(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】アミン吸収フィルム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/28 20060101AFI20240112BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20240112BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240112BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240112BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240112BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240112BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
B01J20/10 D
B01J20/18 E
B01J20/20 F
B01D53/04
B32B27/00 B
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020089765
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗央里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】厚地 善行
(72)【発明者】
【氏名】角田 香織
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030070(JP,A)
【文献】特開2017-012975(JP,A)
【文献】特開2015-006918(JP,A)
【文献】特開平05-229050(JP,A)
【文献】特開2019-172280(JP,A)
【文献】特開2017-165059(JP,A)
【文献】特開2014-084123(JP,A)
【文献】特開2011-201581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0029456(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
B01D53/02-53/12
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア性基材層、
アミン吸収層、及びアミン選択透過層を有し、
前記
アミン吸収層が、熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散している
アミン吸収剤を含有しており
、
前記アミン吸収剤が、疎水性ゼオライト、シリカゲル、メソポーラス物質、活性炭、植物殻粉体からなる群より選択される少なくとも一種の物理吸収剤であり、かつ
前記アミン選択透過層が、ポリエステル系樹脂で構成されている、
アミン吸収フィルム。
【請求項2】
前記アミン選択透過層が、ヒートシール性ポリエステル系樹脂で構成されている、請求項1に記載の
アミン吸収フィルム。
【請求項3】
前記
アミン吸収層の片側又は両側に積層されているスキン層を更に有する、請求項1
又は2に記載の
アミン吸収フィルム。
【請求項4】
前記アミン吸収剤の含有率が、前記アミン吸収層の質量全体を基準として、15質量%以上50質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアミン吸収フィルム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の
アミン吸収フィルムを1枚又は複数枚具備しており、かつ
1枚又は複数枚の前記
アミン吸収フィルムの前記アミン選択透過層の一部がこの
アミン吸収フィルムの他の部分又は他のフィルムと接着され、前記
アミン吸収フィルムの前記バリア性基材層が外側、前記アミン選択透過層が内側に位置するようにして袋状にされている、
包装袋。
【請求項6】
前記接着が、ヒートシールによってなされている、請求項
5に記載の包装袋。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の包装袋、及び
前記包装袋に収納されている、内容物
を有する、内容物入り包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸収フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
香気成分を含有している内容物、例えば医薬品をポリエチレン等の一般的な包装体で保存すると、香気成分が包装体に吸着されてしまい、使用時に香気が残存していない場合がある。香気成分はその内容物の薬効成分に相当する場合があり、内容物の効力低減を防ぐ目的として、香気成分を吸着しにくい包装体が提案されている。
【0003】
特許文献1では、エチレン-ビニルアルコール共重合体:70重量%以上、90重量%以下と、エチレン-酢酸ビニル共重合体:10重量%以上、30重量%以下とを含み、溶融混練してなる樹脂組成物であって、該樹脂組成物を成膜してなる2枚のフィルムをヒートシールしたときのシール強度が所与の値以上である、樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、このような内容物自体が包装体内で悪臭を放ち、開封時にユーザーに不快感を与える場合がある。そこで悪臭成分を吸収する包装体が提案されている。
【0005】
