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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】撮像レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20240112BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020040570
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144072
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】中野 征嗣
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-085559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170142(US,A1)
【文献】特開昭59-094727(JP,A)
【文献】特開2006-284620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズ、絞り、第5レンズ、及び第6レンズから構成される撮像レンズであって、
前記第2レンズの焦点距離と、前記第3レンズの焦点距離と、前記第5レンズの焦点距離と、前記第6レンズの焦点距離との和が、2.1mm以上2.3mm以下であ
前記第5レンズの屈折率は、1.63以上1.64以下であり、
前記第5レンズのアッベ数は、23.4以上24.1以下である、
撮像レンズ。
【請求項2】
前記第2レンズの焦点距離と、前記第3レンズの焦点距離との和が、2.2mm以上3.1mm以下である、
請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記第5レンズの焦点距離と、前記第6レンズの焦点距離との和が、-0.8mm以上0.0mm以下である、
請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記第4レンズの屈折率は、1.60以上1.70以下であり、
前記第4レンズのアッベ数は、55.0以上66.0以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズの屈折率は、1.53以上1.55以下であり、
前記第2レンズのアッベ数は、55.7以上56.0以下である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第3レンズの屈折率は、1.63以上1.64以下であり、
前記第3レンズのアッベ数は、23.4以上24.1以下である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第6レンズの屈折率は、1.53以上1.55以下であり、
前記第6レンズのアッベ数は、55.7以上56.0以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第4レンズは、ガラスによって形成される、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第5レンズ及び前記第6レンズは、いずれも樹脂によって形成される、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
撮像素子と、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の撮像レンズと、を備える、
撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズ及び撮像レンズを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像装置に用いられる撮像レンズは種々の構成のものが用いられている。これらの撮像レンズには、車載用のカメラに搭載されるものがある。このような撮像レンズとして、特許文献1には、5群6枚構成であって、1枚の接合レンズを含む構成の車載カメラ用レンズユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-3784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載カメラは、低温から高温までの温度環境で使用されるため、ピントなどの光学特性の低下が広い温度範囲で抑制された撮像レンズが求められる。特許文献1に記載の車載カメラ用レンズユニットでは、6枚のレンズのうち、4枚をガラスレンズとし、2枚をプラスチックレンズとすることで、車載カメラ用レンズユニットの温度特性を安定化させている。このような技術を超えて、光学特性の温度変化による低下を抑制した撮像レンズが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題などを解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
