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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/00 20060101AFI20240112BHJP
   B43K 1/12 20060101ALI20240112BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B43K1/00 110
B43K1/12 B
B43K8/02 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019228382
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094800
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛生
(72)【発明者】
【氏名】住友 一
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
(72)【発明者】
【氏名】大野 豪也
(72)【発明者】
【氏名】中田 瑛大
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 亜佑美
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052682(JP,A)
【文献】米国特許第02554335(US,A)
【文献】実開昭62-191483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
A45D 33/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具本体から供給されるインクを誘導するペン先を有する筆記具であって、前記ペン先は、筆記部と、該筆記部に筆記具本体からのインクを供給するためのインク誘導部を内部に収容した径方向の断面が長方形の保持体とを少なくとも備え、該保持体が前方から後方に渡り断面が捻れ形状であることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
保持体の捻れ角度が90°であることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン先の強度を維持した上で、筆記方向を視認することができる視認性を大幅に向上させたペン先を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペイントマーカー、アンダーラインマーカー等と称される筆記具のペン先は、幅広のペン芯を備えることにより幅広の線引きを可能にしたものであって、マーキングの視認性や作業性に優れているため幅広く使用されている。
ラインマーカー等の筆記具におけるペン先は、一般に合成樹脂繊維等を棒状等に集束したものや、高分子の焼結体などの多孔質部材に毛細管作用を付与し、これにより筆記具本体となる軸体から供給されるインクをペン先に導出することにより筆記可能としたものである。
【0003】
また、蛍光インクを筆記具本体となる軸体内に収容した筆記具の普及にともない、幅広の線引きを可能とした多くの構造、形状のペン先を用いた筆記具が市販されたことにより、使用者の用途に応じた筆記具の広い選択が可能となり、その作業性も快適なものとなっている。
【0004】
本出願人は、特許文献1に示すように筆記方向を視認できる視認部(可視部)を備えた筆記具を開示している。
このタイプの筆記具のペン先は、筆記部を視認することができるため、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものである。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1における筆記方向を視認できる視認部(可視部)を備えた筆記具は、視認部は枠のある窓越しに見るものであるため、必然的に枠部(インク誘導部等)の箇所が非視認部となり視認部の最大面積は制限されるものであった。
【0006】
一方、ペン先形状に特徴がある先行技術としては、例えば、1)筆記対象物に対して筆記を行う多角形状の筆記部を備え、この多角形状の筆記部の各辺のうち少なくとも一辺以上に筆記対象物に接触しない凹部を設けたことを特徴とする筆記具用ペン先(例えば、特許文献2参照)、2)互いに異なる色を呈するインキを含浸させた単一の先端部を構成する複数の芯体と、前記複数の芯体の先端部同士に介在する遮蔽板とを具備してなる筆記具であって、前記複数の芯体が前記遮蔽板から正面視において先端を含む一部が迫り出した形状を有するとともに、前記遮蔽板における前記芯体の先端部同士に介在する部分の正面視形状を入り隅及び出隅を形成しない形状としていることを特徴とする筆記具(例えば、特許文献3参照)、3)把持部とペン先とを有し、前記把持部の把持位置によって書く線の太さを太線と細線とから選択できるマーカーペンであって、前記把持部は、握る方向を案内する目印を外周に有し、前記目印は、前記太線または前記細線が書ける把持位置で把持部を握るように案内するマーカーペン(例えば、特許文献4参照)、4)筆記部が非対照型であり、該筆記部が回転可能であることを特徴とする筆記具(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2及び3の筆記具のペン先などは、ペン先形状に特徴を持たせて線幅を変えられるものであり、筆記面への視認性がないものであり、上記特許文献4の筆記具は、ペン先自体の形状的な特徴はないものであり、上記特許文献5の本願出願人の先行技術となる筆記具は、手で保持体を回転可能と便利なものであるが、位置調整が若干煩わしいものであり、上記特許文献2~5の各発明と本発明とはその技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-52682号公報(特許請求の範囲、図1等)
