(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】設備監視装置及び設備監視方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240112BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
G05B23/02 302Z
G05B23/02 301Y
H04Q9/00 301C
(21)【出願番号】P 2019067143
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 純一
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-038809(JP,A)
【文献】特開2018-060423(JP,A)
【文献】特開2017-010155(JP,A)
【文献】特開2004-341598(JP,A)
【文献】特開2004-153491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0025700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理ポイントにおいて更新された更新測定データを収集するデータ収集部と、
前記管理ポイントにおける更新前の測定データの変化を記録した状態変化履歴、及び前記管理ポイントの健全性を判定するための正常運用パターンの集合である正常運用パターン群を記憶する情報記憶部と、
前記更新測定データが前記状態変化履歴と異なる場合には、前記状態変化履歴に前記更新測定データを追加して更新後の状態変化履歴を作成する状態変化記録部と、
前記更新後の状態変化履歴と前記正常運用パターン群とを比較して、前記管理ポイントの健全性を判定する健全性判定部と、
前記健全性判定部が前記更新後の状態変化履歴は前記正常運用パターン群と対応しないと判定した場合には、管理者に警報を通知する警報管理部と
、
前記管理者が前記管理ポイントは正常状態と判断した場合には、前記正常運用パターン群の少なくとも一部を前記更新後の状態変化履歴の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群を作成するか、又は、前記正常運用パターンに前記更新後の状態変化履歴の少なくとも一部を追加することで新規正常運用パターン群を作成する正常運用パターン作成部と、を備える、設備監視装置。
【請求項2】
前記情報記憶部は、さらに、前記警報を記録した警報履歴を記憶する、請求項1に記載の設備監視装置。
【請求項3】
前記正常運用パターン群に含まれる前記管理ポイントの前記正常運用パターンは、1つ又は2つ以上の他の管理ポイントの更新前の測定データ又は前記管理ポイントを有する設備の運用に関連するデータを含む、請求項
1又は2に記載の設備監視装置。
【請求項4】
管理ポイントにおいて更新された更新測定データを収集するデータ収集ステップと、
前記更新測定データが、前記管理ポイントにおける更新前の測定データの変化を記録した状態変化履歴と異なる場合には、前記状態変化履歴に前記更新測定データを追加して更新後の状態変化履歴を作成する状態変化履歴作成ステップと、
前記更新後の状態変化履歴と、前記管理ポイントの健全性を判定するための正常運用パターン群とを比較して、前記管理ポイントの健全性を判定する健全性判定ステップと、
前記健全性判定ステップにおいて前記更新後の状態変化履歴は前記正常運用パターン群に対応しないと判定された場合には、管理者に警報を通知する警報通知ステップと
、
前記管理者が、前記管理ポイントは正常状態と判断し、さらに前記更新後の状態変化履歴を正常運用パターンとして登録すべきと判断した場合には、前記正常運用パターン群の少なくとも一部を前記更新後の状態変化履歴の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群を作成するか、又は、前記正常運用パターンに前記更新後の状態変化履歴の少なくとも一部を追加することで新規正常運用パターン群を作成する正常運用パターン作成ステップと、を含む、設備監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備監視装置及び設備監視方法に関し、特に、設備から収集される多数の測定データに基づいて設備の健全性を判定する設備監視装置及び設備監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやプラント等の施設においては、照明や空調等の様々な設備が設置されている。施設の管理者は、当該施設に設置されている設備に関する測定データを定期的に、あるいはその都度取得して監視を行うことで適切な運用を行っている。
【0003】
