(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】油圧制御回路
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240112BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20240112BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F15B11/02 F
F15B11/08 A
E02F9/22 Z
(21)【出願番号】P 2020080129
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 和史
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-073101(JP,A)
【文献】特開2019-094973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372131(US,A1)
【文献】特開2000-170212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22
F15B 21/14
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、該油圧ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを作動させるべく操作される操作具と、油圧ポンプの吐出ラインに接続され、操作具の操作に基づいて油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うコントロールバルブと、吐出ラインの最高圧を設定するメインリリーフ弁と、吐出ラインから分岐形成されて油タンクに至るバイパス油路と、該バイパス油路に配され、制御装置から出力される制御信号に基づいて油圧ポンプから油タンクに流れるバイパス量を制御するスプール式のバイパス弁とを備え
るとともに、操作具操作量に応じてバイパス量を増減制御することで吐出ラインの上限圧力が操作具操作量に応じた圧力となるように制御するにあたり、前記バイパス弁は、スプールの変位に伴い開口面積が増減するように構成される一方、制御装置は、操作具操作量とスプール変位量との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて操作具操作量に応じてバイパス弁のスプール変位量を制御する
よう構成してなる作業機械の油圧制御回路において、
前記マップは、吐出ラインの上限圧力が吐出ラインの最高圧に達する操作具操作量よりも大きな操作量でバイパス弁の開口面積を全閉にするスプール変位量となるように設定される
一方、
バイパス弁の全閉状態におけるバイパス弁のスプールのランド部と該ランド部が摺接するハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を制御するべく、バイパス弁の全閉状態においても前記マップで操作具操作量に対するスプール変位量を制御する構成にするとともに、
前記制御装置は、油圧ポンプの吐出ラインの圧力を検出する圧力検出手段からの信号を入力し、該入力される吐出ラインの圧力に応じてマップを変化させることで、バイパス弁の全閉状態におけるスプールのランド部とハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を吐出ラインの圧力に応じて変化させる構成にしたことを特徴とする油圧制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御回路の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御回路は、油圧ポンプと、該油圧ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを作動させるべく操作される操作具と、油圧ポンプの吐出ラインに接続され、操作具の操作に基づいて油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うコントロールバルブと、吐出ラインの最高圧を設定するメインリリーフ弁等を備えて構成されるが、さらに、油圧ポンプの吐出ラインの圧力を調整するために、吐出ラインから分岐形成されて油タンクに至るバイパス油路(ブリード油路)と、該バイパス油路に配され、制御装置から出力される制御信号に基づいて油圧ポンプから油タンクに流れるバイパス量(ブリード量)を制御するバイパス弁(ブリード弁)とを設けたものがある(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
このようなバイパス弁は、操作具の操作量が増加するほど開口面積が減少するように、つまり、バイパス量が減少するように制御されるが、この場合に、特許文献1のものでは、コントロールバルブ(操作弁)のストロークに応じて予め設定された流量カーブとなるようバイパス弁の開口面積を制御する構成になっており、また、特許文献2のものでは、操作具の操作信号とバイパス弁のスプール移動ストロークとの関係を示したテーブルを用いてバイパス弁の移動ストロークを制御するように構成されており、また、特許文献3のものでは、操作量が増加するに従って、バイパス弁の開口面積を比例的に減少させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-88005号公報
【文献】特開2017-20604号公報
