(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】マンホール装置の信号中継装置
(51)【国際特許分類】
E03F 5/22 20060101AFI20240112BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20240112BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
E03F5/22
E03F5/10 Z
F04D15/00 B
F04D15/00 D
(21)【出願番号】P 2020087223
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】松江 寛史
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055150(JP,A)
【文献】実開昭63-005596(JP,U)
【文献】特開2015-190951(JP,A)
【文献】特開2011-008627(JP,A)
【文献】特開2002-230670(JP,A)
【文献】特開2013-250094(JP,A)
【文献】特開2003-088093(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/208624(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/22
E03F 5/10
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の水中ポンプと、各水中ポンプを制御する制御装置と、前記制御装置から出力される種類が異なる複数の状態信号を中継して通報装置に出力するマンホール装置の信号中継装置であって、
各状態信号を入力する複数の入力端子と、各入力端子から入力された各状態信号を一つの状態信号に複合化処理する信号処理回路と、前記信号処理回路で複合化処理された一つの出力信号を前記通報装置に出力する出力端子とを備
え、
前記状態信号は、前記マンホール装置の異常を示す少なくとも1種類の異常状態信号と、各水中ポンプのオン状態またはオフ状態を示す運転状態信号を含み、
前記信号処理回路は、前記運転状態信号の累積オン時間が所定時間に達する度に所定のパルス幅の計量パルス信号を出力する計量パルス発生回路と、前記計量パルス発生回路の出力信号と前記異常状態信号を入力するOR回路と、を含み、前記OR回路の出力信号を前記出力端子から出力するように構成されているマンホール装置の信号中継装置。
【請求項2】
前記水中ポンプは少なくとも2台備えており、前記計量パルス発生回路は、各水中ポンプの計量パルス信号が重複すると、何れか一方の計量パルス信号を遅延させて、重複しないタイミングで出力する遅延処理回路を備えている請求項
1記載のマンホール装置の信号中継装置。
【請求項3】
前記水中ポンプは少なくとも2台備えており、前記計量パルス発生回路は、各水中ポンプの運転状態信号を入力するOR回路と、前記OR回路からの出力信号の累積オン時間が所定時間に達すると所定のパルス幅のパルス信号を出力するように構成されている請求項
1記載のマンホール装置の信号中継装置。
【請求項4】
前記計量パルス発生回路は、2台の水中ポンプの運転状態信号の双方を入力するXOR回路と、前記XOR回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間に達する度に前記所定のパルス幅の計量パルス信号を出力する第1パルス発生回路と、2台の水中ポンプの運転状態信号の双方を入力するAND回路と、前記AND回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間の1/2時間に達する度に前記所定のパルス幅の計量パルス信号を出力する第2パルス発生回路と、を含む請求項
1記載のマンホール装置の信号中継装置。
【請求項5】
前記状態信号は、前記マンホール装置の異常を示す複数種類の異常状態信号を含み、
前記信号処理回路は、各異常状態信号が発生すると其々異なるパルス幅の異常識別パルス信号を生成する異常パルス発生回路を含み、前記異常パルス発生回路の出力信号を前記OR回路に入力するように構成されている請求項
1から
4の何れかに記載のマンホール装置の信号中継装置。
【請求項6】
前記異常パルス発生回路は、複数種類の異常状態信号のうち、重要度が高いほど異常識別パルス信号のパルス幅を長く設定する請求項
5記載のマンホール装置の信号中継装置。