物体側から順に、第1レンズ(G1)、第2レンズ(G2)、第3レンズ(G3)、第4レンズ(G4)、絞り(O1)、第5レンズ(G5)、及び第6レンズ(G6)から構成される撮像レンズであって、
前記第2レンズの焦点距離(f2)と、前記第3レンズの焦点距離(f3)と、前記第5レンズの焦点距離(f5)と、前記第6レンズの焦点距離(f6)との和が、2.1mm以上2.3mm以下であり
前記第5レンズの屈折率は、1.63以上1.64以下であり、
前記第5レンズのアッベ数は、23.4以上24.1以下である、
撮像レンズである。
【0007】
上記構成の撮像レンズによれば、第2レンズ、第3レンズ、第5レンズ及び第6レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に適したものにすることができるので、撮像レンズの光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0008】
上記撮像レンズにおいて、好ましくは、
前記第2レンズの焦点距離と、前記第3レンズの焦点距離との和が、2.2mm以上3.1mm以下である構成とする。
【0009】
上記構成の撮像レンズによれば、第2レンズ及び第3レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に効果的に適したものにすることができるので、撮像レンズの光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0010】
上記撮像レンズにおいて、より好ましくは、
前記第5レンズの焦点距離と、前記第6レンズの焦点距離との和が、-0.8mm以上0.0mm以下である構成とする。
【0011】
上記構成の撮像レンズによれば、第5レンズ及び第6レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に効果的に適したものにすることができるので、撮像レンズの光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0012】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第4レンズの屈折率(N4)は、1.60以上1.70以下であり、
前記第4レンズのアッベ数(ν4)は、55.0以上66.0以下である構成とする。
【0013】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第2レンズの屈折率(N2)は、1.53以上1.55以下であり、
前記第2レンズのアッベ数(ν2)は、55.7以上56.0以下である構成とする。
【0014】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第3レンズの屈折率(N3)は、1.63以上1.64以下であり、
前記第3レンズのアッベ数(ν3)は、23.4以上24.1以下である構成とする。
【0016】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第6レンズの屈折率(N6)は、1.53以上1.55以下であり、
前記第6レンズのアッベ数(ν6)は、55.7以上56.0以下である構成とする。
【0017】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第4レンズは、ガラスによって形成される構成とする。
【0018】
上記構成の撮像レンズによれば、温度変化によるピント位置のずれに大きな影響を与える第4レンズを、線膨張係数の小さいガラスによって形成することで、撮像レンズの光学特性の温度変化による低下を効果的に抑制することができる。
【0019】
上記撮像レンズにおいて、さらに好ましくは、
前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第5レンズ及び前記第6レンズは、いずれも樹脂によって形成される構成とする。
【0020】
上記構成の撮像レンズによれば、製造の容易な樹脂のレンズを4つ用いることで、撮像レンズの製造コストを低減することができる。
【0021】
本発明は、上記いずれかの撮像レンズと撮像素子とを備えた撮像装置を含む。
【0022】
このような撮像装置によれば、第2レンズ、第3レンズ、第5レンズ及び第6レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に適したものにすることができるので、撮像レンズの光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。これにより、車載用途に適した撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態に係る撮像装置の全体構成を示している。
図2図2は、本実施例の撮像レンズの-40℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