【文献】特開2019-94973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したような油圧制御回路では、油圧ポンプの吐出ラインの最高圧はメインリリーフ弁によって設定される一方、操作具操作量に対応するバイパス弁の開口面積の増減制御によって、吐出ラインの上限圧力が調整される。このため、バイパス弁の開口面積の制御を行う場合には、メインリリーフ弁によって設定される吐出ラインの最高圧と、バイパス弁によって調整される吐出ラインの上限圧力との関係を考慮する必要があるが、前記特許文献1~3のものでは、上記関係については何れも検討されておらず、このため、バイパス弁によって上限圧力の調整ができる操作具操作領域が狭くなって操作性が損なわれたり、吐出ラインが最高圧になった以降もバイパス弁から油タンクに油が流れ続けてエネルギー損失となる惧れがある。
さらに、バイパス弁がスプール式のものである場合、油圧ポンプの吐出ラインの圧力が高圧であると、バイパス弁が全閉状態であっても、バイパス弁のスプールのランド部と該ランド部が摺接するハウジングの摺接部とのオーバーラップ長によってはバイパス弁から油が漏れてしまう惧れがあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、油圧ポンプと、該油圧ポンプから圧油供給される油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータを作動させるべく操作される操作具と、油圧ポンプの吐出ラインに接続され、操作具の操作に基づいて油圧アクチュエータに対する油給排制御を行うコントロールバルブと、吐出ラインの最高圧を設定するメインリリーフ弁と、吐出ラインから分岐形成されて油タンクに至るバイパス油路と、該バイパス油路に配され、制御装置から出力される制御信号に基づいて油圧ポンプから油タンクに流れるバイパス量を制御するスプール式のバイパス弁とを備えるとともに、操作具操作量に応じてバイパス量を増減制御することで吐出ラインの上限圧力が操作具操作量に応じた圧力となるように制御するにあたり、前記バイパス弁は、スプールの変位に伴い開口面積が増減するように構成される一方、制御装置は、操作具操作量とスプール変位量との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて操作具操作量に応じてバイパス弁のスプール変位量を制御するよう構成してなる作業機械の油圧制御回路において、前記マップは、吐出ラインの上限圧力が吐出ラインの最高圧に達する操作具操作量よりも大きな操作量でバイパス弁の開口面積を全閉にするスプール変位量となるように設定される一方、バイパス弁の全閉状態におけるバイパス弁のスプールのランド部と該ランド部が摺接するハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を制御するべく、バイパス弁の全閉状態においても前記マップで操作具操作量に対するスプール変位量を制御する構成にするとともに、前記制御装置は、油圧ポンプの吐出ラインの圧力を検出する圧力検出手段からの信号を入力し、該入力される吐出ラインの圧力に応じてマップを変化させることで、バイパス弁の全閉状態におけるスプールのランド部とハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を吐出ラインの圧力に応じて変化させる構成にしたことを特徴とする油圧制御回路である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、バイパス弁によって上限圧力を増減制御することができる油圧アクチュエータ用操作具の操作領域を可及的に広くすることができて操作性の向上に貢献できるとともに、エネルギー損失の低減を図れる。さらに、全閉状態におけるスプールのランド部と該ランド部が摺接するハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を制御することができるとともに、吐出ラインが高圧であってもオーバーラップ長を長くすることでバイバス弁からの油の漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第一の実施の形態におけるスプールストロークとバイパス弁開口面積との関係を示す図である。
【
図3】第一の実施の形態におけるコントローラの入出力を示すブロック図である。
【
図4】(A)は第一の実施の形態のバイパス弁制御マップを示す図、(B)は操作具操作量と上限ポンプ圧との関係を示す図である。
【
図5】第一の実施の形態におけるバイパス弁制御マップの変化を示す図である。
【
図7】第二の実施の形態におけるスプールストロークとバイパス弁開口面積との関係を示す図である。
【
図8】第二の実施の形態のバイパス弁制御マップを示す図である。
【
図9】第二の実施の形態におけるバイパス弁制御マップの変化を示す図である。
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、本発明の第一の実施の形態について、
図1~
図5に基づいて説明すると、
図1は、作業機械の一例である油圧ショベルの油圧制御回路の概略を示す図である。該
図1において、1はエンジンEによって駆動される可変容量型の油圧ポンプ、1aは油圧ポンプ1の容量可変手段、2は油圧ポンプ1の吐出ライン、3は油タンク、4は油圧ポンプ1を油圧供給源として作動する油圧アクチュエータ、5は油圧アクチュエータ4に対する油給排制御を行うパイロット作動式のコントロールバルブ、6A、6Bはコントロールバルブ5を作動せしめるべくパイロット圧を出力する第一、第二電磁比例減圧弁である。
尚、油圧ショベルには、ブームシリンダ、スティックシリンダ、バケットシリンダ、走行モータ、旋回モータ等の種々の油圧アクチュエータが設けられるとともに、各油圧アクチュエータに対応してそれぞれコントロールバルブが設けられ、さらに各コントロールバルブを作動せしめるべくパイロット圧を出力する電磁比例減圧弁が設けられるが、
