(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】風呂システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240112BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20240112BHJP
F24H 15/176 20220101ALI20240112BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20240112BHJP
F24H 15/246 20220101ALI20240112BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20240112BHJP
【FI】
F24H15/196 301Y
A61H33/00 C
F24H15/176
F24H15/196 301X
F24H15/196 301Z
F24H15/219
F24H15/246
F24H15/395
(21)【出願番号】P 2020014265
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小粥 文雄
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-188992(JP,A)
【文献】特開2016-101222(JP,A)
【文献】特開2019-072240(JP,A)
【文献】特開2006-000174(JP,A)
【文献】特開2019-007683(JP,A)
【文献】特開2003-004295(JP,A)
【文献】特開2015-062557(JP,A)
【文献】特開2003-202153(JP,A)
【文献】特開2018-153236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
A61H 33/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と
、
少なくとも前記湯温を含む前記貯留湯の状態を調整可能な給湯装置と、
複数の健康促進モードと、各前記健康促進モードに対応する前記貯留湯の状態の設定と、を記憶する記憶手段と、
各前記健康促進モードのいずれか1つを選択するための入力手段と、
を備え、
前記給湯装置は、前記入浴者が前記貯留湯に入浴するときに、前記入力手段によって選択された前記健康促進モードに対応する前記貯留湯の状態の設定を実現するように動作することを特徴とする風呂システム。
【請求項2】
浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と、
前記入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段と、
少なくとも前記湯温を含む前記貯留湯の状態を調整可能な給湯装置と、
前記貯留湯の状態と、当該貯留湯の状態で入浴した後の前記体調情報とを関連付けた入浴結果情報を記憶する入浴結果記憶手段と、
を備え、
前記給湯装置は、過去の前記入浴結果情報に基づいて、前記貯留湯の状態を調整する
ことを特徴とする風呂システム。
【請求項3】
浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と、
前記入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段と、
少なくとも前記湯温を含む前記貯留湯の状態を調整可能な給湯装置と、
を備え、
前記給湯装置は、前記入浴者が前記貯留湯に入浴している間に変化する前記体調情報に応じて、前記貯留湯の状態を調整することを特徴とする風呂システム。
【請求項4】
浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と、
前記入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段と、
前記浴槽が設置される浴室の温度である浴室温度を検出する浴室温度検出手段と、
前記浴室温度を調整可能な空調装置と、
を備え、
前記空調装置は、前記入浴者が前記貯留湯に入浴している間に変化する前記体調情報に応じて、前記浴室温度を調整することを特徴とする風呂システム。
【請求項5】
前記入浴者が前記貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段をさらに備え、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときに、
前記決定手段は、前記湯温に基づいて前記退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、
前記報知手段は、前記推奨入浴時間を前記退浴タイミングの予告として報知する請求項1
乃至4のいずれか1項記載の風呂システム。
【請求項6】
前記入浴者が前記貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段と、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときからの経過時間を計時する計時手段と、をさらに備え、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときに、前記決定手段は、前記湯温に基づいて前記退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、
前記経過時間が前記推奨入浴時間に到達したときに、前記報知手段は、前記退浴タイミングの到来を報知する請求項1
乃至5のいずれか1項記載の風呂システム。
【請求項7】
前記入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段をさらに備え、
前記決定手段は、
前記体調情報に基づいて前記入浴者の深部体温を推定する第1ステップと、
前記湯温及び前記深部体温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯に入浴している間における前記深部体温の上昇量を推定する第2ステップと、
推定された前記上昇量に基づいて、前記入浴者の前記深部体温を所定の目標上昇量だけ上昇させる所要時間である前記推奨入浴時間を決定し、前記推奨入浴時間を前記退浴タイミングとする第3ステップと、
前記湯温及び前記推奨入浴時間に基づいて前記入眠時刻を決定する第4ステップと、
を実行する請求項
5又は
6記載の風呂システム。
【請求項8】
浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と、
前記浴槽が設置される浴室の温度である浴室温度を検出する浴室温度検出手段
と、を備え、
前記決定手段は、前記浴室温度に基づいて前記退浴タイミングを調整する
ことを特徴とする風呂システム。
【請求項9】
前記入浴者が前記貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段をさらに備え、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときに、
前記決定手段は、前記湯温に基づいて前記退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、前記浴室温度に基づいて前記推奨入浴時間を調整し、
前記報知手段は、前記推奨入浴時間を前記退浴タイミングの予告として報知する請求項8記載の風呂システム。
【請求項10】
前記入浴者が前記貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段と、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときからの経過時間を計時する計時手段と、をさらに備え、
前記入浴検出手段が前記入浴開始事実を検出したときに、前記決定手段は、前記湯温に基づいて前記退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、前記浴室温度に基づいて前記推奨入浴時間を調整し、
前記経過時間が前記推奨入浴時間に到達したときに、前記報知手段は、前記退浴タイミングの到来を報知する請求項8又は9記載の風呂システム。
【請求項11】
前記入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段をさらに備え、
前記決定手段は、
前記体調情報に基づいて前記入浴者の深部体温を推定する第1ステップと、
前記湯温及び前記深部体温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯に入浴している間における前記深部体温の上昇量を推定する第2ステップと、
推定された前記上昇量に基づいて、前記入浴者の前記深部体温を所定の目標上昇量だけ上昇させる所要時間である前記推奨入浴時間を決定し、前記浴室温度に基づいて前記推奨入浴時間を調整し、前記推奨入浴時間を前記退浴タイミングとする第3ステップと、
前記湯温及び前記推奨入浴時間に基づいて前記入眠時刻を決定する第4ステップと、
を実行する請求項9又は10記載の風呂システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風呂システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の風呂システムの一例である宅内制御システムが開示されている。この宅内制御システムは、制御部、解析部及び蓄積部を含むサーバと、ユーザが身に着けて生活する生体センサと、生体センサ及びサーバと通信可能な端末と、制御部に制御される電子機器の1つである風呂給湯器とを備えている。
【0003】
生体センサによって検出されたユーザの生体情報は、端末を経由してサーバの蓄積部に蓄積される。サーバにおいて、解析部は、例えば、過去1カ月間の睡眠情報及び日中の活動量情報から適切な入眠時刻を算定し、さらに、適切な入眠時刻の所定時間前に入浴を終了するように、入浴終了時刻を算定する。制御部は、算定された入浴終了時刻に基づいて風呂給湯器を制御し、浴槽内への給湯を実行する。また、制御部は、端末を経由してユーザに入浴終了時刻を報知し、入浴を促す。
【0004】
こうして、この宅内制御システムでは、入眠の直前に入浴して深部体温が低下せず、寝つきが悪くなることを抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の宅内制御システムでは、算出された入眠時刻の所定時間前に入浴を終了するように入浴終了時刻を算定することから、ユーザが入眠時刻ありきで決定した入浴終了時刻を強いられることになり、ユーザの日々の都合のばらつきに対応できない場合がある。その結果、この宅内制御システムでは、入浴についてユーザが都合を合わせ難く、使い勝手の向上を実現し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、使い勝手の向上を実現できる風呂システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の風呂システムは、浴槽内に貯留され、入浴者が入浴する貯留湯の温度である湯温を検出する湯温検出手段と、
前記湯温に基づいて、前記入浴者が前記貯留湯から退浴する退浴タイミングと、前記入浴者が睡眠を開始する入眠時刻と、を決定する決定手段と、
前記退浴タイミング及び前記入眠時刻を前記入浴者に報知する報知手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の風呂システムでは、入浴者が自分の都合に合わせて貯留湯に入浴すると、湯温に基づいて退浴タイミング及び入眠時刻が助言される。これにより、入浴者は、入浴について日々の都合のばらつきに対応し易く、入眠時刻についてもそのばらつく都合に合わせ易いので、良質な睡眠を得易くなる。
【0010】
したがって、本発明の風呂システムでは、使い勝手の向上を実現できる。
【0011】
本発明の風呂システムは、入浴者が貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段をさらに備えていることが望ましい。そして、入浴検出手段が入浴開始事実を検出したときに、決定手段は、湯温に基づいて退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、報知手段は、推奨入浴時間を退浴タイミングの予告として報知することが望ましい。
【0012】
この場合、入浴者は、貯留湯への入浴を開始したときに、どのくらいの時間入浴すればよいかを容易に認識できるので、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0013】
本発明の風呂システムは、入浴者が貯留湯への入浴を開始した入浴開始事実を少なくとも検出する入浴検出手段と、入浴検出手段が入浴開始事実を検出したときからの経過時間を計時する計時手段と、をさらに備えていることが望ましい。入浴検出手段が入浴開始事実を検出したときに、決定手段は、湯温に基づいて退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定することが望ましい。そして、経過時間が推奨入浴時間に到達したときに、報知手段は、退浴タイミングの到来を報知することが望ましい。
