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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B66B7/06 N
B66B7/06 R
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020012260
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2020121885
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】102019000001257
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519383223
【氏名又は名称】プリズミアン ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ジョルジョ マリア デ ライ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ サルキ
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-186164(JP,A)
【文献】特開2009-126618(JP,A)
【文献】特開2017-160050(JP,A)
【文献】実開昭63-120312(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0125720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターシステム(100)であって、
1又は2以上の設備電気機器を含むエレベーターかご(110)と、
エレベーターかご(110)が移動する昇降路(200)と、
昇降路の壁(210)に又はその中に結合された電気供給源(170)及び流体供給源(180)と、
エレベーターかご(110)と昇降路の壁(210)とに結合された移動ケーブル(300)と、
移動ケーブル(300)の揺れ振幅を検出するように構成されたセンサシステム(410、420、430、440)と、
センサシステム(410、420、430、440)と流体供給源(180)とに結合された処理及び制御ユニット(500)と、を有し、
移動ケーブルは、導電体及び/又はデータキャリア(310)を含み、導電体及び/又はデータキャリア(310)の第1の端部は、電気供給源(170)に結合され、導電体及び/又はデータキャリア(310)の第2の端部は、エレベーターかご(110)の設備電気機器に作動的に結合され、
移動ケーブルは、更に、導電体及び/又はデータキャリア(310)を包囲する保護層(340)を有し、保護層(340)は、外径を有し、
移動ケーブルは、更に、ダクト(320)を有し、ダクト(320)の開放した第1の端部は、流体供給源(180)に結合され、ダクト(320)の開放可能な第2の端部は、エレベーターかご(110)に結合され、
処理及び制御ユニット(500)は、揺れ振幅データをセンサシステム(410、420、430、440)から受信し、揺れ振幅が予め決められた閾値を超えるとき、流体供給源(180)を作動させるように構成される、エレベーターシステム(100)。
【請求項2】
移動ケーブル(300)の保護層(340)は、前記ダクト(320)を包囲する、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項3】
移動ケーブル(300)は、保護層(340)と前記ダクト(320)を包囲するジャケット(350)を含む、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項4】
移動ケーブル(300)は、内径を有するジャケット(350)と、ジャケットの内径と保護層(340)の外径との間の隙間を含み、前記隙間は、前記ダクト(320)を構成する、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項5】
センサシステム(410、420、430、440)は、移動ケーブル(300)の中に含まれる感知ツール(410)を含み、感知ツール(410)は、光学機器(420)に作動的に結合され、光学機器(420)は、エレベーターかご(110)又は昇降路の壁(210)に又はその中に結合される、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項6】
