(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】力センサ及び力検出装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/1623 20200101AFI20240112BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240112BHJP
G01L 1/20 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01L5/1623
G01L5/00 101Z
G01L1/20 Z
(21)【出願番号】P 2019142792
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 友広
(72)【発明者】
【氏名】川島 紀之
(72)【発明者】
【氏名】平木 克良
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194525(JP,A)
【文献】特開2018-69385(JP,A)
【文献】特開2013-96884(JP,A)
【文献】特開2018-200280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00 - 5/28
G01L 1/00 - 1/26
G06F 3/041- 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の上に、互いに間隙を隔てて配された複数の電極と、
前記間隙を覆うように前記複数の電極の上に配され、
前記複数の電極と接触するように前記間隙の中に充填され、印加された応力に応じて電気抵抗が変化する感圧材料を含む感圧層と、
前記間隙の少なくとも一部の上に、前記感圧層に接するように配された押圧部材と、
前記感圧層及び前記押圧部材の上に、前記押圧部材を覆うように配された保護層と
を有する、力センサ。
【請求項2】
前記押圧部材と前記保護層とは同一の材料を含む、請求項1に記載の力センサ。
【請求項3】
前記押圧部材と前記保護層とが一体に形成されている、請求項1又は2に記載の力センサ。
【請求項4】
前記保護層の厚さが前記押圧部材の高さよりも小さい、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項5】
前記押圧部材がポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項6】
前記感圧材料がシリコーンゴムを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項7】
前記押圧部材が前記感圧材料よりも高い弾性率を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項8】
前記押圧部材が前記間隙の中心上において前記感圧層と接している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項9】
前記押圧部材と前記感圧層との接触面積が、前記感圧層の上面の面積よりも小さい、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項10】
前記押圧部材と前記感圧層との接触面積が、前記押圧部材と前記保護層との接触面積よりも小さい、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項11】
前記押圧部材が前記感圧層に点接触している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項12】
前記押圧部材が半球状である、請求項11に記載の力センサ。
【請求項13】
前記押圧部材が錐状である、請求項11に記載の力センサ。
【請求項14】
前記押圧部材が前記感圧層に面接触している、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項15】
前記押圧部材が柱状である、請求項14に記載の力センサ。
【請求項16】
前記押圧部材が、前記間隙全体を覆うように配されている、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項17】
第1の主電極及び第2の主電極を有し、前記基体に設けられたトランジスタを更に有し、
前記第1の主電極及び前記第2の主電極のうちの一方が前記複数の電極のうちの1つに接続されている、
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項18】
前記複数の電極は第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含み、
前記第2の電極は前記第1の電極に対して第1の方向に配されており、
前記第3の電極は前記第1の電極に対して第2の方向に配されている、
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の力センサ。
【請求項19】
前記複数の電極の上に設けられたバンクを更に備え、
前記バンクは前記複数の電極の一部分を露出させ、
前記感圧層は前記バンクによって露出された前記複数の電極の前記一部分と接触している、
請求項1に記載の力センサ。
【請求項20】
断面視において、前記押圧部材は前記間隙の内側且つ上方の領域に設けられる、請求項1に記載の力センサ。
【請求項21】
請求項1乃至
20のいずれか1項に記載の力センサと、
前記力センサの前記複数の電極の間の電気抵抗値を検出する検出部と、
を有する、力検出装置。
【請求項22】
請求項1乃至
20のいずれか1項に記載の力センサが複数個配されたセンサアレイと、
前記複数の力センサの各々が有する前記複数の電極の間の電気抵抗値を検出する検出部と、
