(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】内歯車とハウジングとの分離構造体、遊星歯車装置、及びアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20240112BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20240112BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20240112BHJP
F16H 57/028 20120101ALI20240112BHJP
F16H 57/032 20120101ALI20240112BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H1/46
F16H55/06
F16H57/028
F16H57/032
(21)【出願番号】P 2019217592
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019143338
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】河田 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓也
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-228737(JP,A)
【文献】特開平06-101718(JP,A)
【文献】実開昭58-070549(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F16H 1/46
F16H 55/06
F16H 57/028
F16H 57/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第1凸部が外周面に形成された内歯車と、
前記軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングと、を備え、
前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される、
内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項2】
前記第1凸部と前記第2凸部のうち、一方の凸部は間隔をあけて対で形成されており、他方の凸部は対で形成された前記一方の凸部の間に差し込まれるように配置され、
線接触する前記一方の凸部における接触箇所と前記他方の凸部における接触箇所のうち、少なくとも一方は曲面で形成されている、
請求項1に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項3】
前記一方の凸部は、前記第2凸部であり、
前記他方の凸部は、前記第1凸部であり、
前記第1凸部は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、平面状に形成された斜面で前記第2凸部と接触する、
請求項2に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項4】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所のうち、一方は凸状の曲面であり他方は平面である、
請求項1に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項5】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所とは、凸状の曲面である、
請求項1に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項6】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所のうち、一方は凸状の曲面であり他方は凹状の曲面である、
請求項1に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項7】
前記第1凸部と前記第2凸部とは前記軸線方向に沿って線接触し、
前記第1凸部が前記第2凸部と線接触する範囲は、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短い、
請求項1~6のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項8】
前記第1凸部が前記内歯車に延在する長さは、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短い、
請求項1~6のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項9】
前記第1凸部は、前記内歯車の一端のみから延在している、
請求項8に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項10】
前記第1凸部は、前記内歯車の両端から延在しており、
両端から延在した前記第1凸部の合計の長さは、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短い、
請求項8に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項11】
前記内歯車には、複数の前記第1凸部が、互いの間隔をあけて前記軸線方向に沿って設けられている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項12】
前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが前記軸線方向と直交する方向で線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項13】
前記第1凸部及び前記第2凸部のうちの一方は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、前記軸線方向における位置により三角形状の断面の大きさが異なり、最大の断面を有する位置で他方と接触する、
請求項12に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項14】
第1凸部が外周面に形成された内歯車と、
第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングと、を備え、
前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが点接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される、
内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項15】
前記第1凸部は、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在するように内歯車の外周面に形成されており、前記第2凸部は、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在するようにハウジングの内周面に形成されている、
請求項14に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項16】
前記第1凸部と前記第2凸部とが接触する箇所には、前記第1凸部または前記第2凸部に突起が形成されており、前記突起を介して前記第1凸部と前記第2凸部が点接触する、
請求項15に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項17】
前記突起は、前記軸線方向に沿って複数形成されている、
請求項16に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項18】
前記第1凸部は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、平面状に形成された斜面に前記突起が形成されている、
請求項16または17に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項19】
前記内歯車と前記ハウジングとは合成樹脂製であり、
前記内歯車は、前記ハウジングを形成する合成樹脂よりも低硬度の合成樹脂から形成されている、
請求項1~18のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体と、
前記内歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、
前記1又は複数の遊星歯車の中央に位置し、前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、
前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持ずるキャリアと、を備える、
遊星歯車装置。
【請求項21】
