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特許7418310光ルミネセンスを用いた熱機械的応力の可視化とモデル化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】光ルミネセンスを用いた熱機械的応力の可視化とモデル化
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01L1/00 B
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020166973
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2021071477
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】16/668,604
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】515027026
【氏名又は名称】ザ オハイオ ステイト ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】シャイレシュ エヌ.ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】ウメシュ ガンディー
(72)【発明者】
【氏名】ビシュヌ サンダーサン
(72)【発明者】
【氏名】ビジャイ ベンカテシュ
(72)【発明者】
【氏名】スリバツァバ クリシュナン
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-304602(JP,A)
【文献】特開2011-127992(JP,A)
【文献】特開2018-179562(JP,A)
【文献】特開2003-12938(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107290084(CN,A)
【文献】特開2010-281824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00
G01L 5/00
G01B 11/00-11/30
G01R 31/26-31/27
G01N 3/00-3/62
H01L 23/34-23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
前記基板に接合された電子デバイス、
前記電子デバイス上に配置された複数の光ルミネセンス粒子、
前記電子デバイスを照明する照明器、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作していないときに、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットをキャプチャし、かつ電子デバイスが負荷を受けて動作しているときに、前記光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットをキャプチャするセンサ、及び
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械応力を決定する制御モジュール、
を備える、電子システム。
【請求項2】
前記光ルミネセンス粒子は、前記光ルミネセンス粒子が前記照明器によって紫外線光を照射されると、可視光を放出する、請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
前記光ルミネセンス粒子は、蛍光体粒子を含む、請求項1又は2に記載の電子システム。
【請求項4】
前記基板は、ベースプレートに接合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項5】
前記光ルミネセンス粒子は、所定のパターンで配列されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項6】
前記光ルミネセンス粒子は、ランダムパターンで配列されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項7】
前記制御モジュールは、前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記基板と前記電子デバイスとの間の層間剥離を決定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項8】
前記制御モジュールは、前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイスの歪みマップを決定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、前記歪みマップを前記電子デバイスの応力マップに変換する、請求項8に記載の電子システム。
【請求項10】
前記制御モジュールは、前記電子デバイスの表面の線形弾性モデルに基づいて、前記歪みマップを応力マップに変換する、請求項9に記載の電子システム。
【請求項11】
前記センサは、複数の前記光ルミネセンス粒子の発光の強度を検出し、前記制御モジュールが、検出された前記強度に少なくとも一部は基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項12】
