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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】抗フリズルド抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240112BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240112BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240112BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P19/08
A61P19/10
A61P21/00
A61P1/02
A61P17/14
A61P27/16
A61P27/02
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P1/04
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P1/18
A61P17/02
A61P11/00
A61P1/16
A61P35/00
A61P13/12
A61P19/02
A61K9/08
A61K9/10
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020533592
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2018066618
(87)【国際公開番号】W WO2019126399
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】62/607,877
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/680,508
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519271621
【氏名又は名称】スロゼン オペレーティング, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, トム ジイェ
(72)【発明者】
【氏名】サト, アーロン ケン
(72)【発明者】
【氏名】イェー, ウェン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー, チェンガン
(72)【発明者】
【氏名】サムパスクマール, パーササラティ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンダ, クラウディア イボンヌ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503990(JP,A)
【文献】Nature Medicine,2017年01月,Vol.23, No.1,pp.60-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは:
(i)配列番号218のCDRH1配列、配列番号410のCDRH2配列、及び配列番号861のCDRH3配列、ならびに
(ii)配列番号996のCDRL1配列、配列番号1071のCDRL2配列、及び配列番号1264のCDRL3配列、
を含む配列を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントが、フリズルド5(Fzd5)およびフリズルド8(Fzd8)受容体に結合する、請求項1に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号7に記載されたアミノ酸配列に対し少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1または2に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
配列番号7に記載されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項3に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
配列番号44に記載されたアミノ酸配列に対し少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~4のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号44に記載されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項5に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化されている、請求項1~6のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、1本鎖抗体、scFv、ヒンジ領域を欠いた1価抗体、VHHもしくはsdAb、またはミニボディである、請求項1~7のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが融合タンパク質を含む、請求項1~7のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列に融合している、請求項9に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列が、LRP5またはLRP6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項10に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
ヒトフリズルドとの結合において請求項1~11のいずれかに記載の抗体と競合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記1つ以上のフリズルド受容体に50μM以下のKDで結合する、請求項1~12のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
細胞内の、任意選択で哺乳類細胞内のWntシグナリング経路を調節する、請求項1~13のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
前記細胞内の前記Wntシグナリング経路を介してシグナリングを増加させる、請求項14に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記細胞内の前記Wntシグナリング経路を介してシグナリングを減少させる、請求項14に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記Wntシグナリング経路がカノニカルWntシグナリング経路である、請求項14~16のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
前記Wntシグナリング経路が非カノニカルWntシグナリング経路である、請求項14~16のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の単離抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはその軽鎖可変領域もしくは重鎖可変領域をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項19に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞。
【請求項22】
生理的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と、治療有効量の請求項1~18のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントとを含む、医薬組成物。
【請求項23】
細胞内のWntシグナリング経路を刺激するための組成物であって、請求項15に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、組成物。
【請求項24】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列を含む融合タンパク質を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
細胞内のWntシグナリング経路を阻害するための組成物であって、請求項16に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、組成物。
【請求項26】
Wntシグナリング低減に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための、請求項22に記載の医薬組成物であって、前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路のアゴニストである、医薬組成物。
【請求項27】
前記疾患または障害が、骨折、疲労骨折、脊椎圧迫骨折、骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、癒合不全骨折、癒合遅延骨折、脊椎固定、脊椎手術のための術前最適化、骨壊死、移植または整形外科デバイスの骨結合、骨形成不全症、骨移植、腱修復、腱-骨結合、歯の成長及び再生、顎顔面手術、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築、顎、臀部、または大腿骨頭の骨壊死、無血管性壊死、脱毛症、難聴、前庭機能低下、黄斑変性、加齢性黄斑変性(AMD)、硝子体網膜症、網膜症、糖尿病性網膜症、網膜変性疾患、フックスジストロフィー、角膜疾患、卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、血液脳関門(BBB)に影響を及ぼす疾患、脊髄損傷、脊髄疾患、口腔粘膜炎、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、特に瘻孔形成を伴うCD、メタボリックシンドローム、脂質異常症、糖尿病、膵炎、膵外分泌機能不全、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、褥瘡、静脈性下腿潰瘍、表皮水疱症、皮膚形成不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全、造血細胞障害、免疫不全、移植片対宿主病、急性腎損傷、慢性腎疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症、あらゆる原因の急性肝不全、薬物誘発性急性肝不全、アルコール性肝疾患、あらゆる原因の慢性肝不全、肝硬変、あらゆる原因の肝線維症、門脈圧亢進症、あらゆる原因の慢性肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(脂肪肝)、アルコール性肝炎、C型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HCV)、B型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HBV)、その他のウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HAV)及びD型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HDV))、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、肝臓手術、肝損傷、肝移植、肝臓の手術及び移植における「過小グラフト(small for size)」症候群、先天性肝疾患及び肝障害、遺伝性疾患、変性、加齢、薬物、または損傷に起因するその他の任意の肝障害または検出からなる群より選択される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患または障害が骨疾患または骨障害である、請求項26または請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患または障害が、炎症性腸疾患(IBD)である、請求項26または請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
Wntシグナリング増加または強化に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための、請求項22に記載の医薬組成物であって、前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路の阻害物質である、医薬組成物。
【請求項31】
前記疾患または障害が、腫瘍及び癌、変性性障害、任意の臓器または組織の線維症、特発性肺線維症、腎線維症、心不全、冠動脈疾患、変形性関節症、異所性骨化、骨粗鬆症、先天性高骨量障害からなる群より選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月19日に出願された米国仮出願第62/607,877号及び2018年6月4日に出願された米国仮出願第62/680,508号の優先権を主張するものであり、これらの出願はいずれも、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する記述
本発明に付随する配列表は、紙の複写の代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名称は、SRZN_004_02WO_ST25.txtである。このテキストファイルは、527KBであり、2018年12月19日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本発明は、概して、抗フリズルド抗体及びその抗原結合フラグメント、組成物、ならびにこれらを使用する方法を含む。このような抗体は、例えば、Wntシグナリング経路の調節に有用である。
【背景技術】
【0004】
Wnt(「ウイングレス関連統合部位」または「ウイングレス及びInt-1」または「ウイングレス-Int」)リガンド及びそのシグナルは、多くの本質的な臓器及び組織(骨、肝臓、皮膚、胃、腸、腎臓、中枢神経系、乳腺、味蕾、卵巣、蝸牛、及び他の多くの組織を含む)の発生、ホメオスタシス、及び再生の調節において重要な役割を担っている(例えば、Clevers,Loh,and Nusse,2014;346:1248012により概説されている)。Wntシグナリング経路の調節は、変性性疾患及び組織損傷の治療に有力である。
Wntシグナリング調節の治療薬としての課題の1つは、複数のWntリガンド及びWnt受容体、フリズルド1~10(Fzd1~10)の存在であり、多くの組織が複数の重複するFzdを発現する。また、カノニカルWntシグナルは、Fzdに加えて、様々な組織内で広く発現する低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質5(LRP5)または低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質6(LRP6)にも関係する。したがって、当技術分野では、1つ以上のFzd、LRP5、またはLRP6と特異的に結合する結合部分(例えば、抗体)が明確に必要とされている。本発明は、この必要性に対処するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Clevers,Loh,and Nusse,2014;346:1248012
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
様々な実施形態において、本発明は、抗Fzd抗体及びその抗原結合フラグメントならびに関連する使用方法を提供する。
【0007】
1つの実施形態において、本開示は、1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、以下を含む配列:(i)表1Aのいずれかの抗体について記載されたCDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列、ならびに/または(ii)表1Aのいずれかの抗体について記載されたCDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント、あるいは1つ以上のアミノ酸修飾を含む当該抗体のバリアントまたはその抗原結合フラグメントであって、当該CDR配列中に8つ未満のアミノ酸置換を含む、当該抗体のバリアントまたはその抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1~37、66、もしくは68のいずれかに記載のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または配列番号1~37、66、もしくは68のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号38~65、67、もしくは69のいずれかに記載のアミノ酸配列に対する少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または配列番号38~65、67、もしくは69のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0008】
特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化されている。ある特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1本鎖抗体、scFv、ヒンジ領域を欠いた1価抗体、VHHもしくは単一ドメイン抗体(sdAb)、またはミニボディである。特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、FabまたはFab’フラグメントである。
【0009】
ある特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、融合タンパク質である。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列と融合している。ある特定の実施形態において、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列は、LRP5またはLRP6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0010】
任意の抗体またはその抗原結合フラグメントの特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、フリズルド1(Fzd1)、フリズルド2(Fzd2)、フリズルド3(Fzd3)、フリズルド4(Fzd4)、フリズルド5(Fzd5)、フリズルド6(Fzd6)、フリズルド7(Fzd7)、フリズルド8(Fzd8)、フリズルド9(Fzd9)、及びフリズルド10(Fzd10)のうちの1つ以上に結合する。ある特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、フリズルド1(Fzd1)、フリズルド2(Fzd2)、フリズルド3(Fzd3)、フリズルド4(Fzd4)、フリズルド5(Fzd5)、フリズルド6(Fzd6)、フリズルド7(Fzd7)、フリズルド8(Fzd8)、フリズルド9(Fzd9)、及びフリズルド10(Fzd10)のうちの2つ以上に結合する。ある特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)Fzd1、Fzd2、Fzd7、及びFzd9;(ii)Fzd1、Fzd2、及びFzd7;(iii)Fzd5及びFzd8;(iv)Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(v)Fzd1、Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(vi)Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(vii)Fzd4及びFzd9;(viii)Fzd9及びFzd10;(ix)Fzd5、Fzd8、及びFzd10;(x)Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(xi)Fzd1、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;または(xii)Fzd1、Fzd2、Fzd 4、Fzd5、Fzd7、及びFzd8と結合する。
【0011】
関連する実施形態において、本開示は、ヒトFzd受容体への結合において本明細書で開示されている任意の抗体と競合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fzdに50μM以下のKDで結合する。
【0013】
特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞内の、任意選択で哺乳類細胞内のWntシグナリング経路を調節する。特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞内のWntシグナリング経路を介したシグナリングを増加させる。特定の実施形態において、任意の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞内のWntシグナリング経路を介したシグナリングを減少させる。ある特定の実施形態において、Wntシグナリング経路は、カノニカルWntシグナリング経路または非カノニカルWntシグナリング経路である。
【0014】
さらなる関連する実施形態において、本開示は、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び発現ベクターを含む単離宿主細胞を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本開示は、生理的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と、本明細書で開示されている単離抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量とを含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
さらなる実施形態において、本開示は、細胞内のWntシグナリング経路を刺激するための方法であって、細胞を、本明細書で開示されている、Wntシグナリングを増加させる単離抗体またはその抗原結合フラグメントに接触させることを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列を含む融合タンパク質である。
【0017】
別の実施形態において、本開示は、細胞内のWntシグナリング経路を阻害するための方法であって、細胞を、本明細書で開示されている、Wntシグナリングを阻害する単離抗体またはその抗原結合フラグメントに接触させることを含む、方法を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本開示は、Wntシグナリング低減に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための方法であって、対象に、本明細書で開示されている、Wntシグナリング経路のアゴニストである単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法を含む。特定の実施形態において、疾患または障害は、骨折、疲労骨折、脊椎圧迫骨折、骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、癒合不全骨折、癒合遅延骨折、脊椎固定、脊椎手術のための術前最適化、骨壊死、移植または整形外科デバイスの骨結合、骨形成不全症、骨移植、腱修復、腱-骨結合、歯の成長及び再生、顎顔面手術、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築、顎、臀部、または大腿骨頭の骨壊死、無血管性壊死、脱毛症、難聴、前庭機能低下、黄斑変性、加齢性黄斑変性(AMD)、硝子体網膜症、網膜症、糖尿病性網膜症、網膜変性疾患、フックスジストロフィー、角膜疾患、卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、血液脳関門(BBB)に影響を及ぼす疾患、脊髄損傷、脊髄疾患、口腔粘膜炎、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、特に瘻孔形成を伴うCD、メタボリックシンドローム、脂質異常症、糖尿病、膵炎、膵外分泌機能不全、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、褥瘡、静脈性下腿潰瘍、表皮水疱症、皮膚形成不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全、造血細胞障害、免疫不全、移植片対宿主病、急性腎損傷、慢性腎疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症、あらゆる原因の急性肝不全、薬物誘発性急性肝不全、アルコール性肝疾患、あらゆる原因の慢性肝不全、肝硬変、あらゆる原因の肝線維症、門脈圧亢進症、あらゆる原因の慢性肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(脂肪肝)、アルコール性肝炎、C型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HCV)、B型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HBV)、その他のウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HAV)及びD型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HDV))、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、肝臓手術、肝損傷、肝移植、肝臓の手術及び移植における「過小グラフト(small for size)」症候群、先天性肝疾患及び肝障害、遺伝性疾患、変性、加齢、薬物、または損傷に起因するその他の任意の肝障害または検出からなる群より選択される。
【0019】
別の関連する実施形態において、本開示は、その必要のある対象における骨疾患または骨障害を治療または防止するための方法であって、対象に、本明細書で開示されている、Wntシグナリング経路のアゴニストである単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効量を提供することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fzd1、Fzd2、及びFZD7に結合する。ある特定の実施形態において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fzd1、Fzd2、FZD7、Fzd5、及びFzd8に結合する。さらなるFzd受容体に結合する他のFzd分子も、LRP5及び/またはLRP6結合物質と共に使用することができる。
【0020】
別の関連する実施形態において、本開示は、その必要のある対象における、骨ミネラル密度を増加させる、骨体積を増加させる、骨皮質厚を増加させる、骨ミネラル付着率を増加させる、骨の剛性を増加させる、骨の生体力学的強度、骨折に対する耐性を増加させる、または骨粗鬆症に関連する骨喪失を減少させるための方法であって、対象に、本明細書で開示されている、Wntシグナリング経路のアゴニストである単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効量を提供することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fzd1、Fzd2、及びFZD7に結合する。ある特定の実施形態において、単離抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fzd1、Fzd2、FZD7、Fzd5、及びFzd8に結合する。
【0021】
関連する実施形態において、本開示は、Wntシグナリングの増加または強化に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための方法であって、対象に、本明細書で開示されている、Wntシグナリング経路の阻害物質である単離抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、疾患または障害は、腫瘍及び癌、変性性障害、線維症、心不全、冠動脈疾患、異所性骨化、骨粗鬆症、及び先天性高骨量障害からなる群より選択される。
【0022】
さらなる関連する実施形態において、本開示は、1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、アミノ酸残基115~230を含むまたはそれからなるフリズルド1の領域内のエピトープ、アミノ酸残基29~78を含むまたはそれからなるフリズルド3の領域内のエピトープ、アミノ酸残基50~147を含むまたはそれからなるフリズルド4の領域内のエピトープ、アミノ酸残基37~149を含むまたはそれからなるフリズルド5の領域内のエピトープ、アミノ酸残基55~137を含むまたはそれからなるフリズルド8の領域内のエピトープ、アミノ酸残基59~152を含むまたはそれからなるフリズルド9の領域内のエピトープ、またはアミノ酸残基35~124を含むまたはそれからなるフリズルド10の領域内のエピトープに結合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0023】
ある特定の実施形態において、本開示は、1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、表3に示されるいずれかのアミノ酸残基の組にて、5オングストローム未満の距離でフリズルド受容体に接触する、単離抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、下記を含む配列:
(i)表1Aのいずれかの抗体について記載されたCDRH1、CDRH2、及びCDRH3配列、
(ii)表1Aのいずれかの抗体について記載されたCDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列、ならびに/または
(iii)表2に記載されたCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列、を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント、
あるいは、1つ以上のアミノ酸修飾を含む前記抗体のバリアントまたはその抗原結合フラグメントであって、前記CDR配列中に8つ未満のアミノ酸置換を含む、前記抗体のバリアントまたはその抗原結合フラグメント。
(項目2)
配列番号1~37、66、68,または1477のいずれかに記載されたアミノ酸配列に対し少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目1に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目3)
配列番号1~37、66、68,または1477のいずれかに記載されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、項目2に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目4)
配列番号38~65、67、69,または1476のいずれかに記載されたアミノ酸配列に対し少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1~3のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目5)
配列番号38~65、67、69,または1476のいずれかに記載されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目4に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目6)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがヒト化されている、項目1~5のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目7)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、1本鎖抗体、scFv、ヒンジ領域を欠いた1価抗体、VHHもしくはsdAb、またはミニボディである、項目1~6のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目8)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがVHHまたはsdAbである、項目7に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目9)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントがFabまたはFab’フラグメントである、項目1に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目10)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが融合タンパク質である、項目1~9のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目11)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列に融合している、項目10に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目12)
前記LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列が、LRP5またはLRP6に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、項目11に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目13)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、フリズルド1(Fzd1)、フリズルド2(Fzd2)、フリズルド3(Fzd3)、フリズルド4(Fzd4)、フリズルド5(Fzd5)、フリズルド6(Fzd6)、フリズルド7(Fzd7)、フリズルド8(Fzd8)、フリズルド9(Fzd9)、及びフリズルド10(Fzd10)のうちの1つ以上に結合する、項目1~12のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目14)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、フリズルド1(Fzd1)、フリズルド2(Fzd2)、フリズルド3(Fzd3)、フリズルド4(Fzd4)、フリズルド5(Fzd5)、フリズルド6(Fzd6)、フリズルド7(Fzd7)、フリズルド8(Fzd8)、フリズルド9(Fzd9)、及びフリズルド10(Fzd10)のうちの2つ以上に結合する、項目13に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目15)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、(i)Fzd1、Fzd2、Fzd7、及びFzd9;(ii)Fzd1、Fzd2、及びFzd7;(iii)Fzd5及びFzd8;(iv)Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(v)Fzd1、Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(vi)Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(vii)Fzd4及びFzd9;(viii)Fzd9及びFzd10;(ix)Fzd5、Fzd8、及びFzd10;(x)Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(xi)Fzd1、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;または(xii)Fzd1、Fzd2、Fzd4、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する、項目14に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目16)
ヒトフリズルドとの結合において項目1~15のいずれかに記載の抗体と競合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目17)
前記Fzdに50μM以下のKDで結合する、項目1~16のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目18)
細胞内の、任意選択で哺乳類細胞内のWntシグナリング経路を調節する、項目1~17のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目19)
前記細胞内の前記Wntシグナリング経路を介してシグナリングを増加させる、項目18に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目20)
前記細胞内の前記Wntシグナリング経路を介してシグナリングを減少させる、項目18に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目21)
前記Wntシグナリング経路がカノニカルWntシグナリング経路である、項目18~20のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目22)
前記Wntシグナリング経路が非カノニカルWntシグナリング経路である、項目18~20のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目23)
項目1~22のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、単離ポリヌクレオチド。
(項目24)
項目23に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
(項目25)
項目24に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞。
(項目26)
生理的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と、項目1~22または36のいずれかに記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量とを含む、医薬組成物。
(項目27)
細胞内のWntシグナリング経路を刺激するための方法であって、前記細胞を、項目19に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントに接触させることを含む、方法。
(項目28)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、LRP5またはLRP6に結合するポリペプチド配列を含む融合タンパク質である、項目26に記載の方法。
(項目29)
細胞内のWntシグナリング経路を阻害するための方法であって、前記細胞を、項目20に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメントに接触させることを含む、方法。
