(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ピペットの検証手順
(51)【国際特許分類】
G01F 25/00 20220101AFI20240112BHJP
G01G 19/52 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01F25/00
G01G19/52 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020012524
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・レバー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ラング
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0025388(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0023046(US,A1)
【文献】特開2008-292463(JP,A)
【文献】特開2018-81085(JP,A)
【文献】ピペット容量テスター PTシリーズ,取扱説明書,日本,株式会社エー・アンド・デイ,2015年12月31日
【文献】Gilson guide to pipetting,Gilson guide to pipetting,米国,Gilson, Inc.,2005年12月31日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F25/00-25/20
G01F11/00-13/00
G01F17/00-22/02
G01G 1/00-23/48
G01N 1/00- 1/44
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットを検証するための手順であって、前記検証の結果が排出または警告メッセージであり、前記手順が、
検証すべきピペット液体体積(V
P)を受け取るための液体測定容器(110)、
力を伝達する方式で前記液体測定容器(110)に連結されたロードセル(120)であって、前記ロードセル(120)に作用する重量力(F
G)に対応する測定信号(m
s)を出力する、ロードセル(120)、ならびに
前記ロードセル(120)の前記測定信号(m
s)を検出および処理するための処理ユニット(130)
を準備するステップと、
前記処理ユニット(130)により、最後の安定測定点(Mt1)である時間点(t1)における安定した測定信号(m
s)から第1の重量力(Gt1)を決定するステップであって、前記最後の安定測定点(Mt1)が、検証すべき前記ピペット液体体積(V
P)を受け取るのよりも時間的に先である、ステップと、
前記処理ユニット(130)により、新しい安定測定点(Mt2)である時間点(t2)における安定した測定信号(m
s)から第2の重量力(Gt2)を決定するステップであって、前記新しい安定測定点(Mt2)が、検証すべき前記ピペット液体体積(V
P)を受け取るのよりも時間的に後である、ステップと、
式:V
P=ρ
-1×(G
t2-G
t1)に従い、前記処理ユニット(130)によって前記ピペット液体体積(V
P)を計算するステップと、
それぞれ所定の等級公称値(VKi)をもつ少なくとも2つのピペット体積等級(Ki)のうちの1つに、前記計算されたピペット液体体積(V
P)を対応付けるステップであって、前記処理ユニット(130)による前記対応付けは、前記ピペット液体体積(V
P)と前記等級公称値(VKi)との容積差(ΔV)の絶対値が可能な限り小さくなるように行われる、ステップと、
前記容積差(ΔV)の前記絶対値が、前記対応付けられたピペット体積等級(Ki)の前記等級公称値(VKi)についての許容値(T)に収まっているか否かを前記処理ユニット(130)によって試験するステップと、
前記容積差(ΔV)が前記許容値(T)に収まっているときは排出として、または
前記容積差(ΔV)が前記許容値(T)から外れているときは警告メッセージとして、
前記処理ユニット(130)によって試験結果(R
P)を出力するステップと
を含む、手順。
【請求項2】
請求項1に記載の手順であって、
前記試験が、検証すべき前記ピペット液体体積(V
P)を受け取る既定の回数に基づいて、前記処理ユニット(130)によって実施されることを特徴とする、手順。
【請求項3】
請求項1または2に記載の手順であって、
安定した測定信号(m
S)は、前記測定信号(m
S)が所定の時間長さ(t
L)および信号レベル(Δm
S)を有する信号帯域(S)に収まっていることによって判定されることを特徴とする、手順。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の手順であって、
