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特許7418147回転電機、回転電機用ロータ、及び回転電機用ロータの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】回転電機、回転電機用ロータ、及び回転電機用ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2791 20220101AFI20240112BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H02K1/2791
H02K21/22 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023571256
(86)(22)【出願日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2023009501
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022050135
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599161580
【氏名又は名称】株式会社デンソートリム
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【弁理士】
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 孝太
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-53680(JP,U)
【文献】特開2007-215333(JP,A)
【文献】特開2007-82295(JP,A)
【文献】特開平3-264127(JP,A)
【文献】特開平8-215768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/27
H02K21/22
H02K15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄材料製で円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを有する回転電機用ロータであって、
前記円筒部の外周には、周方向に等間隔離れて複数の突起部が径方向外方に形成される突起形成部位が形成され、
前記突起部は前記円筒部の鉄材料で前記円筒部の外周に一体形成され、
前記突起部は周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、
前記円筒部の内周には、前記突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位が形成され、
前記凹部は周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、
前記突起部及び前記凹部は、前記円筒部の軸方向のほぼ中央となる位置に形成され、
前記突起部の軸方向中間位置と前記凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の軸方向長さと前記凹部の軸方向長さはほぼ一致して前記突起部の軸方向幅と前記凹部の軸方向幅をほぼ一致させて、前記突起部の形状を軸方向でガイドして前記突起部の周方向の形状を安定させて前記突起部の形状を規定し
前記突起部の周方向中間位置と前記凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の周方向長さに対し前記凹部の周方向長さは長く前記突起部の周方向幅に比べて前記凹部の周方向幅が幅広で、前記円筒部の鉄材料を周方向から前記突起部に集めて前記突起部の高さを高くし
前記円筒部の内周に周方向に複数の永久磁石が配置されている回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記突起部の周方向長さに対し、前記凹部の周方向長さは1.7倍程度以下の大きさで長い請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記凹部の深さは、前記円筒部の肉厚の0.7倍程度以上である請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
前記突起部の隅部である突起隅部、及び前記凹部の隅部である凹隅部は曲面に形成されている請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項5】
鉄材料製で円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを有する回転電機用ロータであって、
前記円筒部の外周には、周方向に等間隔離れて複数の突起部が径方向外方に形成される突起形成部位が形成され、
前記突起部は軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、
前記円筒部の内周には、前記突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位が形成され、
前記凹部は軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、
前記突起部の軸方向中間位置と前記凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の軸方向長さと前記凹部の軸方向長さはほぼ一致し、
前記突起部の周方向中間位置と前記凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の周方向長さに対し前記凹部の周方向長さは長く、
前記円筒部の内周に周方向に複数の永久磁石が配置されており、
前記突起部の根元部の内、周方向では鉄材料のファイバーフローが連続しており、軸方向では鉄材料のファイバーフローが切断している回転電機用ロータ
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の回転電機用ロータと、
複数のティース部、及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向しているステータと、
前記突起部の径方向外方に配置され、前記突起部の位置を検知する磁気検知装置とを備える回転電機。
【請求項7】
鉄材料製平板から、中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜き、この中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、
前記円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ、前記中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、
前記底部に前記ボス部の固定穴を形成する穴抜き工程と、
前記円筒部を内周側より外周側に打ち出して、前記円筒部の外周に周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を前記円筒部の軸方向のほぼ中央となる位置に形成するとともに、前記円筒部の内周に周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を前記円筒部の軸方向のほぼ中央となる位置に形成する外出し工程と、
前記円筒部の内周に、永久磁石を保持するように固定する永久磁石固定工程と、
前記中心部丸穴に前記ボス部を配置するとともに前記ボス部を前記底部に前記固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有し、
前記外出し工程は、前記円筒部の外周に長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、前記円筒部の内周に長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置して、前記パンチを前記ダイ側にプレスするとともに、前記パンチ凸部の周方向幅は前記ダイ凹部の周方向幅より大きく前記突起部の周方向幅に比べて前記凹部の周方向幅を幅広として、前記円筒部の鉄材料を周方向から前記突起部に集めて前記突起部の高さを高くする押し出し手法とし、前記パンチ凸部の軸方向幅は前記ダイ凹部の軸方向幅とほぼ一致して前記突起部の軸方向幅と前記凹部の軸方向幅をほぼ一致させて、前記突起部の形状を軸方向でガイドして前記突起部の周方向の形状を安定させて前記突起部の形状を規定する切り出し手法とし、かつ、前記突起部を前記円筒部に周方向に等間隔離れて複数形成する回転電機用ロータの製造方法。
