IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-生産分析装置 図1
  • 特許-生産分析装置 図2
  • 特許-生産分析装置 図3
  • 特許-生産分析装置 図4
  • 特許-生産分析装置 図5
  • 特許-生産分析装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】生産分析装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240112BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240112BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020102198
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196801
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 規生
(72)【発明者】
【氏名】加納 孝一
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257296(JP,A)
【文献】特開2018-156232(JP,A)
【文献】特開2020-021451(JP,A)
【文献】特開2002-132324(JP,A)
【文献】特開2018-136823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 10/0639
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、
複数の前記設備の動作を検出する、前記設備に備えられた運転検出器と、
前記運転検出器の信号をもとに、各々の前記設備について、運転中であるか停止中であるかを判断して運転台数を得る演算装置と、
各々の前記設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置と、
前記運転台数を前記時刻情報とともに表示する表示装置と、
前記作業者の作業を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された録画情報を前記時刻情報とともに記録する第2の記録装置と、
を有しており、
前記生産分析装置は、所定の運転台数である基準運転台数をあらかじめ記憶しており、
且つ前記生産分析装置は、前記運転台数が、前記基準運転台数以下のときに、録画情報を前記第2の記録装置に蓄積し、蓄積した前記録画情報の少なくとも一部を抽出する抽出処理部を有しており、
前記抽出処理部は、
前記運転台数が、前記基準運転台数以下となったときに、前記カメラに録画信号を送出することにより前記第2の記録装置に録画情報の記録を開始し、前記運転台数が前記基準運転台数以下の期間に亘って録画情報の記録を継続し、前記運転台数が、前記基準運転台数よりも多い状態に遷移したとき、録画を中断する停止の録画信号を送出し、
さらに、前記運転台数が、前記基準運転台数から前記基準運転台数よりも多い状態に遷移した場合に、前記運転台数が前記基準運転台数に到達した時刻から前記基準運転台数よりも多い状態に移行した時刻までの録画情報を除外して前記録画情報を抽出することを特徴とする生産分析装置。
【請求項2】
作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、
複数の前記設備の動作を検出する、前記設備に備えられた運転検出器と、
前記運転検出器の信号をもとに、各々の前記設備について、運転中であるか停止中であるかを判断して運転台数を得る演算装置と、
各々の前記設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置と、
前記運転台数を前記時刻情報とともに表示する表示装置と、
前記作業者の作業を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された録画情報を前記時刻情報とともに記録する第2の記録装置とを有しており、
前記生産分析装置は、所定の運転台数である基準運転台数をあらかじめ記憶しており、
且つ前記生産分析装置は、前記運転台数が、前記基準運転台数未満となっている期間、及び前記基準運転台数未満に遷移した時刻の直前の一定期間の録画情報を抽出する抽出処理部を有しており、
前記生産分析装置は、常に前記カメラからの録画情報を前記第2の記録装置に記録しており