【請求項7】
前記信号処理回路と前記通報装置を其々一対備え、各信号処理
回路に前記複数の状態信号を入力するように構成されている請求項1から
6の何れかに記載のマンホール装置の信号中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール装置の信号中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水搬送ポンプ設備の一例であるマンホール装置は、流入管から流入した汚水を貯留する貯水部と、貯水部に貯留された汚水を流出管に排水する複数台の水中ポンプと、貯水部に貯留された汚水の水位を計測する水位計と、水位計で計測された水位がポンプ起動水位に達すると何れかの水中ポンプを起動して汚水を流出管に排水し、水位がポンプ停止水位に達すると当該水中ポンプを停止する制御装置を備えた制御盤を備えている。
【0003】
このようなマンホール装置には、通常1台或いは2台の水中ポンプが設置され、汚水を搬送する度にそれらの水中ポンプを交互に運転するように制御装置が構成されている。そして、制御装置は各水中ポンプの運転状態や故障状態を含む複数の状態信号を通報装置に出力し、通報装置が遠隔の管理装置にこれらの状態信号を出力することで、遠隔地から各マンホール装置が正常に稼働しているか、異常が発生しているかを監視することができるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のマンホール装置は、通報装置を介して複数の状態信号が遠隔地の監視装置に送信されるように、汎用の移動通信システムを利用すべく、通報装置のハードウェアやソフトウェアをカスタマイズする必要があったため、通信システムの更新の度に設備を更新する必要があり、非常にコストが嵩むという問題があった。
【0006】
例えば、IMT-2000規格に準拠した第3世代移動通信システムからIMT-Advanced規格に準拠した第4世代移動通信システムに移行するために費やした設備が第5世代移動通信システムに移行することによりさらに高価な通報装置に設備を更新する必要がある。
【0007】
なお、状態信号には各水中ポンプが駆動された運転状態信号や水位状態信号や故障状態を示す異常状態信号などが含まれる。遠隔地の監視装置は運転状態信号のオン時間を計測して送水量を算出するなど、マンホール設備の維持管理に必要な状態信号を収集する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、通信規格の更新に対応するカスタマイズが容易に行なえ、設備コストを安価に抑えることができるマンホール装置の信号中継装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明によるマンホール装置の信号中継装置の第一の特徴構成は、少なくとも1台の水中ポンプと、各水中ポンプを制御する制御装置と、前記制御装置から出力される種類が異なる複数の状態信号を中継して通報装置に出力するマンホール装置の信号中継装置であって、各状態信号を入力する複数の入力端子と、各入力端子から入力された各状態信号を一つの状態信号に複合化処理する信号処理回路と、前記信号処理回路で複合化処理された一つの出力信号を前記通報装置に出力する出力端子とを備え、前記状態信号は、前記マンホール装置の異常を示す少なくとも1種類の異常状態信号と、各水中ポンプのオン状態またはオフ状態を示す運転状態信号を含み、前記信号処理回路は、前記運転状態信号の累積オン時間が所定時間に達する度に所定のパルス幅の計量パルス信号を出力する計量パルス発生回路と、前記計量パルス発生回路の出力信号と前記異常状態信号を入力するOR回路と、を含み、前記OR回路の出力信号を前記出力端子から出力するように構成されている点にある。
【0010】
制御装置から出力される種類が異なる複数の状態信号が信号処理回路で一つの出力信号に複合化処理され、複合化された一つの信号が通報装置に出力されるので、予め複合化処理のための信号処理回路を構築しておけば、その後の通信規格の更新に通報装置をカスタマイズする手間が大きく低減される。
【0011】
パルス信号のパルス幅を検出することにより計量パルス発生回路から出力される計量パルス信号であるか否かが判断でき、計量パルス信号であればそのパルス数をカウントすることにより水中ポンプの運転時間、換言すると送水量を求めることができる。また、OR回路から計量パルス信号以外の信号が出力されたことを検出すると何らかの異常が発生したと判断できるようになる。つまり、複数の状態信号を複合化した一つの信号を、通報装置を介して外部に送信できるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記水中ポンプは少なくとも2台備えており、前記計量パルス発生回路は、各水中ポンプの計量パルス信号が重複すると、何れか一方の計量パルス信号を遅延させて、重複しないタイミングで出力する遅延処理回路を備えている点にある。