図3図3は、本実施例の撮像レンズの25℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
図4図4は、本実施例の撮像レンズの85℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
図5図5は、実施例2に係る撮像装置の全体構成を示している。
図6図6は、本実施例の撮像レンズの-40℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
図7図7は、本実施例の撮像レンズの25℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
図8図8は、本実施例の撮像レンズの85℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の撮像レンズは、第1レンズ~第6レンズを備えた構成において、光学特性の温度変化による低下が抑制される構成になるよう各種設計データを決定している点を特徴のひとつとする。
【0025】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
【0026】
1.実施形態
2.実施例1
3.実施例2
4.本発明の特徴
5.補足事項
<1.実施形態>
本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。また、図面として記載している各グラフは、本実施形態及び実施例による作用効果を説明するためのものであって、本発明の作用効果について限定的に解釈させるものではない。
【0027】
本明細書では、レンズの中心位置であって、撮像素子ISに入射する光の中心位置を「光軸」と称する。レンズに対して撮像素子ISとは反対側に位置する撮像対象を「被写体」と称する。撮像素子ISに対して被写体が位置する方向を「物体側」または「光軸方向前方」と称し、被写体に対して撮像素子ISが位置する方向を「像面側」または「光軸方向後方」と称する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る撮像装置2の全体構成を示している。図1の撮像レンズ1は、光軸Lを中心とする断面図で示されている。
【0029】
図1に示されるように、撮像装置2は、物体側から順に、撮像レンズ1及び撮像素子ISを含んで構成される。撮像レンズ1は、物体側から順に、第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3、第4レンズG4、絞りO1、第5レンズG5、第6レンズG6、及びカバーガラスCGを含んで構成される。本明細書では、第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3、第4レンズG4、絞りO1、第5レンズG5、第6レンズG6、及びカバーガラスCGをそれぞれ「光学部材」ということがある。
【0030】
撮像レンズ1は、ポリカーボネートなどの樹脂によって形成されたレンズバレルに保持される。撮像レンズ1に含まれる第1レンズG1~第6レンズG6は、それぞれが単独のレンズであって、接合レンズではない。すなわち、撮像レンズ1は、6群6枚のレンズである。
【0031】
撮像レンズ1では、第1レンズG1及び第4レンズG4は、ガラスで形成されたガラスレンズである。第1レンズG1及び第4レンズG4は、少なくとも撮像素子ISに照射される光が通過する光路において球面になっている。
【0032】
第2レンズG2、第3レンズG3、第5レンズG5及び第6レンズG6は、樹脂で形成された樹脂レンズである。第2レンズG2、第3レンズG3、第5レンズG5及び第6レンズG6は、少なくとも撮像素子ISに照射される光が通過する光路において非球面になっている。
【0033】
絞りO1は、例えば、撮像素子ISに照射される光の最外位置を決定する絞り機構として機能する。なお、絞りO1は、補助的に使用される補助絞りとして機能してもよい。また、絞りO1と、他のレンズ等の光学部材との距離を考える場合、絞りO1は厚みがゼロであるものとして考え、絞りO1において絞りとして機能する光軸上の点を基準に距離を求めるものとする。
【0034】
カバーガラスCGは、撮像素子ISの光軸方向前方に配置された平板状のガラス部材である。カバーガラスCGの光軸方向前方及び後方の面は、いずれも光軸Lに垂直な平面となっている。
【0035】
撮像素子ISは、照射された光を電気信号に変換する光電変換素子である。撮像素子ISは、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどであるが、これらに限定されるものではない。撮像素子ISは、撮像レンズ1に含まれるレンズによって結像された被写体の像を撮像する。
【0036】
撮像レンズ1では、温度変化によるピント位置のずれに大きな影響を与える第4レンズG4を、線膨張係数の小さいガラスによって形成することで、ピントなどの光学特性の温度変化による低下が抑制される構成としている。また、第2レンズG2、第3レンズG3、第5レンズG5及び第6レンズG6を製造の容易な樹脂レンズにすることで、撮像レンズ1の製造コストが低減される構成としている。