前記キャリアの回転に伴い、前記キャリアの回転と同じように回転する第2の太陽歯車と、
前記第2の太陽歯車の周囲に配され、前記第2の太陽歯車と噛み合う1又は複数の第2の遊星歯車と、
前記1又は複数の第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアと、
前記1又は複数の第2の遊星歯車と噛み合う内歯が内周面に形成された第2のハウジングと、をさらに備え、
前記ハウジングと前記第2のハウジングとは一体で成形されている、
請求項20に記載の遊星歯車装置。
【請求項22】
太陽歯車と、
前記太陽歯車の周囲に配され、前記太陽歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、
前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持するキャリアと、を有する遊星歯車機構を少なくとも2段備える遊星歯車装置であって、
少なくとも2段の前記遊星歯車機構のうちの、最も高速で動作する遊星歯車機構は、請求項1~19のいずれか1項に記載の内歯車とハウジングとの分離構造体を備え、前記遊星歯車機構の前記1又は複数の遊星歯車と前記内歯車とが噛み合っており、
少なくとも2段の前記遊星歯車機構のうちの、最も低速で動作する遊星歯車機構は、前記遊星歯車機構が有する前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う内歯が内周面に形成されたハウジングを備える、
遊星歯車装置。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか1項に記載の遊星歯車装置と、
前記遊星歯車装置に接続され前記遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える、
アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯車とハウジングとの分離構造体、当該分離構造体を備えた遊星歯車装置、及び当該遊星歯車装置を備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、自動車、ロボットなどの様々な技術に用いられている。遊星歯車装置は複数の歯車が組み合わされて構成されているために、作動時に騒音及び振動が発生する。このような遊星歯車装置の作動時の騒音及び振動の発生を抑制するための技術が提案されている。
【0003】
このような技術を提案するものとして、特許文献1は、内歯車とハウジングとを分離した構造とし、両者の間に隙間を設けた遊星歯車装置を開示している。内歯車とハウジングとを分離した構造とすることで、内歯車からハウジングに振動が伝達しにくくなり、振動に起因する騒音が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遊星歯車装置では、内歯車の外周面とハウジングの内周面とが、互いに嵌まり合う形状に形成されている。そのため、遊星歯車装置の作動中に内歯車が移動すると、内歯車の外周面とハウジングの内周面とはある程度の広がりをもった範囲で接触することになる。これにより、内歯車とハウジングとが接触している状態では、内歯車まで伝わった遊星歯車機構の振動がハウジングに伝達しやすくなり、それに伴う遊星歯車装置の騒音も発生しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、遊星歯車機構からの振動の伝達及び遊星歯車装置から発生する騒音を抑制することができる内歯車とハウジングとの分離構造体、当該分離構造体を備えた遊星歯車装置、及び当該遊星歯車装置を備えたアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る内歯車とハウジングとの分離構造体は、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第1凸部が外周面に形成された内歯車と、前記軸線方向の一方側から他方側に向かって延在する第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングと、を備え、前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される。
【0008】
前記第1凸部と前記第2凸部のうち、一方の凸部は間隔をあけて対で形成されており、他方の凸部は対で形成された前記一方の凸部の間に差し込まれるように配置され、線接触する前記一方の凸部における接触箇所と前記他方の凸部における接触箇所のうち、少なくとも一方は曲面で形成されていてもよい。
【0009】
前記一方の凸部は、前記第2凸部であり、前記他方の凸部は、前記第1凸部であり、前記第1凸部は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、平面状に形成された斜面で前記第2凸部と接触するようにしてもよい。
【0010】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所のうち、一方は凸状の曲面であり他方は平面であるようにしてもよい。
【0011】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所とは、凸状の曲面であるようにしてもよい。
【0012】
前記線接触する前記第1凸部の接触箇所と前記第2凸部の接触箇所のうち、一方は凸状の曲面であり他方は凹状の曲面であるようにしてもよい。
【0013】
前記第1凸部と前記第2凸部とは前記軸線方向に沿って線接触し、前記第1凸部が前記第2凸部と線接触する範囲は、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短くしてもよい。
【0014】
前記第1凸部が前記内歯車に延在する長さは、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短くしてもよい。
【0015】
前記第1凸部は、前記内歯車の一端のみから延在させてもよい。
【0016】
前記第1凸部は、前記内歯車の両端から延在しており、両端から延在した前記第1凸部の合計の長さは、前記内歯車の前記軸線方向における幅よりも短くしてもよい。
【0017】
前記内歯車には、複数の前記第1凸部が、互いの間隔をあけて前記軸線方向に沿って設けられていてもよい。
【0018】
前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが前記軸線方向と直交する方向で線接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限されていてもよい。
【0019】
前記第1凸部及び前記第2凸部のうちの一方は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、前記軸線方向における位置により三角形状の断面の大きさが異なり、最大の断面を有する位置で他方と接触させてもよい。
【0020】
本発明の別の観点に係る内歯車とハウジングとの分離構造体は、第1凸部が外周面に形成された内歯車と、第2凸部が内周面に形成されており、前記内周面との間で隙間を設けた状態で前記内歯車を収容するハウジングと、を備え、前記内歯車は、前記第1凸部と前記第2凸部とが点接触することで前記ハウジングの内部での移動が制限される。
【0021】
前記第1凸部は、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在するように内歯車の外周面に形成されており、前記第2凸部は、軸線方向の一方側から他方側に向かって延在するようにハウジングの内周面に形成されていてもよい。
【0022】
前記第1凸部と前記第2凸部とが接触する箇所には、前記第1凸部または前記第2凸部に突起が形成されており、前記突起を介して前記第1凸部と前記第2凸部が点接触してもよい。
【0023】
前記突起は、前記軸線方向に沿って複数形成されていてもよい。
【0024】
前記第1凸部は、前記軸線方向と直交する面で切断すると三角形状の断面を有し、平面状に形成された斜面に前記突起が形成されていてもよい。
【0025】
前記内歯車と前記ハウジングとは合成樹脂製であり、前記内歯車は、前記ハウジングを形成する合成樹脂よりも低硬度の合成樹脂から形成されていてもよい。
【0026】
本発明に係る遊星歯車装置は、上記の内歯車とハウジングとの分離構造体と、前記内歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、前記1又は複数の遊星歯車の中央に位置し、前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持ずるキャリアと、を備える。
【0027】
前記キャリアの回転に伴い、前記キャリアの回転と同じように回転する第2の太陽歯車と、前記第2の太陽歯車の周囲に配され、前記第2の太陽歯車と噛み合う1又は複数の第2の遊星歯車と、前記1又は複数の第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアと、前記1又は複数の第2の遊星歯車と噛み合う内歯が内周面に形成された第2のハウジングと、をさらに備え、前記ハウジングと前記第2のハウジングとは一体で成形されていてもよい。
【0028】