前記手順が完全に自動化されており、検証すべき前記ピペット液体体積(V
P)を前記液体測定容器(110)に受け取ることが、前記処理ユニット(130)による前記検証をトリガし、前記試験結果を出力した後、前記処理ユニット(130)が、検証すべき次のピペット液体体積(V
P)を受け取って検証する準備を完了していることを特徴とする、手順。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の手順であって、
前記手順が、
遅くとも時間点(t
1)に終了する先行する期間(Δt
V)の間の測定信号(m
S)を処理することにより、前記液体測定容器(110)の中の液体の蒸発率(c
V)を決定するステップと、
時間点(t
1)と時間点(t
2)の間の蒸発体積(V
V)を計算するステップと、
式:V
P=ρ
-1×(G
t2-G
t1+c
V×(t
2-t
1))に従って前記ピペット液体体積(V
P)を計算するステップと
をさらに含むことを特徴とする、手順。
【請求項6】
請求項5に記載の手順であって、
前記期間(Δt
V)が、10秒以上、かつ/または時間点(t
1)と時間点(t
2)の間の時間差の10倍以下であることを特徴とする、手順。
【請求項7】
請求項5または6に記載の手順であって、
前記蒸発率(c
V)の妥当性が基準値に基づいて検査されることを特徴とする、手順。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の手順であって、
重量力差(ΔG
t)が所定の値を下回るとき、前記手順が結果の出力なしに終了することを特徴とする、手順。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の手順であって、
前記ロードセル(120)に作用する前記重量力(F
G)が所定の値を上回るとき、前記手順が警告メッセージを出力して終了することを特徴とする、手順。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の手順であって、
前記測定信号(m
S)が所定の期間内に安定状態に到達しなかった場合、前記手順が警告メッセージを出力して終了することを特徴とする、手順。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の手順であって、
前記試験結果が、視覚信号、音響信号、および/または電気信号の形で出力されることを特徴とする、手順。
【請求項12】
請求項11に記載の手順であって、
前記試験結果が、各ピペット体積等級(K
i)についての、マルチカラーLEDを用いた視覚信号として出力されることを特徴とする、手順。
【請求項13】
請求項12に記載の手順であって、
前記試験結果を出力し、前記視覚信号についての所定の出力期間が過ぎた後、すべてのLEDが同時に点滅して、前記検証が終了し別の検証の準備が完了したことを信号で伝えることを特徴とする、手順。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の手順であって、
前記手順が、
ピペットを識別するための識別センサ、および
検証の前記試験結果を記憶するためのデータベースシステム
を準備するステップと、
前記ピペットの識別フィーチャを検出するステップであって、前記識別フィーチャを用いてピペットを一意に、かつ間違いなく識別することができる、ステップと、
前記ピペットの前記検証の前記試験結果を前記データベースシステムに記憶するステップと
をさらに含むことを特徴とする、手順。
【請求項15】
ピペットを検証するための装置(100)であって、
検証すべきピペット液体体積(V
P)を受け取るための液体測定容器(110)と、
力を伝達する方式で前記液体測定容器(110)に連結されたロードセル(120)であって、前記ロードセル(120)に作用する重量力(F
G)に対応する測定信号(m
S)を出力する、ロードセル(120)と、
前記ロードセル(120)の前記測定信号(m
S)を検出および処理して、請求項1から14のいずれか一項に記載の手順を実施するための処理ユニット(130)と
を備える、装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ピペットの検証手順、およびピペットを検証するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]温度、空気圧、および湿度が天秤自体に影響を及ぼすことが知られている。このため、環境パラメータの変化に従って重量値の変化を補償するために、補正率が、たとえばグラフまたは表の形で装置に記憶されている。この目的のため、たとえば試験室内のロードセルの環境には温度センサおよび空気湿度センサが配置され、この場合、これらのセンサにより、変化する環境条件に応じて天秤自体の補正が自動的に行われる。
【0003】