図1には、これら油圧アクチュエータ、コントロールバルブ、電磁比例減圧弁を代表して、1つの油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)4と、該油圧アクチュエータ4に対応するコントロールバルブ5と、該コントロールバルブ5に対応する第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bと、図示しない他の2つの油圧アクチュエータにそれぞれ対応する他の2つのコントロールバルブ5のみを示してある。
【0009】
前記コントロールバルブ5は、クローズドセンタ形のスプール弁であって、第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bにそれぞれ接続される第一、第二パイロットポート5a、5b、油圧ポンプ1の吐出ライン2に接続されるポンプポート5c、油タンク3に接続されるタンクポート5d、油圧アクチュエータ4の各ポート4a、4bにそれぞれ接続される一対のアクチュエータポート5e、5fの各ポートを備えて構成されている。そして、第一、第二の両パイロットポート5a、5bにパイロット圧が入力されていない状態では、ポンプポート5c、タンクポート5d、および一対のアクチュエータポート5e、5fを閉じる中立位置Nに位置しているが、第一または第二電磁比例減圧弁6Aまたは6Bから第一または第二パイロットポート5aまたは5bにパイロット圧が入力されることで、ポンプポート5cから一方のアクチュエータポート5eまたは5fに至る供給流路5g、および他方のアクチュエータポート5fまたは5eからタンクポート5dに至る排出流路5hを開く第一作動位置Xまたは第二作動位置Yに切換わって、油圧アクチュエータ4に対する供給流量制御および排出流量制御を行うように構成されている。
尚、本実施の形態では、油圧ポンプ1に対して各コントロールバルブ5はパラレルに接続されているとともに、各コントロールバルブ5のポンプポート5cの上流側油路には油圧アクチュエータ4の負荷圧を保持するためのチェック弁9が配されている。
【0010】
さらに、
図1において、10は前記第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bにパイロット一次圧を供給するパイロット一次側油路であって、該パイロット一次側油路10は、前記油圧ポンプ1の吐出ライン2から減圧弁11を介して分岐形成されている。つまり、減圧弁11は、油圧アクチュエータ4と共通の油圧供給源である油圧ポンプ1の圧力を減圧して所定のパイロット一次圧Ppを生成し、該パイロット一次圧Ppをパイロット一次側油路10を経由して第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bに供給するようになっているが、パイロット一次側油路10には、パイロット一次圧Ppを保持するためのチェック弁12と、パイロット一次圧平滑用のアキュムレータ13とが上流側(減圧弁11側)から順次配されている。そして、第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bは、非作動状態ではパイロット圧を出力しないが、後述するコントローラ15から出力される制御信号に基づいて作動して、入力されたパイロット一次圧Ppを減圧して前記コントロールバルブ5の第一、第二パイロットポート5a、5bに出力する。そして、該第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bから出力されたパイロット圧により前述したようにコントロールバルブ5が中立位置Nから第一作動位置Xまたは第二作動位置Yに切換わって、油圧アクチュエータ4に対する供給流量制御および排出流量制御を行うようになっている。この場合に、第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bから出力されるパイロット圧は、コントローラ15により油圧アクチュエータ用操作具(本発明の操作具に相当する)21の操作量に応じて増減するように制御されるとともに、該パイロット圧の増減に応じてコントロールバルブ5のスプール変位量が増減することによって前記供給流路5gおよび排出流路5hの開口面積が増減制御され、これにより供給流量および排出流量の増減制御が行われるようになっている。
尚、油圧アクチュエータ用操作具21および該油圧アクチュエータ用操作具21の操作(操作量および操作方向)を検出する操作検出手段22は、各油圧アクチュエータに対応してそれぞれ設けられるが、
図1には一つの油圧アクチュエータ4に対応する操作具21と操作検出手段22のみを図示してある。
【0011】
さらに、
図1において、16は油圧ポンプ1の吐出ライン2から分岐形成されて油タンク3に至るメインリリーフ油路あって、該メインリリーフ油路16には、吐出ライン2の最高圧(システム圧)を設定するメインリリーフ弁17が配設されている。
【0012】
さらに、
