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特許7418273インクジェットプリンタによって印刷された基材内のカールを低減させるためのシステム及び装置
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  • 特許-インクジェットプリンタによって印刷された基材内のカールを低減させるためのシステム及び装置 図1
  • 特許-インクジェットプリンタによって印刷された基材内のカールを低減させるためのシステム及び装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタによって印刷された基材内のカールを低減させるためのシステム及び装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/70 20060101AFI20240112BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20240112BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240112BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20240112BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240112BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20240112BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20240112BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240112BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B65H29/70
B41J11/42
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 123
B41J2/205
B41J2/01 125
B41J2/01 103
B05C5/00 101
B05C1/08
B05C9/14
B05C11/10
B05B17/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020072822
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2020183324
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】16/406,557
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム・ルフェーブル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・マコンヴィル
(72)【発明者】
【氏名】チュ-ヘン・リウ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0223717(US,A1)
【文献】特開平08-216384(JP,A)
【文献】特開2008-188878(JP,A)
【文献】特開2008-132692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/70
B41J 11/42
B41J 2/01
B41J 2/205
B05C 5/00
B05C 1/08
B05C 9/14
B05C 11/10
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インクプリンタであって、
水性インク滴を噴射するように構成されている少なくとも1つの印刷ヘッドと、
前記少なくとも1つの印刷ヘッドを越えて基材を移動させて、前記少なくとも1つの印刷ヘッドが、前記基材上に前記水性インク滴を噴射して前記基材上に水性インク画像を形成することができるように構成されている基材搬送システムと、
前記少なくとも1つの印刷ヘッドが前記基材上に水性インク画像を形成する側とは反対側の前記基材の側に選択的に水分を加えるように、複数のタイルセグメントを備えて構成されている水分アプリケータであって、各タイルセグメントは、電気的にバイアスされていないときは疎水性であり、電気的にバイアスされているときは親水性であるように構成されている、水分アプリケータと、
複数のスイッチを有するスイッチングネットワークであって、前記スイッチングネットワークは、電気エネルギーを印加して、独立して、かつ選択的に前記タイルセグメントを電気的にバイアスするように構成されている、スイッチングネットワークと、を備え、
前記水分アプリケータは、前記タイルセグメントが配置されるローラーを含み、
前記水分アプリケータは、
水を保持するように構成されているトラフと、
前記水の中に位置付けられた超音波トランスデューサであって、前記超音波トランスデューサは、前記トラフ内の前記水から水蒸気を生成する振動を生じさせるように構成されている、超音波トランスデューサと、を更に備え、
前記水分アプリケータの前記ローラーは、前記超音波トランスデューサによって生成された前記水蒸気に接触するように位置付けられている、水性インクプリンタ。
【請求項2】
前記スイッチングネットワークは、独立して、かつ選択的に前記タイルセグメントにDC電気エネルギーを印加するように更に構成されている、請求項に記載の水性インクプリンタ。
【請求項3】
前記DC電気エネルギーは、1.0ボルト~1.5ボルトの範囲の電位を有する、請求項2に記載の水性インクプリンタ。
【請求項4】
前記水分アプリケータの前記ローラーは、前記トラフの容積中心から1.0cm~30.0cmの範囲の距離で位置付けられている、請求項に記載の水性インクプリンタ。