[0003]測定プロセス中の水の蒸発は、しばしば言及される問題である。この影響の大きさを表すものとして、以下の例に基づいて示すことができる:直径40mmの開口をもつ容器の概算蒸発率は、20℃では約20μg/秒である。
【0004】
[0004]ピペットを重量測定によって較正するための天秤がEP1975577A1から知られており、この天秤は、風よけ、ならびに内蔵型の温度センサ、空気圧センサ、および空気湿度センサを有する。
【0005】
[0005]EP3066430B1には、天秤を利用してピペットを較正するための手順が開示されており、この手順では、較正プロセス中に蒸発率が決定され、決定された蒸発率によって測定値が補正される。ここでは、蒸発率は、較正プロセス中に空気圧センサ、空気湿度センサ、および空気温度センサを含む気候モジュールによって記録されたデータを用いて補正される。こうすると、較正プロセスは既定の想定蒸発率に基づく必要はなく、較正プロセス中の現在の気候条件に依存する現実的な値に基づくので、測定の正確度または較正プロセスの正確度が向上する。
【0006】
[0006]ピペットを較正するための手順とは対照的に、ピペットを検証するための手順は、むしろ、ピペットの性能のテストと考えられることになる。重量測定に基づいて、試験すべき体積が既定の範囲および許容差に収まっているか否かが定められる。このことから、結果は公称値ではなく、状態であると考えることができる。較正は時間およびコストがかかるプロセスであり、厳密な文書化が必要になる。2回の較正の合間には、使用者はピペット体積が依然として較正基準を満たしているか否かをはっきりと知ることができない。較正基準が満たされていないと、一連の測定全体が疑わしいものになる可能性があり、または使用者の事業に重大な影響が出る恐れがある。
【0007】
[0007]ピペット検証(ピペット性能検証)の目的は、ピペットが依然として十分に正確であり、使用する準備が完了しているという(文書化された確認を含めた)即時のフィードバックを使用者または取扱者に与えることである。便宜上、これは、フィードバックがピペッティングの実際のプロセスの正確度が所定の許容差の限界に収まっているか否かに関して提示することを意味し、これはピペッティング機器のエラー、ならびに使用者、流体、および環境の影響の可能性に左右される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP1975577A1
【文献】EP3066430B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0008]したがって、必要とする手動介入が最小限であり、安定的な性能を有する簡単かつ迅速な手順を使用者に提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0009]この目的は、独立請求項に指定された特徴を有する手順によって達成される。本発明の有利な実施形態は、別の従属請求項に指定される。
[0010]この目的は、ピペットを検証するための手順(換言すれば、方法)であって、検証の結果が排出(release)または警告メッセージであり、手順が、検証すべきピペット液体体積を受け取るための液体測定容器、力を伝達する方式で液体測定容器に連結されたロードセルであって、ロードセルに作用する重量力に対応する測定信号を出力するロードセル、ならびにロードセルの測定信号を検出および処理するための処理ユニットを準備するステップと、処理ユニットにより、最後の安定測定点である時間点t1における安定した測定信号から第1の重量力を決定するステップであって、上記最後の安定測定点が、検証すべきピペット液体体積を受け取るのよりも時間的に先である、ステップと、処理ユニットにより、新しい安定測定点である時間点t2における安定した測定信号から第2の重量力を決定するステップであって、上記新しい安定測定点が、検証すべきピペット液体体積を受け取るのよりも時間的に後である、ステップと、式:VP=ρ-1×(Gt2-Gt1)に従い、処理ユニットによってピペット液体体積を計算するステップと、所定の等級公称値をもつ少なくとも1つのピペット体積等級のうちの1つに、計算されたピペット液体体積を対応付けるステップであって、処理ユニットによる対応付けは、ピペット液体体積と等級公称値との容積差の絶対値が可能な限り小さくなるように行われる、ステップと、容積差の絶対値が、対応付けられたピペット体積等級の等級公称値についての許容値に収まっているか否かを処理ユニットによって試験するステップと、容積差が許容値に収まっているときは排出として、または容積差が許容値から外れているときは警告メッセージとして、処理ユニットによって試験結果を出力するステップとを含む、手順によって達成される。
【0011】