【0037】
本実施形態における各部位及び各パラメータは以下のように定義される。
Fno :F値
S1 :第1レンズG1、G11の物体側の面
S2 :第1レンズG1、G11の像面側の面
S3 :第2レンズG2、G12の物体側の面
S4 :第2レンズG2、G12の像面側の面
S5 :第3レンズG3、G13の物体側の面
S6 :第3レンズG3、G13の像面側の面
S7 :第4レンズG4、G14の物体側の面
S8 :第4レンズG4、G14の像面側の面
S9 :絞りO1、O11において絞りとして機能する光軸L上の点を含む、光軸Lに垂直な面
S10 :第5レンズG5、G15の物体側の面
S11 :第5レンズG5、G15の像面側の面
S12 :第6レンズG6、G16の物体側の面
S13 :第6レンズG6、G16の像面側の面
S14 :カバーガラスCGの物体側の面
S15 :カバーガラスCGの像面側の面
R :中心曲率半径
R1 :第1レンズG1、G11の物体側の面S1の曲率半径
R2 :第1レンズG1、G11の像面側の面S2の曲率半径
R3 :第2レンズG2、G12の物体側の面S3の曲率半径
R4 :第2レンズG2、G12の像面側の面S4の曲率半径
R5 :第3レンズG3、G13の物体側の面S5の曲率半径
R6 :第3レンズG3、G13の像面側の面S6の曲率半径
R7 :第4レンズG4、G14の物体側の面S7の曲率半径
R8 :第4レンズG4、G14の像面側の面S8の曲率半径
R9 :絞りO1、O11において絞りとして機能する光軸L上の点を含む、光軸Lに垂直な面S9の曲率半径
R10 :第5レンズG5、G15の物体側の面S10の曲率半径
R11 :第5レンズG5、G15の像面側の面S11の曲率半径
R12 :第6レンズG6、G16の物体側の面S12の曲率半径
R13 :第6レンズG6、G16の像面側の面S13の曲率半径
R14 :カバーガラスCGの物体側の面S14の曲率半径
R15 :カバーガラスCGの像面側の面S15の曲率半径
TL :光学長(第1レンズG1の物体側面S1から像面までの軸上距離)
D :光学部材の中心厚、または光学部材間の距離
D1 :S1からS2までの軸上距離
D2 :S2からS3までの軸上距離
D3 :S3からS4までの軸上距離
D4 :S4からS5までの軸上距離
D5 :S5からS6までの軸上距離
D6 :S6からS7までの軸上距離
D7 :S7からS8までの軸上距離
D8 :S8からS9(絞りO1)までの軸上距離
D9 :S9(絞りO1)からS10までの軸上距離
D10 :S10からS11までの軸上距離
D11 :S11からS12までの軸上距離
D12 :S12からS13までの軸上距離
D13 :S13からS14までの軸上距離
D14 :S14からS15までの軸上距離
D15 :S15から像面(撮像素子IS)までの軸上距離
Nd :屈折率(d線)
N1 :第1レンズG1、G11の屈折率Nd
N2 :第2レンズG2、G12の屈折率Nd
N3 :第3レンズG3、G13の屈折率Nd
N4 :第4レンズG4、G14の屈折率Nd
N5 :第5レンズG5、G15の屈折率Nd
N6 :第6レンズG6、G16の屈折率Nd
NCG :カバーガラスCGの屈折率Nd
νd :アッベ数
ν1 :第1レンズG1、G11のアッベ数νd
ν2 :第2レンズG2、G12のアッベ数νd
ν3 :第3レンズG3、G13のアッベ数νd
ν4 :第4レンズG4、G14のアッベ数νd
ν5 :第5レンズG5、G15のアッベ数νd
ν6 :第6レンズG6、G16のアッベ数νd
νCG :カバーガラスCGのアッベ数νd
f :焦点距離
f1 :第1レンズG1、G11の焦点距離f
f2 :第2レンズG2、G12の焦点距離f
f3 :第3レンズG3、G13の焦点距離f
f4 :第4レンズG4、G14の焦点距離f
f5 :第5レンズG5、G15の焦点距離f
f6 :第6レンズG6、G16の焦点距離f
屈折率Ndは、d線(587.56nm)での屈折率を示す。アッベ数νdは、(Nd-1)/(NF-NC)で定義される。ここで、NF及びNCは、それぞれF線(486.1nm)及びC線(656.3nm)での屈折率を示す。
【0038】
撮像レンズ1では、第2レンズG2の焦点距離f2と、第3レンズG3の焦点距離f3と、第5レンズG5の焦点距離f5と、第6レンズG6の焦点距離f6との和であるf2+f3+f5+f6は、以下の式を満たすよう設計される。
【0039】
2.1mm≦f2+f3+f5+f6≦2.3mm
好ましくは、f2+f3+f5+f6は、以下の式を満たすよう設計される。
【0040】
2.17mm≦f2+f3+f5+f6≦2.30mm
撮像レンズ1では、第2レンズG2の焦点距離f2と、第3レンズG3の焦点距離f3との和であるf2+f3は、以下の式を満たすよう設計される。
【0041】
2.2mm≦f2+f3≦3.1mm
好ましくは、f2+f3は、以下の式を満たすよう設計される。
【0042】