図1において、18は油圧ポンプ1の吐出ライン2から分岐形成されて油タンク3に至るバイパス油路であって、該バイパス油路18には、油圧ポンプ1からバイパス油路18を経由して油タンク3に流れるバイパス量(ブリード量)を制御するバイパス弁(ブリード弁)19が配設されている。該バイパス弁19は、油圧ポンプ1に接続される入口側ポート19aと、油タンク3に接続される出口側ポート19bと、これら入口側、出口側ポート19a、19bを有するハウジング(図示せず)と、該ハウジングに軸方向移動自在に内挿されるスプール19cと、該スプール19cの一端側に設けられ、スプール19cを初期位置に付勢するスプリング19dと、スプール19cの他端側に設けられ、スプリング19dの付勢力に抗してスプール19cを移動させる比例ソレノイド19e等を備えているとともに、スプール19cの他端側には、前記パイロット一次側油路10から分岐形成された導入油路20を介してパイロット一次圧Ppが作用するように構成されている。そして、コントローラ15からの制御信号として比例ソレノイド19eに印加される電流値の増減制御によってスプール19cのストローク(初期位置からの変位量)が増減制御され、該ストロークに対応するバイパス弁19の開口面積によって、油圧ポンプ1からバスパス油路18を経由して油タンク3に流れるバイパス量が制御されるようになっている。
【0013】
ここで、前記バイパス弁19のスプール19cのストロークと開口面積との関係について
図2に基づいて説明する。比例ソレノイド19eに電流が印加されていない状態では、スプール19cはスプリング19dの付勢力によって初期位置(ストローク「0」)に位置しているが、該初期位置では、バイパス弁19の開口面積は後述する設定開口面積Asよりも小さい初期開口面積Afとなるように設定されている。そして、比例ソレノイド19eに電流が印加されることによりスプール19cが初期位置から変位するとともに、該スプール19cのストロークは比例ソレノイド19eへの印加電流値の増加に応じて増加するが、この場合に、ストロークが初期位置から第一ストロークS1に達するまでは開口面積は前記初期開口面積Afに維持され、第一ストロークS1から第二ストロークS2(S1<S2)に達するまでは、ストロークが増加するにつれて開口面積が減少し、第二ストロークS2に達するとバイパス弁19の開口面積は「0」、つまり全閉するように設定されている。そして、この全閉状態(開口面積A=0)は、第二ストロークS2からストロークが増加して第三ストロークS3(S2<S3)に至るまで維持される。さらに、スプール19cのストロークが第三ストロークS3から増加するとバイパス弁19は開口するが、この場合、ストロークの増加につれて開口面積も増加し、最大ストロークSmに達する前の第四ストロークS4(S3<S4)で、前記初期開口面積Afよりも大きく最大開口面積Amよりも少し小さい設定開口面積Asとなる。さらに第四ストロークS4から少し移動した第五ストロークS5(S4<S5)で最大開口面積Amとなり、該最大開口面積Amは、第五ストロークS5から最大ストロークSm(S5<Sm)まで維持されるようになっている。尚、
図2において、第六ストロークS6は、開口面積が「0」に維持される第二ストロークS2と第三ストロークS3との間のストローク(S2<S6<S3)であるが、該第六ストロークS6については、後述する。
【0014】
一方、前記コントローラ(本発明の制御装置に相当する)15は、
図3のブロック図に示すごとく、各油圧アクチュエータ用操作具21の操作をそれぞれ検出する操作検出手段22、油圧ポンプ1の吐出ライン2の圧力(ポンプ圧)を検出するポンプ圧力センサ(本発明の圧力検出手段に相当する)23、エンジンコントローラ24等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記第一、第二電磁比例減圧弁6A、6B、バイパス弁19の比例ソレノイド19e、油圧ポンプ1の容量可変手段1a等に制御信号を出力するように構成されているとともに、後述するバイパス弁制御マップ(本発明のマップに相当する)25を備えている。
【0015】
そして、前記バイパス弁19のスプール19cのストロークは、前述したように、コントローラ15から比例ソレノイド19eに印加される電流値により制御されるが、該コントローラ15によるバイパス弁19のストロークの制御について説明すると、まず、エンジンEの始動前は、コントローラ15から比例ソレノイド19eに電流は印加されず、バイパス弁19はスプリング19dの付勢力により初期位置に位置しているとともに、該初期位置でのバイパス弁19の開口面積は、前述したように初期開口面積Afに設定されている。該初期開口面積Afは、エンジン始動に伴う油圧ポンプ1の駆動開始直後においてポンプ圧が急上昇してエンジンEに過大な負荷がかかることを防止するべく、エンジン始動直後に油圧ポンプ1の吐出油を油タンク3に逃がすために最低限必要な開口面積であって、前述したように設定開口面積Asよりも小さい開口面積(Af<As)に設定されている。
【0016】
一方、エンジンEが始動し、これに伴い油圧ポンプ1が駆動開始すると、ポンプ圧力センサ23により検出されるポンプ圧が所要圧力Poに達するまでは、コントローラ15からバイパス弁19の比例ソレノイド19eに電流は印加されず、スプール19cは前記初期位置に維持される、つまり、バイパス弁19の開口面積は初期開口面積Afに維持される。これにより、エンジン始動直後におけるポンプ圧の急上昇を防止できるとともに、エンジン始動時のバイパス弁の開口面積が最大開口面積となるように設定されている場合(例えば、後述する第二の実施の形態のバイパス弁33のような場合)と比して、所要圧力Poに達するまでのポンプ圧力上昇速度を速くすることができる。前記所要圧力Poは、油圧ポンプ1からパイロット一次側油路10に所定のパイロット一次圧Ppを供給することができるよう、パイロット一次圧Ppよりも大きい値であるとともに、省エネルギー化の観点からは小さい値であることが望ましく、例えば4MPa程度である。
【0017】