感知ツール(410)は、保護層(340)によって包囲される、請求項5に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項7】
処理及び制御ユニット(500)は、光学機器(420)に結合される、請求項5に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項8】
センサシステム(410、420、430、440)は、位置監視システムを含み、位置監視システムは、エレベーターかご(110)又は昇降路(200)に結合された1又は2以上のカメラ(430)を含む、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項9】
センサシステム(410、420、430、440)は、複数のレーザ遠隔測定器(440)を含むレーザ式位置監視システムを含み、レーザ遠隔測定器(440)は、エレベーターかご(110)及び/又は昇降路(200)に結合される、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項10】
レーザ遠隔測定器(440)は、昇降路の床に面するエレベーターかご(110)の外側の底部に、又は、エレベーターかご(110)の正射影内の昇降路の床に、円形のアレイをなして位置決めされる、請求項に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項11】
更に、補助流体供給源(190)を含み、補助流体供給源(190)は、エレベーターかご(110)に又はその中に結合され、ダクト(320)の開放可能な第2の端部と処理及び制御ユニット(500)に作動的に結合される、請求項1に記載のエレベーターシステム(100)。
【請求項12】
エレベーターシステム(100)の移動ケーブル(300)の揺れ振幅を減衰させる方法であって、
エレベーターかご(110)を、少なくとも1つの壁(210)を有する昇降路(200)内に設ける段階と、
昇降路の壁(210)に又はその中に結合された電気供給源(170)及び流体供給源(180)を準備する段階と、
エレベーターかご(110)と昇降路の壁(210)とに結合された移動ケーブル(300)を準備する段階と、を含み、
移動ケーブル(300)は、導電体及び/又はデータキャリア(310)を含み、導電体及び/又はデータキャリア(310)の第1の端部は、電気供給源(170)に作動的に結合され、導電体及び/又はデータキャリア(310)の第2の端部は、エレベーターかご(110)の設備電気機器に作動的に結合され、
移動ケーブル(300)は、更に、導電体及び/又はデータキャリア(310)を包囲する保護層(340)と、ダクト(320)を含み、ダクト(320)の開放した第1の端部は、流体供給源(180)に結合され、ダクト(320)の開放可能な第2の端部は、エレベーターかご(110)に結合され、
更に、エレベーターかご(110)及び/又は昇降路(200)に結合されたセンサシステム(410、420、430、440)を準備する段階と、
センサシステム(410、420、430、440)と流体供給源(180)とに結合された処理及び制御ユニット(500)を準備する段階と、
移動ケーブル(300)の揺れ振幅の閾値を設定する段階と、
移動ケーブル(300)の揺れ振幅をセンサシステム(410、420、430、440)によって検出する段階と、
揺れ振幅のデータをセンサシステム(410、420、430、440)から処理及び制御ユニット(500)に送信する段階と、
揺れ振幅が前記閾値を超えたとき、移動ケーブルの揺れ振幅が前記閾値よりも小さくなるように戻るまで、移動ケーブル(300)の前記ダクト(320)を加圧するように流体供給源(180)を作動させる段階と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に高層ビルのための、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、エレベーターシステムは、一般的には、昇降ケーブルを介して釣合い重りに結合されたエレベーターかごを有する。昇降ケーブルは、昇降路の一番上に通常は配置された滑車又は滑車システムを通り、モータが設けられ、モータは、滑車又は滑車システムを作動させることによって、昇降ケーブルを介してエレベーターかごを上方又は下方に移動させる。昇降ケーブルは、普通、1又は2以上のステンレスのロープ又はベルトによって作られる。
【0003】
