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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】モールドコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/405 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01R13/405
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020033424
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136201
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-039287(JP,A)
【文献】特開2018-060663(JP,A)
【文献】実開昭59-057876(JP,U)
【文献】特開2002-329558(JP,A)
【文献】特開2006-085960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド成型によって成型されるモールドコネクタであって、
外部機器と電気的に接続するピン端子と、
前記ピン端子を被覆する被覆部材と、
前記被覆部材を被覆するモールド樹脂部と、
を備え、
前記被覆部材は、第1の被覆部材及び前記第1の被覆部材とは別体の第2の被覆部材の2つの部材から構成され、
前記ピン端子は、前記第1の被覆部材と前記第2の被覆部材の間に挟み込まれ
前記モールド樹脂部は、
前記被覆部材を介して前記ピン端子を被覆するピン端子被覆部と、
前記ピン端子被覆部の下方に設けられ、設置対象物の固定部と篏合し、モールドコネクタを前記設置対象物に固定する篏合部と、
前記篏合部を前記固定部に挿入する方向と直交する押圧面を有し、前記篏合部を前記固定部に嵌め込むときに前記押圧面が押圧される押圧部と、
を有し、
前記ピン端子被覆部と前記篏合部は、空間を介して対向に配置され、
前記篏合部は、2つの引っ掛け部と突出部を有し、
前記引っ掛け部は、L字形状であり、L字の短辺が向かい合うように隙間を介して対向に配置されていること、
を特徴とするモールドコネクタ。
【請求項2】
前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材の端部は、前記モールド樹脂部に被覆されず、露出していること、
を特徴とする請求項1に記載のモールドコネクタ。
【請求項3】
前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材の少なくとも一方は、前記ピン端子を配置する溝を有し、
前記ピン端子は、前記溝の中に配置されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のモールドコネクタ。
【請求項4】
前記第1の被覆部材又は前記第2の被覆部材は、孔を有し、
前記孔を有しない前記第1の被覆部材又は前記第2の被覆部材は、突出部を有し、
前記突出部は、前記孔に挿入されていること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモールドコネクタ。
【請求項5】
前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材は、概略L字形状を有し、
前記ピン端子は、概略コの字形状を有し、そのうち2辺が前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材に挟み込まれていること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモールドコネクタ。
【請求項6】
前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材は、概略コの字形状を有し、
前記ピン端子は、概略コの字形状を有し、すべての辺が前記第1の被覆部材及び前記第2の被覆部材に挟み込まれていること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモールドコネクタ。
【請求項7】
前記篏合部と前記押圧部は、開口を介して対向に配置されていること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のモールドコネクタ。
【請求項8】
前記押圧部は、前記篏合部が前記設置対象物の固定部に篏合したときに、前記固定部と当接する当接面を有すること、