前記センサは、複数の前記光ルミネセンス粒子の光ルミネセンス発光の波長を検出し、前記制御モジュールが、検出された前記光ルミネセンス発光の波長に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定する、請求項1~11のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項13】
基板に接着された電子デバイスの表面上に複数の光ルミネセンス粒子を堆積させること、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない場合に、第1の波長の光で前記電子デバイスの前記表面を照らし、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットを決定すること、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作している場合に、前記第1の波長の光で前記電子デバイスの前記表面を照らし、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットを決定すること、及び
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を含む、方法。
【請求項14】
前記電子デバイスの前記表面が前記第1の波長の光で照射されている間に前記光ルミネセンス粒子の位置を決定することが、第2の波長の光を検出できるセンサで電子デバイスの画像をキャプチャすることを含み、前記光ルミネセンス粒子は、前記光ルミネセンス粒子が前記第1の波長の光で照射されると、前記第2の波長の光を放射する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の前記光ルミネセンス粒子が、所定のパターンで前記電子デバイスの前記表面上に堆積される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて前記電子デバイスの歪みマップを決定することを更に含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記歪みマップを前記電子デバイスの応力マップに変換することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電子デバイスの前記表面の線形弾性モデルに基づいて、前記歪みマップを応力マップに変換することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光ルミネセンス粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の強度の第1のセットを決定すること、
前記光ルミネセンス粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作している間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の強度の第2のセットを決定すること、及び
前記強度の第1のセットと前記強度の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を更に含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記光ルミネセンス粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の第1のセットの波長を決定すること、
前記光ルミネセンス粒子が前記第1の波長で光を照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作している間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の波長の第2のセットを決定すること、及び
前記第1のセットの波長と前記波長の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を更に含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、半導体チップ上の熱機械的応力を検出するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、光ルミネセンスを使用して半導体チップ上の熱機械的応力を可視化し、モデル化するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両やその他の高熱環境におけるパワーエレクトロニクスアセンブリ内の半導体の動作は、大きな熱流束を発生させる可能性がある。パワーエレクトロニクスアセンブリの各種層間の熱膨張係数が異なるため、アセンブリの1つ又は複数の層は、熱機械的応力のために撓むことがある。この移動は、半導体チップに亀裂を生じさせるか、さもなければ損傷を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、パワーエレクトロニクスアセンブリ内の半導体の動作中に生じる熱機械的応力を測定するための代替のシステム及び方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施形態において、電子システムは、基板、基板に接合された電子デバイス、電子デバイス上に配置された複数の光ルミネセンス粒子、照明器、センサ、及び制御モジュールを含む。照明器は、電子デバイスを照らす。センサは、電子デバイスが負荷を受けて動作していないときには電子デバイス上の光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットをキャプチャし、電子デバイスが負荷を受けて動作しているときには光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットをキャプチャする。制御モジュールは、位置の第1のセットと位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、電子デバイス上の熱機械的応力を決定する。