一般的には、エレベーターシステムはまた、電力及びデータ信号をエレベーターかごに送るための移動ケーブルを含む。特に、移動ケーブルは、エレベーターかごの設備電気機器のための電力を送ることができ、かかる設備電気機器は、例えば、照明デバイス、ディスプレイ、インターホン、空調デバイス、及び換気システムである。エレベーターかごの「設備用電気機器」は、エレベーターかごの移動に関わらない全ての電気機器を意味する。移動ケーブルは、普通、導電体及び/又は光ファイバ等のデータキャリアを収容するシースで作られ、選択的には、シースは、絶縁層によって被覆される。
【0004】
移動ケーブルは、普通、一方の端部のところでエレベーターかごに固定され、他方の端部のところで配電スポットに固定され、配電スポットは、昇降路の1つの側壁に、例えば昇降路の長手方向長さに対する中間位置に配置される。移動ケーブルは、エレベーターかごの移動に従って、曲がったり延びたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許第101549816号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高いビルのための増大した要望に鑑みて、エレベーターシステムを製造する際の新しい課題、特に移動ケーブルに関する課題が存在する。
【0007】
特に高層ビル用のエレベーターのための移動ケーブルは、その揺れに起因する問題が発生することがある。
【0008】
高層ビル用のエレベーターシステムでは、エレベーターかごは、非常に高速で、例えば約10m/sで移動することがある。エレベーターかごの加速度及び速度により、強い乱流を昇降路の壁内に発生させることがある。かかる乱流だけでなく(例えば、厳しい天候条件又は地震の場合の)ビル運動により、エレベーターかごと昇降路の壁の間で自由に垂れ下がっている移動ケーブルを振動させることがある。
【0009】
(特に平らな時の)ケーブルの形態及び/又はケーブルの長さに依存して、振動(すなわち、揺れ)は、大きい振幅を発生させることがあり、これにより、移動ケーブルを昇降路突部とからませ、及び/又は、例えば昇降路の壁と擦れることによって摩耗する現象が生じることがある。
【0010】
移動ケーブルが壁と擦れたり昇降路内の要素に引掛かったりすると、移動ケーブルは、急速に劣化して、交換することが必要になり、それにより、維持費が増大する。
【0011】
更に、移動ケーブルは、普通、作動サイクルの範囲で耐えるように設計されるので、振動によって与えられる追加の急速な変形により、疲労に関連した問題を生じさせることがある。
【0012】
上述した理由により、特に高層ビル用のエレベーターシステムは、移動ケーブルの揺れを防止するシステムを必要としている。
【0013】
特許文献1は、移動ケーブルのための揺れ減衰装置を開示し、この揺れ減衰装置では、移動ケーブルは、可撓性の中空チューブと一体的に取付けられる。液体又は粉末が、中空チューブ内に密封され、移動ケーブルのU字形曲げ部分に留まるようにされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、特に超高速ビル用のエレベーターシステムの移動ケーブルに起こりうる揺れを制限する問題に直面した。
【0015】
本出願人は、移動ケーブルの可撓性を変更することによって、特に、選択された揺れ振幅に応答して移動ケーブルを硬化させることによって、移動ケーブルの揺れを減衰させることができることを見出した。
【0016】
このとき、本出願人は、ダクトを移動ケーブル内に設けること、及び、ダクトを加圧するように作動すべき流体供給源にダクトを結合することを認識した。
【0017】
ケーブルダクトの加圧は、移動ケーブルの振動特性を変化させ、特に、許容限界を超える移動ケーブルの揺れを引き起こす励起振動モードを減衰させる。
【0018】
更に、本出願人は、移動ケーブルの揺れを検出することができる感知システム有するエレベーターシステムを提供することを考えた。この場合、感知システムの検出に基づいて、流体供給源の作動、従って、移動ケーブルの剛性及び揺れ程度を制御することが可能である。
【0019】