前記抽出処理部は、前記運転台数が、前記基準運転台数未満となっている期間及び前記基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間に録画した録画情報を維持し、それ以外の期間に録画した録画情報を前記第2の記録装置に記録した前記録画情報から除外することによって、前記録画情報を抽出することを特徴とする生産分析装置。
【請求項3】
前記第2の記録装置は、前記第1の記録装置に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生産分析装置。
【請求項4】
前記運転検出器は、前記設備に備えられた動作表示灯の点灯を検出するセンサーである
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の生産分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の設備の運転状態を解析する生産分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物を生産する生産現場において、生産設備と作業者を適切に配置し、生産効率を高めることは、製造原価を下げ、経営を安定化させることに直結する。
【0003】
物作りは、少品種大量生産、多品種少量生産など製品の性格に応じて、様々な生産工程が組まれる。生産ライン上の各作業ステーションに作業を割り付けておき、品物がラインを移動するにつれて加工が進んでいく方式であるライン生産方式は、専用工程を経済的に設置することができ、同一製品の需要や注文が、ある期間にわたって連続してある少品種大量生産に適している。
【0004】
このような工員すなわち作業者と新旧設備が混在するラインにおいて、新型設備の運転状態と工員の動作に基づき、ラインサイクルタイムを簡便に推定し、生産現場において、生産変動と金銭的指標の関係を時系列でわかりやすく表示するために、特許文献1には、時系列の運転状態を生成することができるとともにボトルネックとなっている設備を特定し、ボトルネックとなっているサイクルを特定し、ボトルネックとなっているサイクルにおいて工員が設備に対して事前作業をしていた時間と、設備間を移動していた時間との和である巡回時間を算出し、特定した設備に対して工員が事前作業をしていた時間と設備が稼働していた時間との和である律速時間を算出し、巡回時間及び律速時間に基づいて、ラインのラインサイクルタイムの上限及び下限を算出する技術が記載されている。また、製品の産出に係る収支に関し、固定費及び変動費を示す図形を直列的に並べ座標平面の負の象限に表示し、固定費を示す図形を変動費とは区別される態様で表示し、利益を示す図形を利益の符号に応じて座標平面の正又は負の象限に時系列で表示する生産実績表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-102544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、一つのラインを構成する複数の設備を前提としており、製品はラインを構成する設備を順に流れる。このため、熟練作業者と経験の浅い作業者との作業効率の差異は小さい。
【0007】
一方、多品種少量生産においては、1人の作業者が機能の異なる複数の設備を操作し、中間製品が複数の設備を経由して生産されるセル生産方式や、1人の作業者が同一の機能を有する複数の設備を操作し、取り扱う中間製品が前記複数の設備のうちいずれか1つを経由して生産される並列的工程での生産方式が効率的である。多品種少量生産においては、様々な仕様の中間製品が流れてくるため、作業者の経験や勘に基づいて様々な工夫が行われていた。
【0008】
このため、熟練作業者と、経験の浅い作業者との間では、作業効率が大きく異なり、改善が望まれていた。しかしながら、作業を録画しての解析には実際の作業期間の何倍もの時間がかかり効率的ではなかった。
【0009】
本発明では、前記課題を鑑み、作業者が複数の設備を運転し、一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、作業者ごとの作業効率を効率よく正確に評価する生産分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明の生産分析装置は、
(1)作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、
複数の前記設備の動作を検出する、前記設備に備えられた運転検出器と、
前記運転検出器の信号をもとに、各々の前記設備について、運転中であるか停止中であるかを判断して運転台数を得る演算装置と、
各々の前記設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置と、
前記運転台数を前記時刻情報とともに表示する表示装置と、
