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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電線圧接構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/2455 20180101AFI20240112BHJP
   H01R 4/2433 20180101ALN20240112BHJP
【FI】
H01R4/2455
H01R4/2433
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020133521
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029916
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 涼介
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-172623(JP,A)
【文献】特開2002-083637(JP,A)
【文献】特開平02-078164(JP,A)
【文献】特開2003-092156(JP,A)
【文献】実開昭56-161781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の複数の素線で形成された芯線及び前記芯線を被覆する被覆部を有する電線と、
前記電線を挿入方向に沿って挿入可能なスロットを有し、導電性を有する導体部材と、
を備え、
前記導体部材は、前記挿入方向に対する反対方向側から視た場合に前記スロットを挟んで対向方向に対向し、前記反対方向側の端部に位置する導体端部と、前記スロットを形成する壁部とを有し、
前記スロットは、前記挿入方向に対する前記反対方向側の端部が開口して外部に連通し、前記挿入方向に直交する幅が、前記電線の直径よりも狭く、
前記壁部は、前記素線が接触し、かつ、前記挿入方向に対して直交する対向方向において対向する一対の圧接領域と、前記素線に対して非接触状態となる非圧接領域と、当該非圧接領域における前記壁部から前記スロットの内部に向けて突出する突出部とを有し、
前記突出部は、前記素線が各前記圧接領域における前記壁部に接触する圧接状態において、前記圧接領域における前記壁部と接触する前記素線よりも前記挿入方向側に位置する前記被覆部の一部を前記反対方向側に押圧することを特徴とする、
電線圧接構造。
【請求項2】
前記突出部は、前記非圧接領域における前記壁部から前記反対方向側へ向けて突出することによって、前記スロットには前記突出部の前記対向方向の両側に一対の空間部が形成され、
前記空間部は、前記圧接状態において、前記圧接領域における前記壁部と接触する前記素線よりも前記挿入方向側に位置する前記被覆部の一部が進入する、
請求項1に記載の電線圧接構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線圧接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線圧接構造は、例えば、端子付き電線に適用される。端子付き電線は、導電性の複数の素線で形成された芯線を有する電線と、金属端子とを備える。金属端子は、電線を挿入方向に沿って挿入可能なスロットを有し、導電性を有する導体部材を備える。
【0003】
金属端子の中には、スロットが略U字状に形成され、挿入方向に対する反対方向の端部に開口を有するものがある(例えば、特許文献1の図16参照)。また、スロットの幅は、挿入方向に沿って一定である。導体部材は、スロットを形成する一対の圧接板部を有し、各圧接板部は、反対方向側の端部に位置する刃部を有していた。
【0004】
そして、作業者は、金属端子のスロットに電線を挿入し、刃部によって被覆部に切れ込みを入れて素線の一部を被覆部から露出し、当該露出した素線の一部を圧接板部に接触させることによって圧接状態とし、素線と圧接板部とを電気的に接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-58148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電線圧接構造は、当該圧接状態とする際に複数の素線がばらけてしまい、圧接状態において、圧接板部に接触する素線よりも挿入方向側に位置する素線が、一対の圧接板部に接触せず、かつ、隣り合う素線に対して接触しない場合には、当該素線が電気的に孤立する。複数の素線のうち、電気的に孤立した素線が存在すると、芯線と一対の圧接板部との間における電気抵抗が増大することとなる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、導体部材と芯線との間において電気抵抗が増大することを抑制することができる電線圧接構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る電線圧接構造は、導電性の複数の素線で形成された芯線及び前記芯線を被覆する被覆部を有する電線と、前記電線を挿入方向に沿って挿入可能なスロットを有し、導電性を有する導体部材と、を備え、前記導体部材は、前記挿入方向に対する反対方向側から視た場合に前記スロットを挟んで対向方向に対向し、前記反対方向側の端部に位置する導体端部と、前記スロットを形成する壁部とを有し、前記スロットは、前記挿入方向に対する前記反対方向側の端部が開口して外部に連通し、前記挿入方向に直交する幅が、前記電線の直径よりも狭く、前記壁部は、前記素線が接触し、かつ、前記挿入方向に対して直交する対向方向において対向する一対の圧接領域と、前記素線に対して非接触状態となる非圧接領域と、当該非圧接領域における前記壁部から前記スロットの内部に向けて突出する突出部とを有し、前記突出部は、前記素線が各前記圧接領域における前記壁部に接触する圧接状態において、前記圧接領域における前記壁部と接触する前記素線よりも前記挿入方向側に位置する前記被覆部の一部を前記反対方向側に押圧することを特徴とする。
【0009】
また、上記電線圧接構造において、前記突出部は、前記非圧接領域における前記壁部から前記反対方向側へ向けて突出することによって、前記スロットには前記突出部の前記対向方向の両側に一対の空間部が形成され、前記空間部は、前記圧接状態において、前記圧接領域における前記壁部と接触する前記素線よりも前記挿入方向側に位置する前記被覆部の一部が進入する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態に係る電線圧接構造は、上記構成を有するため、導体部材と芯線との間の部分において電気抵抗が増大することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る電線圧接構造を適用した電線圧接コネクタの斜視図である。
図2図2は、電線圧接構造を適用した電線圧接コネクタにおいて、コネクタ本体部に対してコネクタ蓋部を開いた状態を示す平面図である。
図3図3は、図2における矢視A-Aにおける断面図である。
図4図4は、図2における矢視B-Bにおける断面図である。
図5図5は、電線圧接構造が有する導体部材の斜視図である。
図6図6は、図2における矢視C-Cにおける導体部材の断面図である。
図7図7は、図2における矢視D-Dにおける導体部材の断面図である。
図8図8は、導体部材の正面図である。
図9図9は、電線圧接構造の作用を順番に示す説明図である。
図10図10は、電線圧接構造の作用を順番に示す説明図である。
図11図11は、突出部によって、圧接領域における壁部と接触する素線よりも挿入方向側に位置する被覆部の一部を反対方向側に押圧した状態の断面図である。
図12図12は、電線圧接構造における導体部材の第1実施形態の第1変形例を示す正面図である。
図13図13は、電線圧接構造における導体部材の第1実施形態の第2変形例を示す正面図である。
図14図14は、電線圧接構造における導体部材の第1実施形態の第3変形例を示す正面図である。
図15図15は、電線圧接構造における導体部材の第1実施形態の第4変形例を示す正面図である。
図16図16は、電線圧接構造における導体部材の第1実施形態の第5変形例を示す正面図である。