(項目30)
Wntシグナリング低減に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための方法であって、前記対象に、項目26に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含み、前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路のアゴニストである、方法。
(項目31)
前記疾患または障害が、骨折、疲労骨折、脊椎圧迫骨折、骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、癒合不全骨折、癒合遅延骨折、脊椎固定、脊椎手術のための術前最適化、骨壊死、移植または整形外科デバイスの骨結合、骨形成不全症、骨移植、腱修復、腱-骨結合、歯の成長及び再生、顎顔面手術、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築、顎、臀部、または大腿骨頭の骨壊死、無血管性壊死、脱毛症、難聴、前庭機能低下、黄斑変性、加齢性黄斑変性(AMD)、硝子体網膜症、網膜症、糖尿病性網膜症、網膜変性疾患、フックスジストロフィー、角膜疾患、卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、血液脳関門(BBB)に影響を及ぼす疾患、脊髄損傷、脊髄疾患、口腔粘膜炎、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、特に瘻孔形成を伴うCD、メタボリックシンドローム、脂質異常症、糖尿病、膵炎、膵外分泌機能不全、創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、褥瘡、静脈性下腿潰瘍、表皮水疱症、皮膚形成不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全、造血細胞障害、免疫不全、移植片対宿主病、急性腎損傷、慢性腎疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症、あらゆる原因の急性肝不全、薬物誘発性急性肝不全、アルコール性肝疾患、あらゆる原因の慢性肝不全、肝硬変、あらゆる原因の肝線維症、門脈圧亢進症、あらゆる原因の慢性肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(脂肪肝)、アルコール性肝炎、C型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HCV)、B型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HBV)、その他のウイルス性肝炎(例えば、A型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HAV)及びD型肝炎ウイルス誘発性肝疾患(HDV))、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、肝臓手術、肝損傷、肝移植、肝臓の手術及び移植における「過小グラフト(small for size)」症候群、先天性肝疾患及び肝障害、遺伝性疾患、変性、加齢、薬物、または損傷に起因するその他の任意の肝障害または検出からなる群より選択される、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記疾患または障害が骨疾患または骨障害であり、前記Wntサロゲート分子がFzd1、Fzd2、及びFZD7に結合する、項目30または項目31に記載の方法。
(項目33)
前記Wntサロゲート分子がFzd5及びFzd8にも結合する、項目32に記載の方法。
(項目34)
Wntシグナリング増加または強化に関連する疾患または障害を有する対象を治療するための方法であって、前記対象に、項目26に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含み、前記単離抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路の阻害物質である、方法。
(項目35)
前記疾患または障害が、腫瘍及び癌、変性性障害、任意の臓器または組織の線維症、特発性肺線維症、腎線維症、心不全、冠動脈疾患、変形性関節症、異所性骨化、骨粗鬆症、先天性高骨量障害からなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目36)
1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
(a)アミノ酸残基115~230を含むもしくはそれからなるフリズルド1の領域内、またはFzd2もしくはFzd7の対応領域内のエピトープ、
(b)アミノ酸残基29~78を含むまたはそれからなるフリズルド3の領域内のエピトープ、
(c)アミノ酸残基50~147を含むまたはそれからなるフリズルド4の領域内のエピトープ、
(d)アミノ酸残基37~149を含むもしくはそれからなるフリズルド5の領域内、またはFzd1、Fzd2、Fzd7、もしくはFzd8の対応領域内のエピトープ、
(e)アミノ酸残基55~137を含むもしくはそれからなるフリズルド8の領域内、またはFzd5の対応領域内のエピトープ、
(f)アミノ酸残基59~152を含むもしくはそれからなるフリズルド9の領域内、またはFzd10の対応領域内のエピトープ、あるいは
(g)アミノ酸残基35~124を含むまたはそれからなるフリズルド10の領域内のエピトープ、に結合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目37)
1つ以上のフリズルド受容体に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントであって、表3に示されるいずれかのアミノ酸残基のセットにて、5オングストローム未満の距離で前記フリズルド受容体に接触する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)Fzd1:1RC07複合体の図的表現である。Fzd1は薄灰色で示され、1RC07の重鎖及び軽鎖はそれぞれ中間的灰色及び濃灰色で示されている。(B)は、Fzd1:1RC07界面のより詳細な図であり、CRDループの位置がマークされている。(C)は、2mF-DF(2.0σ)及び異常差マップ(15.0σ)と結合するZn+2のより詳細な図であり、これらはそれぞれ青色及び黄色のメッシュで示されている。
図2】(A)Fzd1:R2M9複合体の全体的な構造である。Fzd1の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。R2M9の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd1:R2M9界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図3】(A)Fzd4:003S-D10複合体の全体的な構造である。Fzd4の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。3SD10の重鎖及び軽鎖は、濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(B)Fzd4:3SD10界面の詳細図であり、CRDループの位置がマークされている。
図4】(A)Fzd5:R2M3複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。R2M3の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd5:R2M3界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図5】(A)Fzd8:005S-H05複合体の全体的な構造である。Fzd8の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。005S-H05の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd8:005S-H05界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図6】(A)Fzd5:004S-E05複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。004S-E05の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd5:004S-E05界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図7】(A)Fzd5:4A12複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。4A12の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd5:4A12界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図8】(A)Fzd9:014S-B06複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。014S-B06の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd5:014S-B06界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図9】(A)Fzd10:005S-A07複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。005S-A07の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd10:005S-A07界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図10】(A)Fzd10:005S-E12複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。005S-E12の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd10:005S-E12界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
図11】(A)Fzd3:029S-E03複合体の全体的な構造である。Fzd5の分子表面は、薄灰色の透明な表面として示されている。029S-E03の重鎖及び軽鎖は、それぞれ濃い黒及び薄い黒の色調で着色されている。Wnt8:Fzd8(PDBコード:4F0A)の構造内で観察される脂質(パルミトレイン酸;PAM)は、薄灰色の球で示されている。(C)Fzd3:029S-E03界面の詳細図であり、重鎖のH1、H2、H3ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3のCDRループの位置がマークされている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントに関し、このような抗体には、特定のFzd受容体特異性及び/または機能的特性を有する抗体が含まれる。本発明の1つの実施形態は、1つ以上のFzd受容体に結合し、下流Wnt経路シグナリング及び関連する生物学的効果を調節することができる、特定のヒト化抗体及びそのフラグメントを包含する。
【0026】
本発明の実施形態は、Wntシグナリング経路に関連する疾患及び障害の診断、評価、及び治療のための、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの使用に関する。ある特定の実施形態において、主題の抗体及びその抗原結合フラグメントは、細胞または組織内のWntシグナリング経路を調節するのに使用される。ある特定の実施形態において、主題の抗体及びその抗原結合フラグメントは、Wntシグナリングの異常もしくは脱制御(例えば、増加もしくは低減)に関連する、またはWntシグナリングを減少もしくは増加させることが治療利益をもたらすと考えられる、疾患及び障害の治療または防止で使用される。
【0027】
本発明の実施には、反対の内容が明示されない限り、ウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学、及び組換えDNA技法の従来的方法が当業者の技能範囲内で用いられ、これらの多くについては例示のために後述する。このような技法は、文献で十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular BiologyまたはCurrent Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames & S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)及びその他の類似の参考文献を参照。
【0028】
本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「1つの(a/an)」及び「当該(the)」は、内容による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含む。
【0029】
本明細書全体において、文脈上他の意味が要求されない限り、「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、述べられた要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を含み、ただし、いかなる他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群も除外しないことを意味するものと理解されたい。
【0030】
本明細書中の各実施形態は、別段の明記がない限り、必要な変更を考慮しながら、他のあらゆる実施形態にも適用されるものとする。
【0031】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換については、標準的な技法を使用することができる(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製の技法は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野で一般的に遂行されているように、または本明細書で説明されているように実施することができる。これら及び関連する技法及び手順は、概して、当技術分野で周知されている従来的な方法に従って、また本明細書全体で引用され論じられている様々な全般的及びより具体的な参考文献に記載されているように、実施することができる。具体的な定義が示されない限り、本明細書で説明されている分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医療的化学及び薬学的化学に関連して利用されている名称、ならびにこれらの分野の検査手順及び技法は、当技術分野で周知され一般的に使用されているものである。組換え技術、分子生物学、微生物学、化学合成、化学分析、医薬の調製、製剤、及び送達、ならびに対象の治療については、標準的な技法を使用することができる。
【0032】
本発明の実施形態は、1つ以上のFzd受容体に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。例示的な抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくは相補性決定領域(CDR)は、表1A及び配列番号1~65に記載されている。
【0033】
当技術分野で周知されているように、抗体は、標的(例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に対し、免疫グロブリン分子の可変領域内にある少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、当該用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、そのフラグメント(例えば、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、1本鎖(scFv)、VHHまたはsdAb(ナノボディの別名でも知られている)、その合成バリアント、天然バリアント、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び必要とされる特異性を有する抗原結合部位またはフラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾配置も包含する。遺伝子融合によって構築された多価性または多重特異的フラグメントである「ダイアボディ」(WO94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993)も、本明細書で企図されている抗体の1つの特定の形態である。CH3ドメインに連結したscFvを含むミニボディも本明細書に含まれる(S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996)。例えば、Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989);Bird et al.,Science,242,423-426,1988;Huston et al.,PNAS USA,85,5879-5883,1988);PCT/US92/09965;WO94/13804;P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993;Y.Reiter et al.,Nature Biotech,14,1239-1245,1996;S.Hu et al.,Cancer Res.,56,3055-3061,1996を参照。
【0034】
「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書で使用する場合、目的抗原に、詳細には1つ以上のFzd受容体に結合する免疫グロブリン重鎖及び/または軽鎖の少なくとも1つのCDRを含む、ポリペプチドフラグメントを指す。この点において、本明細書で説明されている抗体の抗原結合フラグメントは、1つ以上のFzd受容体に結合する抗体由来の、本明細書に記載のVH及びVL配列の1、2、3、4、5、または6つ全てのCDRを含むことができる。本明細書で説明されているFzd特異的抗体の抗原結合フラグメントは、Fzd受容体に結合することができる。本明細書で使用する場合、当該用語は、単離フラグメントを包含するだけではなく、本明細書で開示されている抗体の抗原結合フラグメントを含むポリペプチド、例えば、本明細書で開示されている抗体の抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質も包含する。
【0035】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体またはその抗原結合フラグメントに接触した細胞内のWntシグナリング事象を調節する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Wntシグナリングを増加させ、一方他の実施形態においては、Wntシグナリングを減少させる。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトWntシグナリング経路の生物学的活性に対し特異的に結合するか、またはそれを調節する。
【0036】
「抗原」という用語は、選択的結合剤(例えば、抗体)が結合することができ、さらに、動物内で使用してその抗原のエピトープに結合可能な抗体を産生することができる、分子または分子の一部分を指す。ある特定の実施形態において、抗体は、タンパク質及び/または巨大分子の複合混合物内の標的抗原を優先的に認識する場合、抗原と特異的に結合するとされる。ある特定の実施形態において、抗体は、平衡解離定数が≦10-7または10-8Mの場合、抗原と特異的に結合するとされる。いくつかの実施形態において、平衡解離定数は≦10-9Mまたは10-10Mとすることができる。
【0037】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体及びその抗原結合フラグメントは重鎖及び軽鎖のCDRセットを含み、これらはそれぞれ、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域(FR)セットの間に存在する。FRセットは、CDRを支持し、CDRの相互の空間関係を定義する。本明細書で使用する場合、「CDRセット」という用語は、重鎖または軽鎖のV領域の3つの超可変領域を指す。これらの領域は、重鎖または軽鎖のN末端側から進めて、それぞれ「CDR1」、「CDR2」、及び「CDR3」として示される。そのため、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の各V領域からのCDRセットを含む、6つのCDRを含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドは、本明細書では「分子認識単位」と呼ばれる。複数の抗原-抗体複合体の結晶学的解析により、CDRのアミノ酸残基が結合抗原と広範な接触を形成し、最も広範な抗原接触が重鎖CDR3による接触であることが実証されている。したがって、分子認識単位は、主に抗原結合部位の特異性を担当する。
【0038】
本明細書で使用する場合、「FRセット」という用語は、重鎖または軽鎖のV領域のCDRセットのCDRをフレーム化する、4つの隣接するアミノ酸配列を指す。一部のFR残基が結合抗原に接触する場合もあるが、FRは主として、V領域を抗原結合部位に、詳細にはCDRに直接隣接するFR残基に折り畳む役割を担う。FR内では、ある特定のアミノ残基及びある特定の構造的特徴が非常に高度に保存されている。この点において、全てのV領域配列は、およそ90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。V領域が結合部位に折り畳まれると、CDRは、抗原結合表面を形成する突出したループモチーフとして提示される。概して、詳細なCDRアミノ酸配列に関係なく、折り畳まれた形状のCDRループがある特定の「カノニカル」構造になるように影響を及ぼす、FRの保存的構造領域が存在することが認識されている。さらに、ある特定のFR残基は、抗体の重鎖及び軽鎖の相互作用を安定化する非共有結合的なドメイン間接触に関与することが知られている。
【0039】
免疫グロブリンのCDR及び可変ドメインの構造及び位置は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987及びその最新情報(インターネット(immuno.bme.nwu.edu)で利用可能)を参照することによって決定することができる。代替的に、CDRは、http://www.imgt.orgで利用可能なIMGT(登録商標)(国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標))を使用することによって決定することができる(例えば、Lefranc,M.-P.et al.(1999)Nucleic Acids Res.,27:209-212;Ruiz,M.et al.(2000)Nucleic Acids Res.,28:219-221;Lefranc,M.-P.(2001)Nucleic Acids Res.,29:207-209;Lefranc,M.-P.(2003)Nucleic Acids Res.,31:307-310;Lefranc,M.-P.et al.(2004)In Silico Biol.,5,0006[Epub],5:45-60(2005)];Lefranc,M.-P.et al.(2005)Nucleic Acids Res.,33:D593-597;Lefranc,M.-P.et al.(2009)Nucleic Acids Res.,37:D1006-1012;Lefranc,M.-P.et al.(2015)Nucleic Acids Res.,43:D413-422を参照)。
【0040】
「モノクローナル抗体」とは、エピトープの選択的結合に関与するアミノ酸(天然または非天然)から構成される、同質の抗体集団を指す。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一のエピトープに向けられる。「モノクローナル抗体」という用語は、インタクトなモノクローナル抗体及び全長モノクローナル抗体を包含するだけでなく、これらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、1本鎖(scFv)、VHHまたはsdAb、これらのバリアント、モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性及びエピトープへの結合能力を有する抗原結合フラグメント(エピトープ認識部位)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の修飾配置も包含する。抗体の供給源または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物など)については、限定的であるように意図されていない。当該用語は、全免疫グロブリンに加えて、「抗体」の定義において上記で説明されているフラグメントなども含む。
【0041】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を優先的に切断していくつかのフラグメントを産生し、そのうちの2つ(F(ab)フラグメント)はそれぞれ、インタクトな抗原結合部位を含む共有結合的なヘテロ2量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)を含めたいくつかのフラグメントをもたらすことができる。本発明のある特定の実施形態に従って使用するFvフラグメントは、IgM免疫グロブリン分子の、稀な場合にはIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的タンパク質切断によって産生することができる。ただし、Fvフラグメントは、当技術分野で公知の組換え技法を用いて誘導するのがより一般的である。Fvフラグメントは、ネイティブ抗体分子の抗原認識及び結合能力の多くを保持する抗原結合部位を含む、非共有結合的V::Vヘテロ2量体を含む。Inbar et al.(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659-2662;Hochman et al.(1976)Biochem 15:2706-2710;及びEhrlich et al.(1980)Biochem 19:4091-4096。
【0042】
ある特定の実施形態において、1本鎖Fv抗体、すなわちscFV抗体が企図されている。例えば、カッパボディ(Kappa body)(Ill et al.,Prot.Eng.10:949-57(1997);ミニボディ(Martin et al.,EMBO J 13:5305-9(1994);ダイアボディ(Holliger et al.,PNAS 90:6444-8(1993);またはヤヌシン(Janusin)(Traunecker et al.,EMBO J 10:3655-59(1991)及びTraunecker et al.,Int.J.Cancer Suppl.7:51-52(1992))は、所望の特異性を有する抗体の選択について本出願の教示に従い、標準的な分子生物学技法を用いて調製することができる。また他の実施形態において、本開示のリガンドを包含する二重特異的抗体またはキメラ抗体が作製され得る。例えば、キメラ抗体は、異なる抗体からのCDR及びフレームワーク領域を含むことができ、一方、1つの結合ドメインを介して1つ以上のFzd受容体と特異的に結合し、第2の結合ドメインを介して第2の分子と特異的に結合する二重特異的抗体を生成することができる。これらの抗体は、組換え分子生物学の技法を通じて産生することができ、または物理的に一緒に結合体化させることができる。
【0043】
1本鎖抗体Fv(scFv)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーによって結合したVH-及びVL-コード遺伝子を含む遺伝子融合から発現する、共有結合V::Vヘテロ2量体である。Huston et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85(16):5879-5883。抗体V領域からの天然に凝集した(ただし、化学的には分離した)ポリペプチド軽鎖及び重鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に同様の3次元構造に折り畳まれるscFv分子に変換するための、化学構造を識別する複数の方法が説明されている。例えば、Huston et al.に対する米国特許第5,091,513号及び第5,132,405号、ならびにLadner et al.に対する米国特許第4,946,778号を参照。
【0044】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているFzd結合抗体は、ダイアボディの形態をとる。ダイアボディはポリペプチドの多量体であり、各ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインと、免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインとを含み、この2つのドメインは(例えば、ペプチドリンカーによって)結合しているが、互いに会合して抗原結合部位を形成することはできない。抗原結合部位は、多量体内のあるポリペプチドの第1のドメインと、多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合によって形成される(WO94/13804)。
【0045】
抗体のdAbフラグメントは、VHドメインからなる(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989))。
【0046】
二重特異的抗体を使用する場合、それは、様々な方法(Holliger,P.and Winter G.Current Opinion Biotechnol.4,446-449(1993))で製造することができる(例えば、化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから調製することができる)従来の二重特異的抗体であってもよく、または上述の任意の二重特異的抗体フラグメントであってもよい。ダイアボディ及びscFvは、可変ドメインのみを用いてFc領域なしで構築することができ、これにより、抗イディオタイプ反応の影響が潜在的に低減される。
【0047】
二重特異的ダイアボディは、二重特異的全抗体と対比すると、容易に構築しE.coli内で発現させることができるため、特に有用でもあり得る。適切な結合特異性のダイアボディ(及び他の多くのポリペプチド(例えば、抗体フラグメント))は、ファージディスプレイ(WO94/13804)を用いてライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが、例えば、抗原Xに向けられる特異性について定常性を保つようにする場合、他方のアームを変化させ、適切な特異性の抗体が選択されるようにライブラリーを作製することができる。二重特異的全抗体は、ノブズ・イントゥ・ホールズ(knobs-into-holes)操作によって作製することができる(J.B.B.Ridgeway et al.,Protein Eng.,9,616-621,1996)。
【0048】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体は、UniBody(登録商標)の形態で提供することができる。UniBody(登録商標)は、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体である(GenMab Utrecht,The Netherlandsを参照;また、例えばUS20090226421も参照)。この独自の抗体技術は、現状の小型抗体形式よりも長い予測治療ウインドウを有する、より小型の安定した抗体形式を創出する。IgG4抗体は不活性であると考えられ、したがって免疫システムと相互作用しない。完全ヒトIgG4抗体は、抗体のヒンジ領域を除去することによって修飾することができ、これにより、対応するインタクトなIgG4に対し異なる安定性特性を有する半分子フラグメントが得られる(GenMab,Utrecht)。IgG4分子を有することで、UniBody(登録商標)上には同族抗原(例えば、疾患標的)に結合することができるエリアが1つしか残らないため、UniBody(登録商標)は、標的細胞上の1つの部位のみに1価で結合する。
【0049】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、VHHまたはsdAbの形態をとることができる。元来、VHHまたはsdAb技術は、ラクダ科(例えば、ラクダ及びリャマ)が、重鎖のみからなり軽鎖を欠いた完全に機能的な抗体を所持することが発見及び特定されてから開発された。このような重鎖のみの抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)と2つの定常ドメイン(C2、C3)とを含む。クローニングし単離した単一の可変ドメインは、完全な抗原結合能力を有し、非常に安定している。これらの単一の可変ドメインが、その独特の構造的及び機能的特性によって「VHHまたはsdAb」の基盤を形成する。VHHまたはsdAbは、単一の遺伝子によってコードされ、ほぼ全ての原核生物及び真核生物の宿主内で、例えば、E.coli(例えば、米国特許第6,765,087号を参照)、カビ(例えば、AspergillusまたはTrichoderma)、及び酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、Hansenula、またはPichia)(例えば、米国特許第6,838,254号)内で効率的に産生される。産生プロセスはスケーラブルであり、数キログラムの量のVHHまたはsdAbが産生されている。VHHまたはsdAbは、貯蔵寿命の長い、すぐに使用可能な溶液として製剤化することができる。Nanoclone(登録商標)法(例えば、WO06/079372を参照)は、所望の標的に対するVHHまたはsdAbを生成するための独自の方法であり、B細胞の自動化高スループット選択に基づいている。VHHまたはsdAbは、ラクダ科特有の重鎖のみの抗体の単一ドメイン抗原結合フラグメントである。VHHまたはsdAbのサイズは、典型的にはおよそ15kDaと小さい。
【0050】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒト化されている。これはキメラ分子を意味し、キメラ分子は、概して、組換え技法を用いて調製され、非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有し、分子における残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造及び/または配列に基づいている。抗原結合部位は、定常ドメインと融合した完全な可変ドメインか、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域にグラフトされたCDRのみを含み得る。エピトープ結合部位は、野生型であっても、1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい。これは、ヒト個体における免疫原としての定常領域を除去するが、外的な可変領域に対する免疫応答の可能性は残存する(LoBuglio,A.F.et al.,(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220-4224;Queen et al.,PNAS(1988)86:10029-10033;Riechmann et al.,Nature(1988)332:323-327)。本明細書で開示されている抗Fzd抗体をヒト化するための例示的な方法としては、米国特許第7,462,697号に記載の方法が挙げられる。
【0051】
もう1つのアプローチは、ヒト由来定常領域の提供だけではなく可変領域の修飾にも着目して、できる限りヒトの形態に近づけて再整形するというものである。重鎖及び軽鎖の両方の可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)を含むことが知られている。CDRは問題のエピトープに応答して変化し、結合能力を決定し、4つのフレームワーク領域(FR)と隣接している。FRは所与の種で比較的保存されており、CDRのためのスキャフォールディングを提供すると推定されている。非ヒト抗体が特定のエピトープに対し調製される場合、可変領域は、修飾を行うヒト抗体内に存在するFR上に非ヒト抗体に由来するCDRをグラフトすることにより、「再整形」または「ヒト化」することができる。様々な抗体に対するこのアプローチの適用は、以下文献によって報告されている:Sato,K.,et al.,(1993)Cancer Res 53:851-856.Riechmann,L.,et al.,(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen,M.,et al.,(1988)Science 239:1534-1536;Kettleborough,C.A.,et al.,(1991)Protein Engineering 4:773-3783;Maeda,H.,et al.,(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124-134;Gorman,S.D.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181-4185;Tempest,P.R.,et al.,(1991)Bio/Technology 9:266-271;Co,M.S.,et al.,(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873;Carter,P.,et al.,(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-4289;及びCo,M.S.et al.,(1992)J Immunol 148:1149-1154。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体からの6つ全てのCDRを含むヒト化マウス抗体)。他の実施形態において、ヒト化抗体は、元の抗体に対し改変されている1つ以上(1、2、3、4、5、6つ)のCDRを有し、これは元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも称される。
【0052】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体はキメラ抗体であり得る。この点において、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fc部分と作用可能に結合した、または融合した、抗Fzd抗体の抗原結合フラグメントから構成されている。ある特定の実施形態において、異種Fcドメインはヒト起源のものである。他の実施形態において、異種Fcドメインは、患者抗体からの異なるIgクラスからのものであってもよく、異なるIgクラスにはIgA(サブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、ならびにIgMが含まれる。さらなる実施形態において、異種Fcドメインは、1つ以上の異なるIgクラスからのCH2及びCH3ドメインから構成されてもよい。ヒト化抗体について上記で述べられているように、キメラ抗体の抗Fzd抗原結合フラグメントは、本明細書で説明されている抗体のCDRのうちの1つ以上のみ(例えば、本明細書で説明されている抗体の1、2、3、4、5、または6つのCDR)を含む場合もあれば、全体の可変ドメイン(VL、VH、または両方)を含む場合もある。