従って、第1の実施形態によれば、本開示は、エレベーターシステムに関し、かかるエレベーターシステムは、1又は2以上の設備電気機器を含むエレベーターかごと、エレベーターかごが移動する昇降路と、昇降路の壁に又はその中に結合された電気供給源及び流体供給源と、エレベーターかごと昇降路の壁とに結合された移動ケーブルと、移動ケーブルの揺れ振幅を検出するように構成されたセンサシステムと、センサシステム及び流体供給源に結合された処理及び制御ユニットと、を有し、移動ケーブルは、導電体及び/又はデータキャリアを含み、導電体及び/又はデータキャリアの第1の端部は、電気供給源に結合され、導電体及び/又はデータキャリアの第2の端部は、エレベーターかごの設備電気機器に作動的に結合され、移動ケーブルは、更に、導電体及び/又はデータキャリアを包囲する保護層を有し、保護層は、外径を有し、移動ケーブルは、更に、ダクトを有し、ダクトの開放した第1の端部は、流体供給源に結合され、ダクトの開放可能な第2の端部は、エレベーターかごに結合され、処理及び制御ユニットは、揺れ振幅データをセンサシステムから受信し、揺れ振幅が予め決められた閾値を超えるとき、流体供給源を作動させるように構成される。
【0020】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「電気供給源」は、電流及び/又はデータを供給する供給源を意味する。
【0021】
第2の側面では、本開示は、エレベーターシステムの移動ケーブルの揺れ振幅を減衰させる方法に関し、かかる方法は、エレベーターかごを、少なくとも1つの壁を有する昇降路内に設ける段階と、昇降路の壁に又はその中に結合された電気供給源及び流体供給源を準備する段階と、エレベーターかごと昇降路の壁とに結合された移動ケーブルを準備する段階と、を含み、移動ケーブルは、導電体及び/又はデータキャリアを含み、導電体及び/又はデータキャリアの第1の端部は、電気供給源に作動的に結合され、導電体及び/又はデータキャリアの第2の端部は、エレベーターかごの設備電気機器に作動的に結合され、移動ケーブルは、更に、導電体及び/又はデータキャリアを包囲する保護層と、ダクトを含み、ダクトの開放した第1の端部は、流体供給源に結合され、ダクトの開放可能な第2の端部は、エレベーターかごに結合され、更に、エレベーターかご及び/又は昇降路に結合されたセンサシステムを準備する段階と、センサシステムと流体供給源とに結合された処理及び制御ユニットを準備する段階と、移動ケーブルの揺れ振幅の閾値を設定する段階と、移動ケーブルの揺れ振幅をセンサシステムによって検出する段階と、揺れ振幅のデータをセンサシステムから処理及び制御ユニットに送信する段階と、揺れ振幅が前記閾値を超えたとき、移動ケーブルの揺れ振幅が前記閾値よりも小さくなるように戻るまで、移動ケーブルのダクトを加圧するように流体供給源を作動させる段階と、を含む。
【0022】
本開示のエレベーターシステムでは、移動ケーブルに含まれるデータキャリアは、銅線であってもよいし、光ファイバ(1又は2以上の保護層によって包囲された光導波路)であってもよいし、その両方であってもよい。
【0023】
本開示のエレベーターシステムでは、移動ケーブルは、1又は2以上のダクトを含むのがよい。
【0024】
1つの実施形態では、移動ケーブルの保護層は、チューブの形態のダクトを包囲する。
【0025】
変形実施形態では、移動ケーブルは、保護層とチューブの形態のダクトを包囲するジャケットを含む。
【0026】
これらの実施形態は、移動ケーブルと電気供給源及び流体供給源との結合を容易にする。
【0027】
更なる実施形態では、移動ケーブルは、ジャケットを有し、ジャケットの内径と保護層の外径との間の隙間がダクトを構成する。
【0028】
この場合、ダクトの加圧による移動ケーブルの可撓性の変化は非常に速く、その理由は、ダクトが、保護層の断面を包み込む断面を有するからである。
【0029】
本開示のエレベーターシステムでは、導電体及び/又はデータキャリアを電気供給源に結合させる移動ケーブルの第1の端部は、流体供給源に結合されたダクトの開放した第1の端部に隣接しているが、作動的に分離される。同様に、エレベーターかごの設備電気機器に作動的に結合された移動ケーブルの第2の端部は、ダクトの開放可能な第2の端部に隣接しているが、作動的に分離される。
【0030】
1つの実施形態では、センサシステムは、感知ツールを含み、感知ツールは、例えば保護層内の、移動ケーブル内に設けられた例えば光ファイバ形状センサの形態をなし、また、移動ケーブルの変形を検出するために、エレベーターかご又は昇降路の壁に又はその中に結合された光学機器に作動的に結合される。センサシステムのこの形態は、取付けるのに容易であり、その理由は、感知ツールが移動ケーブル内に直接に含まれ、従って、光学機器を、例えば昇降路の壁に取付けるだけでよいからである。1つの実施形態では、光学機器は、流体供給源及び電気供給源の近くの位置に取付けられる。
【0031】
1つの実施形態では、流体供給源及び電気供給源は、エレベーターかごの走路のほぼ中間に取付けられる。
【0032】