【0014】
この場合、入浴者は、貯留湯への入浴を開始してからの経過時間を気にすることなく、退浴タイミングを容易に認識でき、自分の体について十分に温まったと理解できるので、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0015】
本発明の風呂システムは、入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段をさらに備えていることが望ましい。そして、決定手段は、体調情報に基づいて入浴者の深部体温を推定する第1ステップと、湯温及び深部体温に基づいて、入浴者が貯留湯に入浴している間における深部体温の上昇量を推定する第2ステップと、推定された上昇量に基づいて、入浴者の深部体温を所定の目標上昇量だけ上昇させる所要時間である推奨入浴時間を決定し、推奨入浴時間を退浴タイミングとする第3ステップと、湯温及び推奨入浴時間に基づいて入眠時刻を決定する第4ステップと、を実行することが望ましい。
【0016】
この場合、良質な睡眠を得るためには体表の温度よりも重要である深部体温の変化を考慮して退浴タイミング及び入眠時刻を決定するので、良質な睡眠を一層得易くなる。
【0017】
本発明の風呂システムは、浴槽が設置される浴室の温度である浴室温度を検出する浴室温度検出手段をさらに備えていることが望ましい。そして、決定手段は、浴室温度に基づいて退浴タイミングを調整することが望ましい。
【0018】
この場合、決定手段は、入浴者の体温に影響を与え易い浴室温度も考慮することにより、退浴タイミングを精度良く決定できる。その結果、この風呂システムでは、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0019】
本発明の風呂システムは、少なくとも湯温を含む貯留湯の状態を調整可能な給湯装置と、複数の健康促進モードと、各健康促進モードに対応する貯留湯の状態の設定と、を記憶する記憶手段と、各健康促進モードのいずれか1つを選択するための入力手段と、をさらに備えていることが望ましい。そして、給湯装置は、入浴者が貯留湯に入浴するときに、入力手段によって選択された健康促進モードに対応する貯留湯の状態の設定を実現するように動作することが望ましい。
【0020】
この場合、給湯装置によって、貯留湯の状態について、入浴者が望む健康促進、例えば、睡眠の質向上、脂肪燃焼、肌のたるみ改善、肩こり改善、むくみ改善、腰痛緩和等に対応する状態、例えば湯温の高低、水位の高低等を調整できるので、良質な睡眠だけでなく、入浴者が望む健康改善の効果を得易くなる。
【0021】
本発明の風呂システムは、入浴者の体調情報を取得する体調情報取得手段と、少なくとも湯温を含む貯留湯の状態を調整可能な給湯装置と、貯留湯の状態と、当該貯留湯の状態で入浴した後の体調情報とを関連付けた入浴結果情報を記憶する入浴結果記憶手段と、をさらに備えていることが望ましい。そして、給湯装置は、過去の入浴結果情報に基づいて、貯留湯の状態を調整することが望ましい。
【0022】
例えば、ある貯留湯の状態で入浴した結果、その後(例えば翌朝)にユーザの体調情報のうちのなんらかの項目について改善していた場合、その貯留湯の状態での入浴がユーザの所定の体調を改善するのに適していると判断できる。このため、貯留湯の状態と、当該貯留湯の状態で入浴した後の体調情報とを関連付けて記憶しておくことで、そのユーザが改善したい体調項目(例えば、健康促進モード)に適した貯留湯の状態を再現し易い。
【発明の効果】
【0023】
本発明の風呂システムによれば、使い勝手の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例の風呂システムの模式図である。
【
図2】
図2は、実施例の風呂システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例の風呂システムにおいて実行されるプログラムのフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例の風呂システムにおいて実行されるプログラムのフローチャートである。
【
図5】
図5は、湯温と、入浴時間と、入浴時の体温変化との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、入浴前、入浴中、入浴後における深部体温の変化と、その深部体温の変化に対する浴室温度の影響とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(実施例)
図1に示すように、実施例の風呂システム1は、本発明の風呂システムの具体的態様の一例であり、住宅H1に適用されている。住宅H1には、台所R1、浴室R2、脱衣室R3及び寝室R4が設けられている。
【0027】
風呂システム1は、住宅H1に設置された給湯装置90と、浴室R2に設置された浴槽3及び空調装置80とを備えている。
【0028】
<給湯装置>
給湯装置90は、台所R1の流し台や浴室R2の混合水栓等に湯を供給する給湯運転、浴室R2の浴槽3内に湯はりを行う湯はり運転、浴槽3内の湯を加熱する追い焚き運転、浴槽3に足し湯を行う足し湯運転、浴槽3内の湯の保温を行う保温運転等の風呂運転を実行可能である。給湯装置90の給湯運転や足し湯運転によって浴槽3内に貯留され、入浴者が入浴する湯を貯留湯PW1とする。
【0029】
図1及び
図2に示すように、給湯装置90は、水位センサS1及び湯温センサS2を有している。水位センサS1は、本発明の「入浴検出手段」の一例である。湯温センサS2は、本発明の「湯温検出手段」の一例である。
【0030】
水位センサS1は、給湯装置90と浴槽3とを接続する配管内の圧力を測定する圧力センサを含んでいる。水位センサS1は、貯留湯PW1が静かな状態で圧力センサが測定する静水圧に基づいて、貯留湯PW1の水位を検出する。また、水位センサS1は、入浴者が貯留湯PW1への入浴を開始したときに圧力センサが測定する水圧の急激な増加に基づいて、入浴者が貯留湯PW1への入浴を開始した入浴開始事実を検出する。さらに、水位センサS1は、入浴者が貯留湯PW1から退浴したときに圧力センサが測定する水圧の急激な減少に基づいて、入浴者が貯留湯PW1から退浴したことを検出する。
【0031】
湯温センサS2は、給湯装置90から浴槽3に送り出される湯の温度と、浴槽3から給湯装置90に戻される湯の温度の両方もしくはいずれか一方を測定し、貯留湯PW1の温度である湯温を検出する。
【0032】
