IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタウォーター株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】消化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240112BHJP
   C02F 11/18 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
C02F11/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020041763
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142467
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅人
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181362(JP,A)
【文献】特開2011-098249(JP,A)
【文献】特開2019-177332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
C02F3/28-3/34
B09B1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰汚泥の有機物を嫌気性細菌により消化する消化槽と、
前記余剰汚泥を消化槽に供給する第1配管と、
前記第1配管内の前記余剰汚泥を蒸気で加熱する加熱器と、を備え、
前記第1配管は、前記消化槽の垂直方向に沿って延伸する第1部分と、前記垂直方向とは異なる方向に沿って延伸し、前記第1部分に連通し前記余剰汚泥が供給される第2部分とを有し、
前記加熱器は、前記第1配管の前記第1部分内に蒸気を供給する、消化システムであって、
前記第1配管の管径よりも大きい管径を有する第2配管と、
前記第2配管から移送される余剰汚泥を蓄え、前記第2部分に連通する貯蓄槽と、
前記貯蓄槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間連続的に、前記第2部分から前記第1部分を介して前記消化槽に移送するポンプと、を更に備えた、消化システム
【請求項2】
前記消化槽内の温度、前記第1配管内の温度の少なくとも何れか1の温度に基づき、前記加熱器、前記ポンプの少なくとも1つを制御する制御装置を更に備えた、請求項1に記載の消化システム。
【請求項3】
前記第2部分内の前記余剰汚泥を加熱する加熱器を更に備えた、請求項1に記載の消化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚泥を嫌気性消化する消化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥に含まれる有機物を嫌気性消化する消化システムにおいて、効率的な消化を実現するため、加熱後の汚泥を消化槽に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-516246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消化システムにおいて、汚泥の加熱に必要な熱量を抑えつつ消化率を向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の消化システムは、余剰汚泥の有機物を嫌気性細菌により消化する消化槽と、前記余剰汚泥を消化槽に供給する第1配管と、前記第1配管内の前記余剰汚泥を蒸気で加熱する加熱器と、を備え、前記第1配管は、前記消化槽の垂直方向に沿って延伸する第1部分と、前記垂直方向とは異なる方向に沿って延伸し、前記第1部分に連通し前記余剰汚泥が供給される第2部分とを有し、前記加熱器は、前記第1配管の前記第1部分内に蒸気を供給する消化システムであって、前記第1配管の管径よりも大きい管径を有する第2配管と、前記第2配管から移送される余剰汚泥を蓄え、前記第2部分に連通する貯蓄槽と、前記貯蓄槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間連続的に、前記第2部分から前記第1部分を介して前記消化槽に移送するポンプと、を更に備えたものである
【発明の効果】
【0006】
本開示の消化システムによれば、汚泥の加熱に必要な熱量を抑えつつ消化率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態における汚泥処理施設を説明する図である。