【0053】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合フラグメントは融合タンパク質を含み、例えば、本明細書では「Wntサロゲート」とも呼ばれるWntシグナリング経路アゴニスト融合タンパク質を含む。本発明のWntサロゲートは通常、同族フリズルド受容体との結合において、及びWntシグナリングの活性化において生物学的に活性であり、すなわち、当該サロゲートはWntアゴニストである。「Wntアゴニスト活性」という用語は、Wntタンパク質のフリズルドタンパク質に結合する効果または活性を模倣するアゴニストの能力を指す。Wntの活性を模倣する本発明のアゴニストの能力は、複数のアッセイで確認することができる。本発明のアゴニストは、典型的には、受容体の天然リガンドが開始する反応または活性と同様のまたは同じ反応または活性を開始する。詳細には、本発明のアゴニストは、カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路を強化する。本明細書で使用する場合、「強化する」という用語は、本発明のアゴニスト不在下でのレベルと比べての、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルの測定可能な増加を指す。
【0054】
特定の実施形態において、Wntシグナリング経路アゴニスト融合タンパク質(またはWntサロゲート)は、本明細書で開示されている、LRP5及び/またはLRP6と特異的に結合するポリペプチドと融合した抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態において、LRP5及び/またはLRP6に特異的に結合するポリペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態において、これは、2017年12月19日に出願された代理人整理番号SRZN-005/00US、「Anti-LRP5/6 antibodies and Methods of Use」という表題の米国仮特許出願第62/607,879号で開示されている、抗体またはその抗原結合フラグメントであり、当該出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0055】
好適なLRP5/6結合ドメインとしては、限定されるものではないが、新規設計されたLRP5/6結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及び1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する抗体の他の部分;VHHまたはsdAb由来の結合ドメイン;ノッチンベースの操作されたスキャフォールド;天然LRP5/6(限定されるものではないが、DKK1、DKK2、DKK3、DKK4、スクレロスチンを含む);Wise;上記のいずれかを含む融合タンパク質;上記のいずれかの誘導体;上記のいずれかのバリアント;ならびに上記のいずれかの生物学的活性フラグメントなどが挙げられる。LRP5/6結合ドメインは、結合を強化するように親和性選択的であり得る。
【0056】
Dickkopf(DKK)遺伝子ファミリー(Krupnik et al.(1999)Gene 238(2):301-13を参照)のメンバーとしては、DKK-1、DKK-2、DKK-3、及びDKK-4、ならびにDKK-3関連タンパク質Soggy(Sgy)が挙げられる。hDKK1~4は、10個のシステイン残基の位置がファミリーメンバー間で高度に保存されている、2つの異なるシステインリッチドメインを含む。ヒトDKK遺伝子及びタンパク質の例示的な配列は公的に入手可能であり、例えば、Genbankアクセッション番号NM_014419(soggy-1);NM_014420(DKK4);AF177394(DKK-1);AF177395(DKK-2);NM_015881(DKK3);及びNM_014421(DKK2)がある。本発明のいくつかの実施形態において、Lrp6結合部分はDKK1ペプチドであり、限定されるものではないが、ヒトDKK1のC末端側ドメインがこれに含まれる。C末端側ドメインは、配列:KMYHTKGQEGSVCLRSSDCASGLCCARHFWSKICKPVLKEGQVCTKHRRKGSHGLEIFQRCYCGEGLSCRIQKDHHQASNSSRLHTCQRH(配列番号70;Genbankアクセッション番号NP_036374を参照)またはその生物学的活性フラグメントを含むことができる。
【0057】
DKKタンパク質のLRP5/6との結合については、例えば、Brott and Sokol Mol.Cell.Biol.22(17),6100-6110(2002);及びLi et al.J.Biol.Chem.277(8),5977-5981(2002)で論じられており、各文献は参照により本明細書に明確に援用される。ヒトDKK2の対応領域(Genbank参照NP_055236)は、配列:KMSHIKGHEGDPCLRSSDCIEGFCCARHFWTKICKPVLHQGEVCTKQRKKGSHGLEIFQRCDCAKGLSCKVWKDATYSSKARLHVCQK(配列番号71)またはその生物学的活性フラグメントを含むことができる。
【0058】
LRP5またはLRP6と特異的に結合する抗体は当技術分野において公知であり、市販されており、または新規に生成することができる。LRP5、LRP6、またはそのフラグメントは、免疫原として使用することができ、または抗体を開発するためのスクリーニングアッセイで使用することができる。公知の抗体の例としては、以下に限定されないが、Gong et al.(2010)PLoS One.5(9):e12682;Ettenberg et al.(2010)Proc Natl Acad Sci U S A.107(35):15473-8に記載の抗体;及び、例えば、Santa Cruz biotechnology抗体クローン1A12(ヒト起源の合成LRP5/6に対し生成したものであり、マウス及びヒト起源のLRP6及びLRP5の全長フラグメント及びタンパク質分解フラグメントの両方に結合する);モノクローナル抗体2B11;LRP5に特異的なCell Signaling Technology抗体(D80F2)、カタログ番号5731;などから商業的に入手可能なものが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、LRP5/6結合ドメインまたはエレメントは、高い親和性で、例えば、少なくとも約1×10-7M、少なくとも1×10-8M、少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10MのKでLRP5/6に結合する任意のドメインから選択することができる。好適なLRP5/6結合ドメインとしては、限定されるものではないが、新規設計されたLRP5/6結合タンパク質、抗体由来結合タンパク質(例えば、scFv、Fabなど)、及び1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する抗体の他の部分;VHHまたはsdAb由来の結合ドメイン;ノッチンベースの操作されたスキャフォールド;天然LRP5/6結合タンパク質またはポリペプチド(限定されるものではないが、Norrin、DKK1、DKK2、DKK3、DKK4、スクレロスチンを含む);などが挙げられる。ある特定の実施形態において、LRP5/6結合ドメインは、DKK1のC末端側部分である。LRP5/6結合ドメインは、結合を強化するように親和性選択的であり得る。
【0060】
抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント、及びLRP5/6結合ドメインは、直接連結していても、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー、または非ペプチドリンカーなど)によって分離されていてもよい。1つ以上のFzd受容体に結合するWntサロゲートの領域ならびにLRP5及び/またはLRP6に結合するポリペプチドは、連続していても、リンカー(例えば、ポリペプチドリンカー、または非ペプチドリンカーなど)によって分離されていてもよい。リンカーの長さ、すなわち結合ドメイン間の間隔は、シグナル強度の調節に使用することができ、またWntサロゲートの所望の使用に応じて選択することができる。結合ドメイン間の強制的距離は様々であり得るが、ある特定の実施形態では、約100オングストローム未満、約90オングストローム未満、約80オングストローム未満、約70オングストローム未満、約60オングストローム未満、約50オングストローム未満とすることができる。いくつかの実施形態において、リンカーはリジッドリンカーであり、他の実施形態において、リンカーはフレキシブルリンカーである。リンカーがペプチドリンカーである場合、リンカーは、長さが約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸またはそれ以上であり得、結合ドメイン間の距離を強化するのに十分な長さ及びアミノ酸組成である。いくつかの実施形態において、リンカーは、1つ以上のグリシン及び/またはセリン残基を含むか、またはそれらからなる。
【0061】
Wntサロゲートは、例えば、Fcドメインを介し、連鎖、コイルドコイル、ポリペプチドジッパー、ビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン多量体化などにより、多量体化することができる。また、Wntサロゲートは、当技術分野で公知のようにPEG、Fcなどのような部分に連結させてin vivoで安定性を強化することもできる。
【0062】
ある特定の実施形態において、Wntサロゲートは、1つ以上のFzdタンパク質及びLRP5/6に結合することにより、詳細には、細胞表面上、例えば、ヒト細胞の表面上のこれらのタンパク質に結合することにより、カノニカルWntシグナリングを直接活性化する。WntサロゲートによるWntシグナリングの直接活性化は、ネイティブWntタンパク質が存在する場合のみ活性を強化するWntシグナリング増強とは対照的である。
【0063】
このWntサロゲートは、例えば、フリズルドタンパク質に結合するWntタンパク質の効果または活性を模倣することにより、Wntシグナリングを活性化する。本発明のWntサロゲートがWntの活性を模倣する能力は、複数のアッセイで確認することができる。Wntサロゲートは、典型的には、受容体の天然リガンドが開始する反応または活性と同様のまたは同じ反応または活性を開始する。詳細には、本発明のWntサロゲートは、カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路を強化する。本明細書で使用する場合、「強化する」という用語は、本発明のWntサロゲート不在下でのレベルと比べての、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルの測定可能な増加を指す。
【0064】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合フラグメントは、Wnt経路シグナリングを阻害する。特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、内在的Wntが細胞表面上にある1つ以上のFzd受容体に結合するのを遮断または阻害し、よってWntシグナリングを低減または阻害する。
【0065】
Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを測定するための様々な方法が当技術分野において公知である。このような方法としては、以下に限定されないが、Wnt/β-カテニン標的遺伝子発現、TCFレポーター遺伝子発現、β-カテニン安定化、LRPリン酸化、アキシンの細胞質から細胞膜への転座及びLRPへの結合を測定するアッセイが挙げられる。カノニカルWnt/β-カテニンシグナリング経路は、最終的には、転写因子TCF7、TCF7L1、TCF7L2(別名TCF4)、及びLEFを介して遺伝子発現の変化をもたらす。Wnt活性化への転写応答は、複数の細胞及び組織で特性が明らかにされている。そのため、当技術分野で周知の方法による全般的な転写プロファイリングは、Wnt/β-カテニンシグナリングの活性化または阻害の評価に使用することができる。
【0066】
Wnt応答性遺伝子発現の変化は、概して、TCF及びLEF転写因子によって媒介される。TCFレポーターアッセイは、TCF/LEF制御遺伝子の転写の変化を評価して、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを決定する。TCFレポーターアッセイは、最初にKorinek,V.et al.,1997によって説明された。TOP/FOPの別名でも知られているこの方法は、最適なTCFモチーフCCTTTGATCの3つのコピーまたは変異モチーフCCTTTGGCCの3つのコピーを、ルシフェラーゼ発現を推進する最小限のc-Fosプロモーターの上流に使用して(それぞれpTOPFl_ASH及びpFOPFl_ASH)、内在性p-カテニン/TCF4のトランス活性化活性を決定することを伴う。この2つのレポーター活性(TOP/FOP)の比率が高いほどβ-カテニン/TCF4活性が高いことを示し、この2つのレポーター活性が低いほどβ-カテニン/TCF4活性が低いことを示す。
【0067】
Wntシグナルに応答する様々な他のレポーター導入遺伝子がインタクトな状態で動物内に存在し、そのため、内在性Wntシグナリングを有効に反映する。このようなレポーターは、LacZまたはGFPの発現を推進する多量体化されたTCF結合部位に基づいており、当技術分野で公知の方法により容易に検出可能である。このようなレポーター遺伝子としては、TOP-GAL、BAT-GAL、ins-TOPEGFP、ins-TOPGAL、LEF-EGFP、アキシン2-LacZ、アキシン2-d2EGFP、Lgr5tm1(cre/ERT2)、TOPdGFPが挙げられる。
【0068】
脱リン酸化β-カテニンの膜への動員、β-カテニンの安定化及びリン酸化状態、ならびにβ-カテニンの核への転座(Klapholz-Brown Z et al.,PLoS One.2(9)e945,2007)、は、いくつかの場合にはTCF転写因子及びTNIKとの複合体形成により媒介され、Wntシグナリング経路における重要なステップである。安定化は、「破壊」複合体を阻害するディシブルドファミリータンパク質により媒介され、その結果、細胞内β-カテニンの分解が低減され、その後にβ-カテニンの核への転座が行われる。そのため、細胞内でのβ-カテニンのレベル及び位置の測定は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを良好に反映するものである。このようなアッセイの非限定的な一例は、「BioImage β-Catenin Redistribution Assay」(Thermo Scientific)であり、これは、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のC末端に融合したヒトβ-カテニンを安定的に発現する組換えU20S細胞を提供する。イメージング及び解析は、EGFP-β-カテニンのレベル及び分布の可視化を可能にする蛍光顕微鏡またはHCSプラットフォームを用いて実施される。
【0069】
破壊複合体を阻害するもう1つの方法は、アキシンをWnt共受容体LRPの細胞質側末端に動員することによるアキシン除去による方法である。アキシンは、リン酸化形態のLRPテールと優先的に結合することが示されている。そのため、アキシン転座の可視化(例えば、GFP-アキシン融合タンパク質を用いて)は、Wnt/β-カテニンシグナリングのレベルを評価するためのもう1つの方法である。
【0070】
ある特定の実施形態において、Wntシグナリング経路アゴニストは、上記のアッセイで、例えば、TOPFlashアッセイで測定した場合に、カノニカルWntシグナリング(例えば、β-カテニンシグナリング)を、中性物質または陰性対照により誘発されるβ-カテニンシグナリングと比べて少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、150%、200%、250%、300%、400%、または500%強化するまたは増加させる。このようなアッセイでは陰性対照が含まれ得る。特定の実施形態において、Wntアゴニストは、上記のアッセイ、例えば、TOPFlashアッセイ、または本明細書で言及されている他のアッセイのいずれかで測定したときに、β-カテニンシグナリングを、アゴニストの不在下での活性と比べて2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、10000倍、またはそれ以上強化することができる。
【0071】
ある特定の実施形態において、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質は、上記のアッセイで、例えば、TOPFlashアッセイで測定した場合に、カノニカルWntシグナリング(例えば、β-カテニンシグナリング)を、中性物質または陰性対照の存在下で観察されるにβ-カテニンシグナリングと比べて少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、または100%阻害するまたは減少させる。このようなアッセイでは陽性対照が含まれ得る。
【0072】
「Wnt遺伝子産物」または「Wntポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ネイティブ配列Wntポリペプチド、Wntポリペプチドバリアント、Wntポリペプチド断片、及びキメラWntポリペプチドを包含する。特定の実施形態において、Wntポリペプチドは、ネイティブヒト全長成熟Wntタンパク質である。
【0073】
例えば、本出願における目的ヒトネイティブ配列Wntタンパク質としては、以下のものが挙げられる:Wnt-1(GenBankアクセッションNo.NM_005430);Wnt-2(GenBankアクセッションNo.NM_003391);Wnt-2B(Wnt-13)(GenBankアクセッションNo.NM_004185(アイソフォーム1)、NM_024494.2(アイソフォーム2))、Wnt-3(RefSeq.:NM_030753)、Wnt3a(GenBankアクセッションNo.NM_033131)、Wnt-4(GenBankアクセッションNo.NM_030761)、Wnt-5A(GenBankアクセッションNo.NM_003392)、Wnt-5B(GenBankアクセッションNo.NM_032642)、Wnt-6(GenBankアクセッションNo.NM_006522)、Wnt-7A(GenBankアクセッションNo.NM_004625)、Wnt-7B(GenBankアクセッションNo.NM_058238)、Wnt-8A(GenBankアクセッションNo.NM_058244)、Wnt-8B(GenBankアクセッションNo.NM_003393)、Wnt-9A(Wnt-14)(GenBankアクセッションNo.NM_003395)、Wnt-9B(Wnt-15)(GenBankアクセッションNo.NM_003396)、Wnt-10A(GenBankアクセッションNo.NM_025216)、Wnt-10B(GenBankアクセッションNo.NM_003394)、Wnt-11(GenBankアクセッションNo.NM_004626)、Wnt-16(GenBankアクセッションNo.NM_016087))。各メンバーは、当該ファミリーに対し様々な程度の配列同一性を有するが、全てが、小さい(すなわち、39~46kD)、アシル化され、パルミトイル化され、スペーシングが高度に保存された23~24個のシステイン保存残基を含む、分泌糖タンパク質をコードする(McMahon,A P et al.,Trends Genet.1992;8:236-242;Miller,JR.Genome Biol.2002;3(1):3001.1-3001.15)。目的Wntポリペプチドの他のネイティブ配列としては、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、実験用、またはペット用動物を含めた任意の哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、虫等からの上記のオルソログが挙げられる。
【0074】
「Wnt経路シグナリング」または「Wntシグナリング」は、生物学的活性Wntが、細胞の活性を調節するために細胞に対しその効果を発揮する機構を指すように本明細書で使用されている。Wntタンパク質は、フリズルド(Fzd)ファミリータンパク質からのタンパク質、RORファミリータンパク質からのタンパク質、LRPファミリータンパク質からのタンパク質LRP5、LRP6、タンパク質FRL1/crypto、及びタンパク質Derailed/Rykを含めたWnt受容体に結合することにより、細胞活性を調節する。Wnt受容体(1つまたは複数)は、ひとたびWnt結合により活性化されると、1つ以上の細胞内シグナリングカスケードを活性化する。このようなシグナリングカスケードは、カノニカルWntシグナリング経路;Wnt/平面内細胞極性(Wnt/PCP)経路;Wnt-カルシウム(Wnt/Ca2+)経路(Giles,RH et al.(2003) Biochim Biophys Acta 1653,1-24;Peifer,M.et al.(1994) Development 120:369-380;Papkoff,J.et al(1996) Mol.Cell Biol.16:2128-2134;Veeman,M.T.et al.(2003) Dev.Cell 5:367-377);及び当技術分野で周知されているような他のWntシグナリング経路を含む。
【0075】
例えば、カノニカルWntシグナリング経路が活性化された結果、細胞内タンパク質β-カテニンのリン酸化が阻害され、β-カテニンのサイトゾル中での蓄積とその後の核への転座とにつながり、核においてβ-カテニンは転写因子(例えば、TCF/LEF)と相互作用して、標的遺伝子を活性化する。Wnt/PCP経路の活性化により、RhoA、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、及びネモ様キナーゼ(NLK)シグナリングカスケードが活性化されて、組織極性及び細胞運動のような生物学的プロセスをコントロールする。例えば、Wnt-4、Wnt-5A、またはWnt-11の結合によるWnt/Ca2+の活性化は、カルシウムイオンの細胞内放出を誘発し、それによりタンパク質キナーゼC(PKC)、カルシウム-カルモジュリン依存性キナーゼII(CamKII)、またはカルシニューリン(CaCN)のようなカルシウム感受性酵素が活性化される。上記のシグナリング経路の活性をアッセイすることにより、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の生物学的活性を容易に決定することができる。
【0076】
ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体及びその抗原結合フラグメントの機能的特性は、当業者に知られている様々な方法を用いて評価することができ、このような方法としては、例えば、親和性/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴法、競合阻害アッセイ)、細胞傷害性アッセイ、細胞生存能アッセイ、in vitroまたはin vivoモデル(限定されるものではないが、本明細書で説明されている任意のものを含む)を用いたWnt、癌細胞、及び/または腫瘍成長阻害に応答した細胞の増殖または分化アッセイが挙げられる。その他のアッセイは、正常なWnt/Fzd媒介応答を遮断する本明細書に記載の抗体の能力を試験するものであり得る。本明細書に記載の抗体及びその抗原結合フラグメントは、Fzd受容体内在化に及ぼす効果、in vitro及びin vivoの有効性などについても試験され得る。このようなアッセイは、当業者に知られている十分に確立したプロトコル(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY);Current Protocols in Immunology(編集:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NYを参照)、または市販のキットを用いて実施することができる。
【0077】
ある特定の実施形態において、Fzd結合抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、本明細書に記載の抗体のCDRのうちの1つ以上を含む。この点において、場合により、所望の特異的結合を保持しながら抗体のVHCDR3のみの移行を実施できることが示されている(Barbas et al.,PNAS (1995)92:2529-2533)。また、McLane et al.,PNAS(1995)92:5214-5218,Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.(1994)116:2161-2162も参照。
【0078】
Marks et al(Bio/Technology,1992,10:779-783)は、抗体可変ドメインのレパートリーを産生する方法であって、可変ドメインエリアの5’末端に向けられたまたはそれに隣接するコンセンサスプライマーがヒトVH遺伝子の第3フレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共に使用されて、CDR3を欠いたVH可変ドメインのレパートリーをもたらす、方法について説明している。Marks et alはさらに、このレパートリーがどのように特定の抗体のCDR3と組み合わされ得るかについても説明している。類似の技法を用いて、本明細書で説明している抗体のCDR3由来配列を、CDR3を欠いたVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルすることができ、シャッフルした完全なVHまたはVLドメインは同族VLまたはVHドメインと組み合わされて、1つ以上のFzd受容体に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントをもたらす。次いで、好適な抗体またはその抗原結合フラグメントが選択されるように、レパートリーをWO92/01047のファージディスプレイシステムのような好適な宿主システム内で提示することができる。レパートリーは、少なくとも約10の個別のメンバーからなることができ、数桁上がって、例えば、約10から10もしくは1010まで、またはそれ以上のメンバーからなることができる。類似のシャッフリングまたはコンビナトリアル技法は、Stemmer(Nature,1994,370:389-391)によっても開示されている。Stemmerはβ-ラクタマーゼ遺伝子に関連する技法について説明しているが、このアプローチは抗体の生成に使用することができると述べている。
【0079】
さらなる選択肢は、全体の可変ドメイン内で変異を生成するための1つ以上の選択されたVH及び/またはVL遺伝子のランダム変異誘発を用いて、本明細書で説明されている発明実施形態の1つ以上のCDR由来配列を保有する、新規のVHまたはVL領域を生成することである。このような技法は、エラープローンPCRを使用したGram et al(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3576-3580)によって説明されている。使用され得るもう1つの方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域に対し変異誘発を指示することである。このような技法は、Barbas et al.,(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809-3813)及びSchier et al(1996,J.Mol.Biol.263:551-567)によって開示されている。
【0080】
ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体の特定のVH及び/またはVLは、望ましい特性(例えば、1つ以上のFzd受容体に対する親和性増加)を有する抗体を特定するための相補性可変ドメインのライブラリーをスクリーニングするのに使用することができる。このような方法は、例えば、Portolano et al.,J.Immunol.(1993)150:880-887;Clarkson et al.,Nature(1991)352:624-628で説明されている。
【0081】
他の方法もCDRの混合及び適合に使用して、所望の結合活性(例えば、1つ以上のFzd受容体への結合)を有する抗体を特定することができる。例えば、Klimka et al.,British Journal of Cancer(2000)83:252-260は、マウスVLと、CDR3及びFR4がマウスVHから保持されているヒトVHとのライブラリーを用いたスクリーニングプロセスについて説明している。抗体を得た後、VHをヒトVLライブラリーに対しスクリーニングして、抗原に結合する抗体を得た。Beiboer et al.,J.Mol.Biol.(2000)296:833-849は、全体のマウス重鎖及びヒト軽鎖ライブラリーを用いたスクリーニングプロセスについて説明している。抗体を得た後、1つのVLを、マウスのCDR3が保持されたヒトVHライブラリーと組み合わせた。抗原に結合可能な抗体が得られた。Rader et al.,PNAS(1998)95:8910-8915は、上記のBeiboer et alと同様のプロセスについて説明している。
【0082】
ここで説明した技法は、それ自体は当技術分野で公知のものである。しかし、当業者は、このような技法を使用して、本明細書で説明されている本発明のいくつかの実施形態に従う抗体またはその抗原結合フラグメントを、当技術分野で通例的な方法論を用いて得ることができるであろう。
【0083】
また、本明細書では、Fzd受容体に対し特異的な抗体または抗原結合ドメインを得るための方法であって、本明細書で示されるVHドメインまたは当該VHドメインのアミノ酸配列バリアントであるVHドメインのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換、または挿入によって提供することと、任意選択で、このようにして提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと組み合わせることと、VHドメインまたはVH/VL組合せ(1つまたは複数)を試験して、1つ以上のFzd受容体に対し特異的な、及び任意選択で1つ以上の所望の特性を有する、抗体抗原結合ドメインの特異的結合メンバーを特定することと、を含む、方法が開示されている。VLドメインは、実質的に本明細書で示されているアミノ酸配列を有することができる。本明細書で開示されているVLドメインの1つ以上の配列バリアントが1つ以上のVHドメインと組み合わされる、類似の方法が用いられてもよい。
【0084】
特定の実施形態において、抗Fzd抗体及びその抗原結合フラグメントは水溶性である。「水溶性」とは、界面活性剤の不在下で水性緩衝液に可溶であり、ポリペプチドの生物学的有効用量をもたらす濃度で通常可溶である組成物を意味する。水溶性である組成物は、実質的に均質な組成物を形成し、その比活性は、精製の元となる出発材料の少なくとも約5%、通例的には出発材料の少なくとも約10%、20%、または30%、より通例的には出発材料の約40%、50%、または60%であり、約50%、約90%、またはそれ以上の場合もある。本発明の抗Fzd抗体及びその抗原結合フラグメント(Wntサロゲートを含む)は、典型的には、少なくとも25μM以上の濃度、例えば、少なくとも25μM、40μM、または50μM、通例的には少なくとも60μM、70μM、80μM、または90μM、時として100μM、120μM、または150μMもの濃度の、実質的に均質な水溶液を形成する。言い換えれば、本発明の組成物は、典型的には、約0.1mg/ml、約0.5mg/ml、約1mg/mlまたはそれ以上の濃度の、実質的に均質な水溶液を形成する。
【0085】
抗体またはその抗原結合フラグメントに「特異的に結合する」または「優先的に結合する」(本明細書では交換可能に使用される)抗原またはエピトープは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、このような特異的または優先的な結合を決定する方法も当技術分野で周知されている。ある分子が、代替的な細胞または物質よりも高頻度に、迅速に、長い持続期間で、及び/または高い親和性で、特定の細胞または物質と反応または会合する場合、その分子は「特異的な結合」または「優先的な結合」を示すものとされる。抗体が、標的抗原(例えば、Fzd受容体)と「特異的に結合する」または「優先的に結合する」のは、その抗体が、他の物質に対するよりも大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で結合する場合である。例えば、Fzd1受容体と特異的または優先的に結合する抗体は、他のFzd受容体または非Fzdタンパク質に対するよりも大きな親和性、アビディティーで、より容易に、かつ/またはより長い持続期間で、Fzd1受容体に結合する抗体である。また、この定義を読み取ることにより、例えば、第1の標的と特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的と特異的または優先的に結合する場合もあれば結合しない場合もあることも理解される。そのため、「特異的な結合」または「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を必要とするわけではない(ただし、これを含むことはできる)。概して、ただし必ずではないが、結合に対する言及は優先的な結合を意味する。
【0086】
いくつかの実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の異なるフリズルドタンパク質、例えば、ヒトフリズルドタンパク質Fzd1、Fzd2、Fzd3、Fzd4、Fzd5、Fzd6、Fzd7、Fzd8、Fzd9、Fzd10のうちの1つ以上に結合する。いくつかの実施形態において、抗体ベースのシグナリングアゴニストは、Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する。様々な実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)Fzd1、Fzd2、Fzd7、及びFzd9;(ii)Fzd1、Fzd2、及びFzd7;(iii)Fzd5及びFzd8;(iv)Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(v)Fzd1、Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(vi)Fzd1、Fzd2、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;(vii)Fzd4及びFzd9;(viii)Fzd9及びFzd10;(ix)Fzd5、Fzd8、及びFzd10;(x)Fzd4、Fzd5、及びFzd8;(xi)Fzd1、Fzd5、Fzd7、及びFzd8;または(xii)Fzd1、Fzd4、Fzd5、Fzd7、及びFzd8に結合する。いくつかの実施形態において、フリズルド結合部分は、1つ以上の目的フリズルドタンパク質に対し選択的であり、例えば、1つ以上の所望のフリズルドタンパク質に対し、他のフリズルドタンパク質との対比で少なくとも10倍、25倍、50倍、100倍、200倍、またはそれ以上の特異性を有する。
【0087】
免疫学的結合とは、概して、免疫グロブリン分子とその免疫グロブリン分子が特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有結合的な相互作用を指し、例えば、限定ではなく例示として、静電気的、イオン的、親水的及び/または疎水的な引力または反発、立体的な力、水素結合、ファンデルワールス力、及びその他の相互作用が挙げられる。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(K)の観点で表現することができ、Kが小さいほど親和性が大きいことを表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を用いて定量化することができる。1つのこのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成及び解離の速度を測定することを伴い、このような速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何的パラメーターに依存する。したがって、「オン速度定数」(Kon)及び「オフ速度定数」(Koff)の両方は、濃度の計算ならびに会合及び解離の実際の速度によって決定することができる。Koff/Konの比は、親和性に関係しない全てのパラメーターの解除を可能にし、したがって解離定数Kに等しい。全般的には、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem.59:439-473を参照。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体は、1つ以上のFzd受容体に、約1×10-4M以下、約1×10-5M以下、約1×10-6M以下、約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、または約1×10-10M以下のKで結合する。ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗Fzd抗体は、1つ以上のFzd受容体に、約10,000nM未満、約1000nM未満、約100nM未満、約10nM未満、約1nM未満、約0.1nM未満のKで結合し、いくつかの実施形態においては、抗体は、1つ以上のFzd受容体に対するさらに高い親和性を有し得る。ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗Fzd抗体は、約100、150、155、160、170、175、180、185、190、191、192、193、194、195、196、197、198、または199ピコモルのKの親和性を有し、いくつかの実施形態においては、抗体は、1つ以上のFzd受容体に対するさらに高い親和性を有し得る。
【0088】
ある特定の実施形態に従う抗体またはその抗原結合フラグメントは、1つ以上のFzd受容体との結合において、(i)1つ以上のFzd受容体と特異的に結合する、かつ/あるいは(ii)本明細書で開示されているVH及び/もしくはVLドメイン(またはVH及び/もしくはVL CDRセット)を含む、あるいは(iii)本明細書で開示されているVH CDR3を含む、本明細書で説明されている任意の抗体、またはこれらのいずれかのバリアントと競合する、抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。抗体間の競合は、例えば、ELISAを用いて、かつ/または、他のタグ付けされていない抗体の存在下で検出され得るある抗体に特異的レポーター分子をタグ付けすることにより、容易にin vitroでアッセイすることができ、これにより、同じエピトープまたは重複するエピトープに結合する特異的抗体を識別することが可能になる。したがって、本明細書では、本明細書で説明されている1つ以上のFzd受容体に結合する抗体と競合するヒト抗体抗原結合部位を含む、特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0089】
この点において、本明細書で使用する場合、「~と競合する」、「結合を阻害する」、及び「結合を遮断する」(例えば、Wntの1つ以上のFzd受容体との結合の阻害/遮断を指すか、または抗Fzd抗体のFzd受容体との結合の阻害/遮断を指す)という用語は、交換可能に使用され、部分的及び完全な阻害/遮断を包含する。Wntの1つ以上のFzd受容体との阻害/遮断は、好ましくは、Wntが阻害または遮断なしでFzd受容体に結合するときに生じる正常なレベルまたはタイプの細胞シグナリングを低減または改変する。また、阻害及び遮断は、本明細書で開示されている抗Fzd抗体と接触させたときにおける、抗Fzd抗体に接触させていないリガンドと比べての、WntのFzd受容体との結合における任意の測定可能な減少、例えば、WntのFzd受容体との結合を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%遮断することも含むように意図されている。