を特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のモールドコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド成型によって成型されたモールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、コンピュータとその周辺機器などを電気的に接続する接続器である。一般的に、コネクタは、電気を導通させるピン端子と、金属部材の一部を被覆する樹脂とから成る。このピン端子の先端が外部機器の端子と接続することで、コネクタは外部機器と電気的に接続される。そして、モールド成型によってピン端子を樹脂で被覆させるモールドコネクタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3505997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型に直接ピン端子を収容させると、モールド成型時の樹脂の射出圧によってピン端子が変形する虞がある。ピン端子が変形すると、ピン端子の先端の位置が変わり、所望の位置にピン端子の先端を配置することができなくなり、外部機器との接続不良を起こす虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ピン端子が変形することを抑制することができるモールドコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモールドコネクタは、モールド成型によって成型されるモールドコネクタであって、外部機器と電気的に接続するピン端子と、前記ピン端子を被覆する被覆部材と、前記被覆部材を被覆するモールド樹脂部と、を備え、前記被覆部材は、第1の被覆部材及び前記第1の被覆部材とは別体の第2の被覆部材の2つの部材から構成され、前記ピン端子は、前記第1の被覆部材と前記第2の被覆部材の間に挟み込まれ、前記モールド樹脂部は、前記被覆部材を介して前記ピン端子を被覆するピン端子被覆部と、前記ピン端子被覆部の下方に設けられ、設置対象物の固定部と篏合し、モールドコネクタを前記設置対象物に固定する篏合部と、前記篏合部を前記固定部に挿入する方向と直交する押圧面を有し、前記篏合部を前記固定部に嵌め込むときに前記押圧面が押圧される押圧部と、を有し、前記ピン端子被覆部と前記篏合部は、空間を介して対向に配置され、前記篏合部は、2つの引っ掛け部と突出部を有し、前記引っ掛け部は、L字形状であり、L字の短辺が向かい合うように隙間を介して対向に配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピン端子が変形することを抑制することができるモールドコネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るケースの斜視図である。
図3】実施形態に係るモールドコネクタを正面から見た全体斜視図である。
図4】実施形態に係るモールドコネクタを背面から見た全体斜視図である。
図5】実施形態に係るモールドコネクタの分解斜視図である。
図6】実施形態に係る第1の被覆部材の斜視図である。
図7】モールドコネクタを製造する工程を示す図である。
図8】モールドコネクタを設置対象物に取り付ける方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
(構成)
(リアクトルの構成)
本実施形態のリアクトルについて図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るケースの斜視図である。なお、本実施形態において、コイル5の巻軸方向を幅方向とも称する。幅方向と直交し、2つのコイル5の横並び方向と平行な方向を奥行方向とする。幅方向及び奥行方向と直交する方向を高さ方向又は上下方向とする。これらの方向は、リアクトル100の各構成の位置関係を示すための表現であり、リアクトル100が設置対象に設置された際の位置関係及び方向を限定するものではない。
【0010】
リアクトル100は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトル100は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用されるリアクトルである。リアクトル100は、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
【0011】
図1に示すように、リアクトル100は、コア(不図示)、樹脂部材4、コイル5、センサ6、ケース7及びモールドコネクタ10を備える。コアは、圧粉磁心等の磁性体から成り、環状形状となっている。コイル5は、エナメルなどで絶縁被覆した1本の導電性部材により構成される。コイル5は、コアに装着されている。本実施形態では、コイル5は2つ設けられ、巻軸方向が平行になるように、隙間を介して横並びに配置されている。樹脂部材4は、エポキシ樹脂等の樹脂からなる。樹脂部材4は、コアの外周を被覆する。樹脂部材4は、コアとコイル5を絶縁する。
【0012】
ケース7は、コア、樹脂部材4及びコイル5を収容する。図2に示すように、ケース7は、概略矩形状の底面と、底面から立ち上がった側面とを有し、上面が開口している箱型形状を有する。ケース7は、アルミニウム合金等の熱伝導性が高く軽量な金属で構成されている。ケース7の内部には、充填材が固化してなる部材が設けられている。この部材は、コア、樹脂部材4、コイル5及びケース7の間に設けられている。
【0013】
ケース7の外側面には、モールドコネクタ10をリアクトル100に固定する固定部71を有する。この固定部71にモールドコネクタ10が奥行方向に沿って挿入され、後述するモールドコネクタ10の篏合部32が固定部71に嵌め込まれる。固定部71は、突出部72を有する。突出部72は、モールドコネクタ10の篏合部32が嵌め込まれたときにモールドコネクタ10と当接する。突出部72は、モールドコネクタ10を固定部71に挿入する方向と平行に突出している。本実施形態では、モールドコネクタ10は奥行方向と平行に固定部71に挿入される。そのため、突出部72は、奥行方向と平行にリアクトル100の外側に向かって突出している。突出部72とモールドコネクタ10を当接させることで、モールドコネクタ10を固定部71に嵌め込んだサインになる。