【請求項5】
前記水分アプリケータは、
水を保持するように構成されているトラフを更に備え、
前記水分アプリケータの前記ローラーは、前記トラフに収容された前記水に部分的に浸漬される、請求項に記載の水性インクプリンタ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの印刷ヘッドは、前記水分アプリケータが前記基材に水分を加える前に、前記基材上にインク画像を形成するように位置付けられている、請求項1に記載の水性インクプリンタ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの印刷ヘッドは、前記水分アプリケータが前記基材に水分を加えた後に、前記基材上にインク画像を形成するように位置付けられている、請求項1に記載の水性インクプリンタ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの印刷ヘッド及び前記スイッチングネットワークに動作可能に接続されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記スイッチングネットワークを動作させて、選択的に、かつ独立して前記水分アプリケータの前記タイルセグメントを電気的にバイアスするように構成されており、前記電気的にバイアスされたタイルセグメントは、前記少なくとも1つの印刷ヘッドが前記基材の一部をカールさせるのに十分なインク被覆の領域を生じさせる前記基材の領域に対応する、請求項1に記載の水性インクプリンタ。
【請求項9】
インク画像を乾燥させるための乾燥機と、
前記基材を反転させて、前記基材が前記水分アプリケータの前記ローラーの上を通過するときに、前記水分アプリケータが乾燥した前記インク画像に水分を加えるように構成されている装置と、を更に備え、
前記コントローラは、前記水分アプリケータが水分を加える側とは反対側の前記基材の側の前記インク画像のデータを使用して前記スイッチングネットワークを動作させるように更に構成されている、請求項8に記載の水性インクプリンタ。
【請求項10】
前記コントローラは、
基材上に形成される画像のデータをレンダリングして、前記画像の中間調データを生成し、
前記中間調データを使用して2値画像を生成するように更に構成されており、前記2値画像は、前記スイッチングネットワークを動作させるために使用される、請求項に記載の水性インクプリンタ。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記基材上のインク画像の領域内へと噴射されるインク滴の総数を識別し、
前記領域の前記インク滴の総数を、所定のインク被覆閾値と比較し、
前記スイッチングネットワークが、前記所定のインク被覆閾値に等しいか又はそれを超えるインク滴の総数を有する前記基材上の前記インク画像の前記領域に対応する位置で、前記タイルセグメントのうちの1つを電気的にバイアスするように動作することを示す2進値を前記2値画像に記憶するように更に構成されている、請求項10に記載の水性インクプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、インクジェット印刷システムに関し、より具体的には、かかるプリンタによって印刷された基材に生じたカールに対処することに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷システムは、インク滴によって基材上に画像を形成する。画像が基材上に直接印刷されるか、又は中間転写部材の周りに構成されたブランケットから転写されるかにかかわらず、画像が基材上に形成されると、基材はインク中の水及び他の溶媒の吸収を開始する。最終的に、水及び他の溶媒は、画像を乾燥させることによって表面から除去される。紙基材などの繊維基材の製造中、基材は延伸され、次いで乾燥される。伸張延伸は、乾燥によって基材内に固定される。基材が印刷中に再び濡れると、伸張延伸は解ける。これに続く基材の乾燥は、基材を、その印刷前の寸法から収縮させ得る。これらの問題は、水性インクで画像を形成するプリンタにおいて特に明らかである。これらのインク中の水は、伸長応力を解放する。基材が印刷後に乾燥された後であっても、基材中には保湿剤及びいくらかの水分が残留し、基材の印刷後の数日もの間、基材を収縮させ続け得る。最終的には水分及び保湿剤のほぼ全てが基材を去るが、このレベルの乾燥に達する前に生じる収縮は、基材をカールさせ得る。場合によっては、カールの大きさは顕著であり、かつ持続的であり得る。出力トレイがカールした基材で満たされるとき、この凹凸は、印刷された基材をトレイ内に積み重ねることについて問題を引き起こす可能性があり、基材の表面の凹凸の程度は、ユーザーの印刷されたシートの望ましさに影響を及ぼし得る。インクジェット印刷及び乾燥後に基材の元のサイズ及び平坦さを保持することができることは、有益であろう。
【発明の概要】
【0003】
新たな印刷システムは、基材を処理して、インクジェット印刷及び乾燥によって生じる基材のカールを低減させる水分アプリケータを含む。システムは、水性インク滴を噴射するように構成されている少なくとも1つの印刷ヘッドと、少なくとも1つの印刷ヘッドを越えて基材を移動させ、少なくとも1つの印刷ヘッドが基材上に水性インク滴を噴射して基材上に水性インク画像を形成することができるように構成されている、基材搬送システムと、少なくとも1つの印刷ヘッドが基材上に水性インク画像を形成する側とは反対側の基材の側に選択的に水分を加えるように、複数のタイルセグメントを備えて構成されている水分アプリケータであって、各タイルセグメントは、電気的にバイアスされていないときは疎水性であり、電気的にバイアスされているときは親水性であるように構成されている、水分アプリケータと、複数のスイッチを有するスイッチングネットワークであって、スイッチングネットワークは、電気エネルギーを印加して、独立して、かつ選択的にタイルセグメントを電気的にバイアスするように構成されている、スイッチングネットワークと、を含む。