特許文献2では、PTP(プレス・スルー・パッケージ)又はブリスターパックとしての成形時に最外層となる基材層と、前記基材層に接着層を介して積層され、PTP又はブリスターパックとしての成形時に内容物に面して液体及び気体の少なくとも一方を吸収する吸収層とを含む、PTP又はブリスターパック用積層体であって、前記吸収層は、外スキン層と中間層と内スキン層をこの順で積層した構成を有し、前記接着層を介して前記外スキン層が前記基材層に接着され、前記外スキン層はポリエチレン樹脂からなり、前記中間層は、ポリエチレン樹脂及び吸収剤の混合物からなり、前記内スキン層は、所与のポリエチレン樹脂からなるブレンド樹脂ブレンド樹脂からなるPTP又はブリスターパック用積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-80039号公報
【文献】国際公開第2013/140821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
香気成分の吸着を抑制しつつ、一般的に好ましくない臭気成分であるアミンを吸収できる、ガス吸収フィルムを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉バリア性基材層、ガス吸収層、及びアミン選択透過層を有し、
前記ガス吸収層が、熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散しているガス吸収剤を含有しており、かつ
前記アミン選択透過層が、ポリエステル系樹脂で構成されている、
ガス吸収フィルム。
〈態様2〉前記アミン選択透過層が、ヒートシール性ポリエステル系樹脂で構成されている、態様1に記載のガス吸収フィルム。
〈態様3〉前記ガス吸収剤が、物理吸収剤である、態様1又は2に記載のガス吸収フィルム。
〈態様4〉前記物理吸収剤が、疎水性ゼオライト、シリカゲル、メソポーラス物質、活性炭、植物殻粉体からなる群より選択される少なくとも一種である、態様3に記載のガス吸収フィルム。
〈態様5〉前記ガス吸収層の片側又は両側に積層されているスキン層を更に有する、態様1~4のいずれか一項に記載のガス吸収フィルム。
〈態様6〉態様1~5のいずれか一項に記載のガス吸収フィルムを1枚又は複数枚具備しており、かつ
1枚又は複数枚の前記ガス吸収フィルムの前記アミン選択透過層の一部がこのガス吸収フィルムの他の部分又は他のフィルムと接着され、前記ガス吸収フィルムの前記バリア性基材層が外側、前記アミン選択透過層が内側に位置するようにして袋状にされている、
包装袋。
〈態様7〉前記接着が、ヒートシールによってなされている、態様6に記載の包装袋。
〈態様8〉態様6又は7に記載の包装袋、及び
前記包装袋に収納されている、内容物
を有する、内容物入り包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、香気成分の吸着を抑制しつつ、一般的に好ましくない臭気成分であるアミンを吸収できる、ガス吸収フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のガス吸収フィルムの層構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《ガス吸収フィルム》
図1(a)に示すように、本発明のガス吸収フィルム100は、
バリア性基材層110、ガス吸収層120、及びアミン選択透過層130を有し、
ガス吸収層120が、熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散しているガス吸収剤を含有しており、かつ
アミン選択透過層130が、ポリエステル系樹脂で構成されている。
【0012】
単純に、非吸着性を有するフィルムと、ガス吸収性を有するフィルムとを互いに積層又は対向させても、香気成分の吸着を抑制しつつ、アミンを選択的に吸収するフィルムを得ることは、容易ではない。
【0013】
より具体的には、非吸着性を有するフィルムとガス吸収性を有するフィルムを積層させた場合、内容物に接する層の機能しか発現できない。非吸着性を有するフィルムを最内層とした場合、非吸着性を有するフィルムは、ガスバリア性も高い傾向があるため、アミンの透過が制限されてガス吸収層に届かず、十分に吸収できないことがあった。一方で、ガス吸収性を有するフィルムを最内層とした場合、非吸着性がないため、この層が香気成分を吸着してしまうことがあった。
【0014】
これに対し、本発明者らは、上記の構成により、香気成分の吸着を抑制しつつ、アミンを選択的に吸収することができることを見出した。理論に拘束されることを望まないが、これは、ポリエステル系樹脂が香気成分に対してはバリア層として機能しつつ、アミンを選択的に透過することによると考えられる。
【0015】
ここで、香気成分としては、例えばl-メントール、フェネチルアルコール等のアルコール系香気成分、リモネン等のオレフィン系香気成分、酢酸エチル、エチルシンナマート等のエステル系香気成分等が挙げられる。
【0016】
また、アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン等の第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン等が挙げられる。
【0017】
図1(b)に示すように、本発明のガス吸収フィルム100は、ガス吸収層120の片側又は両側に積層されているスキン層140を更に有していてもよい。
【0018】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0019】
〈バリア性基材層〉
バリア性基材層は、バリア性を有する基材である。バリア性基材層は、単層のバリア層であってもよく、又はバリア層及び基材樹脂層を有する層であってもよい。この場合、バリア層と基材樹脂層との間には、接着層が存在していてもよい。
【0020】
(バリア層)