本発明の別の観点に係る遊星歯車装置は、太陽歯車と、前記太陽歯車の周囲に配され、前記太陽歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持するキャリアと、を有する遊星歯車機構を少なくとも2段備える遊星歯車装置であって、少なくとも2段の前記遊星歯車機構のうちの、最も高速で動作する遊星歯車機構は、上記の内歯車とハウジングとの分離構造体を備え、前記遊星歯車機構の前記1又は複数の遊星歯車と前記内歯車とが噛み合っており、少なくとも2段の前記遊星歯車機構のうちの、最も低速で動作する遊星歯車機構は、前記遊星歯車機構が有する前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う内歯が内周面に形成されたハウジングを備える。
【0029】
本発明に係るアクチュエータは、上記の遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置に接続され前記遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、内歯車とハウジングとの接触範囲が従来技術よりも狭く、遊星歯車機構に起因する振動がハウジングに伝達しにくくなる。これにより、遊星歯車機構からの振動の伝達及び遊星歯車機構の振動に伴う遊星歯車装置から発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るアクチュエータの斜視図
【
図2】
図1中の矢印AIIからみたアクチュエータの正面図
【
図3】
図2中の切断線III-IIIで切断したアクチュエータの断面図
【
図4】本発明の実施の形態1に係るアクチュエータの分解斜視図
【
図5】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングの断面図
【
図6】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングの斜視図
【
図7】本発明の実施の形態1に係る第1遊星歯車機構の斜視図
【
図8】本発明の実施の形態1に係る第2遊星歯車機構の斜視図
【
図9】本発明の実施の形態1に係る第2ハウジングと内歯車との関係を説明するための図
【
図10】
図9に示す第2ハウジングに形成されたストッパに着目した説明図
【
図11】
図9に示す内歯車に形成された移動制限凸部に着目した説明図
【
図12】
図9に示す内歯車が中心軸周りに回転して第2ハウジングに接触した状態を説明するための図
【
図13】
図9に示す内歯車が軸線に直交する方向へ移動して第2ハウジングに接触した状態を説明するための図
【
図14】
図12中の矢印XIVからみた第2ハウジングと内歯車との接触態様を説明するための図
【
図15】
図11に示す移動制限凸部と移動制限凸部の他の例とを比較した概略図
【
図16】本発明の実施の形態2に係る内歯車を示した図
【
図17】本発明の実施の形態2に係る第2ハウジングの断面図
【
図18】本発明の実施の形態3に係る内歯車を示した図
【
図19】本発明の実施の形態3に係る第2ハウジングの断面図
【
図20】本発明の実施の形態4に係る内歯車を示した図
【
図21】本発明の実施の形態4に係る第2ハウジングの断面図
【
図22】本発明の実施の形態5に係る内歯車の斜視図
【
図23】本発明の実施の形態5に係る内歯車と第2ハウジングとが離れた状態を示した説明図
【
図24】本発明の実施の形態5に係る内歯車と第2ハウジングとが接触した状態を示した説明図
【
図25】本発明の実施の形態6に係る内歯車の斜視図
【
図26】本発明の実施の形態6に係る内歯車と第2ハウジングとが離れた状態を示した説明図
【
図27】本発明の実施の形態6に係る内歯車と第2ハウジングとが接触した状態を示した説明図
【
図28】本発明の実施の形態7に係る内歯車の斜視図
【
図29】本発明の実施の形態7に係る内歯車と第2ハウジングとが離れた状態を示した説明図
【
図30】本発明の実施の形態7に係る内歯車と第2ハウジングとが接触した状態を示した説明図
【
図31】本発明の他の実施例に係る内歯車と第2ハウジングとの接触箇所に着目した説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の好適な実施の形態に係る内歯車とハウジングとの分離構造体、遊星歯車装置、アクチュエータについて、図面を参照しながら説明する。なお、図面の理解を容易にするため、各図において、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ1の軸線方向に平行なX軸と、X軸に直交するY軸及びZ軸とを有する直交座標系を図示している。
【0033】
(実施の形態1)
(アクチュエータ1の構成)
図1及び
図2に示すように、アクチュエータ1は、例えば、モータ10と、モータ10に接続された遊星歯車装置20とを備えている。
【0034】
モータ10は、例えば、
図3及び
図4に示すように、モータ本体11と、回転軸12とを有している。モータ10は、図示しない制御部の制御下で、回転軸12を回転させて遊星歯車装置20を駆動する。
【0035】
遊星歯車装置20は、
図1に示すモータ10によって入力された回転を、所定の減速比で減速して出力歯車86aから出力する。遊星歯車装置20は、例えば、
図3及び
図4に示すように、第1ハウジング30及び第2ハウジング40を有するハウジング50と、ハウジング50の内部に収容された遊星歯車機構60とを備えている。
【0036】
第1ハウジング30は、例えば、モータ10を遊星歯車装置20に取り付けるための部材である。また、第1ハウジング30は、第2ハウジング40と組み合わされて内部に遊星歯車機構60を収容するための
図5に示す収容空間Sを形成する。第1ハウジング30の中央には、
図4に示すように、モータ10の回転軸12を通すための開口30aが形成されている。開口30aに通された回転軸12は、遊星歯車機構60の後述する太陽歯車71に固定される(接続される)。第1ハウジング30は、例えば合成樹脂製で射出成形により成形される。
【0037】
第2ハウジング40は、例えば、
図5及び
図6に示すように、第1ハウジング30が取り付けられる側(一方側)が開放されており、この開放された部分から
図4に示す遊星歯車機構60を収容することができる。遊星歯車機構60は、例えば、
図4に示すように、軸方向に沿って配置された第1遊星歯車機構70と、第2遊星歯車機構80と、出力歯車86aとを有している。遊星歯車機構60は、モータ10によってもたらされた(入力された)回転を2段階で減速して出力歯車86aから出力する。第2ハウジング40は、例えば、
図5に示すように、第1遊星歯車機構70が収容される第1部位41と、第2遊星歯車機構80が収容される第2部位42と、第2遊星歯車機構80の出力歯車86aを外部へ突出させるための第3部位43とを有している。
【0038】
第2ハウジング40の第1部位41は、例えば、
図5及び
図6に示すように、円筒体44と、軸線方向に沿って(軸線方向の一方側から他方側に向かって)延在するストッパ(第2凸部)45とを有している。ストッパ45は軸線方向に直交する断面で切断すると山形状の断面を有し、その形状および大きさは軸線方向に一定である。ストッパ45は、第1部位41の軸線方向における一部の範囲に形成されているが、全範囲にわたって形成されていてもよい。ストッパ45は、例えば、
図9に示すように、円筒体44の内壁44aに周方向に対をなして配置されている。対のストッパ45は、例えば、円筒体44の内壁44aに等間隔に6箇所設けられている。各ストッパ45の断面形状は、例えば、
図10に示すように、円筒体44の内壁44aから弧をなして徐々に立ち上がる立ち上がり部45aと、丸みを帯びた頂部45cと、立ち上がり部45aと頂部45cとを膨らみながら接続する接続部45bとを有している。なお、ストッパ45の断面の形状及び大きさは軸線方向に一定である。そのため、例えば
図6から理解できるように、立ち上がり部45a、接続部45b、及び頂部45cは、軸線に平行な方向には曲りを有しない曲面である。対のストッパ45間には、後述する
図9に示す内歯車74の移動制限凸部75が差し込まれることで、第2ハウジング40内における内歯車74の移動が制限される。
【0039】
第2ハウジング40の第2部位42は、例えば、
図5及び
図6に示すように、円筒体46と、円筒体46の内壁に形成された内歯部47とを有している。内歯部47は、例えば、軸線方向に対して角度をもって斜めに刻まれている。すなわち、内歯部47を有する第2部位42は、例えば、はすば歯車を構成している。
【0040】
第2ハウジング40の第3部位43は、例えば、円筒状をなし、
図4に示す遊星歯車機構60の出力歯車86aを通すための開口43aを有している。これにより、出力歯車86aから出力するトルクを外部の機構に伝達することができる。第2ハウジング40は、例えば合成樹脂製で、射出成形により成形される。
【0041】
また、本明細書では、便宜上、
図4~6における、第2ハウジング40の第1ハウジング30が取り付けられるように開放されている側を一方側(-X方向側)と呼び、その反対側である、第2ハウジング40の第3部位43の開口43aを有する側を他方側(+X方向側)と呼ぶ。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第2ハウジング40の第3部位43の開口43aを有する側を一方側とし、第2ハウジング40の第1ハウジング30が取り付けられるように開放されている側を他方側とするように読み直して解釈してもよい。