を有する、タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサ及び力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接触圧力及びせん断力を検出する力センサを含む力検出装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の力検出装置に用いられている力センサは、感圧材料及び3つ以上の電極を有し、感圧材料を介した各電極間の電気抵抗値から接触圧力及びせん断力を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような力センサは、接触検出、触覚情報等の種々の用途に用いられ得る。力センサをこのような種々の用途に適用する際に、更なる高感度化が要求される場合がある。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題に鑑み、検出感度が更に向上された力センサ及び力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、基体と、前記基体の上に、互いに間隙を隔てて配された複数の電極と、前記間隙を覆うように前記複数の電極の上に配され、印加された応力に応じて電気抵抗が変化する感圧材料を含む感圧層と、前記間隙の少なくとも一部の上に、前記感圧層に接するように配された押圧部材と、前記感圧層及び前記押圧部材の上に、前記押圧部材を覆うように配された保護層とを有する力センサが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出感度を更に向上させた力センサ及び力検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態による力検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態による力検出装置におけるセンサセルを含むセルアレイの回路構成を説明する平面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第1実施形態による力検出装置におけるセンサセルの平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の第1実施形態による力検出装置におけるセンサセルの電気抵抗値の大小関係と力の方向との対応関係を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態による力検出装置におけるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態による力センサ及び従来の力センサに印加された荷重に対する電気抵抗値を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第2実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の第3実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の第4実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。
【
図6D】
図6Dは、本発明の第5実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の他の変形実施形態によるセンサセルの平面図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の他の変形実施形態によるセンサセルの平面図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の他の変形実施形態によるセンサセルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による力センサ及び力検出装置について
図1から
図5を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態による力検出装置の全体構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態による力検出装置におけるセンサセルを含むセルアレイの回路構成を説明する平面図である。
図3Aは、本実施形態による力検出装置におけるセンサセルの平面図である。
図3Bは、本実施形態による力検出装置におけるセンサセルの電気抵抗値の大小関係と力の方向との対応関係を示す図である。
【0011】
本実施形態による力検出装置100は、
図1及び
図2に示すように、センサアレイ10と、ゲート線駆動回路20と、検出回路30と、電源線駆動回路40と、制御部50とを有している。
【0012】
センサアレイ10は、複数行(例えばm行)及び複数列(例えばn列)に渡って二次元状に配された複数のセンサセル60を含む。なお、m、nは、それぞれ2以上の整数である。センサアレイ10において、複数のセンサセル60は、例えば
図1及び
図2に示すような正方格子状等の矩形格子状に配されている。
【0013】
それぞれのセンサセル60は、それぞれ第1アクティブ素子及び第2アクティブ素子である2つの選択トランジスタM1,M2と、感圧材料を用いた力センサSとを含む。本実施形態による力検出装置100は、選択トランジスタM1,M2をアクティブ素子とするアクティブマトリクス駆動方式のセンサ装置である。
【0014】
力センサSは、4つの電極62A、62B、62C、62Dと、4つの電極62A、62B、62C、62D上に形成された感圧材料を含む感圧層64と後述する押圧部材66とを有する。
【0015】
電極62A、62B、62C、62Dは、互いに別個独立の第1の電極、第2の電極、第3の電極及び第4の電極を構成している。電極62A、62B、62C、62Dは、それぞれ基体上に形成されている。電極62A、62B、62C、62Dのそれぞれは、隣り合う電極と所定の間隙を隔てて配されている。2電極間の間隙の距離は特に限定されないが、例えば50μmから450μm程度とすることができる。
【0016】
感圧層64は、電極62A、62B、62C、62Dの上に各間隙を覆うように形成されている。感圧層64は、例えば、印加された応力に応じて電気抵抗値が変化する感圧材料から構成されている。
【0017】
感圧層64は、例えば、電極62A、62Bが並ぶ行方向(第1の方向)及び電極62A、62Cが並ぶ列方向(第2の方向)に沿った2組の辺を有するほぼ矩形状の平面形状を有している。なお、感圧層の平面形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状を採ることができる。また、感圧層64の各辺の長さも限定されるものではないが、例えば、100μmから1500μm程度の間とすることができる。
【0018】
電極62A、62B、62C、62Dは、感圧層64の四隅に位置するように配されている。
図2では、電極62A、62B、62C、62Dが、それぞれ感圧層64の左上隅、右上隅、左下隅及び右下隅に配されている場合を示している。
【0019】
電極62A、62B、62C、62D上に感圧層64が形成されている側の面は、接触した物体により作用する力を検出する力検出面であるセンサ面70である。センサ面70には、複数の感圧層64が露出していてもよいし、複数の感圧層64を含むセンサ面70を保護する保護層67が形成されていてもよい。