【0005】
別の実施形態において、方法は、基板に接合された電子デバイスの表面上に複数の光ルミネセンス粒子を堆積させること、電子デバイスが負荷を受けて動作していない場合に、第1の波長の光で電子デバイスの表面を照明して、電子デバイス上の光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットを決定すること、電子デバイスが負荷を受けて動作している場合に、第1の波長の光で電子デバイスの表面を照明して、電子デバイス上の光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットを決定すること、及び位置の第1のセットと位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、電子デバイス上の熱機械的応力を決定することを含む。
【0006】
本明細書で説明される実施形態によって提供されるこれらの特徴及び追加の特徴は、図面と併せて、以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解されるのであろう。
【0007】
図面に記載された実施形態は、本質的に例示的かつ代表的なものであり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図するものではない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと理解することができる:
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本明細書に示されるか又は記載される1つ以上の実施形態による例示的な電子システムの図を概略的に示す。
図2A図2Aは、本明細書に示されるか又は記載される1つ以上の実施形態による、別の例示的な電子システムの概略図である。
図2B図2Bは、図2Aの電子システムの一部分の斜視図である。
図2C図2Cは、図2Aの電子システムの一部の斜視図である。
図2D図2Dは、図2Cの基板の撮像された一例の画像を示す図である。
図3A図3Aは、図1のエレクトロニクスシステムにおける基板上の光ルミネセンス粒子の一例の配置を示す図である。
図3B図3Bは、図1のエレクトロニクスシステムにおける基板上の光ルミネセンス粒子の移動の一例を示す図である。
図4図4は、図1の電子システムにおける層の配置の概略図である。
図5図5は、図1のエレクトロニクスシステムにおける半導体チップの一例の歪マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、電子システムの一つの実施形態を概略的に示す。図1の電子システムは、基板に接合された電子デバイス、照明器、センサ、及び制御モジュールを備える。複数の光ルミネセンス粒子が、電子デバイス上に配置される。照明器は、光ルミネセンス粒子を照明させるために電子デバイスを照明することができ、それによってセンサがその位置を捕らえることができるようにできる。エレクトロニクスシステムの動作中に、熱機械的応力は、電子デバイスを疲労させ、最終的には電子デバイスと基板との間はんだ接合部のクラック及び/又は層間剥離によって故障させる可能性がある。
【0010】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、電子デバイス上の応力をリアルタイムで可視化することを可能にし、これにより、電子デバイス中のクラック及び/又は電子デバイスが動作中の電子デバイスと基板との間の層間剥離の検出が可能になる。これらの問題をリアルタイムで検出することによって、問題が過酷になる前に予防措置をとることができる。
【0011】
電子デバイス上における光ルミネセンス粒子の存在は、本明細書に記載されるように、電子デバイス上の熱機械的応力をリアルタイムで監視可能にする。電子デバイスが負荷を受けて動作しているとき、照明器は、光ルミネセンス粒子を照らし、それらを発光させ、センサがそれらの動きを追跡することを可能にする。次いで、粒子の移動を使用して、電子デバイス上の熱機械的負荷を監視することができ、その結果、著しい損傷が生じる前に、必要に応じて、予防措置を講じることができる。
【0012】
次に、図1を参照すると、電子システム100の一つの実施形態が図示されている。電子システム100は、概して、基板102、基板102に接合された電子デバイス104、照明器106、センサ108、及び制御モジュール110を備える。
【0013】
基板102は、電子デバイス104が接合されるベースであり、任意の適切な基板であってもよい。非限定的な例としては、銅、ダイレクトボンド銅、金属逆オパール層等が挙げられる。いくつかの実施形態において、電子デバイス104は、DC電圧をAC電圧に変換するためにスイッチを入れたり切ったりする電動車両内の電力制御ユニットの一部である半導体である。他の実施形態において、電子デバイス104は、半導体以外の電子コンポーネントであってもよく、他の環境及び他の目的のための他の電子システムの一部として使用することができる。
