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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】風力発電装置および風力発電ユニット
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/04 20060101AFI20240112BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F03D1/04 B
F03D1/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020013311
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119299
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】大山 能永
(72)【発明者】
【氏名】藤田 クラウディア
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0250626(US,A1)
【文献】中国実用新案第202468135(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102345555(CN,A)
【文献】米国特許第06246126(US,B1)
【文献】特開2001-234844(JP,A)
【文献】国際公開第2011/046383(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108953049(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
H02N 2/00- 2/18
H01L 27/20;41/00-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を取り込んで通過させる流路を構成する風洞を有し、
前記流路の内部には、前記流路に沿って回転軸を配置した発電機と、前記流路を流れる風の力で撓む圧電素子とが備えられ、前記発電機には、羽根車が設けられると共に、
前記流路は少なくとも、前記風洞の入口から前記羽根車に向けて前記流路の開口面積を狭めるように傾斜が設けられた集風部と、前記羽根車の後方に位置し、前記開口面積を広げる拡開部、及び拡開部の後方において前記圧電素子が配置される排気部と、を有し、
前記排気部の上流側端部における開口面積が、前記集風部の下流側端部の開口面積よりも小さくなるように、傾斜面を備え、
前記圧電素子は、前記排気部を流れる風の流量に応じた開口量となる自動弁を構成することを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記集風部は、
複数の流路を構成すると共に、各流路が漏斗状に形成され、下流側が前記羽根車の羽根に向けられていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記発電機は、流路に沿った方向に伸縮する弾性部材により支持されており、
前記弾性部材は、前記羽根車に対する風の押圧力の変化に応じて前記発電機の支持位置を前記流路に沿った方向に移動させる構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の風力発電装置の電力出力側に、電子機器を備えたことを特徴とする風力発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に係り、特に、弱風環境下における発電に好適な風力発電装置、及びこの風力発電装置を備えたユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
風車を用いた風力発電では一般的に、所定以上の風力(風速)が必要とされることとなる。このため、弱風環境下における発電の可能化を実現することで、発電量の増加を図る事ができるようになると考えられている。
【0003】
ここで、弱風での発電を行うためには、(a)受風面での風速を上げる、(b)交流発電機の場合は極数を増やす、という事が一般的である。また、弱風で発電を可能とした場合、強風時には過度の回転力が加えられ、機器の損傷を招く恐れがあることから、機能停止、あるいは回転数や発電量を減少させる手段が講じられてきている。
【0004】
例えば特許文献1に開示されている風力発電装置では、風を受ける事により回転する回転体に風を導く導風口を拡縮構造としている。そして、弱風時には導風口を拡開し、強風時には導風口を収縮することで、弱風時でも、強風時でも同等の風力を回転体に与えるように構成し、発電量の安定化を図るようにしている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている風力発電装置では、風車を備えた発電機を中心に配置し、その周囲全周に、中心側に行くほど流路が狭められた風誘導路を配置する構成としている。そして、風車を備えた発電機は、風の吹く方向に風車を向けることが可能な構成とされている。このような構成によれば、風車の前方からの風は、風誘導路による集風効果で加速すると共に、風車の後方では風誘導路の広がりにより負圧が発生し、引き込み効果(風レンズ)が生ずることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-49760号公報
【文献】特開2014-95305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示されている風力発電装置は、いずれも大がかりなものでで、市街地の弱風(1m/s程度)では発電できない。特に、特許文献1に開示されている風力発電装置では特に、風力を計測するための手段等が必要となり、導風口の拡縮を行う機械的機構も必要となります。
【0008】