【0020】
センサアレイ10の各行には、行方向に延在して、第1アクティブ素子である選択トランジスタM1を駆動するための第1駆動信号線である複数の第1ゲート線GL1a、GL2a、…、GLmaが配されている。また、センサアレイ10の各行には、行方向に延在して、第2アクティブ素子である選択トランジスタM2を駆動するための第2駆動信号線である複数の第2ゲート線GL1b、GL2b、…、GLmbが配されている。第2ゲート線GL1b、GL2b、…、GLmbは、それぞれ第1ゲート線GL1a、GL2a、…、GLmaに対応して配されている。第1ゲート線GL1a、GL2a、…、GLma及び第2ゲート線GL1b、GL2b、…、GLmbは、ゲート線駆動回路20に接続されている。なお、以下では、第1ゲート線を「第1ゲート線GLia」と適宜表記し、第2ゲート線を「第2ゲート線GLib」と適宜表記する。ただし、iは1≦i≦mを満たす整数である。
【0021】
センサアレイ10の各列には、列方向に延在して、出力信号線であるデータ線DL1,DL2,…、DLnが配されている。データ線DL1,DL2,…、DLnは、それぞれ検出回路30に含まれる抵抗Rの一端に接続されている。抵抗Rの他端は、接地電圧VSの接地電圧線に接続されている。データ線DL1,DL2,…、DLnと抵抗Rの一端との間の接続ノードには、検出回路30に含まれるA/Dコンバータ68の入力端子側が接続されている。なお、データ線DL1,DL2,…、DLnをA/Dコンバータに接続する構成は、
図2に示す構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。例えば、データ線DL1,DL2,…、DLnを、マルチプレクサを介して単一のA/Dコンバータの入力に接続する構成を採用することができる。以下では、データ線を「データ線DLj」と適宜表記する。ただし、jは1≦j≦nを満たす整数である。
【0022】
また、センサアレイ10の各列には、列方向に延在して、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaが配されている。また、センサアレイ10の各列には、列方向に延在して、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaに対応して、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbが配されている。第1電源線VL1a、VL2a、…、VLna及び第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbは、電源線駆動回路40に接続されている。なお、以下では、第1電源線を「第1電源線VLja」と適宜表記し、第2電源線を「第2電源線VLjb」と適宜表記する。ただし、jは1≦j≦nを満たす整数である。
【0023】
第i行、第j列に位置するセンサセル60における力センサSの電極62A、62B、62C、62D、選択トランジスタM1、M2は、それぞれ次のように接続されている。
【0024】
すなわち、選択トランジスタM1のゲート電極は、対応する第i行の第1ゲート線GLiaに接続されている。選択トランジスタM1のソース電極は、対応する第j列のデータ線DLjに接続されている。選択トランジスタM1のドレイン電極は、電極62Aに接続されている。
【0025】
また、選択トランジスタM2のゲート電極は、対応する第i行の第2ゲート線GLibに接続されている。選択トランジスタM2のソース電極は、対応する第j列のデータ線DLjに接続されている。選択トランジスタM2のドレイン電極は、電極62Dに接続されている。
【0026】
また、電極62Cは、対応する第j列の第1電源線VLjaに接続されている。電極62Bは、対応する第j列の第2電源線VLjbに接続されている。
【0027】
ゲート線駆動回路20は、デコーダ又はシフトレジスタを含んで構成される。ゲート線駆動回路20は、第1ゲート線GLiaに駆動信号Piaを供給する。また、ゲート線駆動回路20は、第2ゲート線GLibに駆動信号Pibを供給する。駆動信号Piaは、第1ゲート線GLiaに接続された選択トランジスタM1の駆動信号である。また、駆動信号Pibは、第2ゲート線GLibに接続された選択トランジスタM2の駆動信号である。このように、ゲート線駆動回路20は、選択トランジスタM1、M2を駆動する駆動回路である。例えば、選択トランジスタM1、M2がN型トランジスタの場合、駆動信号Pia、Pibがハイレベルのとき、対応する第i行の選択トランジスタM1、M2はオン状態になる。また、駆動信号Pia、Pibがローレベルのとき、対応する第i行の選択トランジスタM1、M2がオフ状態になる。
【0028】
検出回路30は、データ線DLjの電圧を計測することにより力センサSにおける電極間の電気抵抗値を検出するための検出部として機能する回路である。検出回路30は、上述のような抵抗R、A/Dコンバータ68等を含む。A/Dコンバータ68の入力ノードの電圧は、抵抗Rの既知の電気抵抗値と力センサSにおける電極間の電気抵抗値との比に応じて変化する。したがって、検出回路30は、A/Dコンバータ68から出力された電圧信号から力センサSにおける電極間の電気抵抗値を算出することができる。また、電気抵抗値が変化した電極の組み合わせに基づいて力の方向を判別することもできる。このようにして、検出回路30により検出された力センサSにおける電極間の電気抵抗値に基づき、力センサSにより検出される力の方向及び大きさを求めることが可能となる。
【0029】
電源線駆動回路40は、第1電源線VLjaに電源電圧VDを供給すること又は第1電源線VLjaに電源電圧VDを供給せずハイインピーダンスにすることができる。以下では、第1電源線VLjaに電源電圧VDを供給することを「第1電源線VLjaをオン状態にする」、第1電源線VLjaをハイインピーダンスにすることを「第1電源線VLjaをオフ状態にする」等と呼ぶことがある。また、電源線駆動回路40は、第2電源線VLjbに電源電圧VDを供給して第2電源線VLjbをオン状態にすること、又は、第2電源線VLjbをハイインピーダンスにしてオフ状態にすることができる。
【0030】