【0042】
遊星歯車機構60は、例えば、
図4に示すように、ハウジング50内に収容され、モータ10から伝達された回転を減速して出力歯車86aから出力する。遊星歯車機構60は、例えば、軸線方向に沿って配置された第1遊星歯車機構70と第2遊星歯車機構80とを有している。
【0043】
第1遊星歯車機構70は、例えば、
図7に示すように、太陽歯車71と、太陽歯車71を中央にしてその周囲に配された3つ(複数)の遊星歯車72と、3つ(複数)の遊星歯車72を回転可能に支持するキャリア73と、内歯車74とを備えている。なお、
図7において、斜視図の都合上2つの遊星歯車72しか図示していないが、キャリア73に隠れた奥側の位置にもう1つの遊星歯車72が設けられている。
【0044】
太陽歯車71は、外周面に太陽歯部71aが形成された外歯車であって、
図4に示すモータ10の回転軸12が固定される(接続される)。これにより、モータ10が作動することにより、太陽歯車71は回転する。太陽歯部71aは、例えば、太陽歯車71の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、太陽歯車71は、例えば、はすば歯車である。
【0045】
遊星歯車72は、例えば、外周面に遊星歯部72aが形成された外歯車である。遊星歯部72aは、例えば、遊星歯車72の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、遊星歯車72は、例えば、はすば歯車である。3つ遊星歯車72は、第1遊星歯車機構70の軸を中心とした同一の円上に等間隔で配置されている。3つの遊星歯車72の間に太陽歯車71が位置しており、太陽歯部71aは、3つの遊星歯車72の遊星歯部72aのそれぞれと噛み合わされる。
【0046】
キャリア73は、例えば、円筒状に形成されており、その外周面には遊星歯車72を収容するための3つの収容開口73aが形成されている。遊星歯車72のそれぞれは、
図3に示すように、収容開口73a内で軸線方向に向けられたピン76により回転可能に支持されている。遊星歯車72は、例えば、遊星歯部72aの一部をキャリア73の外周面から突出させた状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部72aを、後述する内歯車74の内歯部74aと噛み合わせることができる。
【0047】
内歯車74には、例えば、
図3及び
図7に示すように、内周面に内歯部74aが形成されている。内歯部74aは、例えば、内歯車74の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有するはすば歯車である。内歯車74の歯先円の直径は、円筒状のキャリア73の直径よりも大きい。そのため、内歯車74の内部に、遊星歯車72を保持したキャリア73が収容される。キャリア73の外周面から突出した遊星歯部72aは、内歯車74の内歯部74aと噛み合わせられる。
【0048】
また、内歯車74の外周面には、例えば、
図9に示すように、第2ハウジング40の内壁44aに形成された対のストッパ45の間に入り込む移動制限凸部(第1凸部)75が形成されている。移動制限凸部75は、例えば、対のストッパ45に対応して設けられており、対のストッパ45と同様に6箇所形成されている。移動制限凸部75は、軸線方向に直交する平面で切断すると概ね三角形状の断面を有している。また移動制限凸部75は、
図11に示すように、例えば、内歯車74の外周面74bから立ち上がった直線状の斜辺部75aと、両サイドから立ちあがった斜辺部75aが交差する箇所に位置する丸みを帯びた頂部75bとを有している。なお、移動制限凸部75の断面の形状及び大きさは、
図7に示すように、軸線方向に一定である(軸線方向の一方側から他方側に向かって一定に延びている)ことから、移動制限凸部75の斜辺部75aは平面領域を構成している。なお、移動制限凸部75は、内歯車74の全幅にわたって形成されているが、一部の範囲のみに形成されていてもよい。また、内歯車74の+X方向側の端面には、
図7に示すように、半球状の突起74bが形成されている。半球状の突起74bは、隣り合う移動制限凸部75の間にそれぞれ形成されており、合計6箇所に形成されている。内歯車74が
図5に示す第2ハウジング40の第1部位41に収容されると、6つの突起74bの頂部は第2ハウジング40の第1部位41と第2部位42との境である段差面46a(
図5、6)と接触する。この突起74bと段差面46aとの接触態様は、球面と平面との接触であることから点接触となる。内歯車74は、例えば合成樹脂製である。なお、後述するように、内歯車74は、
図9に示す第2ハウジング40を形成する合成樹脂よりも低い硬度の合成樹脂から形成されている。
【0049】
図9に示すように、第2ハウジング40と、内歯車74とは物理的に分離しており、アクチュエータ1が作動していない場合、両者の間には隙間が形成されている。そのため、内歯車74は、第2ハウジング40内でフローティング状態にあり、内歯車74と第2ハウジング40との間に設けられた隙間の分だけ第2ハウジング40内における軸線方向回りの回転や、軸線方向に直交する方向への移動が許容される。そして、内歯車74に形成された移動制限凸部75が対のストッパ45に当接することで、内歯車74のそれ以上の移動が制限される。
【0050】
もう1つの遊星歯車機構である第2遊星歯車機構80は、例えば、
図8に示すように、太陽歯車81と、3つの遊星歯車82と、3つの遊星歯車82を回転可能に支持するキャリア83と、出力軸86とを備えている。なお、
図8においては、斜視図の都合上2つの遊星歯車82しか図示していないが、キャリア83に隠れた奥側の位置にもう1つの遊星歯車82が設けられている。
【0051】
太陽歯車81は、例えば、外周面に太陽歯部81aが形成された外歯車であって、
図7に示す第1遊星歯車機構70のキャリア73に互いの軸線を一致させた状態で固定されている(接続されている)。これにより、第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転に伴い、太陽歯車81は第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転と同じように(同期するように、連動するように)回転する。すなわち、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構70のキャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構70のキャリア73と同じ回転方向に、第1遊星歯車機構70のキャリア73と同じ回転速度で回転する。太陽歯部81aは、例えば、太陽歯車81の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、太陽歯車81は、例えば、はすば歯車である。
【0052】
遊星歯車82は、例えば、外周面に遊星歯部82aが形成された外歯車である。遊星歯部82aは、例えば、遊星歯車82の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有している。すなわち、遊星歯車82は、例えば、はすば歯車である。3つ遊星歯車82は、例えば、第2遊星歯車機構80の軸を中心とした同一の円上に等間隔で配置されている。3つの遊星歯車82の間に太陽歯車81が位置しており、太陽歯部81aが、3つの遊星歯車82の遊星歯部82aのそれぞれと噛み合わされる。また、遊星歯車82は、
図5及び
図6に示す第2ハウジング40に形成された内歯部47と噛み合わされる。
【0053】
キャリア83は、例えば、遊星歯車82を保持する歯車保持部84と、出力軸86を保持する出力軸保持部85とを有している。歯車保持部84は、例えば、円筒状に形成されており、その外周面には遊星歯車82を収容するための3つの収容開口84aが形成されている。遊星歯車82のそれぞれは、
図3に示すように、収容開口84a内で軸線方向に向けられたピン87により回転可能に取り付けられている。遊星歯車82は、遊星歯部82aの一部をキャリア83の外周面から突出させた状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部82aを、第2ハウジング40に形成された内歯部47と噛み合わせることができる。また、出力軸保持部85は、
図8に示すように、歯車保持部84よりも小径の円筒状に形成されており、出力軸保持部85の中央部には、出力軸86を保持するための嵌合孔85aが形成されている。
【0054】
出力軸86は、例えば、キャリア83に保持され、キャリア83とともに回転する。出力軸86は、軸にローレット形状の歯を有した出力歯車86aを有している。すなわち、出力軸86は、例えば、ローレット形状の歯を有した歯車を構成する。
【0055】
(アクチュエータ1の動作)
次に、アクチュエータ1の動作の一例について説明する。まず、
図4に示すモータ10が作動すると、回転軸12が、第1方向又は第2方向に回転する。以下、回転軸12が第1方向に回転した場合について説明する。
【0056】