図17図17は、電線圧接構造の第2実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電線圧接構造1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この電線圧接構造1は、例えば、電線圧接コネクタ100に適用される。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る電線圧接構造1を適用した電線圧接コネクタ100の斜視図である。図2は、電線圧接構造1を適用した電線圧接コネクタ100において、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4を開いた状態を示す平面図である。図3は、図2における矢視A-Aにおける断面図である。図4は、図2における矢視B-Bにおける断面図である。図5は、電線圧接構造1が有する導体部材7の斜視図である。図6は、図2における矢視C-Cにおける導体部材7の断面図である。図7は、図2における矢視D-Dにおける導体部材7の断面図である。図8は、導体部材7の正面図である。図9は、電線圧接構造1の作用を順番に示す説明図である。図10は、電線圧接構造1の作用を順番に示す説明図である。図11は、突出部92によって、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部を反対方向側に押圧した状態の断面図である。
【0014】
各図のX方向は、導体部材7の厚さ方向である。各図のY方向は、一対の対向導体部76A、76Bが対向する方向である。各図のZ1方向は、電線Wをスロット8に挿入する方向である。各図のZ2方向は、挿入方向Z1の反対方向Z2である。各図の第3方向Zは、挿入方向Z1及び反対方向Z2を含む方向である。直交方向Xと対向方向Yと挿入方向Z1とは相互に直交する。
【0015】
[第1実施形態]
図1に示す第1実施形態に係る電線圧接構造1を適用した電線圧接コネクタ100は、自動車等の車両に搭載されるワイヤハーネスWH1に組み込まれ、複数の電線Wにおける導電性を有する芯線W1どうしを電気的に接続するものである。ワイヤハーネスWH1は、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各機器に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWH1は、複数の電線Wと、複数の電線Wにおける導電性を有する芯線W1どうしを電気的に接続する電線圧接コネクタ100とを備える。本実施形態の電線圧接コネクタ100は、電線Wと、導体部材7とを備える電線圧接構造1を有する。また、電線圧接コネクタ100は、例えば、一方の電線W11と、他方の電線W12とを備える。各電線Wは、図8に示すように、複数の導電性を有する素線W1aからなる芯線W1の外側を、絶縁性を有する被覆部W2によって覆ったものである。本実施形態の電線Wは、複数の素線W1a及び被覆部W2によって略円柱状に形成され、かつ、横断面における電線Wの直径R1が、後述するスロット8の対向方向Yの幅L1よりも大きい(図3、及び図11参照)。以下、各図を参照して電線圧接コネクタ100の構成について詳細に説明する。なお、ワイヤハーネスWH1は、この他、さらに、電気接続箱、プロテクタ、グロメット、固定具、他のコネクタ等を含んで構成されてもよい。
【0016】
電線圧接コネクタ100は、複数の電線Wの芯線W1どうしを電気的に接続する。電線Wは、導電性の複数の素線W1aで形成された芯線W1及び芯線W1を被覆する被覆部W2を有する(図8参照)。電線圧接コネクタ100は、電線圧接構造1が適用される。電線圧接構造1は、電線Wと、電線Wを挿入方向Z1に沿って挿入可能なスロット8を有し、導電性を有する導体部材7とを備える。電線圧接コネクタ100は、例えば、中空の略直方体状に形成され、電線圧接構造1と、ハウジング2とを備え、例えば各電線Wにおける延在方向の途中に設けられる。
【0017】
ハウジング2は、ハウジング本体部3と、ハウジング蓋部4とを備える。ハウジング本体部3は、開閉開口(開口)33を有する。ハウジング蓋部4と、開閉開口33を閉塞する。本実施形態のハウジング2は、ハウジング本体部3と、ハウジング蓋部4との間に、ハウジング本体部3とハウジング蓋部4とを連結するヒンジ5と、ハウジング蓋部4によって、ハウジング本体部3の開閉開口33が閉塞された状態を維持する係止機構6とを備える。
【0018】
ハウジング本体部3は、開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞された状態において、内部に複数の電線Wが挿通、配索される。本実施形態に係るハウジング本体部3は、直交方向Xの両端部が開口した樋形状に形成される。ハウジング本体部3は、直交方向Xに沿って電線Wが挿通される。
【0019】
より詳細には、ハウジング本体部3は、底部31、本体側壁部32、導電部材配置部35、ガイド凸部36を有する。そして、ハウジング本体部3は、底部31、及び、本体側壁部32によって形成される収容空間3s、開閉開口33、及び、挿通開口34を含んで構成される。また、ハウジング本体部3は、底部31、及び、本体側壁部32が一体となって上述したように略直線状の桶形状に形成される。
【0020】
底部31は、ハウジング本体部3の内部空間部として収容空間3sを形成するための底壁である。底部31は、挿入方向Z1に対して直交する平面に沿う略矩形板状に形成される。底部31は、直交方向Xに延在し、対向方向Yにおいて、例えば2本の電線Wを収容可能な所定の幅を有する。
【0021】
本体側壁部32は、ハウジング本体部3の内部に位置する収容空間3sを形成するための側壁である。本体側壁部32は、底部31から反対方向Z2に沿って突出して形成され、互いに対向する一対の対向壁部32a、32bを有する。
【0022】
一対の対向壁部32a、32bは、共に対向方向Yに対して直交する平面に沿う略矩形板状にそれぞれ形成される。各対向壁部32a、32bは、直交方向Xに沿って延在する。一対の対向壁部32a、32bは、対向方向Yに対して底部31を挟んで両側に設けられ、対向方向Yに間隔をあけて対向して位置する。本実施形態のハウジング2において、一対の対向壁部32a、32bは、底部31の対向方向Yの両縁にそれぞれ設けられ、直交方向Xに沿って底部31の一方の端部から他方の端部まで延在する。言い換えれば、底部31は、対向方向Yにおいて、一対の対向壁部32a、32bの間に位置し、対向方向Yの両端部がそれぞれ各対向壁部32a、32bと接続される。一対の対向壁部32a、32bは、底部31において、第3方向Zに対して同じ側に立設される。一対の対向壁部32a、32bにおいて、一方の対向壁部32aと他方の対向壁部32bとは、第3方向Zに沿った長さがそれぞれほぼ同じであり、一方の対向壁部32aと他方の対向壁部32bとは、直交方向Xに沿った長さがほぼ同じである。
【0023】
上記のように構成されるハウジング本体部3は、底部31と本体側壁部32とによって、収容空間3s、開閉開口33、及び、複数の挿通開口34が形成される。収容空間3sは、直交方向Xに沿い、かつ、対向方向Yに沿って電線Wが配索される空間部である。収容空間3sは、底部31と本体側壁部32とによって囲われた内部空間部として形成される。開閉開口33は、図3に示すように、収容空間3sを外部に対して開放させる開口であり、ハウジング蓋部4によって閉塞される開口である。開閉開口33は、例えば、後述する一対の刃部91A、91Bに電線Wを接触させる際に開放され、一対の刃部91A、91Bに電線Wを接触させた後にハウジング蓋部4によって閉塞される。開閉開口33は、第3方向Zにおいて、各対向壁部32a、32bの底部31側とは反対側の端部によって形成される。開閉開口33は、各対向壁部32a、32bに対して第3方向Zに沿って一方側、すなわち、底部31側とは反対側に開口する。より具体的に説明すると、開閉開口33は、第3方向Zに対して直交する平面に沿って開口する。挿通開口34は、収容空間3sに電線Wを挿通させる開口である。挿通開口34は、一対の対向壁部32a、32b、及び、底部31によって直交方向Xの両端部に形成された第1挿通開口34a及び第2挿通開口34bを含む。第1挿通開口34a及び第2挿通開口34bは、図1に示すように、直交方向Xに対して直交する平面に沿って開口する。
【0024】