図2】濃縮余剰汚泥の集中加熱を説明する図である。
図3A】蒸気供給管を説明する平面図である。
図3B】蒸気供給管を説明する正面図である。
図3C】蒸気供給管を説明する側面図である。
図4A】渦巻状に噴射される濃縮余剰汚泥を模式的に示す平面図である。
図4B】渦巻状に噴射される濃縮余剰汚泥を模式的に示す正面図である。
図4C】渦巻状に噴射される濃縮余剰汚泥を模式的に示す側面図である。
図5A】濃縮余剰汚泥が間欠的及び連続的に移送される状態を模式的に説明する図である。
図5B】濃縮余剰汚泥の間欠的移送量を示すグラフである。
図5C】濃縮余剰汚泥の連続的移送量を示すグラフである。
図6】制御装置を説明する図である。
図7】濃縮余剰汚泥を予熱する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態における汚泥処理施設1を説明する図である。汚泥処理施設1は、最初沈殿池10と、汚水処理装置20と、最終沈殿池30と、濃縮槽40と、濃縮装置50と、消化槽60と、配管600と、蒸気加熱器70とを備える。
【0009】
最初沈殿池10は、流入下水に含まれる有機物や浮遊物質を沈殿分離し、分離した有機物や浮遊物質を初沈汚泥として濃縮槽40に排出する。最初沈殿池10の処理水は、汚水処理装置20に排出される。
【0010】
汚水処理装置20は、標準活性汚泥法や循環式硝化脱窒法等の生物学的処理により汚水を処理する装置である。汚水処理装置20は、例えば、脱窒槽(図示しない)と、脱窒槽の後段に設けられた硝化槽(図示しない)とを備える。脱窒槽は、嫌気性の脱窒菌により硝酸性イオンから窒素を生成(脱窒)する。硝化槽は、好気性の硝化菌によりアンモニア性窒素を硝化する。汚水処理装置20の処理水は、最終沈殿池30に排出される。
【0011】
最終沈殿池30は、汚水処理装置20から排出された被処理水に含まれる汚泥を沈殿分離し、分離した汚泥を活性汚泥として排出する。活性汚泥の一部は濃縮装置50に余剰汚泥として供給され、余剰汚泥以外の活性汚泥は、返送汚泥として汚水処理装置20に返送される。また、最終沈殿池30は、上澄み液を後段の滅菌処理装置(図示しない)に排出する。滅菌処理装置は、最終沈殿池30から排出された被処理水を滅菌し放流する。
【0012】
濃縮槽40は、最初沈殿池10から排出された初沈汚泥を濃縮し、濃縮初沈汚泥として消化槽60に供給する。濃縮装置50は、最終沈殿池30から排出された余剰汚泥を濃縮し濃縮余剰汚泥として、配管600を介して消化槽60に供給する。
【0013】
消化槽60には、最初沈殿池10からの初沈汚泥と最終沈殿池30からの余剰汚泥とを含む汚泥が供給される。なお、図1の例では、濃縮初沈汚泥と、濃縮余剰汚泥とが、消化槽60に供給される。消化槽60内の嫌気性細菌は、汚泥の有機物を生活反応により嫌気性消化(分解)して消化汚泥を生成する。この嫌気性細菌は、消化の過程でメタンガス等の消化ガスを生成する。この生活反応を効率的に進めて消化率を向上させるために、消化槽60内の消化汚泥(消化液)の温度を35度~40度(以下、適温と記す)に維持することが好ましい。
【0014】
蒸気加熱器70は、余剰汚泥を水蒸気(以下、蒸気と適宜記す)で集中的に加熱(以下、集中加熱と適宜記す)する。ここで集中加熱とは、消化槽内の溶液を所定の温度分加熱する際に必要になる総熱エネルギーの9割以上の熱エネルギーで濃縮余剰汚泥を加熱することを意味する。濃縮余剰汚泥を集中加熱する理由を説明する。本願の発明者は、研究の結果、消化槽60における消化率低下の主原因は、濃縮余剰汚泥内に生存している多量な細菌群にあることを見出した。生存している細菌群がそのまま消化槽60に供給されると、消化槽60の嫌気性細菌は、生存している細菌群を十分に分解(消化)することができない。すなわち、消化槽60の嫌気性細菌は、死滅した細菌でないと十分に消化することができず、生存中の細菌群が消化率低下の主原因となる。
そこで、濃縮余剰汚泥に含まれる生存中の細菌群を十分に死滅させるため、濃縮余剰汚泥を集中的に加熱する。さらに、加熱された濃縮余剰汚泥を熱媒体として、消化槽60に供給することで、消化汚泥の温度を前記した適温に維持する。
【0015】
一方、濃縮初沈汚泥には、消化率低下の原因となるほど十分な量の生存細菌は含まれておらず、消化率低下の主原因ではない。そこで、本実施の形態では、消化効率を高めつつ省エネ化を実現するために、濃縮初沈汚泥は加熱せず、濃縮余剰汚泥のみを加熱する。なお、濃縮初沈汚泥を熱媒体として利用するために、濃縮初沈汚泥を加熱してもよい。
【0016】