2.23mm≦f2+f3≦3.03mm
撮像レンズ1では、第5レンズG5の焦点距離f5と、第6レンズG6の焦点距離f6との和であるf5+f6は、以下の式を満たすよう設計される。
【0043】
-0.8mm≦f5+f6≦0.0mm
好ましくは、f5+f6は、以下の式を満たすよう設計される。
【0044】
-0.73mm≦f5+f6≦-0.05mm
撮像レンズ1では、第4レンズG4の屈折率N4及びアッベ数ν4は、以下の式を満たすよう設計される。
【0045】
1.60≦N4≦1.70
55.0≦ν4≦66.0
撮像レンズ1では、第2レンズG2の屈折率N2及びアッベ数ν2は、以下の式を満たすよう設計される。
【0046】
1.53≦N2≦1.55
55.7≦ν2≦56.0
撮像レンズ1では、第3レンズG3の屈折率N3及びアッベ数ν3は、以下の式を満たすよう設計される。
【0047】
1.63≦N3≦1.64
23.4≦ν3≦24.1
撮像レンズ1では、第5レンズG5の屈折率N5及びアッベ数ν5は、以下の式を満たすよう設計される。
【0048】
1.63≦N5≦1.64
23.4≦ν5≦24.1
撮像レンズ1では、第6レンズG6の屈折率N6及びアッベ数ν6は、以下の式を満たすよう設計される。
【0049】
1.53≦N6≦1.55
55.7≦ν6≦56.0
本実施形態では、第2レンズG2、第3レンズG3、第4レンズG4、第5レンズG5及び第6レンズG6は、それぞれ両凹レンズ、両凸レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ及び両凸レンズである。なお、第3レンズG3は、正のメニスカスレンズであってもよい。
【0050】
撮像レンズ1は、上記のように設計されることで、F値が2.0以下の明るい光学系であって、最大画角が190°以上の超広角の光学系を構成することができる。また、第1レンズG1の有効径をφ11mm以下にすることができるので、撮像レンズ1の小型化を実現することができる。これにより、車載用途のサラウンドカメラまたはリアビューカメラなどに適した撮像装置2を提供することができる。そして、6枚のレンズの内の4枚を樹脂によって形成された非球面レンズとすることで、ガラスレンズの枚数を低減して低コストを実現するとともに、レンズ性能を向上させることができる。
【0051】
<2.実施例1>
上記実施形態の撮像レンズ1の具体的な設計データを、実施例として以下に示す。本実施例の撮像レンズ1は、f2+f3+f5+f6、f2+f3及びf5+f6が、それぞれ2.297、3.021及び-0.724となり、F値及び第1レンズG1の有効径が、それぞれ2.0及びφ11mmとなるよう設計される。撮像レンズ1では、13.48mmの光学長TLを実現することができる。
【0052】
表1において、例えば「S1」と記載の行には、第1レンズG1の物体側の面S1の曲率半径R1と、面S1から面S2までの光軸L上の軸上距離D1とが記載される。ここで、曲率半径および軸上距離の単位はミリメートルである。また、曲率半径が正の値を有する場合、その面の形状が物体側に凸となり、曲率半径が負の値を有する場合、その面の形状が像面側に凸となる。具体的には、曲率半径R1は、正の値である14.800なので、面S1の形状は、物体側に凸となる。また、面S9のように曲率半径R9が無限大(∞)の場合、面S9の形状は、光軸Lに垂直な平面となる。
【0053】
また、表1において、例えば、「S1」と記載の行と「S2」と記載の行とをまとめた「G1」と記載の行には、第1レンズG1についての屈折率N1、アッベ数ν1及びレンズパワーすなわち焦点距離f1が記載される。ここで、レンズパワーの単位はミリメートルである。
【0054】
【表1】
【0055】
表2において、第2レンズG2の面S3及びS4と、第3レンズG3の面S5及びS6と、第5レンズG5の面S10及びS11と、第6レンズG6の面S12及びS13との非球面形状を規定するための非球面係数を示す。ここで、面S3、S4、S5、S6、S10、S11、S12及びS13の非球面形状は、Yをサグ量、cを曲率半径の逆数、Kを円錐係数、hを光線高さ、4次、6次、8次及び10次の非球面係数をそれぞれA4、A6、A8及びA10としたときに、数1により表わされる。
【0056】
【表2】
【0057】
【数1】
【0058】
本実施例にかかる撮像レンズ1は、実施形態で示された各設計値を満足するよう設計されている。
【0059】
図2図3及び図4は、本実施例の撮像レンズ1の-40℃、25℃及び85℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線をそれぞれ示すグラフである。ここで、白色可視光は、435.8nm~656.3nmが使用波長帯となる光である。これらのスルーフォーカスMTF曲線のグラフでは、横軸がフォーカスシフト(mm)を示し、縦軸がMTF(0.0~1.0)を示している。これらのグラフには、90ラインペア(lp)/mmのスルーフォーカスMTF曲線が示される。なお、横軸は、正側が像面側に相当し、負側が物体側に相当する。また、これらのスルーフォーカスMTF曲線のグラフでは、光軸L上のMTF値が示されるので、サジタル方向のスルーフォーカスMTF曲線と、タンジェンシャル方向のスルーフォーカスMTF曲線とが一致する。