導電部材配置部35は、後述する導体部材7を、ハウジング本体部3にインサート成型によって配置するための部分である。より具体的に説明すると、導電部材配置部35は、直交方向Xにおいて、ハウジング本体部3の中央に配置してあり、中央導電部材配置部35aと、一対の側方導電部材配置部35b、35cとを有する。中央導電部材配置部35aは、対向方向Yにおいて、ハウジング本体部3の中央に配置してあり、底部31に対して一体的であって略直方体状に形成される。一対の側方導電部材配置部35b、35cのうち、一方の側方導電部材配置部35bは、対向方向Yにおいて、ハウジング本体部3の一方の端部に配置してあり、一方の対向壁部32aに対して一体的であって略矩形平板状に形成される。一対の側方導電部材配置部35b、35cのうち、他方の側方導電部材配置部35cは、対向方向Yにおいて、ハウジング本体部3の他方の端部に配置してあり、他方の対向壁部32bに対して一体的であって略矩形平板状に形成される。
【0025】
ガイド凸部36は、個々の電線Wを直交方向Xに沿った直線状にガイドする部分であり、第1ガイド凸部36aと、第2ガイド凸部36bとを有する。第1ガイド凸部36aは、直交方向Xに延在する直線状に形成してあって、中央部と第1挿通開口34aとの間において、底部31に対して一体的であって直交方向Xに延在する直線状に形成される。第2ガイド凸部36bは、直交方向Xに延在する直線状に形成してあって、中央部と第2挿通開口34bとの間において、底部31に対して一体的であって直交方向Xに延在する直線状に形成される。
【0026】
ハウジング蓋部4は、ハウジング本体部3に組み付けられ、当該ハウジング本体部3に形成された開閉開口33を閉塞するものである。ハウジング蓋部4は、図1図2に示すように、天部41、蓋側壁部42、及び、押圧部43を有する。ハウジング蓋部4は、天部41、蓋側壁部42及び、押圧部43が一体となって、ハウジング本体部3の形状に対応した略直線状の樋形状に形成される。
【0027】
天部41は、ハウジング本体部3の開閉開口33を塞ぎ、収容空間3sを形成するための天壁である。天部41は、第3方向Zに対して直交する平面に沿う略矩形板状に形成される。また、天部41は、直交方向Xに延在するとともに、収容空間3sを閉塞可能とするために対向方向Yに所定の幅を有する。本実施形態の天部41は、ハウジング2本体の開閉開口33を閉塞した状態において、第3方向Zにおいて底部31に対向する。
【0028】
蓋側壁部42は、直交方向Xにおいて、互いに対向する一対の対向蓋側壁部42a、42b、及び、一方の対向蓋側壁部42aにおける対向方向Yの一方の端部と、他方の対向蓋側壁部42bにおける対向方向Yの一方の端部とを連結する連結蓋側壁部42cを有する。連結蓋側壁部42cは、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4が閉塞した状態において、対向方向Yにおいて、ハウジング本体部3の他方の対向壁部32bに対向する。一方の対向蓋側壁部42a、他方の対向蓋側壁部42b、及び、連結蓋側壁部42cは、天部41から第3方向Zに沿って突出して形成される。一方の対向蓋側壁部42a、他方の対向蓋側壁部42b、及び、連結蓋側壁部42cは、天部41に対して第3方向Zに対して同じ側に立設される。一方の対向蓋側壁部42a、他方の対向蓋側壁部42b、及び連結蓋側壁部42cは、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4が閉塞した状態において、天部41から第3方向Zに沿ってハウジング本体部3側に向けて突出して形成される。一方の対向蓋側壁部42a、他方の対向蓋側壁部42b、及び連結蓋側壁部42cは、第3方向Zに沿った長さがそれぞれほぼ同一である。
【0029】
一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bは、共に直交方向Xに対して直交する平面に沿う略矩形板状に形成され、対向方向Yに沿って延在する。一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bは、直交方向Xにおいて、天部41を挟んで両側に設けられ、直交方向Xにおいて、間隔をあけて対向して位置する。本実施形態では、一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bは、天部41の直交方向Xの両縁にそれぞれ設けられ、対向方向Yに沿って天部41の一方の端部から他方の端部まで延在する。言い換えれば、天部41は、対向方向Yにおいて、一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bの間に位置し、対向方向Yの両端部がそれぞれ一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bと接続される。一方の対向蓋側壁部42a、及び、他方の対向蓋側壁部42bは、対向方向Yに沿った長さがそれぞれほぼ同一である。
【0030】
連結蓋側壁部42cは、対向方向Yに対して直交する平面に沿う略矩形板状に形成され、直交方向Xに沿って延在する。また、連結蓋側壁部42cは、天部41の対向方向Yの一方の側縁に設けられ、直交方向Xに沿って延在する。本実施形態におけるハウジング蓋部4は、連結蓋側壁部42cにおける直交方向Xの中央に係止機構6の係止孔部61を設け、当該係止孔部61が配置された部分には連結蓋側壁部42cを設けていない。このような連結蓋側壁部42cは、対向方向Yにおいて、天部41を挟んでヒンジ5の反対側に設けられる。言い換えれば、天部41は、対向方向Yにおいて、連結蓋側壁部42cとヒンジ5との間に位置し、対向方向Yの一方の端部が連結蓋側壁部42cと接続される一方、対向方向Yの他方の端部がヒンジ5を介してハウジング本体部3と接続される。
【0031】
一対の対向蓋側壁部42a、42bのうち、一方の対向蓋側壁部42aは、電線Wが挿入され、かつ、挿入された電線Wの被覆部W2が接触する対向第1蓋挿入溝42a1を複数有する。対向第1蓋挿入溝42a1は、一方の電線W11を挿入する第1対向蓋挿入溝42a11と、他方の電線W12を挿入する第2対向蓋挿入溝42a12とを含む。つまり、一方の対向蓋側壁部42aには、後述するスロット8に対応して2つの対向蓋挿入溝42a11、42a12が形成される。各対向蓋挿入溝42a11、42a12は、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞した状態において、一方の対向蓋側壁部42aの挿入方向Z1側の端部から反対方向Z2へ向けて凹み、第3方向Zに沿って直線状に延在する。
【0032】
一対の対向蓋側壁部42a、42bのうち、他方の対向蓋側壁部42bの構成は、一方の対向蓋側壁部42aの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0033】
押圧部43は、開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞する際に複数の電線W(本実施形態では2本の電線W)を押圧することによって、電線Wを各スロット8に挿入するものである。言い換えると、押圧部43は、開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞する際に複数の電線を一括して押圧することによって電線Wを各スロット8に挿入するものである。このような押圧部43は、天部41と一体的に形成してある。より具体的に説明すると、押圧部43は、ハウジング本体部3の開閉開口33を蓋部によって閉塞した状態において、収容空間3sの内部に位置する一方、天部41は収容空間3sの外部に位置する。このような押圧部43は、押圧中央部43a、及び、一対の押圧側部43b、43cを有する。
【0034】
押圧中央部43aは、ハウジング蓋部4の直交方向Xにおける中央に位置する一方、一対の押圧側部43b、43cは、直交方向Xにおける両側に位置する。つまり、一対の押圧側部43b、43cは、直交方向Xにおいて、押圧中央部43aを挟んで位置する。ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4が閉塞した状態において、押圧中央部43aは、スロット8の開口80aの反対方向Z2側に対向する一方、押圧側部43b、43cは、スロット8の開口80aから外れた底部31の反対方向Z2側に対向する。押圧中央部43aは、略矩形平板状に形成してある一方、一対の押圧側部43b、43cは、略直方体状に形成してある。また、一対の押圧側部43b、43cの第3方向Zの厚さは、押圧中央部43aの第3方向Zの厚さよりも厚く、一対の押圧側部43b、43cの挿入方向Z1側の端部は、押圧中央部43aの挿入方向Z1側の端部よりも挿入方向Z1側に突出する。
