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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】密封構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240112BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240112BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240112BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16J15/10 N
B29C45/14
B29C45/26
B29C33/12
F16J15/10 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020026155
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131118
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】稀代 昌道
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
B29C 45/14
B29C 45/26
B29C 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材の外周面に接する環状のリップ部を有するシールリップと、
前記シールリップの前記リップ部に配置され、前記軸部材に向かう力を前記リップ部に加える環状の加圧部材と、を備えるものであり(但し、金属性の環状のばねを有するものを除く)
前記加圧部材は、ゴム製弾性材からなり、且つ、前記リップ部に架橋接着で固定されている、密封構造。
【請求項2】
前記加圧部材は、前記リップ部の圧縮永久歪よりも圧縮永久歪が小さい、請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の密封構造を製造する密封構造の製造方法であって、
前記密封構造の成形型を用意し、当該成形型内に前記加圧部材を配置し、その後、前記成形型内に前記シールリップの成形材料を注入し、その後、前記成形型内の前記成形材料を加圧して、前記加圧部材を前記リップ部に架橋接着させた前記密封構造を製造する、密封構造の製造方法。
【請求項4】
軸部材の外周面に接する環状のリップ部を有するシールリップと、
前記シールリップの前記リップ部に配置され、前記軸部材に向かう力を前記リップ部に加える環状の加圧部材と、を備え、
前記加圧部材は、ゴム製弾性材からなり、且つ、前記リップ部に架橋接着で固定されおり、
前記加圧部材は、前記リップ部の圧縮永久歪よりも圧縮永久歪が小さい、密封構造。
【請求項5】
請求項4に記載の密封構造を製造する密封構造の製造方法であって、
前記密封構造の成形型を用意し、当該成形型内に前記加圧部材を配置し、その後、前記成形型内に前記シールリップの成形材料を注入し、その後、前記成形型内の前記成形材料を加圧して、前記加圧部材を前記リップ部に架橋接着させた前記密封構造を製造する、密封構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造及びその製造方法に関する。更に詳しくは、自動車等においてプラグチューブシールなどとして用いられる密封構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等車両における内燃機関のシリンダヘッドカバーには、プラグチューブやインジェクションパイプ等の挿入部材(以下、「軸部材」とも言う)を挿入するための挿通孔が設けられており、この挿通孔に挿入部材を挿入した状態で、挿入部材とシリンダヘッドカバーなどのハウジングとの間を封止するようにプラグチューブシール(PTS)やインジェクションパイプシール(IPS)などの密封構造(密封装置)が装着されている。
【0003】
そして、これらのPTSやIPSには、そのリップ部に加圧部材であるスプリングが配置され、このスプリングは挿入部材との締め代(緊迫力)を維持することに寄与している。
【0004】
