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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】吸液体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20240112BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240112BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20240112BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240112BHJP
   C04B 35/532 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B01J20/20 A
B01J20/30
C01B32/21
C01B32/05
C04B35/532
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019139971
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020190
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 厚則
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162177(JP,A)
【文献】特開2008-218262(JP,A)
【文献】特開平08-227714(JP,A)
【文献】特開平08-180869(JP,A)
【文献】特開2005-149792(JP,A)
【文献】特開平10-012217(JP,A)
【文献】特開2002-293665(JP,A)
【文献】特開昭48-079788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20、30
C01B 32/05-156、20-23
C04B 35/52-536
C04B 38/00
F16C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス炭素、及び前記アモルファス炭素中に分散している結晶質炭素粒子を含有しており、
前記結晶質炭素粒子の含有率が、前記アモルファス炭素及び前記結晶質炭素粒子の合計質量を基準として、60~90質量%であり、
広角X線散乱法により測定した配向度が、85%超であり、かつ
JIS R 1634:1998に準拠する開気孔率が10%以上である、
吸液体。
【請求項2】
前記結晶質炭素粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、及び黒鉛粒子から成る群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の吸液体。
【請求項3】
表面が親水化されている、請求項1又は2に記載の吸液体。
【請求項4】
円柱状又は角柱状であり、かつ前記配向度が軸方向の配向度である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸液体。
【請求項5】
シート状であり、かつ前記配向度が面方向の配向度である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸液体。
【請求項6】
複数の請求項に記載の吸液体を有し、かつ
円柱状又は角柱状である複数の前記吸液体が束ねられて一体化されて構成されている、
吸液ブロック体。
【請求項7】
複数の請求項に記載の吸液体を有し、かつ
シート状である複数の前記吸液体が重ねられて一体化されて構成されている、
吸液ブロック体。
【請求項8】
前記吸液体又は前記吸液ブロック体の少なくとも一部を液体に含浸させることを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸液体又は請求項若しくはに記載の吸液ブロック体の使用方法。
【請求項9】
アモルファス炭素前駆体及び結晶質炭素粒子を混錬して、前駆体組成物を作製すること、
前記前駆体組成物を押出成形すること、及び
押出成形した前記前駆体組成物を熱処理すること
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸液体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、摺動部材及び担持体等の用途のため、油分や水分を吸収させることができる種々の吸液体が提案されている。
【0003】
特許文献1では、球状気泡を有する多孔体を含み、油分及び水分の吸液率がいずれも100重量%以上である、吸液性連続多孔体が開示されている。
【0004】
特許文献2では、アモルファス炭素又はアモルファス炭素と炭素粉末との複合体からなり、平均孔径1~100μm、気孔率10~85%であり、並びに、毛管現象により液浸透性、及び、電気導電性を有する炭素質多孔体を基材とし、該基材の表面に燃料極/電解質層/空気極の順に積層した基材が電池支持体として共有する単位セル又は該単位セルを間隔を置いて2以上連結した連結体を備え、上記基材に液体燃料を浸透させると共に、基材の外表面に形成される空気極面を空気に曝す構造を具備してなることを特徴とする燃料電池が開示されている。
【0005】
特許文献3では、無機粉末を焼成してなる吸液芯であって、該吸液芯には、無機質の骨格部と、該骨格部に囲まれて溶液が吸液芯表面に移動可能な連通孔と、を備えたことを特徴とする蒸散用多孔質セラミックス製吸液芯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-82258号公報