[0011]この手順は、実験的に決定されたデータによって較正間隔を定める必要がなく、特に使用者の要求条件に較正間隔を合わせることができるという点において、使用者にとって有利である。したがって、ピペッティングが使用者の事業に与える影響およびピペッティングプロセスの許容差に従ってピペットの較正が必要であるとき、必要なピペットの較正が認識され得る。使用者にとっては、これは較正間隔の延長につながり、したがって較正が(適切に)延期されることにより、コスト削減につながる可能性がある。較正間隔を短縮する場合、これはピペッティングプロセスの品質改善につながり、それにより、使用者の事業に応じて、材料の損失、仕様に合わない結果、タイムロス、再処理、製品のリコールまたは風評被害が軽減または防止される。しかし、較正間隔は元のままでもよく、それにより、より早期の較正につなげるために、欠陥のあるピペットが適時に検出されることになる。たとえば、落下のためにいつからピペットが適切に機能しなくなったかは明らかでないことが多いので、欠陥のあるピペットが検出されないと、一連の測定全体が疑わしいものになる可能性がある。
【0012】
[0012]処理ユニット(130)による試験は、検証すべきピペット液体体積(VP)を液体測定容器に受け取る既定の回数に基づいて行うことができる。これは、検証すべきピペット液体体積(VP)が、操作者にその都度信号で伝えられた後で複数回連続して受け取られ、ピペット液体体積についての複数の既存の計算値に基づいて試験が行われることを意味する。言わば、統計的多重測定が実施される。
【0013】
[0013]ピペットを空にし終わった後にしか処理ユニットがロードセルの測定信号を安定であると示さないように、検証すべきピペット液体体積を導入するとき、検証すべきピペット液体体積がピペットから液体測定容器へと一度に、または少なくとも1滴ずつ導入されることが確実になるよう注意を払うべきである。
【0014】
[0014]信号は安定した測定信号であると考えられ、安定した測定信号は、所定の時間長さおよび信号レベルをもつ信号帯域に収まっている。これは、ある測定信号値の時間点から一定の期間にわたって先行するすべての測定信号値が、最大で、所定の差だけ離れてもよいということを意味する。
【0015】
[0015]有利には、手順は完全に自動的に進行し、この場合、検証すべきピペット液体体積を液体測定容器に受け取ることが、処理ユニットによる検証をトリガし、試験結果を出力した後、処理ユニットは、検証すべき次のピペット液体体積を受け取って検証する準備を完了している。手順は、使用者による追加の相互作用なしに試験結果を表示し、結果を表示した後、追加の検証を実施する準備が完了した状態に切り替わる。
【0016】
[0016]さらに、手順は、遅くとも時間点t1に終了する先行する期間の間の測定信号を処理することにより、液体測定容器の中の液体の蒸発率を決定するステップと、時間点t1と時間点t2の間の蒸発体積を計算するステップと、式:VP=ρ-1×(Gt2-Gt1+cV×(t2-t1))に従ってピペット液体体積を計算するステップとを含むことができる。期間は、10秒以上、かつ/または時間点t1と時間点t2の間の時間差の10倍以下であることが有利である。基準値に基づいて蒸発率の妥当性を検査することがさらに有利である。
【0017】
[0017]手順の別の発展形態では、手順は、重量力差が所定の値を下回るとき、結果の出力なしに終了し、またはロードセルに作用する重量力が所定の値を上回るとき、もしくは測定信号が所定の期間内に安定状態に到達しなかったとき、警告メッセージを出力して終了する。
【0018】
[0018]手順の一発展形態は、試験結果の出力が視覚信号、音響信号、および/または電気信号の形で行われることを特徴とする。有利には、試験結果は、各ピペット体積等級についてのマルチカラーLEDを用いた視覚信号として出力される。さらに、試験結果を出力し、視覚信号の所定の出力期間が過ぎた後、すべてのLEDが同時に点滅することにより、検証が終了し、別の検証または新しい検証の準備が完了したことを信号で伝えることができる。
【0019】
[0019]手順の別の発展形態では、これは、ピペットを識別するための識別センサ、および検証の試験結果を記憶するためのデータベースシステムを準備するステップと、ピペットの識別フィーチャを検出するステップであって、この識別フィーチャを用いてピペットを一意に、かつ間違いなく識別することができる、ステップと、ピペットの検証の試験結果をデータベースシステムに記憶するステップとをさらに含む。
【0020】
[0020]上述の本発明の手順は、装置によって実施することができ、上記装置は、検証すべきピペット液体体積を受け取るための液体測定容器と、力を伝達する方式で液体測定容器に連結されたロードセルであって、ロードセルに作用する重量力に対応する測定信号を出力する、ロードセルと、手順を実施するために、ロードセルの測定信号を検出および処理するために使用される処理ユニットとを備える。有利には、準備される液体測定容器の開口は、100mm2の最小開口断面積を有する。
【0021】
