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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】レンズ要素
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20240112BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20240112BHJP
   G02C 7/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/02
G02C7/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020545590
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019055217
(87)【国際公開番号】W WO2019166655
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】18305216.6
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305217.4
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305384.2
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305385.9
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305435.2
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305436.0
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305526.8
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305527.6
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ドローブ
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0131567(US,A1)
【文献】特開2017-010031(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104678572(CN,A)
【文献】特表2013-511072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0073629(US,A1)
【文献】特表2011-530726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036489(US,A1)
【文献】特表2006-505007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0085512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/02-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の目の前に装用されることが意図される眼鏡レンズ要素であって、
前記人の前記目の処方に基づく屈折力を有する屈折エリアと、
複数の少なくとも3つの光学要素と、
を備え、
前記光学要素は、前記レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、前記光学要素の平均球面度数が前記セクションの点から前記セクションの周縁部に向かって増大するように構成されており、
前記屈折エリアは前記複数の光学要素により形成されたエリア以外のエリアとして形成される眼鏡レンズ要素。
【請求項2】
前記光学要素は、前記レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、前記光学要素の平均円柱度数が前記セクションの点から前記セクションの前記周縁部に向かって増大するように構成される、請求項1に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項3】
前記光学要素は、前記レンズの前記少なくとも1つのセクションに沿って、前記光学要素の均球面度数及び/又は均円柱度数が前記セクションの中心から前記セクションの周縁部に向かって増大するように構成される、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項4】
前記屈折エリアは光学中心を含み、光学要素は、前記レンズの前記光学中心を通る任意のセクションに沿って、前記光学要素の均球面度数及び/又は均円柱度数が前記光学中心から前記レンズの前記周縁部に向かって増大するように構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項5】