【請求項8】
鉄材料製平板から、中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜き、この中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、
前記円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ、前記中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、
前記底部に前記ボス部の固定穴を形成する穴抜き工程と、
前記円筒部を内周側より外周側に打ち出して、前記円筒部の外周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を形成するとともに、前記円筒部の内周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を形成する外出し工程と、
前記円筒部の内周に、永久磁石を保持するように固定する永久磁石固定工程と、
前記中心部丸穴に前記ボス部を配置するとともに前記ボス部を前記底部に前記固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有し、
前記外出し工程は、前記円筒部の外周に長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、前記円筒部の内周に長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置し、前記突起部の根元部における鉄材料のファイバーフローを、周方向では維持し、軸方向では切断するように、前記パンチを前記ダイ側にプレスすることにより前記突起部および前記凹部を形成している回転電機用ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2022年3月25日に日本に出願された特許出願第2022-50135号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本明細書の記載は回転電機、回転電機用ロータ、及び回転電機用ロータの製造方法に関し、本開示の回転電機は、例えば二輪車の発電機や始動機として使用して有用である。
【背景技術】
【0003】
二輪車の発電機や始動機として使用可能な回転電機として、三相のブラシレスモータを用い、ロータに設けられた磁気検知用の突起部を利用して磁束変化よりロータの回転位置を検出したり、内燃機関の点火制御のための基準位置信号を用いたりすることは、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-215333号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載の回転電機は、位置検知用の突起部がロータの外周に形成されているのみである。即ち、特許文献1では磁気検出装置が磁気検出をしやすい突起部の形状に関しては開示がされていなかった。
【0006】
一方、近年は排ガス規制に伴い、エンジン制御の高精度化が求められている。その為には、突起部の高さを高くすることと、磁気検知装置がより高精度に検知することが可能な形状とすることが重要となる。
【0007】
本件の開示は、磁気検知用の突起部の高さを高くすると共に、検知しやすい形状とすることで、磁気検知装置がより精度良く突起部を検知できるようにすることを課題とする。
【0008】
本開示の第1は、鉄材料製で円盤状の底部とこの底部の径方向外周に配置される円筒部とを有し、円筒部の内周に周方向に複数の永久磁石を配置するロータと、複数のティース部、及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、ティース部の径方向外方端部が磁石と対向するステータとを備える回転電機である。
【0009】
本開示の第1のロータは、円筒部の外周に周方向に等間隔離れて複数の突起部が径方向外方に形成される突起形成部位が形成されている。そして、突起部は、円筒部の鉄材料で円筒部の外周に一体形成されている。また、突起部は周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状である。
【0010】
本開示の第1のロータは、円筒部の内周に突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位が形成されている。そして、凹部は周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状である。また、突起部及び凹部は、円筒部の軸方向のほぼ中央となる位置に形成されている。
【0011】
本開示の第1では、突起部の軸方向中間位置と凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、突起部の軸方向長さも凹部の軸方向長さとほぼ一致して突起部の軸方向幅と凹部の軸方向幅をほぼ一致させて、突起部の形状を軸方向でガイドして突起部の周方向の形状を安定させて突起部の形状を規定している。一方、突起部の周方向中間位置と凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、突起部の周方向長さに対し凹部の周方向長さは長く突起部の周方向幅に比べて凹部の周方向幅が幅広で、円筒部の鉄材料を周方向から突起部に集めて突起部の高さを高くしている。
【0012】
かつ、本開示の第1の回転電機は、突起部の径方向外方に配置され、突起部の位置を検知する磁気検知装置を備えている。
【0013】
本開示の第1では、突起部の形状を、軸方向長さが周方向長さより長い長方形状としているので、磁気検知装置に検知しやすい形状とすることができている。また、本開示の第1は、円筒部の内周に突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位を設けているので、突起部の高さを高くすることができている。かつ、突起部の軸方向中間位置と凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、突起部の軸方向長さも凹部の軸方向長さとほぼ一致している。一方、突起部の周方向中間位置と凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、突起部の周方向長さより凹部の周方向長さが長くなっている。従って、この寸法関係によっても、突起部の高さを高くすることができている。かつ、この寸法関係により、突起部の周方向の位置精度を高めることができている。
【0014】
本開示の第6は、以上の構成のロータを用いた回転電機であり、回転電機は突起部の位置を検知する磁気検知装置を備えている。
【0015】
本開示の第8は、回転電機用ロータの製造方法である。本開示の第8の回転電機用ロータの製造方法は、鉄材料製平板から中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜きこの中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部とこの底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、底部にボス部の固定穴を形成する穴抜き工程とを備える。
【0016】
本開示の第8の回転電機用ロータの製造方法は、また、円筒部を内周側より外周側に打ち出して、円筒部の外周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を形成するとともに、円筒部の内周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を形成する外出し工程と、円筒部の内周に永久磁石を保持するように固定する永久磁石固定工程と、中心部丸穴にボス部を配置するとともにボス部を底部に固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有している。
