(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】γ-アミノ酪酸を含有する容器詰コーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2020178362
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】結城 沙織
(72)【発明者】
【氏名】谷 鷹明
(72)【発明者】
【氏名】神崎 範之
(72)【発明者】
【氏名】片山 透
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】コーヒーGABA(ギャバ)配合 微糖(C163),2017年07月19日,pp.1-10,retrieved on 2023.09.15, retrieved from the internet,https://yakujihou-marketing.net/database/c163/
【文献】コーヒー・コーヒー飲料・コーヒー入り清涼飲料の違いとは?,2020年02月12日,pp.1-6,retrieved on 2023.09.15, retrieved from the internet,https://xn--eckl3qmbc2cv902cnwa746d81h183l.com/instructor-blog/200212coffee_labeling/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎コーヒー豆抽出物
及びpH調整剤を含む容器詰
ブラックコーヒー飲料であって、
飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.0g以上のコーヒー豆抽出物を含み、
11~70mg/100gのγ-アミノ酪酸を含有する、容器詰
ブラックコーヒー飲料。
【請求項2】
γ-アミノ酪酸含有量が15~60mg/100gである、請求項1に記載の容器詰
ブラックコーヒー飲料。
【請求項3】
pHが5.0~7.0である、請求項1又は2に記載の容器詰ブラックコーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディ感が増強された容器詰コーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好性が高く、広く世界中で愛飲されている。コーヒー飲料が消費者に提供される形態は多岐に亘り、例えば家庭や飲食店等で直接提供される形態(所謂レギュラーコーヒー)の他、小売店や自動販売機でRTD(READY TO DRINK)タイプの容器詰コーヒー飲料の形態でも提供されている。
【0003】
容器詰コーヒー飲料は、いつでも手軽にコーヒーを楽しむことができるという利便性により、全清涼飲料市場の中において最大の市場規模を有しているが、抽出後にすぐ飲用に供されるレギュラーコーヒーと比較した場合には、呈味や香味が弱くコク味を感じにくいという問題がある。これは、容器詰コーヒー飲料は、製造時に過酷な加熱殺菌が行われるために化学変化が起こりコーヒー飲料の香味が変化すること、長期保存中のpH変化を抑制するために配合されるpH調整剤由来の味がコーヒー飲料本来の香味を損なうこと等の理由が挙げられる。
【0004】
そこで、容器詰コーヒー飲料のコク味を付与する方法が種々提案されている。不溶性のコーヒー粉末(微粉砕コーヒー粉末)を配合する方法(特許文献1)、サイクロデキストリンを添加する方法(特許文献2)、馬鈴薯由来でDEが2以上5未満であるデキストリンを添加する方法(特許文献3)、イソクエルシトリン及びその糖付加物をカフェインに対して一定の量比で配合する方法(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-164401号公報
【文献】特開昭54-145268号公報
【文献】特開2012-115247号公報
【文献】特開2015-119701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーヒー飲料のボディ感を増強するには、コーヒー固形分を増やせばよいと考えられる。しかしながら、容器詰コーヒー飲料において単にコーヒー固形分を増やしても、コーヒーの苦味、酸味等の風味のバランスが損なわれ、効果的にボディ感を増強することはできない。
【0007】