【0014】
センサ6は、リアクトル100の状態を検出する。センサ6は、例えば、リアクトル100の温度を検出する温度センサである。センサ6は、検出器61及びリード線62を有する(図7参照)。検出器61は、リアクトル100の状態を検出する。検出器61は、コイル5間に配置され、樹脂部材4に保持されている。リード線62は、検出部61が検出した情報をモールドコネクタ10を介して外部機器(不図示)に伝達するための配線である。リード線62の一方端部は検出器61と接続され、他方端部はモールドコネクタ10と接続されている。
【0015】
(モールドコネクタの構成)
次に、モールドコネクタ10について図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態に係るモールドコネクタの正面斜視図である。図4は、本実施形態に係るモールドコネクタの背面斜視図である。図5は、本実施形態に係るモールドコネクタの分解斜視図である。図6は、第1の被覆部材の斜視図である。
【0016】
モールドコネクタ10は、対になる外部機器のコネクタ等と接続される。コネクタ63が、対になる外部機器のコネクタと接続されることで、検出部61と、外部機器とが電気的に接続される。モールドコネクタ10は、ピン端子1、被覆部材2、モールド樹脂部3を有する。モールドコネクタ10は、モールド成型によりモールド樹脂部3でピン端子1及び被覆部材2を被覆して形成される。
【0017】
ピン端子1は、電気を導通させる金属部材から成る。ピン端子1の一方端部は、リード線62と溶接等により接続されている。ピン端子1の他方端部は、被覆部材2及びモールド樹脂部3から露出しており、外部機器のコネクタ等と接続される。本実施形態では、図5に示すように、ピン端子1は、概略コの字形状となっている。ピン端子1は2つ設けられている。
【0018】
被覆部材2は、モールド成型を行う前に、ピン端子1を被覆する樹脂から成る部材である。被覆部材2を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等が挙げられる。
【0019】
被覆部材2は、第1の被覆部材21と、第1の被覆部材21とは別体の第2の被覆部材22により構成される。この第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の間にピン端子1が配置されている。換言すれば、ピン端子1は、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の間に挟み込まれている。
【0020】
第1の被覆部材21は、概略L字形状となっている。第1の被覆部材21は、図6に示すように、溝211を有する。溝211は、ピン端子1を配設するための窪みである。溝211の深さは、ピン端子1が突出しない程度の深さ及び幅があれば足りる。なお、本実施形態では、図6に示すように、リード線62の一部も第1の被覆部材21と第2の被覆部材22で挟み込むため、幅広の溝も設けているが、この幅広の溝は必ずしも必要ではない。
【0021】
第2の被覆部材22は、概略L字形状となっている。第2の被覆部材22は、第1の被覆部材21の溝211に配設されたピン端子1に覆いかぶさるようにして第1の被覆部材21と当接している。第2の被覆部材22は、円形の突出部221を有する。また、第1の被覆部材21は、第2の被覆部材22の突出部221に対応する孔212を有する。即ち、突出部221の外径は、孔の外径と概略同一の大きさである。突出部221は、孔212に挿入され、嵌め込まれている。突出部221を孔212に嵌め込むことで、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22は一体となり固定される。
【0022】
なお、本実施形態では、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22は、ともに概略L字形状となっていたが、これに限られない。例えば、第1の被覆部材21はL字形状で、第2の被覆部材22は直方体形状で、第1の被覆部材21の一端面のみに覆いかぶさり、ピン端子1を挟み込んでいてもよい。もっとも、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22は、ともに概略L字形状にした方が、ピン端子1の多くの箇所を被覆することができ、ピン端子1の変形をより抑制することができるため好ましい。
【0023】
モールド樹脂部3は、樹脂から成る部材である。モールド樹脂部3を構成する樹脂としては、樹脂部材4と同様のものを使用することができる。なお、モールド樹脂部3の樹脂と樹脂部材4の樹脂は、同種のものを使用してもよいし、異種のものを使用してもよい。
【0024】