【0017】
本開示の第8の回転電機用ロータの製造方法では、外出し工程は円筒部の外周に長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、円筒部の内周に長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置し、突起部の根元部における鉄材料のファイバーフローを、周方向では維持し、軸方向では切断するように、パンチをダイ側にプレスすることにより突起部および凹部を形成している。
【0018】
本開示の第は、回転電機用ロータの製造方法である。本開示の第の製造方法は、鉄材料製平板から中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜き、この中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、底部にボス部の固定穴を形成する穴抜き工程とを備えている。
【0019】
本開示の第の製造方法は、さらに、筒部を内周側より外周側に打ち出して、周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって円筒部の外周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を円筒部の軸方向のほぼ中央となる位置に形成するとともに、円筒部の内周に周方向の両側と軸方向の両側に辺を有する長方形状であって軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を形成する外出し工程も備えている。
【0020】
本開示の第の製造方法では、ロータの成形後、円筒部の内周に、永久磁石を保持するように固定する磁石固定工程と、中心部丸穴にボス部を配置するとともに、ボス部を底部に固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有している。
【0021】
本開示の第の製造方法の外出し工程は、円筒部の外周に断面長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、円筒部の内周に断面長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置して、パンチをダイ側にプレスすることで行う。また、外出し工程では、パンチ凸部の軸方向幅はダイ凹部の軸方向幅とほぼ一致して突起部の軸方向幅と凹部の軸方向幅をほぼ一致させて、突起部の形状を軸方向でガイドして突起部の周方向の形状を安定させて突起部の形状を規定する切り出し手法とし、パンチ凸部の周方向幅はダイ凹部の周方向幅より大きくなって突起部の周方向幅に比べて凹部の周方向幅を幅広として、円筒部の鉄材料を周方向から突起部に集めて突起部の高さを高くする押し出し手法としている。かつ、外出し工程では、突起部を円筒部に周方向に等間隔離れて複数形成している。
【0022】
本開示の第の製造方法では、突起部の形状を、軸方向長さが周方向長さより長い長方形状に成形できるので、磁気検知装置に検知しやすい形状とすることができている。また、本開示の第の製造方法も、円筒部の内周に突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位を設け、パンチ凸部の周方向幅をダイ凹部の周方向幅より大きくしているので、突起部の高さを高くすることができている。
【0023】
かつ、突起部の軸方向中間位置と凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、突起部の軸方向長さも凹部の軸方向長さとほぼ一致しており、突起部の周方向中間位置と凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、突起部の周方向長さに比べて凹部の周方向長さを長くしている。従って、この寸法関係によっても、突起部の高さを高くすることができている。併せて、この寸法関係により、突起部の周方向の位置精度を高めることができている。
【0024】
本開示の第では、突起部の周方向長さに対し、凹部の周方向長さは1.7倍程度以下の大きさで長くなっている。これにより、突起部の高さを高くすることが可能となっている。
【0025】
本開示の第は、凹部の深さを、円筒部の肉厚の0.7倍程度以上としている。これによっても、突起部の高さを高くすることが可能となっている。
【0026】
本開示の第は、突起部の隅部である突起隅部、及び凹部の隅部である凹隅部は曲面に形成されている。曲面とすることで鉄材料の流れ込みを促進している。これによって、鉄材料の充填率が低下して割れ等の強度不足が生じるのを、効果的に防いでいる。
【0027】
本開示の第は、突起部の根元部の内、周方向では鉄材料のファイバーフローが連続しており、軸方向では鉄材料のファイバーフローが切断している。鉄材料のファイバーフローが連続する押し出し手法とすることで、鉄材料の流れを促し、突起部の高さを高くすることができている。また、鉄材料のファイバーフローが切断する切り出し手法とすることで、突起部をより正確な形状とすることができている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、回転電機がクランクシャフト及びエンジンカバーに組み合わされた状態の断面図である。
図2図2は、ロータ、ステータ及び磁気検知装置を示す正面図である。
図3図3は、ロータを示す斜視図である。
図4図4は、ロータの底部と円筒部を示す斜視図である。
図5図5は、平板打ち抜き工程を示す正面図である。
図6図6は、平板打ち抜き工程を示す断面図である。
図7図7は、円筒部折り曲げ工程を示す正面図である。
図8図8は、円筒部折り曲げ工程を示す断面図である。
図9図9は、穴抜き工程を示す正面図である。
図10図10は、穴抜き工程を示す断面図である。
図11図11は、カシメピン打ち出し工程を示す正面図である。
図12図12は、カシメピン打ち出し工程を示す断面図である。
図13図13は、内径内出し工程を示す正面図である。
図14図14は、内径内出し工程を示す断面図である。
図15図15は、外出し工程を示す正面図である。
図16図16は、外出し工程を示す断面図である。
図17図17は、外出し工程のダイ及びパンチの周方向形状を示す図である。
図18図18は、外出し工程のダイ及びパンチの軸方向形状を示す図である。
図19図19は、突起部及び凹部の周方向形状を示す断面図である。
図20図20は、突起部及び凹部の軸方向形状を示す断面図である。
図21図21は、磁石固定工程を示す正面図である。
図22図22は、ボス部固定工程を示す正面図である。
図23図23は、クラッチ固定工程を示す正面図である。
図24図24は、磁気検知装置を示す断面図である。
図25図25は、ロータ及び永久磁石の周方向形状を示す断面図である。
図26図26は、突起部と磁気検知装置の誘導起電力との関係を説明する図である。
図27図27は、突起部の比較例と磁気検知装置の誘導起電力との関係を説明する図である。
図28図28は、押し出し手法での鉄材料のファイバーフローを説明する図である。
図29図29は、切り出し手法での鉄材料のファイバーフローを説明する図である。
図30図30は、突起隅部及び凹隅部での曲面を示す図である。
図31図31は、突起隅部及び凹隅部での曲面の他の例を示す図である。
図32図32は、ロータ及び永久磁石の周方向形状の他の例を示す断面図である。
図33図33は、ロータ及び永久磁石の周方向形状の更に他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の一例を図に基づいて説明する。図1は、回転電機1がクランクシャフト100及びエンジンカバー200に組み合わされた状態の断面図である。クランクシャフト100は、図示しないピストンが図示しないシリンダ内を往復運動する動きを、図示しないコンロッドを介して受けて回転する。クランクシャフト100は、直径30ミリメートル程度の鉄材からなり、シリンダブロック101に軸受102によって回転支持されている。
【0030】
エンジンカバー200は、シリンダブロック101の開口部を覆い、シリンダブロック101にボルト固定される。エンジンカバー200は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金のダイキャスト製であり、肉厚は4ミリメートル程度である。エンジンカバー200は、シリンダブロック101の開口部に連続するので、内部環境はシリンダブロック101と同様である。