本発明は、過酷な加熱殺菌が施され、かつpH調整剤が配合されるような容器詰コーヒー飲料において、ボディ感が十分に付与された容器詰コーヒー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定量のγ-アミノ酪酸を含有させることにより、容器詰コーヒー飲料のボディ感を増強でき、その目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1]焙煎コーヒー豆抽出物を含む容器詰コーヒー飲料であって、
飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.0g以上のコーヒー豆抽出物を含み、
11~70mg/100gのγ-アミノ酪酸を含有する、容器詰コーヒー飲料。
[2]γ-アミノ酪酸含有量が15~60mg/100gである、[1]に記載の容器詰コーヒー飲料。
[3]pH調整剤を含む、[1]又は[2]に記載の容器詰コーヒー飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、加熱殺菌が施され、かつpH調整剤が配合されるような容器詰コーヒー飲料であるにも関わらず、十分なボディ感が付与された嗜好性の高いコーヒー飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(コーヒー飲料)
家庭や飲食店等で抽出後にすぐ飲用に供されるレギュラーコーヒーでは、コーヒーを口に含んだ時の印象や重量感、すなわち苦味、酸味等の呈味、さらにはその他の呈味成分との共存により構成される総体としてのボディ(「コク」や「厚み」)を、「フルボディ(full-bodied)」や「ライトボディ」といった用語で表現する。具体的には、一口飲んだ時に「口の中にしっかりとした味わいが広がる」「グッと来る」「後味が濃い」「ストロングテイスト」「重い」と感じるコーヒーをフルボディと呼び、「さらっとしている」「後味がすっきり」「ライトテイスト」「軽い」と感じるコーヒーをライトボディと呼ぶ。
【0012】
本発明の飲料は、十分なボディ感が付与されたコーヒー飲料である。本発明の飲料が目標とするボディ感は、レギュラーコーヒーのフルボディのような印象や重量感である。本発明の十分なボディ感が付与されたコーヒー飲料とは、加熱殺菌前のコーヒー飲料やpH調整剤を配合しないコーヒー飲料と同程度の十分なボディ感が感じられる飲料である。本発明のコーヒー飲料は、飲料を飲み込んだ後もその余韻(後味)を楽しむことができる。
【0013】
本発明におけるコーヒー飲料は、焙煎コーヒー豆抽出物を主とするものであり、公正取引委員会が告示した「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」で規定される「コーヒー」、すなわち飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.0g以上のコーヒー豆抽出物を含むものをいう。同規約において「コーヒー飲料」と規定される内容量100g中の生豆換算量2.5g以上5g未満のものや、「コーヒー入り清涼飲料」と規定される内容量100g中の生豆換算量1g以上2.5g未満のものは本発明のコーヒー飲料ではない。なお、同規約の第2条には以下の通りに記載されている:
「第2条 この規約で「コーヒー飲料等」とは、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料であって、次のいずれかに該当するものをいう。ただし、粉末飲料、飲用乳の表示に関する公正競争規約の適用を受けるもの、豆乳類の表示に関する公正競争規約の適用を受けるもの及び酒税法(昭和28年法律第6号)に規定する酒類を除く。
(1)この規約で「コーヒー」とは、内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で5グラム以上のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものをいう。
(2)この規約で「コーヒー飲料」とは、内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で2.5グラム以上5グラム未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものをいう。
(3)この規約で「コーヒー入り清涼飲料」とは、内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で1グラム以上2.5グラム未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものをいう。」
また、「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約施行規則」の第1条には、コーヒー生豆換算の定義として、以下の通り記載されている:
「第1条 規約第2条第1項に規定するコーヒー生豆換算は、次に掲げる基準により算出する。
(1)焙煎豆を使用するときは1.3倍
(2)インスタントコーヒーを使用するときは3.0倍
(3)コーヒー抽出液を使用するときはその製造者による証明」。
【0014】
本発明は、pH調整剤が配合され、加熱殺菌されるコーヒー飲料において不足しがちなボディ感を、飲料100gあたりのコーヒー豆抽出物の量が生豆換算で5.0g以上という高いコーヒー豆使用量と、後述のγ-アミノ酪酸の添加とにより補い、コーヒー飲料に十分なボディ感を付与したものである。
【0015】
本発明のコーヒー飲料は、焙煎コーヒー豆抽出物を含む飲料で、そのまま摂取可能な液体形態の飲料であれば、ブラックコーヒー飲料であっても、ミルク入りコーヒー飲料であってもよい。ここで、本明細書でいうブラックコーヒー飲料とは、実質的に乳分を含まないコーヒー飲料をいい、ミルク入りコーヒー飲料とは、ミルク風味やミルク感を付与するための成分(乳分)が添加されたコーヒー飲料をいう。乳分とは、主に乳、牛乳及び乳製品のことをいい、例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮乳、無糖れん乳、全粉乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、脱脂乳、濃縮ホエイ、脱脂濃縮乳、加糖脱脂れん乳、脱脂粉乳、ホエイパウダーなどが挙げられる。
【0016】
本発明のコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の種類は、特に限定されない。栽培樹種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等が挙げられ、コーヒー品種としては、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロ等が挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。本発明ではコーヒー豆を焙煎して焙煎コーヒー豆とし、焙煎コーヒー豆を抽出して焙煎コーヒー豆抽出物として飲料に用いる。なお、本明細書でいうコーヒー豆抽出物には、コーヒー豆の抽出液、及び抽出液を乾燥処理して粉末化した粉末状のものが含まれる。コーヒー豆抽出物は、常法により製造することができる。焙煎コーヒー豆の焙煎方法については特に制限はなく、焙煎温度、焙煎環境についても何ら制限はなく、通常の方法を採用できる。さらに、その焙煎コーヒー豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆を粗挽き、中挽き、細挽き等に粉砕した粉砕物から水や温水(0~100℃)を用いて10秒~30分間抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式などがある。
【0017】
本発明のコーヒー飲料は、飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.0g以上のコーヒー豆抽出物を含むが、コーヒー飲料中のコーヒー固形分としては、コーヒー固形物換算で0.9~1.8重量%が好ましく、0.9~1.6重量%がより好ましく、1.0~1.5重量%がさらに好ましい。ここで、コーヒー固形分とは、コーヒー原料を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させて水分を除いた後の、乾固物の重量のことをいう。すなわち、コーヒー飲料におけるコーヒー固形分は、コーヒー飲料に含まれ得る可溶性固形分のうち、乳分、甘味成分、pH調整剤、香料等のコーヒー豆に由来しない成分を除いた固形分をいう。コーヒー抽出液中のコーヒー固形分の含有量は、コーヒー抽出液のBrix(%)に相当し、当該Brixは、糖度計(糖用屈折計)を用いて測定することができる。
【0018】
(γ-アミノ酪酸)
本発明は、γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid, 以下「GABA」と略記する)を添加することにより容器詰コーヒー飲料のボディ感を増強する。
【0019】