給湯装置90は、水位センサS1の検出結果に基づいて水位の高低を変化させたり、湯温センサS2の検出結果に基づいて湯温の高低を変化させたりして、貯留湯PW1の状態を調整可能である。
【0033】
<空調装置>
空調装置80は、浴室R2内の空気を暖める暖房運転、浴室R2を換気する換気運転、浴室R2を除湿する除湿運転等を実行可能である。空調装置80は、温度制御に利用するための浴室温度センサS3を有している。浴室温度センサS3は、本発明の「浴室温度検出手段」の一例である。浴室温度センサS3は、浴室R2の温度である浴室温度を検出する。
【0034】
また、風呂システム1は、台所R1に設置された台所リモコン10と、浴室R2に設置された浴室リモコン20と、住宅H1に居住するユーザが携帯する携帯端末30とを備えている。
【0035】
<台所リモコン>
台所リモコン10及び浴室リモコン20はそれぞれ、給湯装置90を操作して上述した給湯運転や湯はり運転等を実行させたり、空調装置80を操作して上述した暖房運転等を実行させたりするための端末装置である。
【0036】
図2に示すように、台所リモコン10は、第1制御部11、第1入力部12、第1表示部13及び第1通信部15を有している。第1入力部12は、本発明の「入力手段」の一例である。
【0037】
第1制御部11は、マイコン、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されており、台所リモコン10の動作に関する制御処理を実行する。
【0038】
第1入力部12は、複数の操作スイッチにより構成されており、給湯装置90等の操作に関する入力を受ける。第1表示部13は、液晶パネル等であり、文字や画像等の各種情報を表示する。
【0039】
第1通信部15は、給湯装置90及び空調装置80と有線によって接続されており、給湯装置90及び空調装置80との間で通信を行う。
【0040】
さらに、第1通信部15は、Wi-Fi(登録商標)による通信を行う電子回路を内蔵している。第1通信部15は、住宅H1内に設置された図示しない無線ルータ等を経由して、インターネット等のネットワークNW1や、ネットワークNW1に接続された外部サーバ9とネットワーク通信を行うことが可能となっている。外部サーバ9は、風呂システム1が利用するクラウドサーバである。
【0041】
第1制御部11は、第1入力部12に対する入力に基づいて、給湯装置90等との間で第1通信部15を経由する情報の送受信を行ったり、第1表示部13によって給湯装置90の運転状況等の各種情報を表示したりする。また、第1制御部11は、第1通信部15等を経由して、ネットワークNW1や外部サーバ9と通信可能となっている。
【0042】
<浴室リモコン>
浴室リモコン20は、第2制御部21、第2入力部22、第2表示部23、第2通信部25及びメモリ29を有している。第2制御部21は、本発明の「決定手段」の一例である。第2入力部22は、本発明の「入力手段」の一例である。第2表示部23は、本発明の「報知手段」の一例である。メモリ29は、本発明の「記憶手段」の一例である。
【0043】
第2制御部21は、マイコン、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されており、浴室リモコン20の動作に関する制御処理を実行する。
【0044】
第2入力部22は、複数の操作スイッチにより構成されており、給湯装置90等の操作に関する入力を受ける。第2表示部23は、液晶パネル等であり、文字や画像等の各種情報を表示する。
【0045】
第2通信部25は、給湯装置90及び空調装置80と有線によって接続されており、給湯装置90及び空調装置80との間で通信を行う。また、第2通信部25は、台所リモコン10の第1通信部15とも有線によって接続されており、台所リモコン10との間でも通信を行う。
【0046】
第2制御部21は、第2入力部22に対する入力に基づいて、給湯装置90等との間で第2通信部25を経由する情報の送受信を行ったり、第2表示部23によって給湯装置90の運転状況等の各種情報を表示したりする。また、第2制御部21は、第2通信部25及び台所リモコン10の第1通信部15等を経由して、ネットワークNW1や外部サーバ9と通信可能となっている。さらに、第2制御部21は、入浴者が入浴するための準備を始めるときから
図3及び
図4に示すプログラムを実行し、良質な睡眠を得るのに適した退浴タイミング及び入眠時刻を入浴者に報知するようになっている。
【0047】
<携帯端末>
携帯端末30は、スマートフォン等の携帯電話や、携帯式のタブレット端末等である。携帯端末30は、端末制御部31、タッチパネル32及び端末通信部35を有している。タッチパネル32は、本発明の「入力手段」の一例である。
【0048】
端末制御部31は、マイコン、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されており、携帯端末30の動作に関する制御処理を実行する。
【0049】
タッチパネル32は、文字や画像等の各種情報を表示するとともに、ユーザがタッチパネル32に触れて行う操作により、各種の入力を受ける。
【0050】
端末通信部35は、携帯電話の周波数帯を用いて行う通話を実行可能である。また、端末通信部35は、Wi-Fi(登録商標)による通信を行う電子回路を内蔵している。端末通信部35は、台所リモコン10の第1通信部15とWi-Fi(登録商標)による通信を行うことが可能であるとともに、住宅H1内に設置された図示しない無線ルータ等を経由して、ネットワークNW1や外部サーバ9とネットワーク通信を行うことが可能となっている。
【0051】
端末制御部31は、外部サーバ9等からネットワークNW1及び端末通信部35を経由して、風呂システム1に係る専用プログラムをダウンロードし、実行することが可能である。そして、端末制御部31は、タッチパネル32に対する入力に基づいて、台所リモコン10の第1制御部11との間で、端末通信部35及び第1通信部15を経由する情報の送受信を行うようになっている。端末制御部31から台所リモコン10の第1制御部11に伝達された情報は、必要に応じて浴室リモコン20の第2制御部21にも伝達される。
【0052】
図1及び
図2に示すように、風呂システム1は、脱衣室R3に設置された第1体調情報取得手段51と、浴室R2に設置された第2体調情報取得手段52とを備えている。第1体調情報取得手段51及び第2体調情報取得手段52は、浴室リモコン20の第2制御部21が
図3及び
図4に示すプログラムを実行することにより、入浴者の体調情報を取得する。第1体調情報取得手段51及び第2体調情報取得手段52はそれぞれ、本発明の「体調情報取得手段」の一例である。
【0053】
<第1体調情報取得手段>