図2は、濃縮余剰汚泥の集中加熱を説明する図である。第1配管601は、濃縮余剰汚泥を消化槽60に供給する配管であり、配管600の一例である。第1配管601は、第1部分601aと、第2部分601bと、接続部601cとを含む。第1部分601aは、消化槽60の垂直方向に沿って延伸する。そして、第1部分601aの第1端が消化槽60の上方部分に連通する部分に接続する。第2部分601bは、垂直方向とは異なる方向に沿って延伸し、第1端から濃縮余剰汚泥が供給される。接続部601cは、第1部分601aの第2端と第2部分601bの第2端とを接続する。ここで消化槽60の垂直方向に沿うとは、消化槽60の垂直方向に一致するだけでなく、垂直方向に対してある角度で傾いていてもよい。この傾き角度は、配管の設置上許容される範囲であればよい。なお、垂直方向とは異なる方向は、例えば水平方向である。
【0017】
図1の濃縮装置50から供給される濃縮余剰汚泥は、図示しないポンプにより移送(圧送)される。移送される濃縮余剰汚泥は、第1配管601の第2部分601b,接続部601c,第1部分601aを通過し、最終的に消化槽60の上方部分から消化槽60内に供給される。
【0018】
蒸気加熱器70は、第1部分601aの配管内に蒸気を供給する。すなわち、蒸気加熱器70は、消化槽60の上方に移送中の濃縮余剰汚泥に蒸気を供給してこの濃縮余剰汚泥を加熱する。なお、図2では、第2部分601bは、消化槽60の下部に配設されているが、消化槽60の中央部、上部、さらには、消化槽60よりも上の位置に配設されていてもよい。なお、消化槽60と、第1配管601と、蒸気加熱器70とを含むシステムが本実施の形態の消化システムである。
【0019】
第1配管601の第1部分601a内に蒸気を供給する理由は、蒸気によるスチームハンマー(ウォータハンマー)現象が発生する可能性を低くするためである。
【0020】
図3は、蒸気加熱器70からの蒸気を第1配管601に供給する蒸気供給管602を説明する図である。図3A図3Cは、それぞれ、第1部分601a及び蒸気供給管602の平面図、正面図、側面図である。蒸気供給管602の第1端は図1図2に示した蒸気加熱器70に連通し、第2端は第1部分601aに連通している。なお、第2端を接続部601cに連通させてもよい。
【0021】
図3Aに示すように、平面図における、蒸気供給管602の長手方向と第1部分601aの長手方向との角度θ1は、0度を超え90度未満である。また、図3Cに示すように、側面図における、蒸気供給管602の長手方向と第1部分601aの長手方向との角度θ2は、0度を超え90度未満である。第1部分601aと蒸気供給管602との配設角度を調整することで、蒸気加熱された濃縮余剰汚泥を第1部分601a内において渦巻状に進行させる。
【0022】
図4は、渦巻状に噴射(進行)する濃縮余剰汚泥を模式的に示した図である。図4A図4Cは、それぞれ、第1部分601a及び蒸気供給管602の平面図、正面図、側面図における上記の進行方向を示す図である。蒸気供給管602から出た蒸気は、蒸気供給管602と第1部分601aとの接続部付近で、濃縮余剰汚泥に接触し、濃縮余剰汚泥を加熱させる。そして、例えば蒸気による圧力により、各図に示すように、蒸気加熱された濃縮余剰汚泥は第1部分601aの内壁に沿って時計回りに進行する。この進行状態を、矢印線VDに示し、矢印が濃縮余剰汚泥の進行方向を示す。
【0023】
図5は、濃縮余剰汚泥の移送状態を模式的に説明する図である。図5Aは、濃縮余剰汚泥が間欠的及び連続的に移送される状態を模式的に説明する図である。本実施の形態の消化システムは、更に、バッファ槽(貯留槽)を含む。バッファ槽80は、濃縮装置50に連通する第2配管801に接続し、濃縮装置50から第2配管801に間欠的に移送される濃縮余剰汚泥を一時的に蓄える。第1配管601と第2配管801は、配管600の一例である。
【0024】
濃縮余剰汚泥は、第2配管801内では間欠的に移送され、第1配管601内では連続的に移送される。図5B図5Cを参照しながら、間欠的移送、連続的移送について説明する。図5B図5Cでは、ハッチングで示した領域が濃縮余剰汚泥の量を模式的に示し、同一量の濃縮余剰汚泥が移送される状態を模式的に示している。
【0025】
ところで、第1配管601と第2配管801との管径は異なる場合がある。第2配管801の管径は、例えば150mm以上であり、第1配管601の管径よりも大きい。この管径150mm以上という数値は、汚泥処理設備の設計指針により決められた数値である。以下の説明では、第2配管801の管径は150mmとする。
【0026】