制御部50は、ゲート線駆動回路20、検出回路30及び電源線駆動回路40に接続されている。制御部50は、種々の演算、制御、判別等の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)を有している。また、制御部50は、CPUによって実行される様々なプログラム、CPUが参照するデータベース等を格納する記憶装置、例えばROM(Read Only Memory)を有している。また、制御部50は、CPUが処理中のデータ、入力データ等を一時的に格納する記憶装置、例えばRAM(Random Access Memory)を有している。なお、制御部50は、力検出装置100に一体的に内蔵されたものであってもよいし、別個独立のコンピュータ装置によりその機能が実現されるものであってもよい。
【0031】
制御部50は、CPUがプログラムを実行することにより、不図示の制御回路等を介してゲート線駆動回路20、検出回路30及び電源線駆動回路40の動作やそのタイミングを制御する。また、制御部50は、CPUがプログラムを実行することにより、検出回路30により検出された力センサSの電気抵抗値の出力に基づき、力検出装置100のセンサ面に加わる力の方向及び大きさを求める処理部として機能する。
【0032】
力検出装置100のセンサ面70に物体が接触すると、センサ面70に平行な力が作用する場合がある。「センサ面70に平行な力」には、センサ面70に平行な成分を含むような力、ずなわち、センサ面に対して傾斜した方向に作用する力も含まれる。具体的には、センサ面70に対して作用し得るセンサ面70に平行な力には、例えば、せん断力、摩擦力等が含まれる。
【0033】
このようにセンサ面70に平行な力が作用する場合、共通の感圧層64に接触する複数の電極62A、62B、62C、62Dを有する力センサSにおいて、センサ面70に平行な力の方向によって感圧層64に作用する圧力に分布が生じうる。このため、複数の電極62A、62B、62C、62Dの間の電気抵抗値には、相対的な大小関係が生じうる。力センサSにおける電気抵抗値の大小関係は、センサ面70に平行な力の方向と対応付けることができる。更に、電極62A、62B、62C、62Dの間の電気抵抗値に基づき、センサ面70に平行な力の大きさを求めることができる。
【0034】
図3Aに示すように、力センサSでは、電極62Aと電極62Bとの間の電気抵抗値R
AB、電極62Aと電極62Cとの間の電気抵抗値R
AC、電極62Bと電極62Dとの間の電気抵抗値R
BD及び電極62Cと電極62Dとの間の電気抵抗値R
CDが規定される。これらの電気抵抗値R
AB、R
AC、R
BD、R
CDの値には、センサ面70に平行な力の方向によって相対的な大小関係が生じる。
【0035】
図3Aに示す力センサSの紙面に平行なセンサ面70に対して、センサ面に平行な力が作用した場合、電気抵抗値R
AB、R
AC、R
BD、R
CDの相対的な大小関係は、
図3Bに示すとおりになる。なお、記号「~」は、記号を挟んだ両側の電気抵抗値はほぼ等しいことを示している。
【0036】
すなわち、センサ面70に対して紙面の上から下に垂直に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RCD<RAC~RBD<RABとなる。
【0037】
また、センサ面70に対して紙面の下から上に垂直に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAB<RAC~RBD<RCDとなる。
【0038】
また、センサ面70に対して紙面の左から右に平行に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RBD<RAB~RCD<RACとなる。
【0039】
また、センサ面70に対して紙面の右から左に平行に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAC<RAB~RCD<RBDとなる。
【0040】
また、センサ面70に対して紙面の左上から右下に斜め45°に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAB~RAC<RBD~RCDとなる。
【0041】
また、センサ面70に対して紙面の右下から左上に斜め45°に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAB~RAC<RBD~RCDとなる。
【0042】
また、センサ面70に対して紙面の右上から左下に斜め45°に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAC~RCD<RAB~RBDとなる。
【0043】
また、センサ面70に対して紙面の左下から右上に斜め45°に向かう力が作用した場合、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係は、RAB~RBD<RAC~RCDとなる。
【0044】
このように、各力センサSにおける電極62A、62B、62C、62Dの間の電気抵抗値に基づき、センサ面70に平行な力の方向を求めることができ、更にはセンサ面70に平行な力の大きさも求めることができる。なお、電極間の電気抵抗値の相対的な大小関係は、感圧層64を構成する感圧材料、感圧層64の構造、形状等によって異なる。そのため、予め実験又はシミュレーションにより電極間の電気抵抗値の相対的な大小関係を取得しておくことで、感圧層64の設計による差を補償することができる。
【0045】
本実施形態による力検出装置100は、次のようにして電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDを取得してこれらの相対的な大小関係を取得することができる。以下、本実施形態による力検出装置100の動作シーケンスについて説明する。
【0046】
本実施形態による力検出装置100のセンサ面70に対しては、物体が接触して、センサ面70に平行な力が作用している。
【0047】
まず、ゲート線駆動回路20から駆動信号Piaを第i行の第1ゲート線GLiaに供給して、第i行の第1ゲート線GLiaをオン状態とする。これにより、第i行の第1ゲート線GLiaに接続された選択トランジスタM1を、行単位でオン状態とする。一方、他の第1ゲート線及び第2ゲート線は、駆動信号が供給されていないオフ状態とする。
【0048】
上述のように第i行の第1ゲート線GLiaをオン状態とするとともに、電源線駆動回路40により、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaに電源電圧VDを供給して、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオン状態とする。一方、電源線駆動回路40により、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをハイインピーダンスとして、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオフ状態とする。