【0014】
図2Aを参照すると、別の例の電子システム200が図示されている。図2Aの非限定的な実施例において、電子システム200は、図1の基板102と、基板102に接合された図1の2つの電子デバイス104とを含む。デバイス104は、はんだ層103で基板102に接合される。デバイス104は、ワイヤ107を介してバスバー105に接続することができる。バスバー105は、パワーエレクトロニクスアセンブリ内の他のコンポーネントにデバイス104を電気的に結合する。更に、電子システム200は、ベースプレート112とヒートシンク114とを備える。ベースプレート112は、基板102のためのベースを形成することができ、銅、及びアルミニウム等の任意の適切な材料とすることができる。ヒートシンク114は、基板102及び電子デバイス104を冷却するために使用されてもよい。電子システム200は、ケース116内に封入される。
【0015】
図2Bは、基板102と、基板102に接合された電子デバイス104との斜視図を示す。電子デバイス104が負荷を受けた状態で動作されると、多量の熱が発生しうる。基板102の熱膨張係数と電子デバイス104の熱膨張係数との間の差異は、熱機械的応力を電子デバイス104に加える原因となり得る。これは、図2Bに示されるように、電子デバイス104の部分をx及び/又はy方向に拡張又は収縮(例えば、屈曲)させ得る。上述したように、これは、電子デバイス104の損傷を引き起こす可能性がある。
【0016】
電子デバイス104の膨張又は収縮を可視化するために、図2Cに示されるように、複数の光ルミネセンス粒子300が電子デバイス104の表面上に堆積される。粒子300は、それらが特定の波長(励起波長)の光で照射されると、それらが別の波長(発光波長)の光を発するように、光ルミネセンスの特性を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、光ルミネセンス粒子300は、紫外光を照射されると可視光を発する蛍光体である(すなわち、粒子300の励起波長は電磁スペクトルの紫外線部分にあり、粒子300の発光波長は電磁スペクトルの可視部分にある)。より具体的には、いくつかの実施形態において、光ルミネセンス粒子300は、約345~350nmの励起波長及び約530~540nmの発光波長を有する。粒子300は、電磁スペクトルの他の部分において他の励起波長及び発光波長を有する可能性があることを理解されたい。
【0018】
蛍光体は、高温で安定であるため、本明細書に記載されるような電子システム100での使用に特に望ましい。しかし、他の実施形態において、粒子300は、材料が適切な光ルミネセンス特性を有する限り、凝集量子ドット又は他のフォトクロミック材料等の他の材料を含むことができる。
【0019】
光ルミネセンス粒子300は、220nm(おおよその人間の視覚限界)~20ミクロンの範囲の粒子サイズ(例えば、粒子直径)を有し得る。非限定的な例において、光ルミネセンス粒子300は、5~15ミクロンの間の粒子径を有する。いくつかの実施形態において、粒子300は、スプレー塗装可能なクリアコートを使用して電子デバイス104の表面上に堆積される。他の実施形態において、電子デバイス104の表面上に粒子300を堆積させるために、他の方法を使用することができる。図4を参照すると、いくつかの実施形態において、光ルミネセンス粒子300は、バインダ層402によって電子デバイス104に接着される微粒子層400内に提供される。
【0020】
次に、図3Aを参照すると、電子デバイス104の表面は、その表面に配置された複数の光ルミネセンス粒子300を有する。いくつかの実施形態において、光ルミネセンス粒子300は、基板102の表面上に所定のパターンで配置される。他の実施形態では、光ルミネセンス粒子300は、ランダムパターンで基板102の表面上に配置される。
【0021】
電子デバイス104は、負荷を受けた状態で動作され、加熱されると、熱機械的応力に曝され、電子デバイス104を屈曲させ、電子デバイス104の表面上の光ルミネセンス粒子300は、電子デバイス104が屈曲することにつれて移動する。図3Bは、光ルミネセンス粒子300が図3Aのそれらの初期開始位置(図3Bに鎖線で示される)から新しい位置に移動した例を示す。電子デバイス104が負荷を受けて動作している間、光ルミネセンス粒子300の動きを監視することによって、電子デバイス104上の熱機械的応力をリアルタイムで監視することができる。
【0022】
図1に戻って説明すると、照明器106は、電子デバイス104の上方に配置されている。照明器106は、光ルミネセンス粒子300の励起波長の光で電子デバイス104の表面を照らす。これは、粒子300の発光を、センサ108によって見ることができるように誘発する。照明器106は、発光ダイオード、レーザ、又は光ルミネセンス粒子300の励起波長の光で電子デバイス104の表面を照明することができる任意の他の光源を含むことができる。
【0023】
更に図1を参照すると、センサ108は、電子デバイス104の上方に配置される。センサ108は、発光として光ルミネセンス粒子300の画像をキャプチャする。すなわち、センサ108は、光ルミネセンス粒子300が発光波長で放射する光をキャプチャする。いくつかの実施形態では、センサ108はカラーカメラである。他の実施形態では、センサ108は白黒カメラである。更に他の実施形態において、センサ108は、光ルミネセンス粒子300がそれらの発光波長で光を発するときにその画像をキャプチャするように構成される別の装置であってもよい。