このスプリングは、金属製のもの(図5中、符号「113」で示す)が使用され、密封構造では、スプリングをリップ部に内包させるようにして製造されている(例えば、特許文献1参照)。なお、このようにリップ部に埋設されて内包されるスプリングをモールドスプリングと呼称することがある。図5には、従来の密封構造200を示しており、この密封構造200は、その金属製のスプリング113が、図5に示すようにシールリップ11のリップ部10に埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平7-714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の密封装置は、金属製のスプリングがリップ部に内包されたモールドスプリングであり、当該スプリングが容易には外れないなどの効果が発揮されることが好ましい。そのために、スプリングとの接着力を強固にするための接着剤が用いられる場合がある。しかし、接着剤をスプリングに塗布するなどの処理には手間がかかるので、この処理を行う工程を減らすことで、密封装置の作製の手間を軽減する余地があった。また、上記スプリングは、金属製であるので製造の難易度の点において未だ改良の余地があり、加圧部材をより容易に製造する点において改良の余地があった。更に、スプリングは、金属製であるために成形性についても未だ改良の余地があった。更に、特許文献1に記載の密封装置は、挿入部材などに対する偏心追随性を更に向上することや、挿入部材への挿入時におけるスプリングの外れ(脱落)を防止する点において更なる改良の余地があった。
【0007】
このようなことから、作製の手間が軽減され、製造の難易度が低く且つ成形し易く(成形性が良好であり)、更に、偏心追随性及び外れ難さが向上された加圧部材(つまり、スプリングに相当する部材)を備える密封構造の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、作製の手間が軽減され、製造の難易度が低く且つ成形し易く、更に、偏心追随性及び外れ難さが向上された加圧部材を備える密封構造の開発を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、密封構造及びその製造方法が提供される。
【0010】
[1] 軸部材の外周面に接する環状のリップ部を有するシールリップと、
前記シールリップの前記リップ部に配置され、前記軸部材に向かう力を前記リップ部に加える環状の加圧部材と、を備えるものであり(但し、金属性の環状のばねを有するものを除く)
前記加圧部材は、ゴム製弾性材からなり、且つ、前記リップ部に架橋接着で固定されている、密封構造。
【0011】
[2] 前記加圧部材は、前記リップ部の圧縮永久歪よりも圧縮永久歪が小さい、前記[1]に記載の密封構造。
【0012】
[3] 前記[1]または[2]に記載の密封構造を製造する密封構造の製造方法であって、
前記密封構造の成形型を用意し、当該成形型内に前記加圧部材を配置し、その後、前記成形型内に前記シールリップの成形材料を注入し、その後、前記成形型内の前記成形材料を加圧して、前記加圧部材を前記リップ部に架橋接着させた前記密封構造を製造する、密封構造の製造方法。
[4] 軸部材の外周面に接する環状のリップ部を有するシールリップと、
前記シールリップの前記リップ部に配置され、前記軸部材に向かう力を前記リップ部に加える環状の加圧部材と、を備え、
前記加圧部材は、ゴム製弾性材からなり、且つ、前記リップ部に架橋接着で固定されおり、
前記加圧部材は、前記リップ部の圧縮永久歪よりも圧縮永久歪が小さい、密封構造。
[5] 前記[4]に記載の密封構造を製造する密封構造の製造方法であって、
前記密封構造の成形型を用意し、当該成形型内に前記加圧部材を配置し、その後、前記成形型内に前記シールリップの成形材料を注入し、その後、前記成形型内の前記成形材料を加圧して、前記加圧部材を前記リップ部に架橋接着させた前記密封構造を製造する、密封構造の製造方法。
【0013】
本発明の密封構造は、作製の手間が軽減され、その加圧部材における製造の難易度が低く且つ成形し易く、更に、その加圧部材の偏心追随性及び外れ難さが向上されているという効果を奏する。
【0014】
本発明の密封構造の製造方法によれば、作製の手間が軽減され、加圧部材の製造の難易度が低く且つ加圧部材が成形し易く、更に、加圧部材の偏心追随性及び外れ難さが向上された密封構造を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の密封構造の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
図2図1におけるA-A断面を矢印の方向に見た状態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の密封構造の他の実施形態における図2に対応する断面を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の密封構造の一の実施形態の使用状態を模式的に示す一部断面図である。
図5】従来の密封構造の他の実施形態における図2に対応する断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(1)密封構造:
本発明の密封構造の一の実施形態は、図1に示す密封構造100である。この密封構造100は、軸部材の外周面に接する環状のリップ部10を有するシールリップ11と、このシールリップ11のリップ部10に配置され、軸部材に向かう力をリップ部10に加える環状の加圧部材13と、を備え、加圧部材13は、ゴム製弾性材からなり、且つ、リップ部10(シールリップ11)に架橋接着で固定されているものである。ゴム製弾性材は、ゴム製の材料からなる弾性材(弾性を有する材料)である。