【0049】
上述のようにして、第i行の第1ゲート線GLiaをオン状態、他の第1ゲート線及び第2ゲート線をオフ状態、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオン状態、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオフ状態とする。これにより、データ線DL1、DL2、……、DLnには、それぞれ第i行の対応するセンサセル60における力センサSの電極62Aと電極62Cとの間の電気抵抗値RACに応じた電圧が出力される。検出回路30は、データ線DL1、DL2、……、DLnに出力された電気抵抗値RACに応じた電圧を検出する。こうして、検出部として機能する検出回路30は、第i行の各センサセル60について、電気抵抗値RACを検出することができる。
【0050】
次いで、第i行の第1ゲート線GLiaのオン状態、他の第1ゲート線及び第2ゲート線のオフ状態を維持しつつ、第1電源線及び第2電源線のオンオフ状態を切り替える。すなわち、電源線駆動回路40により、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをハイインピーダンスとして、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオフ状態とする。一方、電源線駆動回路40により、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbに電源電圧VDを供給して、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオン状態とする。
【0051】
上述のようにして、第i行の第1ゲート線GLiaをオン状態、他の第1ゲート線及び第2ゲート線をオフ状態、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオフ状態、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオン状態とする。これにより、データ線DL1、DL2、……、DLnには、それぞれ第i行に対応するセンサセル60における力センサSの電極62Aと電極62Bとの間の電気抵抗値RABに応じた電圧が出力される。検出回路30は、データ線DL1、DL2、……、DLnに出力された電気抵抗値RABに応じた電圧を検出する。こうして、検出部として機能する検出回路30は、第i行の各センサセル60について、電気抵抗値RABを検出することができる。
【0052】
次いで、ゲート線駆動回路20から駆動信号Pibを第i行の第2ゲート線GLibに供給して、第i行の第2ゲート線GLibをオン状態にする。これにより、第i行の第2ゲート線GLibに接続された選択トランジスタM2を、行単位でオン状態とする。一方、他の第2ゲート線及び第1ゲート線は、駆動信号が供給されていないオフ状態とする。
【0053】
上述のように第i行の第2ゲート線GLibをオン状態とするとともに、電源線駆動回路40により、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaに電源電圧VDを供給して、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオン状態とする。一方、電源線駆動回路40により、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをハイインピーダンスとして、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオフ状態とする。
【0054】
上述のようにして、第i行の第2ゲート線GLibをオン状態、他の第2ゲート線及び第1ゲート線をオフ状態、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオン状態、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオフ状態とする。これにより、データ線DL1、DL2、……、DLnには、それぞれ第i行の対応するセンサセル60における力センサSの電極62Cと電極62Dとの間の電気抵抗値RCDに応じた電圧が出力される。検出回路30は、データ線DL1、DL2、……、DLnに出力された電気抵抗値RCDに応じた電圧を検出する。こうして、検出部として機能する検出回路30は、第i行の各センサセル60について、電気抵抗値RCDを検出することができる。
【0055】
次いで、第i行の第2ゲート線GLibのオン状態、他の第2ゲート線及び第1ゲート線のオフ状態を維持しつつ、第1電源線及び第2電源線のオンオフ状態を切り替える。すなわち、電源線駆動回路40により、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをハイインピーダンスとして、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオフ状態とする。一方、電源線駆動回路40により、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbに電源電圧VDを供給して、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオン状態とする。
【0056】
上述のようにして、第i行の第2ゲート線GLibをオン状態、他の第2ゲート線及び第1ゲート線をオフ状態、第1電源線VL1a、VL2a、…、VLnaをオフ状態、第2電源線VL1b、VL2b、…、VLnbをオン状態とする。これにより、データ線DL1、DL2、……、DLnには、それぞれ第i行の対応するセンサセル60における力センサSの電極62Bと電極62Dとの間の電気抵抗値RBDに応じた電圧が出力される。検出回路30は、データ線DL1、DL2、……、DLnに出力された電気抵抗値RBDに応じた電圧を検出する。こうして、検出部として機能する検出回路30は、第i行の各センサセル60について、電気抵抗値RBDを検出することができる。
【0057】