GABAは、野菜類、果物類、穀類、発酵食品等に幅広く含まれるアミノ酸の一種である。本発明に用いられるGABAとしては、特に限定されるものではなく、例えば野菜類、果物類、穀類などから抽出されたGABA、醗酵により生産されたGABA、有機合成により得られたGABA等を用いることができる。飲料自体の香味への影響を最小限にして本発明の効果を享受するために、本発明の飲料に用いるGABAとしては、GABAを80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有するGABAの精製品を使用することが好ましい。精製品の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものを用いることができる。市販されているGABAの精製品としては、GABA100%ピュアパウダー(NOW FOODS社)、オリザギャバ(登録商標)エキスHC-90(オリザ油化社)などがある。
【0020】
本発明においては、飲料中のGABAの濃度が11mg/100g以上、好ましくは15mg/100g以上、さらに好ましくは20mg/100g以上、特に好ましくは25mg/100g以上となるように添加する。GABAの含有量が11mg/100gに満たない場合は、本発明の効果が十分に得られないことがある。また、GABAの含有量は70mg/100g以下が好ましく、65mg/100g以下がより好ましく、60mg/100g以下がさらに好ましい。GABAの含有量は、アミノ酸分析装置を用いて測定することができる。
【0021】
(容器詰コーヒー飲料)
本発明のコーヒー飲料は、小売店や自動販売機で提供されるRTD(READY TO DRINK)タイプの容器詰コーヒー飲料である。本発明のコーヒー飲料に使用される容器は、一般のRTD対応の飲料用の容器と同様に、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などであり、本発明のコーヒー飲料はこれらに詰めた通常の形態で提供することができる。容器内のコーヒー飲料の容量は、特に限定されないが、例えば150mL~1000mLであり、好ましくは190mL~800mLである。
【0022】
(pH調整剤)
常温で長期保存可能な容器詰コーヒー飲料には、通常、殺菌時におけるpH低下を緩和する目的でpH調整剤が配合される。このpH調整剤に由来する塩味、ぬめり、キレ味の悪さがコーヒー飲料本来の香味を損ない、コーヒー飲料のボディ感を低下させる一因となり得る。本発明のコーヒー飲料は、飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.0g以上のコーヒー豆抽出物を含むという高いコーヒー豆使用量と、一定範囲の量のγ-アミノ酪酸の添加とにより、十分なボディ感が付与される。したがって、本来ボディ感が不足しがちなpH調整剤が配合されたコーヒー飲料は、本発明によりボディ感の不足を補うことができ、本発明の効果を顕著に享受できる観点から、好ましい態様である。pH調整剤としては、殺菌時におけるpH低下を緩和しうる成分で、水に溶解した時にアルカリ性を示す物質、具体的には、炭酸水素ナトリウム(重曹)、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウムなどが用いられる。本発明のコーヒー飲料はのpHは、5.0~7.0であることが好ましく、5.3~6.8であることがより好ましく、5.3~6.5であることがさらに好ましい。
【0023】
(加熱殺菌済飲料)
容器詰コーヒー飲料は、製造時に過酷な加熱殺菌が行われるため、加水分解を主とする化学変化が起こり、コーヒー飲料の香味が変化してボディ感が低減することが知られている。本発明のコーヒー飲料は、このような加熱処理をしたコーヒー飲料のボディ感の不足を補強し得ることから、加熱処理、すなわち加熱殺菌済のコーヒー飲料は本発明の飲料の好適な態様である。加熱処理の条件は、例えば、食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択することができ、具体的には、60~150℃、好ましくは90~150℃、より好ましくは110~150℃で、1秒間~60分間、好ましくは1秒間~30分間とすることができる。より詳細には、容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス等)を使用する場合には、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器(PETボトル、紙容器等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却した後、その非耐熱性容器に充填することができる。本発明の所期の効果を顕著に発現することから、加熱処理が、100℃を超える過酷な加熱条件の加熱殺菌済のコーヒー飲料は本発明の飲料の特に好適な態様である。
【0024】
(その他成分)
その他、本発明の飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、飲料に一般的に配合される成分、例えば、甘味成分、酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウムなど)、香料、ビタミン、乳化剤、増粘安定剤等を適宜添加することができる。