前記屈折エリアは遠方視基準点、近方視基準点、及び前記遠方視基準点と前記近方視基準点とを結ぶ子午線を含み、前記光学要素は、立位装用状況において、前記レンズの任意の水平セクションに沿って、前記光学要素の均球面度数及び/又は均円柱度数が、前記水平セクションの前記子午線との交点から前記レンズの前記周縁部に向かって増大するように構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項6】
前記セクションに沿った前記平均球面度数及び/又は前記平均円柱度数の増加関数は、前記子午線に沿った前記セクションの位置に応じて異なる、請求項5に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項7】
前記セクションに沿った前記平均球面度数及び/又は前記平均円柱度数の増加関数は、非対称である、請求項5又は6に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項8】
前記光学要素は、立位装用状況において、前記少なくとも1つのセクションが水平セクションであるように構成される、請求項1~7の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項9】
前記光学要素の均球面度数及び/又は均円柱度数は、前記セクションの第1の点から前記セクションの前記周縁部に向かって増大し、前記セクションの第2の点から前記セクションの前記周縁部に向かって低減し、前記第2の点は前記第1の点よりも前記セクションの前記周縁部に近い、請求項1~8の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項10】
なくとも1つの前記水平セクションに沿った均球面度数及び/又は均円柱度数の増加関数は、ガウス関数である、請求項8記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項11】
なくとも1つの前記水平セクションに沿った均球面度数及び/又は均円柱度数の増加関数は、二次関数である、請求項8記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項12】
前記光学要素は、網膜以外の位置に像を結び、前記目の異常な屈折の進行を遅らせるという光学機能を有する構成される、請求項1~11の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項13】
前記光学要素は球面マイクロレンズである、請求項1~12の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項14】
4mm~8mmの半径を有する円形ゾーンであって、前記半径+5mmの前記レンズ要素の学中心の距離に配置された幾何中心を含むあらゆる円形ゾーンについて、前記円形ゾーンの内部に配置された前記光学要素の部分の面積の和と前記円形ゾーンの前記面積との比率は20%~70%である、請求項1~13の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【請求項15】
前記少なくとも3つの光学要素は非連続である、請求項1~14の何れか一項に記載の眼鏡レンズ要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の目の前に装用されて、近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を抑制することが意図されたレンズ要素に関する。
【背景技術】
【0002】
目の近視は、目が遠くの物体を網膜の前で結像することを特徴とする。近視は通常、凹レンズを使用して矯正され、遠視は通常、凸レンズを使用して矯正される。
【0003】
個人によっては、特に子供が、従来の単一視光学レンズを使用して矯正される場合、近くの距離にある物体を観測するとき、すなわち近見視状況において不正確に結像することが観測されてきた。遠見視について矯正された近視の子供の側でのこの結像欠点により、近くの物体の像はまた、網膜の背後、更には中心窩エリアにも形成される。
【0004】
そのような結像欠陥は、そのような個人の近視の進行に影響を及ぼし得る。上記個人の大半で、近視欠陥が時間の経過に伴って増大することを観測し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を抑制又は少なくとも遅くするレンズ要素が必要とされているようである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、人の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素であって、
-人の上記目の処方に基づく屈折力を有する屈折エリアと、
-複数の少なくとも3つの光学要素と
を備え、
光学要素は、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均球面度数が上記セクションの点から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成される、レンズ要素を提案する。
【0007】
有利なことには、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均球面度数が上記セクションの点から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成された光学要素を有することにより、近視の場合には網膜の前、遠視の場合には網膜の背後での光線のデフォーカスを増大させることができる。