この実施形態によれば、処理及び制御ユニットは、光学機器に結合され、この実施形態では、処理及び制御ユニットは、揺れ振幅によって生じ且つ光ファイバ形状センサ及び光学機器によって検出された移動ケーブルの変形(捻り、伸び等)に基づいて、流体供給源を作動させる(又はさせない)ようにプログラムされる。
【0033】
変形実施形態では、センサシステムは、位置監視システムを含み、位置監視システムは、エレベーターかご又は昇降路に結合された1又は2以上のカメラを含む。カメラは、昇降路の長手方向軸線を横断する平面における移動ケーブルの変位を検出するように位置決めされる。
【0034】
この場合、処理及び制御ユニットは、揺れ振幅が閾値を超えたことを決定し且つそれに従って流体供給源を作動させる(又はさせない)ために、カメラによって取得した画像を処理するようにプログラムされる。
【0035】
更なる変形実施形態では、センサシステムは、レーザ式監視システムを含み、レーザ式監視システムは、エレベーターかご及び/又は昇降路、例えば昇降路の底部に結合された複数のレーザ遠隔測定器を含む。
【0036】
1つの実施形態では、複数のレーザ遠隔測定器は、昇降路の床に面するエレベーターかごの外側底部又はエレベーターかごの正射影内の昇降路の床の中又は上に、実質的に円形のアレイをなして位置決めされる。レーザ遠隔測定器は、第1の端部から第2の端部に向かう移動ケーブルの通常の経路を妨害することを回避するように、且つ、予め決められた閾値よりも小さい任意の揺れ振幅を妨害することを回避するように位置決めされるべきである。
【0037】
この場合、処理及び制御ユニットは、レーザ遠隔測定器によって検出された移動ケーブルの変位に基づいて、揺れ振幅を決定するようにプログラムされる。
【0038】
このように、揺れ振幅の検出は、非常に正確である。
【0039】
1つの実施形態では、エレベーターシステムは、補助流体供給源を含み、補助流体供給源は、エレベーターかごに又はその中に結合され、移動ケーブルのダクトの開放可能な第2の端部及び処理及び制御ユニットに作動的に結合され、処理及び制御ユニットは、流体供給源と補助流体供給源の組合せ作用によってダクトを加圧するために、補助流体供給源を作動させるように構成される。
【0040】
本明細書及び特許請求の範囲において、他の指示がない限り、量、分量、及び百分率などを表す全ての数は、全ての事例において、用語「約」によって修正されるとして理解すべきである。また、全ての範囲は、開示された最大点及び最小点の任意の組合せを含み、且つ、その任意の中間範囲を含み、かかる中間範囲は、具体的に列挙されることもあるし、そうでないこともある。
【0041】
また、用語「a」及び「an」は、開示の要素及び構成要素を説明するのに使用される、これは、単に便宜的にかつ開示の一般的な意味を与えるために行われる。本明細書は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、それが他のことを意味することが明らかでない限り複数形を含む。
【0042】
更なる特徴は、添付図面を参照する以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本開示の第1の実施形態によるエレベーターシステムの概略図である。
図2】本開示の第2の実施形態によるエレベーターシステムの概略図である。
図3】Aは、本開示の第3の実施形態によるエレベーターシステムの概略図であり、Bは、エレベーターかごの底部からの本開示の第3の実施形態の図である。
図4】本開示の第4の実施形態によるエレベーターシステムの概略図である。
図5a】本開示によるエレベーターシステムに含まれる移動ケーブルの概略的な断面図である。
図5b】本開示によるエレベーターシステムに含まれる別の移動ケーブルの概略的な断面図である。
図5c】本開示によるエレベーターシステムに含まれる別の移動ケーブルの概略的な断面図である。
図5d】本開示によるエレベーターシステムに含まれる別の移動ケーブルの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示によるエレベーターシステム100を図1図4に示す。
【0045】
エレベーターシステム100は、エレベーターかご110と、エレベーターかご110が移動することができる昇降路200と、釣合い重り120と、エレベーターかご110を釣合い重り120に結合する昇降ケーブル130と、エレベーターかご110と昇降路の壁210に結合された移動ケーブル300を含む。
【0046】
特に、昇降ケーブル130は、通常は昇降路200のいちばん上に配置された滑車又は滑車システム140を通過する。滑車又は滑車システム140は、それを作動させるモータ150に作動的に結合され、エレベーターかご110を昇降ケーブル130によって上方又は下方に移動させる。