バリア層としては、外部からの水分や有機ガス及び無機ガスがガス吸収層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかるバリア層としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等の単体金属箔層、ステンレス箔等の合金箔層、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。
【0021】
バリア層として無機物蒸着膜を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、包装袋として用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0022】
バリア層として金属箔層、バリア性樹脂層又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、包装袋として用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0023】
(基材樹脂層)
基材樹脂層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。この基材樹脂層は、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。また、この基材樹脂層は、バリア層の片面又は両面に存在していても良い。この基材樹脂層により、バリア層を保護することができる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0025】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマー、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0026】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0028】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0029】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0030】
基材樹脂層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、バリア層を良好に保護する観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、又は45μm以下であることが、包装袋として用いた際の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0031】
〈ガス吸収層〉
ガス吸収層は、熱可塑性樹脂、及び前記熱可塑性樹脂中に分散しているガス吸収剤を含有している。
【0032】
ガス吸収層は、ガス吸収層を構成する樹脂組成物を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールコニカルミキサー等のバッチ式混練機や、2軸混練機等の連続混練機等を用いて混錬し、次いで混練した樹脂を、インフレーション法、Tダイ法等の押出成形法によりフィルム状に成型することにより製造することができる。ガス吸収層の片側又は両側にスキン層が存在する場合には、多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、製膜と共にスキン層との積層をしてもよい。
【0033】
ガス吸収層の厚さは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であることが、ガス吸収性の観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であることが、製膜性の観点から好ましい。
【0034】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば基材樹脂層に関して挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが、成形性及びガス吸収性を両立する観点から好ましい。
【0035】
(ガス吸収剤)
ガス吸収剤としては、物理吸収剤、及び化学吸収剤を用いることができる。中でも、物理吸収剤を用いることが、アミンを優先的に吸着し、その結果、吸収効率を高める観点から好ましい。
【0036】
物理吸収剤としては、例えば疎水性ゼオライト、シリカゲル、疎水処理したシリカゲル、メソポーラス物質、活性炭、植物殻粉体等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0037】
疎水性ゼオライトとしては、例えばベータ型、ZSM-5型、フェリエナイト型、モルデナイト型、L型、又はY型のゼオライトを使用することができる。また、ZSM-5型ゼオライトの類縁体であるZSM-11、シリカライト、シリカライト-2、ペンタシル型メタロケイ酸塩を使用することもできる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0038】
メソポーラス物質は、細孔径がミクロ孔(2nm以下)とマクロ孔(50nm以上)の中間の細孔径を有する物質であり、たとえばメソポーラスシリカなどが挙げられる。植物殻粉体としては、多孔質な落花生殻を細かく粉砕したものを用いることができる。これらの物理吸着剤は、単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0039】
化学吸収剤としては、鉄系酸素吸収剤、ハロゲン化金属、酸化金属、硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜ニチオン酸塩等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0040】
鉄系酸素吸収剤としては、鉄粉(例えば、還元鉄粉、噴霧鉄粉、活性鉄粉等)、酸化第一鉄、第一鉄塩等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0041】