上述した動作を第1行から第m行について順次行うことにより、センサアレイ10における各センサセル60について、検出部として機能する検出回路30が、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDを個別に検出して取得する。制御部50は、各センサセル60について、取得された電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDに基づき、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の方向及び大きさを求める。すなわち、制御部50は、各センサセル60について、取得された電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係に基づき、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の方向を求める。また、制御部50は、各センサセル60について、取得された電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDに基づき、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の大きさを求める。
【0058】
制御部50は、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDの相対的な大小関係と、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の方向との関係に関するデータベースを記憶装置に保持している。制御部50は、このようなデータベースを参照して、各センサセル60について、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の方向を求めることができる。
【0059】
また、制御部50は、電気抵抗値RAB、RAC、RBD、RCDと、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の大きさとの関係に関するデータベースを記憶装置に保持している。制御部50は、このようなデータベースを参照して、各センサセル60について、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の大きさをも求めることができる。
【0060】
更に、制御部50は、近傍の複数のセンサセル60について、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の方向及び大きさの検出結果を用いて統計的な処理を行うこともできる。例えば、制御部50は、2×2、3×3等の複数のセンサセル60について、センサ面70に平行な力の方向及び大きさの検出結果を平均化することができる。これにより、センサ面70に対して作用するセンサ面70に平行な力の検出結果における誤差を低減することができる。
【0061】
次に、
図4を参照して本実施形態による力検出装置におけるセンサセル60の断面の構造を説明する。
図4は、
図3Aにおけるセンサセル60のA-A区間に沿った断面の構造を示す概略図である。
【0062】
図4に示す断面において、センサセル60は、基体81と、遮光膜83と、バッファ層85と、選択トランジスタM2と、中間層87と、平坦化層89と、力センサSと、バンク69と、保護層67とを含む。遮光膜83は、基体81の上の一部に配される。バッファ層85は、遮光膜83の上を含む基体81の上に配される。基体81は、基板状部材のほか、シート状部材、フィルム状部材をも含むものであり、その材料としてはあらゆる材料を採用することができる。また、基体81は、フレキシブルなものであってもよいし、硬質なものであってもよい。基体81の材料として、例えば、樹脂、ガラス等を用いることができる。遮光膜83は、光を透過しない材料を含む。光を透過しない材料の例としては、例えば、遷移金属、ケイ素等が挙げられる。バッファ層85は絶縁性の材料を含む。絶縁性の材料の例としては、例えば、酸化物、窒化物等が挙げられる。
【0063】
選択トランジスタM2は、基体81の上に、遮光膜83及びバッファ層85を介して配される。選択トランジスタM2は、例えば、薄膜トランジスタからなり、活性層91と、ゲート絶縁層93と、ゲート電極95と、第1の主電極97と、第2の主電極99とを有する。活性層91は、例えば、ケイ素等の半導体材料を含み、バッファ層85の上に配される。ゲート絶縁層93は、例えば、酸化物、窒化物等の絶縁性材料を含み、活性層91の上に配される。ゲート電極95は、選択トランジスタM2の制御電極として機能する。ゲート電極95は、例えばアルミニウム、銅等の導電性材料を含み、活性層91の上方に、ゲート絶縁層93を介して配される。
【0064】
中間層87は、ゲート電極95及びゲート絶縁層93の上に配される。中間層87は、選択トランジスタM2等の中間層87よりも下方の部材の保護及び絶縁性の確保の機能を有する。中間層87は、例えば酸化物、窒化物等の絶縁性の材料を含む。
【0065】
第1の主電極97は、選択トランジスタM2のソース電極又はドレイン電極のうちの一方であり、第2の主電極99は、選択トランジスタM2のソース電極又はドレイン電極のうちの他方である。第1の主電極97及び第2の主電極99は、例えば、アルミニウム、銅等の導電性材料を含む。第1の主電極97及び第2の主電極99の各々は、中間層87の上からコンタクトホールを介して活性層91の一部に延在するとともに、活性層91と導通するように配される。第1の主電極97及び第2の主電極99の上には、平坦化層89が配される。平坦化層89は、例えば、酸化物、窒化物等の絶縁性の材料を含み、選択トランジスタM2の上層の表面を平坦化する。
【0066】
力センサSは、平坦化層89の上に配される。
図4に示す断面においては、力センサSは、電極62C、62Dと、感圧層64と、押圧部材66とを有する。
【0067】
電極62C、62Dは、互いに所定の距離の間隙を隔てて平坦化層89の上に配される。電極62Dは、平坦化層89を貫通するコンタクトホールを介して第2の主電極99と接続されている。電極62C、62Dは、例えば、チタン、アルミニウム等の導電性材料を含む。電極62C、62Dの上には、感圧層64が配される領域を画定するバンク69が配される。バンク69は、例えば酸化物、窒化物等の絶縁性材料を含む。なお、電極62Dは、第2の主電極99に代えて第1の主電極97と接続されていてもよい。
【0068】
感圧層64は、電極62C、62Dの間隙上、かつバンク69によって画定された領域に配される。感圧層64は、印加される圧力の変化に応じて電気抵抗値が変化する感圧材料を含む。具体的には、感圧層64を構成する感圧材料として、シリコーンゴム等の絶縁性樹脂と、絶縁性樹脂内に分散されたニッケル、酸化チタン、酸化スズ等の導電性フィラーとを含む感圧導電性材料が例示される。このような感圧導電性材料では、印加される力の大きさに応じて導電性フィラー間の接点数が変化し、接点数に応じて電気抵抗値が変化する。
