド面及び前記径方向当接面より前記センサ基板側に向け第4方向側に傾斜し前記ホールセンサが第1方向に挿入される際に前記径方向当接面にガイドする径方向ガイド面の少なくともいずれかのガイド面を形成し、
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【0116】
(技術的思想2)前記鞘部の第2方向の面と第3方向の周方向面及び第4方向と第5方向の径方向面の少なくともいずれかの面は、中心線を挟んで周方向に略左右対称に形成され、
前記ホールセンサが前記周方向当接面及び前記径方向当接面の少なくともいずれかの当接面に当接した状態では、前記ホールセンサは前記鞘部の中心線より第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの側に位置している技術的思想1に記載の回転電機。
【0117】
(技術的思想3)前記ホールセンサの外周には、前記ホールセンサと共に前記鞘部に挿入される当接部材が配置され、この当接部材は第2方向及び第4方向の少なくともいずれかの方向の厚みが異なる複数の部材から選択された部材である技術的思想1若しくは技術的思想2に記載の回転電機。
【0118】
(技術的思想4)周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記鞘部の第1方向と周方向で直交する第2方向の面及び前記鞘部の第1方向と径方向で直交する第4方向の面の少なくともいずれかの面に、前記ホールセンサが当接する周方向当接面及び径方向当接面の少なくともいずれかの当接面を形成すると共に、この当接面を第1方向に向かうにつれて角度が変化するねじり面に形成し、
前記鞘部の第2方向とは周方向に逆方向となる第3方向の当接対向面及び第4方向とは径方向に逆方向となる第5方向の当接対向面の少なくともいずれかの対向面と前記ホールセンサとの間には、ホールセンサが当接面に当接した状態で周方向間隙及び径方向間隙の少なくともいずれかの間隙が形成され、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【0119】
(技術的思想5)周方向に永久磁石を複数配置し、シャフトと共に回転するロータと、複数のティース部及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向するステータと、前記複数のコイルの隣接するコイル間に前記永久磁石と対向して配置されて前記永久磁石の磁束を検知するホールセンサと、センサ基板と、このセンサ基板と前記ホールセンサとを電気接続する配線を保持する保持部と、この保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサを収納するセンサケースとを備え、
前記ホールセンサ及び前記保持部は前記センサ基板より前記永久磁石側に向かう方向である第1方向側に突出して配置され、
前記センサケースには、前記ホールセンサ及び前記保持部を収納する鞘部が第1方向に窪むように形成され、
前記ホールセンサ及び前記保持部は、前記鞘部内に第1方向に挿入して配置され、
前記保持部は、前記センサ基板及び前記ホールセンサとは別部材の保持部材として形成され、前記保持部材は第1方向の長さの異なる複数の部材から選択された部材であり、
前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサが前記センサケースに収納された状態で、前記保持部、前記センサ基板及び前記ホールセンサは樹脂材料で固定される回転電機。
【0120】
(技術的思想6)前記センサ基板には、ケース係止穴が形成され、前記センサケースには、このケース係止穴と係合して第1方向の抜け止めを行うケーススナップフィットが形成され、前記ケース係止穴は、前記ケーススナップフィットが第2方向及び第3方向の周方向及び第4方向と第5方向の径方向の少なくともいずれかの方向に移動可能な長穴である技術的思想1ないし5のいずれかに記載の回転電機。
【0121】
(技術的思想7)前記シャフトは、内燃機関の駆動力を受けて回転し、前記コイルは、三相に巻線されており、前記ホールセンサは、前記内燃機関の基準位置を測定するホールセンサと、三相の巻線の出力位相を検知するホールセンサとの、複数のホールセンサであり、
前記センサケースは、複数のホールセンサに対応した鞘部を備える技術的思想1ないし6のいずれかに記載の回転電機。
【0122】
(技術的思想8)前記ホールセンサは単一であり、前記鞘部も単一である技術的思想1ないし7のいずれかに記載の回転電機。
【0123】
(技術的思想9)第1方向の厚さの異なる複数の部材から選択されるシムを用い、このシムを前記センサケースと前記センサ基板との間に配置する技術的思想4若しくは技術的思想5、又は技術的思想4若しくは技術的思想5に従属する技術的思想6ないし8のいずれかに記載の回転電機。

【要約】
ホールセンサの位置精度を高めることを課題とする。ホールセンサを収納する鞘部に、ホールセンサが当接する周方向当接面、及びホールセンサが挿入される際に周方向当接面にガイドする周方向ガイド面を形成する。ホールセンサが鞘部に挿入される際に、周方向ガイド面によってガイドされる。ホールセンサが鞘部に収納された状態で、ホールセンサは当接面と当接し、当接対向面との間には間隙が形成される。また、保持部、ホールセンサがセンサケースに収納された状態では樹脂材料で固定されている。
図1
図2
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