そこで本発明では、構造を簡単化し、小型であっても弱風で効率良く発電する事のできる風力発電装置、および風力発電ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る風力発電装置は、風を取り込んで通過させる流路を構成する風洞を有し、前記流路の内部には、前記流路に沿って回転軸を配置した発電機と、前記流路を流れる風の力で撓む圧電素子とが備えられ、前記発電機には、羽根車が設けられると共に、前記流路は少なくとも、前記風洞の入口から前記羽根車に向けて前記流路の開口面積を狭めるように傾斜が設けられた集風部と、前記羽根車の後方に位置し、前記開口面積を広げる拡開部、及び拡開部の後方において前記圧電素子が配置される排気部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する風力発電装置において前記集風部は、複数の流路を構成すると共に、各流路が漏斗状に形成され、下流側が前記羽根車の羽根に向けられていることを特徴とする。このような特徴を有することによれば、羽根車に与える回転モーメントの向上を図ることができる。よって、カットイン風速の低減を図ることができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する風力発電装置において前記発電機は、流路に沿った方向に伸縮する弾性部材により支持されており、前記弾性部材は、前記羽根車に対する風の押圧力の変化に応じて前記発電機の支持位置を前記流路に沿った方向に移動させる構成としたことを特徴とする。このような特徴を有することによれば、強風時における風の逃げ道を作ることができる。よって、カットアウト風速の設定値を高めることができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有する風力発電装置において前記流路には、前記排気部の断面積が前記拡開部の断面積よりも小さくなるように、傾斜面を備えたことを特徴とする。このような特徴を有することによれば、排気部における風速を向上させることができ、圧電素子による発電効果を向上させることができる。
【0013】
さらに、上記目的を達成するための風力発電ユニットは、上記のような特徴を有する風力発電装置の電力出力側に、電子機器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記のような特徴を有する風力発電装置によれば、小型であっても弱風で効率良く発電する事が可能となる。また、上記特徴を有する風力発電ユニットによれば、弱風箇所への適用自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る風力発電装置の構成を示す断面図である。
図2図1の左側面の構成を示す図である。
図3図1におけるA-A断面の構成を示す図である。
図4図1におけるB-B断面の構成を示す図である。
図5】風圧により羽根車が流路の下流側に押された状態を示す図である。
図6】実施形態に係る風力発電装置を電車のホームドアの戸袋に適用する場合の例を示す図である。
図7図6の右側面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の風力発電装置、及び風力発電ユニットに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の1つであり、発明の効果を奏する範囲において、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0017】
[構成]
まず、図1から図4を参照して、本実施形態に係る風力発電装置10の構成について説明する。なお、図面において、図1は、実施形態に係る風力発電装置の構成を示す断面図であり、図2は、図1の左側面の構成を示す図である。また、図3は、図1におけるA-A断面の構成を示す図であり、図4は、同B-B断面の構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る風力発電装置10は、流路を構成する風洞12と、流路(通風路)の内部に配置される発電機20、及び圧電素子28とを基本として構成されている。
【0019】
風洞12は、少なくとも、集風部14と拡開部16、及び排気部18を有する流路を備え、流路の内部に風を取り込んで通過させる役割を担う。集風部14は、風洞12の入口側から、詳細を後述する羽根車22に向けて、流路の開口面積を狭めるように傾斜が設けられた領域である。拡開部16は、羽根車22の配置位置の下流側に位置する空間であり、集風部14の下流側端部(小径部)に比べて、開口面積を広げるように構成された領域である。
【0020】
排気部18は、拡開部16の下流側に位置する流路であり、拡開部16の開口面積を広げた部分よりも開口面積を狭め、流路を通過する風の速度を上げるように構成されている。また、本実施形態に係る風洞12では、排気部18の出口を風洞12の上部(側面でも良い)に設ける構成としている。このような構成とすることで、出口部分(図1において、排気部18に示す破線斜線部分)には、風洞12の外周を通過する風と、風洞の内部を通過する風との速度差による負圧が生じ、流路内を抜ける風の流速を向上させる作用を生じさせる。なお、流路の出口部分に生じる負圧を高めるために、風洞12の外周に凹凸等を設け、通過する風の流速を向上させるようにしても良い。なお、図1に示す破線矢印は、風の流れを模式的に表したものである。
【0021】
発電機20は、ケーシング内に図示しないコイルと磁石を備え、回転軸を回転させることで電力を生じさせる構成とされており、風力により回転軸を回転させるための羽根車22を備えている。発電機20は、流路を構成する拡開部16に設けられた支持部24に対して、弾性部材26を介して固定されている。弾性部材26は、流路の配置方向、すなわち風の流れる方向に沿った力を受ける事により圧縮し、発電機20の配置位置を流路の下流側に移動させる役割を担う。弾性部材26の具体的な構成は問うものでは無いが、例えばコイルばねのような、伸縮性と復元性を持つものであると良い。
【0022】
羽根車22は、多種多様な形態を想定することができるが、本実施形態では、図3に示すような扇型の3枚羽根を持つ、受風面積の大きなものとしている。本実施形態では、風による押圧力を受けていない状態において、羽根車22が集風部14と拡開部16の境界に位置するように、発電機20の位置を定めている。このような構成とすることで、発電機20が流路の下流側に移動した際、羽根車22の先端と流路との間が広くなり、風が抜ける空間を広げることができる(図5参照)。
【0023】
圧電素子28は、拡開部16と排気部18の境界部分の上部から垂下させ、流量に応じた開口量となる自動弁となっている。流量が小さい時に閉塞弁とならないように、圧電素子28の大きさは、排気部18の開口より少し小さい。流量が多い時は、大きく開くために撓みが大きくなり、電力が生じる。図4に示す例では、圧電素子28に対して、閉塞弁とならないように複数のスリット28aを設け、圧電素子の剛性の低下を図り、撓み易くしている。このような構成とすることで、弱風での電力の発生と、流路内での圧力損失の低減を図ることができる。