そして、ポンプ圧が前記所要圧力Poに達した後、コントローラ15は、操作検出手段22から操作信号が入力されていない状態、つまり油圧アクチュエータ用操作具21が操作されていない(操作具中立)状態では、スプール19cのストロークを第四ストロークS4にするべく比例ソレノイド19eに電流を印加する。これによりバイパス弁19の開口面積は設定開口面積Asとなるが、該設定開口面積Asは、エンジンEの回転数が所定回転数(例えば定格回転数)程度で、油圧ポンプ1の吐出量が所定量程度である状態において、吐出ライン2の圧力が前記所要圧力Po程度に維持される開口面積であり、前述したように、初期開口面積Afよりも大きい開口面積である。また、エンジンEが始動してからポンプ圧が所要圧力Poに達するまでは、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されてもコントローラ15は前記第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bに作動の制御信号を出力せず、これによりコントロールバルブ5は、油圧アクチュエータ4に圧油供給しない中立位置Nに保持されるようになっている。さらに、操作検出手段22から所定時間以上操作信号が入力されない場合には、コントローラ15はスプール19cのストロークを第五ストロークS5となるように比例ソレノイド19eに電流を印加して、バイパス弁19の開口面積を最大開口面積Amにする。これにより、油圧アクチュエータ用操作具21が所定時間以上操作されていない場合のバイパス油路18の圧力損失を低減することができる。
【0018】
ここで、前述したように、バイパス弁19のスプール19cの他端側(反スプリング19d側)には、パイロット一次側油路10から分岐形成された導入油路20を介してパイロット一次圧Ppが作用するように構成されている。このため、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されていない状態で、吐出ライン2の圧力が前記所要圧力Poよりも低下してパイロット一次圧Pp未満になった場合には、バイパス弁19のスプール19cの他端側に作用するパイロット圧が小さくなって、スプール19cは第四ストロークS4あるいは第五ストロークS5からストロークが少なくなる方向に移動する。これにより、バイパス弁19の開口面積が小さくなって、吐出ライン2の圧力が前記所要圧力Poとなるように調整されるようになっている。
【0019】
また、バイパス弁19は、前述したように、コントローラ15から比例ソレノイド19eに電流は印加されない状態では、スプリング19dの付勢力により初期位置に位置するとともに、該初期位置でのバイパス弁19の開口面積は、初期開口面積Afに設定されている。これにより、仮にコントローラ15から比例ソレノイド19eに至る電気系統に不具合が生じる等してバイパス弁19が動作不良になったとしても、バイパス弁19によってバイパス油路18は開かれており、エンジン始動時におけるポンプ圧の急上昇やエンジン始動不可を回避できるとともに、この場合のバイパス弁19の開口面積である初期開口面積Afは、操作具中立時のバイパス弁19の開口面積である設定開口面積Asよりも小さい開口面積であるから、吐出ライン2の圧力も操作具中立時のときの所要圧力Poよりも上昇することになって、バイパス弁19が動作しなくなったとしても作業機械の緊急退避等の最低限必要な作動を行うことが可能となる。
【0020】
次いで、エンジンEが始動してポンプ圧が所要圧力Poに達した後に、油圧アクチュエータ用操作具21が操作された場合のバイパス弁19の制御について説明すると、この場合、コントローラ15は、後述するバイパス弁制御マップ25に用いてスプール19cのストロークを制御する。
【0021】
前記バイパス弁制御マップ25は、
図4(A)に示す如く、操作検出手段22から入力される油圧アクチュエータ用操作具21の操作量(操作具操作量)とスプール19cのストロークとの関係を示すマップであって、各油圧アクチュエータ4についてそれぞれ設定される。例えば、油圧ショベルでは、ブームシリンダの伸長側と縮小側、スティックシリンダの伸長側と縮小側、バケットシリンダの伸長側と縮小側、走行モータ、旋回モータ等の各油圧アクチュエータについてそれぞれのバイパス弁制御マップ25が個別に設定される。このバイパス弁制御マップ25は、操作具操作量と吐出ライン2の上限圧力(例えばピストンがシリンダエンドに位置している等で油圧アクチュエータ4に圧油供給されない状態での吐出ライン2の圧力)との関係が予め設定された圧力特性の関係になるよう、吐出ライン2の上限圧力を操作具操作量に応じた上限圧力にするためのバイパス弁19の開口面積を求め、さらに該開口面積となるスプール19cのストロークを求めることで、操作具操作量とスプール19cのストロークとの関係を示すマップとして作成される。この場合、前記予め設定される圧力特性の関係は、
図4(B)に示す如く、操作具操作量が第一操作量L1のときに上限ポンプ圧(吐出ライン2の上限圧力)がシステム圧(メインリリーフ弁17によって設定される吐出ライン2の最高圧、例えば、35Mpa)に達するように設定されるとともに、バイパス弁制御マップ25では、
図4(A)に示す如く、前記第一操作量L1よりも少し操作量が増加した第二操作量L2でバイパス弁19の開口面積が「0」となる第三ストロークS3となるように設定される。この場合に、上限ポンプ圧がシステム圧に達してからバイパス弁19の開口面積「0」となるまでの間の開口面積の変化が、前記第一操作量L1から第二操作量L2までの操作具操作量の増加に伴い滑らかに行われるようにスプール19cのストロークが制御される。
尚、特殊な制御、例えば油圧ショベルのブーム下げで上限ポンプ圧をシステム圧よりも低くなるように制御した方が良い場合もあり、そのような場合は、操作具操作量が最大でもバイパス弁19の開口面積を「0」にしないように設定する。
【0022】
前記バイパス弁制御マップ25を用いたコントローラ15によるバイパス弁19の制御について、前記