【0013】
各水中ポンプの計量パルス信号が時間的に重複すると、信号処理回路で複合化処理された一つの出力信号に含まれるパルス信号が、適切に計量パルス信号であると判断できない場合や、何れか一方にみの計量パルス信号が出力されたと判断することになるため、例えば通報装置を介して受信した外部の監視装置側で正確な送水量を算出することができなくなる。そこで、各水中ポンプの計量パルス信号が重複した場合でも、遅延処理回路により何れか一方の計量パルス信号を遅延させて、両パルスが時間的に重複しないタイミングで出力することにより、適切に計量パルス信号を認識して正確な送水量を算出することができるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記水中ポンプは少なくとも2台備えており、前記計量パルス発生回路は、各水中ポンプの運転状態信号を入力するOR回路と、前記OR回路からの出力信号の累積オン時間が所定時間に達すると所定のパルス幅のパルス信号を出力するように構成されている点にある。
【0015】
各水中ポンプの運転状態信号がOR回路に入力されて一つの運転状態信号に統合されるため、少なくともいずれか一方の運転状態信号がオンすると累積オン時間が計時され、所定時間に達すると所定のパルス幅の計量パルス信号が出力される。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記計量パルス発生回路は、2台の水中ポンプの運転状態信号の双方を入力するXOR回路と、前記XOR回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間に達する度に前記計量パルス信号を出力する第1パルス発生回路と、2台の水中ポンプの運転状態信号の双方を入力するAND回路と、前記AND回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間の1/2時間に達する度に前記計量パルス信号を出力する第2パルス発生回路と、を含む点にある。
【0017】
第三の特徴構成によれば、各水中ポンプの運転状態信号が時間的に重複するような場合に、其々に対する計量パルス信号を生成することができない。しかし、第四の特徴構成によれば、2台の水中ポンプのうち何れか一方のみ運転状態信号がオンになるときにXOR回路からオン信号が出力され、双方の運転状態信号がオンになるときにのみAND回路からオン信号が出力されるため、XOR回路からのオン信号出力時は1台の水中ポンプがオンしており、AND回路からのオン信号出力時は2台同時に水中ポンプがオンしていることが識別できる。そして、第1パルス発生回路ではXOR回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間に達する度に計量パルス信号を出力し、第2パルス発生回路ではAND回路からの出力信号の累積オン時間が第1の所定時間の1/2時間に達する度に計量パルス信号を出力するように構成することで、例えば通報装置を介して受信した外部の監視装置側で正確な送水量を算出することができるようになる。
【0018】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記状態信号は、前記マンホール装置の異常を示す複数種類の異常状態信号を含み、前記信号処理回路は、各異常状態信号が発生すると其々異なるパルス幅の異常識別パルス信号を生成する異常パルス発生回路を含み、前記異常パルス発生回路の出力信号を前記OR回路に入力するように構成されている点にある。
【0019】
異常パルス発生回路によって複数種類の異常状態信号の其々が異なるパルス幅の異常識別パルス信号に変換されてOR回路に入力されるため、OR回路からの出力信号のパルス幅に基づいて以上の種類が識別できるようになる。
【0020】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記異常パルス発生回路は、複数種類の異常状態信号のうち、重要度が高いほど異常識別パルス信号のパルス幅を長く設定する点にある。
【0021】