前記作業者の作業を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された録画情報を前記時刻情報とともに記録する第2の記録装置とを有する。
生産分析装置は、所定の運転台数である基準運転台数をあらかじめ記憶しており、
且つ生産分析装置は、前記運転台数が、前記基準運転台数以下のときに、録画情報を前記第2の記録装置に蓄積し、蓄積した前記録画情報の少なくとも一部を抽出する抽出処理部を有する。
生産分析装置の前記抽出処理部は、
前記運転台数が、前記基準運転台数以下となったときに、前記カメラに録画信号を送出することにより前記第2の記録装置に録画情報の記録を開始し、前記運転台数が前記基準運転台数以下の期間に亘って録画情報の記録を継続し、前記運転台数が、前記基準運転台数よりも多い状態に遷移したとき、録画を中断する停止の録画信号を送出し、
さらに、前記運転台数が、前記基準運転台数から前記基準運転台数よりも多い状態に遷移した場合に、前記運転台数が前記基準運転台数に到達した時刻から前記基準運転台数よりも多い状態に移行した時刻までの録画情報を除外して前記録画情報を抽出することを特徴とする。
【0011】
また、前記課題を解決するための本発明の別なる生産分析装置は、
(2)作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、
複数の前記設備の動作を検出する、前記設備に備えられた運転検出器と、
前記運転検出器の信号をもとに、各々の前記設備について、運転中であるか停止中であるかを判断して運転台数を得る演算装置と、
各々の前記設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置と、
前記運転台数を前記時刻情報とともに表示する表示装置と、
前記作業者の作業を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された録画情報を前記時刻情報とともに記録する第2の記録装置とを有する。
生産分析装置は、所定の運転台数である基準運転台数をあらかじめ記憶しており、
且つ生産分析装置は、前記運転台数が、前記基準運転台数未満となっている期間、及び前記基準運転台数未満に遷移した時刻の直前の一定期間の録画情報を抽出する抽出処理部を有する。
生産分析装置は、常に前記カメラからの録画情報を前記第2の記録装置に記録しており、前記抽出処理部は、前記運転台数が、前記基準運転台数未満となっている期間及び前記基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間に録画した録画情報を維持し、それ以外の期間に録画した録画情報を前記第2の記録装置に記録した前記録画情報から除外することによって、前記録画情報を抽出する。
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【0017】
(削除)
【0018】
(3)前記第2の記録装置は、前記第1の記録装置に含まれている。
【0019】
(4)前記運転検出器は、前記設備に備えられた動作表示灯の点灯を検出するセンサーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、従来よりも、作業者ごとの作業効率を効率よく評価する生産分析装置が提供される。本発明の生産分析装置を使用することによって、作業者による作業上の課題を特定することが従来よりも容易となり、その結果、作業効率の改善を迅速に行うことができる。結果として、設備稼働率の向上、労働生産性の向上に寄与させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る設備と生産分析装置の構成例を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明に係る生産分析装置が記録した運転台数と、設備ごとの作業者の作業内容のタイムチャートの一例である。
図3図3は、本発明の第一実施形態において、運転台数が基準運転台数未満のときに録画情報を抽出する場合の、運転検出器から演算装置を介して記録装置に録画情報が記録されるまでの処理を示したタイムチャートである。
図4図4は、本発明の第二実施形態において、運転台数が基準運転台数以下のときに録画情報を第2の記録装置に蓄積し、蓄積した録画情報の少なくとも一部を抽出する処理を示したタイムチャートである。
図5図5は、本発明の第三実施形態において、基準運転台数未満となっている期間と、基準運転台数未満となる期間よりも一定時間前からの録画情報を抽出する場合の、運転検出器から演算装置を介して記録装置に録画情報が記録されるまでの処理を示したタイムチャートである。