【0004】
水分アプリケータは、プリンタ内の基材を処理して、インクジェット印刷及び乾燥によって生じる基材のカールを低減させる。この水分アプリケータは、複数のタイルセグメントであって、各タイルセグメントは、タイルセグメントが電気的にバイアスされていないときは疎水性であり、タイルセグメントが電気的にバイアスされているときは親水性であるように構成されている、複数のタイルセグメントと、複数のスイッチを有するスイッチングネットワークであって、スイッチは、複数のタイルセグメントに動作可能に接続され、スイッチングネットワークは、独立して、かつ選択的に複数のタイルセグメント内のタイルセグメントを電気的にバイアスするように構成されている、スイッチングネットワークと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
プリンタ内の基材のカールを低減する基材処理システムの前述の態様及び他の特徴について、添付図面に関連して以下の説明で説明する。
【0006】
図1】複雑性を大幅に追加すること、又は乾燥温度を著しく上昇させることなく、水性インク画像の効率的な乾燥を可能にする水性インク印刷システムのブロック図である。
図2図1に示す印刷システムの水分アプリケータで使用されるタイルセグメントを有するローラーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態の一般的な理解のために、図面を参照する。図面中、同様の参照番号は、同様の要素を指定するために全体にわたって使用されている。
【0008】
図1は、プリンタ10によって印刷された基材内で生じたカールを低減するように、水分アプリケータ24を備えて構成されている、高速水性インク印刷システム、つまりプリンタ10を示す。図示するように、プリンタ10は、搬送システム14によってプリンタ10を通って搬送される基材Sの表面にインク画像を直接形成する。搬送システム14は、一対のローラーの周りに巻き付けられるエンドレスベルトを含み得る。駆動ローラーなど他の既知の搬送システムが使用され得る。コントローラ80はアクチュエータ40を動作させて、搬送システム14が、基材を他の基材処理ステーションへと搬送システムに沿って進める前に、水分アプリケータ24上で移動させる。印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34Dは搬送システム14の反対側に位置付けられて、基材が水分アプリケータ24に到達する前に、基材S上でインク画像を印刷する。別の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、水分アプリケータ24が印刷ヘッドモジュールによって印刷されていない表面を処理した後に、基材上にインク画像を印刷するように位置付けられている。すなわち、基材Sは、印刷ヘッドモジュールによって印刷される前又は後のいずれかに、水分アプリケータ24によって処理され得る。
【0009】
コントローラ80は、基材上に形成される画像のデータを受信し、既知の方法で各印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドを動作させるために、そのデータを中間調データに翻訳する。印刷ヘッド内の噴射装置は、基材が印刷ヘッドモジュールを通過して基材上にインク画像を形成する際に、基材S上にインク滴を噴射する。一実施形態では、各印刷ヘッドモジュールは、印刷機によって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有する1つの印刷ヘッドのみを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、印刷機が印刷できるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にする千鳥状の印刷ヘッドのアレイ内に配置される。付加的に、印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に噴射された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。プリンタ10はまた、ウェブ上に画像を印刷するためにウェブが印刷ヘッドを通過して移動することができるように、搬送システム14ではなく移動ウェブを有するプリンタであり得る。本明細書で使用するとき、用語「プロセス方向」は、プリンタ10を通る基材の移動方向を指し、用語「クロスプロセス方向」は、基材の平面内でプロセス方向に対して垂直である方向を指す。
【0010】
水性インク送達サブシステムは、印刷ヘッドモジュールごとに1色の水性インクを収容する、少なくとも1つのインクリザーバを有する。図示するプリンタ10は、多色画像生成機であるため、インク送達システムは、4つの異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)の水性インクを表す、4つのインクリザーバを有する。各インクリザーバは、モジュール内の印刷ヘッドにインクを供給するように、印刷ヘッド又は印刷ヘッドモジュール内の複数の印刷ヘッドに接続されている。送達システムの圧力源及び通気孔はまた、印刷ヘッドモジュール内のインクリザーバと印刷ヘッドとの間で動作可能に接続されて、マニホールド及びインクジェットパージを実行する。加えて、図1には示していないが、印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドは、対応する廃インクタンクにバルブで接続されていて、マニホールド及びインクジェットパージ動作中にパージされたインクを収集できるようにする。印刷ヘッドモジュール34A~34Dは、コントローラ80によって1つ以上の印刷ヘッドを動作させるために関連付けられた電子機器を含むことができるが、これらの接続は図を簡略化するために示されていない。印刷機10は、4つの印刷ヘッドモジュール34A~34Dを含み、各々が2つのアレイの印刷ヘッドを有するが、代替的な構成は、モジュール内に異なる数の印刷ヘッドモジュール又はアレイを含む。コントローラ80はまた、水分アプリケータ24を動作させて、印刷前又は印刷後のいずれかに基材を処理して、印刷のみによって基材内で生じたカールを低減させる。