【0008】
換言すれば、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均球面度数が上記セクションの点から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成された光学要素を有することが、近視又は遠視等の目の異常屈折の進行を遅らせるのに役立つことを本発明者らは観測した。
【0009】
本発明の解決策はまた、レンズの美観の改善に役立つとともに、付随するラグの補償に役立つ。
【0010】
単独又は組み合わせて考慮することができる更なる実施形態によれば、
-光学要素は、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均円柱度数が上記セクションの点から上記セクションの上記周縁部に向かって増大するように構成され、且つ/又は
-光学要素は、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が上記セクションの中心から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成され、且つ/又は
-屈折エリアは光学中心を含み、光学要素は、レンズの光学中心を通る任意のセクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が光学中心からレンズの周縁部に向かって増大するように構成され、且つ/又は
-屈折エリアは遠方視基準点、近方視基準、及び遠方視基準点と近方視基準点とを結ぶ子午線を含み、光学要素は、立位装用状況において、レンズの任意の水平セクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が、上記水平セクションと子午線との交点からレンズの周縁部に向かって増大するように構成され、且つ/又は
-セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、子午線に沿った上記セクションの位置に応じて異なり、且つ/又は
-セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、非対称であり、且つ/又は
-光学要素は、立位装用状況において、少なくとも1つのセクションが水平セクションであるように構成され、且つ/又は
-光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数は、上記セクションの第1の点から上記セクションの上記周縁部に向かって増大し、上記セクションの第2の点から上記セクションの周縁部に向かって低減し、第2の点は上記第1の点よりも上記セクションの周縁部に近く、且つ/又は
-少なくとも1つの水平セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、ガウス関数であり、且つ/又は
-少なくとも1つの水平セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、二次関数であり、且つ/又は
-光学要素は、網膜以外の位置に像を結び、目の異常な屈折の進行を遅らせるという光学機能を有する構成され、且つ/又は
-光学要素の少なくとも1つは、球面マイクロレンズであり、且つ/又は
-光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、眼科レンズの前面に配置され、且つ/又は
-光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、眼科レンズの背面に配置され、且つ/又は
-光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、眼科レンズの前面と背面との間に配置され、且つ/又は
-4mm~8mmの半径を有する円形ゾーンであって、上記半径+5mm以上のレンズ要素の光学中心の距離に配置された幾何中心を含むあらゆる円形ゾーンについて、上記円形ゾーンの内部に配置された光学要素の部分の面積の和と上記円形ゾーンの面積との比率は20%~70%であり、且つ/又は
-少なくとも3つの光学要素は非連続であり、且つ/又は
-光学要素は、0.8mm以上且つ3.0mm以下の半径を有する円形で彫ることが可能な輪郭形状を有し、且つ/又は
-屈折エリアは、人の上記目の異常屈折を矯正する処方に基づく第1の屈折力及び第1の屈折力と異なる第2の屈折力を有し、且つ/又は
-第1の屈折力と第2の屈折力との間の差は、0.5D以上であり、且つ/又は
-屈折エリアは、複数の光学要素として形成されるエリア以外のエリアに形成され、且つ/又は
-光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、目の網膜に像を結ばず、目の異常屈折の進行を遅らせるという光学機能を有し、且つ/又は
-屈折エリアでは、屈折力は連続変化を有し、且つ/又は
-屈折エリアでは、屈折力は少なくとも1つの不連続部分を有し、且つ/又は
-レンズ要素は、第1の屈折力に等しい屈折力を有する中央ゾーン及び45°における4つの四分円という5つの相補的なゾーンに分けられ、四分円の少なくとも1つは、第2の屈折力に等しい屈折力を有し、且つ/又は
-中央ゾーンは、標準装用状況で真っ直ぐ前を注視している人の瞳孔に面するフレーム基準点を含み、4mm超且つ20mm未満の直径を有し、且つ/又は