図6図6(a)および図6(b)は、本発明の生産分析装置における演算装置と記録装置の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の生産分析装置は、作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程を分析する生産分析装置であって、
複数の設備の動作を検出する、設備に備えられた運転検出器と、
運転検出器の信号をもとに、各々の設備について、運転中であるか停止中であるかを判断して運転台数を得る演算装置と、
各々の設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置と、
運転台数を時刻情報とともに表示する表示装置と、からなる。
【0023】
本発明の生産分析装置によれば、複数台の設備が同時に停止し、1台以上の設備が、作業者の前段取り待ちあるいは後段取り待ちの状態となる設備干渉を容易に識別することができる。ここで言う設備干渉とは、作業者の人数を超える設備が同時に停止している状況のことをいい、例えば作業者が1名であれば2台以上の設備が同時に停止している状況である。作業者の人数を超える設備が停止している時間帯を把握することにより、作業効率の悪い時間帯のみを選択的に解析することができ、解析効率を高めることができる。
【0024】
本発明において、作業者によって運転される複数の設備が一単位ずつ中間製品を加工する工程とは、例えば機械加工、プレス加工、組み立て、調理、熱処理、焼き入れ、マーキングなど、中間製品である対象物を手作業でセットし(前段取り)、装置が自動で加工を行った後、手作業で取り外す(後段取り)操作を繰り返す工程を対象とする。
【0025】
このような加工の工程において、休憩時間などを除いて設備が運転可能な状態である負荷時間は、前段取り、後段取りなどの停止時間と、実際に加工している稼働時間に分けられる。そして、負荷時間のうち稼働時間の比率が、時間稼働率として定義される。
前段取り、後段取りなどの設備の停止時間以外は、設備が自動で中間製品を加工するので、設備が同時に複数停止しないように時間配分を調整することによって、時間稼働率を高めることができる。
【0026】
本発明においては、単一の設備のみならず、複数の中間製品の加工を同時に行う工程において、前段取り、後段取りなどの作業の効率化を図るための作業分析によって、複数の設備の動作を検出し、設備の運転台数をもとに作業解析する時間帯を特定する。
【0027】
本発明の生産分析装置は、さらに、作業者の作業を撮影するカメラと、カメラで撮影された録画情報と時刻情報とを記録する第2の記録装置とを有することが望ましい。
本発明の生産分析装置によれば、録画情報と時刻情報が第2の記録装置に記録されているので、運転台数が少ない時間帯のみを作業解析することによって効率よく作業者の作業効率を改善に結び付けることができる。ここでいう時刻情報とは、日本標準時を用いた時刻情報を用いることができる。また、設備の運転開始時などを基準とした相対的な時刻情報を用いることもできる。
【0028】
本発明の生産分析装置は、所定の運転台数である基準運転台数をあらかじめ記憶している。
【0029】
基準運転台数とは、設備の全台数から当該工程の作業者の人数を引いた台数に設定することが望ましい。たとえば、3台の設備を1人で運転する多台持ちの場合、基準運転台数は、2台となる。抽出処理部は、設定された基準運転台数に基づいて、運転台数が基準運転台数未満であるとき、すなわち運転台数が1台以下の時の録画情報を抽出する処理を行うことができる。3台の装置のうち停止している1台は、作業者の作業によって停止している、必要な停止時間とみなすことができる。他の1台は作業の待ち時間となるので、作業解析の対象ととらえることができる。
【0030】
好適な一実施形態において、生産分析装置は、運転台数が基準運転台数未満となっているときに、カメラに録画信号を送出することにより録画情報を抽出する処理を行う、抽出処理部を有することが望ましい。
【0031】
本実施形態の生産分析装置によれば、解析に必要な時間帯のみ記録されるのでさらに効率よく解析することができる。
【0032】
好適な他の実施形態において、生産分析装置は、運転台数が、前記基準運転台数以下のときに、録画情報を前記第2の記録装置に蓄積し、蓄積した前記録画情報の少なくとも一部を抽出する抽出処理部を備えていることが好ましい。録画情報を記録する期間としては、運転台数が基準運転台数以下となったときを開始時刻とし、運転台数が前記基準運転台数以下の期間に亘って記録を継続しており、運転台数が基準運転台数よりも多い状態に遷移したときを、録画を中断する時刻とする。さらに、運転台数が、基準運転台数から基準運転台数よりも多い状態に遷移した場合には、運転台数が基準運転台数に到達した時刻から基準運転台数よりも多い状態に移行した時刻までの録画情報を除外して録画情報を抽出することが好ましい。