【0025】
ここで、甘味成分とは甘味を呈する成分のことをいう。具体的には、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、ソルガム糖、メープルシュガーなどの含蜜糖、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒糖など)、液糖などの精製糖、単糖類(ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖など)、二糖類(蔗糖 、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなど)、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)、糖アルコール類(エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、オリゴ糖アルコール、粉末還元麦芽糖水飴)などのような糖質甘味料の他、天然非糖質甘味料(ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等)や合成非糖質甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK等)のような高甘味度甘味料などの甘味料が挙げられる。中でも、アセスルファムカリウム及びステビア抽出物から選択される1種以上の甘味料を使用したコーヒー飲料は、本発明の効果の顕著さから、好適な態様である。
【0026】
(製造方法)
本発明のコーヒー飲料は、原料としてGABAを配合する以外は、通常のコーヒー飲料と同じようにして製造することができる。すなわち、焙煎コーヒー豆抽出物とGABAとを混合して調合液を調製する工程、pH調整剤を配合して調合液のpHを5.0~7.0に調整する工程、調合液を容器に充填する工程、加熱殺菌する工程を含む工程により製造される。
【0027】
本発明のコーヒー飲料は、コーヒー豆の使用量が高い飲料である。本発明の飲料がブラックコーヒー飲料である場合、製造時や保存中のコーヒー成分の凝集、沈殿を抑制する目的で、調合液を清澄濾過工程に供してもよい。濾過機は、特に制限されるものではないが、例えば、フィルターカートリッジや、膜を用いた方法が挙げられる。フィルターカートリッジを用いた濾過工程では、コーヒーのボディ感を創出するのに重要な成分であるコーヒー油分が吸着除去されることがあり、容器詰コーヒー飲料のボディ感が一層低減することが知られている。本発明のコーヒー飲料は、このような清澄濾過工程を経たコーヒー飲料のボディ感の不足を補強し得ることから、清澄濾過工程を含む工程を経て製造されるブラックコーヒー飲料は、本発明の好適な態様の一つである。フィルターカートリッジとしては、ポリプロピレン等の不織布等を素材として用いて作製し、固形分を物理的な捕捉のみで取り除くことができるフィルター(例えば、住友スリーエム社製のPPK-010、PPK-005等)や、素材の吸着作用によって取り除くことができるフィルター(例えば、住友スリーエム社製のゼータプラス(登録商標)30C、ゼータプラス(登録商標)50C等、フィルテック社製のNA45KS、NA60KS、NA90KS、NA150KS、NA300KS等)を用いることができる。
【0028】
本発明のコーヒー飲料がミルク入りコーヒー飲料である場合、通常、加熱殺菌する工程の前に、均質化処理工程を含む。この均質化処理により、加熱殺菌時及び保存時の乳分の分離が抑制できるが、乳分の脂肪球の粒子径が1μm以下程度にまで微細化されるために、ボディ感がより不足しやすくなる。本発明のコーヒー飲料は、このような均質化処理を経たコーヒー飲料のボディ感の不足を補強し得ることから、均質化処理を経て製造されるミルク入りコーヒー飲料は、本発明の好適な態様の一つである。均質化処理は、高圧ホモジナイザーなどの均質機を用いて行うことができる。均質化する際の圧力は、特に制限されないが、通常10~50MPa、好ましくは10~40MPa、さらに好ましくは10~30MPa程度である。均質化処理を行う際の温度としては、30~70℃、好ましくは40~70℃の温度を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0030】
実験例1 無糖コーヒー飲料の調製(1)