ハロゲン化金属としては、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0042】
酸化金属としては、例えば酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸素欠損を有する酸化セリウム、酸素欠損を有する酸化チタン等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、又は混合物として用いてもよい。
【0043】
ガス吸収剤の含有率は、ガス吸収層の質量全体を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、また50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0044】
〈アミン選択透過層〉
アミン選択透過層は、ポリエステル系樹脂で構成されている層である。これにより、アミンを選択的に透過させつつ、香気成分の透過を抑制することができる。
【0045】
ポリエステル系樹脂としては、上記のポリエステル系樹脂を用いることができ、中でもヒートシール性ポリエステル系樹脂を用いることが、別途の接着層を必要としない観点から好ましい。
【0046】
ここで、本発明において、「ヒートシール性ポリエステル系樹脂」は、例えば、互いに接着させたときに、JIS K 6854-3に準拠するヒートシール強さが、5N/15mm以上であるポリエステル樹脂であってよい。このヒートシール強さは、7N/15mm以上,10N/15mm以上、12N/15mm以上、14N/15mm以上、又は15N/15mm以上であることができ、また100N/15mm以下、80N/15mm以下、60N/15mm以下、50N/15mm以下、40N/15mm以下、30N/15mm以下、又は25N/15mm以下であることができる。
【0047】
かかるヒートシール性ポリエステル系樹脂としては、ヒートシール可能であるものとして商業的に入手可能なポリエステル系樹脂又はこの樹脂で作られたフィルムを用いることができる。また、ヒートシール性ポリエステル系樹脂としては、例えば非晶成分を有するポリエステル系樹脂、例えば「非晶性ポリエステル」、「共重合ポリエステル」として商業的に入手可能なポリエステル等を用いることができる。
【0048】
非晶性ポリエステルとしては、例えば非晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。かかる非晶性PETとしては、例えばタマポリ株式会社から入手可能なハイトロンPG等を用いることができる。
【0049】
共重合ポリエステルとしては、例えば東洋紡株式会社から入手可能なオリエステル(登録商標)等を用いることができる。
【0050】
アミン選択透過層の厚さは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であることが、生産時の取り扱いの観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であることが、アミン透過度の観点から好ましい。
【0051】
〈スキン層〉
スキン層は、スキン層用樹脂を含有しており、かつガス吸収層の片側又は両側に積層されていることができる層である。また、スキン層は、ガス吸収層に融着されていてもよい。
【0052】
スキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。スキン層が複数存在している場合、各々のスキン層の厚さは、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
(スキン層:スキン層用樹脂)
スキン層用樹脂としては、ガス吸収層に関して挙げた熱可塑性樹脂を、単独で又は混合させて用いることができ、中でもポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン系樹脂を用いることが、加工性等の観点から好ましい。ガス吸収層の両側にスキン層が存在している場合、それぞれのスキン層を構成するスキン層用樹脂は、同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
〈他の層〉
本発明のガス吸収フィルムは、随意の他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば接着層を用いることができる。接着層としては、例えばドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤等を用いることができる。
【0055】
《包装袋》
本発明の包装袋は、
上記のガス吸収フィルムを1枚又は複数枚具備しており、かつ
1枚又は複数枚のガス吸収フィルムのアミン選択透過層の一部がこのガス吸収フィルムの他の部分又は他のフィルムと接着され、ガス吸収フィルムのバリア性基材層が外側、アミン選択透過層が内側に位置するようにして袋状にされている。
【0056】
接着は、接着層を介してされていてもよく、又はヒートシールによってされていてもよい。特に、アミン選択透過層がヒートシール層として用いられる場合には、接着は、ヒートシールによってされている。
【0057】
他のフィルムは、他のガス吸収フィルムであってもよく、又は上記のガス吸収フィルム以外の他のフィルムであってもよい。
【0058】
本発明の包装袋は、上記の包装袋及びこの包装袋に収納されている内容物を有する、内容物入り包装袋であることができる。
【0059】
〈内容物〉
内容物は、包装袋に収納されている内容物である。内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、医療器具、医療機器、電子部材、精密機械、記録材料等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬等を含む。