【0031】
クランクシャフト100には、回転電機1のロータ300が、ボス部340で固定されている。より具体的には、ボス部340はロータ300と同軸上に配置され、クランクシャフト100の先端にシャフト固定ボルト342によりクランクシャフト100と同軸上に固定される。従って、ロータ300はクランクシャフト100と一体に回転する。ロータ300は鉄材料製で、クランクシャフト100と係合するボス部340より径方向外方に延びる円盤状の底部302と、この底部302の径方向外方部に形成される円筒部303を備えている。図2に示すように、円筒部303の内方には、永久磁石304が12個、周方向に並んで配置されている。永久磁石304の厚みは、4~5ミリメートル程度である。なお、永久磁石304の数は、12個に限らず、20個や24個等要求性能に応じて適宜設定できる。
【0032】
ロータ300の内部には、図1図2に示すように、ステータ400がロータ300と同軸上に配置されている。図2は、ステータ400をエンジンカバー200側から見た正面図である。ステータ400は、複数の磁性鋼板を積層してなり、エンジンカバー200に取り付けられる基盤部401、この基盤部401より径方向外方に延びる複数のティース部402を一体に形成している。ステータ400の外径は、110~130ミリメートル程度となっており、従って、ロータ300の内径は、ステータ400の外径と永久磁石304との間に微小間隙が形成される大きさとなっている。
【0033】
基盤部401には、エンジンカバー200にステータ400を固定するためのステータボルト通し穴403が3カ所形成されている。ティース部402はポリアミド等の絶縁樹脂からなるインシュレーター407で電気絶縁され、インシュレーター407の上に銅線若しくはアルミニウム線からなるコイル404が巻装されている。図3は、図2からステータ400を外して、ロータ300を示す斜視図である。また、図4図3からボス部340及び永久磁石304等を外して、ロータ300の底部302と円筒部303を示す斜視図である。
【0034】
図3及び図4に示すように、ロータ300の円筒部303の外周には、周方向に等間隔離れて突起部310が16カ所形成されている。かつ、円筒部303の内周にも突起部310と対応する位置に凹部311が16カ所形成されている。なお、本開示において周方向とは円筒部303の外周及び内周に沿う方向を言う。また、軸方向とはロータ300の回転軸(クランクシャフト100の中心軸)の方向を言う。
【0035】
突起部310は、ピックアップ方式の磁気検知装置500の磁性材回転体(リラクター)として機能する。磁気検知装置500は、図24に示すように、円筒状のボビン506に巻装された検出コイル501と、この検出コイル501の内周に配置されたポールピース502とを備え、ポールピース502はマグネット503の磁気を受けている。そして、これらの部材がポリアミド等の樹脂製ハウジング504内に配置され、金属製のステー505によってエンジンカバー200に取付保持されている。
【0036】
ロータ300が回転すると、磁性体である突起部310の先端部3102がポールピース502に近づいたり離れたりを繰り返す。これによりマグネット503とポールピース502で構成された磁路の状態が変化し、検出コイル501を貫通する磁束が変化する。具体的には、突起部310の接近に伴い磁束が増えて行き、遠ざかるとともに減って行くという状態を繰り返す。この際に、電磁誘導による誘導起電力が検出コイル501に発生するので、その電圧を外部に出力する。図26に突起部310の先端部3102の移動と誘起起電力との関係を示す。
【0037】
突起部310の位置は、U相、V相、W相の通電時期に対応しており、この検出位置に応じ、回転電機1が始動機としてモータ使用されるときには、U相、V相、W相に対応するコイル404への電圧の供給を制御する。内燃機関が運転を開始して回転電機1が発電機として使用される際にもU相、V相、W相に対応するコイル404からの電流を制御するためのタイミング信号として用いられる。
【0038】
ただ、突起部310は円筒部303の全周に亘って形成されている訳ではない。図4に示すように、円筒部303には、突起部310が形成される突起形成部位305と、所定の範囲に亘って突起部310が形成されない突起非形成部位306とがある。図4の例では、突起非形成部位306では、突起部310が2カ所に亘って非形成となっている。その為、磁気検知装置500の出力波形は、この突起非形成部位306では出力されず、いわゆる欠歯状態になる。
【0039】
この突起非形成部位306を検知することで、基準位置が検出できる。ロータ300はクランクシャフト100と一体回転するので、基準位置はクランクシャフト100の回転方向の位置を示すことになる。クランクシャフト100が基準位置にあることを利用して、エンジンのシリンダに配置された図示しないスパークプラグの点火タイミングや図示しない燃料噴射インジェクタの噴射量や噴射タイミングを制御する信号を、図示しない内燃機関制御装置に提供する。
【0040】
上記の内燃機関の制御のみでなく、環境規制に応じ、内燃機関が失火した場合にはその失火を検出してアラームを行う必要がある。また、回転電機1は正方向にも逆方向にも回転可能であるため、正回転と逆回転とを正確に検出する必要がある。その為、磁気検知装置500の出力には精度が求められる。
【0041】
磁気検知装置500の精度を高めるためには、突起部310が誘導起電力を発生させやすい形状とすることが求められる。本例では、図4図26に示すように、突起部310の形状は軸方向長さが周方向長さより長い直方体であり、突起部310の先端部3102が磁気検知装置500に近接する時及び遠ざかる際に、単位時間当たりにポールピース502を貫通する磁束の変化が大きくなり、検知精度が得やすい形状としている。なお、突起部310の径方向の先端でポールピース502と対向する面は平面でなくてもよく、ポールピース502側に膨出する形状でも良い。即ち、突起部310の端面はロータ300と同様の曲面に形成しても良い。突起部310の先端部3102は最もポールピース502に近づく位置であるので、曲面形成の場合は突起部310の中央部となる。重要な点は、突起部310の形状が、先端部3102が形成できる形状であることである。
【0042】
また、磁気検知装置500の精度を高めるためには、円筒部303の外周より突起部310がより高く飛び出ることが望ましい。本例では、ロータ300の円筒部303の肉厚に比して、突起部310の高さが高くなるように形成している。円筒部303の肉厚が3ミリメートル程度である時、突起部310の高さが2.5ミリメートル以上としている。その為、凹部311の深さは、少なくとも、円筒部303の肉厚の0.7倍以上の深さがあるようにしている。
【0043】
このように、本開示においては、ポールピース502が磁束の変化を検知しやすい形状となるように、突起部310を成形している。特に、突起部310と凹部311との形状を工夫している。そこで、以下に突起部310の高さを高めると共に、突起部310の形状を最適化するロータ300の製造方法を説明する。
【0044】
まず、図5及び図6に示すように、平板打ち抜き工程P100を行う。この平板打ち抜き工程P100は、肉厚3ミリメートル程度の鉄材料の平板から、円形平板322をプレス成形で打ち抜く工程である。なお、円形平板322の鉄材料は圧延鋼板である。圧延時に圧延方向に沿って、後述するファイバーフローが形成されている。円形平板322は、同芯円状に中心部丸穴320と円形の外周部321を有する円板である。
【0045】
次いで、図7及び図8に示すように、円形平板322の外周部321を軸方向に折り曲げる円筒部折り曲げ工程P110を行う。この円筒部折り曲げ工程P110は、絞り加工とも呼ばれる。そして、この円筒部折り曲げ工程P110により、中心部丸穴320の中心軸を中心にする円盤状の底部302と、この底部302の径方向外周に配置される円筒部303とが形成される。かつ、この円筒部折り曲げ工程P110においては、中心部丸穴320も径が大きくなるようにプレス成形され、後述するボス部340が組付けられる大きさに成形される。
【0046】