【0035】
一対の押圧側部43b、43cのうち、一方の押圧側部43bは、電線Wの被覆部W2が嵌る押圧第1凹部43b1を複数有する。押圧第1凹部43b1は、一方の電線W11が嵌る第1押圧凹部43b11と、他方の電線W12が嵌る第2押圧凹部43b12と含む。つまり、一方の押圧側部43bには、後述するスロット8に対応して2つの押圧凹部43b11、43b12が形成される。各押圧凹部43b11、43b12は、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞した状態において、押圧側部43bの挿入方向Z1側の端部から反対方向Z2側へ向けて凹む。第1押圧凹部43b11の周面と、第1対向蓋挿入溝42a11における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面は、直交方向Xに沿って同一の曲面を構成する。第2押圧凹部43b12の周面と、第2対向蓋挿入溝42a12における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面は、直交方向Xに沿って同一の曲面を構成する。
【0036】
一対の押圧側部43b、43cのうち、他方の押圧側部43cの構成は、一方の押圧側部43bの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
ハウジング本体部3における導体部材7のスロット8の挿入方向Z1における深さ、及び、ハウジング蓋部4における天部41に対する押圧中央部43aの挿入方向Z1における高さは、押圧中央部43aが予め定められた所定の直径R1の電線Wを挿入方向Z1側へ押圧し、電線Wにおける被覆部W2を突出部92の先端部に押圧するように設定してある。このため、本実施形態における電線圧接構造1の押圧中央部43aは、予め定められた所定の直径の電線Wを挿入方向Z1側へ向けて押圧することによって、電線Wにおける後述する素線W1acを反対方向Z2側に押圧することができ、それによって当該素線W1acを反対方向Z2側に位置する他の素線W1aに接触させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る電線圧接コネクタ100は、図2に示すように、一対の押圧側部43b、43cの第3方向Zにおける一方側の端部は、押圧中央部43aの第3方向Zにおける一方側の端部よりも突出するように形成される。このため、一対の押圧側部43b、43cは、後述するように、押圧部43により電線Wを押圧する初期において、押圧中央部43aが電線Wに接触するよりも早く電線Wに接触し、その後、押圧中央部43aは、電線Wに接触することによって、電線Wを後述する一対の刃部91A、91Bに押圧し、一対の刃部91A、91Bによって電線Wの被覆部W2に切れ込みを入れる。
【0039】
ヒンジ5は、図1図3に示すように、ハウジング本体部3とハウジング蓋部4との間に設けられ、ハウジング本体部3とハウジング蓋部4とを連結するものである。つまり、図4に示すように、ヒンジ5の一方の端部51は、ハウジング本体部3に連結される一方、ヒンジ5の他方の端部52は、ハウジング蓋部4に連結される。より具体的に説明すると、ヒンジ5は、ハウジング本体部3の一方の対向壁部32aと、ハウジング蓋部4の天部41との間に設けられる。ヒンジ5は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって、ハウジング本体部3及びハウジング蓋部4と一体的に設けられる。
【0040】
係止機構6は、図1に示すように、ハウジング蓋部4が開閉開口33を塞ぐ(閉塞する)正規位置でハウジング本体部3とハウジング蓋部4とを係止する機構である。係止機構6は、図7に示すように、係止孔部61と、係止爪部62とを備える。本実施形態の係止機構6は、ハウジング蓋部4に係止孔部61を設ける一方、ハウジング本体部3に係止爪部62を設ける。また、電線圧接コネクタ100は、例えば、1つの係止機構6を有する。
【0041】
係止孔部61は、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4が正規位置にある状態で、係止爪部62と係止するものであり、弾性変形可能にハウジング蓋部4と一体的に形成される。係止孔部61は、図2に示すように、直交方向Xにおいて間隔をあけて配置される一対の棒状部61a、61bと、各棒状部61a、61bにおける第3方向Zの端部を連結する連結部61cとを有する。そして、係止孔部61は、一対の棒状部61a、61bと、連結部61cとによって、対向方向Yの両側に開口する。
【0042】
係止爪部62は、ハウジング本体部3とハウジング蓋部4とが正規位置にある閉塞状態で、係止孔部61に係止されるものであり、ハウジング本体部3と一体的に形成される。係止爪部62は、図4図5に示すように、ハウジング本体部3における収容空間3sの外部に位置するように、一方の本体側壁部32と一体的に設けられる。より具体的に説明すると、係止爪部62は、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4が正規位置に配置された状態で、連結蓋側壁部42cにおける本体側壁部32に対向する面に設けられる。係止爪部62は、本体側壁部32における直交方向Xの中央に位置する。本実施形態の係止爪部62は、図4に示すように、対向方向Yにおいて、本体側壁部32から突出するように形成される。より具体的に説明すると、係止爪部62は、対向方向Yと第3方向Zとを含む平面における断面形状が台形であり、本体側壁部32の外面と平行な平行面62aを有するとともに、第3方向Zにおいて対向する直交面62b及び傾斜面62cとを有する。直交面62bは、平行面62aに対して直交する。傾斜面62cは、平行面62aに対して対向方向Y及び第3方向Zにおいて傾斜して交差する。より具体的に説明すると、傾斜面62cは、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞した状態において、本体側壁部32に対する反対方向Z2側への突出量が小さく、挿入方向Z1側へ行くに従って、本体側壁部32に対する反対方向Z2側への突出量が大きくなる。傾斜面62cは、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞した状態において、平行面62aに対して反対方向Z2側に位置する。直交面62bは、ハウジング本体部3の開閉開口33をハウジング蓋部4によって閉塞した状態において、平行面62aに対して挿入方向Z1側に位置する。
【0043】
ハウジング蓋部4が正規位置に配置された状態では、ハウジング蓋部4における天部41がハウジング本体部3の開閉開口33を塞ぎ、一方の本体側壁部32と連結蓋側壁部42cとが対向方向Yにおいて重なる。より詳細に説明すると、ハウジング蓋部4が正規位置に配置された状態では、連結蓋側壁部42cは、本体側壁部32の外側、すなわち、収容空間3s側とは反対側において一方の本体側壁部32と対向して位置する。また、図9において実線で示すハウジング蓋部4が正規位置に配置された状態では、後述するように、導体部材7によって、一方の電線W11の芯線W1と他方の電線W12の芯線W1とが電気的に接続される。
【0044】
導体部材7は、導電性を有する金属材料によって形成される。導電部材は、例えば、1枚の板状部材を折り曲げることによって形成され、第1部分71と、第2部分72と、接続部分73とを有する。
【0045】
本実施形態の導体部材7は、例えば、インサート成形によって、ハウジング本体部3と一体的に形成される。より具体的に説明すると、導体部材7は、接続部分73と、折り返し部79と、折り返し部79とが、ハウジング本体部3の底部31に埋設される一方、第1部分71及び第2部分72における後述する板状部74が、当該底部31から露出するようにインサート成形される。
【0046】
第1部分71及び第2部分72は、直交方向Xにおいて接続部分73の両側に位置し、かつ、直交方向Xに対して直交する平面に対して線対称に形成されるため、以下に第1部分71について説明し、第2部分72には、同一の符号を付して説明を省略する。第1部分71は、直交方向Xにおいて対向する2枚の板状部74と、2枚の板状部74を直交方向Xにおいて連結する板状部連結部75とを有する。板状部74は、第1板状部74Aと、第2板状部74Bとを有する。第1板状部74A及び第2板状部74Bは、第1板状部74Aが折り返し部79を有する一方、第2板状部74Bが折り返し部79を有していない点において相違するが、他の部分は同一の構成を有するため、第1板状部74Aについて以下に説明し、第2板状部74Bについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