【0060】
図2図4に示されるように、-40℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM1(図2参照)、25℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM2(図3参照)及び85℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM3(図4参照)は、フォーカスシフトが0.0mmの近傍において緩い変化を示す。また、スルーフォーカスMTF曲線TM1のピークにおけるフォーカスシフトと、スルーフォーカスMTF曲線TM2のピークにおけるフォーカスシフトと、スルーフォーカスMTF曲線TM3のピークにおけるフォーカスシフトとは、0.01mmすなわち10μmの範囲内に収まっている。つまり、撮像レンズ1では、-40℃から85℃までの温度範囲におけるピント位置のずれ量を±5μm以内に収めることができるので、温度変化によるピントずれを抑制することができる。
【0061】
<3.実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2の撮像レンズ11は、実施例1の撮像レンズ1と比べて、各光学部材の形状、位置及び光学的性質が異なる点を特徴のひとつとする。
【0062】
図5は、実施例2に係る撮像装置2の全体構成を示している。図5の撮像レンズ11は、光軸Lを中心とする断面図で示されている。
【0063】
図5に示されるように、本実施例の撮像装置2は、物体側から順に、撮像レンズ11及び撮像素子ISを含んで構成される。撮像レンズ11は、物体側から順に、第1レンズG11、第2レンズG12、第3レンズG13、第4レンズG14、絞りO11、第5レンズG15、第6レンズG16、及びカバーガラスCGを含んで構成される。
【0064】
撮像レンズ11に含まれる第1レンズG11~第6レンズG16は、それぞれが単独のレンズであって、接合レンズではない。すなわち、撮像レンズ11は、6群6枚のレンズである。
【0065】
撮像レンズ11では、第1レンズG11及び第4レンズG14は、ガラスで形成されたガラスレンズである。第1レンズG11及び第4レンズG14は、少なくとも撮像素子ISに照射される光が通過する光路において球面になっている。
【0066】
第2レンズG12、第3レンズG13、第5レンズG15及び第6レンズG16は、樹脂で形成された樹脂レンズである。第2レンズG12、第3レンズG13、第5レンズG15及び第6レンズG16は、少なくとも撮像素子ISに照射される光が通過する光路において非球面になっている。
【0067】
撮像レンズ11の具体的な設計データを以下に示す。本実施例の撮像レンズ11は、f2+f3+f5+f6、f2+f3及びf5+f6が、それぞれ2.179、2.233及び-0.054となり、F値及び第1レンズG1の有効径が、それぞれ2.0及びφ10.9mmとなるよう設計される。撮像レンズ11では、13.49mmの光学長TLを実現することができる。
【0068】
表3において、撮像レンズ11に含まれる各光学部材の各面の曲率半径及び軸上距離、ならびに当該各光学部材の屈折率、アッベ数及びレンズパワーを示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表4において、第2レンズG12の面S3及びS4と、第3レンズG13の面S5及びS6と、第5レンズG15の面S10及びS11と、第6レンズG16の面S12及びS13との非球面形状を定めるための非球面係数を示す。
【0071】
【表4】
【0072】
本実施例にかかる撮像レンズ11は、実施形態で示された各設計値を満足するよう設計されている。
【0073】
図6図7及び図8は、本実施例の撮像レンズ11の-40℃、25℃及び85℃における白色可視光についてのスルーフォーカスMTF曲線をそれぞれ示すグラフである。ここで、白色可視光は、435.8nm~656.3nmが使用波長帯となる光である。これらのスルーフォーカスMTF曲線のグラフでは、横軸がフォーカスシフト(mm)を示し、縦軸がMTF(0.0~1.0)を示している。これらのグラフには、90ラインペア(lp)/mmのスルーフォーカスMTF曲線が示される。なお、横軸は、正側が像面側に相当し、負側が物体側に相当する。また、これらのスルーフォーカスMTF曲線のグラフでは、光軸L上のMTF値が示されるので、サジタル方向のスルーフォーカスMTF曲線と、タンジェンシャル方向のスルーフォーカスMTF曲線とが一致する。
【0074】