焙煎度L値18のアラビカ種コーヒー豆を中挽きに粉砕した後、コーヒー豆の重量の約14倍の重量の95℃の熱水でドリップ抽出を行った。抽出終了後は抽出液を速やかに25℃以下程度まで冷却し、遠心分離(クラリファイアー)により抽出後のコーヒー豆の固液分離を行って焙煎コーヒー豆抽出液を調製した(対照品1:Brix 1.3、pH5.8)。また、このコーヒー豆抽出液をポリプロピレン不織布のフィルターカートリッジを用いて清澄濾過したコーヒー豆抽出液を調製した(対照品2:Brix 1.3、pH5.8)。さらに、対照品2にpHが6.6になるように炭酸水素ナトリウムを添加したコーヒー飲料を調製し(対照品3:Brix 1.3、pH6.6)、このコーヒー飲料185gを190mL用缶に充填し、レトルト殺菌(130℃、5分)を行い、容器詰コーヒー飲料を製造した(対照品4:Brix 1.3、pH6.2)。
【0031】
得られた対照品1~4について、専門パネル5名による官能評価を行った。パネルは、提示されたペアのうちどちらの飲料がボディ感をより強く感じるか、2点識別試験により評価した。結果を表1に示す。ボディ感は、対照品1>対照品2>対照品3>対照品4の順に低下した。これより、容器詰コーヒー飲料の製造におけるポリプロピレン不織布等を用いた清澄濾過工程、pH調整剤の添加工程、加熱殺菌工程の各工程によりボディ感が低減することが示唆された。
【0032】
【0033】
実験例2 無糖コーヒー飲料の調製(2)
GABAを配合すること以外は、実験例1と同様にして容器詰コーヒー飲料を製造した。具体的には、焙煎度L値18のアラビカ種コーヒー豆を中挽きに粉砕した後、コーヒー豆の重量の約14倍の重量の95℃の熱水でドリップ抽出を行った。抽出終了後は抽出液を速やかに25℃以下程度まで冷却し、遠心分離(クラリファイアー)により抽出後のコーヒー豆の固液分離を行い、さらにポリプロピレン不織布のフィルターカートリッジを用いて清澄濾過し、焙煎コーヒー豆の抽出物(Brix 1.3、pH5.8)を得た。この焙煎コーヒー豆の抽出物に、γ-アミノ酪酸(GABA)の含有量が5~80mg/100gの濃度となるようにGABA(純度99%以上)を添加し、pHが6.6になるように炭酸水素ナトリウム(pH調整剤)を添加してよく攪拌し、飲料100g中にコーヒー生豆換算で6.3gのコーヒー豆抽出物を含むブラックコーヒー飲料を得た。この飲料185gを190mL用缶に充填し、レトルト殺菌(130℃、5分)を行い、容器詰コーヒー飲料を製造した。
【0034】
得られた容器詰コーヒー飲料について、専門パネル5名による官能評価を行った。評価は、実験例1の対照品1(未殺菌でpH調整剤が添加されていない、所謂レギュラーコーヒー)のボディ感を評点3、対照品4(pH調整剤を添加した清澄濾過済みの焙煎コーヒー豆の抽出物を用い、かつGABAを配合していない加熱殺菌済の容器詰コーヒー飲料)のボディ感を評点1として、パネル間で基準合わせを行った後に実施した。各容器詰コーヒー飲料について、対照品4(GABA無添加品)と差がないボディ感であり、評点1に近い飲料を「N(=no difference)」、対照品4よりもボディ感が大きく付与され評点3のフルボディに近づいた飲料を「B(=big difference)」、対照品4よりも若干のボディ感が付与された飲料を「A(=a difference)」として、それぞれパネルの人数をカウントした。
【0035】
結果を表2に示す。GABA含有量が11~80mg/100gとなるようにGABAを添加することにより、容器詰コーヒー飲料にボディ感が付与されることが示された。特に、飲料中のGABA含有量が25mg/100g以上となるGABAを添加した場合には、パネルの半数以上が「B(=big difference)」を選択し、明らかにボディ感が強くなったと評価した。GABA0~80mg/100gの容器詰コーヒー飲料のうち、最もボディ感が強いと感じるサンプルをブラインドテストしたところ、GABA含有量:50mg/100gが1人、GABA含有量:80mg/100gが4人であった。一方で、50mg/100g以上の添加では、ボディ感の強さに大きな差がないこと、GABA含有量が80mg/100gでは、GABA由来の酸味を感じるパネルが存在したことから、GABAの上限は70mg/100g程度が好ましいことが示された。
【0036】
【0037】
実験例3 ミルク入りコーヒー飲料の調製(1)