【文献】実用新案登録第3022921号公報(実用新案登録請求の範囲、図1等)
【文献】特開2015-104814号公報(特許請求の範囲、図1等)
【文献】特開2015-168140号公報(特許請求の範囲、図1等)
【文献】特開2014-50967号公報(特許請求の範囲、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題などに鑑み、これを解消しようとするものであり、ペン先の強度を維持した上で、筆記方向を視認することができる視認性を大幅に向上させたペン先を有する筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、筆記具本体から供給されるインクを誘導するペン先を有する筆記具であって、前記ペン先を特定構造などとすることにより、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明の筆記具は、筆記具本体から供給されるインクを誘導するペン先を有する筆記具であって、前記ペン先は、筆記部と、該筆記部に筆記具本体からのインクを供給するためのインク誘導部を内部に収容した断面の長辺と短辺が異なる保持体とを少なくとも備え、該保持体が捻れ形状であることを特徴とする。
保持体の捻れ角度は90°であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構造により、ペン先の強度を維持した上で、筆記方向を視認することができる視認性を大幅に向上させたペン先を有する筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の筆記具の実施形態の一例を示すものであり、ペン先を保護するキャップが取り付けられた状態を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視の縦断面図である。
図2図1の筆記具のキャップを取り外した状態の各図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視の縦断面図である。
図3】本発明の筆記具の使用状態の要部の一例を示す各図面であり、(a)は部分拡大斜視図、(b)(a)を180°展開した状態の部分拡大斜視図である。
図4図2の筆記具の要部を示す各図面であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は側面図であるである。
図5】本発明の筆記具におけるペン先において、筆記部を取り付ける前の一例を示す各図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は(e)の縦断面図、(h)は底面図である。
図6】筆記部を取り付けた状態のペン先の一例を示す各図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は(e)の縦断面図、(h)は底面図である。
図7】筆記部、中継芯を取り付けた状態のペン先の一例を示す各図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は(e)の縦断面図、(h)は底面図である。
図8】本発明の筆記具の使用状態の一例において、ペン先の視認性が大幅に向上した概要を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1図4は本発明の筆記具の実施形態の一例を示す各図面であり、図1はペン先を保護するキャップが取り付けられた状態を示す各図面、図2図1からキャップを取り外した状態を示す各図面、図3は使用状態の要部の一例を示す各図面、図4図2の要部を示す各図面、図5は筆記部を取り付ける前のペン先を示す各図面、図6は筆記部を取り付けた状態のペン先の一例を示す各図面、図7は中継芯を取り付けた状態のペン先の一例を示す各図面、図8は本発明の筆記具の使用状態の一例において、ペン先の視認性が大幅に向上した概要を示す部分斜視図である。
本実施形態の筆記具Aは、図1(a)~(c)に示すように、筆記具本体10から供給されるインクを誘導するペン先20を有し、該ペン先20を保護するクリップ部60aを有するキャップ60が筆記具本体10の先端側の外周に着脱自在に取り付けられている。
【0015】
筆記具本体10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、筆記具用インクを含浸したインク吸蔵体15を収容する有底筒状体から構成されると共に、先端側開口部11には、ペン先20を固着する先軸16が嵌合により取り付けられている。
筆記具本体10は、例えば、ポリプロピレン等からなる樹脂を使用して筒状に成形され、筆記具本体(軸体)として機能する。筆記具本体10は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。
前記キャップ60は、先軸16の先端側外周に着脱自在に取り付けられる形態となっている。
【0016】
インク吸蔵体15は、水性インク、油性インク、熱消去性インクなどの筆記具用インクを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体15は、筆記具本体10内に収容保持されている。
【0017】
用いることができる筆記具用インクの具体的組成等は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができ、例えば、アンダーラインペン等ではインクに蛍光色素、例えば、ベーシックバイオレット11、ベーシックイエロー40、熱変色性マイクロカプセル顔料などを含有させることできる。