次いで、図9及び図10に示すように、底部302にボス部340を固定する固定穴323を形成する穴抜き工程P120を行う。この穴抜き工程P120では、同時に後述するクラッチ350(図23図示)を固定するクラッチボルトが貫通するクラッチボルト貫通穴324も形成する。複数の固定穴323はそれぞれ同じ径であり、中心軸を中心に同心円状に配置されている。複数のクラッチボルト貫通穴324もそれぞれ同じ径であり、クラッチボルト貫通穴324の径の方が、クラッチボルトの頭を通すため、固定穴323の径より大きい。また、クラッチボルト貫通穴324も、中心軸を中心に同心円状に配置されている。
【0047】
その後、図11及び図12に示すように、カシメピン325を打ち出し成形するカシメピン成形工程P130を行う。カシメピン325は後述する永久磁石304の固定工程P160で用いられる。カシメピン325の打ち出しは、図12において底部302の右側からパンチで行う。この打ち出し成形工程において、同時にリング溝326も形成する。リング溝326は、後述する永久磁石固定工程P160で用いられる。
【0048】
その後、図13及び図14に示すように、円筒部303を外周側より内周側に打ち出す内出し工程P140を行う。内出し工程P140により、円筒部303の内周に磁石保持部327を形成する。磁石保持部327は、円筒部303のうち底部302に近い部位に形成される。この磁石保持部327も後述する永久磁石固定工程P160で用いられる。
【0049】
その後、図15及び図16に示すように、円筒部303を内周側より外周側に打ち出す外出し工程P150を行う。この外出し工程P150により、円筒部303の外周に突起部310を形成すると共に、円筒部303の内周で突起部310と対応する位置に凹部311を形成する。この突起部310及び凹部311が形成される位置は、円筒部303の軸方向のほぼ中央となる位置である。即ち、突起部310及び凹部311が形成される位置が円筒部303の底部302に近いと、外出し工程P150に用いるダイ330とパンチ331が底部302と干渉する恐れがある。一方、突起部310及び凹部311が形成される位置が円筒部303の開放端側では、外出し工程P150によって、円筒部303の径が所定の径寸法より大きくなる恐れがある。そこで、本例では突起部310及び凹部311が形成される位置を円筒部303の軸方向のほぼ中央としている。なお、ほぼ中央であれば良く、厳密に中央である必要は無い。上述の干渉の恐れや径が大きくなる恐れが低減できればよく、中央に対してある程度の差は許容できる。従って、ロータ300の円筒部303の開放端から5ミリメートル程度の範囲と、円筒部303の底部302から5ミリメートルの範囲に突起部310及び凹部311が形成されない状態のとき、ほぼ中央に形成されるとする。
【0050】
図17及び図18は、この外出し工程P150に用いるダイ330とパンチ331を示している。図17はダイ330及びパンチ331を周方向から見た図で、ダイ330の円筒部303外周との当接面3301は、円筒部303の形状に対応した円弧状となっている。同様に、パンチ331の円筒部303内周との当接面3311も、円筒部303の形状に対応した円弧状となっている。一方、図18はダイ330及びパンチ331を軸方向から見た図である。軸方向から見ると、ダイ330の円筒部303外周との当接面3301及びパンチ331の円筒部303内周との当接面3311は、共に直線状となっている。
【0051】
図19及び図20は、外出し工程P150後の円筒部303の突起部310及び凹部311をしている。これ等の図により、ダイ330のダイ凹部332とパンチ331のパンチ凸部333の大きさが説明される。図19は突起部310及び凹部311の周方向形状を示しており、図20は突起部310及び凹部311の軸方向形状を示している。
【0052】
図19に示すように、突起部310の周方向幅310Rに比べて、凹部311の周方向幅311Rが幅広となっている。なお、突起部310の周方向中間位置と凹部311の周方向中間位置はほぼ一致している。また、凹部311の周方向幅311Rは突起部310の周方向幅310Rに対して、1.3~1.7倍程度大きくなっている。本例では、凹部311の周方向幅311Rを突起部310の周方向幅310Rの1.5倍としている。突起部310の周方向幅310Rは、例えば、2.2ミリメートル程度であり、凹部311の周方向幅311Rは、例えば、3.3ミリメートル程度である。また、円筒部303の肉厚tに対して凹部311の深さ311Dは7割程度以上である。例えば、円筒部303の肉厚tが3ミリメートル程度の場合、深さ311Dは2.25ミリメートル程度である。なお、本開示で突起部310の周方向中間位置と凹部311の周方向中間位置をほぼ一致させるというのは、ほぼ一致であればよく、製造上のズレは許容している。このズレとしては10%程度の差を許容している、例えば凹部311の周方向幅311Rが3ミリメートルである場合、0.3ミリメートル程度の誤差は許容している。
【0053】
一方、軸方向形状では、突起部310の軸方向幅310Lに対して凹部311の軸方向幅311Lはほぼ一致している。そして、突起部310の軸方向中間位置と凹部311の軸方向中間位置もほぼ一致している。例えば、突起部310の軸方向幅310Lが8ミリメートル程度である場合、凹部311の軸方向幅311Lは8.3ミリメートル程度となっている。本開示でほぼ一致とは、やはり所定のズレは許容しており、この許容するズレ量は10%程度としている。上述の例では、突起部310の軸方向幅310Lが8ミリメートルに対し、凹部311の軸方向幅311Lが8.3ミリメートルであり、10%以内となっている。
【0054】
凹部311の周方向幅311Rが突起部310の周方向幅310Rより長い結果、凹部311の深さ311Dに比べて、突起部310の高さ310Hを高くすることができる。例えば、円筒部303の肉厚tが3ミリメートル程度で、凹部311の深さ311Dを2.25ミリメートル程度とした場合、突起部310の高さ310Hを2.65ミリメートル程度とすることができる。円筒部303の肉厚tに対する突起部310の高さ310Hの比率にすれば、9割近くの値となる。これは、一般的な打ち出し成形では、7割程度と言われているのに対して、突起部310の高さ310Hをより高くすることが出来ている。何故なら、突起部310の形状は軸方向の長さが長いため、一例として軸方向の長さが8ミリメートル程度に対し周方向の長さは2.2ミリメートル程度であるので、円筒部303の鉄材料の流れは周方向から集めた方がより多くの鉄材料を集めることができるからである。そこで、本例では周方向からより多くの鉄材料を集めて、突起部310の高さ310Hをより高くするような手法を、外出し工程P150の内、押し出し手法と呼ぶ。
【0055】
なお、上記の寸法例は突起部310の周方向幅310Rと軸方向幅310Lを2ミリメートル程度と8ミリメートル程度とした突起部310の長方形形状とした例を示したが、この寸法例は一例である。突起部310の形状は、図4に示すように、軸方向長さ(軸方向幅310L)が周方向長さ(周方向幅310R)より長い長方形状であればよい。
【0056】
このように、本開示では、突起部310の周方向長さ(周方向幅310R)に対し凹部311の周方向長さ(周方向幅311R)を長く設定しているので、突起部310の高さ310Hを高くすることができている。しかも、本開示では、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)と凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)をほぼ一致させているので、突起部310の形状を正確に規定することができる。磁気検知装置500の検出精度を高めるには、突起部310が周方向に正確な位置に形成されることが求められる。なお、上述の通り、ほぼ一致とは10%程度の誤差を許容しており、これはパンチ凸部333の軸方向幅に対してダイ凹部332の軸方向幅が10%程度以内で大きくなることを許容している。そこで、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)と凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)をほぼ一致させて、正確な打ち出しを行う手法を、外出し工程P150の内、切り出し手法と呼ぶ。
【0057】