第1体調情報取得手段51は、脱衣室R3において湯や水蒸気の影響を受け難いため、複数の計測手段によって入浴者の様々な体調情報を取得するようになっている。それらの計測手段は周知であるので説明は簡略するが、以下に具体例を挙げる。
【0054】
例えば、第1体調情報取得手段51は、電極等が設置された体重計に入浴者が乗ることにより、体重、体脂肪率、骨密度、内蔵脂肪レベル、筋肉量、基礎代謝量等を体調情報として取得する。
【0055】
また、第1体調情報取得手段51は、腕や手首に巻く圧力式の血圧計や、手首、手の平、指先等に光を照射して透過光や反射光を計測する光学式の血流量計等によって、血圧、心拍数、血流量等を体調情報として取得する。
【0056】
さらに、第1体調情報取得手段51は、皮膚に接触させる体温計や、赤外線式の非接触式体温計等により、入浴者の体温を体調情報として取得する。特に、第1体調情報取得手段51は、入浴者の体表面の温度だけでなく、入浴者の深部体温を推定するための深部体温用測定値を体調情報として取得する。
【0057】
ここで、深部体温とは、体内の主要臓器、例えば脳や内臓の内部の温度である。このため、実験等では、正確な測定のために食道や直腸にセンサを挿入して侵襲的に深部体温を計測するが、日常生活では、非侵襲的な方法により得られた測定値に基づいて深部体温を推定する。
【0058】
本実施例では、例えば、舌下や腋下のような比較的深部に近い身体の表面部位の温度を測定したり、耳内の鼓膜に向けて赤外線を当てて非接触で鼓膜の温度を測定したり、額や首等に特殊な計測パッドを当てたりして得られた深部体温用測定値に基づいて深部体温を推定するようになっている。
【0059】
第1体調情報取得手段51によって取得された深部体温用測定値等の体調情報は、浴室リモコン20の第2制御部21に伝達される。そして、第2制御部21は、その体調情報を必要に応じて、第2通信部25及び台所リモコン10の第1通信部15等を経由して、外部サーバ9に伝達する。
【0060】
なお、第1体調情報取得手段51には、脱衣室R3に設置されたものだけでなく、体調情報取得機能を有する腕時計等のユーザが日常的に着用するもの、いわゆるスマートウォッチ等が含まれる。そして、ユーザが日常的に着用する第1体調情報取得手段51によって、脱衣室R3以外の場所、例えば台所R1や寝室R4においてもユーザの体調情報を取得し、浴室リモコン20の第2制御部21に伝達可能である。
【0061】
<第2体調情報取得手段>
第2体調情報取得手段52は、浴室R2において湯や水蒸気の影響を受け易い。また、体重、体脂肪率、骨密度、内蔵脂肪レベル、筋肉量、基礎代謝量等は、入浴前と入浴中とで変化し難いため、第1体調情報取得手段51によって取得すれば、第2体調情報取得手段52によって取得する必要性が低い。このため、第2体調情報取得手段52は、第1体調情報取得手段51よりも少ない計測手段によって入浴者の様々な体調情報を取得するようになっている。
【0062】
例えば、第2体調情報取得手段52は、手首、手の平、指先等に当てる光学式の血流量計等によって、血圧、心拍数、血流量等を体調情報として取得する。
【0063】
また、第1体調情報取得手段51は、皮膚に接触させる体温計や、赤外線式の非接触式体温計等により、入浴者の体温を体調情報として取得する。特に、第2体調情報取得手段52は、第1体調情報取得手段51と同様の計測手段であって湯や水蒸気の影響を受け難いものにより、深部体温用測定値を体調情報として取得する。
【0064】
第2体調情報取得手段52によって取得された深部体温用測定値等の体調情報は、浴室リモコン20の第2制御部21に伝達される。そして、第2制御部21は、その体調情報を必要に応じて、第2通信部25及び台所リモコン10の第1通信部15等を経由して、外部サーバ9に伝達する。
【0065】
<寝室リモコン>
寝室R4には、寝室リモコン40が設置されている。寝室リモコン40は、浴室リモコン20と同様の構成であるので説明は簡略するが、台所リモコン10、浴室リモコン20及び給湯装置90と有線によって接続されている。
【0066】
<退浴タイミング及び入眠時刻を入浴者に報知するプログラム>
風呂システム1を利用するユーザは、入浴するための準備を始めるときに、浴室R2で浴室リモコン20の第2入力部22を操作したり、台所R1で台所リモコン10の第1入力部12や携帯端末30のタッチパネル32を操作したりして、給湯装置90に湯はり運転や足し湯運転を実行させ、浴槽3内の貯留湯PW1を入浴可能な状態とする。
【0067】
このとき、浴室リモコン20の第2制御部21は、良質な睡眠を得るのに適した退浴タイミング及び入眠時刻を入浴者に報知するために、
図3及び
図4に示すプログラムを実行する。
【0068】
初めに、第2制御部21は、
図3に示すステップS101において、入浴を準備するユーザに、複数の健康促進モードのいずれか1つを選択させる。この選択は、そのユーザが操作する浴室リモコン20の第2入力部22、台所リモコン10の第1入力部12、又は携帯端末30のタッチパネル32に対する入力によって行われる。
【0069】
ここで、複数の健康促進モードとは、例えば、睡眠の質向上、脂肪燃焼、肌のたるみ改善、肩こり改善、むくみ改善、腰痛緩和等のそれぞれに効果的な貯留湯PW1の温度や水位、浴室R2内の温度や湿度等を実現するモードである。
【0070】
例えば、睡眠の質向上という健康促進モードの場合、それに対応する貯留湯PW1の状態の設定は、湯温40℃、全身浴となる水位、等である。
【0071】
また、脂肪燃焼という健康促進モードの場合、それに対応する貯留湯PW1の状態の設定は、湯温42℃、全身浴となる水位、等である。
【0072】
さらに、肌のたるみ改善、という健康促進モードの場合、それに対応する貯留湯PW1の状態の設定は、湯温38℃、全身浴となる水位、等である。
【0073】
メモリ29は、このような複数の健康促進モードと、各健康促進モードに対応する貯留湯PW1の状態の設定と、を記憶している。また、メモリ29は、各健康促進モードに対応する浴室温度の設定も記憶している。
【0074】
次に、第2制御部21は、ステップS102に移行し、入浴を準備するために脱衣室R3にいるユーザの体調情報を第1体調情報取得手段51によって取得する。
【0075】
次に、第2制御部21は、ステップS103に移行し、第1体調情報取得手段51によって取得された深部体温用測定値等の体調情報に基づいて深部体温を推定する。ステップS103は、第1ステップの一例である。本実施例では、第2制御部21は、外部サーバ9の支援を受けて深部体温を推定するようになっている。
【0076】
より詳しくは、外部サーバ9は、例えば
図5に示す「湯温と、入浴時間と、入浴時の体温変化との関係を示すグラフ」や、