【0024】
図1に示すように、照明器106及びセンサ108は、電子デバイス104から水平方向にわずかにずれている。いくつかの実施形態において、照明器106又はセンサ108は、電子デバイス104の真上に配置されてもよい。照明器106又はセンサ108のいずれかが電子デバイス104から斜めになっている場合、照明器106又はセンサ108は、それらが電子デバイス104の表面に向けられるように角度をつけることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、照明器106及びセンサ108は、光ルミネセンス粒子300をそれらの励起波長の光で照らし、それらがそれらの発光波長で光を発するときに粒子300の画像をキャプチャする単一の装置に含まれる。図2Cは、電子デバイス104の真上に配置された、照明器及びセンサの両方として動作する例示的な装置210を示す。図2Dは、電子デバイス104の表面上に存在し、センサ108によってキャプチャされた光ルミネセンス粒子300の一例の画像220を示す。図2Dの例において、粒子300は、300ミクロンの粒径を有する。
【0026】
図1に戻って参照すると、制御モジュール110は、本明細書で更に詳細に説明するように、照明器106及びセンサ108の動作を制御し、センサ108によってキャプチャされた画像に基づいて、電子デバイス104上の熱機械的応力を決定する。制御モジュール110は、コンピュータを含むことができる。いくつかの実施形態において、制御モジュール110は、電子デバイス104が負荷を受けて動作する間、電子デバイス104の表面上の光ルミネセンス粒子300の動きを監視することによって、電子デバイス104上の熱機械的応力を決定する。
【0027】
動作中、光ルミネセンス粒子300は、電子システム100は負荷を受けて動作していない間に、電子デバイス104の表面上に堆積される。次いで、照明器106が電子デバイス104の表面を照らし、センサ108が電子デバイス104の表面の画像をキャプチャする。この画像は、電子デバイス104の表面上の光ルミネセンス粒子300の初期位置を示そう。これは、後述するように、負荷を受けて動作している場合に、電子デバイス104の表面の画像と比較するためのベースラインとして使用されることがある。
【0028】
センサ108が電子デバイス104の表面上の光ルミネセンス粒子300の初期位置を示す電子デバイス104の画像をキャプチャすると、制御モジュール110は、この画像及び/又はこれらの初期位置を記憶する。次いで、電子デバイス104は、負荷を受けて動作される。電子デバイス104が負荷を受けた状態で動作している間、システム100は、照明器106で電子デバイス104の表面を連続的又は周期的に照明し、センサ108で電子デバイス104の画像をキャプチャする(例えば、各画像キャプチャの間に設定された時間隔で画像を周期的にキャプチャする)ことによって、粒子300の移動をモニタリングする。
【0029】
電子デバイス104が熱機械的応力によって膨張又は収縮すると、光ルミネセンス粒子300は上で説明し、図3Bに図示されているように、それらの初期位置から移動するのであろう。特に、膨張又は収縮する電子デバイス104の表面上の位置における粒子300は、電子デバイス104のその部分と共に移動する。したがって、特定の粒子300の移動は、電子デバイス104の特定の部分の膨張又は収縮に対応する。電子デバイス104の表面上の粒子300の動きを可視化することによって、電子デバイス104上の応力を可視化することができる。粒子300のいずれかがその初期位置から変位するほど、それらの粒子の位置における電子デバイス104上の応力が大きくなる。したがって、電子デバイス104が負荷を受けて動作していないときの粒子300の初期位置(例えば、図3Aに示される位置)と、電子デバイス104が負荷を受けて動作しているときの粒子300の位置(例えば、図3Bに示される位置)とを比較することによって、制御モジュール110は、図5に示される、例の歪みマップ500のような歪みマップを作成することができる。歪みマップ500は、電子デバイス104の表面に沿った各粒子300の変位量をプロットしたヒートマップである。したがって、歪みマップ500は、電子デバイス104上の各位置における歪み量を示す。
【0030】
電子デバイス104のために歪みマップが作成されると、制御モジュール110は、歪みマップを、電子デバイス104上の各位置における応力の量を示す応力マップに変換する。非限定的な実施例において、制御モジュール110が電子デバイス104の表面の線形弾性モデルを使用して、歪みマップを応力マップに変換する。電子デバイス104の表面の線形弾性モデルは、電子デバイス104が負荷を受けて動作しているときに、電子デバイス104の表面上の粒子300の予測される変位を決定する。粒子300の予想される変位は、基準データセットとして使用することができる。そして、粒子300の実際の変位が基準データから期待される量よりも大きい場合、これは、例えば、基板102と電子デバイス104との間はんだ層の損傷に起因して、電子デバイス104と基板102との間の密着性に乏しいことを示している。密着性が悪いと、高温にさらされたときに、はんだが基板102よりも膨張する可能性がある。したがって、電子デバイス104の表面上の粒子300の変位は、電子デバイス104の表面の損傷に相関させることができる。
【0031】