モールド樹脂部3は、ピン端子被覆部31を有する。ピン端子被覆部31は、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22を介してピン端子1を被覆する。もっとも、ピン端子被覆部31は、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の両端部を被覆していない。換言すれば、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の両端部は露出している。
【0025】
また、モールド樹脂部3は、篏合部32を有する。篏合部32は、設置対象物の固定部と篏合し、モールドコネクタ10を設置対象物に固定する。本実施形態では、設置対象物はリアクトル100のケース7であるが、これに限られない。
【0026】
篏合部32は、ピン端子被覆部31の下方に設けられ、露出しているピン端子1の延び方向とは反対側に設けられている。また、図4に示すように、篏合部32とピン端子被覆部31との間には、空間34が設けられている。
【0027】
篏合部32は、2つの引っ掛け部321及び1つの突出部322を有する。引っ掛け部321は、概略L字形状を有する。2つの引っ掛け部321は、L字の短辺が向かい合うように隙間を介して対向に配置される。この隙間は、固定部71の幅方向の長さと略同一である。そのため、引っ掛け部321の内周面は、固定部71の側面と当接する。2つの引っ掛け部321が固定部71の各側面と当接することで、モールドコネクタ10の幅方向の動きが規制される。また、引っ掛け部321の先端は、固定部71の下面と当接する。
【0028】
突出部322は、固定部71の上面と当接する。上述のとおり、引っ掛け部321は固定部71の下面とも当接しているので、突出部322及び引っ掛け部321によって、固定部71の上下面を挟み込み、モールドコネクタ10の上下方向の動きが規制される。なお、突出部322とピン端子被覆部31の間に空間34が設けられている。
【0029】
モールド樹脂部3は、押圧部33を有する。押圧部33は板状であり、モールドコネクタ10の篏合部32を設置対象物の固定部71に嵌め込む際に押圧される。押圧部33は、引っ掛け部321と対向に配置される。即ち、押圧部33は、ピン端子被覆部31の下方に設けられている。押圧部33と引っ掛け部321の間には開口35が設けられている。
【0030】
押圧部33は、押圧面331と当接面332を有する。押圧面331は、篏合部32を固定部71に挿入する方向と直交し、引っ掛け部321と対向する端面(当接面332)の反対側の端面である。この押圧面331が、モールドコネクタ10を固定させるときに、作業者によって押圧される。
【0031】
当接面332は、押圧面331とは反対側の端面である。即ち、当接面332は、篏合部32を固定部71に挿入する方向と直交し、引っ掛け部321と対向している。当接面332は、篏合部32を固定部71に嵌め込んだときに、突出部72と当接する。なお、当接面332は、篏合部32を固定部71に嵌め込んだときに突出部72と当接すればよく、モールドコネクタ10が固定された後は、当接面332と突出部72は当接してなくてもよい。
【0032】
(モールドコネクタの製造方法)
モールドコネクタ10の製造方法について図面を参照しつつ説明する。まず、図7(a)に示すように、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22をそれぞれ成形しておく。また、2つのピン端子1は、それぞれの端部を溶接等によってリード線62と接続される。
【0033】
次に、図7(b)に示すように、第1の被覆部材21の溝211にピン端子1を嵌め込む。そして、図7(c)に示すように、第2の被覆部材22の突出部221を第1の被覆部材21の孔212に嵌め込み、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22を当接させる。このようにして、ピン端子1を第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の間に挟み込んだ組立体が形成される。
【0034】
この組立体を金型にセットする。このとき、金型は、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の両端部に当接する。ピン端子1は、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の間に挟まれているので、金型は、直接ピン端子1と接触しない。この金型が当接する第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の部分でバリ切りを行う。そのため、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の両端部は、モールド樹脂部3に被覆されず、露出している。
【0035】
そして、モールド樹脂部3を構成する樹脂を金型に充填する。ピン端子1は、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22によって被覆されているので、直接樹脂と接触することはない。即ち、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22は、ピン端子1のカバーの役割を果たし、樹脂の射出圧によってピン端子1が変形することを抑制する。
【0036】
(モールドコネクタの取付け)