図4(A)に基づいて説明すると、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されていない(操作具操作量が「0」、操作具中立)状態では、前述したように、スプール19cは第四ストロークS4に位置するように制御される。そして、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されると、スプール19cは、操作具操作量が増加するにつれてストロークが減少する方向、つまりバイパス弁19の開口面積が小さくなる方向に移動するように制御され、操作具操作量が第二操作量L2まで操作されると、バイパス弁19の開口面積が「0」となる第三ストロークS3となるように制御される。さらにコントローラ15は、バイパス弁19の開口面積が「0」となった以降も、操作具操作量の増加に応じてスプール19cのストロークを制御する。
尚、バイパス弁19の開口面積が「0」になるときのスプール19cのストローク、つまり第三ストロークS3の位置に対応する比例ソレノイド19eへの印加電流値については、キャリブレーション等で補正することが望ましい。
また、複数の油圧アクチュエータ4が同時に操作される連動操作では、操作検出手段22から入力されるそれぞれの油圧アクチュエータ用操作具21の操作量と、それぞれの油圧アクチュエータ用のバイパス弁制御マップ25とを基にして、バイパス弁19のスプール19cのストロークが演算される。
【0023】
ここで、前記バイパス弁19の開口面積が「0」となった以降のスプール19cのストロークの制御について、
図5に示すバイパス弁制御マップ25の一部拡大図に基づいて説明すると、コントローラ15は、バイパス弁19の開口面積が「0」となった以降は、ポンプ圧力センサ23から入力される吐出ライン2の現在のポンプ圧に応じて、前記バイパス弁制御マップ25を変化させる。この場合、ポンプ圧力センサ23から入力されるポンプ圧が予め設定される設定圧よりも高圧(例えば、35MPa)のときには、
図5に実線で示す如く、スプール19cのストロークがバイパス弁19の開口面積が「0」となる第三ストロークS3に達した以降も、操作具操作量が増加するほどスプール19cのストロークが減少するように、つまり、第二ストロークS2方向に変位するように設定されており、操作具操作量が最大(最大操作量Lm)になったときには、スプール19cは、第三ストロークS3と第二ストロークS2との中間の第六ストロークS6に位置するようになるように制御される。該第六ストロークS6は、バイパス弁19の開口面積が「0」に維持される第三ストロークS3と第二ストロークS2との間に位置してスプール19cのランド部と該ランド部に摺接するハウジングの摺接部とのオーラップ長が最も長くなる位置であって、スプール19cが該第六ストロークS6に位置することで、ポンプ圧が高圧であってもバイパス弁19からの油の漏れを確実に防止することができるようになっている。
【0024】
一方、ポンプ圧力センサ23から入力されるポンプ圧が前記設定圧よりも低くなると、バイパス弁制御マップ25は、バイパス弁19の開口面積が「0」となった以降における第三ストロークS3から第二ストロークS2方向への変位が、ポンプ圧が低くなるほど少なくなるように変化し、ポンプ圧が十分に低い(例えば、5MPa)ときには、
図5に点線で示す如く、操作具操作量が最大操作量Lmになっても、スプール19cは第三ストロークS3に位置しているように設定される。これにより、ポンプ圧がスプール19cの漏れの心配がないほどの低圧の場合には、操作具操作量の減少に応じてスプール19cがすぐにバイパス弁19の開口を開く第四ストロークS4方向に移動することになって、操作具操作に対するバイパス弁19の応答性が良好となる。
【0025】
叙述の如く構成された本実施の形態において、油圧ショベルの油圧制御回路は、油圧ポンプ1と、油圧ポンプ1から圧油供給される油圧アクチュエータ4と、油圧アクチュエータ4を作動させるべく操作される油圧アクチュエータ用操作具21と、油圧ポンプ1の吐出ライン2に接続され、油圧アクチュエータ用操作具21の操作に基づいて油圧アクチュエータ4に対する油給排制御を行うコントロールバルブ5と、吐出ライン2の最高圧を設定するメインリリーフ17弁と、吐出ライン2から分岐形成されて油タンク3に至るバイパス油路18と、バイパス油路18に配され、コントローラ15から出力される制御信号に基づいて油圧ポンプ1から油タンク3に流れるバイパス量を制御するスプール式のバイパス弁19等を備えて構成されているが、このものにおいて、油圧アクチュエータ用操作具21の操作量に応じてバイパス量を増減制御することで吐出ライン2の上限圧力が操作具操作量に応じた圧力となるように制御するにあたり、バイパス弁19は、スプール19cの変位に伴い開口面積が増減するように構成される一方、コントローラ15は、操作具操作量とスプールストローク(スプール19cの変位量)との関係を示したバイパス弁制御マップ25を備えており、該バイパス弁制御マップ25に基づき操作具操作量に応じてバイパス弁19のスプールストロークを制御するとともに、バイパス弁制御マップ25では、吐出ライン2の上限圧力が吐出ライン2の最高圧に達する第一操作量L1よりも操作量が大きい第二操作量L2で、バイパス弁19の開口面積を全閉にするスプールストローク(第一の実施の形態では第三ストロークS3)となるように設定される。
【0026】