第1板状部74Aは、電線を挿入方向Z1に沿って挿入可能なスロット8を有する。つまり、導体部材7は、電線を挿入方向Z1に沿って挿入可能なスロット8を有する。また、第1板状部74Aは、挿入方向Z1に対する反対方向Z2側から視た場合にスロット8を挟んで対向方向Yに対向し、反対方向Z2側の端部に位置する導体端部90と、スロット8を形成する壁部80とを有する。つまり、導体部材7は、挿入方向Z1に対する反対方向Z2側から視た場合にスロット8を挟んで対向方向Yに対向し、反対方向Z2側の端部に位置する導体端部90と、スロット8を形成する壁部80とを有する。本実施形態に係る電線圧接構造1において、導体部材7は、各導体端部90に刃部91を有する。つまり、導体部材7は、反対方向Z2側の端部に位置してスロット8を挟んで対向する一対の刃部91A、91Bと、スロット8を形成する壁部80とを有する。
【0048】
壁部80は、対向方向Yにおいて対向する。また、各壁部80は、直交方向Xの幅が所定の幅を有する平坦面に形成される。その上、壁部80の直交方向Xにおける幅は、刃部91の直交方向Xにおける幅よりも広い。本実施形態の各壁部80は、直交方向Xから視た場合、直線状に形成され、挿入方向Z1に沿って延在する。このような壁部80は、後述するように、電線Wの素線W1aと接触し、かつ、対向方向において対向する一対の圧接領域81A、81Bと、素線に対して非接触状態となる非圧接領域82と、当該非圧接領域82における壁部80からスロット8の内部に向けて突出する突出部92とを有する。突出部92は、後述するように素線W1aが各圧接領域81における壁部80に接触する圧接状態において、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1bよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部を反対方向Z2側に押圧する。
【0049】
突出部92は、非圧接領域82における壁部80から反対方向Z2側へ向けて突出することによって、スロット8には突出部92の対向方向Yの両側に一対の空間部8s1、8s2が形成される。本実施形態の突出部92は、スロット8の挿入方向Z1側における底部の壁部80から反対方向Z2側へ向けて突出する。本実施形態の各空間部8s1、8s2は、突出部92における対向方向Yの両側において、挿入方向Z1に沿って延在する。後述するように、空間部8s1、8s2は、圧接状態において、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部が進入する。
【0050】
本実施形態の突出部92は、反対方向Z2に沿って延在する略四角柱状に形成される。また、突出部92は、反対方向Z2側に突出先端部93を有する。本実施形態の突出先端部93は、挿入方向Z1に直交する平坦面に形成される。
【0051】
各圧接領域81は、突出先端部93の反対方向Z2側に位置する。非圧接領域82は、突出先端部93の挿入方向側に位置する。
【0052】
刃部91は、基端部91cが挿入方向Z1側に位置し、基端部91cが板状部74の反対方向Z2側の端部に連続し、先端部が反対方向Z2側に位置し、当該先端部に刃先91dが配置され、基端部91cから刃先91dへ向けて先細り形状に形成される。このような刃部91は、対向方向において、スロット8の反対方向Z2側の開口80aを挟んで一対、配置される。そして、一対の刃部91は、反対方向Z2側から挿入方向Z1側に向かうに従い、対向方向における離隔距離が徐々に狭くなるテーパ状に配置される。このため、一対の刃部91A、91Bの刃先91dの対向方向における間隔は、挿入方向Z1に行くに従って間隔が徐々に小さくなる。
【0053】
板状部74の挿入方向Z1側の端部には、折り返し部79が形成される。折り返し部79は、板状部74の挿入方向Z1側の端部から、さらに挿入方向Z1側に突出し、その後、第2部分72から離隔するように折れ曲がって直交方向Xに延在する。折り返し部79は、ハウジング本体部3の底部31に埋設される。
【0054】
スロット8は、反対方向Z2側の端部が開口80aして外部に連通する。また、本実施形態のスロット8は、対向方向側における対向方向における幅と、挿入方向Z1側における対向方向における幅とが同一である。つまり、スロット8は、対向方向Yにおける幅が一定で挿入方向Z1に延在する。図3に示すスロット8の対向方向Yにおける幅L1は、図11に示す電線Wの直径R1よりも狭い。その上、スロット8の対向方向Yにおける幅L1は、芯線W1の直径R2よりもわずかに狭い(図11参照)。
【0055】
上記のように構成される電線圧接コネクタ100は、以下、図9図10図11に示すように、作業員がハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4を組み付け、刃部91によって電線Wの被覆部W2に切れ込みを入れて素線W1aの一部を被覆部W2の外部に露出させ、かつ、後述するように、素線W1aを各圧接領域81に接触させることによって導体部材7を各電線Wに対して電気的に接続し、これによって導体部材7を介して、一方の電線W11の芯線W1と他方の電線W12の芯線W1とを電気的に接続する。
【0056】
先ず、作業者は、図4に示すように、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4を開き、その後、第3方向Zにおいて、刃部91の刃先91dの上に、一方の電線W11と他方の電線W12をそれぞれ載せる。
【0057】
次に、作業者は、ハウジング本体部3に対してヒンジ5を中心としてハウジング蓋部4を旋回させる。ハウジング蓋部4の旋回動作によって、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4が挿入方向Z1側へ移動すると、一方の電線W11が、第1対向蓋挿入溝42a11、及び、第3対向蓋挿入溝42b11に挿入され、一方の電線W11の被覆部W2の周面が、第1対向蓋挿入溝42a11における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面に接触するとともに、第3対向蓋挿入溝42b11における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面に接触する。また、これと同時に、他方の電線W12が、第2対向蓋挿入溝42a12、及び、第4対向蓋挿入溝42b12に挿入され、他方の電線W12の被覆部W2の周面が、第2対向蓋挿入溝42a12における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面に接触するとともに、第4対向蓋挿入溝42b12における第3方向Zの他方側の端部に位置する周面に接触する。
【0058】
その後、作業員がハウジング蓋部4の旋回動作を継続すると、一方の電線W11が、第1押圧凹部43b11に嵌るとともに、第3押圧凹部43c11に嵌り、かつ、一方の電線W11の被覆部W2の周面が、第1押圧凹部43b11の周面に接触するとともに、第3押圧凹部43c11の周面に接触する。また、これと同時に、他方の電線W12が、第2押圧凹部43b12に嵌るとともに、第4押圧凹部43c12に嵌り、かつ、他方の電線W12の被覆部W2の周面が、第2押圧凹部43b12の周面に接触するとともに、第4押圧凹部43c12の周面に接触する。
【0059】
図3に示すスロット8の対向方向における幅L1は、図11に示す電線の直径R1よりも狭い。加えて、一対の刃部91A、91Bの刃先91dの対向方向における間隔は、図9に示すように、挿入方向Z1に行くに従って間隔が徐々に小さくなる。これらによって、刃部91A、91Bに電線Wの被覆部W2が接触した状態でハウジング蓋部4を挿入方向Z1側へ移動させると、刃部91A、91Bの刃先91dに電線Wの被覆部W2が接触する。
【0060】
この状態において、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4がさらに挿入方向Z1側へ移動すると、図9において実線で示すように、スロット8に電線Wが挿入されるとともに、芯線W1に対して対向方向Yの両側に位置する被覆部W2に一対の刃部91A、91Bが切れ込みを入れ、被覆部W2から素線W1aの一部が外部に露出される。その上、刃部91A、91Bが、挿入方向Z1から反対方向Z2側へ向けて先細り形状であるため、被覆部W2の切れ込みが刃部91A、91Bによって押し広げられる。