これらのインクは、インク配合成分種、各配合量を調整することなどにより、インク粘度(25℃:コンプレート型粘度計)1~5mPa・s、表面張力30~60mN/mに設定される。
【0018】
なお、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、例えば、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以上のαオレフィン系コポリマーを含む粘弾性体をキャップ60の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易かつ低摩耗な摩擦体とすることができる。特に炭素原子数2から20のαオレフィンから選ばれる少なくとも2種のαオレフィンに由来する構成単位を含んで構成されることが好ましい。コポリマーを形成するαオレフィンは、例えば、4-メチル-1-ペンテンと、4-メチル-1-ペンテン以外のαオレフィンの少なくとも1種とを含む。4-メチル-1-ペンテン以外のαオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等を挙げることができ、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。αオレフィン系コポリマーは、例えば、5モル%以上95モル%以下の4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、5モル%以上95モル%以下の4-メチル-1-ペンテン以外のαオレフィンに由来する構成単位とを含むことができる。またαオレフィン系コポリマーは、10モル%以下の非共役ポリエンに由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。αオレフィン系コポリマーは、135℃のデカリン中での極限粘度(dL/g)が、例えば、0.01dL/g以上5dL/g以下であり、好ましくは0.5dL/g以上2.5dL/g以下である。またαオレフィン系コポリマーの重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、例えば、1以上3.5以下、好ましくは1.5以上2.5以下である。また重量平均分子量(Mw)は、例えば、1,000以上2,500,000以下である。なお、αオレフィン系コポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値である。また、前記摩擦体は、前記αオレフィン系コポリマーを含む樹脂組成物で構成されていてもよい。樹脂組成物は、前記αオレフィン系コポリマーに加えて、耐候安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤等の添加剤等を含むことができる。軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、ポリエチレンワックス、パラフィン系オイル等の石油系物質;コールタール類;脂肪油;ロウ類;エステル系可塑剤などを挙げることができる。
【0019】
ペン先20は、図1(c)、図2(c)、並びに、図5図7に示すように、少なくとも、保持体30と、該保持体30の先端側に固着される筆記部40と、保持体30内に挿着される中継芯50とを有している。
【0020】
保持体30は、図5(a)~(h)に示すように、上記筆記部40、中継芯50を固定して、筆記具本体10の先軸16も先端開口部に嵌合等により固着されるものであり、膨出状の本体部31と、該本体部31の前方側に、フランジ部32と、該フランジ部32には前方側に強度を損なうことなく筆記方向の視認性を最大化するために、断面の長辺と短辺が異なる保持体部33を備え、該保持体部33が捻れ部34を有する形状、本実施形態では右に90°捻れる形状となっており、かつ、該保持体30内には本体部31、保持体部33に連設して貫通孔となるインク誘導孔35を有するものである。このインク誘導孔35に中継芯50が挿入され、前記筆記具本体10内に収容されるインク吸蔵体15のインクを該中継芯50を介して筆記部40に効率よく供給される構成となっている。
【0021】
また、本実施形態の上記保持体30の捻れは、上述の如く、90°右に捻れ形状としたが、90°左に捻れ形状としてもよく、この場合、アラビア語などのマーカーの際に右から左側にマーカー作業する際に便利となる。なお、保持体30の保持体部33の捻れ角度は、左右どちらも90°が好ましい形態で説明したが、これらの捻れ角度は任意であり、筆記具種、マークの対象などにより、0°~90°の範囲で任意の捻れ角度を設定することができる。
また、上記本体部31の幅方向外周面には、凹状の嵌合部31aが形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝31bと屈曲状の空気流通溝31cが形成されている。
【0022】
このように構成される保持体30全体は、例えば、金属、ガラス、ゴム、樹脂などから構成することができる。樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から成形することができ、保持体30の保持体部33は捻れ形状となっているので、視認性を有していても、非視認であっても良いものである。
また、保持体30は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法等により成形することができる。
【0023】
筆記部40は、多孔体から構成されるものであり、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。多孔体を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができる。