[0021]本発明による力測定装置、本発明による力測定モジュール、および本発明による手順の詳細を、図面に示す実施形態例の説明に基づいて提示する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の装置の一実施形態の概略構造を示す図である。
【
図2】検証すべきピペット液体体積を受け取ったときの測定信号の経過を示す図である。
【
図3】処理ユニットによる、安定した測定信号の判定を示す図である。
【
図4】ピペットの較正および検証の間隔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0022]以下の説明では、同じ機能および同様の構成をもつ特徴は同じ参照番号を用いて提示する。
[0023]
図1には、ピペットを検証するための装置100が概略的に示してある。ここに示す装置100は、液体測定容器110、ロードセル120、および処理ユニット130から構成される。液体測定容器110は開口111を有し、ピペットPにより、検証すべきピペット液体体積V
Pをそこから導入することができる。ここでは、ピペットPを空にし終わった後にしか処理ユニット130がロードセル120の測定信号m
Sを安定であると示さないように(
図3に関連する説明を参照)、検証すべきピペット液体体積V
PがピペットPから液体測定容器110へと一度に、または少なくとも1滴ずつ導入されることが確実になるよう注意が払われなければならない。液体測定容器110は力を伝達する方式でロードセル120に連結されており、したがって、液体測定容器110はロードセル120に作用する重量力F
Gを加え、この重量力F
Gは、測定信号m
Sとして処理ユニット130に連続的に出力される。処理ユニット130は、ロードセル120の測定信号m
Sを検出および処理し、手順を実施するために使用される。試験結果(R
P)は、視覚信号、音響信号、および/または電気信号の形で出力される。
【0024】
[0024]導入されたピペット液体は液体測定容器110に残り、さらなる各検証により、液体測定容器110はますます充填される。ロードセル120に作用する液体測定容器110の重量力F
Gが上限に達すると、このことは測定信号m
Sに基づいて処理ユニット130に認識され、信号で使用者に伝えられる。この上限に達するまで、手順は中断することなく進行し、つまり、処理ユニット130はロードセル120の測定信号m
Sを間断なく評価する。したがって、使用者はピペット液体体積V
Pを液体測定容器110に導入するだけであり、それによってロードセル120の測定信号m
Sがトリガされる。このトリガにより、
図2を参照して以下に述べる検証手順が開始する。
【0025】
[0025]次に、
図2の測定信号の経過に基づいて本発明の手順をより詳細に説明する。検証すべきピペット液体体積を受け取る前後の測定信号の経過が示してあり、このことは、時間点t
1と時間点t
2の間の測定信号が不安定であること、すなわち測定信号がトリガされたことから認識される。
【0026】
[0026]プロセスは、検証すべきピペット液体体積VPを使用者が液体測定容器110に導入することによって開始する。ここで測定信号がトリガされることにより、測定信号の評価が開始する。最後の安定測定点Mt1である時間点t1における安定した測定信号mSから、処理ユニットによって第1の重量力Gt1が決定される。この重量力は、液体測定容器110の中に既に存在する液体の量に対応する。新しい安定測定点Mt2である時間点t2における安定した測定信号mSから、処理ユニット130によって第2の重量力Gt2が決定される。この重量力は、液体測定容器110に既に存在する液体量と、検証すべき導入されたピペット液体体積VPとの合計に対応する。ここで、式VP=ρ-1×(Gt2-Gt1)に従ってピペット液体体積VPを計算することができる。
【0027】
[0027]計算されたピペット液体体積VPはピペット体積等級Kiに対応付けられ、このピペット体積等級Kiは、所定の等級公称値VKiを有する。装置は、いくつかの体積、たとえば20μl、100μl、200μl、および1000μlにプリセットすることができ、これらのそれぞれはそれ自体の許容差を有する。対応付けは、ピペット液体体積VPと等級公称値VKiとの容積差ΔVの絶対値が可能な限り小さくなるように行われる。次に、容積差ΔVの絶対値が、対応付けられたピペット体積等級Kiの等級公称値VKiについての許容値Tに収まっているか否かを検査することができる。容積差ΔVが許容値Tに収まっているとき、試験結果の出力として排出が行われ、そうでない場合、容積差ΔVが許容値Tから外れていると、警告メッセージが出される。
【0028】
[0028]測定信号m
Sが、時間により定義された長さt
Sと、最大信号差または信号レベルΔm
Sとを有する信号帯域Sに収まっているとき、その測定信号m
Sは、処理ユニット130によって安定であると示される(
図3参照)。これは、ある測定信号値の時間点から一定の時間にわたって先行するすべての測定信号値が、最大で、所定の差だけ離れてもよいということを意味する。これらのパラメータの定義は、処理ユニット130がどれだけ迅速に安定測定点M