様々なオープンソースソフトウェアを使用して、歪みマップを、例えばNI-CORR及びOpen FTM等の応力マップに変換するために、上記の分析を実行することができる。いくつかの実施形態において、制御モジュール110は、粒子300の実際の変位を基準データセットと比較することなく、歪みマップを応力マップに変換する。これらの実施形態において、制御モジュール110は、基板102及び電子デバイス104を含む材料の周知の特性を使用して、電子デバイス104の動作中に粒子300の予測される変位を判断する。これらの既知の材料特性は、制御モジュール110が基板102と電子デバイス104との間の均一な接着を仮定して、粒子300の特定の予想される挙動を決定することを可能にする。次いで、電子デバイス104が負荷を受けて動作している間に、この期待される挙動と粒子300の実際の測定された転位との間の差異に基づいて、応力マップが作成される。
【0032】
いくつかの実施形態では、光ルミネセンスであることに加えて、粒子300はまた、それらが発光する光の強度が、それらの発光波長の光によって照射される際に、それらの温度に応じて変化するように、熱ルミネセンスの特性を有する。これらの実施形態において、基板102と電子デバイス104との間はんだ層が損傷を受けた場合、損傷が存在する領域では、電子デバイス104から基板102へ、及びヒートシンク114のような基板102の下の冷却面への効果的な熱伝達が存在しないであろう。これにより、電子デバイス104上に高温領域のポケットが形成される可能性がある。粒子300が熱ルミネセンスを有する実施形態において、粒子300は、基板102と電子デバイス104との間に著しい温度差がある領域において、より発光するのであろう。
【0033】
上述したように、粒子300が熱ルミネセンスを示す実施形態において、照明器106は、デバイス104の表面を照らし、センサ108は、電子デバイス104が負荷を受けて動作していない場合に、粒子300の発光の強度を測定する。これは、粒子300のベースライン発光強度として使用することができる。次いで、電子デバイス104が負荷を受けて動作している間、照明器106は再び電子デバイス104の表面を照らし、センサ108は、粒子の発光の強度を測定する。次いで、制御モジュール110は、電子デバイス104が負荷を受けて動作している間に測定された光ルミネセンス粒子300の強度とベースラインルミネセンス強度とを比較して、電子デバイス104の表面上の各位置における差に基づいて、歪みマップを作成する。歪みマップは、上述の技術を使用して応力マップに変換されてもよい。いくつかの実施形態において、制御モジュール110は、粒子300の変位を監視する上述の方法を、粒子300の光ルミネセンス強度を監視する方法とセットみ合わせて使用し、電子デバイス104への損傷を判定する。
【0034】
いくつかの実施形態において、粒子300の光ルミネセンス発光の波長は、粒子300が温度変化を受けたときに変化する。これらの実施形態において、センサ108は、粒子300による発光の波長の変化を検出し(例えば、センサは、カラーカメラであってもよい)、制御モジュール110は、少なくとも部分的に、この波長の変化に基づいて、電子デバイス104の歪みマップを作成する。次いで、歪みマップは、上述の技術を使用して応力マップに変換されてもよい。
【0035】
本明細書に記載される実施形態は、パワーエレクトロニクスアセンブリ内の電子デバイス上の熱機械的応力を、電子デバイスの表面上の光ルミネセンス粒子の移動を追跡することによって、リアルタイムで可視化及び監視することを可能にすることが、ここで理解されるべきである。電子デバイスが負荷を受けて動作している間にこれらの応力を監視することによって、デバイスに著しい損傷が生じる前に、予防措置をとることができる。
【0036】
「実質的に」及び「約」という用語は、本明細書では任意の定量的な比較、値、測定、又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用され得ることに留意されたい。これらの用語はまた、本明細書中では、問題の主題の基本的な機能の変化をもたらすことなく、定量的な表現が記載された参考文献から変化し得る程度を表すために利用される。
【0037】
本明細書では特定の実施形態を図示し、説明してきたが、特許請求される主題の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正を行うことができることを理解されたい。更に、特許請求される主題の様々な態様が本明細書で説明されてきたが、そのような態様は組み合わせて利用される必要はない。したがって、添付の請求項は、特許請求される主題の範囲にある全てのそのような変更及び修正をカバーすることが意図されている。
【0038】
本発明はまた、以下の態様を含む:
《態様1》
基板、
前記基板に接合された電子デバイス、
前記電子デバイス上に配置された複数の光ルミネセンス粒子、
前記電子デバイスを照明する照明器、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作していないときに、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットをキャプチャし、かつ電子デバイスが負荷を受けて動作しているときに、前記光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットをキャプチャするセンサ、及び