なお、各部材の回転方向に関する第1方向とは、各部材を
図1に示す矢印AIIが示す方向からみた場合に時計回りの方向である。一方、各部材の回転方向に関する第2方向とは、各部材を
図1に示す矢印AIIが示す方向からみた見た場合に反時計回りの方向である。
【0057】
回転軸12が第1方向に回転すると、回転軸12の回転に伴い、
図3及び
図7に示す太陽歯車71が第1方向に回転する。太陽歯車71が第1方向に回転するのに伴い、太陽歯車71と噛み合った3つの遊星歯車72がそれぞれ第2方向に回転(自転)する。また、遊星歯車72は、内歯車74と噛み合っていることから、第2方向に回転(自転)することによって、第1遊星歯車機構70の軸の周りを第1方向に回転(公転)する。遊星歯車72の回転(公転)に伴い、キャリア73は、自身の中心軸を中心に第1方向に回転(自転)する。
【0058】
このように、キャリア73が第1方向に回転すると、キャリア73に固定された
図3及び
図8に示す太陽歯車81が第1方向に回転する。太陽歯車81が第1方向に回転するのに伴い、太陽歯車81と噛み合った3つの遊星歯車82がそれぞれ第2方向に回転(自転)する。また、遊星歯車82は、
図5及び
図6に示す内歯部47と噛み合っていることから第2方向に回転(自転)することにより、第2遊星歯車機構80の中心軸の周りを第1方向に回転(公転)する。遊星歯車82の第1方向への回転(公転)に伴い、キャリア83は、自身の中心軸を中心に第1方向に回転(自転)する。そして、キャリア83の回転は、キャリア83に保持された出力軸86に伝達される。
【0059】
上記では、回転軸12が第1方向に回転した場合について説明したが、回転軸12を第2方向に回転させた場合には、各歯車の回転方向が反対になるだけで同様にアクチュエータ1の動作を説明することができる。
【0060】
上述したように、第2ハウジング40と、内歯車74とは物理的に分離されている。そして、アクチュエータ1が作動していない場合、第2ハウジング40と内歯車74との間には隙間が形成されている。そして、アクチュエータ1が作動すると、内歯車74は、設けられた隙間の分だけ第2ハウジング40内で軸線回りの回転や軸線に直交する方向への移動が許容される。例えば、内歯車74が
図9に示す状態から第1方向(時計回り)に回転したとすると、やがて
図12に示すように、内歯車74に形成された複数の移動制限凸部75のそれぞれが、第2ハウジング40に形成された対応するストッパ45に線接触する。これにより、内歯車74はこれ以上時計回りに回転することができなくなる。ストッパ45は対で形成されていることから、内歯車74が第2方向(反時計回り)に回転した場合であっても同様に線接触し、内歯車74の軸線回りの回転が制限される。
【0061】
また、内歯車74が、
図9に示す状態から軸線に直交する方向である例えば図中上方に移動したとする。すると、
図13に示すように、内歯車74に形成された図中上部の移動制限凸部75は、第2ハウジング40に形成された対のストッパ45に線接触する。これにより、内歯車74は、これ以上上方に移動することができずに、軸線に直交する方向への移動が制限される。また、このとき内歯車74の頂部75b(より具体的には、移動制限凸部75の頂部75b)は、第2ハウジング40(より具体的には、円筒体44の内壁44a)に当接(接触)していない。なお、内歯車74の軸線に直交する方向への移動の制限は、内歯車74が上方へ移動する場合に限定されるものではない。周方向に6つの移動制限凸部75と対のストッパ45とを等間隔で配置していることから、内歯車74の上下方向、左右方向、及び斜め方向といった様々な方向への移動を制限することができる。
【0062】
(効果)
上記の実施の形態によれば、分離した内歯車74と第2ハウジング40との構造体において、アクチュエータ1の作動中に内歯車74が移動したとしても、ストッパ45と移動制限凸部75とが線接触することで内歯車74の移動を制限することができる。
図12は、内歯車74が軸回りに回転したことによって、内歯車74と第2ハウジング40とが線接触した状態を示している。このとき、対のストッパ45と移動制限凸部75とは6箇所全てで接触するが、その接触態様は同様である。そのため、図中上部で接触した1つの接触箇所について、
図12の拡大図を参照しながら説明する。図に示すように、膨らんだ凸状の曲線によって図示されるストッパ45の接続部45bと、直線によって図示される移動制限凸部75の斜辺部75aとの接触箇所は、接触点P1で示すことができる。すなわち、極めて限られた範囲での接触となる。なお、第2ハウジング40の断面と内歯車74の断面とは、軸線方向に形状と大きさとが一定である。そのため、接続部45bと斜辺部75aとの接触は、軸線に平行な方向に曲りを有しない凸状の曲面と軸線に平行な平面との接触となる。これにより、
図14に示す接触領域90のように、内歯車74と第2ハウジング40との接触は、X軸に平行な軸線方向に沿った線接触になる。
【0063】
また、
図13は、内歯車74が軸線に直交する方向、例えば図中上方向に移動したことによって、第2ハウジング40と内歯車74とが接触した状態を示している。
図13に示すように、第2ハウジング40と内歯車74との接触箇所は、接触点P2からP5で示す4箇所である。
図13の拡大図に示すように、接触点P2及びP3は、膨らんだ凸状の曲線によって図示されるストッパ45の接続部45bと、直線によって図示される移動制限凸部75の斜辺部75aとの接触箇所である。上記と同様に、このような接触箇所は、軸線に平行な方向に曲りを有しない凸状の曲面と軸線に平行な平面との接触となるため、両者は線接触する。また、接触点P4及びP5におけるストッパ45と移動制限凸部75との接触も、凸状の曲面と平面との接触となることから、線接触になる。
【0064】
このように、表面に凸状の曲面を有する山形状のストッパ45を対で配置し、その間に平面状の斜面を有する三角形状の移動制限凸部75を差し込む構成とすることで、内歯車74が軸線回りに回転した場合であっても、軸線に直交する方向に移動した場合であっても、内歯車74の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触を線接触にとどめることができる。このように線接触で接触した内歯車74の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触面積は小さいため、動作する内歯車74からの振動は第2ハウジング40へ伝達しにくくなる。これにより、第1遊星歯車機構70から伝達されて発生する第2ハウジング40の振動が抑制されるため、第1遊星歯車機構70に起因する振動に伴う遊星歯車装置20から発生する騒音を抑制することができる。
【0065】
なお、本明細書中で記載した「線接触」とは、接触部分が線形状をなしている接触状態のことであり、単に、各々の断面において接触点となる一点のみまたは複数点で示されるような接触状態(点接触)だけを表すのではなく、
図14に示すような、接触領域90における幅Wが長さLに対して十分に小さいと認められる態様の接触状態も含まれるものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが軸線方向に沿って仮想線を引いたときに線形状をなすように散在して接触する(まばらに接触する)接触状態も含むものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが、軸線方向ではなく、斜線を描くように線形状をなしている接触状態も含むものとする。また、本明細書中で記載した「線接触」とは、さらに、接触領域90における幅Wが、軸線方向ではなく、斜線を描く方向に沿って仮想線を引いたときに線形状をなすように散在して接触する(まばらに接触する)接触状態も含むものとする。
【0066】
また、内歯車74の+X方向側の端面に半球状の突起74bを形成し、突起74bを第2ハウジング40の段差面46a(
図5、6)に接触させている。この突起74bと段差面46aとの接触態様は点接触という限られた範囲での接触にとどめることができる。これにより動作する内歯車74からの振動を第2ハウジング40へ伝達しにくくすることができる。
【0067】
また、
図11に示すように、軸線に直交する平面で切断した移動制限凸部75の断面を三角形状とし、先細となった頂部75bを外側に向ける構成とすることにより、射出成形時の内歯車74の型抜けを良好なものとすることができる。これにより、歩留りを向上させることができる。
【0068】
また、
図15に示すように、移動制限凸部75を軸線方向に直交する平面で切断した断面の両サイドには直線状の斜辺部75aが形成されている。また
図15には、移動制限凸部75の比較例として、両サイドが膨らんだ形状の移動制限凸部100を二点鎖線で図示している。両者を比較すると、移動制限凸部75の断面積は、ハッチングが施された領域の面積分だけ移動制限凸部100の断面積よりも小さい。これにより、本実施の形態では内歯車74を軽量化することができるためモータ10にかかる負荷を軽減することができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。また、動作する内歯車74を軽量化できるため、本実施の形態では内歯車74が第2ハウジング40に接触した際の衝撃を小さくする(抑制する)ことができ、そのため第2ハウジングの振動も小さくする(抑制する)ことができる。