このように、本開示では外出し工程P150を押し出し手法と切り出し手法との組み合わせで行っている。外出し工程P150自体は、パンチ331とダイ330とで行う一連のプレス工程であるが、パンチ凸部333とダイ凹部332との寸法関係を調節することで、一連のプレス工程に押し出し手法と切り出し手法とを同時に実現することができている。即ち、本開示の外出し工程P150は、周方向で押し出し手法を採用することで突起部310の高さを高くし、軸方向で切り出し手法を採用することで、突起部310の形状を正確に打ち出している。
【0058】
加えて、軸方向長さ(軸方向幅310L)が周方向長さ(周方向幅310R)より長くしているので、組付けも容易となる。即ち、ロータ300はクランクシャフト100に同軸上に組付けられ、また、磁気検知装置500はエンジンカバー200に組付けられる。その為、ロータ300の位置、即ち、突起部310の位置と磁気検知装置500の間には、周方向の組付けに対し軸方向には多少の組付け誤差が生じる場合もある。それに対し、軸方向長さ(軸方向幅310L)が長ければ組付け誤差を吸収することができる。
【0059】
ここで、突起部310の周方向長さ(周方向幅310R)に対し凹部311の周方向長さ(周方向幅311R)を長く設定するのみでなく、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)に対しても凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)を長くする押し出し手法とすることも想定できる。この場合、突起部310の高さ310Hをより高くすることが可能である。しかし、軸方向と周方向の両方で、凹部311の長さを突起部310の長さより長くすると、パンチ凸部333の形状によっては、ダイ凹部332に流れる鉄材料に欠陥が生じる恐れがある。何故なら、突起部310を形成する鉄材料が周方向と軸方向の四方から集まることとなり、鉄材料の流れが交差する角部で鉄材料の流れを正確に管理することができなくなり、部分的にダイ凹部332に鉄材料が充填されない箇所、いわゆる欠肉が生じる恐れがある。その為、突起部310の高さ310Hを所定の寸法に定められなくなるからである。
【0060】
それに対し、本開示のように、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)と凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)をほぼ一致させて切り出し手法とすれば、突起部310の形状を軸方向でガイドすることができ、ダイ凹部332に流れる鉄材料から欠陥を除くことができる。これによって、突起部310の周方向の形状が安定し、磁気検知装置500の検出精度を高めることが可能となる。
【0061】
軸方向と周方向のいずれか一方で、凹部311の長さを突起部310の長さより長くした押し出し手法とし、他方では凹部311の長さと突起部310の長さを同じとする切り出し手法とすることも想定できる。本開示とは逆に、突起部310の周方向長さ(周方向幅310R)と凹部311の周方向長さ(周方向幅311R)をほぼ一致させて切り出し手法とし、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)に対して凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)を長くして押し出し手法とする例である。この場合、突起部310の形状を周方向でガイドすることができ、ダイ凹部332に流れる鉄材料から欠陥を除くことができる。
【0062】
ただ、本開示が形成するのは単なる突起部310ではなく、ロータ300の突起部310であり、磁気検知装置500に対してリラクターとして動作する突起部310である。この場合、より精度が求められるのはロータ300の真円度であり、突起部310が存在する周方向位置である。仮に軸方向を押し出し手法としてパンチ331の幅を突起部310の軸方向幅310Lより大きくしようとすると、ロータ300の円筒部303の軸方向長さに制約が生じる。突起部310の軸方向幅310Lに対し、円筒部303の軸方向長さが充分で無い場合には、パンチ331と底部302とが干渉しかねない。または円筒部303の開放端の変形が大きくなり真円度が確保できなくなる。
【0063】
更に、突起部310の軸方向幅310Lを凹部311の軸方向幅311Lより短くすると、突起部310の高さ310Hを確保するため、周方向幅310Rを大きくする必要がある。しかしながら、周方向幅310Rが大きくなると磁気検知装置500の検知精度が劣る恐れがある。
【0064】
突起部310の径方向の最外部と磁気検知装置500との安定的な位置関係、即ち、突起部310と磁気検知装置500とのギャップが一定であることが重要である。この観点において、本開示では突起部310の周方向幅310Rが狭いのでダイ330に対して充填させるために動かす鉄材料の範囲を狭くできるから、突起部310の径方向の最外部を精度よく形成できる。
【0065】
また、図26に示したように、磁気検知装置500は突起部310の先端部3102が近接したり離れたりする際の磁気変化を検知する。そのため、突起部310の周方向幅310Rは短い方が、磁気変化がシャープになって精度よく検出できる。逆に、周方向幅310Rが長くなると、図27に示すように、突起部310の先端部3102が近接している期間が伸び、ノイズを検知してしまう要因となり得る。
【0066】
更に、外出し工程P150で、突起部310の周方向と軸方向の双方を切り出し手法とすることも想定できる。この場合には、突起部310の周方向長さ(周方向幅310R)と凹部311の周方向長さ(周方向幅311R)をほぼ一致させ、かつ、突起部の軸方向長さ(軸方向幅310L)も凹部311の軸方向長さ(軸方向幅311L)とほぼ一致させることとなる。しかし、この場合には、突起部310に充分な量の鉄材料を集めることができず、突起部310の高さ310Hを高くすることができない。また、外出し工程P150時にパンチ凸部333とダイ凹部332とによる応力が突起部310の根元の全周に亘って裁断されるように加わることとなる。そのため、突起部310が上手く形成できない恐れもある。
【0067】
押し出し手法とした場合と、切り出し手法とした場合の鉄材料の流れを図28図29に示す。図28に示すように、押し出し手法とすれば、突起部310の根元部3101で、鉄材料のファイバーフロー3000が連続している。なお、上述のように、ファイバーフロー3000は鉄材料が圧延鋼板であることに起因して生じる金属の流れによる繊維状組織である。圧延鋼板の圧延時に圧延方向に沿ってファイバーフロー3000が形成されている。
【0068】
上述のように、押し出し手法とすれば、突起部310の高さ310Hを高くすることができているが、これは、ファイバーフロー3000が連続してより多くの鉄材料を突起部310内に流入させていることの結果でもある。換言すれば、押し出し手法は、鉄材料のファイバーフロー3000が切断されていない外出し工程P150であるとも言える。押し出し手法によれば、周方向のファイバイーフロー3000が切断されないので、突起部310を形成する両長辺のファイバーフロー3000が繋がっている。その為。突起部310の周方向では、ファイバーフロー3000を活かすことができる。これにより、突起部310の強度をより高めることができる。
【0069】
逆に、切り出し手法の場合には、図29に示すように、鉄材料のファイバーフロー3000は、突起部310の根元部3101で切断されている。この鉄材料のファイバーフロー3000によって、突起部310の形状をより正確にすることができている。従って、切り出し手法は、鉄材料のファイバーフロー3000が切断される外出し工程P150であるとも言える。結果的に、突起部310の根元部3101におけるロータ300を形成する鉄材料のファイバーフローは、周方向では維持され、軸方向では切断される。言い換えると、パンチ331をダイ330側にプレスする工程は、根元部3101における鉄材料のファイバーフローを、周方向では維持し、軸方向では切断するように実行される。
【0070】
以上の諸々の要因が相俟って、本開示のように、突起部310の形状を軸方向で切り出し手法としてガイドする方が望ましい。即ち、突起部310の形状を周方向で切り出し手法としてガイドする場合に比較して、本開示の方がロータ300の真円度の形成や突起部310が存在する周方向位置をより精度よく検知することが可能である。
【0071】