【0090】
免疫グロブリンの定常領域は、可変領域よりも少ない配列多様性を示し、複数の天然タンパク質に結合して重要な生化学的事象を誘発する役目を果たしている。ヒトにおいては、5つの異なる抗体クラスが存在し、これにはIgA(サブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、ならびにIgMが含まれる。これらの抗体クラスを区別する特徴は定常領域であるが、V領域内によりわずかな相違が存在することがある。
【0091】
抗体のFc領域は、複数のFc受容体及びリガンドと相互作用し、エフェクター機能と呼ばれる多数の重要な機能的能力を付与する。IgGの場合、Fc領域はIgドメインCH2及びCH3を含み、N末端側ヒンジはCH2につながっている。IgGクラスにおけるFc受容体の重要なファミリーは、Fcガンマ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫システムの細胞アームとの間の情報交換を媒介する(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。ヒトにおいては、このタンパク質ファミリーは、FcγRI(CD64)(アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、及びFcγRIcを含む);FcγRII(CD32)(アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1及びFcγRIIb-2を含む)、ならびにFcγRIIcを含む);ならびにFcγRIII(CD16)(アイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びF158を含む)ならびにFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1及びFcγRIIIb-NA2を含む)を含む(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。これらの受容体は、典型的には、Fcとの結合を媒介する細胞外ドメインと、膜貫通領域と、細胞内の何らかのシグナリング事象を媒介し得る細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びT細胞を含めた様々な免疫細胞内で発現する。Fc/FcγR複合体の形成は、これらのエフェクター細胞を結合抗原部位に動員し、典型的には、細胞内のシグナリング事象及び後に続く重要な免疫応答、例えば、炎症メディエーターの放出、B細胞活性化、エンドサイトーシス、食作用、及び細胞傷害性攻撃をもたらす。
【0092】
細胞傷害性及び食作用性エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊する有力な機構である。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と呼ばれる(Raghavan et al.,1996,Annu Rev Cell Dev Biol 12:181-220;Ghetie et al.,2000,Annu Rev Immunol 18:739-766;Ravetch et al.,2001,Annu Rev Immunol 19:275-290)。FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介性反応は、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)と呼ばれる。全てのFcγRは、Cg2(CH2)ドメインのN末端及びすぐ前のヒンジでFc上の同じ領域に結合する。この相互作用は、構造的に十分に特徴づけられており(Sondermann et al.,2001,J Mol Biol 309:737-749)、ヒトFcγIIIbの細胞外ドメインに結合したヒトFcのいくつかの構造が解明されている(pdbアクセッションコード1E4K)(Sondermann et al.,2000,Nature 406:267-273)(pdbアクセッションコード1IIS及び1IIX)(Radaev et al.,2001,J Biol Chem 276:16469-16477)。
【0093】
異なるIgGサブクラスはFcγRに対する異なる親和性を有し、典型的に、IgG1及びIgG3は、IgG2及びIgG4よりも実質的に良好に受容体に結合する(Jefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)。全てのFcγRは、IgG Fc上の同じ領域に、ただし異なる親和性で結合し、高親和性結合物質FcγRIはIgG1に対し10-8-1のKを有し、一方低親和性受容体FcγRII及びFcγRIIIは概してそれぞれ10-6及び10-5で結合する。FcγRIIIa及びFcγRIIIbの細胞外ドメインは96%同一であるが、FcγRIIIbは細胞内シグナリングドメインを有しない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、及びFcγRIIIaが、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することを特徴とする、正の制御物質であるのに対し、FcγRIIbは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフを有し、そのため阻害性である。したがって、前者は活性化受容体と呼ばれ、FcγRIIbは阻害性受容体と呼ばれる。これらの受容体は、異なる免疫細胞上での発現のパターン及びレベルも異なる。また別のレベルの複雑性は、ヒトプロテオームにおける複数のFcγR多形の存在である。特に臨床的重要性に関連する多形は、V158/F158 FcγRIIIaである。ヒトIgG1は、F158アロタイプに対するよりも高い親和性でV158アロタイプと結合する。この親和性の違い、ならびに推定されるADCC及び/またはADCPに及ぼすその効果の違いは、抗CD20抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC Pharmaceuticals Corporationの登録商標)における有効性の重要な決定因子であることが示されている。V158アロタイプを有する対象は、リツキシマブの治療に好都合に応答するが、低親和性F158アロタイプを有する対象は十分に応答しない(Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。ヒトのおよそ10~20%がV158/V158ホモ接合性であり、45%がV158/F158ヘテロ接合性であり、ヒトの35~45%がF158/F158ホモ接合性である(Lehrnbecher et al.,1999,Blood 94:4220-4232;Cartron et al.,2002,Blood 99:754-758)。したがって、ヒトの80~90%はプアレスポンダーであり、すなわち、少なくとも1つのF158 FcγRIIIaアレルを有する。
【0094】
Fc領域は、補体カスケードの活性化にも関与する。古典的な補体経路では、C1はそのC1qサブユニットによって、抗原(1つまたは複数)と複合体を形成したIgGまたはIgMのFcフラグメントに結合する。本発明のある特定の実施形態において、Fc領域に対する修飾は、本明細書で説明されているFzd特異的抗体の能力を改変(強化または減少)して、補体システムを活性化する(例えば、米国特許第7,740,847号を参照)。補体活性化を評価するために、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996)を参照)。
【0095】
したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、機能的特性の改変(例えば、CDC、ADCC、もしくはADCP活性の低減もしくは強化、または特定のFcγRに対する結合親和性の強化、または血清半減期の増加)を伴った修飾Fc領域を有する抗Fzd抗体を提供する。本明細書で企図されているその他の修飾Fc領域は、例えば、発行済みの米国特許第7,317,091号、第7,657,380号、第7,662,925号、第6,538,124号、第6,528,624号、第7,297,775号、第7,364,731号、公開された米国出願US2009092599、US20080131435、US20080138344、及び公開された国際出願WO2006/105338号、WO2004/063351、WO2006/088494、WO2007/024249で説明されている。
【0096】
ある特定の実施形態において、Fc領域は、限定されるものではないが、野生型もしくは修飾IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、もしくはその他のアイソタイプ、例えば、野生型もしくは修飾ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgG4Pro(IgG4半分子の形成を防止するコアヒンジ領域の変異を含む)、ヒトIgA、ヒトIgE、ヒトIgM、またはIgG1 LALAPGと呼ばれる修飾IgG1を含めた、様々な異なるFcのいずれかに由来することができる。L235A、P329G(LALA-PG)バリアントは、補体結合及び固定を除去することに加えて、Fc-γ依存性の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を除去することがマウスIgG2a及びヒトIgG1の両方において示されている。本明細書で開示されている任意のIgGにおける特定の実施形態において、IgGは、以下のアミノ酸置換:N297G、N297A、N297E、L234A、L235A、またはP236Gのうちの1つ以上を含む。
【0097】
したがって、ある特定の実施形態において、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合している。ある特定の実施形態において、融合は、ヒンジ、C2、及びC3領域の少なくとも一部を含むIg重鎖定常ドメインとの融合である。融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(C1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物及び(所望の場合)免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入し、好適な宿主細胞に同時形質移入する。このことにより、等しくない比率の3つのポリペプチド鎖を構築に使用することで所望の二重特異的抗体の最適な収率がもたらされる実施形態では、3つのポリペプチドフラグメントの相互の割合を調整する際により高い柔軟性がもたらされる。ただし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらす場合や、比率が、所望の鎖の組合せの収率に意味のある影響を及ぼさない場合は、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を単一の発現ベクターに挿入することが可能である。
【0098】
本発明の抗体(ならびにその抗原結合フラグメント及びバリアント)は、例えば、精製または診断の応用先で使用するために、エピトープタグまたは標識を含むように修飾することもできる。抗体結合体を作製するための多数の結合基が当技術分野で公知であり、このような結合基としては、例えば、米国特許第5,208,020号または欧州特許第0 425 235 B1号、及びChari et al.,Cancer Research 52:127-131(1992)で開示されているものが挙げられる。結合基としては、上記で特定した特許で開示されているように、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、感光基、ペプチダーゼ不安定基、またはエステラーゼ不安定基が挙げられ、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。
【0099】
別の企図された実施形態において、本明細書で説明されているFzd特異的抗体またはその抗原結合フラグメントは、別の治療用化合物と結合体化しているかまたは作用可能に結合してもよく、これを本明細書では結合体と呼ぶ。結合体は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害物質、毒素、放射性同位体、またはその他の治療活性剤であり得る。化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害物質、及びその他の治療剤は上記で説明されており、上述の治療剤の全てが抗体結合体として使用することができる。
【0100】
免疫結合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミノジエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、及びビスー活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて、作製される。特定のカップリング剤としては、ジスルフィド結合をもたらすためのN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson et al.,Biochem.J.173:723-737[1978])及びN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)が挙げられる。リンカーは、1つ以上の切断可能な構成要素の放出を促進する「クリーバブルリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー(Cancer Research 52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0101】
ある特定の実施形態において、抗LRP5/6抗体及びその抗原結合フラグメントはモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、これらはヒト化されている。
【0102】
本発明はさらに、ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離核酸、例えば、本明細書で説明されている1つ以上のCDRまたはVHもしくはVLドメインをコードする核酸を提供する。核酸には、DNA及びRNAが含まれる。これら及び関連する実施形態は、本明細書で説明されている1つ以上のFzd受容体に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本明細書で使用する場合、「単離ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源またはこれらの何らかの組合せのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源に基づき、単離ポリヌクレオチドは、(1)単離ポリヌクレオチドが自然界で見られる場合においてポリヌクレオチドの全てまたは一部分と会合しない、(2)自然界では結合しないポリヌクレオチドと結合する、または(3)自然界ではより大きな配列の一部として発生しない。
【0103】
「作用可能に結合した」という用語は、当該用語が適用される構成要素が、好適な条件下でその固有の機能を実行できる関係性にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列と「作用可能に結合した」転写制御配列は、制御配列の転写活性と適合性の条件下でタンパク質コード配列の発現が達成されるように、タンパク質コード配列と連結している。
【0104】
本明細書で使用する場合、「制御配列」という用語は、自らが連結または作用可能に結合したコード配列の発現、プロセッシング、または細胞内局在化に影響を及ぼすことができるポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態において、原核生物の転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含むことができる。他の特定の実施形態において、真核生物の転写制御配列は、1つまたは複数の転写因子の認識部位を含むプロモーター、転写エンハンサー配列、転写終結配列、及びポリアデニル化配列を含むことができる。ある特定の実施形態において、「制御配列」は、リーダー配列及び/または融合パートナー配列を含むことができる。
【0105】
本明細書で言及する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、1本鎖または2本鎖の核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態であり得る。前述の修飾としては、塩基修飾(例えば、ブロモウリジン)、リボース修飾(例えば、アラビノシド及び2’,3’-ジデオキシリボース)、ならびにヌクレオチド間結合修飾(例えば、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホルアニラダート、及びホスホロアミダート)が挙げられる。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、1本鎖及び2本鎖の形態のDNAを含む。
【0106】
「天然ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾または置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。「オリゴヌクレオチド結合」という用語は、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホルホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホルアニラダート、ホスホロアミダートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al.,1986,Nucl.Acids Res.,14:9081;Stec et al.,1984,J.Am.Chem.Soc.,106:6077;Stein et al.,1988,Nucl.Acids Res.,16:3209;Zon et al.,1991,Anti-Cancer Drug Design,6:539;Zon et al.,1991,OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.),Oxford University Press,Oxford England;Stec et al.,米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman,1990,Chemical Reviews,90:543を参照(これらの開示内容は、あらゆる目的において参照により本明細書に援用される)。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたはそのハイブリダイゼーションの検出を可能にするために、検出可能な標識を含むことができる。
【0107】
「ベクター」という用語は、コード情報を宿主細胞に転送するのに使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すために使用される。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に好適であり、かつ、挿入された異種核酸配列の発現を指示及び/または制御する核酸配列を含むベクターを指す。発現には、限定されるものではないが、転写、翻訳、及びイントロンが存在する場合はRNAスプライシングなどのプロセスが含まれる。
【0108】
当業者が理解するであろうように、ポリヌクレオチドには、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現する、または発現するように適合され得るゲノム配列、ゲノム外及びプラスミドコード配列、ならびにより小さな操作遺伝子セグメントが含まれ得る。このようなセグメントは、天然に単離されても、当業者によって合成的に修飾されてもよい。
【0109】
これもまた当業者が認識するであろうように、ポリヌクレオチドは、1本鎖(コードまたはアンチセンス)であっても2本鎖であってもよく、またDNA分子(ゲノム、cDNA、または合成)であってもRNA分子であってもよい。RNA分子には、イントロンを含みDNA分子に一対一で対応するHnRNA分子と、イントロンを含まないmRNA分子とが含まれ得る。さらなるコード配列または非コード配列は、その必要があるわけではないが、本開示に従うポリヌクレオチド内に存在してもよく、ポリヌクレオチドは、その必要があるわけではないが、他の分子及び/または支持材料に結合してもよい。ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列を含んでもよく、またはこのような配列のバリアントもしくは誘導体をコードする配列を含んでもよい。
【0110】
そのため、これら及び関連する実施形態によれば、本開示は、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドも提供する。ある特定の実施形態において、本明細書で説明されている抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列の一部または全てと、このようなポリヌクレオチドの補体とを含むポリヌクレオチドが提供される。
【0111】
当業者には、遺伝暗号の縮重の結果として、本明細書で説明されている抗体をコードするヌクレオチド配列が多数存在することが理解されよう。このようなポリヌクレオチドのいくつかは、Fzd受容体に結合する抗体をコードするネイティブまたは元のポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列に対し、最小限の配列同一性を有する。それでも、本開示により、コドン使用の相違によって異なるポリヌクレオチドが明示的に企図されている。ある特定の実施形態において、哺乳類発現に対しコドン最適化された配列が特に企図されている。
【0112】
そのため、本発明の別の実施形態において、変異誘発アプローチ(例えば、部位特異的変異誘発)が、本明細書で説明されている抗体のバリアント及び/または誘導体の調製のために用いられ得る。このアプローチにより、ポリペプチド配列における特定の修飾は、それらをコードする基礎ポリヌクレオチドの変異誘発を通じて行われ得る。これらの技法は、1つ以上のヌクレオチド配列変化をポリヌクレオチドに導入することにより、例えば、前述の考慮事項のうちの1つ以上を組み込んで、配列バリアントを調製及び試験するための分かりやすいアプローチをもたらす。
【0113】
部位特異的変異誘発は、所望の変異のDNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列と、十分な数の隣接ヌクレオチドとを使用して、横断されている欠失接合部の両側に安定したデュプレックスを形成するために十分なサイズ及び配列複雑性のプライマー配列を提供することにより、変異体の産生を可能にする。変異は、選択されたポリヌクレオチド配列で用いて、ポリヌクレオチド自体の特性を改善、改変、減少、修飾、または他の形で変化させる、かつ/またはコードされたポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、または一次配列を改変することができる。
【0114】
ある特定の実施形態において、発明者らは、本明細書で開示されている抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を変異誘発して、コードされたポリペプチドの1つ以上の特性(例えば、抗体もしくはその抗原結合フラグメントの結合親和性、または特定のFc領域の機能、または特定のFcγRに対するFc領域の親和性)を改変することを企図している。部位特異的変異誘発の技法は当技術分野で周知されており、ポリペプチド及びポリヌクレオチド両方のバリアントを創出するのに広く使用されている。例えば、部位特異的変異誘発は、DNA分子の特定の部分を改変するのにしばしば使用される。このような実施形態において、典型的には約14~約25ヌクレオチド長程度を含むプライマーが用いられ、配列の接合部の両側の約5~約10残基が改変される。
【0115】
当業者が理解するであろうように、部位特異的変異誘発技法は、多くの場合、1本鎖及び2本鎖両方の形態で存在するファージベクターを用いる。部位特異的変異誘発に有用な典型的なベクターとしては、M13ファージなどのベクターが挙げられる。このようなファージは容易に商業的に入手可能であり、その使用は当業者に広く周知されている。また、2本鎖プラスミドも、目的遺伝子をプラスミドからファージに移行させるステップを省く部位特異的変異誘発で通例的に用いられている。
【0116】
部位特異的変異誘発を用いての、選択されたペプチドをコードするDNAセグメントの配列バリアントの調製は、潜在的に有用な種を産生する手段をもたらすものであり、これらをコードするペプチド及びDNA配列の配列バリアントが得られ得る他の方法が存在するため、限定的であるようには意図されていない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組換えベクターは、ヒドロキシルアミンなどの変異原性剤で処理して、配列バリアントを得ることができる。このような方法及びプロトコルに関する具体的な詳細は、Maloy et al.,1994;Segal,1976;Prokop and Bajpai,1991;Kuby,1994;及びManiatis et al.,1982の教示内容に見出され、各文献はこの目的において参照によって本明細書に援用される。
【0117】
多くの実施形態において、主題モノクローナル抗体をコードする核酸は、宿主細胞に直接導入され、細胞は、コードされる抗体の発現を誘発するのに十分な条件下でインキュベートされる。本開示の抗体は、当業者に周知された標準的な技法を、本明細書で提供されるポリペプチド及び核酸配列と組み合わせて用いて調製される。ポリペプチド配列は、本明細書で開示されている特定の抗体をコードする適切な核酸配列を決定するのに使用することができる。核酸配列は、当業者に周知された標準的方法に従って、様々な発現システムにおける特定のコドン「優先性」を反映するように最適化することができる。
【0118】
ある特定の関連する実施形態によれば、本明細書で説明されている1つ以上のコンストラクトと、任意の抗体、CDR、VHもしくはVLドメイン、またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸とを含む組換え宿主細胞、ならびにコードされた産物を産生する方法であって、そのためのコード核酸から発現させることを含む、方法が提供される。発現は、適切な条件下で、核酸を含む組換え宿主細胞を培養することにより、好都合に達成することができる。発現により産生した後、抗体またはその抗原結合フラグメントは、任意の好適な技法を用いて単離及び/または精製し、次いで所望に応じて使用することができる。
【0119】
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびにコード核酸分子及びベクターは、例えばそれらの天然の環境から実質的に純粋もしくは均質な形態で、または、核酸の場合は、所望の機能を有するポリペプチドをコードする配列以外で核酸もしくは起源の遺伝子を含まずにもしくは実質的に含まずに、単離及び/または精製することができる。核酸は、DNAまたはRNAを含み得、全体的または部分的に合成であり得る。本明細書で示されるヌクレオチド配列への言及は、文脈上他の意味が要求されない限り、指定の配列を有するDNA分子を包含し、また、Tの代わりにUが用いられた指定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0120】
様々な異なる宿主細胞でポリペプチドをクローニング及び発現するためのシステムは周知されている。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳類細胞、酵母、及びバキュロウイルスシステムが挙げられる。異種ポリペプチド発現の技術分野で利用可能な哺乳類細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウス黒色腫細胞、その他多数の細胞が挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主はE.coliである。
【0121】
E.coliなどの原核細胞内での抗体及びその抗原結合フラグメントの発現は、当技術分野で十分に確立されている。概説については、Pluckthun,A.Bio/Technology 9:545-551(1991)を参照。また、培養下の真核細胞内での発現も、抗体またはその抗原結合フラグメントの産生における選択肢として、当業者には利用可能である。最近の概説として、例えば、Ref,M.E.(1993)Curr.Opinion Biotech.4:573-576;Trill J.J.et al.(1995)Curr.Opinion Biotech 6:553-560を参照。
【0122】
プロモーター配列、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列を含めた適切な制御配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じてその他の配列を含む好適なベクターが選択または構築され得る。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス(例えば、ファージ)、またはファージミドとすることができる。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:2nd edition,Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。核酸の操作、例えば、核酸コンストラクトの調製、変異誘発、シークエンシング、細胞内へのDNA導入及び遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作については、多くの公知の技法及びプロトコルがCurrent Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,1992、または後続の改訂で詳細に説明されている。
【0123】
「宿主細胞」という用語は、本明細書で説明されている抗体のうちの1つ以上をコードする核酸配列が導入された、または導入させることが可能である、そしてさらに、選択された目的遺伝子(例えば、本明細書で説明されている任意の抗体をコードする遺伝子)を発現させる、または発現させることが可能である細胞を指すために使用される。当該用語は、親細胞の後代を含み、選択された遺伝子が存在する限り、その後代が形態学または遺伝子的構成において元の親と同一であるかどうかにかかわらずこれを含む。したがって、このような核酸を宿主細胞に導入することを含む方法も企図されている。この導入は、任意の利用可能な技法を用いることができる。真核細胞については、好適な技法としては、リン酸カルシウム形質移入、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介形質移入、及びレトロウイルスまたは他のウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、または昆虫細胞の場合はバキュロウイルス)を用いた形質導入を挙げることができる。細菌細胞については、好適な技法としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを用いた形質移入を挙げることができる。導入の後は、例えば、宿主細胞を遺伝子発現向けの条件下で培養することにより、核酸からの発現を引き起こすまたは可能にすることができる。1つの実施形態において、核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)に組み込まれる。組込みは、標準的な技法に従って、ゲノムとの組換えを促進する配列を含めることによって促進することができる。
【0124】
また、本発明は、ある特定の実施形態において、本明細書で説明されているようなFzd特異的抗体などの特定のポリペプチドを発現させるために、発現システム内で上述のようにコンストラクトを使用することを含む方法も提供する。「形質導入(transduction)」という用語は、通常はファージにより、遺伝子をある細菌から別の細菌へ移行することを指すために使用される。また「形質導入」は、レトロウイルスによる真核細胞配列の取得及び移行も指す。「形質移入(transfection)」という用語は、細胞が外的または外来DNAを取り込むことを指し、外来DNAが細胞膜の内側に導入された場合、細胞は「形質移入」されたことになる。複数の形質移入技法が当技術分野で周知されており、本明細書で開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et al.,1986,BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier;及びChu et al.,1981,Gene 13:197を参照。このような技法は、1つ以上の外来DNA部分を好適な宿主細胞に導入するのに使用することができる。
【0125】
本明細書で使用する場合、「形質転換(transformation)」という用語は、細胞の遺伝子的特徴の変化を指し、細胞が新たなDNAを含むように修飾された場合、細胞は形質転換したことになる。例えば、細胞は、そのネイティブな状態から遺伝子的に修飾されている場合、形質転換している。形質移入または形質導入の後、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込むことによって細胞のDNAと組換えを行う場合もあれば、複製されることなくエピソームエレメントとして一時的に維持される場合もあれば、プラスミドとして独立に複製する場合もある。細胞は、DNAが細胞分裂で複製される場合、安定的に形質転換したとみなされる。「天然」または「ネイティブ」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などのような生物学的材料と共に使用される場合、自然界に見られ、ヒトによって操作されていない材料を指す。同様に、本明細書で使用する場合、「非天然」または「非ネイティブ」という用語は、自然界に見られず、ヒトによって構造的に修飾または合成された材料を指す。
【0126】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」、ならびに「糖タンパク質」という用語は、交換可能に使用され、いかなる特定の長さにも限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。当該用語は、ミリスチル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化、及びシグナル配列の付加または欠失のような修飾を除外しない。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、アミノ酸の1つ以上の鎖を意味し、各鎖は、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸を含み、当該ポリペプチドまたはタンパク質は、ネイティブタンパク質の、すなわち、天然であり明確に組換えでない細胞によって産生されたタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって共に非共有結合及び/または共有結合した複数の鎖を含んでもよく、また、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列からの欠失、ネイティブ配列に対する付加、及び/もしくはネイティブ配列の1つ以上のアミノ酸の置換を有する分子を含んでもよい。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、具体的には、本開示のFzd受容体に結合する抗体、または抗Fzd抗体からの欠失、抗Fzd抗体に対する付加、及び/もしくは抗Fzd抗体の1つ以上のアミノ酸の置換を有する配列を包含する。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、1つのアミノ酸鎖(「単量体」と称される)も複数のアミノ酸鎖(「多量体」と称される)も含むことができる。
【0127】
「単離タンパク質」または「単離抗体」という用語は、本明細書では、主題のタンパク質または抗体が、(1)典型的には自然界で共に見られると考えられる少なくともいくつかの他のタンパク質を含まないこと、(2)同じ供給源からの(例えば、同じ種からの)他のタンパク質を本質的に含まないこと、(3)異なる種からの細胞によって発現すること、(4)ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは自然界で会合している他の材料の少なくとも約50%から分離されていること、(5)「単離タンパク質」が自然界で会合しているタンパク質の一部と(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用によって)会合していないこと、(6)自然界で会合していないポリペプチドと(共有結合的もしくは非共有結合的な相互作用によって)作用可能に会合していること、または(7)自然界で発生しないことを意味する。このような単離タンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、もしくはその他のRNAによってコードすることができ、または合成起源のものであってもよく、またはこれらの任意の組合せであってもよい。ある特定の実施形態において、単離タンパク質は、その使用(治療用、診断用、予防用、研究用、または他の用途)を妨害すると考えられる、タンパク質もしくはポリペプチドまたは天然の環境で見られるその他の混入物を実質的に含まない。
【0128】
本明細書で説明されている抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図されている。例えば、抗体の結合親和性及び/またはその他の生物学的特性を改善するのが望ましい場合がある。例えば、抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化を抗体もしくはその鎖をコードするポリヌクレオチドに導入することにより、またはペプチド合成により、調製することができる。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/または当該残基への挿入、及び/または当該残基の置換が挙げられる。最終抗体に到達するために任意の組合せの欠失、挿入、及び置換を行うことができるが、最終コンストラクトが所望の特徴(例えば、1つ以上のFzd受容体に対する高親和性結合)を所持することを条件とする。また、アミノ酸変化は、抗体の翻訳後プロセスも改変し得、例えば、グリコシル化部位の数また配置の変化をもたらし得る。本発明のポリペプチドについて上記で説明された任意のバリエーション及び修飾は、本発明の抗体に含めることができる。
【0129】
本開示は、本明細書で開示されている抗体及びその抗原結合フラグメントのバリアントを提供する。ある特定の実施形態において、このようなバリアント抗体またはその抗原結合フラグメントもしくはCDRは、1つ以上のFzd受容体に対し、本明細書に具体的に記載された抗体配列の少なくとも約50%、少なくとも約70%、ある特定の実施形態においては少なくとも約90%結合する。さらなる実施形態において、このようなバリアント抗体またはその抗原結合フラグメントもしくはCDRは、1つ以上のFzd受容体に対し、本明細書に記載の抗体よりも高い親和性で結合し、例えば、本明細書に具体的に記載された抗体配列の少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%定量的に結合する。