【0069】
また、内歯車74は、第2ハウジング40を形成する合成樹脂よりも低硬度の合成樹脂から形成されている。内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂としては、機械的強度、耐摩耗性、耐熱性等の観点から、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックを使用すること好ましい。これらの合成樹脂としては、例えば、超高分子ポリエチレン(UHPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0070】
内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。本発明の効果を奏する範囲において適宜選択することができる。
【0071】
上記合成樹脂のなかで、内歯車74を形成するのに適した比較的柔らかい合成樹脂としては、例えば、超高分子ポリエチレン(UHPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)を使用することが望ましい。また、第2ハウジング40を形成するのに適した比較的硬い合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)を使用することが望ましい。また、内歯車74及び第2ハウジング40を形成する合成樹脂材料(材料)に関して主成分が同じ合成樹脂材料を用いる場合には、合成樹脂の密度等を変えて、第2ハウジング40を形成する合成樹脂の方が硬くなるようにすることが望ましい。
【0072】
このように、内歯車74を第2ハウジング40よりも低硬度の合成樹脂から形成することで、本実施の形態では、内歯車74が第2ハウジング40に接触した際の衝撃を和らげることができ、第2ハウジング40に生じる振動をより小さくする(抑制する)ことができる。それにより本実施の形態では、第2ハウジング40の振動に起因する騒音をより小さくする(抑制する)ことができ、さらに内歯車74と第2ハウジング40とが衝突した際の音も小さくする(抑制する)ことができる。ひいては、第1遊星歯車機構70に起因する振動に伴う遊星歯車装置20から発生する騒音を抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、ハウジングと内歯車とを分離させた構成を、低速で回転する2段目の遊星歯車機構には適用せずに、高速で回転する1段目の遊星歯車機構のみに適用している。つまり、本実施の形態では、振動や騒音が大きくなりやすい高速で回転する機構には、内歯車をフローティングさせた構成を採用し、比較的振動や騒音が大きくなりにくい低速で回転する機構には、内歯が形成されたハウジング構造を採用している。これにより、本実施の形態では、遊星歯車機構に起因する遊星歯車装置の振動及び騒音を抑制するとともに、遊星歯車装置の必要以上の部品点数の増大や、組み立て作業や組み立てコストの増大を防ぐことができる。ひいては、遊星歯車装置の製造コストの低減を図ることができる。このように、遊星歯車機構の回転態様に応じて、適宜、構成の異なる2つの機構を採用でき、両機構を併存させることができる。
【0074】
次に、本発明の他の実施の形態について説明するが、実施の形態1と共通する構成も多い。そこで、以下では異なる構成を中心に説明するものとし、共通する構成については同じ符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0075】
(実施の形態2)
実施の形態1では、
図7で示すように、6つの移動制限凸部75が内歯車74の全幅にわたって形成されていた。しかしながら、実施の形態2では、6つの移動制限凸部275が内歯車274の全幅のうち一部の範囲のみに形成されており、この点が実施の形態1の構成と異なっている。なお他の構成については、実施の形態1の構成と同様である。
図16に示すように、内歯車274には、軸線方向(X軸方向)における幅のうち、+X軸方向側のおよそ半分の幅にだけ移動制限凸部275が形成されている。なお、移動制限凸部275の断面は三角形状をなしている。一方、内歯車274のおよそ中央から-X軸方向側には移動制限凸部275が形成されていない。
図17に示すように、第2ハウジング40の第1部位41に内歯車274が収容されることで、中央よりも+X軸方向側にのみに形成された移動制限凸部275が対のストッパ45間に差しまれる。そのため、上記実施の形態1と比較して、移動制限凸部275とストッパ45とがX軸方向に沿って線接触する長さをおよそ半分にすることができる。これにより、内歯車274の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触面積をさらに小さくすることができ、動作する内歯車274からの振動を第2ハウジング40に、さらに伝達しにくくすることができる。
【0076】
(実施の形態3)
実施の形態2における内歯車274には、+X軸方向側のおよそ半分の幅に移動制限凸部275が設けられていた。一方、実施の形態3における内歯車374には、
図18に示すように、+X軸方向側の端部からおよそ4分の1の幅で移動制限凸部375aが設けられているとともに、-X軸方向側の端部からおよそ4分の1の幅で移動制限凸部375bが設けられている。移動制限凸部375a及び移動制限凸部375bの断面は三角形状である。
図19に示すように、第2ハウジング40の第1部位41に内歯車374が収容されると、+X軸方向側の端部から形成された移動制限凸部375aと、-X軸方向側の端部から形成された移動制限凸部375bとが対のストッパ345間に差し込まれる。対のストッパ345は、-X軸方向側の端部から形成された移動制限凸部375bを差し込むことを可能するために、実施の形態2の対のストッパ45と比較して-X軸方向にさらに長く形成されている。そのため、
図19に示すように、対のストッパ345は、第2ハウジング40が内歯車374を収容する空間のおよそ全範囲にわたって延設されている。
【0077】
内歯車374のX軸方向における幅のうち、4分の1の幅に移動制限凸部375aが形成され、4分の1の幅に移動制限凸部375bが形成されている。すなわち、両者を合わせて内歯車374のおよそ半分の幅に形成されている。このため、内歯車374の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触面積を、実施の形態1と比較して半分にすることができ、動作する内歯車374からの振動を第2ハウジング40に伝達しにくくすることができる。また、内歯車374の両端部に対のストッパ345と接触する移動制限凸部375aと移動制限凸部375bとを設けているので、内歯車374を傾かせることなくその姿勢を安定させることができる。これにより、動作する内歯車374に起因する振動や騒音を抑制することができる。さらには、遊星歯車が内歯車347の中央で噛合う場合、両端部にストッパ345を設けることで、より振動や騒音を抑制することができる。
【0078】
なお、第2ハウジング40に形成する対のストッパ345は、
図19に示すように内歯車374を収容する空間の全範囲にわたって連続して形成する必要はない。例えば、移動制限凸部375a及び移動制限凸部375bに対応する箇所にのみ対のストッパを設け、その間は省略するようにしてもよい。
【0079】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る内歯車474には、
図20に示すように、X軸方向における幅が小さい複数の移動制限凸部475a~475f(以下、これらの総称として、移動制限凸部475と記載する場合がある)が、+X方向側から-X方向側に向けて等間隔で設けられている。移動制限凸部475の断面は三角形状である。移動制限凸部475aは、内歯車474の+X軸方向側の端部に設けられている。また、移動制限凸部475fは、内歯車474の-X軸方向側の端部に設けられている。
図21に示すように、第2ハウジング40の第1部位41に内歯車474が収容されると、移動制限凸部475が対のストッパ345間に差し込まれる。対のストッパ345は、内歯車474の+X側の端部から-X側の端部まで等間隔で形成された移動制限凸部475が差し込み可能なように、第2ハウジング40が内歯車474を収容する空間の全範囲にわたって連続して形成されている。これにより、移動制限凸部475と対のストッパ345との接触態様は、各移動制限凸部475a~475fと対のストッパ345との線接触した部分が、所定の間隔をあけてX軸方向に沿って線状に並ぶ態様となる。
【0080】
このように、内歯車474には、移動制限凸部475を設ける範囲と設けない範囲とが交互に配置されている。これにより、移動制限凸部475とストッパ345とがX軸方向に沿って線接触する合計の長さを短くすることができる。よって、内歯車474の外周面と第2ハウジング40の内周面との接触面積をさらに小さくすることができ、動作する内歯車474からの振動を第2ハウジング40に伝達しにくくすることができる。また、内歯車474は、第2ハウジング40に形成された対のストッパ345と、等間隔で配置した複数の移動制限凸部475a~475fを介して接触することができるので、内歯車474は傾くことなくその姿勢を安定させることができる。これにより、動作する内歯車374に起因する振動や騒音を抑制することができる。