【0047】
モータ150は、コントローラ160に作動的に結合され、コントローラ160は、例えばエレベーターかご110の呼出しボタンを押すことによって、ユーザが発生させた指令信号に従ってモータ150を作動させるように構成される。
【0048】
エレベーターかご110は、1又は2以上の設備電気機器を含み、かかる設備電気機器は、例えば、1又は2以上の照明機器、1又は2以上のディスプレイ、インターホン、空調システム、及び換気システムである。
【0049】
電気供給源170及び流体供給源180は、昇降路の壁210に又はその中に結合される。特に、電気供給源170及び流体供給源180は、移動ケーブル300の結合箇所のところで互いに近くに位置決めされる。
【0050】
電気供給源170は、エレベーターかご110の1又は2以上の設備電気機器のための電力を供給するのに適しているのがよい。例えば、電気供給源170は、1kW、3kW、又は8kWまでの電力を供給するのに適している。これに加えて又はこれに代えて、電気供給源170は、エアコンを調節するための温度値等のデータ、及びエレベーターかごの作動のための技術情報を供給してもよい。
【0051】
流体供給源180は、液体を収容するタンク又は給水システムに結合されたポンプ、であってもよいし、圧縮機であってもよい。
【0052】
図5a~図5dに示すように、移動ケーブル300は、2つの導電体及び/又はデータキャリア(例えば、光ファイバ)310と、ダクト320を含む。導電体及び/又はデータキャリア310の第1の端部は、電気供給源170に作動的に結合され、導電体及び/又はデータキャリア310の第2の端部は、エレベーターかご110の1又は2以上の設備電気機器に作動的に結合される。このように、移動ケーブル300は、電力/データを電気供給源170からエレベーターかご110の1又は2以上の設備電気機器に供給する。
【0053】
ダクト320の開放した第1の端部は、流体供給源180に作動的に結合され、ダクト320の開放可能な第2の端部は、エレベーターかご110に作動的に結合される。
【0054】
図5a~図5dは、本開示による移動ケーブルの4つの異なる実施形態を示す。
【0055】
図5aの移動ケーブル300では、ダクト320は、導電体及び/又はデータキャリア310と一緒に、保護層340内に収容される。この実施形態では、光ファイバ形状センサの形態の感知ツール410も、保護層340内に存在する。
【0056】
図5bの移動ケーブル300では、ジャケット350が、ダクト320を包囲すると共に、導電体及び/又はデータキャリア310を包囲する保護層340も包囲する。この実施形態では、光ファイバ形状センサの形態の感知ツール410も保護層340内に存在する。
【0057】
図5a及び図5bの実施形態では、ダクト320はチューブであるが、図5cの移動ケーブル300では、ダクト320は、ジャケット350とジャケット350が包囲している保護層340の間の隙間である。この実施形態では、光ファイバ形状センサの形態の感知ツール410も保護層340内に存在する。
【0058】
図5dは、本開示のシステムのための平らな移動ケーブル300を概略的に示す。この移動ケーブル300では、2つのダクト320が存在し、2つのダクト320は、導電体及び/又はデータキャリア310と一緒に、保護層340内に収容されている。
【0059】
図1図4を参照すると、流体供給源180は、移動ケーブル300内のダクト320に作動的に結合され、ダクト320を加圧するように作動される。
【0060】
図4から分るように、エレベーターシステム100はまた、エレベーターかご110に又はその中に結合された補助流体供給源190を含んでもよく、補助流体供給源190は、液体を収容するタンクに結合されたポンプであってもよいし、圧縮機であってもよい。ダクト320の開放可能な第2の端部は、補助流体供給源190に作動的に結合され、ダクト320は、2つの流体供給源180、190の組合せ作用によって加圧される。
【0061】
エレベーターシステム100は、更に、エレベーターかご110及び/又は昇降路200に結合されたセンサシステムを含み、かかるセンサシステムは、移動ケーブル300の揺れを検出するように構成される。
【0062】
図1に示す実施形態によれば、センサシステムは、移動ケーブル300の中に含まれる感知ツール410を含み(図5a~図5cを参照)、感知ツール410は、光学機器420に作動的に結合される。光学機器420は、エレベーターかご110又は昇降路の壁210に又はその中に設けられ、移動ケーブル300の結合点のところに位置決めされる。