図6に示す「入浴前、入浴中、入浴後における深部体温の変化と、その深部体温の変化に対する浴室温度の影響とを示すグラフ」等の多数の試験結果に基づくデータテーブルを保持している。そして、外部サーバ9は、第2制御部21から伝達された深部体温用測定値等の体調情報をデータテーブルと参照して処理し、処理結果を第2制御部21に伝達する。第2制御部21は、その処理結果に基づいて深部体温を推定する。
【0077】
次に、第2制御部21は、ステップS104に移行し、ステップS101で選択された健康促進モードに対応する貯留湯PW1の状態の設定と、浴室温度の設定とをメモリ29から読み出して設定する。
【0078】
この際、第2制御部21は、メモリ29又は外部サーバ9から過去の入浴結果情報を読み出す。ここで、入浴結果情報とは、後で詳しく説明するステップS129においてメモリ29又は外部サーバ9に記憶される情報である。メモリ29又は外部サーバ9は、本発明の「入浴結果記憶手段」の一例である。そして、第2制御部21は、読み出した過去の入浴結果情報に基づいて、貯留湯PW1の状態の設定を調整する。例えば、貯留湯PW1の状態の設定が42℃であって、過去の入浴結果情報が「ユーザに適した湯温が40℃」という情報である場合、貯留湯PW1の状態の設定を42℃から40℃に近づけるように調整する。ユーザが健康促進モードを選択しなかった場合には、過去の入浴結果情報に基づいて、過去の貯留湯PW1の状態を再現するように設定する。なお、過去の入浴結果情報がメモリ29又は外部サーバ9に記憶されていなければ調整を実施しない。
【0079】
次に、第2制御部21は、ステップS105に移行し、水位センサS1の検出結果に基づいて、残り湯が有るか否かを判断する。
【0080】
浴槽3内に貯留湯PW1がない場合、ステップS105で「No」となるので、ステップS106に移行する。そして、第2制御部21は、ステップS106において給湯装置90に湯はり運転を実行させ、貯留湯PW1の湯温及び水位を設定通りに調整した後、ステップS108に移行する。
【0081】
その一方、浴槽3内に貯留湯PW1がある場合、ステップS105で「Yes」となるので、ステップS107に移行する。そして、第2制御部21は、ステップS107において給湯装置90に足し湯運転を実行させ、貯留湯PW1の湯温及び水位を設定通りに調整した後、ステップS108に移行する。
【0082】
つまり、給湯装置90は、入浴者が貯留湯PW1に入浴するときに、ユーザの入力操作によって選択された健康促進モードに対応する貯留湯PW1の状態の設定を実現するように動作する。その結果、選択された健康促進モードに応じて、貯留湯PW1の湯温が例えば38℃、40℃、又は42℃で一定に維持される。
【0083】
第2制御部21は、ステップS106又はステップS107からステップS108に移行すると、空調装置80を作動させて浴室温度を設定通りに調整する。
【0084】
次に、第2制御部21は、ステップS111に移行し、ユーザが入浴を開始したか否かを判断する。
【0085】
入浴者が貯留湯PW1への入浴を開始した入浴開始事実を水位センサS1が検出しない場合、ステップS111で「No」となるので、ステップS111を繰り返す。その一方、入浴開始事実を水位センサS1が検出した場合、ステップS111で「Yes」となるので、ステップS112に移行する。それと同時に、第2制御部21は、内部時計によって、水位センサS1が入浴開始事実を検出したときからの経過時間の計時を開始する。第2制御部21の内部時計は、本発明の「計時手段」の一例である。
【0086】
第2制御部21は、ステップS112に移行すると、入浴者の体調情報を第2体調情報取得手段52によって取得する。
【0087】
次に、第2制御部21は、ステップS113に移行し、第2体調情報取得手段52によって取得された深部体温用測定値等の体調情報に基づいて深部体温を推定する。ステップS113は、第1ステップの一例である。第2制御部21は、ステップS103と同様にして、外部サーバ9の支援を受けて深部体温を推定するようになっている。
【0088】
次に、第2制御部21は、ステップS114に移行する。そして、第2制御部21は、貯留湯PW1の湯温、ステップS103で第1体調情報取得手段51によって取得された体調情報に基づいて推定した深部体温、及びステップS113で第2体調情報取得手段52によって取得された体調情報に基づいて推定した深部体温に基づいて、入浴者が貯留湯PW1に入浴している間における深部体温の上昇量を推定する。ステップS114は、第2ステップの一例である。本実施例では、第2制御部21は、外部サーバ9の支援を受けて深部体温の上昇量を推定するようになっている。
【0089】
より詳しくは、外部サーバ9は、第2制御部21から伝達された貯留湯PW1の湯温、第1体調情報取得手段51に基づいて推定した深部体温、及び第2体調情報取得手段52に基づいて推定した深部体温を
図5及び
図6に示すグラフ等に基づくデータテーブルと参照して処理し、処理結果を第2制御部21に伝達する。第2制御部21は、その処理結果に基づいて深部体温の上昇量を推定する。
【0090】
次に、第2制御部21は、ステップS115に移行する。そして、第2制御部21は、ステップS114で推定された上昇量に基づいて、入浴者の深部体温を所定の目標上昇量だけ上昇させる所要時間である推奨入浴時間を決定し、その推奨入浴時間を退浴タイミングとする。ステップS115は、本発明の「第3ステップ」の一例である。所定の目標上昇量は、例えば0.5℃程度である。本実施例では、第2制御部21は、外部サーバ9の支援を受けて推奨入浴時間を決定するようになっている。
【0091】
より詳しくは、第2制御部21は、ステップS114で推定された上昇量と、所定の目標上昇量と、浴室温度とを外部サーバ9に伝達する。外部サーバ9は、それらを
図5及び
図6に示すグラフ等に基づくデータテーブルと参照して処理し、処理結果を第2制御部21に伝達する。第2制御部21は、その処理結果に基づいて推奨入浴時間を決定し、その推奨入浴時間を退浴タイミングとする。この際、
図6に示すように、浴室温度の高低によって入浴中の深部体温の変化パターンが異なることから、退浴タイミングとしての推奨入浴時間は、浴室温度の高低によって調整される。例えば、浴室温度が低い場合、推奨入浴時間は長くなるように調整される。
【0092】
次に、第2制御部21は、
図4に示すステップS116に移行し、ステップS115で決定された退浴タイミングとしての推奨入浴時間を予告として報知する。具体的は、浴室リモコン20の第2表示部23に、例えば「**分後に退浴してください」というメッセージを表示して、退浴タイミングを入浴者に報知する。
【0093】