【0081】
(実施の形態5)
上記の実施の形態では、対のストッパと移動制限凸部とがX軸方向に沿って線接触するように構成することで、接触する領域を狭い範囲に限定していた。しかしながら、線接触させる方向はX軸方向に沿ったものに限定されず任意に設定することができる。例えば、X軸方向と直交する方向に沿ったものでもよく、X軸方向とX軸方向に直交する方向との間の方向に沿ったものでもよい。実施の形態5として、対のストッパと移動制限凸部とをX軸方向に直交する方向に線接触させる形態について説明する。
【0082】
図22に示すように、内歯車574は、
図7に示す実施の形態1の内歯車74と同様に、断面が三角形状の移動制限凸部575が内歯車574の全幅にわたって形成されている。しかしながら、移動制限凸部575の三角形状の断面の大きさは、X軸方向における位置よって異なるように形成されている。この点が、X軸方向における位置によらず断面の大きさが一定であった移動制限凸部75を有する実施の形態1に係る内歯車74と異なっている。移動制限凸部575の断面の大きさは、
図22に示すように、内歯車574の+X軸方向側の端部575a及び-X軸方向側の端部575bで一番小さく、X軸方向に沿って中央に向かうにつれて徐々に大きくなる。そして、X軸方向における中央部575cで、移動制限凸部575の断面が最も大きくなる。
【0083】
また、実施の形態1における対のストッパ45の外面は、
図10に示すように立ち上がり部45a、接続部45b、及び頂部45cから構成された曲面であった。一方、
図23に示す対のストッパ245は、それぞれ円筒体244の内壁244aから立ち上がった直線状の斜辺部245aを有している。これにより、対のストッパ245のそれぞれは、断面が三角形状であり、斜辺部245aで平面領域を構成している。
【0084】
なお、
図23及び
図24において移動制限凸部575に記載された破線は、内歯車574の端部575a、575b(
図22)における移動制限凸部575の断面を示している。一方、実線は、内歯車574のX軸方向における中央部575c(
図22)における移動制限凸部575の断面を示している。上述したように、内歯車574の端部575a、575bにおける移動制限凸部575の断面より、内歯車574の中央部575cにおける移動制限凸部575の断面の方が大きい。内歯車574が、
図23に示すように第2ハウジング240に接触していない状態から、軸線に直交する方向、例えば図中上方に移動したとする。すると、
図24に示すように、移動制限凸部575は対のストッパ245の間に差し込まれ、やがて対のストッパ245の斜辺部245aを構成する平面と、移動制限凸部575の斜辺部575dとが接触する。なお、移動制限凸部575の断面の大きさは、中央部575c(
図22)で最大となっている。そのため、移動制限凸部575は、中央部575c(
図22)における斜辺部575dでストッパ245と接触する一方で、中央部575c(
図22)以外の斜辺部575d(例えば破線で図示した部分)はストッパ245と接触しない。これにより、内歯車574は、
図22に示すように、第2ハウジング240(
図23)とラインL1上のみで接触とすることができる。すなわち、内歯車574の外周面と第2ハウジング240の内周面とを、X軸に直交する方向に沿って線接触することができる。なお、
図22において、線接触するラインL1を1つの移動制限凸部575のみにしか図示していないが、他の移動制限凸部575においても同様に軸線に直交するラインに沿って線接触することができる。
【0085】
なお上記では、内歯車574が、軸線に直交する方向に移動した場合について説明したが、軸線を中心に回転して第2ハウジング240と接触した場合にも同様に、X軸に直交する方向に沿って線接触させることができる。このように、内歯車574の外周面と第2ハウジング240の内周面との接触を、線接触にとどめることができることから、動作する内歯車574からの振動を第2ハウジング240へ伝達しにくくすることができる。
【0086】
(実施の形態6)
上記の実施の形態では、対のストッパと移動制限凸部との接触が線接触となる構成であると説明したが、接触面積を小さくすることができれば他の接触態様とすることもできる。次に実施の形態6として、対のストッパと移動制限凸部との接触を点接触とした実施の形態について説明する。
【0087】
図25に示すように、移動制限凸部675は内歯車674の全幅にわたって形成されている。移動制限凸部675は、
図25から
図27に示すように、断面が三角形状でX軸方向に延設された第1部位675aと、第1部位675aのそれぞれの斜面に設けられた凸状の第2部位675bとを有している。第2部位675bは、第1部位675aの矩形状の斜面と一致する底面675c(
図26)と、頂点Pとによって規定される四角錐の形状を有している。したがって、第2部位675bの中で第1部位675aから最も離れた箇所は頂点Pとなる。なお、対のストッパ245は、
図23に記載のものと同様の構成である。すなわち、対のストッパ245の外面は、斜辺部245aで平面領域を構成している。
【0088】
内歯車674が、
図26に示すように第2ハウジング240に接触していない状態から、軸線に直交する方向、例えば図中上方に移動したとする。すると、
図27に示すように、移動制限凸部675は対のストッパ245間に差し込まれ、やがて頂点Pが対のストッパ245の斜辺部245aと接触する。このような接触は、対のストッパ245の斜辺部245aを構成する平面と、四角錐の形状を有する第2部位675bの頂点Pとによる点接触となる。
【0089】
なお上記では、内歯車674が、軸線に直交する方向に移動した場合について説明したが、軸線を中心に回転して第2ハウジング240に接触した場合も、頂点Pを対のストッパ245に点接触させることができる。このように、内歯車674の外周面と第2ハウジング240の内周面とが接触する範囲を、点接触という限られた範囲にとどめることができる。これにより、動作する内歯車674からの振動を第2ハウジング240へ伝達しにくくすることができる。
【0090】
(実施の形態7)
実施の形態6では、移動制限凸部675の斜面のそれぞれに四角錐状の第2部位675bを設け、対のストッパ245と1点で点接触が可能なように構成したが、点接触する個数は特に限定されない。次に、移動制限凸部の1つの斜面で、複数箇所で対のストッパと点接触することが可能な形態について説明する。
【0091】
図28に示すように、移動制限凸部775は内歯車774の全幅にわたって形成されている。移動制限凸部775は、
図28~
図30に示すように、断面が三角形状でX軸方向に沿って延設された第1部位775aと、三角形状の第1部位775aのそれぞれの斜面に一列に配列された4つの第2部位775bとを有している。それぞれの第2部位775bは円錐台状をなし、X軸方向に沿って一列で配列されている。なお、対のストッパ245は、
図23に記載のものと同様の構成である。すなわち、対のストッパ245の外面は、斜辺部245aで平面領域を構成している。
【0092】
内歯車774が、
図29に示すように第2ハウジング240に接触していない状態から、軸線に直交する方向、例えば図中上方に移動したとする。すると、
図30に示すように、移動制限凸部775は対のストッパ245間に差し込まれ、やがて円錐台状の第2部位775bが対のストッパ245と接触する。このような接触は、対のストッパ245の斜辺部245aを構成する平面と、円錐台状の第2部位775bとの接触となる。これにより、内歯車774と第2ハウジング240とを、X軸方向に沿った4箇所で点接触とさせることができる。
【0093】
なお上記では、内歯車774が、軸線に直交する方向に移動した場合について説明したが、軸線を中心に回転して第2ハウジング240に接触させた場合も、円錐台状の第2部位775bを対のストッパ245に点接触させることができる。このように、内歯車774の外周面と第2ハウジング240の内周面とが接触する範囲を、点接触という限られた範囲にとどめることができる。これにより、動作する内歯車774からの振動を第2ハウジング240へ伝達しにくくすることができる。
【0094】
(変形例)
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。上記の実施形態では、第2ハウジング40に対のストッパ45を設け、内歯車74に対のストッパ45の間に差し込む移動制限凸部75を設けた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、対のストッパ45と移動制限凸部75との設置箇所を入れ替え、第2ハウジング40の内周面に移動制限凸部75を設け、内歯車74の外周面に対のストッパ45を設ける構成を採用してもよい。
【0095】
また、対のストッパ45の断面を山形の形状とし、移動制限凸部75の断面を三角形状としたが、対のストッパの断面を三角形状とし、対のストッパの間に差し込まれる移動制限凸部の断面を山形の形状として、断面形状を入れ替えてもよい。
【0096】
また、対のストッパ45及び対応する移動制限凸部75の設置箇所の数は特に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した6箇所よりも多い設置数としてもよいし、少ない設置数としてもよい。