【文献】特許第4596814号公報
【文献】特開平7-10707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び3の吸液性連続多孔体は、吸液性に優れているものの、化学的安定性が十分ではないため、吸収させる液が制限されることがあった。
【0008】
また、特許文献2の炭素質多孔体は、安定性は良好であるものの、吸液性に関して改善の余地があった。
【0009】
そこで、良好な吸液性を有する、炭素質の吸液体を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉アモルファス炭素、及び前記アモルファス炭素中に分散している結晶質炭素粒子を含有しており、
前記結晶質炭素粒子の含有率が、前記アモルファス炭素及び前記結晶質炭素粒子の合計質量を基準として、60~90質量%であり、
広角X線散乱法により測定した配向度が、75%以上であり、かつ
JIS R 1634:1998に準拠する開気孔率が10%以上である、
吸液体。
〈態様2〉前記結晶質炭素粒子が、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、及び黒鉛粒子から成る群より選択される少なくとも一種である、態様1に記載の吸液体。
〈態様3〉表面が親水化されている、態様1又は2に記載の吸液体。
〈態様4〉最大内接球径が2mm以下である、態様1~3のいずれか一項に記載の吸液体。
〈態様5〉円柱状又は角柱状であり、かつ前記配向度が軸方向の配向度である、態様1~4のいずれか一項に記載の吸液体。
〈態様6〉シート状であり、かつ前記配向度が面方向の配向度である、態様1~4のいずれか一項に記載の吸液体。
〈態様7〉複数の態様5に記載の吸液体を有し、かつ
円柱状又は角柱状である複数の前記吸液体が束ねられて一体化されて構成されている、
吸液ブロック体。
〈態様8〉複数の態様6に記載の吸液体を有し、かつ
シート状である複数の前記吸液体が重ねられて一体化されて構成されている、
吸液ブロック体。
〈態様9〉前記吸液体又は前記吸液ブロック体の少なくとも一部を液体に含浸させることを含む、態様1~6のいずれか一項に記載の吸液体又は態様7若しくは8に記載の吸液ブロック体の使用方法。
〈態様10〉アモルファス炭素前駆体及び結晶質炭素粒子を混錬して、前駆体組成物を作製すること、
前記前駆体組成物を押出成形すること、及び
押出成形した前記前駆体組成物を熱処理すること
を含む、吸液体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な吸液性を有する、炭素質の吸液体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《吸液体》
本発明の吸液体は、
アモルファス炭素、及び前記アモルファス炭素中に分散している結晶質炭素粒子を含有しており、
前記結晶質炭素粒子の含有率が、前記アモルファス炭素及び前記結晶質炭素粒子の合計質量を基準として、60~90質量%であり、
広角X線散乱法により測定した配向度が、75%以上であり、かつ
JIS R 1634:1998に準拠する開気孔率が10%以上である。
【0013】
本発明者らは、上記の構成により、化学的に安定な吸液体を提供できることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、これは、良好に配向した結晶質炭素粒子とアモルファス炭素との間に生じる微細な空隙が液体の流路となることができることによると考えられる。
【0014】
本発明の吸液体は、表面が親水化されていることが、吸液性を良好にする観点から好ましい。ここで、親水化は、例えばセンタレス加工等の研磨加工、切削加工等により、吸液体の表層を除去することにより行うことができる。
【0015】
本発明の吸液体の最大内接球径は、0mm超であってよい。この最大内接球径は、2.0mm以下、1.5mm以下、1.2mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.6mm以下、又は0.5mm以下であることが、製造上の観点から好ましい。
【0016】
本発明の吸液体が円柱状である場合には、吸液体の底面のJIS B 0621-1984に準拠する真円度、すなわち円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさは、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1μm以上であることができ、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることができる。
【0017】
本発明の吸液体が円柱状である場合には、吸液体のJIS B 0621-1984に準拠する円筒度、すなわち円筒形体の幾何学的に正しい円筒からの狂いの大きさは、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1μm以上であることができ、また12μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることができる。
【0018】
本発明の吸液体の広角X線散乱法により測定した配向度は、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上であることができ、また100%以下、100%未満、98%以下、又は95%以下であることができる。
【0019】
本発明の吸液体のJIS R 1634:1998に準拠する開気孔率、すなわち以下の式(1)により算出した開気孔率は、10%以上、15%以上、又は20%以上であることができ、また50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、又は30%以下であることができる。