【0061】
その後、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4がさらに挿入方向Z1側へ移動すると、電線Wは、スロット8の内部において、挿入方向Z1側へ移動する。これにより、被覆部W2から外部に露出した素線W1aが圧接領域81における壁部80に対して接触することによって、素線1aがばらけるおそれがある。仮に、素線W1aがばらけた場合には、壁部80に接触する素線W1abと、当該素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する素線W1acとの間に隙間が生じるおそれがある。
【0062】
本実施形態の電線圧接構造1は、図9図10において実線で示すように、さらに電線Wを挿入方向Z1側へ移動させることによって、芯線W1に対して挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部に突出部92の突出先端部93が接触し、かつ、被覆部W2の一部を反対方向Z2側に押圧する。この状態では、素線W1aが各圧接領域81における壁部80と接触した圧接状態となる。そして、仮に、壁部80に接触する素線W1abと、当該素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する素線W1acとの間に隙間が生じていたとしても、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する素線W1acが突出部92により反対方向Z2側に押圧されることによって、当該隙間を小さくし、当該素線W1acと、当該素線W1acよりも反対方向Z2側に位置する素線W1aとの接触面積を増加させることができる。
【0063】
上述した圧接状態において、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部は、空間部8s1、8s2に進入する。
【0064】
また、上述したハウジング本体部3に対するハウジング蓋部4の移動によって、係止孔部61が係止爪部62の傾斜面62cに接触することによって、係止孔部61が弾性変形する。そして、ハウジング蓋部4の移動によって、係止孔部61の連結部61cが、係止爪部62の平行面62aを乗り越えると、係止爪部62と係止孔部61とが係止し、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4が正規位置で組み付けられ、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4が反対方向Z2側へ移動することが規制される。
【0065】
本実施形態に係る電線圧接構造1は以下の構成を有する。壁部80は、非圧接領域82における壁部80からスロット8の内部に向けて突出する突出部92を有する。突出部92は、素線W1aが各圧接領域81における壁部80に接触する圧接状態において、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部を反対方向側に押圧する。本実施形態に係る電線圧接構造1は、圧接状態とする際に複数の素線W1aがばらけてしまい、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する素線W1acと、当該素線W1acに対して反対方向側に位置する素線W1aとの間に、隙間が発生するおそれがある。そして、本実施形態に係る電線圧接構造1は、それらの素線W1ac、W1aの間に隙間があった場合においても、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向側に位置する被覆部W2の一部を反対方向Z2側に押圧することで、被覆部W2を介して圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する素線W1acが突出部92により反対方向Z2側に押圧されることによって、当該隙間を小さくし、当該素線W1acと、当該素線W1acの反対方向側に位置する素線W1aとの接触面積を増加させることができる。その結果、本実施形態に係る電線圧接構造1は、素線W1aの間に隙間があった場合に、素線W1a同士の接触面積を増加することで、素線W1a同士の電気的接続箇所を増加することができ、素線W1aが電気的に孤立することを抑制することができるため、導体部材7と芯線W1との間において電気抵抗が増大することを抑制することができる。その上、本実施形態に係る電線圧接構造1における突出部92は、U字状のスロットを有する従来の電線圧接構造において、スロットの挿入方向側の端部まで電線の被覆部を押圧した際に当該電線の素線に加わる応力よりも、素線に加わる応力を大きくすることができる。その結果、本実施形態に係る電線圧接構造1は、突出部92によって、素線W1a同士の接触面積を一層増加することで、素線W1a同士の電気的接続箇所を一層増加することができ、導体部材7と芯線W1との間において電気抵抗が増大することを一層抑制することができる。
【0066】
なお、上述した実施形態には、各板状部74は、反対方向Z2から視た場合にスロット8を挟んで対向方向Yに対向し、反対方向Z2側の端部に位置する導体端部90を備え、導体端部90に刃部91を有するものを説明した。しかし、この実施形態は、これに限られず、導体端部90に刃部91を必ず設ける必要はない。具体的に説明すると、刃部91は、挿入方向Z1側から反対方向Z2側へ向けて先細り形状に形成されるが、導体端部90が、当該先細り形状の部分を有さずに、板状に形成されてもよい。この場合であっても、導体端部90の反対方向Z2側の端面に電線Wが接触した状態において、ハウジング本体部3に対してハウジング蓋部4を挿入方向Z1側へ移動させると、スロット8に芯線W1が挿入されるとともに、芯線W1に対して対向方向Yの両側に位置する被覆部W2に導体端部90が切れ込みを入れ、被覆部W2から素線W1aの一部が外部に露出される。
【0067】
本実施形態に係る電線圧接構造1は以下の構成を有する。突出部92は、非圧接領域82における壁部80から反対方向Z2側へ向けて突出することによって、スロット8には突出部92の対向方向Yの両側に一対の空間部8s1、8s2が形成され、空間部8s1、8s2は、圧接状態において、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも挿入方向Z1側に位置する被覆部W2の一部が進入する。ここで、スロット8に電線Wを挿入し、刃部91によって被覆部W2に切れ込みを入れて素線W1aの一部を被覆部W2から露出する際に、圧接領域81における壁部80と接触する素線W1abよりも反対方向Z2側の被覆部W2の一部から離隔した挿入方向Z1側に位置する被覆部W2が突出部92に押圧され、突出部92により圧縮されることになる。圧縮された被覆部W2は、部材間の隙間に入ろうとするが、空間部8s1、8s2に進入する。その結果、本実施形態に係る電線圧接構造1は、破れた被覆部W2が圧接領域81に位置する壁部80と素線W1aとの間に入ることを抑制することができ、導体部材7と芯線W1との間において電気抵抗が増大することを確実に抑制することができる。
【0068】
[第1実施形態の第1変形例]
次に、第1実施形態の第1変形例に係る電線圧接構造1Aについて説明する。図12は、第1実施形態の第1変形例に係る電線圧接構造1Aが有する導体部材7Aの正面図である。
【0069】
第1変形例に係る電線圧接構造1Aの突出部92Aの構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の突出部92の構成と異なる一方、第1変形例に係る電線圧接構造1Aの他の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の他の構成と同一である。そこで、第1変形例に係る電線圧接構造1Aの構成において、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と同一である部分には、同一の符号を付して説明を省略する。また、第1変形例に係る電線圧接構造1Aの構成に対して、第1実施形態に係る電線圧接構造1の異なる構成について以下に説明する。