図6図8に示されるように、-40℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM11(図6参照)、25℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM12(図7参照)及び85℃におけるスルーフォーカスMTF曲線TM13(図8参照)は、フォーカスシフトが0.0mmの近傍において緩い変化を示す。また、スルーフォーカスMTF曲線TM11のピークにおけるフォーカスシフトと、スルーフォーカスMTF曲線TM12のピークにおけるフォーカスシフトと、スルーフォーカスMTF曲線TM13のピークにおけるフォーカスシフトとは、0.01mmすなわち10μmの範囲内に収まっている。つまり、撮像レンズ11では、-40℃から85℃までの温度範囲におけるピント位置のずれ量を±5μm以内に収めることができるので、温度変化によるピントずれを抑制することができる。
【0075】
<4.本発明の特徴>
以上、実施形態及び具体的な実施例を例示して説明した本発明は、以下のような特徴を有する。
【0076】
上記撮像レンズ1では、実施形態のように第1レンズG1~第6レンズG6及び絞りO1を含む構成を前提としている。上記撮像レンズ1では、第2レンズG2、G12の焦点距離f2と、第3レンズG3、G13の焦点距離f3と、第5レンズG5、G15の焦点距離f5と、第6レンズG6、G16の焦点距離f6との和が、2.1mm以上2.3mm以下である構成としている。
【0077】
撮像レンズ1をこのような構成にすることで、第2レンズ、第3レンズ、第5レンズ及び第6レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に適したものにすることができるので、撮像レンズ1の光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0078】
撮像レンズ1では、好ましくは、焦点距離f2と焦点距離f3との和が、2.2mm以上3.1mm以下である構成とする。
【0079】
撮像レンズ1をこのような構成にすることで、第2レンズ及び第3レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に効果的に適したものにすることができるので、撮像レンズ1の光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0080】
撮像レンズ1では、好ましくは、焦点距離f5と焦点距離f6との和が、-0.8mm以上0.0mm以下である構成とする。
【0081】
撮像レンズ1をこのような構成にすることで、第5レンズ及び第6レンズの各焦点距離のバランスを、温度変化によるピント位置のずれの抑制に効果的に適したものにすることができるので、撮像レンズ1の光学特性の温度変化による低下を抑制することができる。
【0082】
撮像レンズ1では、好ましくは、第4レンズG4、G14の屈折率N4が1.60以上1.70以下であり、第4レンズG4、G14のアッベ数ν4が、55.0以上66.0以下である構成とする。
【0083】
撮像レンズ1では、好ましくは、第2レンズG2、G12の屈折率N2が、1.53以上1.55以下であり、第2レンズG2、G12のアッベ数ν2が、55.7以上56.0以下である構成とする。
【0084】
撮像レンズ1では、好ましくは、第3レンズG3、G13の屈折率N3が、1.63以上1.64以下であり、第3レンズG3、G13のアッベ数ν3が、23.4以上24.1以下である構成とする。
【0085】
撮像レンズ1では、好ましくは、第5レンズG5、G15の屈折率N5が、1.63以上1.64以下であり、第5レンズG5、G15のアッベ数が、23.4以上24.1以下である構成とする。
【0086】
撮像レンズ1では、好ましくは、第6レンズG6、G16の屈折率N6が、1.53以上1.55以下であり、第6レンズG6、G16のアッベ数ν6が、55.7以上56.0以下である構成とする。
【0087】
撮像レンズ1では、好ましくは、第4レンズG4、G14がガラスによって形成されるため、温度変化によるピント位置のずれに大きな影響を与える第4レンズを線膨張係数の小さいガラスによって形成し、撮像レンズ1の光学特性の温度変化による低下を効果的に抑制することができる。
【0088】
撮像レンズ1では、好ましくは、第2レンズ、第3レンズ、第5レンズ及び第6レンズが、いずれも樹脂によって形成されるため、製造の容易な樹脂レンズを4つ用いて撮像レンズ1の製造コストを低減することができる。
【0089】
<5.補足事項>
以上、本発明の実施形態及び実施例についての具体的な説明を行った。上記実施例は、あくまで一例としての説明であって、本発明の範囲はこの実施例に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、車載カメラの撮像レンズとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0091】
1、11…撮像レンズ
2…撮像装置
G1、G11…第1レンズ
G2、G12…第2レンズ
G3、G13…第3レンズ
G4、G14…第4レンズ
G5、G15…第5レンズ
G6、G16…第6レンズ
O1、O11…絞り
L…光軸
IS…撮像素子
CG…カバーガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8