本実施形態では、各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結体から構成されている。
【0024】
この筆記部40は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっており、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部40は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅は1mm以上、更に好ましくは、描線幅は2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。また、この筆記部40では、好適な描線濃度となるように最適な気孔率が設定されている。
このように構成される筆記部40は、図6(a)~(i)に示すように、保持体30の保持部33の先端面33aに、接着剤による接着又は超音波溶着等の溶着により固着される構成となっている。
【0025】
中継芯50は、図7(a)~(i)に示すように、保持体30のインク誘導孔35に挿着されており、筆記具本体10内のインク吸蔵体15に吸蔵されるインクを効率よく筆記部40へ誘導(供給)するものであれば特に限定されず、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体から構成される。
【0026】
好ましい中継芯50としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点から、繊維芯が好ましい。また、用いる筆記部40の気孔率、大きさ、硬度などは、インク種、筆記具の種類等により、変動するものであり、例えば、気孔率では30~60%とすることが好ましい。また、本発明において、「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、中継芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を中継芯の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(中継芯30の見掛け体積)×100
この中継芯50は、インク吸蔵体15よりの流出性を高める点から、気孔率が30~60%であることが望ましい。本実施形態では、中継芯50は、ポリエチレン繊維を焼結してなる不織布から構成されたものである。
【0027】
このように構成される筆記具Aでは、筆記具本体10内に筆記具用インクを吸蔵したインク吸蔵体15を挿入して保持せしめ、先端側は先軸16を介して上記構成のペン先20を順次嵌合等により固着せしめることにより、簡単に筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体15に吸蔵されたインクは毛管力により中継芯50を介して筆記部40に効率的に供給され、筆記に供されるものとなる。
【0028】
この筆記具Aのペン先20は、図1図4図8などに示すように、筆記方向を視認することができる視認性などは、従来の図9(d)に示されるような視認部が窓越しに見るものでなく、図8に示すように、保持体30の捻れ形状により、筆記方向を見ることができる視認部は遮るものはなく、かつ、保持体30は大きさを縮小することなく、上記実施形態では90°の捻れ形状となっているので、保持体30の強度も損なわれない形態となっている。
従って、この筆記具Aによれば、簡単な構造により、ペン先の強度を維持した上で、筆記方向を視認することができる視認性を大幅に向上させたペン先を有する筆記具が得られ、筆記の際に、遮るものがない保持体30の筆記方向となる視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
また、この筆記具Aは、インク流出性が良好であるので、ペン先20の移動速度を速くして筆記しても、インクの供給は良好に追従し、筆跡のカスレ等を生じることがない筆記具が得られることなる。
【0029】
本発明の筆記具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
上記実施形態では、シングルタイプの筆記具を示したが、筆記具本体を筒状本体とし、ペン先20の反対側に汎用のペン先50を追加してツインタイプの筆記具としてもよいものであり、また、ノック式によりペン先20が出没する筆記具であってもよいものである。
上記図1図8の実施形態では、筆記具本体の軸体などの断面を円形軸に形成したが、三角形状、四角形以上の方形状などの異形形状、楕円形状にしてもよいものである。
更に、上記各実施形態では、筆記具用のインク(水性インク、油性インク、熱変色性インク)で説明したが、液状化粧料、液状薬剤、塗布液、修正液などの液状体としてもよいものである。
【実施例
【0030】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
下記構成及び図1図8に準拠するペン先を有する筆記具、下記組成の筆記具用インク(2種)を使用した。ペン先の寸法等は下記に示す大きさ等を使用した。
【0032】
(ペン先20の構成)
保持体:ポリカーボネート樹脂製、全長15mm×筆記取付部2×6mm、捻れ角度:右90°
インク吸蔵体15:PET繊維束、気孔率85%、φ6×80mm
筆記部40:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、厚さ2mm×筆記幅2×6mm
中継芯50:PET製繊維束芯、気孔率:65%、φ1.2×20mm
筆記具本体10、先軸15、キャップ60:ポリプロピレン(PP)製
【0033】
(筆記具用インク組成A:インク色:蛍光黄色)
筆記具用インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
保湿剤:トリメチルグリシン(グリシンベタイン) 7.5質量%