濃縮装置50が生成する濃縮余剰汚泥を管径150mmの第2配管801を介して圧送する場合を想定する。一般的な汚泥処理施設では、濃縮余剰汚泥の生成量はこの管径に比べて少ない。また、所定の配管径及び流量以上で汚泥を移送しないと、配管下部に汚泥が沈降し、その結果、配管が汚泥で閉塞される可能性が高くなる。そのため、濃縮装置50から濃縮余剰汚泥が間欠的に移送される。
【0027】
図5Bは、濃縮余剰汚泥の間欠的移送を説明するグラフ図である。縦軸は移送される濃縮余剰汚泥の量を示し、横軸は時間を示す。生成された濃縮余剰汚泥が、所定の流速及び流量で管径150mmの第2配管801を介して移送されるために、一定の間隔をおいて期間T1で汚泥量V1の濃縮余剰汚泥が一度に移送(間欠的移送)される。なお、間欠的移送とは、一定の間隔だけでなく不定の間隔をおいて移送されることも意味する。
【0028】
図5Cは、濃縮余剰汚泥の連続的移送を説明するグラフ図である。縦軸は移送される濃縮余剰汚泥の量を示し、横軸は時間を示す。例えば、濃縮余剰汚泥は、期間T2において、汚泥量V2の濃縮余剰汚泥が連続的に移送される。
【0029】
同一時間(例えば期間T1)で、汚泥量V1の濃縮余剰汚泥、汚泥量V1よりも少ない汚泥量V2の濃縮余剰汚泥を所定温度まで蒸気加熱する場合、汚泥量V2の濃縮余剰汚泥を蒸気加熱する際に必要な熱エネルギー量は、汚泥量V1の濃縮余剰汚泥を蒸気加熱する際に必要な熱エネルギー量に比べて少ない。
【0030】
すなわち、汚泥量V1の濃縮余剰汚泥量を期間T1において一度に所定温度まで蒸気加熱するためには、汚泥量V2の濃縮余剰汚泥を同じ期間T1において所定温度まで蒸気加熱する場合に比べて、より多くの熱エネルギーが必要になる。多くの熱エネルギー、すなわち多量の蒸気を生成するためには、蒸気を生成するボイラーを大型化する必要がある。しかし、ボイラーの大型化は、設置空間、設置コスト、維持コスト、使用燃料の増大に至るのでボイラーを大型化すること困難である。
【0031】
そこで、所定の期間において、配管の閉塞を抑制し、移送される濃縮余剰汚泥の量を少なくするため、移送される濃縮余剰汚泥をこの所定の期間連続的に移送する。かかる連続移送を可能にするため、濃縮余剰汚泥を一次的に蓄えるバッファ槽80を設け、バッファ槽80と消化槽60とを接続する第1配管601の管径を前記した150mmよりも小さくする。第1配管601の管径は、汚泥による閉塞を防止し、かつ、所定の流速及び流量以上にするために、例えば60mmにする。
【0032】
バッファ槽80に一時的に蓄えられた濃縮余剰汚泥は、図示しないポンプにより連続的に移送され、第1配管601の第2部分601b、接続部601c、第1部分601aを通過し、消化槽60の上方部分から消化槽60内に供給される。
この連続移送時(期間T2)においては、図5Bで説明した間欠的移送と異なり、濃縮余剰汚泥が移送されない期間がなく、濃縮余剰汚泥の移送量が少なくなる。
【0033】
以上説明したように、少ない量の濃縮余剰汚泥を連続的に移送し、この移送中に蒸気加熱することでボイラーの大型化を抑制できる。
【0034】
図6は、各種情報に基づき、蒸気量、蒸気温度、濃縮余剰汚泥の移送量を制御する制御装置を説明する図である。本実施の形態の消化システムは、更に、ポンプ、温度計を制御する制御装置を含む。消化液の温度が適温でないと、消化能力が低下する。そこで、制御装置90は、消化能力が維持されるように、蒸気加熱器70、ポンプPを制御する。
ポンプPは、バッファ槽80に蓄えられた余剰汚泥を連続的に第2部分601bから第1部分601aを介して消化槽60に移送(圧送)する。なお、ポンプPの配設位置は一例であり、バッファ槽80aの前段又は後段に配設してもよい。
【0035】
制御装置90は、消化槽60の消化能力が所定の能力に維持されるように、蒸気加熱器70、ポンプPの少なくとも1つを制御する。例えば、制御装置90は、消化槽60内の温度、第1配管601内の温度の少なくとも何れか1の温度に基づき、蒸気加熱器70、ポンプPの少なくとも何れか1つを制御する。
【0036】
消化槽60内の温度は、好ましくは、消化液の温度である。消化液の温度は、消化槽60における消化能力に直接的な影響を及ぼす要因である。そこで、制御装置90は、消化液の温度を基準にして制御を行う。
【0037】
第1配管601内の温度は、好ましくは、第1配管601と消化槽60とが接続している箇所の温度、いわゆる第1配管601の出口温度である。第1配管601の出口温度は、消化槽60に投入される直前の濃縮余剰汚泥の温度とみなすことができる。そして、濃縮余剰汚泥の温度は、消化槽60の消化液の温度に影響を及ぼす要因の一つである。そこで、制御装置90は、出口温度を基準にして制御を行う。