複数の異常状態信号が時間的に重複して発生した場合に、重要度が高い異常状態信号が優先して出力されるようになる。
【0022】
同第七の特徴構成は、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記信号処理回路と前記通報装置を其々一対備え、各信号処理回路に前記複数の状態信号を入力するように構成されている点にある。
【0023】
通報装置を介して受信した外部の監視装置側で、信号処理回路と通報装置の双方の異常を適切に検出することができる。例えば、一方の通報装置からの送信が検出できない場合には、当該一方の通信装置が故障しており、双方の通信装置からの送信が検出できない場合には停電等の異常が発生していると検出でき、双方からの送信が検出され、送信された状態信号が異なる場合には何れかの信号処理回路が故障していると検出できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、通信規格の更新に対応するカスタマイズが容易に行なえ、設備コストを安価に抑えることができるマンホール装置の信号中継装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】第1の態様を示す信号中継装置の要部の回路動作説明図
【
図5】第1の態様の信号中継装置に対応する通報信号の判断手順のフローチャート
【
図7】第2の態様を示す信号中継装置の要部の回路動作説明図
【
図9】第3の態様を示す信号中継装置の要部の回路動作説明図
【
図11】第4の態様を示す信号中継装置の要部の回路動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明によるマンホール装置の信号中継装置を図面に基づいて説明する。
【0027】
[マンホール装置の構成]
図1にはマンホール装置10が示されている。マンホール装置10は、上流側の汚水流入管11から流入した汚水を貯留する貯水部としてのマンホール12と、マンホール12に貯留された汚水を下流側の汚水流出管13に圧送する2台の水中ポンプPA,PBと、マンホール12に貯留された汚水の水位を計測する水位計18,19を備えている。
【0028】
第1ポンプPAの吐出し曲管15aには第1揚水管15b、第1曲管15c、第1水平管15dがそれぞれフランジ接続され、第1水平管15dがヘッダー管13aを介して汚水流出管13にフランジ接続されている。第1揚水管15bと第1曲管15cの間に逆止弁15eが設けられている。
【0029】
第2ポンプPBの吐出し曲管17aには第2揚水管17b、第2曲管17cがそれぞれフランジ接続され、第2曲管17cがヘッダー管13aを介して汚水流出管13にフランジ接続されている。第2揚水管17bと第2曲管17cとの間に逆止弁17eが設けられている。
【0030】
投込圧力式または気泡式の水位計18がマンホール12の底部に設置されている。当該水位計18によってマンホール12に貯留される汚水の水位が連続的に検出される。さらにフロート式の水位計19が、異常高水位HHWLを検出するバックアップ用の水位計として設置されている。
【0031】
マンホール12の近傍には、ポンプPA,PBを制御してマンホール12に溜まった汚水を汚水流出管13に圧送する汚水搬送制御を実行する制御装置21を含む制御盤20が収容された制御盤装置200が設置されている。
【0032】
制御盤20には、制御装置21、信号中継装置22、通報装置24が設けられている。制御装置21から種類が異なる複数の状態信号が信号中継装置22に入力され、信号中継装置22の出力信号が通報装置24に入力される。通報装置24は信号中継装置22から入力された出力信号を遠隔の監視装置40に送信する送信部を備えている。
【0033】
通報装置24と監視装置40との間をつなぐ通信媒体として例えば携帯電話網のような無線通信媒体が好適に用いられ、このような通信媒体を介して監視装置40と通報装置24がインターネット接続され、さらにマンホール装置10の管理者が所有する携帯通信端末30と監視装置40とが無線通信媒体を介してインターネット接続可能に構成されている。なお、監視装置40から通報装置24に送信された制御指令などは通報装置24の受信部から制御装置21に入力される。
【0034】
制御盤20と各ポンプPA,PBは交流の給電線L1,L2で接続され、制御盤20と水位計18,19は信号線Sで接続されている。
【0035】
制御装置21は、水位計18で計測された水位が所定のポンプ起動水位HWLに達したことを検知するとポンプPA,PBのうち一方のポンプPAを起動するために給電線L1から給電制御し、水位がポンプ起動水位HWLより低位のポンプ停止水位LWLに達したことを検知すると給電を停止して当該一方のポンプPAを停止する。