-少なくとも下部四分円は第2の屈折力を有し、且つ/又は
-屈折エリアは、累進多焦点ジオプタ機能を有し、且つ/又は
-耳側四分円及び鼻側四分円の少なくとも1つは、第2の屈折力を有し、且つ/又は
-4つの四分円は同心屈折力累進を有し、且つ/又は
-光学要素の少なくとも1つは、多焦点屈折マイクロレンズであり、且つ/又は
-少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、任意の回転対称の有無にかかわらず非球面を有し、且つ/又は
-少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、円柱度数を有し、且つ/又は-光学要素の少なくとも1つは、円環屈折マイクロレンズであり、且つ/又は
-少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは、環状面を有し、且つ/又は
-光学要素の少なくとも1つは、複屈折材料で作られ、且つ/又は
-光学要素の少なくとも1つは、回折レンズであり、且つ/又は
-少なくとも1つの回折レンズは、メタ表面構造を有し、且つ/又は
-少なくとも1つの光学要素は、人の目の網膜の前に焦面を作り出すように構成された形状を有し、且つ/又は
-少なくとも1つの光学要素は、多焦点バイナリ(multifocal binary)構成要素であり、且つ/又は
-少なくとも1つの光学要素は、画素化レンズであり、且つ/又は
-少なくとも1つの光学要素は、πフレネルレンズであり、且つ/又は
-光学機能少なくとも部分、例えば全ては、高次光学収差を有し、且つ/又は
-レンズ要素は、屈折エリアを有する眼科レンズと、レンズ要素が装用されたとき、眼科レンズに取り外し可能に取り付けられるように構成された複数の少なくとも3つの光学要素を有するクリップオンとを有し、且つ/又は
-光学要素少なくとも1つ、例えば少なくとも70%、例えば全ては、光学レンズコントローラデバイスによりアクティブ化し得るアクティブ光学要素であり、且つ/又は
-アクティブ光学要素は、値が光学レンズコントローラデバイスにより制御される可変屈折率を有する材料を有し、且つ/又は
-光学要素は、網目構造に位置決めされ、且つ/又は
-網目構造は、構造化網目構造であり、且つ/又は
-構造化網目構造は、四角形網目構造、六角形網目構造、三角形網目構造、又は八角形網目構造であり、且つ/又は
-レンズ要素は、光学要素の少なくとも2つの群に編成された少なくとも4つの光学要素を更に有し、且つ/又は
-光学要素の各群は、同じ中心を有する少なくとも2つの同心リングに編成され、光学要素の各群の同心リングは、上記群の少なくとも1つの光学要素に接する最小円に対応する内径及び上記群の少なくとも1つの光学要素に接する最大円に対応する外径により定義され、且つ/又は
-光学要素の同心リング少なくとも部分、例えば全ては、上記光学要素が配置されるレンズ要素の表面の光学中心にセンタリングされ、且つ/又は
-光学要素の同心リングは、9.0mm~60mmの直径を有し、且つ/又は
-光学要素の2つの連続した同心リング間の距離は、5.0mm以上であり、2つの連続した同心リング間の距離は、第1の同心リングの内径と第2の同心リングの外径との間の差によって定義され、第2の同心リングはレンズ要素の周縁により近い。
【0011】
本発明の非限定的な実施形態について添付図面を参照してこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるレンズ要素の平面図である。
図2】本発明によるレンズ要素の概略側面像である。
図3】フレネル高さプロファイルの一例を表す。
図4】回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
図5】πフレネルレンズプロファイルを示す。
図6a】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
図6b】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
図6c】本発明のバイナリレンズ実施形態を示す。
図7a】TABO基準でのレンズの非点収差軸γを示す。
図7b】非球面の特徴付けに使用される基準における円柱度数軸γAXを示す。
図8】本発明の実施形態によるレンズ要素の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図中の要素は簡潔且つ明確にするために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、図中の要素の幾つかの寸法は、本発明の実施形態の理解改善に役立つために、他の要素よりも誇張されていることがある。
【0014】
本発明は、人の目の前に装用されることが意図されるレンズ要素に関する。
【0015】
説明の残りの部分において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前」、「後」のような用語又は相対的な位置を示す他の言葉が使用されることがある。これらの用語は、レンズ要素の装用状況において理解されたい。
【0016】