【0033】
設備を休止させて作業待ちとなるのは、多くの場合、その状態に至る前にも原因がある。そこで、作業解析をするにあたり、設備が休止する前の期間も含めて、作業解析の対象とすることが望ましい。このため、抽出処理部は、基準運転台数で運転している期間も含めて、継続して録画情報を蓄積させ、作業待ちが発生している間、すなわち、基準運転台数未満の期間に亘って継続して録画を行い、運転台数が基準運転台数よりも多い状態に遷移したことで、作業待ちが解消したと判断して録画を停止することにより、効率よく作業解析を行うことができる。
【0034】
これに加えて抽出処理部は、運転台数が、基準運転台数から基準運転台数よりも多い状態に遷移した場合、言い換えると、運転台数が基準運転台数を下回ることなく基準より多い台数まで稼働した場合には、基準運転台数に到達してから基準運転台数よりも多い状態で稼働した期間の録画情報を抽出しない決定をする。基準運転台数で運転している期間には、作業待ちの原因がある期間が含まれるが、運転台数が基準運転台数を下回ることなく運転できた場合には、作業解析の対象となる事象が含まれない可能性が高いためである。
【0035】
具体的には、生産分析装置の抽出処理部は、運転台数が基準運転台数以下のときにカメラに録画信号を送出することにより、第2の記録装置に録画情報の記録を開始する。そして、基準運転台数以下の期間に亘って記録を継続し、運転台数が基準運転台数よりも多い状態に遷移したとき、録画を中断する停止の録画信号を送出する。そして、記録情報の中から、基準運転台数に到達してから基準運転台数を下回ることなくより多い状態で稼働した期間の録画情報を抽出対象から除外すると決定する。このような方法を採ることによって、カメラに対して明確な録画の指示を録画信号によって与えることができる。また、運転台数が基準運転台数からより多い状態に遷移したとき、録画を中断する停止の録画信号を送出することによって、一旦録画情報を切り分けることができる。さらに、基準運転台数を下回ることがなかった期間の録画情報が不要になったとき、容易に不要な録画情報を除外することができる。
【0036】
本実施形態において、不要な録画情報を除外するとは、時刻情報と録画情報のいずれか一方若しくは両方に単にフラグを立てるのみであってもよい。あるいは、実際にデータを削除してもよく、識別さえできればその方法は問わない。
【0037】
好適な、更なる実施形態として、録画を開始するタイミングは、運転台数だけで決めるのではなく、時間を遡って決定してもよい。本実施形態において、生産分析装置は、運転台数が基準運転台数未満となっている期間、及び基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間の録画情報を抽出する抽出処理部を有することが好ましい。
【0038】
本実施形態の生産分析装置によれば、解析に必要な、運転台数が基準運転台数よりも少ない時間帯、およびその原因となった時間帯が記録されているのでさらに効率よく解析することができる。
【0039】
本実施形態において、基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間とは、例えば、基準運転台数が2台であるときに、運転台数が1台になった時刻の前の一定期間である。期間は、目的とする解析と、解析に必要な労力などによって適宜設定することが望ましく、たとえば期間を5分間と定めて、5分前からの録画情報を抽出することができる。
【0040】
本実施形態の生産分析装置は、カメラからの録画情報を常時第2の記録装置に記録している。抽出処理部は、運転台数が、基準運転台数未満となっている期間及び基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間に録画した録画情報を維持し、それ以外の期間に録画した録画情報を前記第2の記録装置に記録した前記録画情報から除外することによって、前記録画情報を抽出することができる。
【0041】
本実施形態では、録画情報を記録するか否かを決定する以前の録画情報を必要とするので、録画を行った全ての期間を対象として、継続して録画情報を記録装置に記録したのち、一定時間を経過したものに関しては随時消去する記録装置であることが好ましい。このような記録装置であると不要な録画情報の蓄積が少なく、記録装置を有効に利用することができる。
【0042】