従来、予め設定された正常範囲を逸脱した測定データを取得することで、管理者は設備の異常を検出している。特許文献1には、設備が正常運用を示す学習モデルと測定データとの差が所定の閾値を超えた場合に異常状態と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術では検出できない、異常又は異常の兆候がある。例えば、メータが故障した場合には、当該メータの測定データの絶対値は正常範囲であるが、比較的短周期で測定データの値が変化する場合がある。
【0006】
そこで、本開示では、測定データの変化を把握することで、従来は検出できなかった異常又は異常の兆候を検出することができる設備監視装置及び設備監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の設備監視装置は、管理ポイントにおいて更新された更新測定データを収集するデータ収集部と、管理ポイントにおける更新前の測定データの変化を記録した状態変化履歴、及び管理ポイントの健全性を判定するための正常運用パターン群を記憶する情報記憶部と、更新測定データが状態変化履歴と異なる場合には、状態変化履歴に更新測定データを追加して更新後の状態変化履歴を作成する状態変化記録部と、更新後の状態変化履歴と正常運用パターン群とを比較して、管理ポイントの健全性を判定する健全性判定部と、健全性判定部が更新後の状態変化履歴は正常運用パターン群と対応しないと判定した場合には、管理者に警報を通知する警報管理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成を備えた設備監視装置によれば、管理ポイントにおける測定データの変化と正常運用パターン群とを比較することで、管理ポイントの健全性を判定し、更新後の状態変化履歴が正常運用パターン群に対応しないことを管理者に通知することができる。正常運用パターン群は、測定データの絶対値だけでなく、測定データの変化率や変化頻度を含むので、測定データの絶対値のみを用いて管理ポイントの健全性を判断する方法では検出できなかった異常又は異常の兆候を検出することができる。
【0009】
本開示の設備監視装置において、情報記憶部は、さらに警報を記録した警報履歴を記憶してもよい。これによれば、警報を通知された管理者が、当該設備に異常があるかを判断するために、警報履歴を使用することができる。
【0010】
本開示の設備監視装置において、管理者が管理ポイントは正常状態と判断した場合には、正常運用パターン群の少なくとも一部を更新後の状態変化履歴の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群を作成するか、又は、正常運用パターン群に更新後の状態変化履歴の少なくとも一部を追加することで新規正常運用パターン群を作成する正常運用パターン作成部をさらに備えてもよい。これによれば、正常運用パターン群を更新することで施設毎にカスタマイズすることができるので、それぞれの施設に合った正常運用パターン群を作成することができる。
【0011】
本開示の設備監視装置において、正常運用パターン群に含まれる1つの管理ポイントの正常運用パターンは、1つ又は2つ以上の他の管理ポイントの更新前の測定データ又は当該1つの管理ポイントを有する設備の運用に関連するデータを含んでもよい。これによれば、管理ポイントの測定データに影響を与え得る他の管理ポイントの測定データや設備の運用に関連するデータを含むことで、他のデータとの相関関係も検討した上で管理ポイントの健全性を判定することができる。
【0012】
本開示の設備監視方法は、管理ポイントにおいて更新された更新測定データを収集するデータ収集ステップと、更新測定データが、管理ポイントにおける更新前の測定データの変化を記録した状態変化履歴と異なる場合には、状態変化履歴に更新測定データを追加して更新後の状態変化履歴を作成する状態変化履歴作成ステップと、更新後の状態変化履歴と、管理ポイントの健全性を判定するための正常運用パターン群とを比較して、管理ポイントの健全性を判定する健全性判定ステップと、健全性判定ステップにおいて更新後の状態変化履歴は正常運用パターン群に対応しないと判定された場合には、管理者に警報を通知する警報通知ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
上記構成を備えた設備監視方法によれば、管理ポイントにおける測定データが変化した際に、測定値の変化率や変化頻度を含む正常運用パターンとの対応を確認するので、測定値の絶対値のみで管理ポイントの健全性を判定する従来の方法では検出できなかった異常又は異常の兆候を検出することができる。
【0014】
本開示の設備監視方法において、管理者が、管理ポイントは正常状態であると判断し、さらに更新後の状態変化履歴を正常運用パターンとして登録すべきと判断した場合には、正常運用パターン群の少なくとも一部を更新後の状態変化履歴の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群を作成するか、又は、正常運用パターン群に更新後の状態変化履歴の少なくとも一部を追加することで新規正常運用パターン群を作成する正常運用パターン作成ステップをさらに含んでもよい。これによれば、正常運用パターン群を施設毎にカスタマイズすることができるので、それぞれの設備に適応した正常運用パターン群を作成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の設備監視装置及び設備監視方法によれば、従来は検出できなかった異常又は異常の兆候を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の一例における設備監視装置の全体構成と、施設に設置されている設備とを示した図である。