本発明の文脈において、「レンズ要素」という用語は、カットされていない光学レンズ、特定の眼鏡フレームに嵌まるような縁を有する眼鏡光学レンズ、又は眼科レンズ及び眼科レンズに位置決めされるように構成された光学デバイスを指すことができる。光学デバイスは眼科レンズの前面又は背面に位置し得る。光学デバイスは光学パッチであり得る。光学デバイスは、眼科レンズに取り外し可能に位置決めされるように構成し得、例えば、眼科レンズを有する眼鏡フレームにクリップされるように構成されたクリップであり得る。
【0017】
本発明によるレンズ要素10は、人用に構成され、上記人の目の前に装用されることが意図される。
【0018】
図1に表されるように、本発明によるレンズ要素10は、
-屈折エリア12と、
-複数の少なくとも3つの光学要素14と
を備える。
【0019】
屈折エリア12は、レンズ要素が構成された人の目の処方に基づく屈折力P1を有する。処方は、人の目の異常屈折を矯正するように構成される。
【0020】
「処方」という用語は、例えば、目の前に位置するレンズにより、目の視覚欠陥を矯正するために、眼科医又は検眼医により決定される、屈折力、非点収差、プリズムによる光のブレの1組の光学特性を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼の処方は、屈折力の値及び遠方視の軸との非点収差の値を有する。
【0021】
屈折エリアは、好ましくは、複数の光学要素として形成されるエリア以外のエリアとして形成される。換言すれば、屈折エリアは、複数の光学要素によって形成されるエリアに対して相補的なエリアである。
【0022】
本発明の実施形態によれば、屈折エリア12は、屈折力P1と異なる少なくとも第2の屈折力P2を更に有する。
【0023】
本発明の意味では、2つの屈折力は、2つの屈折力間の差が0.5D以上である場合、異なると見なされる。
【0024】
人の目の異常屈折が近視に対応する場合、第2の屈折力は屈折力P1よりも大きい。
【0025】
人の目の異常屈折が遠視に対応する場合、第2の屈折力は屈折力P1よりも小さい。
【0026】
屈折エリアは、連続変化する屈折力を有し得る。例えば、屈折エリアは多焦点累進設計を有し得る。
【0027】
屈折エリアの光学設計は、
-屈折力が負であるフィッティングクロス(fitting cross)、
-レンズ要素が装用者により装用中である場合、屈折エリの耳側に延びる第1のゾーン
を含み得る。第1のゾーンでは、屈折力は、耳側に向かって移動する場合、増大し、レンズの鼻側にわたり、眼科レンズの屈折力はフィッティングクロスと略同じである。
【0028】
そのような光学設計は国際公開第2016/107919号パンフレットにより詳細に開示されている。
【0029】
代替的には、屈折エリアにおける屈折力は、少なくとも1つの不連続部分を有し得る。
【0030】
図1に表されるように、レンズ要素は、処方に対応する屈折力に等しい屈折力を有する中央ゾーン16及び45°における4つの四分円Q1、Q2、Q3、Q4という5つの相補的なゾーンに分けられ、四分円の少なくとも1つは、屈折力が第2の屈折力に等しい少なくとも一点を有する。
【0031】
本発明の意味では、「45°における四分円」とは、図1に示されるように、TABO基準により方向45°/225°及び135°/315°に向けられた90°の等角四分円として理解されたい。
【0032】
好ましくは、中央ゾーン16は、標準装用状況において真っ直ぐ前を注視している人の瞳孔に面するフレーム基準点を有し、4mm以上且つ22mm以下の直径を有する。
【0033】
装用状況とは、例えば、装用時前掲角、角膜-レンズ距離、瞳孔-角膜距離、目の回転中心(CRE)-瞳孔距離、CRE-レンズ距離、及びそり角によって定義される装用者の目に相対するレンズ要素の位置として理解されたい。
【0034】
角膜-レンズ距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば、12mmに等しい。
【0035】
瞳孔-角膜距離は、瞳孔と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、通常、2mmに等しい。
【0036】
CRE-瞳孔距離は、目の回転中心(CRE)と角膜との間の目の視軸に沿った距離であり、例えば、11.5mmに等しい。
【0037】
CRE-レンズ距離は、目のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常、水平と解釈される)における目の視軸に沿った距離であり、例えば、25.5mmに等しい。
【0038】
装用時前掲角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における垂直面における角度であり、例えば、-8°に等しい。
【0039】
そり角は、第1眼位におけるレンズの背面の法線と目の視軸との交点である第1眼位(通常、水平と解釈される)におけるレンズの背面と目の視軸との交点における水平面における角度であり、例えば、0°に等しい。
【0040】
標準的な装用状況の一例は、装用時前掲角-8°、角膜-レンズ距離12mm、瞳孔-角膜距離2mm、CRE-瞳孔距離11.5mm、CRE-レンズ距離25.5mm、及びそり角0°により定義し得る。
【0041】
本発明の実施形態によれば、下部四分円Q4は、異常屈折を矯正する処方に対応する屈折力と異なる第2の屈折力を有する。
【0042】
例えば、屈折エリアは累進多焦点ジオプタ機能を有する。累進多焦点ジオプタ機能は、上部四分円Q2と下部四分円Q4との間に延び得る。
【0043】