={(W-W)/(W-W)}×100 (1)
(式中、Pは開気孔率(%)、Wは乾燥質量、Wは水中質量、Wは飽水質量を意味する)
【0020】
一態様においては、本発明の吸液体は、円柱状又は角柱状であることができる。この場合、上記の配向度は、軸方向の配向度である。また、本発明の吸液体が円柱状である場合には、上記の最大内接球径は、底面の直径であってよい。本発明の吸液体が角柱状である場合には、上記の最大内接球径は、底面の内接円の直径であってよい。
【0021】
一態様においては、本発明の吸液体は、シート状であることができる。この場合、上記の配向度は、面方向の配向度である。また、この場合には、上記の最大内接球径は、吸液体における最も厚い部分の厚さであってよい。
【0022】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0023】
〈アモルファス炭素〉
アモルファス炭素は、例えば硬化性樹脂、及び溶媒を含有している前駆体組成物を炭素化させることにより得ることができる。詳細には、吸液体の製造方法に関して説明する。
【0024】
〈結晶質炭素粒子〉
結晶質炭素粒子は、アモルファス炭素中に分散している炭素粒子であってよい。
【0025】
結晶質炭素粒子としては、例えばグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、及び黒鉛粒子等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また組み合わせて使用してもよい。
【0026】
結晶質炭素粒子の形状は、特に限定されず、例えば扁平状、アレイ状、球状等の形状であってよい。
【0027】
結晶質炭素粒子の平均粒子径は、10nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であることができ、また20μm以下、18μm以下、15μm以下、13μm以下、10μm以下、又は7μm以下であることができる。ここで、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)を意味するものである。炭素粒子の平均粒子径が10nm以上であることにより、分散を容易とし、かつ増粘を抑制し、その結果、型への充填及び脱泡処理を容易にすることができる。また、結晶質炭素粒子の平均粒子径が20μm以下であることにより、結晶質炭素粒子の沈降を抑制し、その結果、分散を容易にすることができる。
【0028】
吸液体中の結晶質炭素粒子の含有率は、アモルファス炭素及び結晶質炭素粒子の合計質量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上であることができ、また90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であることができる。結晶質炭素粒子の含有率が60質量%以上であることにより、配向性を良好にし、その結果、吸液性を良好にすることができる。また、結晶質炭素粒子の含有率が90質量%以下であることにより、吸液体における液体の流路を十分に確保することができる。
【0029】
《吸液ブロック体》
本発明の吸液ブロック体は、複数の上記の吸液体を有する。
【0030】
一態様においては、上記の吸液体が円柱状又は角柱状である場合には、吸液ブロック体は、円柱状又は角柱状である吸液体が束ねられて一体化されて構成されている。
【0031】
別の態様においては、上記の吸液体がシート状である場合には、吸液ブロック体は、シート状である吸液体が重ねられて一体化されて構成されている。
【0032】
上記の吸液ブロック体によれば、吸液体自体の吸液性のみならず、吸液体間の空隙に更に吸液させることができるため、吸液性を更に高めることができる。
【0033】
〈吸液体又は吸液ブロックの使用方法〉
上記の吸液体又は吸液ブロックを使用する本発明の方法は、上記の吸液体又は吸液ブロックの少なくとも一部を液体に含浸させることを含む。
【0034】
特に上記の吸液体又は吸液ブロックの、結晶質炭素粒子の配向に垂直な端面を液体に含浸させた場合には、結晶質炭素粒子の配向に沿った吸液がもたらされるため、迅速な吸液が可能となる。
【0035】
《吸液体の製造方法》
吸液体を製造する本発明の方法は、
アモルファス炭素前駆体及び結晶質炭素粒子を混錬して、前駆体組成物を作製すること、
前記前駆体組成物を押出成形すること、及び
押出成形した前記前駆体組成物を熱処理すること
を含む。
【0036】
〈前駆体組成物の作製〉
前駆体組成物の作製は、アモルファス炭素前駆体及び結晶質炭素粒子を混錬して行う。
【0037】
アモルファス炭素前駆体としては、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、及び不飽和ポリエステル樹脂、並びにこれらの誘導体、例えば塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
結晶質炭素粒子としては、吸液体に関して挙げた結晶質炭素粒子を用いることができる。
【0039】
吸液体中の結晶質炭素粒子の含有率は、アモルファス炭素及び結晶質炭素粒子の合計質量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上であることができ、また90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であることができる。結晶質炭素粒子の含有率が60質量%以上であることにより、配向性を良好にし、その結果、吸液性を良好にすることができる。また、結晶質炭素粒子の含有率が90質量%以下であることにより、吸液体における液体の流路を十分に確保することができる。この含有率は、アモルファス炭素前駆体の残炭率、すなわち炭素化後のアモルファス炭素前駆体の、炭素化前のアモルファス炭素前駆体に対する質量比に応じ、上記で言及した吸液体中の所望の結晶性炭素粒子の含有率を満足するようにして調節することができる。なお、アモルファス炭素前駆体の残炭率は、アモルファス炭素前駆体の種類、分子量、置換基等を変更することによって変化し得る。