【0036】
制御装置21は、その後再び水位がポンプ起動水位HWLに達したことを検知すると他方のポンプPBを起動するために給電線L2から給電制御し、ポンプ停止水位LWLに達したことを検知すると給電を停止して当該ポンプPBを停止する。つまり、制御装置21はポンプPA,PBを交互に運転制御する。
【0037】
さらに、制御装置21は、水位計18の故障などによりポンプ起動水位HWLが検知できない場合や、集中豪雨によりポンプ1台の排水能力を上回るような大量の雨水がマンホール12に流入し、異常高水位HHWLに達したことが水位計19で計測されたことを検知すると、2台のポンプPA,PBを同時に運転する。
【0038】
制御装置21は、各ポンプPA,PBの起動から停止までの間に運転状態信号をオン出力し、各ポンプPA,PBが異常過熱し或いは異常電流が流れている場合に其々のポンプ異常状態信号を出力し、異常高水位HHWLを超えると水位異常状態信号を出力し、停電を検知すると停電異常状態信号を出力する。
【0039】
[マンホール装置の通報システムの構成]
図2に示すように、各マンホール装置10の制御盤20に備えた通報装置24は、制御装置21から入力された種類の異なる複数の状態信号を、信号中継装置22を介して複合化処理した出力信号を入力して監視装置40に送信するように構成されている。
【0040】
監視装置40は、各マンホール装置10の診断装置として機能し、各マンホール装置10の通報装置24や管理者の携帯通信端末30と通信する通信部41、各マンホール装置10の通報装置24から送信された状態信号を解析して各マンホール装置10が正常に稼働しているか否かを診断する診断部44、診断部44による解析結果を運転履歴情報として格納するデータベースDB、データベースDBとの間でデータをやり取りするデータ処理部42などを備えている。
【0041】
例えば、各ポンプPA,PBの運転時間に基づいて送水量を算出して管理し、故障信号に基づいて異常の発生状態を監視する。
【0042】
管理者は携帯通信端末30を用いて監視装置40にアクセスすることにより、注目するマンホール装置10の稼働状態を確認することができる。万一異常状態になると監視装置40から送信される警報メール等の緊急通報に基づいて、速やかに必要なメンテナンスのため対策を打てるようになる。
【0043】
[信号中継装置の構成]
信号中継装置22は、制御装置21から出力される種類の異なる複数の状態信号を入力する複数の入力端子と、各入力端子から入力された各状態信号を一つの状態信号に複合化処理する信号処理回路23と、信号処理回路23で複合化処理された一つの出力信号を通報装置24に出力する出力端子とを備えている。
【0044】
複数の状態信号として、各水中ポンプPA,PBのオン状態またはオフ状態を示す運転状態信号、各水中ポンプPA,PBの故障を示す異常状態信号、異常高水位を示す異常状態信号、停電状態を示す異常状態信号等が含まれる。本実施形態では状態信号は何れも正論理の信号で、運転状態信号はポンプがオンのときに「1」、オフのときに「0」、異常状態信号は異常時に「1」、正常時に「0」となる。なお、状態信号が負論理で構成される場合には、其々論理が成立するように公知の論理回路を組み合わせて構成することができる。
【0045】
予め複合化処理のための信号処理回路23を信号中継装置22に構築しておけば、その後の通信規格の更新に通報装置をカスタマイズする手間が大きく低減される。
【0046】
[信号中継装置の第1の態様]
図3には、第1の態様の信号中継装置22の回路図が示されている。制御装置21から信号中継装置22に停電信号、異常高水位信号、ポンプPA故障信号、ポンプPB故障信号、ポンプPA運転信号、ポンプPB運転信号など、種類の異なる複数の状態信号が入力され、信号中継装置22から通報装置24に1種類の出力信号が出力される。
【0047】
信号処理回路23は、複数の入力端子と1本の出力端子を備えたOR回路50を備えている。OR回路50の各入力端子に各異常状態信号または各異常状態信号から生成される故障信号と、ポンプ運転信号またはポンプ運転信号から生成される計量パルス信号が入力されている。
【0048】
少なくとも何れかの入力信号がオン(ハイレベルの論理信号で「1」)になるとOR回路50の出力信号がオンになり、全ての入力信号がオフ(ローレベルの論理信号で「0」)になるとOR回路50の出力信号がオフになる。
【0049】