【0069】
本実施形態においては、押圧部材66は、柱状をなしている。押圧部材66は、感圧層64の上に感圧層64の一部分と接するように配される。また、押圧部材66と感圧層64との接触面積は、感圧層64の上面の面積よりも小さい。また、押圧部材66と感圧層64は、電極62C、62Dの間隙の少なくとも一部の上において互いに接するように配されている。
【0070】
このように押圧部材66を配することにより、物体の接触により力センサSに力が印加されたときに、押圧部材66の下方に位置する部分の感圧層64に応力を集中させることができる。押圧部材66は、電極62C、62Dの間隙の少なくとも一部の上において感圧層64と接しているため、電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64に応力が集中する。このような応力の集中により、相対的に小さな力の印加に対しても、電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64の電気抵抗値の変化量が大きい。また、間隙の近傍に配された部分の感圧層64は、力センサSの検出感度に大きく寄与する。したがって、本実施形態による押圧部材66は、力センサSの検出感度を向上させることができる。
【0071】
押圧部材66と感圧層64は、電極62C、62Dの間隙の中心上において接していることがより好ましい。これにより、更に感圧層64に応力を集中させることができ、力センサSの検出感度を更に向上させることができる。
【0072】
押圧部材66は、感圧層64の感圧材料よりも高い弾性率を有することがより好ましい。これにより、押圧部材66の変形を少なくし、感圧層64の変形を大きくすることができるため、更に感圧層64に応力を集中させることができ、力センサSの検出感度を更に向上させることができる。押圧部材66は、例えばポリエチレンテレフタレートを含む材料から構成することができる。ポリエチレンテレフタレートは、シリコーンゴム等を主成分とする感圧導電性材料に比べて高い弾性率を有するため、上述の弾性率の関係が実現される。
【0073】
力センサSの感圧層64及び押圧部材66の上には、押圧部材66と接するように保護層67が配される。保護層67は、センサセル60の表面全体を保護するための層である。物体が保護層67に接触すると、物体の接触によって生じた力が、押圧部材66を介して間隙の近傍に配された感圧層64に印加される。このように、保護層67は、センサセル60の保護の機能に加えて、物体の接触によって生じた力を伝達する機能を有している。
【0074】
保護層67は、押圧部材66と同一の材料から構成することもでき、また別の材料から構成することもできる。しかしながら、保護層67は、押圧部材66と同程度又は押圧部材66よりも大きい弾性率を有することが好ましい。また、保護層67の厚さは、押圧部材66の高さよりも小さいことが好ましい。これらの構成によれば、物体の接触によって生じた力が保護層67で分散又は吸収されて力センサの検出感度が低下することを避けることができる。
【0075】
本実施形態による力センサSを用いた実験結果を
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態による力センサS及び本実施形態の力センサから押圧部材66を省略した比較例による力センサに対して様々な荷重を印加したときの電気抵抗値の変化を示すグラフである。
図5において、実線で接続されているデータは本実施形態による力センサSの電気抵抗値を示しており、破線で接続されているデータは比較例による力センサの電気抵抗値を示している。グラフが示す実験結果によれば、本実施形態による力センサSにおいては、印加された力に対する電気抵抗値の変化率(電気抵抗値の傾き)が比較例による力センサと比較して大きいことが理解される。これは、比較例による力センサでは印加された力が感圧層全体に分散されるのに対し、本実施形態による力センサSでは、押圧部材66によって、印加された力が電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64に集中するためである。このように、本実施形態によれば、
図5に示すように、印加された力に対する電気抵抗値の変化率が大きくなるため、検出感度が更に向上された力センサ及び力検出装置が提供される。
【0076】
[第2実施形態]
図6Aは、本発明の第2実施形態によるセンサセル60の断面の構造を示す概略図である。本実施形態において、押圧部材66は、凸部66Aと保護部66Bを含む。すなわち、本実施形態の押圧部材66は、第1実施形態の保護層67の機能を兼ね備えている。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
凸部66Aは、保護部66Bと同一の材料を含む。また、凸部66Aと保護部66Bとは、一体に形成されることにより押圧部材66を構成している。凸部66A及び保護部66Bの材料は、感圧層64の感圧材料よりも高い弾性率を有することが好ましい。凸部66A及び保護部66Bは、例えばポリエチレンテレフタレートを含む材料から構成することができる。
【0078】
凸部66Aは、感圧層64の上に感圧層64の一部分と接するように配される。また、凸部66Aと感圧層64との接触面積は、感圧層64の上面の面積よりも小さい。また、凸部66Aと感圧層64は、電極62C、62Dの間隙の少なくとも一部の上において互いに接するように配されている。凸部66Aと感圧層64は、電極62C、62Dの間隙の中心上において互いに接していることがより好ましい。これらの構成により、第1実施形態と同様に感圧層64に応力を集中させることができ、力センサSの検出感度を向上させることができる。
【0079】
保護部66Bは、センサセル60の表面全体を保護する。物体が保護部66Bに接触すると、物体の接触によって生じた力が、凸部66Aを介して間隙の近傍に配された感圧層64の近傍に印加される。保護部66Bの厚さは凸部66Aの高さよりも小さいことが好ましい。これにより、第1実施形態と同様に物体の接触によって生じた力が保護層67で分散又は吸収されて力センサの検出感度が低下することを避けることができる。
【0080】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、凸部66Aと保護部66Bとを一体に形成して押圧部材66を構成することで、製造工程を削減することができる。また、本実施形態の構成では、1つの押圧部材66に複数の凸部66Aを配列することができる。これにより、第1実施形態のように、押圧部材66と間隙とを一対一でアラインメントする構成と比べて、本実施形態では、凸部66Aと間隙とのアラインメントを一括で行うことができる。したがって、アラインメント工程を簡略化することができる。