【0130】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば、Fab、scFv、VHHもしくはsdAb、またはWntサロゲートは、a)i.本明細書で説明されている選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、重鎖可変領域;及び/またはb)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、軽鎖可変領域を含むことができ、抗体は、選択された標的(例えば、1つ以上のFzd受容体)と特異的に結合する。さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、バリアント抗体またはその抗原結合フラグメントであり、当該バリアントは、VH及びVL領域のCDR領域内の最大8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上のアミノ酸置換以外では、選択された抗体と同一である重鎖及び軽鎖を含む。この点において、選択された抗体のCDR領域内に1、2、3、4、5、6、7、8、またはある特定の実施形態においては9、10、11、12、13、14、15以上のアミノ酸置換が存在し得る。置換は、VH及び/またはVL領域のいずれかにおけるCDR内のものであり得る(例えば、Muller,1998,Structure 6:1153-1167を参照)。
【0131】
特定の実施形態において、主題の抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、scFv、VHHもしくはsdAb、またはWntサロゲート)は、a)本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域に対し少なくとも80%同一、少なくとも95%同一、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;及び/あるいはb)本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域に対し少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有し得る。例示的なその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列は、配列番号1~65に記載されている。
【0132】
特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、scFv、VHHもしくはsdAb、またはWntサロゲート)は、任意の特定の抗体について表1Aで特定されているCDRのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つを含み得る。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号72~312もしくは1327~1347のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRH1、配列番号313~574もしくは1348~1360のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRH2、配列番号575~930、1361~1387、もしくは1436~1443のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRH3、配列番号931~1060もしくは1388~1406のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRL1、配列番号1061~1158もしくは1407~1419のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRL2、及び/または配列番号1159~1326、1420~1435、もしくは1444~1453のいずれかを含むもしくはそれからなるCDRL3を含む。
【0133】
ポリペプチドは、別のポリペプチドに対する一定の「配列同一性」パーセントを有し、これは、アラインメントした場合に、2つの配列を比較するとアミノ酸のパーセンテージが同じであることを意味する。配列類似性は、複数の異なる方式で決定することができる。配列同一性を決定するために、配列は、方法及びコンピュータープログラムを用いてアラインメントすることができ、コンピュータープログラムとしては、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で入手可能なBLASTが挙げられる。もう1つのアラインメントアルゴリズムは、Oxford Molecular Group,Inc.の完全所有子会社Madison,Wis.,USAからGenetics Computing Group(GCG)パッケージで入手可能なFASTAである。その他のアラインメント技法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.(Harcourt Brace & Co.,San Diego,Calif.,USAの一部門)で説明されている。特に関心対象となるのは、配列中のギャップを許容するアラインメントプログラムである。スミス・ウォーターマンは、配列アラインメントにおけるギャップを許容するアルゴリズムの1タイプである。Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)を参照。また、ニードルマン及びウンシュのアラインメント法を用いたGAPプログラムも、配列のアラインメントに利用することができる。J.Mol.Biol.48:443-453(1970)を参照。
【0134】
関心対象は、Smith及びWatermanの局所ホモロジーアルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981))を用いて配列同一性を決定するBestFitプログラムである。ギャップ生成ペナルティーは、概して1~5、通常は2~4の範囲となり、多くの実施形態において3となる。ギャップ延長ペナルティーは、概して約0.01~0.20の範囲となり、多くの場合において0.10となる。当該プログラムは、比較対象となる入力された配列により決定されるデフォルトパラメーターを有する。配列同一性は、当該プログラムにより決定されるデフォルトパラメーターを用いて決定されることが好ましい。このプログラムは、Madison(Wis.,USA)製のGenetics Computing Group(GCG)パッケージからも入手可能である。
【0135】
もう1つの関心対象プログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149,1988,Alan R.Liss,Inc.で説明されている。配列同一性パーセントは、以下のパラメーターに基づいてFastDBにより計算される:
ミスマッチペナルティー:1.00;ギャップペナルティー:1.00;ギャップサイズペナルティー:0.33;及び連結ペナルティー:30.0。
【0136】
特定の実施形態において、抗体は、a)i.本明細書で説明されている選択された抗体の重鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の重鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の重鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、重鎖可変領域;及びb)i.選択された抗体の軽鎖CDR1領域とアミノ酸配列が同一であるCDR1領域と、ii.選択された抗体の軽鎖CDR2領域とアミノ酸配列が同一であるCDR2領域と、iii.選択された抗体の軽鎖CDR3領域とアミノ酸配列が同一であるCDR3領域とを含む、軽鎖可変領域を含むことができ、抗体は、選択された標的(例えば、Fzd1などのFzd受容体)と特異的に結合する。さらなる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、バリアント抗体であり、当該バリアントは、VH及びVL領域のCDR領域内の最大8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上のアミノ酸置換以外では、選択された抗体と同一である重鎖及び軽鎖を含む。この点において、選択された抗体のCDR領域内に1、2、3、4、5、6、7、8、またはある特定の実施形態においては9、10、11、12、13、14、15以上のアミノ酸置換が存在し得る。置換は、VH及び/またはVL領域のいずれかにおけるCDR内のものであり得る(例えば、Muller,1998,Structure 6:1153-1167を参照)。
【0137】
代表的なポリペプチド(例えば、本明細書で提供されるバリアントFzd特異的抗体、例えば、本明細書で提供される抗原結合フラグメントを有する抗体タンパク質)の3次元構造の決定は、そのように誘導された構造的バリアントが本明細書で開示されている種の空間充填特性を保持するかどうかを決定する目的で、選択された天然または非天然のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換、付加、欠失、または挿入が仮想的にモデル化できるように、通例的な方法論を通じて行うことができる。例えば、Donate et al.,1994 Prot.Sci.3:2378;Bradley et al.,Science 309:1868-1871(2005);Schueler-Furman et al.,Science 310:638(2005);Dietz et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103:1244(2006);Dodson et al.,Nature 450:176(2007);Qian et al.,Nature 450:259(2007);Raman et al.Science 327:1014-1018(2010)を参照。これら及び関連する実施形態に、例えば、本明細書で提供されるFzd特異的抗体、その抗原結合フラグメントの合理的な設計に使用され得る、コンピューターアルゴリズムの追加的ないくつかの非限定的例としては、3Dグラフィック及びビルトインスクリプトを用いて大きな生体分子システムを表示、動画化、及び分析するための分子視覚化プログラムであるVMDが挙げられる(Theoretical and Computational Biophysics Group,University of Illinois at Urbana-Champagneのウェブサイト:ks.uiuc.edu/Research/vmd/を参照)。エネルギー最小化立体構造の空間充填モデルからの原子寸法(ファンデルワールス半径)の決定を可能にする他の多数のコンピュータープログラムが、当技術分野で公知であり、当業者が利用可能であり、異なる化学基に対する高親和性の領域を決定して結合の強化を試みるGRID、数学的アラインメントを計算するMonte Carlo研究、力場計算及び分析を評価するCHARMM(Brooks et al.(1983)J.Comput.Chem.4:187-217)及びAMBER(Weiner et al(1981)J.Comput.Chem.106:765)がある(Eisenfield et al.(1991)Am.J.Physiol.261:C376-386;Lybrand(1991)J.Pharm.Belg.46:49-54;Froimowitz(1990)Biotechniques 8:640-644;Burbam et al.(1990)Proteins 7:99-111;Pedersen(1985)Environ.Health Perspect.61:185-190;及びKini et al.(1991)J.Biomol.Struct.Dyn.9:475-488も参照)。様々な適切な計算的コンピュータープログラムが商業的にも入手可能である(例えば、Schrodinger(Munich,Germany))。
【0138】
特定の実施形態において、本開示は、表3に記載の領域で1つ以上のFzd受容体に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、これらは、アミノ酸残基637~878を含むまたはそれからなるLRP6の領域に結合し、アミノ酸配列及びナンバリングは実施例に記載のものと一致する。ある特定の実施形態において、これらは、アミノ酸637~878を含むLRP6の領域内のエピトープに結合する。ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表3に開示されている接触点のいずれかまたは全ての点でLRP6に接触する。1つの実施形態において、LRP6上のコア相互作用部位またはエピトープ(5.0Å以下のLrp6E3E4とVHH26との間の原子間距離)は、LRP6のArg639、Ala640、Lys622、Glu663、Ile681、Ser682、Lys684、Asp705、Tyr706、Glu708、Thr724、Gly725、Arg751、Try767、Gly768、Gly769、Arg792、Leu810、Asp811、His834、Phe836、Trp850、Ser851、Arg853、Asp874、Tyr875、及びMet877を含む。別の実施形態において、コア相互作用部位(5.0Å以下のLrp6E3E4とVHH36との間の原子間距離)は、LRP6のGlu663、Ser665、Ile681、Tyr706、Glu708、Thr724、Ser749、Arg751、Trp767、Gly768、Arg792、Leu810、Asn813、Pro833、His834、Phe836、Trp850、Ser851、Arg853、Asp874、Try875、及びMet877を含む。
【0139】
また、本開示は、特定の接触点で1つ以上のFzd受容体に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含み、接触点には、様々な抗Fzd抗体またはそのフラグメントの結合のための特定の接触点セットを示す、表3で開示されている接触点のいずれかが含まれる。
【0140】
本発明の別の実施形態において、抗Fzd抗体及びそのヒト化バージョンは、ウサギモノクローナル抗体に由来し、詳細には、RabMAb(登録商標)技術を用いて生成される。このような抗体は、必要な配列修飾が最小限であり、それにより、変異系統誘導型(MLG:mutational lineage guided)ヒト化技術を用いたヒト化後の機能的特性の保持が容易であるため、有利である(例えば、米国特許第7,462,697号を参照)。したがって、本開示の抗Fzd抗体を作製するための例示的方法には、例えば、米国特許第5,675,063号及び第7,429,487号で説明されているRabMab(登録商標)ウサギモノクローナル抗体技術が含まれる。この点において、ある特定の実施形態において、本開示の抗Fzd抗体はウサギ内で産生される。特定の実施形態において、抗体を産生するハイブリッド細胞を産生するために、ウサギ脾細胞と融合可能なウサギ由来不死Bリンパ球が使用される。不死Bリンパ球は、内在的免疫グロブリン重鎖を検出可能に発現せず、ある特定の実施形態においては、改変された免疫グロブリン重鎖コード遺伝子を含むことができる。
【0141】
組成物
本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを含む。
【0142】
さらなる実施形態において、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸を含むポリヌクレオチドと、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
【0143】
さらなる実施形態において、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物も開示される。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)を含む。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド(例えば、発現カセット)内に存在する。
【0144】
本発明はさらに、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸と作用可能に結合したプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む細胞と、1つ以上の医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む、医薬組成物を企図している。特定の実施形態において、医薬組成物はさらに、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む細胞を含む。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド(例えば、発現カセット)内に、及び/または同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
【0145】
本開示は、第1の活性薬剤としての抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を送達するための第1の分子と、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを送達するための第2の分子とを含む、医薬組成物を企図している。第1及び第2の分子は、同じタイプの分子であっても異なるタイプの分子であってもよい。例えば、ある特定の実施形態において、第1及び第2の分子はそれぞれ、以下のタイプの分子から独立に選択され得る:ポリペプチド、有機小分子、第1及び第2の活性薬剤をコードする核酸(任意選択でDNAまたはmRNA、任意選択で修飾RNA)、第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含むベクター(任意選択で発現ベクターまたはウイルスベクター)、ならびに第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含む細胞(任意選択で発現カセット)。
【0146】
主題分子は、単独または組合せで、概して安全で、無毒性で、望ましい製剤の調製に有用な医薬的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び試薬と共に組み合わせることができ、哺乳類(例えば、ヒトまたは霊長類)の使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合には気体であり得る。このような担体、希釈剤、及び賦形剤の例としては、限定されるものではないが、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。追加の活性化合物も製剤に組み込むことができる。製剤に使用される溶液または懸濁液としては、無菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌化合物、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化合物、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、またはリン酸;凝集を防止するための界面活性剤、例えば、Tween 20;ならびに浸透圧調整用化合物、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースが挙げられ得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基を用いて調整することができる。特定の実施形態において、医薬組成物は無菌である。
【0147】
医薬組成物はさらに、無菌水溶液または分散液、及び無菌注射溶液または分散液を即時調製するための無菌散剤を含んでもよい。静脈内投与向けには、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。場合によっては、組成物は無菌であり、シリンジに取り込みシリンジを用いて対象に提供できるように液体であるべきである。ある特定の実施形態において、組成物は、製造条件及び貯蔵条件下で安定し、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から守られる。担体は、例えば、溶媒または分散媒とすることができ、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散させる場合には必要な粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めるのが好ましいと考えられる。内部組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによりもたらされ得る。
【0148】
無菌溶液は、必要とされる量の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(またはコードポリヌクレオチドもしくはこれを含む細胞)を、必要に応じて上記で挙げた成分のうちの1つまたは組合せを有する適切な溶媒に組み込み、その後にフィルター滅菌することにより、調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本分散媒と上に挙げた他の成分のうち必要な成分とを含む無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及びフリーズドライであり、これらを用いることで事前に滅菌濾過した溶液から活性成分及び任意の追加的な所望成分を含む粉末がもたらされる。
【0149】
1つの実施形態において、医薬組成物は、抗体またはその抗原結合フラグメントを身体からの急速な除去に対し保護する担体(例えば、留置用剤及びマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤)を用いて調製される。生分解性、生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであると考えられる。材料も商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液も、医薬的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0150】
投与を容易にし薬用量を均一にするために、薬用量単位形態で医薬組成物を製剤化することは有利であり得る。本明細書で使用する場合、薬用量単位形態とは、治療する対象の単位薬用量に適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と共に所望の効果をもたらすように計算された活性の抗体またはその抗原結合フラグメントの所定量を含む。薬用量単位形態の仕様は、抗体またはその抗原結合フラグメントに特有の特徴、達成すべき特定の治療効果、及び個体の治療向けにこのような活性の抗体またはその抗原結合フラグメントを配合する技術分野に固有の制約によって規定され、これらに直接的に依存する。
【0151】
医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサー、例えばシリンジ、例えば充填済みシリンジ内に、投与の説明書と共に含めることができる。
【0152】
本発明の医薬組成物は、任意の医薬的に許容される塩、エステル、もしくはこのようなエステルの塩、または、ヒトを含む動物に投与したときに、生物学的活性の抗体もしくはその抗原結合フラグメントを(直接的もしくは間接的に)提供することができる他の任意の化合物を包含する。
【0153】
本発明は、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の医薬的に許容される塩を含む。「医薬的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理的かつ医薬的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、所望でない毒性学的効果をそれに付与しない塩を指す。様々な医薬的に許容される塩が当技術分野で公知であり、例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition,Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,USA,1985(及び最近の版)、“Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology”,3rd edition,James Swarbrick (Ed.),Informa Healthcare USA(Inc.),NY,USA,2007、及びJ.Pharm.Sci.66:2(1977)で説明されている。また、好適な塩の概説については、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”(Stahl and Wermuth)(Wiley-VCH,2002)も参照。
【0154】
医薬的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、または有機アミンを用いて形成される。カチオンとして使用される金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどを含む。アミンは、N-N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインを含む(例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharma Sci.,1977,66,119を参照)。前述の酸性化合物の塩基付加塩は、従来的な方法で、遊離酸形態を、塩を産生するのに十分な量の所望の塩基に接触させることにより、調製される。遊離酸形態は、従来的な方法で、塩形態を酸に接触させ遊離酸を単離することにより、再生することができる。遊離酸形態は、それぞれの塩形態とは、ある特定の物理的特性(例えば、極性溶媒における可溶性)が多少異なるが、他の点では、本発明の目的において、塩はそれぞれの遊離酸と同等である。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で説明されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の治療有効量を、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/または賦形剤(例えば、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リン酸及びアミノ酸、ポリマー、ポリオール、糖、緩衝液、保存料、及びその他のタンパク質)と混和して含む。例示的なアミノ酸、ポリマー、及び糖などは、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、ポリエチレングリコールモノステアラート化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース、フルクトース、デキストロース、マルトース、グルコース、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、キシリトール、ラクトース、トレハロース、ウシまたはヒト血清アルブミン、シトラート、アセタート、リンゲル液、ハンクス液、システイン、アルギニン、カルニチン、アラニン、グリシン、リジン、バリン、ロイシン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、及びグリコールである。好ましくは、この製剤は4℃で少なくとも6ヵ月間安定性である。
【0156】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される医薬組成物は緩衝液を含み、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)またはリン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム、トリス緩衝液、グリシン緩衝液、滅菌水、及び当業者に公知のその他の緩衝液、例えば、Good et al.(1966)Biochemistry 5:467によって説明されているものを含む。緩衝液のpHは、6.5~7.75、好ましくは7~7.5、最も好ましくは7.2~7.4の範囲内とすることができる。
【0157】
使用方法
また、本開示は、例えば、Wntシグナリング経路を調節するために、例えば、Wntシグナリングを増加または減少させるために、本明細書で開示されているFzd特異的抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を使用するための方法、ならびにFzd特異的抗体またはその抗原結合フラグメント及びWntサロゲートを様々な治療設定で投与するための方法も提供する。本明細書では、1つ以上のFzd受容体に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いた治療方法が提供される。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、Wntシグナリングの不適切性または脱制御、例えば、Wntシグナリングの増加または低減に関係する疾患を有する対象に提供される。
【0158】
Wntシグナリング経路の増加及び関連する治療方法
ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるのに使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるまたはWntシグナリングを強化するための方法であって、組織または細胞を、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路アゴニストである、方法を提供する。いくつかの実施形態において、接触は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行う。特定の実施形態において、細胞は培養細胞であり、接触はin vitroで行う。ある特定の実施形態において、本方法はさらに、組織または細胞を、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドに接触させることを含む。
【0159】
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織または細胞を、本発明の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を含むポリヌクレオチドの有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、標的組織または細胞を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドにも接触させる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
【0160】
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織または細胞を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含むベクターの有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、組織または細胞を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターにも接触させる。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じベクター内に、例えば、同じ発現カセット内に存在する。
【0161】
関連する態様において、本発明は、組織内のWntシグナリングを増加させるための方法であって、組織を、本発明の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含む細胞の有効量に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、組織を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞にも接触させる。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、抗Fzd抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする、またはWntポリペプチドもしくはNorrinポリペプチドをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものである。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
【0162】
抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、例えば、標的とされる細胞、組織、または臓器内のWntシグナリングを増加させることにより、疾患、障害、または状態を治療するために使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、その必要のある対象における疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、対象を、本開示の組成物の有効量に接触させることを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、組成物は、以下のいずれかを含む医薬組成物である:抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート);抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはmRNA、任意選択で修飾mRNA;抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含むベクター、例えば、発現ベクターまたはウイルスベクター;あるいは抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含む細胞、例えば、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする発現ベクターまたはウイルスベクターを形質導入した細胞。特定の実施形態において、疾患または状態は、病理学的な疾患もしくは障害、または損傷(例えば、創傷から生じる損傷)である。ある特定の実施形態において、創傷は、別の治療的処置の結果であり得る。ある特定の実施形態において、疾患または状態は、組織の修復、治癒、もしくは再生の不良を含み、または組織の修復、治癒、もしくは再生の増加から利益を得ると考えられる。いくつかの実施形態において、接触はin vivoで行われ、すなわち、主題組成物が対象に投与される。
【0163】
ある特定の実施形態において、本方法はさらに、対象を、1つ以上のWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを含む医薬組成物に接触させることを含む。本開示は、対象を、第1の活性薬剤としての抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を送達するための第1の分子と、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドを送達するための第2の分子とに接触させることを含む。第1及び第2の分子は、同じタイプの分子であっても異なるタイプの分子であってもよい。例えば、ある特定の実施形態において、第1及び第2の分子はそれぞれ、以下のタイプの分子から独立に選択され得る:ポリペプチド、有機小分子、第1及び第2の活性薬剤をコードする核酸(任意選択でDNAまたはmRNA、任意選択で修飾RNA)、第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含むベクター(任意選択で発現ベクターまたはウイルスベクター)、ならびに第1または第2の活性薬剤をコードする核酸配列を含む細胞(任意選択で発現カセット)。
【0164】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの有効量を含む医薬組成物にも接触させる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じポリヌクレオチド内に存在する。
【0165】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含むベクターの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターの有効量を含む医薬組成物にも接触させる。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じベクター内に、例えば、同じ発現カセット内に存在する。
【0166】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの低減に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの増加が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列を含む細胞の有効量を含む医薬組成物に接触させることを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態において、対象を、WntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞にも接触させる。ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする核酸配列、及びWntポリペプチドまたはNorrinポリペプチドをコードする核酸配列は、同じ細胞内に存在する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、抗Fzd抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)をコードする、またはWntポリペプチドもしくはNorrinポリペプチドをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものである。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
【0167】
Wntシグナリングは、幹細胞の発生プロセス及び維持において重要な役割を担っている。Wntシグナルの再活性化は、損傷及び疾患の後のほとんどの組織の再生及び修復に関連する。抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート分子)は、損傷及び疾患に応答して治癒及び組織修復の利益をもたらすことが予想される。組織ダメージ及び喪失の原因としては、限定されるものではないが、加齢、変性、遺伝性状態、感染症及び炎症、外傷性損傷、毒素/代謝誘発性毒性、またはその他の病理学的状態が挙げられる。Wntシグナル及びWntシグナルのエンハンサーは、成体の組織常在性幹細胞を活性化することが示されている。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、病的なまたはダメージを受けた組織の治療で使用するために、組織再生で使用するために、細胞の成長及び増殖で使用するために、ならびに/または組織操作で使用するために投与される。
【0168】
Wnt経路の変異に関連するヒト疾患は、疾患の治療及び防止においてWntシグナルの強化の強力なエビデンスを提供する。前臨床in vivo及びin vitro試験からは、Wntシグナルが多くの疾患状態に関与するさらなるエビデンスがもたらされており、様々なヒト疾患における抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の利用をさらに支持するものである。