【
図2】実施形態の一例における設備監視装置のハードウェア構成図である。
【
図5】他の管理ポイントの測定データを含む正常運用パターン群の他の一例を示す
図4に対応する図である。
【
図6】実施形態の一例において、データ収集部が更新測定データを収集した際の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る設備監視装置の実施形態の一例について詳説する。
図1は、実施形態の一例における設備監視装置1の全体構成と、施設2に設置されている設備3とを示した図である。設備監視装置1は、施設2に設置されている照明3a、空調3b、電力メータ3c、入退室管理ドア3d等の設備3の管理ポイント4から更新測定データNを収集して各管理ポイント4の健全性の判定を行う。
【0018】
施設2は、例えば、ビルやプラント等である。施設2の規模も特に限定されず、大型のショッピングモールや、小型のビル等どのような形態のものでもよい。
【0019】
設備3としては、
図1に示された照明3a、空調3b、電力メータ3c、入退室管理ドア3d以外に、施設2に設置されるエレベータ、エスカレータ等や、施設2の水道、ガスのメータ等が例示できる。
【0020】
管理ポイント4は、設備3について監視すべき設定、状態、計測値等毎に設けることができる。ここで、設定とは設備3の動作を規定する条件であり、状態とは設備3の実際の様子であり、計測値とは設備3周辺の様子をセンサ等で計測した結果である。例えば、照明3aの設定及び状態はON又はOFFで表すことができて、空調温度の設定及び状態は例えば20℃等と表すことができる。また、1つの設備3に1つ又は2つ以上の管理ポイント4を設けることができる。例えば、空調3bであれば、実測温度、設定温度、実測湿度等を管理ポイント4としてもよい。また、複数の設備3に1つの管理ポイント4を設けることもできる。例えば、複数の照明3aを同期させている場合には、当該複数の照明3aに対して1つの管理ポイント4を設けてもよい。
【0021】
管理ポイント4で取得される更新測定データNには、照明3aの電源の設定や状態を示すON/OFFで示される離散値と、施設2への供給電圧6000Vや空調3bの設定温度20℃等で示される連続値とがある。管理ポイント4を適切に監視できる限りにおいては、更新測定データNを収集するタイミングは特に限定されない。測定データの種類に応じて、測定データに変化があった際に管理ポイント4が自主的に更新測定データNを送信するようにしたり、一定の期間毎に管理ポイント4が更新測定データNを送信したりするようにしてもよい。定期的に更新測定データNを収集する場合には、更新測定データNを収集する時間間隔を、例えば、1秒、30秒、1分、10分、1時間等に設定することができる。
【0022】
ネットワーク5は、データの送受信ができる通信網を広く含む。ネットワーク5は、有線又は無線のどちらでもよい。また、ネットワーク5は、イントラネット又はインターネットのどちらでもよいが、設備監視装置1が設置される場所が限定されないので、インターネットが好ましい。
【0023】
管理者6は、設備監視装置1と連動することで管理ポイント4が正常状態であるか又は異常状態であるかを判断する。また、管理者6は、当該判断を設備監視装置1にフィードバックすることで後述する正常運用パターン群111を更新して作成する。管理者6は、人間ではなくコンピュータであってもよい。管理者6は、コンピュータであった場合には、AI(Artificial Intelligence)等の学習機能付きのコンピュータであることが好ましい。また、管理者6が人間の場合は、1人でもよいし、2人以上の集合体であってもよい。
【0024】
設備監視装置1は、データ収集部10と、情報記憶部11とを備える。データ収集部10は、管理ポイント4における更新測定データNをネットワーク5経由で収集する。また、データ収集部10は、管理ポイント4に測定データを取得させて当該測定データを更新測定データNとして発信させる発信命令を送信できる機能を有してもよい。
【0025】
情報記憶部11は、状態変化履歴110と、正常運用パターン群111とを記憶する。状態変化履歴110は、管理ポイント4における更新前の測定データの変化を記録したデータである。正常運用パターン群111は、更新測定データNの変化に対して管理ポイント4は健全であると判定すべき正常運用パターンの集合である。さらに、情報記憶部11は、後述する管理者6に通知した警報を記録した警報履歴112を記憶してもよい。
【0026】