【0097】
また、実施の形態1において対のストッパ45の凸状の曲面と移動制限凸部75の平面とを接触させることで、両者を線接触させていたが、他の形状のものを接触させることにより線接触を実現することもできる。次に、線接触を実現する他の実施例を、
図31を参照しながら説明する。
図9の拡大図で示す構成と異なる点は、移動制限凸部(第1凸部)175の断面が三角形状ではなく丸みを帯びた山形状であることである。なお、第2ハウジング40の構成は、
図9の拡大図で示す構成と同様である。
図31において、アクチュエータが作動していない時の内歯車174を実線で図示している。また、二点鎖線で示した内歯車174は、アクチュエータが作動することにより上方へ移動し第2ハウジング40と接触した状態にある。
図31に示すように、対のストッパ45と移動制限凸部175との接触は、互いに凸状の曲面同士の接触であり、対のストッパ45と移動制限凸部175との接触点P6,P7で線接触となる。このように、本実施例では、膨らみを有する凸状の曲面同士を接触させることで、線接触を実現している。
【0098】
また、これに限定されず、第2ハウジング40が局所的に曲率の大きな凹状部を有し、内歯車74がより小さな曲率の凸状の曲面を有し、曲率の大きな凹状の曲面と、膨らみを有する凸状の曲面とを接触させることで、線接触を実現することも可能である。その他、線接触を実現するための構成自体は任意である。
【0099】
なお、上記の線接触を実現する他の実施例において、線接触する箇所の内歯車の構成と第2ハウジングの構成とを入れ替えることもできる。
【0100】
また、アクチュエータ1は、モータ10の回転を減速する減速機として、第1遊星歯車機構70と第2遊星歯車機構80との2段の遊星歯車機構を設けたが、その段数は任意に設定することができる。例えば、遊星歯車機構を3段以上設けてより減速比を高めるようにしてもよいし、1段の遊星歯車機構のみの構成としてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、ハウジングと内歯車とを分離させた構成を、高速で回転する1段目の機構である第1遊星歯車機構70のみに適用し、低速で回転する2段目の機構である第2遊星歯車機構80には内周面に内歯が形成されたハウジングを備える構成を採用した。しかしながら、2段目の機構である第2遊星歯車機構80にも、ハウジングと内歯車とを分離する構成を採用して、振動及び騒音の低減を図ってもよい。
【0102】
また、上記実施の形態では、モータ10から入力された回転を減速して、出力歯車86aから出力する減速機について説明したが、用途については限定されるものではない。例えば、
図8に示す出力軸86が設けられている部分を入力側としてモータの回転軸を接続し、
図7に示す太陽歯車71が設けられている部分を出力側として出力軸を接続してもよい。これにより、モータの回転を増速して出力する増速機として用いることができる。この場合も、
図7に示す第1遊星歯車機構70がより高速で動作することから、内歯車とハウジングとを分離させた構造を採用するのが好ましい。また、
図8に示す第2遊星歯車機構80にはモータの回転が直接伝達することから、内歯車とハウジングとを分離させた構造を必要に応じて採用するのが好ましい。また、ロボットや工作機械等の産業用機械、所謂コーヒーカップといった遊具に本発明を用いてもよい。
【0103】
また、種々の用途に本発明を用いるにあたり、3段以上の遊星歯車機構を設ける場合には、最も高速で動作する遊星歯車機構に内歯車とハウジングとの分離構造体を適用する。これにより、振動及び騒音の発生を効果的に低減することができる。また、最も低速で動作する遊星歯車機構は、発生させる振動及び騒音が小さいことから、内周面に内歯が形成されたハウジングを備える構成を適用する。これにより、内歯車とハウジングとを必要以上に分離構造にする必要がなくなるため、部品点数の増大や、組み立て作業や組み立てコストの増大を防ぐことができ、ひいては、生産コストを抑制することができる。
【0104】
また、上記実施の形態において、モータ10の動力を出力軸86まで伝達するために用いられる各歯車は、はすば歯車であると説明したが、他の歯車を用いてもよい。例えば平歯車を採用してもよい。これにより、はすば歯車を採用する場合と比べて、かみあわせ箇所でのがたつきが生じやすくなるが、そのような場合でも本発明の構成を採用することで遊星歯車装置の振動及び騒音を小さくする(抑制する)ことができる。
【0105】
また、内歯車とハウジングとの分離構造体は、遊星歯車装置の一部として用いられる場合について説明したが、その用途は限定されず他の歯車機構の一部として用いてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態では、3つの遊星歯車を用いて遊星歯車装置の遊星歯車機構を実現したが、本発明はこれに限らない。本発明では、例えば、1つ、または、3つ以外の複数の遊星歯車を用いた遊星歯車機構を採用して遊星歯車装置を実現してもよい。
【0107】
また、本発明を適用した遊星歯車装置は、自動車、ロボット、産業用機械、遊具など、減速機や増速機を使用する様々な機械や装置等に適用することができる。
【0108】
また、実施の形態2において、移動制限凸部275を内歯車274の+X軸方向側に形成していたが、-X軸方向側に形成してもよい。この場合、第2ハウジング40に形成された対のストッパ45を-X方向側にまで延ばすことで、-X軸方向側に形成された移動制限凸部を対のストッパの間に差し込むことができる。
【0109】
また、
図20に示した実施の形態4に係る内歯車474において、移動制限凸部475を等間隔で配置した。しかしながら、隣り合う移動制限凸部475間の距離は適宜変更することができ、異なる間隔で移動制限凸部475を配置してもよい。また、内歯車474には、X軸方向に沿って6つの移動制限凸部475を設けた。しかしながら、X軸方向に沿って形成する移動制限凸部475の数は任意に決定することができる。
【0110】
また、
図16~
図21に示した実施の形態2~4において、内歯車に形成されていた移動制限凸部のX軸方向における幅を小さくし、あるいは複数の移動制限凸部をX軸方向に沿って等間隔に配置して、X軸方向に連続した対のストッパに接触させていた。しかしながら、このような対応関係を反対にして、移動制限凸部をX軸方向に連続させ、対のストッパのX軸方向における幅を小さくし、あるいは複数のストッパに分けてX軸方向に等間隔に配置するようにしてもよい。
【0111】
また、
図25に示した実施の形態6に係る内歯車674において、頂点Pは第1部位675aの斜面の中心に位置させていたが、四角錐の形状を変えることによって頂点Pの位置を任意に変更してもよい。
【0112】
また、
図28に示した実施の形態7に係る内歯車774において、円錐台状の第2部位775bをX軸方向に沿って一列に配列したが、第2部位775bをどのように配置するかは任意に決定することができる。例えば、第2部位を縦横に沿って格子状に配置してもよいし、千鳥配置としてもよい。
【0113】
また、
図22~
図30に示した実施形態5~7において、内歯車の移動制限凸部に、対のストッパと線接触あるいは点接触するための構成が付加されていた。しかしながら、これらの構成を対のストッパ側に設けるようにしてもよい。例えば、実施の形態5においては、
図22に示すように移動制限凸部の断面の大きさをX軸方向にそって変化させるという構成を、対のストッパ側に適用しストッパの断面が中央で最大となるようにX軸方向に沿って変化させてもよい。実施の形態6においては、
図25に示す四角錐の形状を有する第2部位675bに相当する構成を、対のストッパ側に形成してもよい。実施形態7においては、
図28に示す円錐台状の第2部位775bに相当する構成を、対のストッパ側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 アクチュエータ
10 モータ
11 モータ本体
12 回転軸
20 遊星歯車装置
30 第1ハウジング
30a 開口
40 第2ハウジング
41 第1部位
42 第2部位
43 第3部位
43a 開口
44 円筒体
44a 内壁
45 ストッパ(第2凸部)
45a 立ち上がり部
45b 接続部
45c 頂部
46 円筒体
47 内歯部
50 ハウジング
60 遊星歯車機構
70 第1遊星歯車機構
71 太陽歯車
71a 太陽歯部
72 遊星歯車
72a 遊星歯部
73 キャリア
73a 収容開口
74 内歯車
74a 内歯部
74b 外周面
75 移動制限凸部(第1凸部)
75a 斜辺部
75b 頂部
75c 切欠き部
76 ピン
80 第2遊星歯車機構
81 太陽歯車
81a 太陽歯部
82 遊星歯車
82a 遊星歯部
83 キャリア
84 歯車保持部
84a 収容開口
85 出力軸保持部
85a 嵌合孔
86 出力軸
86a 出力歯車
87 ピン
90 接触領域
140 第2ハウジング
141 凹状部
174 内歯車
175 移動制限凸部(第1凸部)
240 第2ハウジング
244 円筒体
245 ストッパ
245a 斜辺部
274 内歯車
275 移動制限凸部
345 ストッパ
374 売り歯車
375a、b 移動制限凸部
474 内歯車
475 移動制限凸部
574 内歯車
575 移動制限凸部
674 内歯車
675 移動制限凸部
774 内歯車
775 移動制限凸部