而して、バイパス弁19のスプール19cの変位量は、バイパス弁制御マップ25により操作具操作量に応じて制御されるとともに、該スプール19cの変位に伴うバイパス弁19の開口面積の増減によって、吐出ライン2の上限圧力が油圧アクチュエータ用操作具21の操作量に応じた圧力となるように制御されることになるが、この場合に、吐出ライン2の上限圧力が吐出ライン2の最高圧に達する第一操作量L1よりも操作量が大きな第二操作量L2で、バイパス弁19の開口面積が全閉となるように制御されることになる。この結果、吐出ライン2の上限圧力が吐出ライン2の最高圧に達するまでは、バイバス弁19の開口面積の増減制御で、吐出ライン2の上限圧力が操作具操量に応じた圧力となるよう制御できることになって、バイパス弁19によって上限圧力を増減制御することができる油圧アクチュエータ用操作具21の操作領域を可及的に広くすることができ、操作性の向上に大きく貢献できる。一方、吐出ライン2の上限圧力が吐出ライン2の最高圧に達したときよりも操作量が大きくなるとバイパス弁19は全閉することになって、エネルギー損失の低減を図れる。
【0027】
さらにこのものでは、バイパス弁19の全閉状態においてもバイパス弁制御マップ25で操作具操作量に対するスプール19cのストロークを制御する構成になっており、これにより、バイパス弁19の全閉状態におけるスプール19cのランド部と該ランド部が摺接するハウジングの摺接部とのオーバーラップ長を制御することができる。この場合、コントローラ15に、油圧ポンプ1の吐出ライン2の圧力を検出するポンプ圧力センサ23からの信号を入力し、該入力される吐出ライン2の圧力に応じてバイパス弁制御マップ25を変化させることで、前記オーバーラップ長を吐出ライン2の圧力に応じて変化させる構成にする。これにより、吐出ライン2が高圧であっても前記オーバーラップ長を長くすることでバイバス弁19からの油の漏れを防止できることになって、エネルギー損失の低減に貢献できる。
【0028】
次に、本発明の第二の実施の形態について、
図6~
図9に基づいて説明する。尚、第二の実施の形態において第一の実施の形態のものと同様のものは、同一の符号を付すとともに説明を省略する。
図6は、第二の実施の形態の油圧制御回路の概略を示す図である。該
図6において、30はエンジンEより駆動されるパイロットポンプであって、該パイロットポンプ30により生成されたパイロット一次圧が、パイロットポンプ30に接続されるパイロット一次側油路31を介して、コントロールバルブ5にパイロット圧を出力する第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bに供給されるようになっている。つまり、第二の実施の形態では、油圧アクチュエータ4の油圧供給源となる油圧ポンプ1と、第一、第二電磁比例減圧弁6A、6Bにパイロット一次圧を供給するパイロットポンプ30とが別個に設けられている。尚、
図6中、32はパイロット一次側油路31の回路圧を設定するパイロットリリーフ弁である。
【0029】
さらに、
図6において、33は第二の実施の形態のバイパス弁であって、該バイパス弁33は、第一の実施の形態と同様に、油圧ポンプ1の吐出ライン2から分岐形成されて油タンク3に至るバイパス油路18に配されている。そして、該バイパス弁33によって、油圧ポンプ1からバイパス油路18を経由して油タンク3に流れるバイパス量が制御されることになるが、該バイパス弁33は、油圧ポンプ1に接続される入口側ポート33aと、油タンク3に接続される出口側ポート33bと、これら入口側、出口側ポート33a、33bを有するハウジング(図示せず)と、該ハウジングに軸方向移動自在に内挿されるスプール33cと、該スプール33cの一端側に設けられ、スプール33cを初期位置に付勢するスプリング33dと、スプール33cの他端側に設けられ、スプリング33dの付勢力に抗してスプール33cを移動させる比例ソレノイド33e等を備えている。そして、コントローラ15から比例ソレノイド33eに印加される電流値の増減制御によってスプール33cのストローク(初期位置からの変位量)が増減制御され、該ストロークに対応するバイパス弁33の開口面積によって、油圧ポンプ1からバイパス油路18を経由して油タンク3に流れるバイパス量が制御されるようになっている。
【0030】
ここで、前記第二の実施の形態におけるバイパス弁33のスプール33cのストロークと開口面積との関係について
図7に基づいて説明する。比例ソレノイド33eに電流が印加されていない状態では、スプール33cはスプリング33dの付勢力によって初期位置(ストローク「0」)に位置しているが、該初期位置では、バイパス弁33の開口面積は最大開口面積Amとなるように設定されている。そして、比例ソレノイド33eに電流が印加されることによりスプール33cが初期位置から変位するとともに、該スプール33cのストロークは比例ソレノイド33eへの印加電流値の増加に応じて増加するが、この場合に、ストロークが初期位置から第一ストロークS1に達するまでは開口面積は最大開口面積Amに維持され、第一ストロークS1からはストロークが増加するにつれて開口面積が減少するように設定されており、第二ストロークS2(S1<S2)に達するとバイパス弁33の開口面積Aが「0」、つまり全閉するように設定されている。そして、この全閉状態(開口面積A=0)は、ストロークが第二ストロークS2からさらに増加して最大ストロークSm(S2<Sm)に達するまで維持されるようになっている。
【0031】
前記バイパス弁33のスプール33cのストロークは、コントローラ15から比例ソレノイド33eに印加される電流値により制御されるが、該コントローラ15によるバイパス弁33のストロークの制御について説明すると、まず、エンジンEの始動前は、コントローラ15から比例ソレノイド33eに電流は印加されず、バイパス弁33はスプリング33dの付勢力により初期位置に位置するとともに、該初期位置でのバイパス弁33の開口面積は、前述したように最大開口面積Amに設定されている。
【0032】
さらに、エンジンEの始動後、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されていない状態では、コントローラ15から比例ソレノイド33eに電流は印加されず、バイパス弁33はスプリング33dの付勢力により初期位置、つまり最大開口面積Amに維持される。一方、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されると、コントローラ15は、第二の実施の形態のバイパス用制御マップ34を用いてバイパス弁33のスプール33cのストロークを制御する。