有利なことには、そのような構成では、例えば、人が近見視距離を見る場合、レンズの多焦点により、付随するラグを補償することができる。
【0044】
実施形態によれば、耳側四分円Q3及び鼻側四分円Q1の少なくとも一方は、人の処方に対応する屈折力と異なる第2の屈折力を有する。例えば、耳側四分円Q3は、レンズの偏心に伴って様々な度数を有する。
【0045】
有利なことには、そのような構成は、周辺視野における異常屈折コントロールの効率を上げ、水平軸において更に効果的である。
【0046】
実施形態によれば、4つの四分円Q1、Q2、Q3、及びQ4は同心屈折力累進を有する。
【0047】
光学要素は、少なくともレンズの1セクションに沿って、光学要素の平均球面度数が上記セクションの点から上記セクションの周縁に向かって増大するように構成される。
【0048】
本発明の実施形態によれば、光学要素は、少なくともレンズの1セクションに沿って、例えば、少なくとも、光学要素の平均球面度数が増大するセクションと同じセクションに沿って、平均円柱度数が上記セクションの点、例えば平均球面度数と同じ点から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成される。
【0049】
既知のように、最小曲率CURVminは、式
【数1】
により非球面上の任意の点において定義され、式中、Rmaxはメートル単位で表される局所最大曲率半径であり、CURVminはジオプタ単位で表される。
【0050】
同様に、最大曲率CURVmaxは、式
【数2】
により非球面上の任意の点で定義することができ、式中、Rminはメートル単位で表される局所最小曲率半径であり、CURVmaxはジオプタ単位で表される。
【0051】
表面が局所的に球面である場合、局所最小曲率半径Rmin及び局所最大曲率半径Rmaxは同じであり、したがって、最小曲率CURVmin及び最大曲率CURVmaxも同一である。表面が非球面である場合、局所最小曲率半径Rmin及び局所最大曲率半径Rmaxは異なる。
【0052】
最小曲率CURVmin及び最大曲率CURVmaxのこれらの式から、考慮する表面の種類に従ってSPHmin及びSPHmaxと記される最小及び最大の球面を推測することができる。
【0053】
考慮する表面が、物体側面(前面とも呼ばれる)である場合、式は以下
【数3】
の通りであり、式中、nはレンズの構成材料の指数である。
【0054】
考慮する表面が、眼球側面(後面とも呼ばれる)である場合、式は以下
【数4】
の通りであり、式中、nはレンズの構成材料の指数である。
【0055】
既知のように、
非球面上の任意の点における平均球面度数SPHmeanも式
【数5】
により定義することができる。
【0056】
したがって、平均球面度数の式は考慮する表面に依存し、表面が物体側面である場合、
【数6】
であり、表面が眼球側面である場合、
【数7】
であり、円柱度数CYLも式CYL=│SPHmax-SPHmin│により定義される。
【0057】
レンズのいかなる非球面の特徴であっても、局所平均球面度数及び局所平均円柱度数で表し得る。円柱度数が少なくとも0.25ジオプタである場合、表面は局所的に非球面であると考えることができる。
【0058】
非球面の場合、局所円柱度数軸γAXを更に定義し得る。図7aは、TABO基準において定義される非点収差軸γを示し、図7bは、非球面を特徴付けるために定義される基準における円柱度数軸γAXを示す。
【0059】
円柱度数軸γAXは、選ばれた回転の意味での基準軸に関連した最大曲率CURVmaxの向きの角度である。上記定義された基準では、基準軸は水平であり(この基準軸の角度は0°である)、回転の意味は、装用者を見ている場合(0°≦γAX≦180°)、各目で反時計回りである。したがって、+45°という円柱度数軸γAXの軸値は、斜めの向きの軸を表し、装用者を見ている場合、右上にある四分円から左下にある四分円まで延びる。
【0060】
図2に示されるように、本発明によるレンズ要素10は、物体側に向かう凸曲面として形成される物体側面F1と、物体側面F1の曲率と異なる曲率を有する凹面として形成される目側表面F2とを備える。
【0061】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面に配置される。
【0062】
光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の背面に配置し得る。
【0063】
光学要素の少なくとも部分、例えば全ては、レンズ要素の前面と背面との間に配置し得る。例えば、レンズ要素は、光学要素を形成する屈折率の異なるゾーンを含み得る。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、2mm~4mmの半径を有するあらゆる円形ゾーンであって、上記半径+5mm以上のレンズ要素の光学中心の距離に配置される幾何中心を含むあらゆる円形ゾーン、上記円形ゾーンの内部に配置された光学要素の部分の面積の和と上記円形ゾーンの面積との比率は、20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%である。
【0065】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全てはマイクロレンズである。
【0066】
本発明の意味では、「マイクロレンズ」は、0.8mm以上且つ3.0mm以下、好ましくは1.0mm以上且つ2.0mm未満の直径を有する円形で彫ることが可能な輪郭形状を有する。