ペンタエリスリトール 4.5質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40.0質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
フッ素系界面活性剤:サーフロン8111N(AGCセイミケミカル社製) 0.2質量%
水溶性有機溶剤:エチレングリコール 3.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 43.5質量%
粘度(25℃):3.0mPa・s(コンプレート型粘度計、TOKIMEC社製、TV-20)
表面張力(25℃):33mN/m(自動表面張力計、協和界面科学社製、DY-300)
【0034】
(筆記具用インク組成B:インク色:青)
筆記具用インクとして、下記組成の熱変色性インク(合計100質量%)を使用した。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料 23.0質量%
・電子供与性呈色性有機化合物 3部
3‘,6’‐ビス[フェニル(3‐メチルフェニル)アミノ]‐スピロ[イソベンゾフラン‐1(3H),9‘‐[9H]キサンテン]‐3‐オン
・顕色剤 3部
4‐4’‐[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ジフェニルを5.00部、4‐4‘‐(2‐エチルヘキシリデン)ビスフェノール
・反応媒体 50部
シクロヘキシルメチル‐4‐ビフェニルアセテート
高分子凝集剤:ヒドロキシエチルセルロース(ダウケミカル日本製) 0.4質量%
アクリル系高分子分散剤(日本ルーブリゾール(株)製) 0.4質量%
防腐剤 ピリジン‐2‐チオール 1‐オキシド,ナトリウム塩(ロンザジャパン社製)
0.2質量%
防腐剤 3‐ヨード‐2‐プロピニル ブチルカーバメート(ロンザジャパン社製)
0.2質量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1.0質量%
比重調整剤:ポリタングステン酸ナトリウム(SOMETU社製) 13.0質量%
水(溶媒):イオン交換水 61.8質量%
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は1.9μm、完全消色(無色)温度は61℃、完全発色温度は-20℃
粘度(25℃):5.5mPa・s(コンプレート型粘度計、TOKIMEC社製、TV-20、回転数30rpm)
表面張力(20℃):33mN/m(自動表面張力計、協和界面科学社製、DY-300)
【0035】
(実施例1)
この図1図8準拠での筆記具用インク組成Aをインク吸蔵体15に吸蔵させた筆記具では、筆記部40からのインク流出によりアンダーラインマーカーとして機能し、その際、筆記方向を見ることができる視認性は保持体30の捻れ形状により遮ることないので視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができ、かつ、保持体30の強度も劣ることがないことが確認された。
更に、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S 6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/sで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記好ましいインク組成のものを使用しているため、ペン先20のインク流量(15mg/m)も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することが判った。
【0036】
(実施例2)
この図1図8準拠での筆記具用インク組成B(熱変色性インク)をインク吸蔵体15に吸蔵させた筆記具では、筆記部40からのインク流出によりアンダーラインマーカーとして機能し、その際、筆記方向を見ることができる視認性は保持体30の捻れ形状により遮ることないので視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができ、かつ、保持体30の強度も劣ることがないことが確認された。
また、自動筆記装置にこの筆記具をセットして、JIS S 6037に準拠した試験方法に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/sで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、上記実施例1と同様に、ペン先20のインク流量(15mg/m)も良好で、ペン先の乾燥を抑えながらも、描線の乾燥性、インクの低温安定性に優れ、描線に滲みや裏抜けのない機能を発現することが判った。
更に、インク組成は、熱変色性インクであり、これにより紙面に筆記した描線(青色描線)を当該筆記具に備えたキャップ60、具体的にはキャップ60の頂部に形成したJIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以上のαオレフィン系コポリマーを含む粘弾性体(頂部R3×φ3×長さ15mm)を用いて擦過動作により摩擦熱を発生させたところ、筆記描線は容易に消色することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の筆記具では、アンダーラインペン、ペイントマーカー、油性マーカー、水性マーカーと呼ばれるタイプの筆記具に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 筆記具本体
20 ペン先
30 保持体
40 筆記部
50 中継芯
図1
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図8