【0018】
この密封構造100は、ゴム製弾性材である加圧部材13をリップ部10に架橋接着させることで、接着剤を用いる工程を省略でき、製造時における工程数を削減することができる。そのため、作製の手間が軽減され、安価で作製することができる。そして、密封構造100は、その加圧部材13における製造の難易度が低く且つ成形し易く、更に、その加圧部材の偏心追随性及び外れ難さが向上されているものである。
【0019】
ここで、密封構造100は、外周部に配置される環状の外周取付部15と、この外周取付部15であって内周部に配置されるシールリップ11と、このシールリップ11と外周取付部15の間に配置される環状(「筒状」ということもできる)の膜部17と、を有している。このような密封構造100は、挿入部材(軸部材)21(図4参照)との関係においてその中心軸が一致するような状態で装着されることが好ましいが、実際には、密封構造100の中心軸は、挿入部材21の中心軸に対して偏心した状態で配置されることがある。そのため、この偏心した状態であっても密封性を発揮させるために膜部17を設けている。即ち、密封構造100が多少歪んで配置されていたとしても、膜部17が変形して密封構造100の全体としての歪みを吸収し、密封構造100による密封性を確保している。このような性質を有することを「偏心追随性」を有すると言う。なお、外周取付部15には、金属等剛材製で環状の補強環23が埋設されていてもよい。
【0020】
このように密封構造は、偏心追随性を有するように設計されたものであるが、その偏心の程度が大きい場合や、長期間の使用によって偏心した状態が長く続くと、加圧部材がリップ部から外れることも懸念される。つまり、加圧部材は、密封構造の一部であることから偏心追随性を有することが求められるとともに、リップ部との固定状態が強固であることが求められる。このように、加圧部材には、強固な固定状態を発揮することと、偏心の程度に応じて柔軟に変形可能であるということの両方の性質を有することが求められている。この点、本発明の密封構造では、加圧部材13がリップ部10(シールリップ11)に架橋接着で固定されていることから、加圧部材13は上記偏心追随性及び外れ難さの両方の性質を備えている。
【0021】
密封構造100は、全体としては板状であり、その中央部に挿入部材21を挿入することができる貫通孔25が形成されたものである。密封構造100の外周形状は、特に制限はないが、例えば、図1に示すように円形状などとすることができる。
【0022】
(1-1)シールリップ:
シールリップ11は、軸部材(挿入部材)21の外周面に接する環状のリップ部10を有するものである。このシールリップ11は、挿入部材21などとの締め代(緊迫力)を維持するものである。なお、図4には、シールリップ11による緊迫力を白抜き矢印で示している。密封構造100は、図4に示すように、シリンダヘッドカバーなどのハウジング31とプラグチューブやインジェクションパイプなどの挿入部材21の間に配置され、ハウジング31と挿入部材21の両方に面圧を加えることでこれらの間の密封性を確保している。
【0023】
シールリップ11の材料は、従来公知の材料を適宜選択して採用することができ、樹脂製またはゴム製などのものとすることができ、例えば、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴムなどを挙げることができる。
【0024】
(1-2)加圧部材:
加圧部材13は、シールリップ11のリップ部10に配置され、軸部材21に向かう力をリップ部10に加える環状のものである。このように加圧部材13を環状とすることで、シールリップ11による挿入部材(相手部材)21への締め代(即ち、緊迫力)が発揮され、密封状態を維持することができる。
【0025】
更に、加圧部材13は、ゴム製弾性材(即ち、ゴム製の材料からなる弾性材)からなり、このようにゴム製弾性材から構成すると、従来のスプリングのように金属製でないことから、成形性が向上し、特に複雑な形状であっても簡単に作製することができ、その製造の難易度が低くなる。そして、製造の難易度が低くなることから、製造コストを低く抑えることできるようになる。また、加圧部材13は、リップ部10の材質と同系統の材質であると、リップ部10との架橋接着がより強固になる。製作する観点においても同系統の材質の方が作りやすい。
【0026】
そして、加圧部材13をゴム製弾性材から構成することによって、加圧部材13の形状の自由度を向上させることができる。つまり、従来の金属製のスプリングは、所望の部分に特に面圧を加えたい場合や、所望の部分における面圧を下げたい場合などの要望がある際にも、面有を調節することは困難であったが、加圧部材をゴム製弾性材から構成することによってその形状を自由に設計することができるため、所望の部分における面圧を適宜調節することができる。