さらに、設備監視装置1は、状態変化記録部12と、健全性判定部13と、警報管理部14と、を備える。また、設備監視装置1は、管理者6からの要求に応じて新規正常運用パターン群111を作成する正常運用パターン作成部15を備えてもよい。
【0027】
状態変化記録部12は、更新測定データNが状態変化履歴110における最新の測定データと異なる場合には、状態変化履歴110に更新測定データNを追加して更新後の状態変化履歴110を作成する。状態変化記録部12とデータ収集部10とは、分離していなくてもよく、両方の機能を果たす1つの部であってもよい。
【0028】
健全性判定部13は、更新後の状態変化履歴110と正常運用パターン群111とを比較して管理ポイント4の健全性を判定する。換言すれば、健全性判定部13は、管理ポイント4における更新測定データNの変化と正常運用パターンとを一定の判定ルールに基づいて比較することで、設備3の健全性を判定する。また、健全性判定部13は、管理者6が判断した結果と健全性判定部13がした判定とを比較して自ら学習する機能を有していてもよい。
【0029】
警報管理部14は、健全性判定部13が更新後の状態変化履歴110は正常運用パターン群111と対応しないと判定した場合には、管理者6に警報を通知する。警報は、例えばメールであり、管理者6が携帯する携帯電話等の機器にネットワーク5を介して送信されることで、管理者6に早急に通知することができる。警報を受けた管理者6は、実際に管理ポイント4を有する設備3の状態を確認することで異常状態であるかを判断することができる。管理者6は、警報履歴112にアクセスすることによって過去の警報の有無やその内容を確認することできるので、警報履歴112を管理ポイント4の健全性を判断する際の参考データとして使用してもよい。
【0030】
正常運用パターン作成部15は、警報を通知された管理者6が正常状態であると判断した場合には、更新後の状態変化履歴110を正常運用パターン群111の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群111を作成するか、又は、更新後の状態変化履歴110の少なくとも一部を正常運用パターン群に追加することで新規正常運用パターン群111を作成する。同じ型式の設備3であっても、各設備3が置かれた環境は異なるので、各管理ポイント4の健全性の判定もカスタマイズできることが好ましい。設備監視装置1は、正常運用パターン作成部15を備えることで各管理ポイント4に合わせて新規正常運用パターン群111を作成できるので、各管理ポイント4の健全性を適切に判定をすることができる。
【0031】
図2は実施形態の一例における設備監視装置1を構成するコンピュータのハードウェア構成図である。設備監視装置1を構成するコンピュータは、汎用的なハードウェア構成により実現することができる。すなわち、コンピュータは、
図2に示したように、CPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(以下、HDDという)24を接続したHDDコントローラ25、入力手段として設けられたマウス26とキーボード27、及び表示装置として設けられたディスプレイ28をそれぞれ接続する入出力コントローラ29、通信手段として設けられたネットワークコントローラ30とを内部バス31に接続して構成される。
【0032】
情報記憶部11は、1つ以上のHDD24により構成することができる。また、有事に備えて、バックアップ用のHDD24をさらに有してもよい。データ収集部10、状態変化記録部12、健全性判定部13、警報管理部14、及び正常運用パターン作成部15は、CPU21、ROM22及びRAM23により構成することができる。管理者6は、マウス26、キーボード27、及びディスプレイ28を用いるか又はネットワークコントローラ30を経由することで、HDD24に保存された状態変化履歴110、正常運用パターン群111、又は警報履歴112にアクセスしてもよい。
【0033】
次に、
図3を参照しながら、情報記憶部11に記憶されている状態変化履歴110について説明する。状態変化履歴110は、データ収集部10が収集した管理ポイント4における更新前の測定データの変化の記録である。管理ポイント4として、照明A設定、照明A状態、供給電圧A、消費電力A、及び空調A設定温度の5つを例示している。照明A設定、照明A状態、供給電圧A、及び空調A設定温度の4つの管理ポイント4は、測定データに変化があった際に自動的に発生時刻と更新測定データNをデータ収集部10に送信してもよい。消費電力Aの管理ポイント4は、1時間毎に更新測定データNをデータ収集部10に送信してもよい。
【0034】
図3においては、管理ポイント4毎に、発生時刻と当該発生時刻における測定データが上から下に測定時刻順に並べられている。各管理ポイント4の測定データの数は3個で例示しているが、当然に3個以外でもよいし、また管理ポイント4毎に測定データの数は異なっていてもよい。健全性判定部13が管理ポイント4の健全性を判定するために、測定データの状態変化頻度すなわち1時間当たりの測定データの変化の回数を算出するので、1時間以上の変化を記録できるように管理ポイント4の測定データの数を設定することが好ましい。状態変化履歴110の各管理ポイント4の測定データは、一定期間後に自動的に消去されてもよいし、管理者6の裁量で適宜消去されてもよい。