tiを決定するかに著しく影響する。ここでは、検証すべきピペット液体体積V
Pを使用者が可能な限り間断なく液体容器110に導入すべきであるということが考慮されなければならない。また、思いがけない中断の場合、処理ユニット130は、(パラメータ選択により)測定信号m
Sをあまり早くに安定であると出力すべきではない。時間点t
Aの測定信号m
Sは、先行する期間t
Sにわたって常に信号帯域S
Aに収まっていたわけではないので、上記信号は安定であると示されない。反対に、時間点t
Bおよび時間点t
2ではこれとは異なり、そこでは、測定信号m
Sは安定であると示される。
【0029】
[0029]さらに、手順は、測定信号mSを処理し、遅くとも時間点t1に終了する先行する期間ΔtVの間の重量減少を検出することにより、液体測定容器110に存在する液体の蒸発率cVをさらに決定することができる。次に、この蒸発率cVを用いて、時間点t1と時間点t2の間の蒸発体積VVを決定することができる。これらの値を考慮に入れると、式:VP=ρ-1×(Gt2-Gt1+cV×(t2-t1))に従って、ピペット液体体積VPをより正確に計算することができる。
【0030】
[0030]蒸発率cVの決定は、決まって、時間点t2の後および時間点t1の前の安定した測定信号を用いて行われ、この場合、期間ΔtVの継続時間は10秒以上、かつ/または時間点t1と時間点t2の間の時間差の10倍以下である。期間ΔtVにおいて、蒸発率cVの決定が連続的に実施される場合もある。基準値に基づいて、蒸発率cVの妥当性を検査することができる。
【0031】
[0031]ここで、重量力差ΔGtが所定の値よりも小さいということが起こり得る。この場合、手順は結果の出力なしに終了する。また、ロードセル120に作用する重量力FGが所定の値を上回る場合があり、この場合、手順は警告メッセージを出力して終了する。これらのパラメータが、安定測定点Mtiを決定するにはあまりに狭く定義されている場合、測定信号mSが、所定の期間内に処理ユニットのために安定状態になり得ない可能性がある。この場合、手順は警告メッセージを出力して終了する。
【0032】
[0032]既定の体積のそれぞれは、たとえば緑、橙、および赤の3つのLEDによって表示されてもよい。新しい結果を出力するとき、対応するLEDは、一定の期間の間、安定した光へ切り替わる。この期間が経過した後、そのLEDは点滅モードへと切り替わり、これにより、引き続き使用者に結果が伝えられるが、次の試験の準備が完了したことも表示される。液体測定容器110が一杯になると、上述のように結果が表示されるが、加えて、他のすべてのLEDが、短時間オンになり長時間オフになるパターンでたとえば赤色に点滅する。
【0033】
[0033]手順は完全に自動化され、使用者によるピペットの操作のみが必要とされる。装置はプロセスを認識し、使用者によるいかなる追加の相互作用もなしに結果を表示する。
[0034]
図4には、ピペットの較正および検証の間隔が示してある。ピペットは、使用者に納入される前に工場で較正される。ピペットの2回の定期較正の間に、本発明の手順に従って、(簡易試験とも呼ばれる)検証が実施される。これらの簡易試験の頻度は、2つの特定の基準、すなわちA)ピペッティングが使用者の事業に与える影響と、B)ピペッティング/ピペッティングプロセスの許容差とに基づくリスク評価を通じて使用者に推奨される。そこから、ピペットがどの時間間隔で較正を受けなければならないか、またピペッティングプロセス中にどれだけの許容差が維持されることになるかを推定することができる。
【0034】
[0035]ここで、ピペットが依然として十分に正確であり、使用する準備が完了しているという即時のフィードバックを使用者に与えるために、ピペットの較正と較正の間に本発明の手順が使用される。フィードバックがネガティブである場合、ピペットは、較正間隔が経過する前にもう較正を受けてもよい。こうした早期の検出により、使用者の事業への重大な影響を防止することができる。
【0035】
[0036]また、より高額な較正のコストを低減し、ピペットが利用可能でない時間を短縮するために、使用者の事業に応じて、較正間隔を延長することが考慮されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
[0037]
110 液体測定容器
120 ロードセル
130 処理ユニット
P ピペット
VP ピペット液体体積
FG 重量力
mS 測定信号
Gt1 第1の重量力
Mt1 時間点t1の安定測定点
Gt2 第2の重量力
Mt2 時間点t2の安定測定点
Δt 蒸発率を決定する期間
ρ ピペット液体の密度
Ki ピペット体積等級
VKi 等級公称値
ΔV 容積差
T 許容値
S、SA、SB 信号帯域
tS 信号帯域の時間長さ
ΔmS 信号レベル
cV 蒸発率
VV 蒸発体積
ΔGt 重量力差
RP 試験結果