次に、第2制御部21は、ステップS117に移行する。そして、第2制御部21は、入浴者が貯留湯PW1に入浴している間に徐々に変化する血圧や心拍数等の体調情報を第2体調情報取得手段52によって取得し、貯留湯PW1の状態及び浴室温度の設定をその体調情報に応じて修正する。
【0094】
次に、第2制御部21は、ステップS118に移行し、ステップS117における修正結果に基づき、必要に応じて給湯装置90に足し湯運転を実行させ、貯留湯PW1の湯温及び水位を設定通りに調整する。
【0095】
次に、第2制御部21は、ステップS119に移行し、ステップS117における修正結果に基づき、必要に応じて空調装置80を制御し、浴室温度を設定通りに調整する。
【0096】
次に、第2制御部21は、ステップS121に移行し、入浴開始事実を検出したときからの経過時間が推奨入浴時間と等しくなったか否かを判断する。
【0097】
第2制御部21の内部時計によって計時される経過時間が推奨入浴時間に満たない場合、ステップS121で「No」となるので、ステップS121を繰り返す。その一方、経過時間が推奨入浴時間と等しくなった場合、ステップS121で「Yes」となるので、ステップS122に移行する。
【0098】
第2制御部21は、ステップS122に移行すると、浴室リモコン20の第2表示部23に、例えば「退浴する時間になりました」というメッセージを表示して、退浴タイミングの到来を入浴者に報知する。
【0099】
次に、第2制御部21は、ステップS123に移行し、ユーザが退浴したか否かを判断する。
【0100】
入浴者が貯留湯PW1から退浴したことを水位センサS1が検出しない場合、ステップS123で「No」となるので、ステップS123を繰り返す。その一方、入浴者が退浴したことを水位センサS1が検出した場合、ステップS123で「Yes」となるので、ステップS124に移行する。
【0101】
第2制御部21は、ステップS124に移行すると、貯留湯PW1の湯温、及びステップS115で決定した推奨入浴時間に基づいて、良質な睡眠を得るのに適した入眠時刻を決定する。ステップS124は、本発明の「第4ステップ」の一例である。本実施例では、第2制御部21は、外部サーバ9の支援を受けて入眠時刻を決定するようになっている。
【0102】
より詳しくは、第2制御部21は、貯留湯PW1の湯温、及びステップS115で決定した推奨入浴時間を外部サーバ9に伝達する。外部サーバ9は、それらを
図5及び
図6に示すグラフ等に基づくデータテーブルと参照して処理し、処理結果を第2制御部21に伝達する。第2制御部21は、その処理結果に基づいて入眠時刻を決定する。特に、良質な睡眠を得るためには、退浴後に大きな勾配で深部体温が低下した頃に入眠することが好ましいという試験結果が知られていることから、第2制御部21は、そのような試験結果を考慮して入眠時刻を決定する。
【0103】
次に、第2制御部21は、ステップS125に移行し、浴室リモコン20の第2表示部23に、例えば「最適な入眠時刻は**時**分です」というメッセージを表示して、良質な睡眠を得るのに適した入眠時刻を入浴者に報知する。
【0104】
次に、第2制御部21は、ステップS126に移行し、ステップS124で決定した入眠時刻が到来したか否かを内部時計の計時によって判断する。
【0105】
入眠時刻が到来していない場合、ステップS126で「No」となるので、ステップS126を繰り返す。その一方、入眠時刻が到来した場合、ステップS126で「Yes」となるので、ステップS127に移行する。
【0106】
第2制御部21は、ステップS127に移行すると、退浴して台所R1や寝室R4等でくつろぐユーザに対して、台所リモコン10、携帯端末30又は寝室リモコン40を経由して、例えば「最適な入眠時刻になりました」というメッセージを表示して、退浴後のユーザに入眠時刻の到来を報知する。ユーザがその報知に従うことにより、退浴後に大きな勾配で深部体温が低下した頃に入眠できるので、良質な睡眠を得易くなる。
【0107】
次に、第2制御部21は、ステップS128に移行し、例えば、翌朝のユーザの起床後に、ユーザが着用する第1体調情報取得手段51によって、前日に入浴してから時間が経過した後の体調情報を取得する。そして、第2制御部21は、前日にユーザが入浴したときに取得した体調情報と、起床後の体調情報とを比較して、改善した体調情報を抽出する。
【0108】
次に、第2制御部21は、ステップS129に移行し、前日に入浴したときの貯留湯PW1の状態と、改善した体調情報とを関連付けた入力結果情報をメモリ29又は外部サーバ9に記憶させる。入力結果情報は、例えば「41℃で入浴したことにより肩こりが緩和した。」等の情報である。その後、第2制御部21は、このプログラムを終了する。
【0109】
<作用効果>
実施例の風呂システム1では、入浴者が自分の都合に合わせて貯留湯PW1に入浴すると、浴室リモコン20の第2制御部21及び第2表示部23によって、少なくとも貯留湯PW1の湯温に基づいて、退浴タイミング及び入眠時刻が助言される。
【0110】
具体的には、
図4のステップS116、S122において退浴タイミングの予告及び到来が報知され、
図4のステップS125において入眠時刻が報知される。
【0111】
これにより、入浴者は、入浴について日々の都合のばらつきに対応し易く、入眠時刻についてもそのばらつく都合に合わせ易いので、良質な睡眠を得易くなる。
【0112】
したがって、実施例の風呂システム1では、使い勝手の向上を実現できる。
【0113】
また、この風呂システム1では、
図3のステップS111において、水位センサS1が入浴開始事実を検出したときに、浴室リモコン20の第2制御部21は、
図3のステップS113~S115において、少なくとも貯留湯PW1の湯温に基づいて、退浴タイミングとしての推奨入浴時間を決定し、
図4のステップS116において、浴室リモコン20の第2表示部23によって推奨入浴時間を退浴タイミングの予告として報知する。これにより、入浴者は、貯留湯PW1への入浴を開始したときに、どのくらいの時間入浴すればよいかを容易に認識できるので、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0114】
さらに、この風呂システム1では、
図3のステップS111において、水位センサS1が入浴開始事実を検出したときに、浴室リモコン20の第2制御部21は、内部時計によって、入浴者が貯留湯PW1への入浴を開始してからの経過時間の計時を開始する。そして、第2制御部21は、
図4のステップS121において、経過時間が推奨入浴時間に到達したときに、
図4のステップS122において、第2表示部23によって退浴タイミングの到来を報知する。これにより、入浴者は、貯留湯PW1への入浴を開始してからの経過時間を気にすることなく、退浴タイミングを容易に認識でき、自分の体について十分に温まったと理解できるので、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0115】