OR回路50の出力信号が単にオン状態とオフ状態に切り替わる場合には、監視装置40でどのような種類の入力信号であるかが判別できず、ポンプの運転時間も把握できないない。そこで、運転状態信号の累積オン時間が所定時間に達する度に所定のパルス幅の計量パルス信号を出力する計量パルス発生回路51を備えている。
【0050】
計量パルス発生回路51は、XOR回路、積算器、パルス発生器の第1パルス発生回路と、AND回路、積算器、パルス発生器の第2パルス発生回路を備えている。ポンプPA運転信号とポンプPB運転信号がXOR回路とAND回路の其々に入力され、XOR回路とAND回路の出力信号が積算器に入力されて、積算器でポンプのオン時間が計時される。所定のオン時間が計時されると積算器からパルス発生器にトリガー信号が出力され、各パルス発生器から所定パルス幅Tのシングルパルスが出力される。
【0051】
XOR回路の出力信号はポンプPA,PBの何れか一方の運転信号がオン状態である場合にのみオン状態となり、後段の積算器でオン状態の継続時間が積算される。本実施形態では累積オン時間が第1の所定時間tに達する度に後段のパルス発生器にトリガー信号が出力され、パルス発生器から所定パルス幅Tのシングルパルスが出力される。
【0052】
AND回路の出力信号はポンプPA,PBの双方の運転信号がオン状態である場合、つまり2台のポンプが同時に運転されている場合にのみオン状態となり、後段の積算器でオン状態の継続時間が積算される。累積オン時間が第2の所定時間t/2に達する度に後段のパルス発生器にトリガー信号が出力され、パルス発生器から所定パルス幅Tの計量パルス信号(シングルパルス)が出力される。
【0053】
第1の系列では1台のポンプの運転時間が積算され、第2の系列では2台のポンプの運転時間が積算されるため、第1の系列の積算器による積算時間(第1の所定時間t)の半分が第2の系列の積算器による積算時間(第2の所定時間t/2)に設定されている。
【0054】
監視装置40は、パルス幅Tのシングルパルスを検出する度にパルス数を加算することで、ポンプPA,PBの累積運転時間を把握することができ、例えばパルス数に積算時間tと単位時間当たりのポンプの送水量を乗じることで、積算送水量を算出することができる。
【0055】
信号処理回路23は、さらに各異常状態信号が発生すると其々異なるパルス幅の異常識別パルス信号を生成する異常パルス発生回路52を備え、異常パルス発生回路52の出力信号をOR回路50に入力するように構成されている。
【0056】
異常パルス発生回路52は、監視装置40が計量パルス信号を適切に識別できるように、少なくとも計量パルス信号のパルス幅Tとは異なる値のパルス幅に設定された異常識別パルス信号を生成するように、其々異なるパルス幅のパルス信号を生成するパルス発生回路とAND回路を備えている。
【0057】
異常状態信号がパルス発生回路とAND回路の其々に入力され、パルス発生回路の出力信号がAND回路に入力されている。異常状態信号がオンするとそのタイミングでパルス発生回路から所定パルス幅の繰り返しパルス信号が出力され、異常状態信号がオフするとパルス発生回路はオフする。従って、異常状態信号が継続してオン状態にあるときにのみAND回路から所定パルス幅の繰り返しパルス信号が出力される。
【0058】
本実施形態では、異常状態信号の其々が識別できるように、例えば重要度が高いほど異常識別パルス信号のパルス幅が長く設定されている。即ち、重要度が最も高い異常高水位はパルス幅が18T、デューティ比50%のパルス信号に設定され、次に重要度が高い停電はパルス幅が9T、デューティ比50%のパルス信号に設定され、最後にポンプ故障はパルス幅が3T、デューティ比50%のパルス信号に設定されている。
【0059】
上述した計量パルス信号と異常識別パルス信号の其々がOR回路50に入力され、それらの論理和となる信号がOR回路50から出力される。なお、故障から復帰すると各異常状態信号はオフされ、異常パルス発生回路52からの出力信号はオフされる。
【0060】
図4には、計量パルス発生回路51から出力される計量パルス信号と異常パルス発生回路52から出力される異常識別パルス信号が示されている。監視装置40は、通報装置24を介して受信したパルス信号の立ち上がりからのタイマ2.5T,8,5T,17.5Tのカウント時にパルスのオン状態が維持されているか否かにより、信号の種類を特定することができるようになる。
【0061】