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械応力を決定する制御モジュール、
を備える、電子システム。
《態様2》
前記光ルミネセンス粒子は、前記照明器によって紫外線光を照射されると、可視光を放出する、態様1に記載の電子システム。
《態様3》
前記光ルミネセンス粒子は、蛍光体粒子を含む、態様1の電子システム。
《態様4》
前記基板は、ベースプレートに接合されている、態様1に記載の電子システム。
《態様5》
前記光ルミネセンス粒子は、所定のパターンで配列されている、態様1の電子システム。
《態様6》
前記光ルミネセンス粒子は、ランダムパターンで配列されている、態様1に記載の電子システム。
《態様7》
前記制御モジュールは、前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記基板と前記電子デバイスとの間の層間剥離を決定する、態様1に記載の電子システム。
《態様8》
前記制御モジュールは、前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイスの歪みマップを決定する、態様1に記載の電子システム。
《態様9》
前記制御モジュールは、前記歪みマップを前記電子デバイスの応力マップに変換する、態様8に記載の電子システム。
《態様10》
前記制御モジュールは、前記電子デバイスの表面の線形弾性モデルに基づいて、前記歪マップを応力マップに変換する、態様9に記載の電子システム。
《態様11》
前記センサは、複数の前記光ルミネセンス粒子の発光の強度を検出し、前記制御モジュールが、検出された前記強度に少なくとも一部は基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定する、実施形態1に記載の電子システム。
《態様12》
前記センサは、複数の前記光ルミネセンス粒子の光ルミネセンス発光の波長を検出し、前記制御モジュールが、検出された前記光ルミネセンス発光の波長に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定する、実施形態1に記載の電子システム。
《態様13》
基板に接着された電子デバイスの表面上に複数の光ルミネセンス粒子を堆積させること、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない場合に、第1の波長の光で前記電子デバイスの前記表面を照らし、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第1のセットを決定すること、
前記電子デバイスが負荷を受けて動作している場合に、前記第1の波長の光で前記電子デバイスの前記表面を照らし、前記電子デバイス上の前記光ルミネセンス粒子の位置の第2のセットを決定すること、及び
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を含む、方法。
《態様14》
前記電子デバイスの前記表面が前記第1の波長の光で照射されている間に前記光ルミネセンス粒子の位置を決定することが、第2の波長の光を検出できるセンサで電子デバイスの画像をキャプチャすることを含み、光ルミネセンス粒子は、前記第1の波長の光で照射されると、前記第2の波長の光を放射する、態様13に記載の方法。
《態様15》
複数の前記光ルミネセンス粒子が、所定のパターンで前記電子デバイスの前記表面上に堆積される、態様13に記載の方法。
《態様16》
前記位置の第1のセットと前記位置の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて前記電子デバイスの歪みマップを決定することを更に含む、態様13に記載の方法。
《態様17》
前記歪みマップを前記電子デバイスの応力マップに変換することを更に含む、態様16に記載の方法。
《態様18》
前記電子デバイスの前記表面の線形弾性モデルに基づいて、前記歪みマップを応力マップに変換することを更に含む、態様17に記載の方法。
《態様19》
前記粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の強度の第1のセットを決定すること、
前記粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作している間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の強度の第2のセットを決定すること、及び
前記強度の第1のセットと前記強度の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を更に含む、態様13に記載の方法。
《態様20》
前記粒子が前記第1の波長の光で照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作していない間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の第1のセットの波長を決定すること、
前記粒子が前記第1の波長で光を照射されており、かつ前記電子デバイスが負荷を受けて動作している間に、前記光ルミネセンス粒子の発光の波長の第2のセットを決定すること、及び
前記第1のセットの波長と前記波長の第2のセットとの間の差に少なくとも部分的に基づいて、前記電子デバイス上の熱機械的応力を決定すること、
を更に含む、態様13に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5