本発明において、録画情報を保存する第2の記録装置は、各々の設備の運転情報及び運転台数のいずれか一方もしくは両方を一定の時間間隔で時刻情報とともに記録する第1の記録装置に、含まれていてもよい。あるいは、第1の記録装置と第2の記録装置とが、それぞれ独立して備えられていてもよい。しかしながら、第2の記録装置は第1の記録装置に含まれていることが好ましい。第1の記録装置と第2の記録装置とが独立している別個の装置である場合、第2の記録装置は、広く普及する撮影装置をそのまま適用できコスト面でメリットがある一方、録画情報から必要な情報を抽出する機能を連携させにくい。第2の記録装置が第1の記録装置に含まれていると、録画情報から必要な情報を抽出する機能を連携させやすいとのメリットがある。
【0043】
本実施形態の生産分析装置によれば、運転検出器を、設備に備えられた動作表示灯の点灯を検出するセンサーとすることができる。動作表示灯の点灯を検出するセンサーでとすることによって、設備からの動作信号を容易に得ることができる。
【0044】
以下、本発明の第一実施形態から第三実施形態までを、図面を参照しつつ、より詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態から第三実施形態に共通する、生産分析装置1と、生産分析装置1が監視する設備A,B,Cの構成を模式的に示した図である。
【0045】
本実施形態では、同一の3台の設備A,B,Cを1人の作業者Mが運転する多台持ちの工程について説明する。一例として、設備A,B,CはNC加工機であり、中間製品であるブロック状の素材を加工し、目的の形状の製品を得る。加工に当たっては、加工の1単位は1個であり、設備A,B,Cは、それぞれが1つずつの素材を加工する装置である。
【0046】
設備A,B,CであるNC加工機は、情報処理装置に接続され、情報処理装置から送られる加工情報に基づいて素材を加工するコンピュータ支援製造(CAM:computer aided manufacturing)形式の装置である。
【0047】
設備A,B,Cは、それぞれが動作表示灯14A,14B,14Cを備えている。動作表示灯14A,14B,1Cは、それぞれが3色の信号灯を備えている。信号灯は、上から順に、赤色は故障、黄色は停止、緑色は加工中を示す。赤色の信号灯は、加工機の制御装置が故障を検知した時に通電し、それ以外の時は通電していない。緑色は上記加工情報にしたがってNC加工機が動作している時に通電し、黄色は加工機の電源がONの状態であって、それ以外の時に点灯している。
【0048】
本実施形態では、設備A,B,Cに対して、1台ずつ運転検出器10A,10B,10Cが配置されている。運転検出器10A,10B,10Cは、動作表示灯14A,14B,14Cの3色の信号灯にそれぞれ密着して取り付けられた3個の光センサーを有している。運転検出器10A,10B,10Cは、光センサーが検出した信号灯の光強度に基づいて、設備A,B,Cのそれぞれの運転情報を検出し、無線回線を通して演算装置に送出する。
【0049】
図6(a)および図6(b)に、実施形態における演算装置11、第1の記録装置12、および第2の記録装置15の構成を模式的に示す。最も好適な形態においては、演算装置11は、第1の記録装置12および第2の記録装置15とともに、1台のコンピュータ2の一部を構成している。別例として、第1の記録装置12と第2の記録装置15のいずれか一方若しくは両方が、外部記録装置として、コンピュータ2とは別体の装置となっていてもよい。また、図6(a)に示すように、第1の記録装置11と第2の記録装置15がそれぞれ独立した記録装置であってもよいし、図6(b)に示すように、第2の記録装置15が第1の記録装置11の一部として構成されていても良い。
【0050】
演算装置11では、3台の設備A,B,Cにそれぞれ対応する運転検出器10A,10B,10Cから無線で送出される運転情報を集約し、設備A,B,Cの運転情報と、運転台数を一定の時間間隔で時刻情報とともに第1の記録装置12に記録する。
【0051】
コンピュータ2は、表示装置13とカメラ17に接続されている。表示装置13は、演算装置11が集約した運転台数とを時刻情報を表示する。カメラ17は、作業者の作業を撮影し、録画情報として第2の記録装置15に記録する。
【0052】
カメラ17の制御は、演算装置11に含まれる抽出処理部16によって行われる。抽出処理部16は、カメラ17に対して、録画信号と停止信号を送出する制御を行う。また、抽出処理部16は、第2の記録装置15に記録した録画情報の管理と、抽出する情報の選択を行う。抽出処理部16は、ハードウェアとソフトウェアが一体となったモジュールの形態であってもよく、またROM等に常駐しているプログラムであってもよい。
【0053】
図2に、生産分析装置1が記録した、運転台数と作業者の作業内容のタイムチャートの一例を示す。図2の設備A、設備B、設備Cの項目は、カメラ17の録画の内容から解析した、時刻ごとの作業者の作業内容を示している。図2の最下段のチャートは、演算装置11によって集約された時刻ごとの運転台数を示している。このチャートは、順次更新されて、表示装置13に表示される。