なお、何らかの異常が発生して異常パルス発生回路52から出力される異常識別パルス信号に計量パルス信号が重畳している場合には、計量パルス信号は検出されない。同様に重要度が高い異常に対する異常識別パルス信号に重要度が低い異常に対する異常識別パルス信号が重畳している場合には、重要度が低い異常に対する異常識別パルス信号は検出されない。
【0062】
なお、通報装置24から監視装置40に送信される信号は、
図4に示すような連続的なパルス信号ではなくデジタル変調された信号であり、監視装置40側の通信部41でデジタル復調されることは言うまでもない。
【0063】
図5には、監視装置40に備えた診断部44で実行される信号解析処理の手順が示されている。診断部44は通報装置24から送信されたパルス信号の立ち上がりを検知すると(SA1)、監視タイマを起動させてパルス幅を計測する(SA2)。監視タイマが動作中であれば、ステップSA1に戻る(SA3)。
【0064】
パルス信号が立ち上がった後はパルス信号の立ち下がりを待って(SA13,N)、立ち下がりを検出すると監視タイマを停止する(SA14)。
【0065】
監視タイマ値を読み出して(SA4)、2.5T経過していなければ(SA5、N)、計量パルスが入力されたと判定して、送水量を算出して(SA9)、データ処理部42を介して結果を記憶部DBに記憶する(SA12)。少なくともステップSA9では、直前に異常判定していた場合には、故障が解消されたと判断して正常判定する。
【0066】
監視タイマ値が2.5T経過している場合には(SA5、Y)、監視タイマ値が8.5T経過しているか否か判定し(SA6)、監視タイマ値が8.5T経過していなければ、ポンプ故障と判断して(SA10)、データ処理部42を介して結果を記憶部DBに記憶する(SA12)。
【0067】
監視タイマ値が8.5T経過している場合には(SA6、Y)、監視タイマ値が17.5T経過しているか否か判定し(SA7)、監視タイマ値が17.5T経過していなければ、停電発生と判断して(SA11)、データ処理部42を介して結果を記憶部DBに記憶する(SA12)。
【0068】
監視タイマ値が17.5T経過している場合には(SA7、Y)、異常高水位と判定して、データ処理部42を介して結果を記憶部DBに記憶する(SA12)。
【0069】
[信号中継装置の第2の態様]
図6には、第2の態様の信号中継装置22の回路図が示されている。第1の態様と異なる点は、異常パルス発生回路52を設ける代わりに、複数の異常状態信号を入力するOR回路を備えている。異常状態信号を識別できないのであるが、少なくとも異常状態の発生の有無と正常状態で計量パルスを検出することができる。なお、当該OR回路を後段のOR回路50に統合して一つの多入力1出力のOR回路で構成することも可能である。
【0070】
図7には、第1の態様と同一構成の計量パルス発生回路51の動作が示されている。ポンプPA,PBの運転状態信号から把握できるように、初期にポンプPAとポンプPBとが交互運転された状態から、同時運転される状態に移行している。
【0071】
XOR回路からは、交互運転時に対応するパルス信号が出力され、そのパルス信号に基づいて積算器で時間が積算され、累積オン時間が第1の所定時間tに達する度にパルス発生器から所定パルス幅Tのシングルパルスが出力される。AND回路からは、同時運転時に対応するパルス信号が出力され、そのパルス信号に基づいて積算器で時間が積算され、累積オン時間が第1の所定時間tの半分の所定時間t/2に達する度にパルス発生器から所定パルス幅Tのシングルパルスが出力される。従って、交互運転と同時運転の双方で送水量を正確に算出することができる。
【0072】
[信号中継装置の第3の態様]
図8には、第3の態様の信号中継装置22の回路図が示されている。第1の態様の異常パルス発生回路52を設ける代わりに、複数の異常状態信号を入力するOR回路を備えている点で第2の態様と同一構成である。
【0073】
信号処理回路23は、各ポンプPA,PBに対応して運転状態信号の累積オン時間が所定時間に達する度に所定のパルス幅Tの計量パルス信号を出力する一対の計量パルス発生回路51を備えている。しかし、計量パルス信号が時間的に重複すると、信号処理回路23で複合化処理された一つの出力信号に含まれるパルス信号が、適切に計量パルス信号であると判断できない場合や、何れか一方にみの計量パルス信号が出力されたと判断することになるため、例えば通報装置を介して受信した外部の監視装置側で正確な送水量を算出することができなくなる。
【0074】
そこで、計量パルス発生回路51は、各ポンプPA,PBの計量パルス信号が重複すると、何れか一方の計量パルス信号を遅延させて、重複しないタイミングで出力する遅延処理回路54を備えている。