【0011】
機械、つまりプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素、及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80の支援を受けて実行される。ESS又はコントローラ80は、インク送達システムの構成要素、水分アプリケータ24、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって印刷ヘッド)、及びアクチュエータ40に動作可能に接続される。ESS又はコントローラ80は、例えば、電子データ記憶装置を備える中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する内蔵型の専用ミニコンピュータである。ESS又はコントローラ80は、例えば、センサ入力及び制御回路、並びに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン又はワークステーション接続などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像データの流れを読み出し、捕捉し、準備し、管理する。このように、ESS又はコントローラ80は、印刷プロセスなど他の機械サブシステム及び機能の全てを、操作及び制御するための主マルチタスキングプロセッサである。
【0012】
コントローラ80は、プログラムされた命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装することができる。プログラムされた機能を実行するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に説明される動作を実行するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよく、又は特定用途向け集積回路(ASIC)内の回路として提供されることもある。各々の回路は、別個のプロセッサで実装することができ、又は複数の回路が、同じプロセッサ上に実装されることもある。代替的に、回路は、超大規模集積回路(VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、別個の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0013】
動作時に、生成されるインク画像の画像データは、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに出力される印刷ヘッド制御信号、及び水分アプリケータ24を動作させて基材Sに水分を加える信号の送信及び生成に使用される、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80に送信される。加えて、コントローラ80は、関連するサブシステム及び構成要素の制御を、例えば、ユーザインターフェース50を介した操作者入力から決定し、承諾し、かかる制御を適宜実行する。結果として、適切な色のための水性インクが、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに送達される。
【0014】
水分アプリケータ24は、水を収容するトラフ64の上に位置付けられているローラー60を含む。超音波トランスデューサ68は、トラフ64内に位置付けられ、スイッチ58を介して電圧源72に電気的に接続される。電圧源は、電気接地と正電圧又は負電圧との間を行き来するDC電圧源であり得る。あるいは、電圧源72は、AC電源であってよい。コントローラ80はスイッチ58に動作可能に接続されているため、コントローラ80はスイッチを動作させて、超音波トランスデューサ68を電圧源72に選択的に接続することができる。トランスデューサ68が電圧源72に接続されているとき、トランスデューサは水中で振動する。この振動により、上昇してローラー60に接触する水蒸気が生じる。ローラー60は、少なくとも印刷される基材と同様の長さを有する。ローラー60は、トラフの容積中心から約1.0cm~約30cmの範囲の距離でトラフ64の上方で長手方向軸を中心に回転し、その結果、水蒸気はローラー60の表面に接触する。この距離は、ディフューザの電力及び関連パラメータに依存する。他の実施形態では、トラフ64は、ローラー60がトラフ64内に収容された水に部分的に浸漬されるように位置付けられるが、ローラーの上部は、移送システム14の2つの部分の間の間隙において基材Sと依然として接触するように位置付けられる。この実施形態では、トランスデューサ68、電圧源72、又はスイッチ58は不要である。水分アプリケータはローラーを含むものとして記載されているが、回転ベルトなど他形状の部材及び構成が使用され得る。
【0015】
図2に示すように、ローラー60は、互いに電気的に絶縁されたタイルセグメント80~80からなっており、そのため、例えば、スイッチングネットワーク84内のスイッチを動作させることによってタイルセグメントに印加される電圧源76を使用して、セグメントが、独立して、かつ選択的に電気的にバイアスされ得る。ローラー60の内容積内では、各セグメントが電極に電気的に接続され、各電極は、スイッチングネットワーク84を介して電圧源76に独立して接続される。コントローラ80は、スイッチングネットワーク84に動作可能に接続され、ネットワーク84内のスイッチを独立して、かつ選択的に動作させて、電気エネルギーをセグメントに印加して、電気的にタイルをバイアスするように構成されている。図に示すように、タイルセグメントは六角形の形状であるが、タイルがその端部間で連続的にローラー60の表面を被覆できるようにするのであれば、他の多角形の形状が使用され得る。