【0067】
光学要素は、レンズの少なくとも1つのセクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が上記セクションの中心から上記セクションの周縁部に向かって増大するように構成し得る。
【0068】
本発明の実施形態によれば、光学要素は、標準装用状況において、少なくとも1つのセクションが水平セクションであるように構成される。
【0069】
平均球面度数及び/又は平均円柱度数は、少なくとも1つの水平セクションに沿って増加関数に従って増大し得、増加関数はガウス関数である。ガウス関数は、レンズの鼻側部分と耳側部分とで異なり、人の網膜の非対称性を考慮し得る。
【0070】
代替的には、平均球面度数及び/又は平均円柱度数は、少なくとも1つの水平セクションに沿って増加関数に従って増大し得、増加関数は二次関数である。二次関数は、レンズの鼻側部分と耳側部分とで異なり、人の網膜の非対称性を考慮し得る。
【0071】
本発明の実施形態によれば、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数は、上記セクションの第1の点から上記セクションの周縁部に向かって増大し、上記セクションの第2の点から上記セクションの周縁部に向かって低減し、第2の点は、第1の点よりも上記セクションの周縁部に近い。
【0072】
そのような実施形態は、レンズ要素の光学中心への半径方向距離に従って光学要素の平均球面度数を提供する表1に示される。
【0073】
表1の例では、光学要素は曲率329.5mmを有する球面前面に配置されたマイクロレンズであり、レンズ要素は屈折率1.591を有する光学材料で作られ、装用者の処方された光学屈折力は6Dである。光学要素は標準装用状況で装用されるべきであり、装用者の網膜は、角度30°において0.8Dのデフォーカスを有すると見なされる。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示されるように、レンズ要素の光学中心の近くから始まり、光学要素の平均球面度数は、上記セクションの周縁部に向かって増大し、それから、上記セクションの周縁部に向かって低減する。
【0076】
本発明の実施形態によれば、光学要素の平均円柱度数は、上記セクションの第1の点から上記セクションの周縁部に向かって増大し、上記セクションの第2の点から上記セクションの周縁部に向かって低減し、第2の点は、第1の点よりも上記セクションの周縁部に近い。
【0077】
そのような実施形態は、局所半径方向に対応する第1の方向Y及び第1の方向に直交する第2の方向Xに射影された円柱度数ベクトルの振幅を提供する表2及び表3に示される。
【0078】
表2の例では、光学要素は曲率167.81mmを有する球面前面に配置されたマイクロレンズであり、レンズ要素は屈折率1.591を有する材料で作られ、装用者の処方された光学屈折力は-6Dである。レンズ要素は標準装用状況で装用されるべきであり、装用者の網膜は、角度30°において0.8Dのデフォーカスを有すると見なされる。要素は、周辺デフォーカス2Dを提供するように決定される。
【0079】
表3の例では、光学要素は曲率167.81mmを有する球面前面に配置されたマイクロレンズであり、レンズ要素は屈折率1.591を有する材料で作られ、装用者の処方された光学屈折力は-1Dである。レンズ要素は標準装用状況で装用されるべきであり、装用者の網膜は、角度30°において0.8Dのデフォーカスを有すると見なされる。光学要素は、周辺デフォーカス2Dを提供するように決定される。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表4及び表5に示されるように、レンズ要素の光学中心の近くから始まり、光学要素の平均円柱度数は、上記セクションの周縁部に向かって増大し、それから、上記セクションの周縁部に向かって低減する。
【0083】
本発明の実施形態によれば、屈折エリアは光学中心を有し、光学要素は、レンズの光学中心を通る任意のセクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が光学中心からレンズの周縁部に向かって増大するように構成される。
【0084】
例えば、光学要素は、屈折エリアの光学中心にセンタリングされた円に沿って規則正しく分布し得る。
【0085】
直径10mmであり、屈折エリアの光学中心にセンタリングされた円上の光学要素は、平均球面度数2.75Dを有するマイクロレンズであり得る。
【0086】
直径20mmであり、屈折エリアの光学中心にセンタリングされた円上の光学要素は、平均球面度数4.75Dを有するマイクロレンズであり得る。
【0087】
直径30mmであり、屈折エリアの光学中心にセンタリングされた円上の光学要素は、平均球面度数5.5Dを有するマイクロレンズであり得る。
【0088】
直径40mmであり、屈折エリアの光学中心にセンタリングされた円上の光学要素は、平均球面度数5.75Dを有するマイクロレンズであり得る。
【0089】
異なるマイクロレンズの平均円柱度数は、人の網膜の形状に基づいて調整し得る。
【0090】
本発明の実施形態によれば、屈折エリアは、遠方視基準点、近方視基準、及び遠方視基準点と近方視基準点とを結ぶ子午線を含む。例えば、屈折エリアは、人の処方に構成され、又はレンズ要素を装用する人の目の異常屈折の進行を遅らせるように構成された累進多焦点レンズ設計を有し得る。