【0054】
このように運転台数を示したタイムチャートは運転台数が1台に減ったときを容易に確認でき、それまでに至る運転台数の減少の傾向を表示装置13から確認し、さらに作業者の作業の手順をタグ付けされた録画情報から解析することができる。
【0055】
図3は、生産分析装置1によって具現化された第一実施形態において、運転検出器10A,10B,10Cで検出された運転状態に基づいて、演算装置11の抽出処理部16が第2の記録装置15に録画情報を記録させるまでの処理を示したタイムチャートである。
【0056】
設備A,B,Cのタイムチャートは、それぞれの設備に備えられた運転検出器10A,10B,10Cから送出される動作信号であり、HIGHが動作状態、LOW停止状態である。運転台数のチャートは、設備A,B,Cから送られてくる動作信号を合計した数値が表示されている。動作台数が0台のときは、「0」を示し、3台の時は「3」を示している。
【0057】
第一実施形態において、基準運転台数は2台である。この状態は、設備A,B,Cのいずれかに対して1人の作業者Mが作業を行っている状態であって、「作業待ち」がない状態である。生産分析装置1の抽出処理部16は、運転台数が基準運転台数未満、すなわち、1台か0台となっているときに、カメラ17に録画信号を送出することにより録画情報を抽出するようになっているので、運転台数が1台または0台のときに、カメラに録画信号を送出し、この間の録画情報が第2の録画装置に記録される。また、演算装置11で得られた運転台数は、タイムチャートに識別されて表示装置13に表示される。
【0058】
図1に示したタイムチャートにおいて、運転台数が1台以下であるのは、図3のなかの時刻s0~時刻s2、時刻s5~時刻s6、時刻s7~時刻s8、時刻s9~時刻s10、時刻s15~時刻s16、時刻s17~時刻s18、時刻s19~時刻s20、時刻s23~時刻s26、時刻s29~31で示された期間であり、この間は演算装置11の抽出処理部16がカメラ17に対して録画信号を送出し、第2の記録装置15に当該期間の録画情報を保存している。録画信号は時刻x1-0~時刻x1-1、時刻x1-2~時刻x1-3、時刻x1-4~時刻x1-5、時刻x1-6~時刻x1-7、時刻x1-8~時刻x1-9、時刻x1-10~時刻x1-11、時刻x1-12~時刻x1-13、時刻x1-14~時刻x1-15、時刻x1-16~時刻x1-~17の期間に送出され、時刻y1-0~時刻y1-1、時刻y1-2~時刻y1-3、時刻y1-4~時刻y1-5、時刻y1-6~時刻y1-7、時刻y1-8~時刻y1-9、時刻y1-10~時刻y1-11、時刻y1-12~時刻y1-13、時刻y1-14~時刻y1-15、時刻y1-16~時刻y1-~17の期間の録画情報が第2の記録装置に記録される。
【0059】
図4は、生産分析装置1の第二実施形態において、演算装置11の抽出処理部16が、運転検出器10A,10B,10Cで検出された運転状態に基づいて、第2の記録装置15に録画情報を記録させて抽出するまでの処理を示したタイムチャートである。
演算装置11までの処理は、第一実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0060】
第二実施形態においても、基準運転台数は2台である。本実施形態では、運転台数が基準運転台数以下、すなわち、運転台数が、0台から2台の間の場合に、録画情報を前記第2の記録装置15に蓄積し、蓄積した録画情報の少なくとも一部を抽出する。このため、運転台数が1台以下の期間はすべての録画情報が第2の記録装置15に保存されるが、運転台数が2台の場合、その後の運転台数によって録画情報が第2の記録装置に保存されるかあるいはされないかが決定される。その後、運転台数が1台に遷移した場合には録画情報が記録されるが、運転台数が3台に遷移した場合には録画情報記録されない。運転台数が2台の場合、カメラ17の画像は一旦すべて第2の記録装置15に記録され、その後の運転台数によって抽出するかしないかが決定される。
【0061】
図4において、運転台数が2台以下の場合、一旦すべて録画情報が記録される。
図4に示したタイムチャートにおいて、運転台数が2台以下であるのは、図4のなかの時刻s0~時刻s3、時刻s4~時刻s11、時刻s12~時刻s13、時刻s14~時刻s21、時刻s22~時刻s27、時刻s28~時刻s31で示された期間であり、この間は、演算装置11の抽出処理部16がカメラ17に対して録画信号を送出し、第2の記録装置15に当該期間の録画情報を保存している。録画信号は時刻x2-0~時刻x2-1、時刻x2-2~時刻x2-6、時刻x2-7~時刻x2-8、時刻x2-9~時刻x2-13、時刻x2-14~時刻x2-16、時刻x2-17~時刻x2-18の期間に送出されている。