【0027】
なお、加圧部材13は、架橋接着によってリップ部10に固定するので、リップ部10の材質と異なる材質であっても良好に固定が可能になる。架橋接着とすることによれば、接着強度(固定強度)が高くなり、更に、偏心追随性及びリップ部10からの外れ難さが向上することになる。
【0028】
加圧部材13の材質は、上述の通り、ゴム製弾性材からなる限り特に制限はないが、圧縮永久歪がシールリップ11より小さい同系統の材料などとすることができ、例えば、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴムなどを挙げることができる。
【0029】
更に、加圧部材13は、上述したようにリップ部10に架橋接着で固定されている。このように架橋接着によってリップ部10に固定されていると、その固定強度が高くなり、更に、偏心追随性及びリップ部10からの外れ難さが非常に向上することになる。
【0030】
より具体的には、この加圧部材13は、上述したように、密封構造100自体と同様に偏心追随性を有することが求められ、更には、リップ部10との固定状態が強固であることが求められる。このように、加圧部材13には、強固な固定状態を発揮することと、密封構造100の偏心の程度に応じて柔軟に変形可能であるということの両方の性質を有することが求められる。本発明では、このような両方の性質を満たすために、加圧部材13を架橋接着でリップ部10に固定することに着目したものである。なお、従来のように、接着剤を用いて金属製のスプリングなどを固定する場合、このスプリングなどをより強固に固定しようとすると、スプリングなどとリップ部との境界部(即ち、接着部)が固くなり、スプリングなどの柔軟な変形が十分でなくなる傾向がある。一方で、スプリングなどの柔軟な変形を確保しようとすると、リップ部に対するスプリングなどの固定強度が十分でなくなる傾向がある。
【0031】
加圧部材13は、図3に示す密封構造101のように、その一部の表面41が露出しているとよい。つまり、加圧部材13は、その内面側の一部の表面41がリップ部10と架橋接着で固定される接着領域を有しており、一方で、リップ部10と接しないで、外部に露出された露出領域を有するものとすることができる。別言すれば、加圧部材13は、その全部をリップ部10に埋設するのではなく、表面41の一部がリップ部10と架橋接着して固定されており、その他の部分は露出していることができる。このようにすると、加圧部材13の可動性が向上し、密封構造101の偏心の程度に応じて更に柔軟に変形可能となる。
【0032】
なお、加圧部材13は、上述の通り、その一部が露出した状態でリップ部10に固定されることがあるが、その場合、加圧部材13が外れることを防止するためにはより強固な固定状態を発揮することが重要となる。一方で、より強固な固定強度が発揮される必要があるが、柔軟性も重要である。このように加圧部材13の一部が露出している場合には、架橋接着によって固定することがより有効になる。
【0033】
加圧部材における露出部分の面積の割合は、加圧部材の全面積の45%以下とすることができ、全面積の5~45%程度とすることがよい。このような範囲とすることによって、加圧部材13の可動性が更に向上し、密封構造100の偏心の程度に応じて非常に柔軟に変形可能となり、加圧部材13がリップ部10から外れ難くもなる。「露出部分の面積の割合」は、環状の加圧部材を、その中心軸を含む平面で切断した断面(図3参照)において、加圧部材の外周縁の長さの全部を100%としたとき、「加圧部材がリップ部と接していない部分の外周縁の長さ」の割合を言うものとする。
【0034】
加圧部材13は、リップ部10の圧縮永久歪よりも圧縮永久歪が小さいものとすることができる。このようにすると、従来の金属製のスプリングと同等のシール特性を確保することができる。即ち、長期に高温に曝されたとしても、シールリップ11による挿入部材21(相手部材)への締め代(即ち、緊迫力)を維持することができ、密封性が保持される。
【0035】
加圧部材13は、その圧縮永久歪については適宜設定することができる。
【0036】
加圧部材13は、環状のものである限りその形状について特に制限はないが、例えば、Oリング(断面が円形、楕円形の環状の部材)、角リング(断面が多角形(角部が面取りされた形状も含む)の環状の部材)などとすることができる。
【0037】
更に、加圧部材13は、Oリングまたは角リングであると、リップ部のリップ角度を適宜変更することができ、密封構造100のシール特性を所望のように変更することができる。
【0038】
加圧部材13の大きさ及び厚みは、特に制限はなく従来公知の大きさ、厚みとすることができる。
【0039】
(2)密封構造の製造方法:
本発明の密封構造は、以下のように製造することができる。以下に、その製造方法について説明する。