【0169】
Wnt経路の変異に関連するヒト疾患は、疾患の治療及び防止においてWntシグナルの強化の強力なエビデンスを提供する。前臨床in vivo及びin vitro試験からは、Wntシグナルが多くの疾患状態に関与するさらなるエビデンスがもたらされており、様々なヒト疾患におけるWntサロゲート分子の利用をさらに支持するものである。例えば、本発明の組成物は、骨の成長または再生、骨グラフト、骨折の治癒、骨粗鬆症及び骨粗鬆症性骨折、脊椎癒合、椎骨圧迫骨折を含めた脊髄損傷、術前脊椎手術最適化、整形外科デバイスの骨結合、腱-骨結合、歯の成長及び再生、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築、ならびに顎の骨壊死の治療を促進するまたは増加させるのに使用することができる。また、本発明の組成物は、脱毛症の治療;感覚器官の再生強化、例えば、難聴の治療(内及び外有毛細胞再生、前庭機能低下の治療を含む)、黄斑変性の治療、網膜症(硝子体網膜症、糖尿病性網膜症、その他の網膜変性疾患を含む)、フックスジストロフィー、その他の角膜疾患などの治療;卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋ジストロフィー、サルコペニアまたはカヘキシーの結果としての筋萎縮、及び血液脳関門の変性または完全性に影響を及ぼすその他の状態の治療で使用することもできる。また、本発明の組成物は、口腔粘膜炎の治療、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)、特に瘻孔形成を伴うCDを含む)、その他の胃腸管障害の治療;メタボリックシンドローム、脂質異常症の治療、糖尿病の治療、膵炎、膵外及び膵内分泌組織がダメージを受けている状態の治療;表皮再生強化が所望される状態、例えば、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、歯、爪、または皮膚の形成不全を伴う症候群など、血管新生が有益な状態の治療;心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全の治療;造血細胞の成長の強化、例えば、骨髄、動員末梢血からの造血幹細胞移植の強化、免疫不全、移植片対宿主病などの治療;急性腎損傷、慢性腎疾患の治療;肺疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症(特発性肺線維症を含む)の治療、肺組織の再生強化で使用することもできる。また、本発明の組成物は、肝細胞の再生(例えば、肝再生)の強化、肝硬変の治療、肝移植の強化、急性肝不全の治療、C型もしくはB型肝炎ウイルス感染を伴うまたは抗ウイルス薬療法後の慢性肝疾患、アルコール性肝疾患、アルコール性肝炎、肝脂肪化または脂肪性肝炎を伴う非アルコール性肝疾患などの治療で使用することもできる。本発明の組成物は、限定されるものではないが、再生的細胞成長が所望される状態を含めた、疾患及び障害を治療することができる。
【0170】
Wntシグナリング構成要素における機能喪失または機能獲得変異を伴うヒト遺伝学により、骨成長のためのWntシグナル強化を支持する強力なエビデンスが示されている。骨成長の強化が所望される状態としては、限定されるものではないが、骨折、グラフト、人工装具周囲の骨成長、骨粗鬆症、骨粗鬆症性骨折、脊椎癒合、椎骨圧迫骨折、脊椎手術のための術前最適化、顎の骨壊死、歯科インプラント、歯周病、顎顔面再構築などが挙げられる。抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、骨再生の促進に極めて重要なWntシグナルを強化及び促進する。骨組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。いくつかの実施形態において、骨髄細胞は本発明の分子に曝露され、その結果骨髄細胞内の幹細胞が活性化される。
【0171】
いくつかの実施形態において、応答性の細胞集団(例えば、骨髄、骨前駆細胞、骨幹細胞など)を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、本明細書で開示されているWntサロゲート)の有効用量に接触させることにより、骨再生が強化される。骨組織の再生のための方法は、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の投与から利益が得られ、投与は全身的であっても局在的であってもよい。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施される。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、以下に限定されないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、ポリマーミクロスフェア、ナノ粒子、骨セメントなどが挙げられる。
【0172】
本明細書で開示されている1つ以上の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を含む組成物は、骨格組織欠損のin vivo治療で使用することができる。「骨格組織欠損」とは、骨または他の骨結合組織の欠損であって、どのように欠損が生じたかにかかわらず、例えば、外科的介入、腫瘍の除去、潰瘍、移植、骨折、または他の外傷もしくは変性状態のいずれかの結果として、骨または結合組織の回復が所望される任意の部位における欠損を意味する。本発明の組成物は、結合組織に対する軟骨機能の回復、軟骨組織の異常または病変の修復、例えば、変性摩耗及び関節炎、組織への外傷、半月板断裂の置換、半月板切除術、靱帯裂傷による関節脱臼、関節のアラインメント不良、骨折、または遺伝性疾患によるものの修復のためのレジメンの一部として使用することができる。
【0173】
抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、歯周病の治療に使用することもできる。歯周病は、歯喪失の主因であり、複数の全身状態に関連づけられる。いくつかの実施形態において、応答性細胞集団を接触させることにより、歯または基底骨の再生が強化される。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。その他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施され、続いて、活性化された幹細胞または前駆細胞の移植が行われる。分子は、例えば、任意選択で生分解性の、そして任意選択で活性作用物質の徐放を提供するマトリックス上に装填することにより、作用部位に局在化させることができる。マトリックス担体としては、限定されるものではないが、吸収性コラーゲンスポンジ、セラミックス、ヒドロゲル、骨セメント、ポリマーミクロスフェア、ナノ粒子などが挙げられる。
【0174】
複数の試験により、Wntシグナリング及びR-スポンジンの生物学は、損傷、加齢、または変性の後の内耳における感覚有毛細胞の再生を促進できることが示されている。難聴または前庭機能低下に関与する内耳における感覚有毛細胞の喪失も、本発明の組成物から利益を得ることができる。内耳において、聴覚器官は、音の振動を電気インパルスに変換するのに必要とされる機械感受性の有毛細胞を収容している。半規管(SSC)、卵形嚢、及び球形嚢から構成される前庭器官も、頭部の位置及び動きを検出するために感覚有毛細胞を含む。本発明の組成物は、聴覚再生の強化のために、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または、その他の耳への局所的適用で、使用することができる。
【0175】
抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、網膜組織の再生に使用することもできる。成体哺乳類の網膜では、ミュラーグリア細胞は、例えばin vivoの神経毒性損傷後に、光受容体を含めた網膜細胞を再生することができる。Wntシグナリング及びWntシグナリングのエンハンサーは、損傷後または変性中のミュラーグリア由来網膜前駆細胞の増殖を促進することができる。本発明の組成物は、眼内の組織及びその他の細胞タイプの再生に使用することもできる。例えば、加齢性黄斑変性(AMD)、その他の網膜変性疾患、角膜疾患、フックスジストロフィー、硝子体網膜症、遺伝性疾患などは、本発明の組成物から利益を得ることができる。AMDは、中心視野及び視力の進行的な減少によって特徴づけられる。フックスジストロフィーは、角膜内皮細胞の進行的な喪失によって特徴づけられる。Wntシグナル及びWntシグナルの強化は、眼組織内の角膜内皮、網膜上皮などの再生を促進することができる。他の実施形態において、本発明の組成物は、黄斑変性の網膜再生及び治療のために、例えば、注入で、マトリックスもしくは他のデポーシステムで、または目へのその他の局所的適用で、使用することができる。
【0176】
肝細胞の恒常的再生における特定の増殖細胞集団が系統追跡研究を通じて特定されており、その例が中心周囲領域内のアキシン2陽性細胞である。系統追跡研究はさらなる潜在的な肝前駆細胞も特定しており、限定されるものではないが、Lgr陽性細胞がこれに含まれる。自己再生肝細胞、ならびにLgr5陽性細胞及びアキシン2陽性細胞を含めたその他の潜在的前駆細胞集団は、損傷後にWntシグナル及び/またはR-スポンジンに応答した再生が可能であることが明らかになっている。急性肝損傷及び慢性肝疾患における多数の前臨床モデルにより、肝細胞の回復及び再生はWntシグナルから利益を得ることが示された。本発明の組成物は、急性肝不全、急性アルコール性肝損傷の治療、C型またはB型ウイルス肝炎感染を伴うまたは抗ウイルス薬療法後の慢性肝疾患、慢性アルコール性肝疾患、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、肝硬変及び全ての原因の慢性肝疾患の治療、ならびに肝細胞の再生の強化で使用することができる。肝組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。このような方法としては、限定されるものではないが、全身投与の方法及び局在化投与の方法、例えば、肝組織への注射により、肝臓につながる静脈または血管への注射により、持続放出製剤の留置などによる局在化投与が挙げられる。
【0177】
Wntシグナルは、様々な上皮組織の再生において重要な役割を担っている。様々な表皮状態は、本発明の化合物を用いた処置から利益を得る。粘膜炎は、胃腸管の内側を覆う上皮細胞の迅速な分裂が途絶したときに生じ、粘膜組織が潰瘍及び感染を受けやすい状態で放置される。口内を覆う上皮内層部分は、口腔粘膜と呼ばれ、身体の中で最も敏感な部分の1つであり、化学療法及び放射線に対し特に脆弱である。口腔粘膜炎は、癌治療において、詳細には化学療法及び放射線において、おそらくは最も一般的な衰弱性の合併症である。加えて、本発明の組成物は、短腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、またはその他の胃腸管障害の治療にも利益をもたらし得る。その他の表皮状態としては、表皮創傷治癒、糖尿病性足部潰瘍、歯、爪、または皮膚の形成不全に関係する症候群などが挙げられる。本発明の分子は、全てのこのような状態で使用することができ、このとき再生細胞は本発明の化合物に接触される。上皮組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。接触は、例えば、局所的(皮内、皮下を含む)であり、ゲル、ローション、クリーム等において、標的部位等に適用され得る。
【0178】
WntシグナルならびにWntシグナルの強化及び促進は、皮膚及び胃腸管に加えて、前臨床モデルにおける膵臓、腎臓、及び肺を含めた組織の修復及び再生でも重要な役割を担っている。抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、膵外及び膵内分泌部、腎臓、または肺に関係する様々な疾患状態に利益をもたらし得る。抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、メタボリックシンドロームの治療、糖尿病の治療、急性または慢性膵炎、膵外分泌部機能不全の治療、急性腎損傷、慢性腎疾患の治療、限定されるものではないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺上皮組織の喪失を引き起こすその他の状態を含めた肺疾患の治療で使用することができる。これらの組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。
【0179】
他の発生因子経由のシグナリングと協働した表皮Wntシグナリングは、成人の毛包再生に極めて重要である。脱毛は一般的な問題であり、アンドロゲン性脱毛症(しばしば男性型脱毛症と呼ばれる)は、男性における脱毛の最も一般的な形態である。いくつかの実施形態において、応答性細胞集団を本発明の分子に接触させることにより、毛包再生が強化される。いくつかのこのような実施形態において、接触はin vivoで実施される。他のこのような実施形態において、接触はex vivoで実施される。当該分子は、例えば、局所的なローション、ゲル、クリームなどで作用部位に局在化させることができる。
【0180】
卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び血液脳関門(BBB)に影響を及ぼすその他の状態は、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)を用いて治療することができる。血管新生は、酸素及び栄養を身体全体にわたる多くの組織に供給することを確実にするために極めて重要であり、また中枢神経系にとっては、神経組織が低酸素症及び虚血に対し敏感であることから、特に重要である。BBBを形成する中枢神経系内皮細胞は、タイトジャンクションによって共に保持されている高分極性の細胞であり、かつ特定のトランスポーターを発現するという点において、非神経組織内の内皮細胞とは異なる。Wntシグナリングは、中枢神経系の血管形成及び/または機能を制御する。BBBが損なわれている状態は、本発明の化合物の投与から利益を得ることができ、投与は、全身的であっても、例えば、直接注射、髄腔内投与、徐放性製剤の植込みなどによって局在的であってもよい。加えて、Wntシグナルは、神経発生に積極的に関与しており、損傷後の神経保護という役割を担う。本発明の組成物は、脊髄損傷、その他の脊髄疾患、卒中、外傷性脳損傷などの治療でも使用することができる。
【0181】
Wntシグナルは、血管新生でも役割を担う。抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)は、血管新生が有益であるような状態や、心筋梗塞、冠動脈疾患、心不全、糖尿病性網膜症などの治療や、遺伝性疾患に由来する状態に利益をもたらし得る。これらの組織を再生するための方法は本発明の化合物の投与から利益を得、投与は全身的であっても局在的であってもよい。
【0182】
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、例えば、ダメージを受けた、または組織もしくは細胞の低減もしくは喪失を受けた組織における、組織再生を促進する。喪失またはダメージは、細胞数を減少させる任意の事象とすることができ、このような事象には疾患または損傷が含まれる。例えば、事故、自己免疫障害、治療の副作用、または疾患状態は、外傷を構成すると考えられる。組織再生は、組織内の細胞数を増加させ、好ましくは組織の細胞間の接続が再確立するのを可能にし、より好ましくは組織の機能性が回復するのを可能にする。
【0183】
Wntシグナリング経路の低減及び関連する治療方法
ある特定の実施形態において、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、組織または細胞内のWntシグナリングを減少させるまたは阻害するのに使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを減少させるまたはWntシグナリングを阻害するための方法であって、組織または細胞を、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。いくつかの実施形態において、接触は、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行う。特定の実施形態において、細胞は培養細胞であり、接触はin vitroで行う。
【0184】
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを減少させるまたは阻害するための方法であって、組織または細胞を、本発明の抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントを含むポリヌクレオチドの有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。
【0185】
関連する態様において、本発明は、組織または細胞内のWntシグナリングを減少させるまたは阻害するための方法であって、組織または細胞を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むベクターの有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。
【0186】
関連する態様において、本発明は、組織内のWntシグナリングを減少させるまたは阻害するための方法であって、組織を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含む細胞の有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものであり、このとき、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントは、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
【0187】
抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントがWntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、抗Fzd抗体及びその抗原結合フラグメントは、例えば、細胞、組織、または臓器内のWntシグナリングを減少させるまたは阻害することにより、疾患、障害、または状態を治療するために使用することができる。したがって、いくつかの態様において、本発明は、その必要のある対象における疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの増加もしくは脱制御に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの減少が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組成物の有効量に接触させることを含み、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。特定の実施形態において、組成物は、以下のいずれかを含む医薬組成物である:抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント;抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはmRNA、任意選択で修飾mRNA;抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むベクター、例えば、発現ベクターまたはウイルスベクター;あるいは抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含む細胞、例えば、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする発現ベクターまたはウイルスベクターを形質導入した細胞。特定の実施形態において、疾患または状態は、病理学的な疾患もしくは障害、または損傷である。いくつかの実施形態において、接触はin vivoで行われ、すなわち、主題組成物が対象に投与される。
【0188】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの増加に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの低減が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含み、抗体またはその抗原結合フラグメントが、本明細書で開示されているWntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAまたはmRNA(例えば、修飾mRNA)である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’キャップ配列及び/または3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)をさらに含む修飾mRNAである。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コード配列と作用可能に結合したプロモーターを含む発現カセットである。
【0189】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの増加に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの減少が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含むベクターの有効量を含む医薬組成物に接触させることを含み、抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。ある特定の実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、核酸配列と作用可能に結合したプロモーターを含むことができる。特定の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。
【0190】
関連する態様において、本発明は、疾患または状態、例えば、Wntシグナリングの増加に関連する疾患もしくは障害、またはWntシグナリングの減少が治療利益をもたらすと考えられる疾患もしくは障害を治療するための方法であって、その必要のある対象を、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含む細胞の有効量を含む医薬組成物に接触させることを含み、抗体またはその抗原結合フラグメントが、Wntシグナリング経路アンタゴニストまたは阻害物質である、方法を提供する。特定の実施形態において、細胞は異種細胞であるか、または治療を行う対象から得られた自家細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする発現カセットを含むベクターを形質導入したものである。特定の実施形態において、細胞は幹細胞(例えば、脂肪由来幹細胞または造血幹細胞)である。
【0191】
ある特定の実施形態において、その必要のある対象における疾患または障害を、対象に、Wntシグナリング経路の阻害物質である抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を提供することによって治療する方法は、癌または腫瘍(例えば、固形腫瘍または液体腫瘍)を治療するのに使用することができる。治療することができる癌及び腫瘍の例としては、限定されるものではないが、結腸腫瘍(例えば、結腸癌または結腸腺腫)、胃腫瘍(例えば、胃癌)、小腸腫瘍(例えば、小腸癌)、肝臓腫瘍(例えば、肝臓癌)、膵臓腫瘍(例えば、膵臓癌)、肺腫瘍(例えば、肺癌)、卵巣腫瘍(例えば、卵巣癌)、腎臓(例えば、腎臓癌)、脳腫瘍(例えば、脳癌)、脊髄腫瘍(例えば、脊髄癌)、皮膚腫瘍(例えば、皮膚癌または黒色腫)、頭頚部腫瘍(例えば、頭頚部癌)、胃腸管腫瘍(例えば、胃腸管癌、食道癌、口腔粘膜癌、舌癌、胃癌、腸癌、結腸癌)、乳房腫瘍(例えば、乳癌)、前立腺腫瘍(例えば、前立腺癌)、骨腫瘍(例えば、骨癌)、血管腫瘍、ウィルムス腫瘍、白血病/リンパ腫、軟部組織腫瘍(例えば、軟部組織肉腫または滑膜肉腫)、及び転移性癌などが挙げられる。
【0192】
ある特定の実施形態において、その必要のある対象における疾患または障害を、対象に、Wntシグナリング経路の阻害物質である抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を提供することによって治療する方法は、変性疾患を治療するのに使用することができる。治療することができる変性疾患の例としては、限定されるものではないが、変形性関節症、軟骨変性、スポーツ損傷(例えば、軟骨損傷)、網膜症、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、及び血管障害、例えば、血管炎、異常な血管新生を伴う状態が挙げられる。
【0193】
ある特定の実施形態において、その必要のある対象における疾患または障害を、対象に、Wntシグナリング経路の阻害物質である抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を提供することによって治療する方法は、線維症の治療に使用することができる。治療することができる線維症の例としては、限定されるものではないが、肺線維症(限定されるものではないが、COPD及び特発性肺線維症を含む)、腎線維症(例えば、末期腎不全)、肝線維症、先天性肝貯蔵疾患、ならびに心臓線維症が挙げられる。
【0194】
ある特定の実施形態において、その必要のある対象における疾患または障害を、対象に、Wntシグナリング経路の阻害物質である抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を提供することによって治療する方法は、心不全、例えば、うっ血性心不全、収縮期心不全、駆出率保持性心不全、または冠動脈疾患の治療に使用することができる。
【0195】
ある特定の実施形態において、その必要のある対象における疾患または障害を、対象に、Wntシグナリング経路の阻害物質である抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントの有効量を提供することによって治療する方法は、異所性骨化、骨粗鬆症、または先天性高骨量障害の治療に使用することができる。
【0196】
「投与する」または「導入する」または「提供する」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物を対象の1つの細胞、複数の細胞、組織、及び/もしくは臓器に、または対象に送達することを指す。このような投与または導入は、in vivo、in vitro、またはex vivoで行うことができる。
【0197】
特定の実施形態において、医薬組成物は、非経口的に(例えば、静脈内に)、経口的に、直腸に、または注射によって投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局在的に(例えば、局所的または筋肉内に)投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、標的組織に(例えば、骨、関節、耳組織、眼組織、胃腸管、皮膚、創傷部位、または脊髄に)投与される。本発明の方法は、in vivoまたはex vivoで実施することができる。いくつかの実施形態において、標的細胞または組織を組織特異的Wntシグナル強化分子に接触させることはex vivoで実施し、続いて、細胞または組織(例えば、活性化した幹細胞または前駆細胞)を対象に移植する。当業者は、治療する疾患または障害に基づき、適切な投与の部位及び経路を決定することができる。
【0198】
用量及び投薬レジメンは、医師によって容易に判断される様々な因子、例えば、疾患または障害の性質、対象の特徴、及び対象の病歴に依存し得る。特定の実施形態において、対象に投与または提供する抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Wntサロゲート)の量は、対象の体重当たり約0.01mg/kg~約50mg/kg、0.1mg/kg~約500mg/kg、または0.1mg/kg~約50mg/kgの範囲内である。
【0199】
「治療」、「治療すること」などの用語は、本明細書では、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを広く意味するように使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に防止する(例えば、疾患もしくはその症状が対象に生じる可能性を低減する)という観点で予防的であってもよく、かつ/または、疾患もしくは疾患に起因し得る有害作用を部分的もしくは完全に治癒するという観点で治療的であってもよい。本明細書で使用する場合、「治療」は、哺乳類における疾患の任意の治療を網羅し、(a)疾患にかかりやすい可能性があるがまだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを防止すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその発生を抑止すること;または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことを含む。治療剤(例えば、抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメント)は、疾患または損傷の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。進行中の疾患の治療は、その治療が患者の望ましくない臨床的症状を安定化または低減する場合、特に関心対象となる。このような治療は、患部組織が完全に機能喪失する前に実施することが望ましい。主題療法は、疾患の症候段階中に投与し、場合によっては疾患の症候段階後に投与することが望ましい。いくつかの実施形態において、主題方法は、治療利益(例えば、障害の発生の防止、障害の進行の停止、障害の進行の逆行など)をもたらす。いくつかの実施形態において、主題方法は、治療利益が達成されたことを検出するステップを含む。当業者は、このような治療有効性の尺度が、修飾されている特定の疾患に適用可能であることを理解し、治療有効性の測定に使用するのに適切な検出方法を認識するであろう。
【0200】
細胞、組織、オルガノイドの成長の促進及び関連する方法
他の実施形態は、部分的には、細胞、組織、及びオルガノイドの成長または増殖を促進または強化するための、本明細書で開示されているWntサロゲート分子の使用であって、これは、例えば、細胞または組織を、任意選択でNorrinまたはRスポンジンポリペプチドと組み合わせて、1つ以上のWntサロゲートに接触させることによって行う。ある特定の実施形態において、細胞または組織は、ex vivo、in vitro、またはin vivoで接触させる。このような方法は、例えば、対象に移植またはグラフティングされる、治療使用のための細胞、組織、またはオルガノイドの生成に使用することができる。また、このような方法は、研究使用のための細胞、組織、またはオルガノイドの生成に使用することもできる。Wntサロゲート分子は、非治療的方法、例えば、in vitroの研究方法で広範に適用される。
【0201】
本発明は、ダメージを受けた組織(例えば、上記で論じられた組織)の組織再生のための方法であって、Wntサロゲート分子を細胞に投与することを含む方法を提供する。Wntサロゲート分子は、in vivoで細胞に直接投与しても、経口的に、静脈内に、または当技術分野で公知の他の方法により対象に投与しても、ex vivo細胞に投与してもよい。Wntサロゲート分子がex vivo細胞に投与されるいくつかの実施形態において、このような細胞は、Wntサロゲート分子を投与する前、後、または最中に、対象に移植され得る。
【0202】
Wntシグナリングは、幹細胞培養の主要な構成要素である。例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているような幹細胞培地。本明細書で開示されているWntサロゲート分子は、このような幹細胞培地で使用するのに好適なRスポンジン代替物であり、またはRスポンジンと組み合わせることができる。
【0203】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、幹細胞の増殖を強化するための方法であって、幹細胞を、本明細書で開示されている1つ以上のWntサロゲート分子に接触させることを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を含む細胞培地を提供する。いくつかの実施形態において、細胞培地は、通常はWntまたはRスポンジンを含む、当技術分野で既に知られている任意の細胞培地であって、WntまたはRスポンジンが、本明細書で開示されているWntサロゲート分子(1つまたは複数)で(完全にまたは部分的に)置き換えられているか、または補充されている、任意の細胞培地とすることができる。例えば、培地は、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)に記載されているようなものであってもよく、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0204】
幹細胞培地は、多くの場合、追加の成長因子を含む。したがって、当該方法は、幹細胞に成長因子を供給することを追加的に含んでもよい。細胞培地で一般的に使用される成長因子としては、上皮成長因子(EGF、(Peprotech))、形質転換成長因子(TGF-アルファ、Peprotech)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、Peprotech)、脳由来神経栄養因子(BDNF、R&D Systems)、肝細胞成長因子(HGF)、及びケラチノサイト成長因子(KGF、Peprotech、FGF7の別名でも知られている)が挙げられる。EGFは、様々な培養された外胚葉及び中胚葉細胞に対する強力な分裂促進因子であり、in vivo及びin vitroでの特定の細胞の分化と、細胞培養におけるいくつかの線維芽細胞の分化とに、著明な効果を有する。EGF前駆体は、タンパク質切断されて細胞を刺激する53アミノ酸ペプチドホルモンを生成する、膜結合分子として存在する。EGFまたはその他の分裂促進成長因子は、このようにして幹細胞に供給され得る。幹細胞の培養中、分裂促進成長因子を2日に1回培地に添加してもよく、一方、培地は4日に1回取り替えることが好ましい。概して、分裂促進因子は、i)EGF、TGF-アルファ、及びKGF;ii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF7;iii)EGF、TGF-アルファ、及びFGF;iv)EGF及びKGF;v)EGF及びFGF7;vi)EGF及びFGF;vii)TGF-アルファ及びKGF;viii)TGF-アルファ及びFGF7;またはix)TGF-アルファ及びFGFからなる群より選択される。ある特定の実施形態において、本開示は、例えば、任意選択で、本明細書に記載の1つ以上の成長因子またはその組合せと組み合わせて、本明細書で開示されているWntサロゲート分子を含む、幹細胞培地を含む。
【0205】
幹細胞の増殖を強化するこれらの方法は、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、Sato et al.,2011(GASTROENTEROLOGY 2011;141:1762-1772)、及びSato et al.,2009(Nature 459,262-5)で説明されているように、幹細胞から新たなオルガノイド及び組織を成長させるのに使用することができる。
【0206】
いくつかの実施形態において、Wntサロゲート分子は、幹細胞再生の強化に使用される。例示的な目的幹細胞としては、限定されるものではないが、筋サテライト細胞;造血幹細胞及びそれに由来する前駆細胞(米国特許第5,061,620号);神経幹細胞(Morrison et al.(1999) Cell 96:737-749を参照);胚幹細胞;間葉幹細胞;中胚葉幹細胞;肝臓幹細胞;脂肪組織由来幹細胞などが挙げられる。
【0207】
診断方法及び関連する方法
本発明の他の実施形態は、部分的には、1つ以上のFzd受容体を発現する細胞または組織の存在を検出するための診断的適用に関する。したがって、本開示は、試料中の1つ以上のFzd受容体を検出する方法、例えば、Fzd1を発現する細胞または組織を検出する方法を提供する。このような方法は、様々な公知の検出形式に適用することができ、検出形式としては、限定されるものではないが、免疫組織化学検査(IHC)、免疫細胞化学検査(ICC)、in situハイブリダイゼーション(ISH)、全載in situハイブリダイゼーション(WISH)、蛍光DNA in situハイブリダイゼーション(FISH)、フローサイトメトリー、酵素イムノアッセイ(EIA)、及び酵素結合イムノアッセイ(ELISA)が挙げられる。特定の実施形態において、方法は、(例えば、対象から得られた)組織または細胞を、本明細書で開示されている抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントに接触させ、次いで、抗体またはその抗原結合フラグメントの組織または細胞に結合する量を定量し、次いで、組織または細胞内のFzd受容体(1つまたは複数)の存在または量を定量することを含む。
【0208】
ISHは、標識された相補的DNAまたはRNA鎖(すなわち、一次結合剤)を使用して、細胞もしくは組織の一部分もしくは切片内で(in situ)、または組織が十分に小さい場合は全体の組織内で(全載)、特定のDNAまたはRNA配列を局在化させるハイブリダイゼーションのタイプである。当業者であれば、このISHが、抗体を一次結合剤として用いて組織切片内でタンパク質を局在化させる免疫組織化学検査とは異なるということを理解するであろう。DNA ISHは、染色体の構造を決定するためにゲノムDNA上で使用することができる。蛍光DNA ISH(FISH)は、例えば、染色体の完全性を評価するために医学的診断で使用することができる。RNA ISH(ハイブリダイゼーション組織化学検査)は、組織切片または全載内のmRNA及びその他の転写物を測定及び局在化するために使用される。
【0209】
様々な実施形態において、本明細書で説明されている抗体及びその抗原結合フラグメントは、直接的または間接的に検出することができる検出可能な標識と結合体化する。この点において、抗体「結合体」とは、検出可能な標識と共有結合した抗Fzd抗体またはその抗原結合フラグメントを指す。本発明において、DNAプローブ、RNAプローブ、モノクローナル抗体、その抗原結合フラグメント、その抗体誘導体、例えば、1本鎖可変フラグメント抗体またはエピトープタグ化抗体は、全て検出可能な標識と共有結合することができる。「直接的検出」では、1つのみの検出可能抗体、すなわち、検出可能な一次抗体が使用される。したがって、直接的検出とは、検出可能な標識と結合体化している抗体が、それ自体、第2の抗体(二次抗体)を追加する必要なく検出することができることを意味する。
【0210】
「検出可能な標識」とは、試料中の標識の存在及び/または濃度を示す(例えば、視覚的、電気的、または別の形で)検出可能なシグナルを産生することができる分子または物質である。検出可能な標識は、抗体と結合体化している場合、特定の抗体が向けられている標的を位置特定及び/または定量化するために使用することができる。それにより、試料中の標的の存在及び/または濃度は、検出可能な標識によって産生されたシグナルを検出することにより、検出することができる。検出可能な標識は直接的または間接的に検出することができ、異なる特定の抗体と結合体化したいくつかの異なる検出可能な標識を使用して、1つ以上の標的を検出することができる。
【0211】