【0063】
光学機器420は、例えば、光スペクトル分析器である。
【0064】
光ファイバ形状センサの形態の感知ツールは、光ファイバであり、光ファイバは、ブラッグ格子構造をその長手方向軸線に沿って有する。かかる感知ツールにより、移動ケーブルの変形を検出し、その結果、移動ケーブルの揺れの振幅を推定することを可能にする。
【0065】
変形例として、図2に示すように、センサシステムは、位置監視システムを含み、位置監視システムは、エレベーターかご110及び/又は昇降路200に結合された1又は2以上のカメラ430を含む。例えば、カメラ430は、移動中の移動ケーブル300の画像を取得するために、昇降路200の床の上に位置決めされてもよいし、エレベーターかご110の底部に位置決めされてもよい。
【0066】
別の変形例として、図3に示すように、センサシステムは、複数のレーザ遠隔測定器440を含むレーザ式位置監視システムを含み、複数のレーザ遠隔測定器440は、エレベーターかご110及び/又は図3に示すように昇降路200の床の中又は上に結合され、昇降路200の長手方向軸線を横断する平面内の移動ケーブル300の変位を検出するように位置決めされる。
【0067】
図3Bは、エレベーターかご110の底部から見た、かかるレーザ遠隔測定器システムの仮想図であり、かかるレーザ遠隔測定器システムでは、複数のレーザ遠隔測定器440がエレベーターかご110の正射影内に位置決めされる。移動ケーブルの突出部300aの領域並びにそれを包囲する領域には、予め決められた揺れ振幅閾値よりも小さい振幅を有する移動ケーブルの揺れを妨害することを回避する程度(この場合、矢印線Aで示す程度)で、レーザ遠隔測定器440がない。
【0068】
図1図4から分るように、エレベーターシステム100は、センサシステム及び流体供給源180に結合された処理及び制御ユニット500、例えばマイクロプロセッサを含み、処理及び制御ユニット500は、予め決められた閾値を超える揺れ振幅を検出し、引き続いて、移動ケーブル揺れを予め決められた閾値よりも小さい振幅に減衰させるために、ダクト320を加圧するように流体供給源180を作動させるように構成される。エレベーターシステム100が補助流体供給源190も有する場合、処理及び制御ユニット500はまた、例えばwi-fi信号又は移動ケーブルの導電体/データキャリアによって、補助流体供給源190に作動的に接続され、ダクト320を流体供給源180、190の組合せ作用によって加圧するように補助流体供給源190の作動を制御する。
【0069】
「揺れ振幅」は、昇降路の長手方向軸線を横断する平面上における,移動ケーブル300とエレベーターかご110の結合箇所の正射影と、移動ケーブル300の曲げ箇所の正射影との間の距離を意味する。
【0070】
処理及び制御ユニット500は、特に、センサシステム構成要素410、420、430、440の検出を受信し且つ処理し、移動ケーブルの揺れの振幅の値を取得するようにプログラムされる。
【0071】
特に、図1の実施形態では、処理及び制御ユニット500は、光学機器420に接続され、光学機器420によって検出された感知ツール410の変形に基づいて、揺れ振幅を決定するようにプログラムされる。
【0072】
図2の実施形態では、処理及び制御ユニット500は、揺れ振幅を決定するためのカメラ430によって取得した画像を処理するようにプログラムされる。
【0073】
図3の実施形態では、処理及び制御ユニット500は、レーザ遠隔測定器440によって検出された移動ケーブル300の変位に基づいて、揺れ振幅を決定するようにプログラムされる。
【0074】
いずれの場合でも、予め決められた閾値、並びに、流体供給源180の制御の仕方、最終的には、補助流体供給源190の制御の仕方は、エレベーターシステムの試運転の前又は後に、ユーザによって端末を介して設定される。
【符号の説明】
【0075】
100 エレベーターシステム
110 エレベーターかご
170 電気供給源
180 流体供給源
190 補助流体供給源
200 昇降路
210 昇降路の壁
300 移動ケーブル
310 導電体及び/又はデータキャリア
320 ダクト
340 保護層
350 ジャケット
410 感知ツール(センサシステム)
420 光学機器(センサシステム)
430 カメラ(センサシステム)
440 レーザ遠隔測定器(センサシステム)
500 処理及び制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d