【0040】
まず、密封構造の成形型を用意する。この成形型は、従来公知のものを適宜採用することができる。そして、その後、上記成形型内に環状の加圧部材を配置する。なお、この加圧部材は、既に上述した加圧部材と同様のものであり、ゴム製弾性材からなるものである。そのため、その形状を所望の形状とすることができ、製造の難易度が低く且つ成形性が高いものである。そして、その後、環状の加圧部材を配置した成形型内にシールリップの成形材料を注入し、その後、この成形型内の上記成形材料を加圧及び加熱する。このようにして、上述した加圧部材を、シールリップのリップ部に架橋接着させ、密封構造(本発明の密封構造)を製造することができる。
【0041】
このように製造すると、作製の手間が軽減され、加圧部材の製造の難易度が低く且つ加圧部材が成形し易く、更に、加圧部材の偏心追随性及び外れ難さが向上された密封構造を得ることができる。
【0042】
(3)密封構造の使用方法:
本発明の密封構造は、例えばプラグチューブやインジェクションパイプ等の挿入部材と、シリンダヘッドカバーなどのハウジングとの間の隙間を封止する、プラグチューブシール(PTS)やインジェクションパイプシール(IPS)などの密封構造として使用することができる。
【0043】
具体的には、以下のように装着して使用することができる。まず、環状の密封構造100を、挿入部材(軸部材)21に挿入する。このとき、挿入部材21の先端部には、密封構造100のリップ部10を拡張するための治具を装着し、この治具によって密封構造100のリップ部10の径を拡張させることができる。そして、挿入部材21の外周面上に密封構造100を配置し、この密封構造100を挿入部材21に沿って移動させて所望の位置(ハウジング31と挿入部材21の間となる位置)に配置する。このとき、シールリップ11と加圧部材13によって、挿入部材21に対して緊迫力を加え、外周取付部15からハウジング31に対して面圧を加える。このようにして、密封構造100は、その外周取付部15がハウジング31と密着し、更に、シールリップ11が挿入部材21と密着することになり、挿入部材21とハウジング31との間の隙間を封止することができる。
【0044】
ここで、上述したように、密封構造100を所望の位置に配置する際に、密封構造100は、その中心軸が、挿入部材21の中心軸に対して偏心した状態で配置されることがあるが、その膜部17によって歪みが吸収され、良好な密封性が確保される。そして、密封構造100は、上述した加圧部材13を備えるため、密封構造100の歪みに対して加圧部材13が良好に変形し(偏心追随性を発揮し)、更にこの加圧部材13は、脱落し難いものとなる。
【実施例
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1図2に示すような密封構造を作製した。この密封構造における加圧部材は、ゴム製弾性材から構成し、且つ、リップ部に架橋接着で固定されていた。
【0047】
この密封構造は、ゴム製弾性材からなる加圧部材をリップ部に架橋接着したものであるため、作製の手間が軽減されたものであり、製造の難易度が低く、更に、成形性が良好であった。更に、上記ゴム製弾性材の加圧部材は、偏心追随性及び外れ難さが向上されていた。
【0048】
(比較例1)
密封構造における加圧部材について、金属製のものを採用し、この金属製の加圧部材(金属製のスプリング)をリップ部に接着剤を用いて固定した。
【0049】
この比較例1の密封構造は、接着剤を用いて固定したので製造の手間がかかった。また、その成形性は十分でなかった。
【0050】
(比較例2)
密封構造における加圧部材について、ゴム製弾性材からなるものを採用し、このゴム製弾性材からなる加圧部材をリップ部に接着剤を用いて固定した。
【0051】
この比較例2の密封構造は、ゴム製弾性材からなる加圧部材を、接着剤を用いてリップ部に固定したので製造の手間がかかり、また、強固な固定(外れ難さ)と柔軟な変形(良好な偏心追随性)の両方の性質を発揮するという点では未だ改良の余地があった。
【0052】
実施例1及び比較例1,2の結果から、実施例1の密封構造は、比較例1,2の密封構造に比べて、偏心追随性及び外れ難さが向上されていることが分かる。また、実施例1の密封構造の加圧部材は、ゴム製弾性材からなるものであり、製造の難易度が低く且つ成形し易いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の密封構造は、自動車等においてプラグチューブシールなどとして用いられる密封構造として採用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10:リップ部、11:シールリップ、13:加圧部材、15:外周取付部、17:膜部、21:挿入部材(軸部材)、23:補強環、25:貫通孔、31:ハウジング、41:加圧部材の表面、100,101,200:密封構造、113:スプリング。
図1
図2
図3
図4
図5