【0070】
本変形例に係るスロット8は、圧接領域81A、81Bと、非圧接領域82Aとを有する。本変形例の突出部92Aは、スロット8の挿入方向Z1の底部から反対方向Z2側へ向けて突出して形成される。また、突出部92Aは、略四角柱状に形成され、かつ、突出先端部93Aが半球状に形成される。
【0071】
第1変形例の電線圧接構造1Aは、第1実施形態と同様、押圧部43によって電線Wを挿入方向X1側へ押圧する。それにより、第1変形例の電線圧接構造1Aは、第1実施形態と同様、被覆部W2の一部が突出部92Aによって反対方向X2側へ押圧される。
【0072】
なお、第1実施形態の突出部92、及び、第1変形例の突出部92Aは、略四角柱状のものを説明した。しかし、本発明に係る突出部92、92Aの形状は、略四角柱状のものに限られず、略三角柱状のもの、略円柱状のもの、他の多角形柱状のものでもよい。
【0073】
また、第1実施形態の突出先端部93は平坦面に形成され、第1変形例の突出先端部93Aは、半球状のものを説明した。しかし、本発明に係る突出先端部93、93Aの形状は、平坦面、半球状に限られず、他の形状でもよい。
【0074】
[第1実施形態の第2変形例]
次に、第1実施形態の第2変形例に係る電線圧接構造1Bについて説明する。図13は、第1実施形態の第2変形例に係る電線圧接構造1Bが有する導体部材7Bの正面図である。
【0075】
第2変形例に係る電線圧接構造1Bの突出部92Bの構成、及び一対の空間部8s1B、8s2Bの構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の突出部92の構成、及び、一対の空間部8s1、8s2の構成と異なる一方、第2変形例に係る電線圧接構造1Bの他の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の他の構成と同一である。そこで、第2変形例に係る電線圧接構造1Bの構成において、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と同一である部分には、同一の符号を付して説明を省略する。また、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成に対して、第1変形例に係る電線圧接構造1Bの異なる構成について以下に説明する。
【0076】
本変形例のスロット8は、圧接領域81AB、81BBと、非圧接領域82Bとを有する。本変形例の突出部92Bは、直交方向から視た場合、挿入方向Z1側における対向方向Yの幅が広く、かつ、反対方向Z2側へ行くに従って、対向方向Yの幅が徐々に狭くなる。突出部92Bは、反対方向Z2側に突出先端部93Bを有する。突出先端部93Bは、挿入方向Z1に直交する平面に沿う平坦面を有する。
【0077】
突出部92Bは、スロット8の挿入方向Z1の底部から反対方向Z2へ向けて突出することによって、スロット8には突出部92Bの対向方向Yの両側に一対の空間部8s1B、8s2Bが形成される。一対の空間部8s1B、8s2Bを構成する非圧接領域82Bの壁部80は、対向方向Yにおいて、圧接領域81AB、81BBを構成する壁部80Bの外側へ突出する。
【0078】
第2変形例の電線圧接構造1Bは、第1実施形態と同様、押圧部43によって電線Wを挿入方向X1側へ押圧する。それにより、第2変形例の電線圧接構造1Bは、第1実施形態と同様、被覆部W2の一部が突出部92Bによって反対方向X2側へ押圧される。
【0079】
[第1実施形態の第3変形例]
次に、第1実施形態の第3変形例に係る電線圧接構造1Cについて説明する。図14は、第1実施形態の第3変形例に係る電線圧接構造1Cが有する導体部材7Cの正面図である。
【0080】
第3変形例に係る電線圧接構造1Cの突出部92Cの構成、及び、空間部80s1、80s2、80s3、80s4の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の突出部92の構成、及び、空間部8s1、8s2の構成と異なる一方、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの他の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の他の構成と同一である。そこで、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの構成において、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と同一である部分には、同一の符号を付して説明を省略する。また、第1変形例に係る電線圧接構造1の構成に対して、第3実施形態に係る電線圧接構造1Cの異なる構成について以下に説明する。
【0081】
本変形例のスロット8は、圧接領域81AC、81BCと、非圧接領域82Cとを有する。本変形例の突出部92Cは、スロット8の非圧接領域82Cの壁部80Cから突出する複数本の突起191、192、193によって形成される。各突起191、192、193は、スロット8の壁部80Cから突出する長さが同一である。各突起191、192、193の先端部は、半球状に形成される。
【0082】
また、本変形例における導体部材7Cは、対向方向Yにおいて、非圧接領域82Cを構成する壁部80Cと、突起191との間には、空間部80s1が形成される。また、本変形例における導体部材7Cは、対向方向Yにおいて隣接する突起191と突起192との間に空間部80s2が形成される。さらに、本変形例における導体部材7Cは、対向方向Yにおいて隣接する突起192と突起193との間に空間部80s3が形成される。その上、本変形例における導体部材7Cは、対向方向Yにおいて、突起193と、非圧接領域82Cを構成する壁部80Cとの間には、空間部80s4が形成される。
【0083】
第3変形例の電線圧接構造1Cは、第1実施形態と同様、押圧部43によって電線Wを挿入方向X1側へ押圧する。それにより、第3変形例の電線圧接構造1Cは、第1実施形態と同様、被覆部W2の一部が突出部92Cによって反対方向X2側へ押圧される。
【0084】
本変形例に係る電線圧接構造1Cは、複数の突起191、192、193によって突出部92Cを構成するため、突起191、192、193における反対方向側の先端部の面積を狭くすることができる。このため、被覆部W2を反対方向X2側へ押圧する応力を大きくすることができるため、確実に、素線W1acを当該素線W1acの反対方向X2側に位置する素線W1aに接触させることができる。
【0085】
なお、本変形例に係る電線圧接構造1Cは、3本の突起191、192、193によって突出部92Cを構成するものを説明した。しかし、本実施形態に係る電線圧接構造1Cは、それに限られず、2本の突起によって突出部を構成してもよいし、4本以上の突起によって突出部92Cを構成してもよい。
【0086】
[第1実施形態の第4変形例]
次に、第1実施形態の第4変形例に係る電線圧接構造1Dについて説明する。図15は、第1実施形態の第4変形例に係る電線圧接構造1Dが有する導体部材7Dの正面図である。
【0087】
第4変形例に係る電線圧接構造1Dの突出部92Dの構成、及び、空間部180s1、180s2、180s3、180s4の構成は、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの突出部92の構成、及び、空間部8s1、8s2の構成と異なる一方、第4変形例に係る電線圧接構造1Dの他の構成は、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの他の構成と同一である。そこで、第4変形例に係る電線圧接構造1Dの構成において、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの構成と同一である部分には、同一の符号を付して説明を省略する。また、第3変形例に係る電線圧接構造1Cの構成に対して、第4変形例に係る電線圧接構造1Dの異なる構成について以下に説明する。
【0088】
本変形例のスロット8は、圧接領域81AD、81BDと、非圧接領域82Dとを有する。本変形例に係る電線圧接構造1Dは、3本の突起291、292、293によって突出部92Dを構成する。スロット8の対向方向Yの両側に位置する突起291、293は、非圧接領域82Dにおける壁部80Dから反対方向Z2側へ向けた突出量が同一である。一方、スロット8の対向方向Yの中央に位置する突起292の非圧接領域82Dにおける壁部80Dから反対方向Z2側へ向けた突出量が、突起291、293の非圧接領域82Dにおける壁部80Dから反対方向Z2側へ向けた突出量よりも少ない。