直接的に検出することができる検出可能な標識の例としては、蛍光色素及び放射性物質及び金属粒子が挙げられる。これに対し、間接的な検出は、一次抗体の適用後に1つ以上のさらなる抗体、すなわち、二次抗体の適用が必要となる。したがって、検出は、二次抗体または結合剤における、検出可能な一次抗体との結合を検出することにより、実施される。二次結合物質または抗体の追加を必要とする検出可能な一次結合剤または抗体の例としては、検出可能な酵素結合剤及び検出可能なハプテン結合剤が挙げられる。
【0212】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、(例えば、ISH、WISH、またはFISHプロセスにおいて)第1の結合剤を含む核酸ポリマーと結合体化する。他の実施形態において、検出可能な標識は、(例えば、IHCプロセスにおいて)第1の結合剤を含む抗体と結合体化する。
【0213】
本開示の方法で使用される抗体と結合体化することができる検出可能な標識の例としては、蛍光標識、酵素標識、放射性同位体、化学発光標識、電気化学発光標識、生物発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、金属粒子、ハプテン、及び色素が挙げられる。
【0214】
蛍光標識の例としては、5-(及び6)-カルボキシフルオレセイン、5-または6-カルボキシフルオレセイン、6-(フルオレセイン)-5-(及び6)-カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、テトラメチルローダミン、ならびにCy2、Cy3、及びCy5などの色素、任意選択で置換されたクマリン(AMCAを含む)、PerCP、フィコビリンタンパク質(R-フィコエリトリン(RPE)及びアロフィコエリトリン(APC)を含む)、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びその類似体、ならびにR-フィコエリトリンまたはアロフィコエリトリンの結合体、無機蛍光標識、例えば、コーティングされたCdSeナノ結晶子のような半導体材料に基づく粒子が挙げられる。
【0215】
ポリマー粒子標識の例としては、蛍光色素を埋め込むことができるポリスチレン、PMMA、もしくはシリカの微粒子もしくはラテックス粒子、または色素、酵素、もしくは基質を含むポリマーミセルもしくはカプセルが挙げられる。
【0216】
金属粒子の例としては、金粒子及びコーティング金粒子が挙げられ、これらは銀染色によって変換することができる。ハプテンの例としては、DNP、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、ビオチン、及びジゴキシゲニンが挙げられる。酵素標識の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)、β-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、及びグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。一般的に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼの基質の例としては、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケル強化を伴うジアミノベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジン二塩酸塩(BDHC)、ハンカー・イエーツ(Hanker-Yates)試薬(HYR)、インドファン(Indophane)ブルー(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(CN)、アルファ-ナフトールピロニン(アルファ-NP)、o-ジアニシジン(OD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスファート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2-(p-ヨードフェニル)-3-p-ニトロフェニル-5-フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-ベータ-D-ガラクトシド/フェリシアン化鉄(II)(BCIG/FF)が挙げられる。
【0217】
一般的に使用される西洋ワサビペルオキシダーゼの基質アルカリホスファターゼの基質の例としては、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスファート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-ホスファート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-ホスファート/ニューフクシン(fuschin)(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルホスファート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-d-ガラクトピラノシド(BCIG)が挙げられる。
【0218】
発光標識の例としては、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2-ジオキセタン、及びピリドピリダジンが挙げられる。電気化学発光標識の例としては、ルテニウム誘導体が挙げられる。放射性標識の例としては、ヨウ化物、コバルト、セレニウム、トリチウム、炭素、硫黄、及びリンの放射性同位体が挙げられる。
【0219】
検出可能な標識は、本明細書で説明されている抗体と結合しても、目的の生物学的マーカーと特異的に結合する他の任意の分子(例えば、抗体、核酸プローブ、またはポリマー)と結合してもよい。さらに、当業者であれば、検出可能な標識は、第2の、及び/または第3の、及び/または第4の、及び/または第5の結合剤または抗体などと結合体化してもよいことを理解するであろう。さらに、当業者であれば、目的の生物学的マーカーを特徴づけるために使用される各々の追加の結合剤または抗体がシグナル増幅ステップとしての働きをすることも理解するであろう。生物学的マーカーは、検出可能な標識が例えば、色素、コロイド金粒子、または発光試薬である場合に、例えば光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡を用いて、視覚的に検出することができる。また、生物学的マーカーに結合した視覚的に検出可能な物質は、分光光度計を用いて検出することもできる。検出可能な物質が放射性同位体である場合、検出は、オートラジオグラフィーによって視覚的に行うこともあれば、シンチレーションカウンターを用いて非視覚的に行うこともある。例えば、Larsson,1988,Immunocytochemistry:Theory and Practice,(CRC Press,Boca Raton,Fla.);Methods in Molecular Biology,vol.80 1998,John D.Pound(ed.)(Humana Press,Totowa,N.J.)を参照。
【0220】
本発明はさらに、試料中の1つ以上のFzd受容体または1つ以上のFzd受容体を発現する細胞もしくは組織を検出するためのキットであって、本明細書で説明されている少なくとも1つの抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、または宿主細胞を含む、キットを提供する。ある特定の実施形態において、キットは、緩衝液、酵素、標識、基質、本発明の抗体が付着するビーズまたはその他の表面など、及び使用説明書を含むことができる。
【0221】
本明細書で参照されている、及び/または出願データシートに列挙されている上記全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0222】
上記のことから、例示の目的で本発明の特定の実施形態が説明されているものの、様々な変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されよう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲以外で限定されることはない。
【実施例
【0223】
実施例1
抗Fzd抗体のキャラクタリゼーション
本明細書で開示されている抗体Fab、scFv、VHHまたはsdAbフラグメントをシークエンシングし、発現、精製、及び様々なFzd受容体に対する結合親和性キャラクタリゼーションのために哺乳類発現ベクターにサブクローニングした。
【0224】
製造業者の指示に従って、それぞれの発現ベクターをExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)に形質移入することにより、可溶性の組換えタンパク質を調製した。簡潔に述べると、形質移入から4日後、細胞ペレット沈降後に細胞培地を収集した。培地を、ヒトIgG-Fc部分を含むタンパク質を収集するためのプロテインA樹脂(REPLIGEN,Waltham,MA)、またはHisタグと結合体化したタンパク質を収集するためのニッケル親和性樹脂(Roche,Basel,Switzerland)のいずれかと共にインキュベートした。10mMグリシン、pH3.5を用いてプロテインA樹脂から、または150mMインダゾール、pH7.4を用いてニッケル親和性樹脂から、それぞれタンパク質を溶離した。
【0225】
続いて、タンパク質溶離物を分画し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってさらに精製した。SECは、Superdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)を用いた高速タンパク質液体クロマトグラフィーにより、HBS緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4)中で実施した。各タンパク質を475μlまたは500μlの体積でカラムに注入した。280nmにおける吸光度をモニターし、全溶離物の500μl分画物を収集した。メインピーク付近の各収集分画物(faction)をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によってさらに分析して、内容物を確認した。SDS-PAGEは、トリス-HCl 4~15%ゲル(Bio-Rad,Hercules,CA)を用いて非還元条件下及び還元条件下の両方で実施した。試料をレムリー試料緩衝液中で調製し、100℃で5分間加熱した。
【0226】
NanoDrop分光光度計(Thermo Scientific)を用いて直接UV A280法によってタンパク質濃度を定量した。吸光度のタンパク質濃度に対する関係は、ランベルト・ベール(Beer-Lamber)方程式A=εlcに基づけば線形である(Aは吸光度の値であり、εは波長依存的な吸光係数であり、lはセンチメートル単位のパス長であり、cはタンパク質濃度である)。l全ての産生タンパク質の実験的吸光係数を、そのアミノ酸配列によって推定した。
【0227】
抗体フラグメントにおける、様々なFzdシステインリッチドメイン(CRD)タンパク質標的(Fzd1、Fzd2、Fzd3、Fzd4、Fzd5、Fzd6、Fzd7、Fzd8、Fzd9、及び/またはFzd10 CRD)に対する結合動態を、バイオレイヤー干渉法(BLI)により、ストレプトアビジン(SA)バイオセンサーを伴った30℃、1000rpmにおけるOctet Red 96(PALL ForteBio,Fremont,CA)装置を用いて決定した。C末端側ビオチン化Fzd CRD組換えタンパク質をランニング緩衝液中(PBS、0.05% Tween-20、0.5% BSA、pH7.2)で20nMに希釈し、カップリング長が0.2nmに達するまでSAバイオセンサーに捕捉した。Fzd CRDの捕捉後、捕捉したビオチン化Fzd CRDを伴ったSAバイオセンサーを、ランニング緩衝液中に7つの異なる濃度(0、1.37、4.12、12.4、37、111.1、333.3、1000nM)の関連抗体フラグメントを含むウェル、及び参照チャネルとしてのランニング緩衝液のみを有するウェルの中に浸漬した。製造業者の推奨設定に従ってグローバルフィッティングにより、1:1結合モデルでKを決定した。
【0228】
表1Aは、示された抗体クローンにおける重鎖CDR(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)ならびに軽鎖CDR(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)を示している。Distributed Bio製Abgenesisソフトウェアを使用して、以下に示す特異性決定領域(SDR)をマッピングした。これは、CDRのKabat定義を含む(Padlan et al.FASEB J.9,133-139(1995))。
【0229】
軽鎖CDRが示されない場合は、抗体フラグメントが軽鎖を含まなかった(例えば、抗体がFabまたはVHHもしくはsdAbであった)ということである。また、表1Aは、抗体フラグメントが結合することを示された初期Fzd受容体も示している。各クローンが最初に結合として特定されたFzd受容体を、単回用量または用量依存的ELISAによりNunc Maxisorbマイクロタイタープレート(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)上に固定した標的抗原と結合した、ファージ提示抗体フラグメントを検出することによって決定した。結合したファージの検出は、抗M13-HRP抗体(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)による415nmにおけるTMB基質(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)のターンオーバーによって熱量測定で決定した。バックグラウンドにおける450nmのOD倍数が閾値レベルよりも大きい場合、クローンがFzd受容体に結合するものと特定した。
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1A-3】
【表1A-4】
【表1A-5】
【表1A-6】
【表1A-7】
【表1A-8】
【表1A-9】
【表1A-10】
【表1A-11】
【表1A-12】
【表1A-13】
【表1A-14】
【表1A-15】
【表1A-16】
【表1A-17】
【表1A-18】
【表1A-19】
【表1A-20】
【表1A-21】
【表1A-22】
【表1A-23】
【表1A-24】
【表1A-25】
【表1A-26】
【表1A-27】
【表1A-28】
【表1A-29】
【表1A-30】
【0230】
表1Bは、クローンIDと、存在する場合は、例示的クローンにおける抗体の重鎖フラグメント及び/または軽鎖フラグメントの配列識別番号とを示している。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインはFabであるか、またはFabから誘導されたものであり、そのため表1Bの重鎖はVH及びCH1配列を含むが、CH2またはCH3配列を含まない。ある特定の実施形態において、Fzd結合ドメインは、VHHもしくはsdAb(登録商標)であるか、またはVHHもしくはsdAbから誘導されたものであり、そのため表1BはVHHドメインを含む。表1Bは、これらのクローンにおける様々なFzd受容体との結合を実証するデータも示している。Kd値は、上記で説明されているようにBLIによって決定した。空欄は、特定のFzd受容体との結合がまだ決定していないことを示す。「n.b.」という記載は結合なしを示す。表1Bに示されているように、抗体フラグメントのサブセットは、Octet BLIにおける結合親和性が決定するところにより、単一Fzdに対する1つの特異性、またはFzdのサブファミリーに対する特性を示した。
【表1B-1】
【表1B-2】
【表1B-3】
【表1B-4】
【表1B-5】
【0231】
実施例2
抗Fzd抗体フラグメントのアラニンスキャニング変異
1つの抗体フラグメント、クローン001S-A04をCDRのアラニンスキャニング変異誘発のために選択し、様々な変異体におけるそれぞれのFzd1結合親和性を、実施例1で説明のようにOctet BLIによって決定した。表2に示されているように、多数の変異体が野生型抗体フラグメントと同様の親和性でFzd1に結合しており、これはFzd1抗体及びその抗原結合フラグメントがCDR内のアミノ酸修飾を許容し得ることを実証するものである。
【表2-1】
【表2-2】
【0232】
実施例3
Fzd細胞外ドメインに結合した抗Fzd抗体フラグメントの結晶構造
Fzdは、細胞外Cysリッチドメイン(CRD)がその7-膜貫通ヘリックスドメイン及び細胞質テールにリンカー領域を通じて接続しているGPCRのクラスである。Fzdは、その細胞外ドメイン内に1つまたは2ついずれかの予測-NxS/T-グリコシル化モチーフを有する。高分解能構造を可能にするため、2つのグリコシル化モチーフを含むFzd細胞外ドメインを、第2の予測-NxS/T-グリコシル化モチーフがもたらすCRD-Xtalという名称のコンストラクトの前で切断した。C末端に8ヒスチジンモチーフを含む10個のFzd CRD-Xtalの各配列は以下の通りである。
hFzd1_Q9UP38_101-230
QYNGERGISVPDHGYCQPISIPLCTDIAYNQTIMPNLLGHTNQEDAGLEVHQFYPLVKVQCSAELKFFLCSMYAPVCTVLEQALPPCRSLCERARQGCEALMNKFGFQWPDTLKCEKFPVHGAGELCVGQGSHHHHHHHH(配列番号1454)
hFzd2_Q14332_24-153
QFHGEKGISIPDHGFCQPISIPLCTDIAYNQTIMPNLLGHTNQEDAGLEVHQFYPLVKVQCSPELRFFLCSMYAPVCTVLEQAIPPCRSICERARQGCEALMNKFGFQWPERLRCEHFPRHGAEQICVGQHHHHHHHH(配列番号1455)
hFzd3_Q9NPG1_23-148
HSLFSCEPITLRMCQDLPYNTTFMPNLLNHYDQQTAALAMEPFHPMVNLDCSRDFRPFLCALYAPICMEYGRVTLPCRRLCQRAYSECSKLMEMFGVPWPEDMECSRFPDCDEPYPRLVDLNLAGEHHHHHHHH(配列番号1456)
hFzd4_ Q9ULV1_38-167
GDEEERRCDPIRISMCQNLGYNVTKMPNLVGHELQTDAELQLTTFTPLIQYGCSSQLQFFLCSVYVPMCTEKINIPIGPCGGMCLSVKRRCEPVLKEFGFAWPESLNCSKFPPQNDHNHMCMEGPGDEEVHHHHHHHH(配列番号1457)
hFzd5_ Q13467_27-152
ASKAPVCQEITVPMCRGIGYNLTHMPNQFNHDTQDEAGLEVHQFWPLVEIQCSPDLRFFLCSMYTPICLPDYHKPLPPCRSVCERAKAGCSPLMRQYGFAWPERMSCDRLPVLGRDAEVLCMDYNRHHHHHHHH(配列番号1458)
hFzd6_ O60353_18-145
HSLFTCEPITVPRCMKMAYNMTFFPNLMGHYDQSIAAVEMEHFLPLANLECSPNIETFLCKAFVPTCIEQIHVVPPCRKLCEKVYSDCKKLIDTFGIRWPEELECDRLQYCDETVPVTFDPHTEFLGHHHHHHHH(配列番号1459)
hFzd7_O75084_36-165
HGEKGISVPDHGFCQPISIPLCTDIAYNQTILPNLLGHTNQEDAGLEVHQFYPLVKVQCSPELRFFLCSMYAPVCTVLDQAIPPCRSLCERARQGCEALMNKFGFQWPERLRCENFPVHGAGEICVGQNTHHHHHHHH(配列番号1460)
hFzd8_Q9H461_28-153
ASAKELACQEITVPLCKGIGYNYTYMPNQFNHDTQDEAGLEVHQFWPLVEIQCSPDLKFFLCSMYTPICLEDYKKPLPPCRSVCERAKAGCAPLMRQYGFAWPDRMRCDRLPEQGNPDTLCMDYNRHHHHHHHH(配列番号1461)
hFzd9_O00144_23-159
LEIGRFDPERGRGAAPCQAVEIPMCRGIGYNLTRMPNLLGHTSQGEAAAELAEFAPLVQYGCHSHLRFFLCSLYAPMCTDQVSTPIPACRPMCEQARLRCAPIMEQFNFGWPDSLDCARLPTRNDPHALCMEAPENAHHHHHHHH(配列番号1462)
hFzd10_Q9ULW2_21-154
SSMDMERPGDGKCQPIEIPMCKDIGYNMTRMPNLMGHENQREAAIQLHEFAPLVEYGCHGHLRFFLCSLYAPMCTEQVSTPIPACRVMCEQARLKCSPIMEQFNFKWPDSLDCRKLPNKNDPNYLCMEAPNNGHHHHHHHH(配列番号1463)
【0233】
実施例4
Fzd CRD_Xtalコンストラクトの発現及び精製
レンチウイルス技術を用いて、全てのFzd CRD_Xtalタンパク質コンストラクトを安定的に発現するFreeStyle(商標)293-F細胞(Thermofisher)を創出した。ラージスケール発現のため、Fzd CRD_Xtalを発現する冷凍バイアルのFreeStyle(商標)293-F細胞を、mL当たりペニシリン10U及びストレプトマイシン(Lonza)10μgの存在下のFreeStyle(Thermofisher)培地20mL中に解凍した。別の日に細胞を、所望の体積(典型的には6~10L)で約3.0×10細胞/mLに到達するまで増殖させた(expended)。この段階で、細胞を高密度まで持続的に成長させ、遠心分離により、約70%の生存率で培地を採取した。Fzd CRD_Xtalタンパク質を、HBS(20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl)中で予め平衡化したNi-NTA樹脂(培地L当たり1mL;Qiagen)とのインキュベートによって培地から精製し、HBS中500mMイミダゾールで溶離した。Ni-NTA溶離液を5mLに濃縮し、HBSで予め平衡化したHiLoad 16/600 Superdex 200pgカラム(GE Life Sciences)上でさらに研磨した。メインピーク付近の分画物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によってさらに分析して、内容物を確認した。SDS-PAGEは、トリス-HCl 4~15%ゲル(Bio-Rad,Hercules,CA)を用いて還元条件下及び非還元条件下の両方で実施した。試料をレムリー試料緩衝液中で調製し、100℃で5分間加熱した。Fzd CRD_Xtalを含む画分を約2mg/mLに濃縮し、さらに使用するまで保管用に10%グリセロールの存在下-80Cで凍結した。NanoDrop分光光度計(Thermo Scientific)を用いて直接UV A280法によってタンパク質濃度を定量した。吸光度のタンパク質濃度に対する関係は、ランベルト・ベール方程式A=εlcに基づいて線形である(Aは吸光度の値であり、εは波長依存的な吸光係数であり、lはセンチメートル単位のパス長であり、cはタンパク質濃度である)。全ての産生タンパク質の吸光係数を、そのアミノ酸配列によって推定した。
【0234】
実施例5
Fab結合物質の発現及び精製
製造業者(Thermofisher)からの標準的プロトコルに従って、Fzd CRD_XtalのFab結合物質の軽鎖及び重鎖(そのC末端にヘキサヒスチジンを有する)を発現するプラスミドを、典型的には1000mLスケールでの同時発現のためにExpi293細胞に同時形質移入した。4日間持続的に細胞成長させた後、培地を遠心分離により採取し、PBS中で予め平衡化した完全His樹脂(培地1L当たり2.5mL;Roche)と結合させ、PBS中250mMイミダゾールを用いて重力流下で溶離した。Fab結合物質を含む溶離液を約5mLに濃縮し、HBSで予め平衡化したHiLoad 16/600 Superdex 200pgカラム(GE Life Sciences)上でさらに研磨した。メインピーク付近の分画物をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によってさらに分析して、内容物を確認した。SDS-PAGEは、トリス-HCl 4~15%ゲル(Bio-Rad,Hercules,CA)を用いて還元条件下及び非還元条件下の両方で実施した。試料をレムリー試料緩衝液中で調製し、100℃で5分間加熱した。Fzd CRD_Xtalを含む画分を約3mg/mLに濃縮し、さらに使用するまで保管用に10%グリセロールの存在下-80℃で凍結した。NanoDrop分光光度計(Thermo Scientific)を用いて直接UV A280法によってタンパク質濃度を定量した。吸光度のタンパク質濃度に対する関係は、ランベルト・ベール方程式A=εlcに基づいて線形である(Aは吸光度の値であり、εは波長依存的な吸光係数であり、lはセンチメートル単位のパス長であり、cはタンパク質濃度である)。全ての産生タンパク質の吸光係数を、そのアミノ酸配列によって推定した。
【0235】
実施例6
Fzd:Fab複合体形成、結晶化、及び構造決定
精製したFzd CRD_Xtal及びFab結合物質を1.1:1モル比で(分子量が小さい方のタンパク質を少々過剰に)混合し、100:1のw/w比のカルボキシ-ペプチダーゼA及びBと共に4℃で一晩インキュベートした。複合体の形成は、HBS中で予め平衡化したSuperdex S200 Increase(10/300GL)カラム上で単一のメジャーピークを観察することにより確認した。複合体を含む画分をSDS-PAGEによってさらにチェックし、結晶化スクリーンのために10~55mg/mLの範囲まで濃縮した。最初の結晶化スクリーンは、市販のMCSG1、MCSG2、MCSG3、MCSG4、PACT(Molecular Dimensions)、PEG I、及びPEG II(Qiagen)スクリーンを使用して、グリッドスクリーンまたはマイクロシードマトリックススクリーン[MMS;Microseed matrix screening for optimization in protein crystallization:what have we learned? D’Arcy,A.,Bergfors,T.,Cowan-Jacob S.W.,and Marshd,M.Acta Cryst.F70,1117-1126(2014)]による最適化を、Mosquito(TTP LabTech)分注機を用いて実施し、EchoThermインキュベーター(Torrey Pines Scientific)内で18℃にて平衡化した。96ウェルプレート結晶スクリーニング実験を、Discovery V20立体顕微鏡(Zeiss)によって手作業で定期的にモニターし、結晶を、様々な凍結保護物質(典型的には15~30% v/vのグリセロールまたはエチレングリコール)の存在下で液体窒素に漬けることにより、データ収集用に凍結した。X線回折データセットをBerkeley Center for Structural Biology at the Advanced Light Source (ALS)(Berkeley CA)で収集し、XDS[Kabsch,W.XDS.Acta Cryst.D66,125-132(2010)]及びxdsme[Legrand,P.XDSME:XDS Made Easier(2017)GitHub repository,https://github.com/legrandp/xdsme DOI 10.5281/zenodo.837885]プログラムで処理した。Fzd:Fab複合体の構造を、Phaser[Phaser crystallographic software.A.J.McCoy,R.W.Grosse-Kunstleve,P.D.Adams,M.D.Winn,L.C.Storoni,and R.J.Read.J Appl Crystallogr 40,658-674(2007)]を用いた分子置換法(関連するFabの定常ドメイン及び可変ドメインをテンプレートとする)、次いでPhenixに実装されたMolProbityによる精密化及び検証[PHENIX:a comprehensive Python-based system for macromolecular structure solution.P.D.Adams,P.V.Afonine,G.Bunkoczi,V.B.Chen,I.W.Davis,N.Echols,J.J.Headd,L.W.Hung,G.J.Kapral,R.W.Grosse-Kunstleve,A.J.McCoy,N.W.Moriarty,R.Oeffner,R.J.Read,D.C.Richardson,J.S.Richardson,T.C.Terwilliger,and P.H.Zwart.Acta Cryst.D66,213-221(2010);MolProbity:all-atom structure validation for macromolecular crystallography.V.B.Chen,W.B.Arendall,J.J.Headd,D.A.Keedy,R.M.Immormino,G.J.Kapral,L.W.Murray,J.S.Richardson,and D.C.Richardson.Acta Cryst.D66,12-21(2010)]によって決定した。COOT[Features and development of Coot.P.Emsley,B.Lohkamp,W.G.Scott,and K.Cowtan.Acta Cryst.D66,486-501(2010)]を用いて、結晶学モデルを手作業で点検し構築した。MOE(CCG)及びPyMol(Schrodinger)を用いて、精密化した結晶構造の分析及び画像作成を実施した。
【0236】
実施例7
Fzd1:1RC07複合体の構造:
1RC07(001S-B03)Fabの配列:
1RC07_L鎖
SYVLTQPPSVSVSPGQTASITCSGDKVGHKYASWYQQKPGQSPVLVIYEDSQRPSGIPVRFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYYCQAWDSSTDVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号1464)
1RC07_H鎖
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVSGASFSGHYWTWIRQPPGKGLEWIGEIDHTGSTNYEPSLRSRVTISVDTSKNQFSLNLKSVTAADTAVYYCARGGQGGYDWGHYHGLDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1465)
Fzd1:1RC07複合体の回折品質結晶(濃度=28mg/mL)は、0.1M塩化リチウム、0.1M HEPES:NaOH、pH7.5、及び25%(w/v)PEG6000を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の20%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd1:1RC07複合体は、P22空間群(a=65.79、b=192.21、c=44.79)において非対称単位当たり1つの複合体分子で結晶化した。Fzd1:1RC07複合体の構造を2.10Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ19.9%及び24.8%に精密化した。結晶構造101-114、179-189、203-207、217-230において、Fzd1の残基の連なりは、電子密度マップが不規則であったためモデル化することができなかった。
【0237】
Fzd1:1RC07複合体の全体の構造は図3.1(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、1RC07の重鎖CDR3が脂質結合部位とより密接に結合することを明らかにするものである。結晶学モデルが強力なmF-DF差マップを構築中に、抗原Fzd1及び抗体1RC07の界面で>10の電子密度が観察された。この強力な正の差密度マップは、亜鉛イオンのモデリングによって十分に説明することができ、3.5Å分解能で計算した>15の強力な異常差マップによってさらに確認された(図3.1(C))。このZn2+イオンは、1RC07のCDR H3ループからのHis107(2.04Å)及びHis109(2.01Å)、ならびにCDR L2ループのGlu49(2.03及び2.76Å)、ならびにFzd1のHis151(2.00Å)(Fzd2、Fzd7、Fzd5、Fzd8、及びFzd10の配列内で保存されている)と結合した。
【0238】
複合体の構造から、1RC07に対するFzd1のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd1上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Pro122、Leu148、His151、Gln152、Try154、Pro155、Leu156、Lys158、及びGln160。
【0239】
加えて、次に示すFzd1上の残基を1RC07の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0Å):
Ser120、Ile121、Leu123、Cys124、Thr125、Asp126、Glu144、Gly147、Glu149、Val150、Phe153、Val157、Val159、Cys161、Cys198、Leu201、及びMet202。
【0240】
また、Fzd1:1RC07複合体の構造から、次に示すFzd1の任意の原子から5.0Å以下の1RC07上の残基を特定することもできる:
1RC07重鎖:
Tyr103、Trp105、Gly106、His107、及びHis109。
1RC07軽鎖:
Val27、Gly28、His29、Lys30、Tyr31、Ala32、Tyr48、Glu49、Asp50、Ser51、Gln52、及びAsn65。
【0241】
さらに、Fzd1:1RC07複合体は、次に示す1RC07上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd1に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
1RC07重鎖:
Gln100、Gly101、及びTyr108。
1RC07軽鎖:
Lsy26、Ser33、Ile47、Arg53、Val59、Ser62、Gly63、Ser64、Asn65、Ser66、Gly67、Thr69、Ala70、Trp90、及びSer92。
【0242】
実施例8
Fzd1:R2M9複合体の構造:
R2M9(003S-E07)Fabの配列:
R2M9_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYRTPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1466)
R2M9_H鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTNNFMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTKYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSVGEVGATMLGIGVWYWFDPWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1467)
Fzd1:R2M9複合体の回折品質結晶(濃度=32mg/mL)は、0.1Mギ酸ナトリウム、及び11%(w/v)PEG3350を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の26%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd1:R2M9複合体は、P2空間群(a=50.57、b=160.60、c=88.97Å、及びβ=95.5°)において非対称単位当たり2つの複合体分子で結晶化した。Fzd1:R2M9複合体の構造を2.60Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ23.1%及び26.3%に精密化した。
【0243】
Fzd1:R2M9複合体の全体の構造は図3.1(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、R2M9が脂質結合部位の反対方向からFzd1を認識することを明らかにするものである。複合体の構造から、R2M9に対するFzd1のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd1上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Tyr115、Ala128、Tyr129、Phe167、Val176、Thr178、Val179、Leu180、Glu181、Gln182、Leu184、Gly224、Leu226、Cys227、及びVal228。
【0244】
加えて、次に示すFzd1上の残基をR2M9の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å):
Cys116、Ile127、Asn130、Gln131、Ser171、Cys177、Ala183、Pro185、Cys187、His221、Ala223、Glu225、Gly229、及びGln230。
【0245】
Fzd1:R2M9複合体の結晶構造は、試料調製中に凍結保護物質として使用されるグリセロール分子が、Fzd1のLeu180、Gln182、Leu184、及びLeu226から5Åカットオフ未満の距離でR2M9 CDR H3ループのSer95と相互作用することを明らかにする。R2M9 CDR H3ループのVal108と結合した別のグリセロール分子は、Fzd1のVal176、Cys177、Thr178、及びVal179から5Å未満の距離であった。このような相互作用は、R2M9の特性を最適化するための構造誘導型操作に活用することが可能である。
【0246】
また、Fzd1:R2M9複合体の構造から、次に示すFzd1の任意の原子から5.0Å以下のR2M9上の残基を特定することもできる:
R2M9重鎖:
Asn31、Phe33、His35、Trp50、Asn52、Lys58、Ser95、Gly97、Glu98、Val99、Leu104、Gly105、Ile106、Val108、及びTyr110。
R2M9軽鎖:
Ser91、Tyr92、Arg93、Thr94、及びPhe96。
【0247】
さらに、Fzd1:R2M9複合体の構造は、次に示すR2M9上の残基が、相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd1に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
R2M9重鎖:
Thr30、Asn32、Met34、Trp47、Ile51、Asn53、Ser54、Gly56、Thr57、Tyr59、Val96、Gly100、Ala101、Thr102、Met103、Gly107、Trp109、Trp111、及びPhe112。
R2M9軽鎖:
Try32、Gln89、Gln90、及びPro95。
【0248】
実施例9
Fzd4:003S-D10複合体の構造:
003S-D10 Fabの配列:
003S-D10_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASNLLGGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYSTPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1468)
003S-D10_H鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFNFGIYSMTWVRQAPGKGLEWISYISGDSGYTNYADSVKGRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARVGPGGWFDPWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1469)