更に、タイルセグメントは不規則形状であり得、そのため、プロセス方向のタイルの長さは、クロスプロセス方向のタイルの幅と同一ではない。いくつかの実施形態では、セグメントは、クロスプロセス方向において数ミリメートルの幅であり、プロセス方向において数ミリメートルの長さである。一実施形態では、タイルセグメントは、約2.0cm~約4.0cmの範囲の表面積を有する。ただし、表面積が、基材の対向領域におけるカールを解消させるのに十分であり、また、影響を受ける基材の領域が、カールが問題ではない領域へと延在しないように十分に小さいままであれば、他のサイズが使用される。コントローラは、クロスプロセス方向のタイルセグメントの長手方向アレイの一部が、回転して基材Sの一部と接触する前に、トラフ64とからの水分と相互作用することを可能にするレートで、スイッチングネットワーク84を動作させ得る。一実施形態では、コントローラは、40kHzのレートで印刷ヘッドモジュール内の噴射装置を動作させて、プロセス方向に1200ドット/インチ(dpi)を生じさせる。333Hz(40kHz/120)のレートでネットワーク84を切り替えることにより、タイルセグメントがバイアスされて、又はバイアスされずに、それぞれトラフ64からの水蒸気を受容した、又は水蒸気を通さなかった後のローラー60の180°回転後にアプリケータが基材に接触したときのアプリケータの解像度は、約10dpiである。説明する実施形態では、プロセス方向における長手方向アレイの長さは、約10滴、つまり約2.54mm(2.54cm/100)である。
【0016】
長手方向アレイ内のタイルセグメントは、いわゆるスマート表面タイルである。これらのタイルは、タイルに電荷が印加されないときは超疎水性であるように構成されており、タイルに電荷が印加されると、タイルは超親水性になる。この変化を生じさせるために必要な電荷は、約1~1.5ボルト以下である必要がある。かかるスマート表面タイルは、University of Britsh Columbiaの研究者達によって開発されてきた。したがって、スイッチングネットワーク84を動作させることによって、ローラー60上のタイルセグメントが選択的に、かつ独立して電気的にバイアスされると、タイルセグメントは親水性になるが、電気的にバイアスされていないタイルセグメントは疎水性のままである。したがって、長手方向アレイの一部は水分を受容し、保持するが、他の部分は水分に抵抗するため、水分はトラフ64に戻る。コントローラは、印刷ヘッド内の噴射装置の操作に使用される画像データを参照して、電気的にバイアスされるセグメントを識別する。具体的には、コントローラは、画像が基材上に印刷されたときに、基材の一部をカールさせるのに十分なインク被覆を受容する、基材の反対領域であるタイルセグメントに電気的にバイアスするようにスイッチを動作させる。これらのスイッチは、ローラーが180°回転するまで電気エネルギーを印加するので、水分は、電気的にバイアスされたタイルから、基材の一部をカールするのに十分なインク被覆を有する領域の反対側の基材の側の領域へと移動される。ローラー60が基材から離れて回転するため、タイルセグメントを電気的にバイアスするスイッチは非活性化し、長手方向アレイ内の全タイルセグメントは、ローラーのその部分が再びトラフ64の正反対になるまで疎水性になる。
【0017】
スイッチングネットワーク84を制御するために使用される画像を生成するために、コントローラは、印刷される画像内の色分解ごとに中間調画像を生成する。基材に向かって回転するローラー60上のセグメントに対応する画像の部分ごとに、画像の当該部分に射出される液滴の数が合計され、所定のインク被覆閾値と比較される。この数が所定のインク被覆閾値に等しいか又はそれを超える場合、対応するタイルセグメントを電気的にバイアスすることに対応する2進値が、スイッチングネットワーク画像に配置される。そうでなければ、他の2進値がその画像に記憶される。次いで、この2値画像が使用されてスイッチングネットワークを動作させて、ローラーが、超音波トランスデューサ68によってトラフ64から放出された水蒸気、又はトラフ内の水のいずれかを通過するときに、選択的に、かつ独立してセグメントタイルを電気的にバイアスして、ローラーが基材の一部と接触するときに基材の当該部分をカールさせるのに十分なインク被覆の領域に対応するセグメントタイルを濡らす。本明細書で使用するとき、「基材の一部をカールさせるのに十分な」とは、タイルセグメントに対応する基材領域内の液滴数の合計が所定のインク被覆閾値を超えることを意味する。所定のインク被覆閾値は経験的に決定され、基材の種類、インクの種類、及び関連パラメータの影響を受ける。
【0018】
両面印刷の場合、印刷された基材は印刷ヘッドモジュールを通過して移動し、印刷された画像は乾燥機88によって放射されて、基材上のインクから水及び他の溶媒を除去する。本明細書で使用するとき、用語「乾燥機」は、基材にエネルギーを印加して、基材から流体を除去するように構成されている任意の装置を意味する。かかる乾燥機は既知であり、対流式ヒーター、マイクロ波放射器、赤外線放射器などで実施され得る。次いで、基材は、反転搬送経路又はターンバーなど既知の方法で基材を裏返し、印刷ヘッドモジュールによって基材を供給する搬送システム14の部分に戻される。これで、基材がローラー60に接触するときに、基材上の乾燥した画像がローラー60に面するようになる。乾燥した画像に水分を加えることは、乾燥した画像の画質に悪影響を及ぼさない。両面画像はその後、プリンタから出るか、又は更なる処理のために他の構成要素に移動し得る。
【0019】
様々な上記で開示された装置、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることが理解されるであろう。現在予想されていないか又は予測されていないそこでの様々な代替物、修正物、変形物、又は改善物は、以後に当業者によって行われてもよく、これらはまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2