【0081】
[第3実施形態]
図6Bは、本発明の第3実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。本実施形態において、力センサSは押圧部材66Cを有する。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
第1実施形態に係る力センサSが有する押圧部材66は、柱状をなしている。すなわち、
図4に示す断面における形状が矩形である。しかしながら、本発明による押圧部材の形状はこれに限定されない。例えば、
図6Bに示すように、本実施形態による押圧部材66Cは、実質的に柱状をなしている。しかしながら、本実施形態では、押圧部材66Cと感圧層64との接触面積が押圧部材66Cと保護層67との接触面積よりも小さい。押圧部材66Cと感圧層64との接触が面接触である場合、接触面積が小さいほど応力を集中させる効果が大きい。そのため、このような形状の押圧部材66Cを用いることにより、押圧部材66Cの下方かつ電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64に、印加された力を効率的に集中させることができる。したがって、本実施形態によれば、力センサSの更なる高感度化が実現可能となる。
【0083】
[第4実施形態]
図6Cは、本発明の第4実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。本実施形態において、力センサSは押圧部材66Dを有する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
図6Cに示すように、本実施形態による押圧部材66Dは、半球状をなしている。また、押圧部材66Dと感圧層64との接触面積が押圧部材66Dと保護層67との接触面積よりも小さい。押圧部材66Dは、少なくとも力が印加されていない状態において感圧層64と点接触している。本実施形態によれば、このような形状の押圧部材66Dを用いることにより、押圧部材66Dの下方かつ電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64に、印加された力をより効率的に集中させることができる。したがって、本実施形態によれば、力センサSの更なる高感度化が実現可能となる。
【0085】
[第5実施形態]
図6Dは、本発明の第5実施形態によるセンサセルの断面の構造を示す概略図である。本実施形態において、力センサSは押圧部材66Eを有する。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0086】
図6Dに示すように、本実施形態による押圧部材66Eは、錐状をなしている。また、押圧部材66Eと感圧層64との接触面積が押圧部材66Eと保護層67との接触面積よりも小さい。押圧部材66Dは、一定の力が印加されたときであっても感圧層64との点接触を維持する。本実施形態によれば、このような形状の押圧部材66Eを用いることにより、押圧部材66Dの下方かつ電極62C、62Dの間隙の近傍に配された感圧層64に、印加された力をより効率的に集中させることができる。したがって、本実施形態によれば、力センサSの更なる高感度化が実現可能となる。
【0087】
[その他の変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限らず、更に種々の変形が可能である。
【0088】
上述の実施形態では、力センサSが備えている電極の個数は4である。しかしながら、電極の個数はこれに限定されるものではなく、2つ以上であればよい。例えば、
図7Aから
図7Cに示すように、力センサSが備えている電極数が2、6又は8であってもよい。
【0089】
図7Aに示されているセンサセル60は、2つの電極62E、62Fを有する。電極62E、62Fは、所定の間隙を隔てて配されている。感圧層64は、電極62E、62Fの上に間隙を覆うように配されている。なお、
図7Aの変形実施形態においては、押圧部材66は、2つの電極の間隙全体を覆うように配されている。
【0090】
図7Bに示されているセンサセル60は、6つの電極62G、62H、62I、62J、62K、62Lを有する。6つの電極62G、62H、62I、62J、62K、62Lのそれぞれは、隣り合う電極と所定の間隙を隔てて配されている。感圧層64は、電極62G、62H、62I、62J、62K、62Lの上に各間隙を覆うように形成されている。なお、
図7Bの変形実施形態においては、押圧部材66は、6つの電極の各間隙の一部を覆うように配されている。
【0091】
図7Cに示されているセンサセル60は、8つの電極62M、62N、62O、62P、62Q、62R、62S、62Tを有する。8つの電極62M、62N、62O、62P、62Q、62R、62S、62Tのそれぞれは、隣り合う電極と所定の間隙を隔てて配されている。感圧層64は、8つの電極62M、62N、62O、62P、62Q、62R、62S、62Tの上に各間隙を覆うように形成されている。なお、
図7Cの変形実施形態においては、押圧部材66は、8つの電極の各間隙の一部を覆うように配されている。
【0092】
また、センサセル60の形状は矩形に限られるものではなく、例えば、
図7B及び
図7Cに示すように、六角形又は円形であってもよい。
【0093】
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、第3実施形態から第5実施形態において、第2実施形態のように、押圧部材と保護層とを同じ材料を用いて一体に形成することも可能である。
【0094】
上述したような力センサ及び力検出装置は、人間を模したロボットの指先等における触覚情報等を検出する触覚検出装置に適用することができる。本変形実施形態によれば、上述の実施形態による検出感度が向上された力センサを用いることにより、高精度に触覚情報を取得することができる触覚検出装置が提供される。
【0095】
また、上述したような力センサ及び力検出装置は、タッチパネルにおけるパネル上への接触の検出に適用することもできる。具体的には、上述の力センサ本変形実施形態によれば、上述の実施形態による検出感度が向上された力センサを用いることにより、高精度に接触を検出することができるタッチパネルが提供される。
【符号の説明】
【0096】
60…センサセル
62A―62T…電極
64…感圧層
66…押圧部材
67…保護層
70…センサ面
100…力検出装置
S…力センサ
M1、M2…選択トランジスタ