Fzd4:003S-D10の回折品質結晶(濃度=23mg/mL)をMMSにより、0.1Mクエン酸ナトリウム:HCl、pH5.6、20%(v/v)PEG4000、20%(v/v)イソプロパノールを含むH4条件のMCSG1スクリーンにおいて得た。ウェル溶液中の20%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd4:3SD10は、P3121空間群(a=b=149.4Å及びc=91.9Å)において非対称単位当たり1つの複合体分子で結晶化した。Fzd4:003S-D10複合体の構造を2.10Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ18.5%及び21.6%に精密化した。
【0249】
Fzd4:003S-D10複合体の全体の構造は図4.1(A)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、003S-D10の重鎖CDR3が脂質結合部位で結合することを明らかにするものである(図4.1(B))。複合体の構造から、003S-D10に対するFzd4のエピトープを特定することができ、次に示す残基は、図4.1(C)で濃色で示されているFzd4上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Val67、Gly68、His69、Thr73、Asp74、Glu76、Leu77、Gln78、Thr80、Thr81、Phe82、Thr83、Pro84、Leu85、Gln87、Tyr88、Tyr102、Leu132、Phe135、Gly136、Phe137、Ala138、及びSer142。
【0250】
加えて、次に示すFzd4上の残基を直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å;図4.1(C)の薄緑色の表面):
Ile50、Ser51、Met52、Pro64、Asn65、Leu66、Glu70、Leu71、Gln72、Ala75、Leu79、Ile86、Gly89、Leu94、Gln95、Leu98、Val101、Tyr102、Val131、Lys133、Glu134、Trp139、Pro140、Glu141、Leu143、及びLys147。
【0251】
また、Fzd4:003S-D10の構造から、次に示すFzd4の任意の原子から5.0Å以下の003S-D10上の残基を特定することもできる:
003S-D10重鎖:
Gly30、Ile31、Tyr32、Ser33、Tyr50、Ser52、Gly53、Asp54、Tyr57、Asn59、Arg98、Val99、Gly100、Pro101、Gly102、Gly103、Trp104、及びAsp106。
003S-D10軽鎖:
Ser30、Tyr32、Leu46、Try49、Asn53、Leu55、Gly56、Thr91、Tyr92、Ser93、Thr94、及びTrp96。
【0252】
さらに、Fzd4:003S-D10の構造は、次に示す003S-D10上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd4に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
003S-D10重鎖:
Val2、Phe27、Asn28、Phe29、Met34、Trp47、Ile51、Ser55、Gly56、Thr58、Tyr60、Arg72、Asp74、Phe105、及びPro107。
003S-D10軽鎖:
Ile2、Gln27、Gly28、Ile29、Ser31、Tyr36、Ile48、Ala50、Leu54、Ser67、Gln90、Pro95、及びThr97。
【0253】
実施例10
Fzd5:R2M3複合体の構造
R2M3(001S-A04)Fabの配列:
>R2M3_L鎖
QAVVLQEPSLSVSPGGTVTLTCGLSSGSVSTNYYPSWYQQTPGQAPRTLIYYTNTRSSDVPERFSGSIVGNKAALTITGAQPDDESVYFCLLYLGRGIWVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号1470)
>R2M3_H鎖
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYGISWVRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCASSKEKATYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1471)
【0254】
Fzd5:R2M3複合体の回折品質結晶(濃度=28mg/mL)は、0.1M塩化リチウム、0.1M HEPES:NaOH、pH7.5、及び25%(w/v)PEG6000を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の20%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd5:R2M3複合体は、P2空間群(a=59.61Å、b=69.29Å、c=284.54Å)において非対称単位当たり2つの複合体分子で結晶化した。Fzd5:R2M3複合体の構造を2.0Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ21.9%及び23.8%に精密化した。
【0255】
Fzd5:R2M3複合体の全体の構造は図3.4(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、R2M3が脂質結合部位とより密接に結合することを明らかにするものである。R2M3は、Fzdの両方のFzd1、2、7及びFzd5、8サブファミリーとより広い特異性で結合する。
【0256】
複合体の構造から、R2M3に対するFzd5のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd5上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Thr37、Val38、Pro39、Arg42、Asn56、His57、Asp58、Gln60、Asp61、Glu62、Gly64、Leu65、Glu66、His68、Gln69、Trp71、Pro72、Try123、及びGly124。
【0257】
加えて、次に示すFzd5上の残基をR2M3の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0Å):
Gln34、Glu35、Ile36、Met40、Cys41、Pro52、Asn53、Phe55、Thr59、Ala63、Val67、Phe70、Glu75、Tyr90、Met120、Arg121、Gln122、Phe125、Ala126、Pro128、及びGlu129。
【0258】
また、Fzd5:R2M3複合体の構造から、次に示すFzd5の任意の原子から5.0Å以下のR2M3上の残基を特定することもできる:
R2M3重鎖:Ser31、Trp50、Tyr54、Asn55、Asn57、Lys102、Ile103、Thr104、Tyr105、及びTyr106。
R2M3軽鎖:Thr31、Asn32、Tyr34、Tyr52、Asn54、Thr55、Tyr93、Gly95、Arg96、Gly97、及びTrp99。
【0259】
さらに、Fzd5:R2M3複合体の構造は、次に示すR2M3上の残基が、相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd5に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
R2M3重鎖:Phe29、Thr30、Tyr32、Gly33、Ile51、Ser52、Gly56、Thr58、Asn59、Glu101、Tyr107、及びGly108。
R2M3軽鎖:Ser30、Tyr33、Pro35、Tyr51、Thr53、Gly66、Ser67、Ile68、Leu94、及びIle98。
【0260】
実施例11
Fzd8:005S-H05複合体の構造
005S-H05 Fabの配列:
>005S-H05_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYSMPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1472)
>005S-H05_H鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMHWVRQAPGQGLEWMGRINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARVPDFWSGYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1473)
Fzd8:005S-H05複合体の回折品質結晶(濃度=38mg/mL)は、0.2M硫酸アンモニウム、0.1M HEPES:NaOH、pH7.5、及び25%(w/v)PEG3350を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の26%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd8:005S-H05複合体は、C2空間群(a=92.63Å、b=60.38Å、c=110.35Å、β=97.5°)において非対称単位当たり2つの複合体分子で結晶化した。Fzd8:005S-H05複合体の構造を1.65Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ16.8%及び18.6%に精密化した。
【0261】
Fzd8:005S-H05複合体の全体の構造は図3.5(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、005S-H05の重鎖CDR3が脂質結合部位内に挿入されることを明らかにするものである。005S-H05は、Fzd5及びFzd8の両方とサブファミリー特異性で結合する。
【0262】
複合体の構造から、005S-H05に対するFzd8のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd8上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Phe57、Asn58、Glu64、Leu67、Glu68、His70、Gln71、Phe72、Trp73、Pro74、Glu77、Try92、Arg123、Gln124、Try125、Gly126、Phe127、Ala128、Trp129、Pro130、Arg132、及びMet133。
【0263】
加えて、次に示すFzd8上の残基を005S-H05の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0Å):
Asn55、Gln56、His59、Asp60、Gly66、Val69、Leu75、Ile78、Leu88、Leu121、Met122、Asp131、及びArg137。
【0264】
また、Fzd8:005S-H05複合体の構造から、次に示すFzd8の任意の原子から5.0Å以下の005S-H05上の残基を特定することもできる:
005S-H05重鎖:Gly26、Try27、Thr28、Ser31、Tyr32、Pro100、Asp101、Phe102、Trp103、Ser104、Gly105、Tyr106、及びAsp108。
005S-H05軽鎖:Ile29、Ser30、Ser31、Ala32、Tyr49、Ala50、Ser52、Ser53、Leu54、Gln55、Ser56、Thr91、Tyr92、及びSer93。
【0265】
さらに、Fzd8:005S-H05複合体の構造は、次に示すR2M3上の残基が、相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd5に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
005S-H05重鎖:Gln1、Val2、Phe29、Thr30、Tyr33、Arg50、Asn52、Asn54、Arg98、Val99、Leu107、及びTyr109。
005S-H05軽鎖:Ile2、Gly28、Leu33、Ala34、Leu46、Ala51、Gly57、Gly66、Ser67、Gly68、Phe71、Gln90、及びMet94。
【0266】
実施例12
Fzd5:004S-E05複合体の構造
004S-E05 Fabの配列:
>004S-E05_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYAASALQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQTYSTPRTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1474)
>004S-E05_H鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYEMNWVRQAPGKGLEWVSGVSWNGSRTHYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQLNSLRAEDTAVYYCARGQSEKWWSGLYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1475)
Fzd5:004S-E05複合体の回折品質結晶(濃度=30mg/mL)は、0.1Mビス-トリスpH5.7及び24%(w/v)PEG3350を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の33%エチレングリコールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd5:004S-E05複合体は、P22空間群(a=72.87Å、b=192.35Å、c=90.25Å)において非対称単位当たり2つの複合体分子で結晶化した。Fzd5:004S-E05複合体の構造を1.70Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ18.5%及び20.7%に精密化した。
【0267】
全体的なFzd5:004S-E05複合体の構造は図3.4(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、004S-E05のCDR-H3が脂質結合部位で結合することを明らかにするものである。004S-E050は、Fzd5及びFzd8の両方と結合し、前者へのバイアスを伴う。凍結保護物質として使用し、Fzd5のGlu75に結合したエチレングリコールは、004S-E05の軽鎖のAla50及びAla53と相互作用する。
【0268】
複合体の構造から、004S-E05に対するFzd5のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd5上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Gln69、Phe70、Trp71、Pro72、Leu73、Glu75、Ile76、Gln77、Cys78、Gly115、Pro118、Leu119、Met120、Arg121、Gln122、Try123、Gly124、及びPhe125。
【0269】
加えて、次に示すFzd5上の残基を004S-E05の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0Å):
Leu65、Glu66、Val67、His68、Val74、Ser79、Leu82、Cys116、Ser117、Ala126、及びPro128。
【0270】
また、Fzd5:004S-E05複合体の構造から、次に示すFzd5の任意の原子から5.0Å以下の004S-E05上の残基を特定することもできる:
004S-E05重鎖:Arg57、His59、Ser101、Trp104、Tryp105、Ser106、Gly107、Leu108、及びTyr109。
004S-E05軽鎖:Ser30、Ser31、Ala32、Try49、Ala50、Ala53、Ser67、Thr91、Tyr92、Ser93、Thr94、及びArg96。
【0271】
さらに、Fzd5:004S-E05複合体の構造は、次に示すR2M3上の残基が、相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd5に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
004S-E05重鎖:Glu33、Ser52、Trp53、Ser56、His59、Gln100、Glu102、Lys103、及びGly110。
004S-E05軽鎖:Ile2、Gln27、Gly28、Ile29、Leu33、Tyr49、Ala51、Ser52、Leu54、Gly66、Gly68、Phe71、Gln89、Gln90、Pro95、及びArg96。
【0272】
実施例13
Fzd5:4A12複合体の構造
4A12 Fabの配列:
>4A12_L鎖
DIVMTQSHKFMSTSVGDRVSITCKASQDVGTAVAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRHTGVPDRFTGSGSGTDFTLTINNVQSEDLADYFCQQYSTYPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1476)
>4A12_H鎖
QVQLQQSGPELVKPGASVKLSCKASGYTFTNYDINWVKQRPGQGLEWIGWIYPRDGSTKYNEKFKGKATLTVDTSSSTAYMELHSLTSEDSAVYFCVRSAWGFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1477)
MMSによって得たFzd5:4A12複合体の回折品質結晶(濃度=10mg/mL)は、0.2M塩化ナトリウム、0.1M Na2HPO4:クエン酸、pH4.2、及び20%(w/v)PEG8000を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の25%エチレングリコールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd5:4A12複合体は、C2空間群(a=93.84Å、b=60.07Å、c=110.80Å、β=104.7°)において非対称単位当たり2つの複合体分子で結晶化した。Fzd5:4A12複合体の構造を1.75Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ17.7%及び21.6%に精密化した。
【0273】
Fzd5:4A12複合体の全体の構造は図3.4(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、4A12が脂質結合部位の反対側に結合し、Fzd5のC末端領域を認識することを明らかにするものである。電子密度マップは、塩素イオンがFzd5:4A12複合体の界面で結合し、Fzd5のArg111と結合し、また4A12の重鎖のThr28の主鎖アミド-窒素及びAsn31の側鎖アミド基とも相互作用することを明らかにした。
【0274】
複合体の構造から、4A12に対するFzd5のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd5上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Cys105、Arg106、Ser107、Glu110、Arg111、Cys133、Asp134、Val138、Leu139、Gly140、Arg141、Asp142、Ala143、Val145、Leu146、Cys147、及びAsp149。
【0275】
加えて、次に示すFzd5上の残基を4A12の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0Å):
Asp81、Tyr98、Leu102、Pro103、Val108、Cys109、Ala112、Ala114、Ser132、Arg135、Leu136、Pro137、Glu144、及びMet148。
【0276】
また、Fzd5:4A12複合体の構造から、次に示すFzd5の任意の原子から5.0Å以下の4A12上の残基を特定することもできる:
4A12重鎖:Asn31、Tyr32、Asp33、Trp50、Tyr52、Arg54、Ser99、Ala100、及びTrp101。
4A12軽鎖:Ala32、Trp50、Tyr91、Ser92、及びTyr94。
【0277】
さらに、Fzd5:4A12複合体の構造は、次に示す4A12上の残基が、相互作用距離>5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd5に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
4A12重鎖:Gly26、Tyr27、Thr28、Thr30、Ile34、Asp35、Trp47、Ile51、Pro53、Asp55、Ser57、Thr58、Lys59、Arg98、Gly102、Phe103、Ala104、及びTyr105。
4A12軽鎖:Val29、Thr31、Tyr49、Gln89、Gln90、Thr93、及びLeu96。
【0278】
実施例14
Fzd9:014S-B06複合体の構造:
014S-B06 Fabの配列:
014S-B06_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1478)
014S-B06_H鎖
EVQLVQSGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMNWVRQAPGKGLEWVSYIENDGSITTYADSVKGRFTISRDDSKNTLYLQMNSLKTEDTAVYYCARAPYYYGSGSLFRLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1479)
Fzd9:014S-B06複合体の回折品質結晶(濃度=31mg/mL)は、4% PEG3350、0.1M HEPES pH7.5、及び0.2M塩化リチウムを含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の27%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd9:014S-B06は、P212121空間群(a=63.8Å、b=81.4Å、及びc=160.5Å)において非対称単位当たり1つの複合体分子で結晶化した。Fzd9:014S-B06複合体の構造を1.95Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ19.8%及び22.6%に精密化した。
【0279】
Fzd9:014S-B06複合体の全体の構造は図3.7(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、014S-B06の重鎖CDR3が脂質結合部位から離れて結合し、Fzd9のC末端により密接な領域を認識することを明らかにするものである。
【0280】
複合体の構造から、014S-B06に対するFzd9のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd9上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Leu60、Leu61、Lue95、Thr106、Pro107、Pro109、Arg112、Arg119、Asp135、Ser136、Leu137、Asp138、Ala140、Arg141、Leu142、Pro143、Thr144、Asp147、Pro148、His149、及びAla150。
【0281】
加えて、次に示すFzd9上の残基を014S-B06の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å):
Asn59、Gly62、Phe91、Ser94、Pro98、Ser105、Ile108、Ala110、Trp133、Pro134、Asp138、Cys139、Arg145、Asn146、Leu151、及びCys152。
【0282】
また、Fzd9:014S-B06複合体の構造から、次に示すFzd4の任意の原子から5.0Å以下の3SD10上の残基を特定することもできる:
014S-B06重鎖:
Thr28、Ser30、Ser31、Tyr32、Asn53、Tyr101、Tyr102、Try103、Gly104、Ser105、Leu108、及びArg110。
014S-B06軽鎖:
Ser31、Try32、Try49、Ala50、Ser53、及びSer91。
【0283】
さらに、Fzd9:014S-B06複合体の構造は、次に示す014S-B06上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd9に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
014S-B06重鎖:
Phe27、Phe29、Asp54、Arg72、Asp74、Asn77、Arg98、Ala99、Pro100、Gly106、Ser107、Phe109、及びAsp112。
014S-B06軽鎖:
Ile29、Ser30、Leu33、Asn34、Ala51、Ser52、及びTyr92。
【0284】
実施例15
Fzd10:005S-A07複合体の構造
005S-A07 Fabの配列:
005S-A07_L鎖
EIVLTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSRNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1480)
005S-A07_H鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFTGSAVQWVRQAPGQGLEWVGGILPIYGTTKYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGARLYGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1481)
Fzd10:005S-A07複合体の回折品質結晶(濃度=37mg/mL)は、0.2M硫酸アンモニウム、0.1Mクエン酸ナトリウム:HCl、pH5.6、及び25%(w/v)PEG4000を含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の20%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd10:005S-A07複合体は、H32空間群(a=b=138.2Å及びc=190.6Å)において非対称単位当たり1つの複合体分子で複合体結晶化した。Fzd10:005S-A07複合体の構造を2.40Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ20.6%及び25.0%に精密化した。
【0285】
Fzd10:005S-A07複合体の全体の構造は図3.8(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、005S-A07が脂質結合部位でFzd10と結合することを明らかにするものである。興味深いことに、Fzd10:005S-A07の結晶構造は、抗原-Fab界面に2つの硫酸イオン(SO42-)のための潜在的結合部位を示しており、これは005S-A07の特性を最適化するためのさらなる構造誘導型操作に役立つと考えられる。複合体の構造から、005S-A07に対するFzd10のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd10上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Pro40、Met41、Ile66、Gln67、His69、Glu70、Phe71、Ala72、Pro73、Val75、Glu76、Tyr77、Arg84、Met121、Glu122、Gln123、Phe124、Asn125、Phe126、Lys127、Pro129、及びAsp130。
【0286】
加えて、次に示すFzd10上の残基を005S-A07の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å):
Ile39、Cys42、Lys43、Arg62、Glu63、Ala65、Ile66、Leu68、Leu74、Gly78、Cys88、Tyr91、Ser118、Pro119、Ile120、Trp128、Ser131、及びLeu132。
【0287】
また、Fzd10:005S-A07複合体の構造から、次に示すFzd4の任意の原子から5.0Å以下の005S-A07上の残基を特定することもできる:
005S-A07重鎖:
Thr28、Thr30、Gly31、Ser32、Leu52、Ile54、Tyr55、Thr57、Lys59、Arg98、Ala100、Arg101、Leu102、Tyr103、Gly104、及びAsp106。
005S-A07軽鎖:
Arg33、Asn34、Leu48、Tyr51、Gly52、Ala57、Thr58、及びTrp96。
【0288】
さらに、Fzd10:005S-A07複合体の構造は、次に示す005S-A07上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd9に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
005S-A07重鎖:
Phe27、Phe29、Ala33、Gln35、Pro53、Gly56、Thr58、Gly99、Phe105、及びTyr107。
005S-A07軽鎖:
Val31、Ser32、Leu35、Leu49、Ile50、Ala53、Thr55、Arg56、Gly59、Ile60、Arg93、Ser94、Asn95、及びIle98。
【0289】
実施例16
Fzd10:005S-E12複合体の構造:
005S-E12 Fabの配列:
005S-E12_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSVGRWMAWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANTFPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1482)
005S-E12_H鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFTDYYMHWVRQAPGQGLEWMGVIFPVYPTPDYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSTGYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1483)
MSSにより、0.1Mビス-トリスプロパン:HCl、pH7、及び2.5M硫酸アンモニウムを含む結晶化条件でFzd10:005S-E12複合体の回折品質結晶(濃度=34mg/mL)を得た。ウェル溶液中の1.7Mマロン酸ナトリウムpH7.0を用いて結晶を凍結保護した。Fzd10:005S-E12複合体は、P312空間群(a=b=90.4Å及びc=185.1Å)において非対称単位当たり1つの複合体分子で複合体結晶化した。Fzd10:005S-E12複合体の構造を2.50Åの分解能で決定し、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ20.1%及び24.4%に精密化した。
【0290】
Fzd10:005S-E12複合体の全体の構造(図3.9(A及びB))は、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、005S-E12が脂質結合部位に隣接したFzd10と結合し、Fzd10のN末端領域のテール及びヘリックスを認識することを明らかにするものである。複合体の構造から、005S-E12に対するFzd10のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd10上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Ile37、Glu38、Ile39、Pro40、Met41、Cys42、Lys43、Asp44、Ile45、Gly46、Asn48、Gln61、Arg62、Glu63、Ala65、Ile66、Leu68、His69、Ala72、Pro73、Val75、Glu76、及びArg84。
【0291】
加えて、次に示すFzd10上の残基を005S-E12の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å):
Glu35、Pro36、Tyr47、Asn60、Gln61、Ala64、Gln67、Glu70、Phe71、Leu74、Tyr77、及びPhe124。
【0292】
また、Fzd10:005S-E12複合体の構造から、次に示すFzd4の任意の原子から5.0Å以下の005S-E12上の残基を特定することもできる:
005S-E12重鎖:
Tyr33、Phe52、Pro53、Val54、Tyr55、Thr57、Asp59、Gly100、Ser101、Thr102、Gly103、Tyr104、及びTyr105。
005S-E12軽鎖:
Ile2、Gln27、Ser28、Val29、Gly30、Arg31、Trp32、Ala50、Ala91、Asn92、Thr93、Phe94、及びPhe96。
【0293】
さらに、Fzd10:005S-E12複合体の構造は、次に示す005S-E12上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd9に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
005S-E12重鎖:
Thr30、Asp31、Tyr32、His35、Trp47、Val50、Ile51、Pro56、Pro58、Tyr60、Gln62、Arg72、Gly99、及びGly106。
005S-E12軽鎖:
Asp1、Ala25、Ser26、Met33、Tyr49、Ala51、Ser52、Ser53、Ser67、Gly68、Thr69、Gln90、及びPro95。
【0294】
実施例17
Fzd3:029S-E03複合体の構造
029S-E03 Fabの配列:
>029S-E03_L鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSFRLPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号1484)
>029S-E03_H鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGNTGYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARSYYGVIDAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGSGSGHHHHHH(配列番号1485)
Fzd3:029S-E03複合体の回折品質結晶(濃度=25mg/mL)は、0.2MトリメチルアミンN-オキシド、0.1M トリス:HCl、pH8.5、及び20%(w/v)PEG2000 MMEを含む結晶化条件で成長した。ウェル溶液中の20%グリセロールを用いて結晶を凍結保護した。Fzd3:029S-E03は、P2空間群(a=69.60Å、b=145.50Å、及びc=104.31Å、β=101.8°)において非対称単位当たり1つの複合体分子で結晶化した。Fzd3:029S-E03複合体の構造を2.40Åの分解能で決定した。精密化は、R結晶因子及びR遊離因子それぞれ24.4%及び31.8%で進行中である。
【0295】
029S-E03はFzd3の単一特異的結合物質であり、他のFzdとの検出可能な結合は示さない。Fzd3:029S-E03複合体の全体の構造は図11(A及びB)に示されており、これは、Fzd8:Wnt8a複合体で観察されたように[PDB Code:4F0A;Janda,C.Y.,Waghray,D.,Levin,A.M.,Thomas,C.,Garcia,K.C.(2012)Science 337:59-64]、029S-E03の重鎖CDR3が脂質結合部位に隣接して結合し、Fzd3のN末端により密接な領域を認識することを明らかにするものである。
【0296】
複合体の構造から、029S-E03に対するFzd3のエピトープを特定することができ、次に示す残基はFzd3上のコア相互作用部位を定義する(5Åカットオフ):
Pro30、Ile31、Thr32、Leu33、Arg34、Gln37、Asp38、Leu39、Gln55、Gln66、Ala59、Leu60、Glu63、His66、及びAsn70。
【0297】
加えて、次に示すFzd3上の残基を029S-E03の直接相互作用部位として特定することができた(相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0Å):
Gln29、Met35、Cys36、Pro40、Tyr41、Asn42、Thr43、Asp54、Thr57、Ala58、Ala61、Met62、Pro67、Val69、Leu71、Asp72、及びArg78。
【0298】
また、Fzd3:029S-E03複合体の構造から、次に示すFzd3の任意の原子から5.0Å以下の3SD10上の残基を特定することもできる:
029S-E03重鎖:Tyr33、Trp50、Asn52、Ser55、Asn57、Gln62、Tyr101、Val103、Ile104、及びAsp105。
029S-E03軽鎖:Ile2、Gln27、Ser28、Ser30、Tyr32、Ser91、Phe92、Arg93、及びLeu94。
【0299】
さらに、Fzd3:029S-E03複合体の構造は、次に示す029S-E03上の残基が、相互作用距離>=5.0Åかつ<=8.0ÅのFzd3に対する直接相互作用部位であることを明らかにする:
029S-E03重鎖:Trp47、Ile51、Pro53、Asn54、Gly56、Thr58、Gly59、Tyr60、Gln65、Ser99、Tyr100、Gly102、及びAla06。
029S-E03軽鎖:Asp1、Ser26、Ile29、Ser31、Leu33、Asn34、Gly68、Gln90、Pro95、及びLeu96。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0300】
上記の様々な実施形態は、組み合わせてさらなる実施形態をもたらすことができる。本明細書で参照されている、及び/または出願データシートに列挙されている全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に援用される。実施形態の態様は、なおさらなる実施形態を提供するために様々な特許、出願、及び刊行物の概念を用いる必要がある場合、修正することができる。
【0301】
これら及びその他の変更は、上記の詳細な説明に照らして、実施形態に対し行われ得る。概して、以下の請求項において、使用されている用語は、請求項を明細書及び請求項で開示されている特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、このような用語は、請求項が権利を有する全ての範囲の等価物と共に、全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、請求項は本開示による限定を受けない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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