【0035】
次に、
図4を参照しながら、情報記憶部11に記憶されている正常運用パターン群111について説明する。正常運用パターン群111は、更新測定データNの変化に対して管理ポイント4は健全であると判定すべき正常運用パターンの集合である。異常又は異常の兆候は無いと判定できる測定データの変化の正常運用パターンとして、照明A設定・パターン1、照明A設定・パターン2、照明A状態・パターン1、供給電圧A・パターン1、消費電力A・パターン1、及び空調A設定温度・パターン1の6つを例示している。照明A設定については、照明A設定・パターン1及び照明A設定・パターン2の2つのパターンが正常運用パターンとして記憶されている。したがって、健全性判定部13は、更新後の状態変化履歴110が照明A設定・パターン1及び照明A設定・パターン2のどちらか一方と対応するかを判定する。
【0036】
図4においては、正常運用パターン毎に発生時刻と当該発生時刻における測定データが上から下に測定時刻順に並べられている。各正常運用パターンの測定データの数は3個で例示しているが、当然に3個以外でもよいし、また正常運用パターン毎に測定データの数は異なっていてもよい。健全性判定部13は状態変化履歴110と正常運用パターン群111とを比較することで管理ポイント4の健全性を判定するので、正常運用パターン群111に含まれる各正常運用パターンの測定データは、状態変化履歴110と比較できる程度の量とすることができる。
【0037】
正常運用パターンは、測定データに変化があった時刻の間隔を示すインターバルと、更新前の測定データの変化の様子を示す数値変動割合及び状態変化頻度と、測定時刻の時間帯を抽出した発生時間帯とをデータとして含む。
【0038】
数値変動割合は、測定データの変動の大きさを計算した数値であり、測定データが供給電圧や消費電力、空調設定温度等の連続値の場合に算出される。例えば、供給電圧A・パターン1の上から2列目と3列目の数値変動割合は、それぞれ1つ前の上から1列目と2列目の測定データとの差から1.7%、-1.6%と算出されている。
【0039】
状態変化頻度は、1時間当たりの測定データの変化の回数を示しており、測定データが連続値、及び離散値のどちらの場合にも算出される。例えば、供給電圧A・パターン1では、午前0時~午前1時の1時間に測定データに3回の変動が生じている。
【0040】
発生時間帯は、測定データに変化があった際の時間帯を1時間単位で示している。例えば、供給電圧A・パターン1の測定データは、いずれも0時~1時の1時間に収集されている。
【0041】
図5に、他の管理ポイント4の測定データを含む正常運用パターン群111の一例を示す。正常運用パターンとして、照明A設定・パターン1、照明A設定・パターン2、照明A状態・パターン1、供給電圧A・パターン1、消費電力A・パターン1、及び空調A設定温度・パターン1の6つを例示している。
【0042】
図5に示す正常運用パターン群111は、
図4の正常運用パターン群111に、施設2の扉毎に付与された扉IDと、管理ポイント4の更新測定データNに変化があった際の扉の入退室の最新履歴とを追加している。換言すれば、正常運用パターン群111に含まれる1つの管理ポイント4の正常運用パターンは、他の1つ又は2つ以上の管理ポイント4の測定データ又は設備3の運用に関連するデータを含むことができる。照明Aの近くにある扉Aの入退室履歴を合わせて確認することで従来発見できなかった異常や異常の兆候を検出することができる場合がある。また、例えば、施設2の外の気温や湿度についての計測データ等の設備監視装置1以外の装置が取得したデータを正常運用パターン群111に含ませることもできる。
【0043】
次に、設備監視方法について、
図6を参照しながら詳説する。
図6は、データ収集部10が更新測定データNを収集した際の処理を示すフローチャートである。
【0044】
設備監視装置1は、管理ポイント4における更新測定データNを収集すると(ステップS101)、次に、更新測定データNは管理ポイント4における更新前の測定データの変化を記録した状態変化履歴110における最新の測定データと異なるかを判定する(ステップS102)。
【0045】
更新測定データNが状態変化履歴110と同じ場合には(ステップS102でNO)、設備監視装置1は、処理を終了し、新たに更新測定データNが収集されるまで待機する。一方、更新測定データNが状態変化履歴110と異なる場合には(ステップS102でYES)、設備監視装置1はステップS103に進む。
【0046】
ステップS103では、設備監視装置1は、状態変化履歴110に更新測定データNを追加して更新後の状態変化履歴110を作成する。その後、設備監視装置1は、更新後の状態変化履歴110が、正常運用パターンの集合である正常運用パターン群111に対応するかを判定する(ステップS104)。
【0047】