【0075】
詳述すると、遅延処理回路54は、計量パルス発生回路51から出力されたポンプPA,PBの計量パルス信号を入力する第1AND回路と、第1AND回路の立ち上がりで所定の遅延時間だけオフする第1タイマ回路と、第2タイマ回路を備えている。
【0076】
第1タイマ回路がカウントアップすると、第2タイマ回路によってパルス幅Tの計量パルス信号をダミー信号として出力する。
【0077】
図9には、信号処理回路23に備えた遅延処理回路54の動作が示されている。ポンプPAの計量パルス信号とポンプPBの計量パルス信号が重複すると(
図9中、ハッチングで示している。)、第1タイマ回路からパルス幅Tより長い幅の負論理の遅延パルスが出力され、ポンプPBの計量パルス信号がマスクされる。遅延パルスが立ち上がると第2タイマ回路が作動してパルス幅Tの計量パルス信号に対するダミー信号が出力される。
【0078】
[信号中継装置の第4の態様]
図10には、第4の態様として、ポンプPa,Pbが単独交互運転を行なう場合の信号中継装置22の回路図が示されている。第1の態様の異常パルス発生回路52を設ける代わりに、複数の異常状態信号を入力するOR回路を備えている点で第2及び第3の態様と同一構成である。
【0079】
この例では、ポンプPa,Pbが同時に運転されることがないため、1系統の計量パルス発生回路51で構成することができる。即ち、ポンプPA,PBの運転状態信号が第1OR回路に入力され、第1OR回路の出力信号に基づいて累積オン時間を計数する積算器と、累積オン時間が所定時間tに達すると所定のパルス幅Tのパルス信号を出力するパルス発生器を備えた計量パルス発生回路51が構成されている。
【0080】
図11に示すように、計量パルス発生回路51の出力信号S1と複数の異常状態信号が入力されるOR回路の出力信号S2とがOR回路50に入力され、一つに出力信号S3に複合化された信号が通報装置に出力される。
【0081】
第2から第4の態様では、第1の態様で示した異常パルス発生回路52を設ける代わりに、複数の異常状態信号を入力するOR回路を備えているため以上の種類を特定できないのであるが、一括故障として検知することで回路は簡易になる。なお、各異常状態信号は制御装置21により異常と判定された状態で常時オンされるが、正常に復帰すると自動的にオフされる。
【0082】
例えば、制御装置21が停電検知すると停電異常状態信号がオンされ、停電が解消すると停電異常状態信号はオフされる。なお、停電時に制御装置21を含めて信号中継装置22及び通報装置24が機能するように、制御装置21にはバッテリが設置されている。
【0083】
[信号中継装置の第5の態様]
図12には、第5の態様の信号中継装置22の回路図が示されている。
この例では、信号処理回路23と通報装置24を其々一対備え、各信号処理装置24に複数の状態信号を入力するように構成されている。信号処理回路23は上述した第1から第4の何れの態様の信号処理回路23を採用してもよい。
【0084】
通報装置24を介して受信した外部の監視装置40側で、信号処理回路23と通報装置24の双方の異常を適切に検出することができる。例えば、一方の通報装置24からの送信が検出できない場合には、当該一方の通信装置24が故障しており、双方の通信装置24からの送信が検出できない場合には停電やバッテリの放電異常等が発生していると検出でき、双方からの送信が検出され、送信された状態信号が異なる場合には何れかの信号処理回路23が故障していると検出できるようになる。
【0085】
上述した第1から第4の態様の信号処理回路23の具体的構成を組み合わせることも可能である。例えば、第1の態様の信号処理回路23の異常パルス発生回路52を第2から第4の態様の信号処理回路23に組み込んでもよい。
【0086】
上述した実施形態では、マンホール装置にポンプが2台設置された例を説明したが、マンホール装置にポンプが1台設置された態様にも本発明を適用することができる。この場合、1台のポンプに対する運転状態信号の累積オン時間を計時する積算器と、積算器による積算値が所定時間に達する度に所定のパルス幅の計量パルス信号を出力するパルス発生器を備えた計量パルス発生回路を構成すればよい。
【0087】
上述した実施形態は何れも本発明の一例であり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
10:マンホールポンプ設備
PA,PB:ポンプ
18,19:水位計
21:制御装置
22:信号集計装置
23:信号処理回路(信号集計装置)
24:通報装置
30:携帯端末
40:監視装置