焙煎度L値20のアラビカ種コーヒー豆を細挽きに粉砕した後、攪拌を行いながら、コーヒー豆の重量の約10倍の重量の90℃の熱水で、15分間抽出を行った。抽出終了後、市販の紙製の濾過フィルターで抽出液を濾過し、濾液を速やかに25℃以下程度まで冷却した。得られた焙煎コーヒー豆抽出液のBrixは2.3であり、抽出率は25%であった。このコーヒー豆抽出液と、適量の水と、表3に示す処方の甘味成分(ショ糖、アセスルファムカリウム)及びpH調整剤とを加えて完全に溶解させた後、乳化剤、牛乳、香料を加えて調合液とした(「調合液(未殺菌)」)。この調合液をホモゲナイズ処理(1次圧150kg/cm2、2次圧50kg/cm2)して均質化した(「調合液のホモゲナイズ処理液(未殺菌)」)。このホモゲナイズ処理液を、90℃に昇温後、190mL缶に充填し、レトルト殺菌(124℃、20分)を行い、飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.1gのコーヒー豆抽出物を含む容器詰ミルク入りコーヒー飲料(加熱殺菌済み、pH6.3)を製造した。
【0038】
【0039】
上記の調合液(未殺菌)、調合液のホモゲナイズ処理液(未殺菌)、及び容器詰ミルク入りコーヒー飲料(加熱殺菌済)について、専門パネル5名による官能評価を行った。パネルは、提示されたペアのうちどちらの飲料がボディ感をより強く感じるか、2点識別試験により評価した。結果を表4に示す。ボディ感は、調合液>ホモゲナイズ処理液>容器詰ミルク入りコーヒー飲料(加熱殺菌済)の順に低下した。これより、容器詰ミルク入りコーヒー飲料の製造における均質化処理工程、加熱殺菌工程の各工程によりボディ感が低減することが示唆された。
【0040】
【0041】
実験例4 ミルク入りコーヒー飲料の調製(2)
GABAを配合すること以外は、実験例3と同様にして容器詰ミルク入りコーヒー飲料を製造した。具体的には、焙煎度L値20のアラビカ種コーヒー豆を細挽きに粉砕した後、攪拌を行いながら、コーヒー豆の重量の約10倍の重量の90℃の熱水で、15分間抽出を行った。抽出終了後、市販の紙製の濾過フィルターで抽出液を濾過し、濾液を速やかに25℃以下程度まで冷却した。このコーヒー豆抽出液(Brixは2.3)に表5に示すGABAを含む各種成分を加えて調合液とした。この調合液をホモゲナイズ処理(1次圧150kg/cm2、2次圧50kg/cm2)して均質化し、90℃に昇温後、190mL缶に充填し、レトルト殺菌(124℃、20分)を行い、飲料100g中にコーヒー生豆換算で5.1gのコーヒー豆抽出物を含む容器詰ミルク入りコーヒー飲料(pH6.3)を製造した。
【0042】
【0043】
得られた容器詰ミルク入りコーヒー飲料について、専門パネル5名による官能評価を行った。評価は、実験例3の調合液(未殺菌)のボディ感を評点3、実験例3の容器詰ミルク入りコーヒー飲料(GABAを配合していない加熱殺菌済の容器詰コーヒー飲料)のボディ感を評点1として、パネル間で基準合わせを行った後に実施した。各容器詰ミルク入りコーヒー飲料について、GABA無添加の実験例3の容器詰ミルク入りコーヒー飲料(加熱殺菌済み)と差がないボディ感であり、評点1に近い飲料を「N(=no difference)」、上記のGABA無添加品よりもボディ感が大きく付与され評点3のフルボディに近づいた飲料を「B(=big difference)」、GABA無添加品よりも若干のボディ感が付与された飲料を「A(=a difference)」として、それぞれパネルの人数をカウントした。
【0044】
結果を表6に示す。容器詰ミルク入りコーヒー飲料の場合も、GABA含有量が11~80mg/100gとなるようにGABAを添加することにより、ボディ感が付与されることが示された。特に、飲料中のGABA含有量が25mg/100g以上となるGABAを添加した場合には、パネルの半数以上が「B(=big difference)」を選択し、明らかにボディ感が強くなった、複雑味が付与されたと評価した。GABA0~80mg/100gの容器詰ミルク入りコーヒー飲料のうち、最もボディ感が強いと感じるサンプルをブラインドテストしたところ、GABA含有量:70mg/100gが1人、GABA含有量:80mg/100gが4人であった。一方で、70mg/100gと80mg/100gとでは、パネル全員がボディ感の強さに大差がないとも評価したことから、経済的観点も加味してGABAの上限は70mg/100g程度が好ましいことがわかった。
【0045】
【0046】
実験例5 ミルク入りコーヒー飲料の調製(3)
コーヒー飲料の処方を表7に変える以外は、実験例4と同様にして容器詰ミルク入りコーヒー飲料を製造した。飲料100g中のコーヒー豆抽出物の量はコーヒー生豆換算で5.5gであった。得られた飲料について、実験例3の調合液(未殺菌)と実験例3の容器詰ミルク入りコーヒー飲料(加熱殺菌済み)を基準として、実験例4と同様にボディ感を評価した。結果を表8に示す。甘味成分等の処方が変わった場合にも、GABA含有量が11mg/100g以上となるようにGABAを添加することにより、ボディ感が付与されることが確認できた。
【0047】
【0048】