次に、モールドコネクタ10の固定方法について説明する。図8は、リアクトル100にモールドコネクタ10を取り付ける手法を示した図である。図8に示すように、モールドコネクタ10は、篏合部32を奥行方向と平行に固定部71に挿入し、スナップフィットにて固定部71に取り付けられる。作業者が押圧面331を押圧することで、篏合部32はより深く固定部71に挿入され、固定部71に篏合する。
【0037】
押圧面331は、ピン端子被覆部31の下方に設けられている。そのため、作業者が押圧面331を押圧しても、ピン端子被覆部31に与える影響は少ない。よって、ピン端子被覆部31の変形によりピン端子1が変形することを抑制できる。
【0038】
引っ掛け部321は、固定部71に挿入されると、幅方向に広がる。特に、引っ掛け部321と押圧部33の間には開口35が設けられているため、引っ掛け部321は、幅方向に広がりやすい。そのため、2つの引っ掛け部321の隙間が広がる。また、突出部322とピン端子被覆部31の間には空間34が設けられているため、突出部322は上方に変形しやすい。そのため、篏合部32の挿入スペースが広がり、篏合部32を固定部に挿入しやすく、作業性が向上する。
【0039】
また、本実施形態では、突出部322とピン端子被覆部31の間には空間34が設けられている。仮に、突出部322とピン端子被覆部31の間に空間がなく、連続して設けられている場合、突出部322の変形によって、ピン端子被覆部31も変形し、ピン端子1が変形する虞がある。また、空間34部分を樹脂で埋めると、厚みのある空間34部分の樹脂が収縮し、この収縮によってピン端子被覆部31も収縮し、ピン端子が変形する虞もある。
【0040】
しかし、本実施形態では、突出部322とピン端子被覆部31の間に空間34が設けられている。そのため、この空間34によって突出部322の変形を吸収し、突出部322が変形してもピン端子被覆部31は変形しない。また、空間34を設けることで、空間34部分で収縮が起こることを抑制でき、ピン端子被覆部31の収縮、ピン端子の変形を抑制することができる。さらに、空間34を有することで、突出部322は上方に変形しやすくなり、篏合部32を固定部71により挿入しやすくなる。
【0041】
作業者が押圧面331を押し続けると、篏合部32は固定部71に篏合する。篏合部32が固定部71に篏合すると、当接面332は、固定部71の突出部72と当接する。この当接面332と突出部72の当接が、篏合部32が固定部71に篏合したことの合図となる。そのため、作業者は、篏合部32が固定部71に篏合したことを確認でき、篏合部32が固定部71に篏合した後も、押圧面331を押圧し続けることを抑制できる。よって、作業者が押圧面331を押し続け、ピン端子被覆部31の変形によりピン端子1が変形することを抑制することができる。
【0042】
(効果)
本実施形態のモールドコネクタ10は、モールド成型によって成型されたモールドコネクタ10であって、外部機器と電気的に接続するピン端子1と、ピン端子1を被覆する被覆部材2と、被覆部材2を被覆するモールド樹脂部3と、を備え、被覆部材2は、第1の被覆部材21及び第1の被覆部材21とは別体の第2の被覆部材22の2つの部材から構成され、ピン端子1は、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22の間に挟み込まれている。
【0043】
このように、ピン端子1は、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22によって被覆されているので、モールド成型時の樹脂の射出圧によってピン端子1が変形することを抑制することができる。その結果、外部機器と接続するピン端子1の先端を所望の位置に配置させることができる。
【0044】
第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の端部は、モールド樹脂部3に被覆されず、露出している。この第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22の露出している端部が金型と当接して、バリ切りを行っている。そのため、ピン端子1は直接金型とは接触していないので、ピン端子1が変形することを抑制できる。
【0045】
第1の被覆部材21は、ピン端子1を配置する溝211を有し、ピン端子1は、溝211の中に配置されている。これにより、ピン端子1を溝211に嵌め込むだけでピン端子1を固定でき、作業性が向上する。また、ピン端子1は、溝211によって固定されているので、モールド成型時の射出圧による影響を受けず、ピン端子1の先端の位置精度がより向上する。
【0046】
第1の被覆部材21は、孔212を有し、第2の被覆部材22は、突出部221を有し、突出部221は、孔212に挿入されている。これにより、突出部221を孔212に挿入するだけで、ピン端子1を第1の被覆部材21と第2の被覆部材22によって挟み込むことができ、作業性が向上する。特に、本実施形態では、突出部221の外径は、孔212の外径と概略同一の大きさであるので、突出部221を孔212に挿入するだけで、第1の被覆部材21と第2の被覆部材22を固定することができる。
【0047】