【0024】
[集風部の詳細]
本実施形態では特に、集風部に対して図1図2に示すような漏斗状の形態をした集風コーン14aを羽根車22の羽数と同数配置し(本実施形態においては3つ)、取り入れた風を羽根車22の羽根部分へ優先的に誘導するように構成している。羽根車22は、集風部14からの風圧を羽根に受ける事により回転する。この時の回転モーメントMは、数式1で示すことができる。
【0025】
【数1】

ここで、Fを作用する力、rを回転中心からの距離とすると、回転モーメントMは、回転中心から遠い位置に風圧を作用させることで、同じ風力(風圧)であっても、羽根車22に対して高い回転モーメントを与えることがきるということができる。よって、弱風であっても、羽根車22に対して高い回転モーメントを与えることができ、羽根車22に対するカットイン風速(発電開始風速)を低減することが可能となる。
また、集風部14に集風コーン14aを配置して流路に風を導入することにより、集風コーン14aの無い中心部(図1において集風部14に破線斜線で示す領域)には、負圧が生じる。この負圧により、集風コーン14aの内部を流れる風を引き込む効果を奏し、風速を高めることができる(風レンズと同様な効果)。
【0026】
[拡開部と排気部の詳細]
拡開部16は、集風部14の下流側端部に比べて流路の断面積を広げる部位を設ける構成とすることで、風圧により羽根車22(発電機20)が押し下げられた際、風の逃げ道を生じさせることが可能となる。このため、羽根車22の回転速度の過度な上昇を抑制することができ、カットアウト風速(発電停止風速)を高く設定することが可能となる。
【0027】
拡開部16の下流側には、排気部18に向けて流路の断面積を狭める傾斜面を設ける構成としている。このような構成としたことで、排気部18に流れ込む空気(風)の流速を高めることが可能となる。
【0028】
ここで、拡開部16の断面積Sa(B-B断面の開口面積)は、集風部14の下流側の面積(A-A断面における集風コーン14aの開口面積の和)をS1とした場合に、S1以上の面積を持つようにすることが望ましい。圧電素子28の上流側の圧力が増え、風洞12内への風の導入の妨げとなる事を防ぐためである。
【0029】
[実施例]
本発明を実施する上での1実施例として、羽根車22の半径rを0.3mとし、実施形態に係る発電機20が、風力により羽根車22を回転させることで得られるエネルギーの割合(パワー係数)Cp値を0.2と仮定した場合、羽根車22が得られる力(風力エネルギー)Pe値は、数式2で示すことができる。
【0030】
【数2】

ここで、ρは、空気密度であり、ρ=1.293とする。また、Aは、受風面積であり、本実施例では、A=πrである。さらに、Vは風速を示す。周辺風速V=1m/s時に、集風部14の風上側開口面積に対して風下側開口面の割合を0.44と仮定すると、加速後の風速Vは2.27m/sとなる。
【0031】
このような条件下において羽根車22が得られる力Pe値は、0.4Wとなる。ここで、集風コーン14aによる羽根部分への風力集中による回転モーメントの上昇値を1.2倍と仮定した場合、Pe値は、0.48Wとなる。
【0032】
ここで、Cp値が0.2の場合、残りの0.8のエネルギーは、羽根車22の後方に流れていっていることとなる。このため、1.6Wのエネルギーが利用されていないエネルギーとなる。このエネルギーのうちの半分程度が圧電素子28を撓ませる力に寄与することとし、圧電素子28の発電効率を10%程度とした場合、0.08Wのエネルギーを得ることができることとなる。よって、本実施例の風力発電装置10では、0.56Wのエネルギーを得ることができるようになると考えられる。
【0033】
[作用・効果]
上記のような構成の風力発電装置10によれば、集風コーン14aを配した集風部14の効果により、弱風であっても、流路内に取り込まれた風を加速させ、羽根車22を効率良く回転させ、発電機20の発電を促すことができる。また、集風部14から羽根車22を抜け、拡開部16に流れ込んだ風には、羽根車22の回転に寄与しなかったエネルギーが残存する。このエネルギー(風)が排気部18に流れ込む事で、排気部18に設けられた圧電素子28を揺動させる。これにより、圧電素子28による発電が成されることとなる。
【0034】
つまり、本実施形態では、回転作用により電力を生じさせる発電機20と、回転に寄与しなかったエネルギーによって生じる揺動作用により電力を発生させる圧電素子28の双方で電力を得ることとなる。
【0035】
また、本実施形態に係る風力発電装置10では、風力が強まった場合、図5に示すように、風圧により羽根車22、及び羽根車22を備えた発電機20が下流側に移動させられる。これにより、羽根車22と流路内壁との間の隙間(図5中破線丸で示す部分)が広がり、風の抜け道を作ることができる。よって、羽根車22に過度の強風が作用する事により、羽根車22の回転が危険回転数を上回り、破損するといった事態が生じることを避けることができる。さらに、抜けた風による圧電素子28の揺動により発電は可能である。なお、発電機20は弾性部材26により支持されていることにより、風が再び弱風となった場合には、元の位置に回帰することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施形態に係る発電装置10は、小型なため、例えば図6図7に示すように、電車のホームドア50の戸袋52の軌道側に複数の風力発電装置10(図6に示す例では、風洞12を1つとし、流路(集風部14)を複数配置した形態)を一体化して配置した場合、電車の走行風のような弱風から発電することができる。
【0037】
この時、風力発電装置の出力側に発光器や、居残り防止センサー54などを接続する事で、これらの電子機器の電源として作用することとなる。
【符号の説明】
【0038】
10………風力発電装置、12………風洞、14………集風部、14a………集風コーン、16………拡開部、18………排気部、20………発電機、22………羽根車、24………支持部、26………弾性部材、28………圧電素子、28a………スリット、50………ホームドア、52………戸袋、54………居残り防止センサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7