軸方向の切り出し手法と、周方向の押し出し手法との組み合わせは、以上説明した通り、ロータ300に突起部310を外出し工程P150で形成する上で、望ましい組み合わせである。ただ、上述のように、鉄材料の欠陥が生じないようにすることの留意は必要である。その為、図30図31に示すように、突起部310の突起隅部3105や凹部311の凹隅部3115を曲面に形成しても良い。図30及び図31は、いずれも図19のA視の突起部310とB視の凹部311を示している。
【0072】
図30は、突起隅部3105と凹隅部3115の曲面を最小とした例で、半径が0.1ミリメートル程度である。逆に図31は、突起隅部3105と凹隅部3115の曲面を最大とした例で、突起部310の周方向幅310R及び凹部311の周方向幅311Rが曲面の直径となっている。突起隅部3105と凹隅部3115とを曲面に形成することで、突起隅部3105及び凹隅部3115に鉄材料が流れ込みやすくなる。
【0073】
何故なら、突起隅部3105と凹隅部3115は、外出し工程P150における押し出し手法と切り出し手法との境界部であるので、この境界部ではプレス成形に伴う鉄材料の動きが複雑になる。そこで、境界部である突起隅部3105と凹隅部3115に曲面を形成することによって、プレス成形時の鉄材料の動きを円滑にすることができる。これによって、突起隅部3105と凹隅部3115での鉄材料の充填率が高くなり、割れやすくなると言うような強度不足を引き起こすことも効果的に抑制できる。
【0074】
鉄材料の流れ込みを促すためには、図19図20に示すように、突起部310の径方向の外方で、且つ、周方向の両側の辺3106や軸方向の両側の辺3107にも曲面を形成しても良い。同様に、凹部311径方向の外方(最奥部)で、且つ、周方向の両側の辺3116や軸方向の両側の辺3117に曲面を形成しても良い。これは、パンチ331とダイ330の先端隅部まで鉄材料が確実に流れ込むようにするためである。
【0075】
ロータ300の突起部310及び凹部311の成形を行った後、図21に示すように、円筒部303の内周に永久磁石304を固定する永久磁石固定工程P160を行う。但し、永久磁石304は全ての組付けが終了した後に着磁されるので、この永久磁石固定工程P160では、着磁前の金属を永久磁石304と呼ぶ。まず、着磁前の永久磁石304を円筒部303の内周に配置し、その後で、磁石カバー3040(図22図示)を永久磁石304の内周に配置する。次いで、磁石カバー3040を底部302にカシメピン325でカシメ固定する。なお、磁石カバー3040は非磁性体のオーステナイト系ステンレス製の薄板でできている。そして、円筒部303の内周に接着剤を塗布して永久磁石304の固定を完了させる。上述したリング溝326は、この際接着剤が中心部丸穴320側に浸入するのを防止している。また、上述した磁石保持部327によって永久磁石304の軸方向の位置決めがなされる。かつ、上述したカシメピン325をプレスすることで、磁石カバー3040をロータ300に機械的にも固定する。
【0076】
次いで、図22に示すように、ボス部340をロータ300の底部302に固定するボス部固定工程P170を行う。ボス部固定工程P170では、まずボス部340を中心部丸穴320に挿入する。挿入後、固定穴323を利用して、リベット341によってボス部340をロータ300の底部302に固定する。上述の永久磁石固定工程P160で使用した接着剤が硬化した後、図23に示すように、クラッチ350をボス部340に組付けるクラッチ組付け工程P180を行う。クラッチ組付け工程P180は、クラッチボルト貫通穴324を利用する。クラッチボルト351はクラッチボルト貫通穴324を貫通して、クラッチ350のネジ穴352と螺合する。これにより、ボス部340及びクラッチ350をロータ300の底部302に固定する。
【0077】
なお、クラッチ350はエンジンの始動時にスタータモータの回転をロータ300に伝達するワンウェイクラッチである。即ち、エンジンの始動時にはスタータモータの回転はクラッチ350を介してロータ300からクランクシャフト100に伝達され、クランクシャフト100の回転が所定の回転速度に到達するとエンジンが始動する。エンジン始動は、クラッチ350が空転しスタータモータは回転を停止する。
【0078】
上述のように、これらの全ての部品の組付けを終了した後、永久磁石304を着磁する。この着磁により、円筒部303の内周の所定カ所に複数の磁極を形成する。着磁後の永久磁石304の磁極は、N極とS極とが周方向に等間隔離れて配置される。
【0079】
回転電機1としては、ボス部340がクランクシャフト100の先端にシャフト固定ボルト342によって固定される。図1に示すように、クランクシャフト100の先端はテーパ形状部1001となっており、また、図22に示すようにボス部340もテーパ形状部3401を形成している。そのため、クランクシャフト100の外径及びボス部340の内径が僅かに変わるだけで、ロータ300のクランクシャフト100に対する軸方向位置が大きくずれることとなる。上述したように、磁気検知装置500との位置ずれを防ぐためには、突起部310は軸方向幅310Lを長くするのが望ましい。また、ロータ300の内周にステータ400が配置され、ステータ400はボルト通し穴403を利用してエンジンカバー200にボルト固定される。
【0080】
図25は、ロータ300に永久磁石304を配置した状態での、突起部310及び凹部311の周方向の形状を示している。図25は、外出し工程P150による変化を強調して記載しているが、円筒部303に突起部310及び凹部311を形成する結果、破線で示す仮想外周面3030に比べて、突起部310の根元部3101近傍の実外周面3031は、外方に盛り上がっている。これにより、突起部310の根元部3101での肉厚が増加し、突起部310の根元部3101に加わる応力を緩和することができている。
【0081】
同様に、凹部311の開口端部3111でも、円筒部303の仮想内周面3032に対して、実内周面3033は凹部311側に変形している。その結果、開口端部3111と永久磁石304との当接位置3112は凹部311より周方向に離れることとなる。これにより、ロータ300の高速回転時に永久磁石304の遠心力が円筒部303に加わる作用点が突起部310の根元部3101より周方向に離れることとなる。その為、永久磁石304の遠心力によって、円筒部303の突起部310部分に加わる応力も緩和することができる。
【0082】
更に、開口端部3111が凹部311より周方向に離れる結果、突起部310の下方での空隙が増えることとなる。空隙は磁束を遮断する作用があるので、このように空隙が増える結果、永久磁石304から突起部310に漏洩する磁束を低減することが可能となる。磁気検知装置500は自身のマグネット503の磁力を用いて突起部310を検知するので、永久磁石304から突起部310に漏洩する磁束が低減できるのは、磁気検知装置500のセンサノイズの低減に繋がる。
【0083】
外出し工程P150で生じる実外周面3031及び実内周面3033には、以上説明したような利点がある。ただ、利点のみでなく背反する事情もある。例えば、実外周面3031では、突起部310の立ち上がりがなだらかになり、磁気検知装置500の検出精度が低下する恐れがある。その為、実外周面3031が外方に盛り上がることは、盛り上がりが大きければ良いと言う訳では、必ずしも無い。
【0084】
同様に、外出し工程P150で実内周面3033によって、開口端部3111が凹部311より周方向に離れることは、永久磁石304からの磁束を遮るという利点がある反面、円筒部303の内周面と永久磁石304との接触面積が低減されることにも繋がる。接触面積の低減は、永久磁石304の保持の観点では不利となる。従って、実内周面3033による開口端部3111の凹部311側への変形も、変形量が多ければ良いと言うものではない。
【0085】
図33は、上記点を踏まえて、外出し工程P150を見直した例である。外周面は、実外周面3031が仮想とする若しくは理想とする真円弧形状と一致するようにしている。これは、ダイ330の円筒部303外周との当接面3301の形状を、円筒部303の形状に対応した円弧状とするのでなく、プレス成形後の弾性変形を予め見込んで、突起部310の根元部3101を径方向内方(図33で下方)に窪ませた形状とすることで達成している。若しくは、ダイ330の円筒部303の外周との当接面3301の形状を、円筒部303の外周形状に対応した円弧状とし、プレス成型を一定時間保持してプレス成形後の弾性変形を抑制することで達成する。他に、外出し工程P150によって生じた実外周面を再度プレス成形することで、真円弧形状に近づけている。