第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22は、概略L字形状を有し、ピン端子1は、概略コの字形状を有し、そのうち2辺が第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22に挟み込まれている。このように、ピン端子1の2辺が第1の被覆部材21と第2の被覆部材22によって挟み込まれているので、ピン端子1の位置をより強固に固定できる。よって、樹脂の射出圧による影響を受けず、ピン端子1の先端の位置精度がより向上する。
【0048】
モールド樹脂部3は、被覆部材2を介してピン端子1を被覆するピン端子被覆部31と、ピン端子被覆部31の下方に設けられ、リアクトル100の固定部71と篏合し、モールドコネクタ10をリアクトル100に固定する篏合部32と、篏合部32を固定部71に挿入する方向と直交する押圧面331を有し、篏合部32を固定部71に嵌め込むときに押圧面331を押圧される押圧部33と、を有し、ピン端子被覆部31と篏合部32は、空間34を介して対向に配置されている。
【0049】
篏合部32の固定部71への取り付けは、スナップフィットによって行う。篏合部32を固定部71に挿入すると、篏合部32の挿入スペースが広がり変形する。空間34を篏合部32とピン端子被覆部31の間に設けることで、篏合部32の変形によってピン端子被覆部31が変形することを抑制できる。よって、モールドコネクタ10を設置対象物に固定するときに、篏合部32の変形によってピン端子1が変形することを抑制することができる。
【0050】
また、空間34を設けることで、篏合部32の挿入スペースは広がりやすくなり、篏合部32を固定部71に挿入しやすくなり、作業性が向上する。さらに、押圧面331及び篏合部32は、ピン端子被覆部31の下方にあり、作業者が押圧する方向の延長線上にピン端子被覆部31は設けられていない。そのため、篏合部32を固定部71に挿入するときの圧力がピン端子被覆部31に伝わりにくい。よって、篏合部32を固定部71に篏合させるときの圧力によって、ピン端子被覆部31が変形し、ピン端子1が変形することを抑制できる。
【0051】
篏合部32と押圧部33は、開口35を介して対向に配置されている。より詳細には、引っ掛け部321と押圧部33は、開口35を介して対向に配置されている。開口35を設けることなく引っ掛け部321と押圧部33を一続きに連続して設けると、篏合部32の挿入スペースは広がりにくく、場合によって引っ掛け部321が損傷する虞がある。しかし、本実施形態のように、引っ掛け部321と押圧部33の間に開口35を設けることで、引っ掛け部321は広がりやすくなり、また、引っ掛け部321が損傷すること抑制できる。
【0052】
押圧部33は、篏合部32がリアクトル100の固定部71に篏合したときに、固定部71の突出部72と当接する当接面332を有する。当接面322が突出部72と当接することで、篏合部32が固定部71に篏合したサインになる。そのため、作業者によって、篏合部32が固定部71に篏合した後も押圧面331を押圧することを防止できる。よって、不必要に押圧面331が押圧され、ピン端子被覆部31が変形し、ピン端子1が変形することを抑制できる。
【0053】
篏合部32は、ピン端子被覆部31の下方に設けられ、露出しているピン端子1の延び方向とは反対側に設けられている。このように、篏合部32と露出するピン端子1の位置を正反対に設け、露出しているピン端子1と篏合部32を離して配置している。これにより、篏合部32を固定部71に挿入する際に、作業者がピン端子1に触れて変形することを抑制できる。また、作業者は押圧面331が押しやすく、作業性が向上する。
【0054】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0055】
本実施形態では、モールドコネクタ10はケース7の固定部71に固定されていたが、これに限定されない。例えば、コアを被覆した樹脂部材4に固定部を設けて、当該固定部にモールドコネクタ10を固定してもよい。この構成であれば、モールドコネクタ10をケースレスのリアクトル100にも適用することができる。
【0056】
また、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22は概略L字形状で、概略コの字形状のピン端子1の2辺を被覆していたが、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22は概略コの字形状で、ピン端子1の3辺を被覆していてもよい。3辺を被覆することでピン端子1の先端の位置精度はより向上する。
【0057】
本実施形態では、溝211は第1の被覆部材21に設けたが、溝211は、第1の被覆部材21には設けず、第2の被覆部材22に設けてもよいし、第1の被覆部材21及び第2の被覆部材22ともに設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 リアクトル
10 モールドコネクタ
1 ピン端子
2 被覆部材
21 第1の被覆部材
211 溝
212 孔
22 第2の被覆部材
221 突出部
3 モールド樹脂部
31 ピン端子被覆部
32 篏合部
321 引っ掛け部
322 突出部
33 押圧部
331 押圧面
332 当接面
34 空間
35 開口
4 樹脂部材
5 コイル
6 センサ
61 検出部
62 リード線
7 ケース
71 固定部
72 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8