【0033】
前記バイパス弁制御マップ34は、
図8に示すごとく、操作検出手段22から入力される油圧アクチュエータ用操作具21の操作量(操作具操作量)とスプール33cのストロークとの関係を示すマップであって、各油圧アクチュエータ4についてそれぞれ設定されており、第一の実施の形態と同様にして作成されるが、この場合、操作具操作量が第一操作量L1のときに上限ポンプ圧(油圧アクチュエータ4に圧油供給されない状態でのポンプ圧)がシステム圧(メインリリーフ弁17よって設定される吐出ライン2の最高圧)に達するように設定される(
図4(B)参照)とともに、前記第一操作量L1よりも少し操作量が増加した第二操作量L2でバイパス弁33の開口面積が「0」となる第二ストロークS2となるように設定される。この場合に、ポンプ圧がシステム圧に達してからバイパス弁33の開口面積「0」となるまでの間の開口面積の変化は、第一の実施の形態と同様に、第一操作量L1から第二操作量L2までの操作具操作量の増加に伴い滑らかに行われるようにスプール33cのストロークが制御される。
【0034】
前記バイパス弁制御マップ34を用いたコントローラ15によるバイパス弁33の制御について、前記
図8に基づいて説明すると、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されていない(操作具操作量が「0」、操作具中立)状態では、前述したように、開口面積が最大開口面積Amとなる初期位置に位置するように制御される。そして、油圧アクチュエータ用操作具21が操作されると、スプール33cは、操作具操作量が増加するにつれてストロークが増加する方向、つまりバイパス弁33の開口面積が小さくなる方向に変位するように制御され、操作具操作量が第二操作量L2まで操作されると、バイパス弁33の開口面積が「0」となる第二ストロークS2となるように制御される。さらにコントローラ15は、バイパス弁33の開口面積が「0」となった以降も、第一の実施の形態と同様に、操作具操作量の増加に応じてスプール33cのストロークを制御する。
【0035】
ここで、前記バイパス弁33の開口面積が「0」となった以降のスプール33cのストロークの制御について、
図9に示すバスパス弁制御マップ34の一部拡大図に基づいて説明すると、コントローラ15は、バイパス弁33の開口面積が「0」となった以降は、第二の実施の形態においても、ポンプ圧力センサ23から入力される吐出ライン2の現在のポンプ圧に応じて、バイパス弁制御マップ34を変化させる。この場合、ポンプ圧力センサ23から入力されるポンプ圧が予め設定される設定圧よりも高圧(例えば、35MPa)のときには、
図9に実線で示す如く、スプール33cのストロークがバイパス弁33の開口面積が「0」となる第二ストロークS2に達した以降も、操作具操作量が増加するほどスプール33cのストロークが増加するように、つまり、最大ストロークSm方向に変位するように設定されており、操作具操作量が最大(最大操作量Lm)になったときには、最大ストロークSmに達するように設定される。該最大ストロークSmでは、スプール19cのランド部と該ランド部に摺接するハウジングの摺接部とのオーラップ長が最も長くなるように形成されており、これにより、ポンプ圧が高圧であってもバイバス弁19からの油の漏れを確実に防止することができるようになっている。
【0036】
一方、ポンプ圧力センサ23から入力されるポンプ圧が前記設定圧よりも低くなると、バイパス弁制御マップ34は、バイパス弁33の開口面積が「0」となった以降における第二ストロークS2から最大ストロークSm方向への変位が、ポンプ圧が低くなるほど少なくなるように変化し、ポンプ圧が十分に低い(例えば、5MPa)ときには、
図9に点線で示す如く、操作具操作量が最大操作量Lmになっても、スプール33cは第二ストロークS2に位置しているように設定される。これにより、ポンプ圧がスプール33cの漏れの心配がないほどの低圧の場合には、操作具操作量の減少に応じてスプール33cがすぐにバイパス弁33の開口を開く第一ストロークS1方向に移動することになって、操作具操作に対するバイパス弁33の応答性が良好となる。
【0037】
而して、この第二の実施のバイパス弁33は、スプール33cのストローク増加に伴い開口面積が減少する構成となっているとともに、油圧アクチュエータ用操作具21の操作量増加に伴いバイパス弁33のスプールストロークが増加する構成となっているが、このように構成されたバイパス弁33が用いられている第二の実施の形態においても、吐出ライン2の上限圧力が吐出ライン2の最高圧に達する第一操作量L1よりも操作量が大きな第二操作量L2で、バイパス弁19の開口面積が全閉となるように制御されることになり、第一の実施の形態と同様の作用効果を奏することになって、操作性の向上、エネルギー損失の低減に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御回路に設けられるバイパス弁の制御に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 油圧ポンプ
2 吐出ライン
3 油タンク
4 油圧アクチュエータ
5 コントロールバルブ
8 コントローラ
15 コントローラ
17 メインリリーフ弁
18 バイパス油路
19 バイパス弁
21 油圧アクチュエータ用操作具
23 ポンプ圧力センサ
25 バイパス弁制御マップ
33 バイパス弁
34 バイパス弁制御マップ
L1 第一操作量
L2 第二操作量