更新測定データNが離散値を採り、インターバル間隔、又は状態変化頻度が正常運用パターンに比べて一定割合以上逸脱した場合には、更新後の状態変化履歴110は正常運用パターン群111と対応しないと判定することができる。例えば、
図4の正常運用パターン群111の一例において、照明A状態・パターン1として、17時~18時の1時間の状態変化頻度が2回/時である正常運用パターンが記録されている。したがって、17時~18時の1時間の状態変化頻度が3回/時を超える場合には接点不良によるチャタリングが疑われるため、健全性判定部13は、更新後の状態変化履歴110が正常運用パターン群111と対応しないと判定することができる。
【0048】
また、更新測定データNが連続値を採り、数値変動割合の絶対値、又は状態変化頻度が正常運用パターンに比べて一定割合以上逸脱した場合には、更新後の状態変化履歴110は正常運用パターン群111と対応しないと判定することができる。例えば、
図4において、消費電力A・パターン1として、9時~10時の1時間の消費電力Aは、8時~9時の1時間の消費電力Aに比べて24.4%増加する正常運用パターンが記録されている。消費電力Aについて、±24.4%程度の変動は正常数値範囲内であるがこの範囲を超える場合にはメータの故障が疑われるため、健全性判定部13は、更新後の状態変化履歴110が正常運用パターン群111と対応しないと判定することができる。
【0049】
更新後の状態変化履歴110が正常運用パターン群111に対応すると判定された場合には(ステップS104でYES)、設備監視装置1は、処理を終了して新たに更新測定データNが収集されるまで待機する。一方、更新後の状態変化履歴110が正常運用パターン群111に対応しないと判定された場合には(ステップS104でNO、及びステップS105)、設備監視装置1は管理者6に警報を通知する(ステップS106)。
【0050】
警報を通知された管理者6は、管理ポイント4の状況を確認する(ステップS107)。このとき、管理者6は、管理ポイント4を直接観察するだけでなく、情報記憶部11に記憶されている状態変化履歴110、正常運用パターン群111、及び警報履歴112を確認してもよい。管理者6が管理ポイント4は異常状態であると判断した場合には(ステップS108でYES)、管理者6は異常状態が解消できるように対応する、すなわち管理ポイント4を有する設備3を修理する(ステップS111)。
【0051】
一方、管理者6が管理ポイント4は正常状態であると判断した場合には(ステップS108でNO)、管理者6はさらに、正常状態と判断した当該状態変化履歴を正常運用パターンとして正常運用パターン群111に登録するかを決定する(ステップS109)。これにより、従来よりも正常状態と判断する範囲が広がった場合に新たな正常運用パターンを追加することで健全性判定部13が健全と判定できる場合が増えるので、管理者6の負担を軽減することができる。また、管理者6は、正常状態と判断はしたが確信はない場合には、正常運用パターンとして登録するのを一旦見送ることもできる。正常運用パターンとして正常運用パターン群111に登録しない場合には(ステップS109でNO)、設備監視装置1は、処理を終了し、新たに更新測定データNが収集されるまで待機する。なお、ステップS107、ステップS108、ステップS109、及びステップS111は
管理者6が行う処理である。
図6においては、管理者6が行う処理は破線で示され、施設監視装置1が行う他の処理とは区別されている。
【0052】
正常運用パターンとして正常運用パターン群111に登録するとの指示を受け付けた場合には(ステップS109でYES)、設備監視装置1は、正常運用パターン群111の少なくとも一部を更新後の状態変化履歴110の少なくとも一部と置き換えることで新規正常運用パターン群111を作成するか、又は、正常運用パターン群111に更新後の状態変化履歴110の少なくとも一部を追加することで新規正常運用パターン群111を作成する(ステップS110)。その後、設備監視装置1は、処理を終了し、新たに更新測定データNが収集されるまで待機する。
【0053】
なお、管理者6は、人間ではなくコンピュータであってもよい。
【0054】
上述したように、本実施形態の設備監視装置1及び設備監視方法によれば、従来は検出できなかった異常又は異常の兆候を検出することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 設備監視装置、2 施設、3 設備、4 管理ポイント、5 ネットワーク、6 管理者、10 データ収集部、11 情報記憶部、110 状態変化履歴、111 正常運用パターン群、112 警報履歴、12 状態変化記録部、13 健全性判定部、14 警報管理部、15 正常運用パターン作成部、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 ハードディスクドライブ(HDD)、25 HDDコントローラ、26 マウス、27 キーボード、28 ディスプレイ、29 入出力コントローラ、30 ネットワークコントローラ、31 内部バス、N 更新測定データ。