【0062】
なお、運転台数が1台から2台に移行した時には、一旦録画を止め、改めて録画をスタートしている。該当箇所は、時刻x2-3、時刻x2-4,時刻x2-5、時刻x2-10、時刻x2-11,時刻x2-12、時刻x2-15である。
【0063】
また、演算装置11の抽出処理部16は、運転台数が基準運転台数から基準運転台数よりも多い状態に遷移した場合、言い換えると、運転台数が2台の状態から、2台を下回ることなく3台の状態に遷移した場合には、運転台数が2台に到達してから3台で稼働する時点までの録画情報を抽出しないという決定をする。運転台数が2台に到達してから、その後3台に移行して稼働するまでの期間は、図3の中の時刻s2~時刻s3、時刻s10~時刻s11、時刻s12~時刻s13、時刻s20~時刻s21、時刻s26~時刻s27で示した期間であり、この間の録画情報は抽出されない。
【0064】
以上の処理によって、図4の中の時刻y2-0~時刻y2-1、時刻y2-2~時刻y2-3、時刻y2-3~時刻y2-4、時刻y2-4~時刻y2-5、時刻y2-6~時刻y2-7、時刻y2-7~時刻y2-8、時刻y2-8~時刻y2-9、時刻y2-10~時刻y2-11、時刻y2-12~時刻y2-13に対応する期間について、録画情報が第2の記録装置に記録される。
【0065】
図5は、生産分析装置1の第三実施形態において、演算装置11の抽出処理部16が、運転検出器10A,10B,10Cで検出された運転状態に基づいて、第2の記録装置15に録画情報を記録させて抽出するまでの処理を示したタイムチャートである。
演算装置11までの処理は、第一実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0066】
第三実施形態においても、基準運転台数は2台である。本実施形態は、カメラ17からの録画情報を常時第2の記録装置15に記録している。抽出処理部16は、運転台数が、基準運転台数未満となった期間と、基準運転台数未満となった時刻の直前の一定期間に録画した録画情報を維持し、それ以外の期間に録画した録画情報を前記第2の記録装置15に記録した前記録画情報から除外することによって、録画情報を抽出することができる。
【0067】
本実施の形態は、運転台数が、基準運転台数未満となった場合の録画情報のスタートを、運転台数が2台未満となった時刻の直前の一定期間としている。このため、すべての時間帯において録画情報が必要となる可能性があるため、一旦すべての録画情報を第2の記録装置15に記録したのち、必要な録画情報を抽出するプロセスを採っている。本実施の形態において、運転台数が2台未満であるのは、図5のなかの時刻s0~時刻s2、時刻s5~時刻s6、時刻s7~時刻s8、時刻s9~時刻s10、時刻s15~時刻s16、時刻s17~時刻s18、時刻s19~時刻s20、時刻s23~時刻s26、時刻s29~時刻s31で示された期間である。本実施の形態において、録画情報が必要であるのは運転台数が2台未満となった時刻の直前の一定期間(例えば5分)である。録画情報を抽出する際の抽出開始時刻は、時刻x3-2’、時刻x3-4’、時刻x3-6’、時刻x3-8’、時刻x3-10’、時刻x3-12’、時刻x3-14’、時刻x3-16’となる。この結果、図5の中の時刻y3-0~時刻y3-1、時刻y3-2’~時刻y3-3、時刻y3-4’~時刻y3-5、時刻y3-6’~時刻y3-7、時刻y3-8’~時刻y3-9、時刻y3-10’~時刻y3-11、時刻y3-12’~時刻y3-13、時刻y3-14’~時刻y3-15、時刻y3-16’~時刻y3-17に対応する期間の録画情報が、第2の記録装置に記録される。
【0068】
これらの録画情報を分析することにより、作業者ごとの作業効率を、従来よりも効率よく評価することができる。
【0069】
以上、本発明の生産分析装置について、例を挙げて説明したが、特許請求の範囲に記載した生産分析装置には、実施形態で説明した構成を様々に変形した生産分析装置が含まれる。たとえば、基準運転台数は、設備の数と作業者の数だけで決定される基準値ではなく、実際の設備の配置や、必要とされる作業の内容によって、決定される。また、演算装置と記録装置の構成や配置も、必要な機能を有するハードウェアとプログラムの組み合わせによって適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 生産分析装置
2 コンピュータ
10A,10B,10C 運転検出器
11 演算装置
12 第1の記録装置
13 表示装置
14A,14B,14C 動作表示灯
15 第2の記録装置
16 抽出処理部
17 カメラ
A,B,C 設備
M 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6