また、この風呂システム1では、浴室リモコン20の第2制御部21は、
図3のステップS103において、第1体調情報取得手段51によって取得された深部体温用測定値等の体調情報に基づいて深部体温を推定する。次に、第2制御部21は、
図3のステップS113において、第2体調情報取得手段52によって取得された深部体温用測定値等の体調情報に基づいて深部体温を推定する。次に、第2制御部21は、
図3のステップS114において、貯留湯PW1の湯温、第1体調情報取得手段51によって取得された体調情報に基づいて推定した深部体温、及び第2体調情報取得手段52によって取得された体調情報に基づいて推定した深部体温に基づいて、入浴者が貯留湯PW1に入浴している間における深部体温の上昇量を推定する。次に、第2制御部21は、
図3のステップS115において、推定された上昇量に基づいて、入浴者の深部体温を所定の目標上昇量だけ上昇させる所要時間である推奨入浴時間を決定し、その推奨入浴時間を退浴タイミングとする。そして、第2制御部21は、
図4のステップS124において、貯留湯PW1の湯温、及び決定した推奨入浴時間に基づいて、良質な睡眠を得るのに適した入眠時刻を決定する。こうして、この風呂システム1では、良質な睡眠を得るためには体表の温度よりも重要である深部体温の変化を考慮して退浴タイミング及び入眠時刻を決定するので、入浴者が良質な睡眠を一層得易くなる。
【0116】
さらに、この風呂システム1では、浴室リモコン20の第2制御部21は、
図3のステップS115において、浴室温度センサS3によって検出された浴室温度に基づいて退浴タイミングを調整する。具体的には、浴室温度の高低によって入浴中の深部体温の変化パターンが異なることから、浴室温度が低い場合、推奨入浴時間が長くなるように調整する。こうして、浴室リモコン20の第2制御部21は、入浴者の体温に影響を与え易い浴室温度も考慮することにより、退浴タイミングを精度良く決定できる。その結果、この風呂システム1では、使い勝手の一層の向上を実現できる。
【0117】
また、この風呂システム1では、複数の健康促進モードと、各健康促進モードに対応する貯留湯PW1の状態の設定とが浴室リモコン20のメモリ29に記憶されている。浴室リモコン20の第2制御部21は、
図3のステップS101において、入浴を準備するユーザに、複数の健康促進モードのいずれか1つを選択させる。第2制御部21は、
図3のステップS106、S107、
図4のステップS119において、給湯装置90を制御して、入浴者が貯留湯PW1に入浴するときに、選択された健康促進モードに対応する貯留湯PW1の状態の設定を実現させる。こうして、この風呂システム1では、給湯装置90によって、貯留湯PW1の状態について、入浴者が望む健康促進、例えば、睡眠の質向上、脂肪燃焼、肌のたるみ改善、肩こり改善、むくみ改善、腰痛緩和等に対応する状態、例えば貯留湯PW1の湯温の高低、水位の高低等を調整できるので、良質な睡眠だけでなく、入浴者が望む健康改善の効果を得易くなる。
【0118】
さらに、この風呂システム1では、第2制御部21は、
図4のステップS128において、ユーザが着用する第1体調情報取得手段51によって、起床後の体調情報を取得し、ステップS129において、前日に入浴したときの貯留湯PW1の状態と、改善した体調情報とを関連付けた入力結果情報をメモリ29又は外部サーバ9に記憶させる。そして、第2制御部21は、
図3のステップS104において、メモリ29又は外部サーバ9から読み出した過去の入浴結果情報に基づいて、貯留湯PW1の状態の設定を調整する。
【0119】
ここで、ある貯留湯PW1の状態で入浴した結果、その後(例えば翌朝)にユーザの体調情報のうちのなんらかの項目について改善していた場合、その貯留湯PW1の状態での入浴がユーザの所定の体調を改善するのに適していると判断できる。このため、貯留湯PW1の状態と、当該貯留湯PW1の状態で入浴した後の体調情報とを関連付けて記憶しておくことで、そのユーザが改善したい体調項目(例えば、健康促進モード)に適した貯留湯PW1の状態を再現し易い。
【0120】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0121】
例えば、浴室リモコン20の第2表示部23が退浴タイミング及び入眠時刻を入浴者に報知するときに、ブザー音や音声メッセージ等を併用してもよい。
【0122】
実施例では、浴室リモコン20の第2制御部21が
図3及び
図4に示すプログラムを実行するが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、台所リモコン10の第1制御部11が
図3及び
図4に示すプログラムを実行し、浴室リモコン20の第2制御部21を経由して、第2表示部23により退浴タイミング及び入眠時刻を入浴者に報知してもよい。また、第2制御部21は、外部サーバ9の支援を受けることなく全ての処理を行うようになっていてもよい。
【0123】
実施例では、風呂システム1が第1体調情報取得手段51及び第2体調情報取得手段52を備えているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、実施例から第1体調情報取得手段51を無くし、
図3のステップS102~S103を無くした構成、つまり、体調情報取得手段が浴室のみに設けられた構成も本発明に含まれる。また、実施例から第2体調情報取得手段52を無くし、
図3のステップS112~S113を無くした構成、つまり、体調情報取得手段が脱衣室のみに設けられた構成も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は例えば風呂が設置された住宅や施設等に利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1…風呂システム
3…浴槽
PW1…貯留湯
S2…湯温検出手段(湯温センサ)
21…決定手段(第2制御部)
23…報知手段(第2表示部)
S1…入浴検出手段(水位センサ)
51、52…体調情報取得手段(51…第1体調情報取得手段、52…第2体調情報取得手段)
S103、S113…第1ステップ
S114…第2ステップ
S115…第3ステップ
S124…第4ステップ
R2…浴室
S3…浴室温度検出手段(浴室温度センサ)
90…給湯装置
29…記憶手段(メモリ)
12、22、42…入力手段(12…第1入力部、22…第2入力部、32…タッチパネル)
29、9…入浴結果記憶手段(29…メモリ、9…外部サーバ)