【0040】
前駆体組成物は、分散剤を更に含有していてもよい。分散剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0041】
前駆体組成物は、可塑剤を含有していることが、気孔率を良好にする観点から好ましい。可塑剤としては、例えばフタル酸ジイソブチル等のジカルボン酸ジエステル等を用いることができる。可塑剤の含有率は、18.0質量%以下、17.5質量%以下、又は17.0質量%以下であることが、気孔率を適切にする観点から好ましい。
【0042】
混錬は、ディスパー等の公知の攪拌手段で行うことができる。
【0043】
〈押出成形〉
押出成形は、公知の押出成形手段を用いて行うことができる。
【0044】
成形速度は、随意の速度であってよい。
【0045】
〈熱処理〉
熱処理は、例えば500℃以上、600℃以上、700℃以上、800℃以上、9000℃以上、又は1000℃以上であり、かつ2000℃以下、1900℃以下、1800℃以下、1700℃以下、又は1600℃以下の温度で行うことができる。
【実施例
【0046】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0047】
《吸液体又は吸液ブロック体の作製》
〈実施例1〉
アモルファス炭素前駆体としてのポリ塩化ビニル(PVC)(残炭率30%)41質量部、結晶質炭素粒子としての鱗片状天然黒鉛(平均粒子径8μm)41質量部、分散剤としてのステアリン酸ナトリウム1質量部、及び可塑剤としてのフタル酸ジイソブチル17質量部をヘンシェルミキサーで混合分散(混合分散時間20分、以下同様)し、加圧ニーダーとロールで混練し、押出成形後、空気雰囲気中で200℃で加熱処理をし、次いで窒素ガス雰囲気中にて1000℃で、10時間加熱処理をすることによって、直径0.56mm、長さ30mmの円柱状の実施例1の吸液体を作製した。
【0048】
なお、上記炭素軸体の直径(芯径)は、レーザー外径測定器(LS-3030、キーエンス社)で測定した(n=100)。以下の実施例、比較例においても同様である。
【0049】
〈実施例2〉
押出し成形時のダイス形状を平板矩形状にした以外は実施例1と同じ配合、同じ工程にて、厚み0.2mm幅5mm、長さ30mmのシート状の実施例2の吸液体を作製した。幅及び厚みはマイクロメーターにて測定した。
【0050】
〈実施例3〉
実施例1の吸液体を40本用意し、その端部を揃えて束ねた後に片側端部をエポキシ樹脂で固めて一体化して、実施例3の吸液ブロック体を得た。
【0051】
〈実施例4〉
押出し成形時のダイス径を細くした以外は実施例1と同じ配合、同じ工程にて、直径0.16mm、長さ30mmの円柱状の実施例4の吸液体を作製した。
【0052】
〈実施例5〉
実施例1で得られた炭素軸体をセンタレス加工によって、φ0.4mmまで細くすることにより親水化させて、実施例5の吸液体を作製した。
【0053】
〈比較例1〉
前駆体組成物の組成を表1に示すように変更し、スプリング状に成型したことを除き、実施例1と同様にして、比較例1の吸液体を作製した。なお、表1における「CPVC」は、塩素化ポリ塩化ビニル(残炭率50%)を意味している。
【0054】
〈比較例2~3〉
前駆体組成物の組成を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、比較例2~3の吸液体を作製した。
【0055】
《評価》
〈特性評価〉
広角X線散乱法により、各サンプルの軸方向又は面方向の配向度を測定した。また、JIS R 1634:1998に準拠して、各サンプルの開気孔率を算出した。
【0056】
〈吸液試験〉
作製した吸液体又は吸液ブロック体を、100℃で30min温めて、吸湿している水分を飛ばした。次いで、容器に溜めた液に沈めて静置した。液としては、「精製水」及び「合成炭化水素系ギヤオイル(動粘度66.3mm/s:40℃)」の2種類を用いた。
【0057】
所定の時間浸漬させた後に、浸漬させた吸液体又は吸液ブロック体を取り出し、表面の余分な液を手早くキムタオル等に吸い込ませてふきとった後に、質量を測定し、質量増加率を算出した。
【0058】
実施例1及び比較例3のサンプルについては、更に、サンプルを成形加工の方向に対して垂直な方向で半分に切断し、上記と同様の試験を行って、上記の質量増加率との差分を求めた。
【0059】
実施例及び比較例の各構成及び評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から、結晶質炭素粒子の含有率が、60~90質量%であり、配向度が75%以上であり、かつ開気孔率が10%以上である、実施例1~5のサンプルは、結晶質炭素粒子の含有率及び配向度が低い比較例1~2、並びに気孔率が低い比較例3のサンプルと比較して、良好な吸液性が得られたことが理解できよう。
【0062】
また、実施例1では、吸液体を半分に分割したときに吸液速度の増加が見られることから、端面が吸液に寄与していること、すなわち液が吸液体の配向方向に沿って軸方向に浸透していることが理解できよう。
【0063】
実施例の中でも、複数本の円柱状の吸液体を束ねた実施例3のサンプルは、他の実施例よりも質量増加率が多かったことから、吸液体間の領域も吸液に寄与していることが理解できよう。また、センタレス加工を施した実施例5のサンプルは、センタレス加工を施していない実施例1のサンプルよりも初期の吸液速度が大きかった。