【0086】
図32は、逆に実内周面3033を理想とする真円弧形状に近づけた例である。この例は、プレス成形後の弾性変形を予め見込んで、パンチ331の円筒部303内周との当接面3311の形状を設定している。即ち、円筒部303の形状に対応した円弧状よりも径方向内側(図32で下方)に膨む形状に当接面3311の形状を形成している。例えば、周方向(図32で左右方向)の幅が5ミリメートル程度、径方向(図32で下方向)の膨らみが0.5ミリメートル程度までであれば、膨らんだ形状とすることが許容される。若しくは、パンチ331の円筒部303の内周との当接面3311の形状を、円筒部303の内周形状に対応した円弧状とし、プレス成型を一定時間保持してプレス成形後の弾性変形を抑制することで達成する。
【0087】
なお、上述したのは本開示の望ましい態様であるが、本開示は種々に変更可能である。例えば、突起部310の数は制御仕様によるものであるので、適宜設定することができる。また、クランクシャフト100の基準位置を他の方法で検知する場合には、突起非形成部位306を廃止して、全周を突起形成部位305としても良い。突起部310によってクランクシャフト100の基準位置を検知する場合でも、全周を突起形成部位305とし更に位置検知用の突起部を追加して形成することも可能である。
【0088】
また、上述した例では磁気検知装置500として磁気ピックアップセンサを用いたが、ホールセンサ等他のセンサを用いても良い。また、寸法は一例であり、他に変更できる。また、永久磁石304の数、突起部310及び凹部311の数、固定穴323の数、クラッチボルト貫通穴324の数、及びカシメピン325の数はいずれも適宜設定すればよい。また、上述した例では、ステータ400はエンジンカバー200に固定されていたが、シリンダブロック101に固定しても良い。
【0089】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0090】
(技術的思想1)
鉄材料製で円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを有する回転電機用ロータであって、前記円筒部の外周には、周方向に等間隔離れて複数の突起部が径方向外方に形成される突起形成部位が形成され、前記突起部は軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、前記円筒部の内周には、前記突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位が形成され、前記凹部は軸方向長さが周方向長さより長い長方形状であり、前記突起部の軸方向中間位置と前記凹部の軸方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の軸方向長さと前記凹部の軸方向長さはほぼ一致し、前記突起部の周方向中間位置と前記凹部の周方向中間位置はほぼ一致し、前記突起部の周方向長さに対し前記凹部の周方向長さは長く、前記円筒部の内周に周方向に複数の永久磁石が配置されている回転電機用ロータ。
【0091】
(技術的思想2)
前記突起部の周方向長さに対し、前記凹部の周方向長さは1.7倍程度以下の大きさで長い技術的思想1に記載の回転電機用ロータ。
【0092】
(技術的思想3)
前記凹部の深さは、前記円筒部の肉厚の0.7倍程度以上である技術的思想1または技術的思想2に記載の回転電機用ロータ。
【0093】
(技術的思想4)
前記突起部の隅部である突起隅部、及び前記凹部の隅部である凹隅部は曲面に形成されている技術的思想1から技術的思想3のいずれかに記載の回転電機用ロータ。
【0094】
(技術的思想5)
前記突起部の根元部の内、周方向では前記ロータを形成する鉄材料のファイバーフローが連続しており、軸方向では鉄材料のファイバーフローが切断している技術的思想1から技術的思想4のいずれかに記載の回転電機用ロータ。
【0095】
(技術的思想6)
技術的思想1から技術的思想5のいずれかに記載の回転電機用ロータと、複数のティース部、及びこのティース部に配置される複数のコイルを備え、前記ティース部の径方向外方端部が前記永久磁石と対向しているステータと、前記突起部の径方向外方に配置され、前記突起部の位置を検知する磁気検知装置とを備える回転電機。
【0096】
(技術的思想7)
鉄材料製平板から、中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜き、この中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、前記円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ、前記中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、前記底部に前記ボス部の固定穴を形成する穴抜き工程と、前記円筒部を内周側より外周側に打ち出して、前記円筒部の外周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を形成するとともに、前記円筒部の内周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を形成する外出し工程と、前記円筒部の内周に、永久磁石を保持するように固定する永久磁石固定工程と、前記中心部丸穴に前記ボス部を配置するとともに前記ボス部を前記底部に前記固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有し、前記外出し工程は、前記円筒部の外周に長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、前記円筒部の内周に長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置して、前記パンチを前記ダイ側にプレスするとともに、前記パンチ凸部の周方向幅は前記ダイ凹部の周方向幅より大きく、前記パンチ凸部の軸方向幅は前記ダイ凹部の軸方向幅とほぼ一致し、かつ、前記突起部を前記円筒部に周方向に等間隔離れて複数形成する回転電機用ロータの製造方法。
【0097】
(技術的思想8)
鉄材料製平板から、中心部にボス部の支持用の中心部丸穴を打ち抜き、この中心部丸穴と同軸上に円形平板を打ち抜く平板打ち抜き工程と、前記円形平板の外周部を軸方向に折り曲げ、前記中心部丸穴の中心軸を中心にする円盤状の底部と、この底部の径方向外周に配置される円筒部とを形成する円筒部折り曲げ工程と、前記底部に前記ボス部の固定穴を形成する穴抜き工程と、前記円筒部を内周側より外周側に打ち出して、前記円筒部の外周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした突起部を形成するとともに、前記円筒部の内周に軸方向長さが周方向長さより長い長方形状をした凹部を形成する外出し工程と、前記円筒部の内周に、永久磁石を保持するように固定する永久磁石固定工程と、前記中心部丸穴に前記ボス部を配置するとともに前記ボス部を前記底部に前記固定穴を利用して固定するボス部固定工程とを有し、前記外出し工程は、前記円筒部の外周に長方形状のダイ凹部を有するダイを配置し、前記円筒部の内周に長方形状のパンチ凸部を有するパンチを配置し、前記突起部の根元部における前記ロータを形成する鉄材料のファイバーフローを、周方向では維持し、軸方向では切断するように、前記パンチを前記ダイ側にプレスすることにより前記突起部および前記凹部を形成している回転電機用ロータの製造方法。
【要約】
突起部の断面形状を、軸方向長さが周方向長さより長い長方形状として、検知しやすい形状とする。また、円筒部の内周に突起部と対応する部位に複数の凹部が形成される凹部形成部位を設ける。突起部の軸方向中間位置及び主方向中間位置と、凹部の軸方向中間位置及び周方向中間位置はほぼ一致している。かつ、突起部の軸方向長さに対し凹部の軸方向長さは長くなっており、突起部の周方向長さと凹部の周方向長さはほぼ一致している。この寸法関係によっても、突起部の高さを高くすると共に突起部の形状精度を高める。
図1
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