【実施例】
【0060】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0061】
《ガス吸収フィルムの作製》
〈実施例1〉
多層製膜機にて、スキン層、ガス吸収層、及びスキン層がこの順で配置されるようにして、空冷方式多層インフレーション法による共押出成形により、2種3層のフィルムを作製した。スキン層としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、エボリューSP2520、プライムポリマー社)を用い、ガス吸収層としては、低密度ポリエチレン(LDPE、ペトロセン202、東ソー社)80質量部、及びガス吸収剤としての疎水性ゼオライト(モレキュラーシーブABSCENTS3000、ユニオン昭和社)20質量部を溶融混練して作製した樹脂組成物を用いた。各層の厚さは、スキン層10μm、ガス吸収層30μm、スキン層10μmとした。
【0062】
作製したフィルムの一方のスキン層側に、PET(12μm)//AL(9μm)の基材(「//」はドライラミネート接着剤を示す)のAL側をドライラミネートした。ドライラミネートは、接着主剤として三井化学のタケラックA-525Sを9重量部、硬化剤としてタケネートA-50を1重量部で混合し、これを酢酸エチルで希釈して用いることにより行った。
【0063】
作製したフィルムのもう一方のスキン層側に、アミン選択透過層としての共重合ポリエステル(オリエステル(登録商標)SS DE046、東洋紡社、30μm)を、上記と同様の方法でドライラミネートして、実施例1のガス吸収フィルムを作製した。
【0064】
〈実施例2~3及び比較例1~4〉
ガス吸収層及びアミン選択透過層を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~3及び比較例1~4のガス吸収フィルムを作製した。ここで、表1で言及している各種のガス吸収層及びアミン選択透過層としては、以下のものを用いた:
PE:ガス吸収剤を含有していないLDPE(ペトロセン202、東ソー社)
結晶性ポリエステル:E5100 、東洋紡社、12μm
非晶性ポリエステル:ハイトロンPG、タマポリ社、30μm
環状オレフィン:COC COXEC TCS-1、倉敷紡績社、25μm
EVOH:ノンキャッチ(登録商標)、共同印刷社、50μm
【0065】
《評価》
〈ヒートシール性〉
作製した各ガス吸収フィルムを15mm幅に切り出し、アミン選択透過層同士を対向させて、150℃、時間0.5秒、圧力0.2MPaの条件でヒートシールした。JIS K 6854-3に準拠して、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minの条件でこれをT型剥離させ、シール強度(ヒートシール強さ)を測定した。
【0066】
〈香気成分の保香性〉
10cm×10cmのサイズにカットした各ガス吸収フィルムのアミン選択透過層側を、40℃環境下で飽和l-メントール蒸気に一週間曝露後、吸着したl-メントールをメチルエチルケトンで抽出し、抽出液中のl-メントール量をガスクロマトグラフィーで定量し、単位面積当たりのl-メントール吸着量を算出した。
【0067】
また、l-メントールの代わりにリモネンに置き換えて、同様の試験を行った。
【0068】
また、l-メントールの代わりに酢酸エチルを用い、香気成分の保香性評価を以下の手順で行った。各ガス吸収フィルムを10cm×10cmのサイズにカットして3方シール袋を作製し、酢酸エチルを10μL滴下したろ紙を封入し、内容積が約86mLの四面体となるよう残り一辺をシールして密封した。これを、40℃の恒温槽内に7日間保管して開封し、3方シール袋内部に香りが残っているか否かを、3名で官能評価した。官能評価では、香りが十分に残存しているものを5点、香りが十分に残存していないものを1点として5段階評価し、合計点で評価した。合計点は15点満点であり、点数が高いことが好ましい。
【0069】
〈アミン除去性〉
各ガス吸収フィルムを10cm×10cmのサイズにカットして3方シール袋を作製し、トリメチルアミンを10μL滴下したろ紙を封入し、内容積が約86mLの四面体となるよう残り一辺をシールして密封した。これを、40℃の恒温槽内に7日間保管して開封し、臭気の低減効果を3名で官能評価した。官能評価では、臭気が強いものを5点、弱いものを1点として5段階評価し、合計点で評価した。合計点は15点満点であり、点数が低いことが好ましい。
【0070】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1から、バリア性基材層、ガス吸収層、及びアミン選択透過層を有し、かつアミン選択透過層が、ポリエステル系樹脂で構成されている実施例1~3のガス吸収フィルムは、香気成分の保香性及びアミン除去性が、いずれも良好であったことが理解できよう。
【0073】
中でも、アミン選択透過層がそれぞれ共重合ポリエステル及び非晶性ポリエステルで構成されている実施例1及び3は、ヒートシール性も良好であることが理解できよう。
【0074】
これに対し、ガス吸収層を最内層として設けた比較例2は、実施例と比較して、アミン除去性が良好であったものの、香気成分の保香性が極めて劣っていたことが理解できよう。
【0075】
また、ポリエステル系樹脂の代わりに環状オレフィンを用いた比較例3は、実施例と比較して、l-メントールの吸着が抑制できておらず、かつアミン除去性が劣っていたことが理解できよう。
【0076】
また、ポリエステル系樹脂の代わりにEVOHを用いた比較例4は、実施例と比較して、香気成分の保香性は同等であったものの、アミン除去性が極めて劣っていたことが理解できよう。
【符号の説明】
【0077】
100 ガス吸収フィルム
110 バリア性基材層
120 ガス吸収層
130 アミン選択透過層
140 スキン層