【0089】
また、本変形例における導体部材7Dは、対向方向Yにおいて、非圧接領域82Dを構成する壁部80Dと、突起191との間には、空間部180s1が形成される。また、本変形例における導体部材7Dは、対向方向Yにおいて隣接する突起291と突起292との間に空間部180s2が形成される。さらに、本変形例における導体部材7Dは、対向方向Yにおいて隣接する突起292と突起293との間に空間部180s3が形成される。その上、本変形例における導体部材7Dは、対向方向Yにおいて、突起293と、非圧接領域82Dを構成する壁部80Dとの間には、空間部180s4が形成される。
【0090】
[第1実施形態の第5変形例]
次に、第1実施形態の第5変形例に係る電線圧接構造1Eについて説明する。図16は、第1実施形態の第5変形例に係る電線圧接構造1Eが有する導体部材7Eの正面図である。
【0091】
第5変形例に係る電線圧接構造1Eの突出部391の構成、及び、空間部280s1の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の突出部92の構成、及び、空間部8s1、8s2の構成と異なる一方、第5変形例に係る電線圧接構造1Eの他の構成は、第1実施形態に係る電線圧接構造1の他の構成と同一である。そこで、第5変形例に係る電線圧接構造1Eの構成において、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と同一である部分には、同一の符号を付して説明を省略する。また、第1変形例に係る電線圧接構造1の構成に対して、第5実施形態に係る電線圧接構造1Eの異なる構成について以下に説明する。
【0092】
本変形例のスロット8は、圧接領域81AE、81BEと、非圧接領域82Eとを有する。本変形例の突出部391は、スロット8の非圧接領域82Eにおいて、対向方向Yにおいて対向する両側面の一方における壁部80Dから、他方の壁部80Dへ向けて突出する。対向方向Yにおいて、突出部391と、スロット8の非圧接領域82Eにおける他方の壁部80Dとの間には、空間部280s1が形成される。また、圧接領域81AEと、非圧接領域82Eとの境界部分には、段部392が形成される。
【0093】
なお、上述した第1実施形態、及び、各変形例において、電線圧接コネクタ100は、2本の電線Wを導体部材7によって電気的に接続するものを説明した。しかし、この実施形態は、それに限られず、2本以上の電線Wを導体部材7によって電気的に接続してもよい。
【0094】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電線圧接構造1Fについて説明する。図17は、第2実施形態に係る電線圧接構造1Fを適用した端子付き電線200の斜視図である。端子付き電線200は、電線Wと、金属端子210と、押圧部材220とを有する。端子付き電線200に適用する電線圧接構造1Fにおける導体部材7の構成は、例えば、第1部分71の構成を有する一方、第2部分72の構成及び接続部分73の構成を有さない点において第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と異なるが、他の構成は同一である。そこで、第2実施形態に係る電線圧接構造1Fの構成において、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態に係る電線圧接構造1の構成と異なる第2実施形態に係る電線圧接構造1の構成について以下に説明する。
【0095】
金属端子210は、例えば、雌端子であり、導電性を有する金属によって形成される。
金属端子210は、直交方向Xにおける一方側に端子接続部211を有し、直交方向Xにおける他方側に電線接続部212を有する。そして、電線接続部212の構成は、第1部分71の電線圧接構造1の構成と同一である。また、端子接続部211は、例えば、内部空間を有する角筒状に形成される。そして、端子接続部211の内部空間には、例えば、雄端子である相手方端子が挿入されて、金属端子210と相手方端子とが接触し、これによって、金属端子210と相手方端子とが電気的に接続される。また、端子接続部211は、対向方向Yにおいて対向する側壁部213a、213bに係合孔214を有する。
【0096】
押圧部材220は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって形成される。押圧部材220は、挿入方向Z1に対して直交する平面に沿う矩形の平板状部221と、平板状部221の底面から、挿入方向Z1側へ突出する押圧部222と、対向方向において対向する一対の押圧係合爪223とを有する。
【0097】
押圧部222は、芯線W1に対して反対方向Z2側に位置する被覆部W2に接触する押圧溝222aが形成される。本実施形態における押圧部材220は、一対の押圧係合爪223を3組有する。各押圧係合爪223は、平板状部221の底面から、挿入方向Z1側へ突出して形成される。そして、3組の押圧係合爪223のうち、直交方向Xの一方側に位置する押圧係合爪223aは、押圧部材220を金属端子210に対して正規の位置に配置した状態では、導体部材7の第1板状部74Aと第2板状部74Bと板状部連結部75とによって形成される凹部170に係合する。また、3組の押圧係合爪223のうち、直交方向Xの中央に位置する押圧係合爪223b、及び、直交方向Xの他方側に位置する押圧係合爪223cは、押圧部材220を金属端子210に対して正規の位置に配置した状態では、側壁部213a、213bの係合孔214に係合する。
【0098】
押圧部材220を金属端子210に対して正規の位置に配置した状態では、金属端子210に対して押圧部222が電線を挿入方向Z1側に押圧する。それにより、第2実施形態に係る電線圧接構造1Fは、第1実施形態と同様、被覆部W2の一部が突出部92によって反対方向X2側へ押圧される。
【0099】
なお、上述した各実施形態の構成、及び、各変形例の構成は、一部の構成を他の一部の構成に組み合わせて適用することができる。
【0100】
また、上述した実施形態及び変形例に係る電線圧接構造1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fの各壁部80は、直交方向Xから視た場合、直線状に形成され、挿入方向Z1に沿って延在するものを説明した。しかし、本実施形態及び変形例に係る電線圧接構造1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fの各壁部80は、直交方向Xから視た場合、挿入方向Z1及び対向方向Yに対して傾斜する直線状に延在してもよいし、曲線状に延在してもよい。もちろん、一対の壁部80は、挿入方向Z1に沿って互いの幅が徐々に狭くなるテーパ状に形成してもよい。
【0101】
さらに、上述した実施形態及び変形例に係る電線圧接構造1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fの導体部材7、7A、7B、7C、7D、7E、7Fは、2枚の板状部74A、74Bを有するものを説明した。しかし、本実施形態及び変形例に係る電線圧接構造1、1A、1B、1C、1D、1E、1Fの導体部材7、7A、7B、7C、7D、7E、7Fは、それに限られず、1枚の板状部74を有してもよいし、3枚以上の板状部74を有してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 電線圧接構造
7、7A、7B、7C、7D、7E、7F 導体部材
8 スロット
8s1、8s2 空間部
80 壁部
80a 開口
81、81AC、81BC、81AD、81BD、81AE、81BE 圧接領域
81A、81B
82、82C、82D、82E 非圧接領域
91 刃部
91d 刃先
D2 圧接部の直交方向における所定の幅
L1 スロットの幅
R1 電線の直径
W 電線
W1 芯線
W1a 素線
W1ab 電線における圧接領域における壁部と接触する素線
W1ac 素線W1abよりも挿入方向側に位置する素線
W2 被覆部
X 直交方向
Y 対向方向
Z1 挿入方向
Z2 反対方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図16
図17