【0038】
第1温度計TM1は、消化槽60内の温度(例えば、消化液の温度)を測定する温度計である。第1温度計TM1は、測定した温度を制御装置90に送信する。第2温度計TM2は、第1配管601内の温度(例えば、出口温度)を測定する温度計である。第2温度計TM2は、測定した温度を制御装置90に送信する。
【0039】
制御装置90は、消化液の温度低下により消化能力が低下すると予測すると、消化液の温度が上がるように、蒸気加熱器70、ポンプPの少なくとも1つを制御する。制御装置90の具体的な制御を説明する前に、以下、4つの場合を想定する。
第1温度計TM1が測定した消化液の温度が第1の温度範囲以下の第1の場合。
第1温度計TM1が測定した消化液の温度が第1の温度範囲を超える第2の場合。
第2温度計TM2が測定した出口温度が第2の温度範囲以下の第3の場合。
第2温度計TM2が測定した出口温度が第2の温度範囲を超える第4の場合。
なお、第1の温度範囲は、例えば、37度~40度の範囲であり、第2の温度範囲は、例えば、70度~95度の範囲である。
【0040】
次に、蒸気加熱器70に対する制御について説明する。制御装置90は、上記4つの場合の何れか判定する。制御装置90は、第1、第3の場合の少なくとも1つの場合と判定すると、現在の温度よりも高温及び/又は多量の蒸気を生成し第1部分601aに供給するように蒸気加熱器70に指示する制御信号を送信する。また、制御装置90は、第2、第4の場合の少なくとも1つの場合と判定すると、現在の温度よりも低温及び/又は少量の蒸気を生成し第1部分601aに供給するように蒸気加熱器70に指示する制御信号を送信する。
蒸気加熱器70は、制御信号に応答して、蒸気の温度及び/又は量を制御し、第1部分601aに供給する。
【0041】
次に、ポンプPに対する制御について説明する。制御装置90は、上記4つの場合の何れであるか判定する。制御装置90は、第1、第3の場合の少なくとも1つの場合と判定すると、濃縮余剰汚泥の移送量が現在の移送量よりも少なくなるようにポンプPに指示する制御信号を送信する。また、制御装置90は、第2、第4の場合の少なくとも1つの場合と判定すると、濃縮余剰汚泥の移送量が現在の移送量よりも多くなるようにポンプPに指示する制御信号を送信する。
ポンプPは、制御信号に応答して、濃縮余剰汚泥の移送量を制御し、濃縮余剰汚泥を圧送する。
【0042】
なお、制御装置90は、蒸気加熱器70、ポンプPの制御を同時に行ってもよいし、蒸気加熱器70のみの制御、ポンプPのみの制御を行ってもよい。
【0043】
図6で説明したように、消化能力に影響を及ぼす消化液の温度、出口温度の少なくとも1つの温度に基づき、蒸気加熱器70、ポンプPの少なくとも1つを制御することで、消化能力を維持することができる。
【0044】
図7は、濃縮余剰汚泥を予熱する処理を説明する図である。濃縮余剰汚泥に多量の蒸気を供給すると、この蒸気により濃縮余剰汚泥が希釈化する。また、濃縮余剰汚泥を十分に加熱する蒸気を生成するためにボイラーが大型になる。そこで、濃縮余剰汚泥の希釈化、ボイラーの大型化を抑制するために、濃縮余剰汚泥を予熱する。本実施の形態の消化システムは、更に、この予熱を行う加熱器を含む。
【0045】
加熱器100は、例えば熱交換器であり、外部からの熱により第2部分601b内の濃縮余剰汚泥を加熱する。この加熱により濃縮余剰汚泥を予熱する。この熱は、例えば消化槽60が生成するメタンガスの燃焼熱である。
【0046】
このように、濃縮余剰汚泥を予熱することにより、ボイラーの大型化を抑制し省エネ化を実現できる。
【0047】
なお、例えば第1配管601内を水により清掃する場合、この水が蒸気供給管602を介して蒸気加熱器70内に入る可能性がある。また、運転中に蒸気供給を停止した場合も、濃縮余剰汚泥が蒸気供給管602を介して蒸気加熱器70内に入る可能性がある。そこで、逆流防止のための弁を蒸気供給管602に設けてもよい。また、蒸気は通過するが濃縮余剰汚泥は通過しない膜を蒸気供給管602内に設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 汚泥処理施設
10 最初沈殿池
20 汚水処理装置
30 最終沈殿池
40 濃縮槽
50 濃縮装置
60 消化槽
70 蒸気加熱器
80 バッファ槽
90 制御装置
600 配管
601 第1配管
601a 第1部分
601b 第2部分
601c 接続部
602 蒸気供給管
801 第2配管
P ポンプ
TM1 第1温度計
TM2 第2温度計
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7