【0091】
子午線は、主注視方向とレンズの表面との交点の軌跡に対応する。
【0092】
好ましくは、そのような実施形態によれば、光学要素は、標準装用状況において、レンズの任意の水平セクションに沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が、上記水平セクションと子午線との交点からレンズの周縁部に向かって増大するように構成される。
【0093】
セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、子午線に沿った上記セクションの位置に依存して異なり得る。
【0094】
特に、セクションに沿った平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は非対称である。例えば、平均球面度数及び/又は平均円柱度数の増加関数は、標準装用状況において、垂直セクション及び/又は水平セクションに沿って非対称である。
【0095】
少なくとも1つの光学要素14は、レンズ要素が標準装用状況で装用された場合、人の目の網膜に像を結ばないという光学機能を有する。
【0096】
有利なことには、処方の屈折力と異なる少なくとも1つの屈折力を有する屈折エリアと組み合わせた光学要素のそのような光学機能は、レンズ要素を装用する人の目の異常屈折の進行を遅らせることができる。
【0097】
光学要素は、図1の非連続光学要素に表されたようなものであり得る。
【0098】
本発明の意味では、レンズ要素の表面に配置された2つの光学要素は、2つの光学要素をリンクする上記表面によって支持される全てのパスに沿って、光学要素が配置されたベース表面に達する場合、非連続である。
【0099】
少なくとも2つの光学要素が配置された表面が球面である場合、ベース表面は上記球面に対応する。換言すれば、球面に配置された2つの光学要素は、2つの光学要素をリンクし、上記球面により支持される全てのパスに沿って、球面に達する場合、非連続である。
【0100】
少なくとも2つの光学要素が配置された表面が非球面である場合、ベース表面は、上記非球面に最もよく適合する局所球面に対応する。換言すれば、非球面に配置された2つの光学要素は、2つの光学要素によりリンクされ、上記非球面により支持される全てのパスに沿って、非球面に最もよく適合する球面に達する場合、非連続である。
【0101】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは、網膜以外の位置に像を結ぶという光学機能を有する。
【0102】
好ましくは、光学要素の少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全ては、網膜以外の位置に像を結ぶという光学機能を有する。
【0103】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つは非球面光学機能を有する。
【0104】
好ましくは、光学要素14の少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全ては、非球面光学機能を有する。
【0105】
本発明の意味では、「非球面光学機能」とは単一焦点を有さないものと理解されたい。
【0106】
有利なことには、光学要素のそのような光学機能は、装用者の目の網膜のデフォーカスを低減し、レンズ要素を装用する人の目の異常屈折の進行を遅らせることができる。
【0107】
非球面光学機能を有する少なくとも1つの要素は透明である。
【0108】
有利なことには、光学要素は、レンズ要素上で可視ではなく、レンズ要素の美観に影響しない。
【0109】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素は、屈折エリアを有する眼科レンズと、レンズ要素が装用された場合、眼科レンズに取り外し可能に取り付けられるように構成された複数の少なくとも3つの光学要素を有するクリップオンとを備え得る。
【0110】
有利なことには、人は、遠距離環境、例えば屋外にいる場合、クリップオンを眼科レンズから分離させ、最終的に少なくとも3つの光学要素のいずれもない第2のクリップオンで置換し得る。例えば、第2のクリップオンはソーラーティントを有し得る。人はまた、いかなる追加のクリップオンもない眼科レンズを使用することもできる。
【0111】
光学要素は、レンズ要素の各表面に、独立してレンズ要素に追加し得る。
【0112】
これらの光学要素は、矩形、六角形、又はランダム等の定義された配列で追加することができる。
【0113】
光学要素は、任意の他のエリアの中心のようなレンズ要素の特定のゾーンを覆い得る。
【0114】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素の光学中心にセンタリングされたゾーンに対応するレンズの中央ゾーンは、光学要素を含まない。例えば、レンズ要素は、上記レンズ要素の光学中心にセンタリングされ、光学要素を含まない0.9mmに等しい直径を有する空ゾーンを有し得る。
【0115】
レンズ要素の光学中心は、レンズのフィッティングポイントに対応し得る。
【0116】
代替的には、光学要素はレンズ要素の全面に配置し得る。
【0117】
光学要素の密度又は度数量は、レンズ要素のゾーンに応じて調整し得る。通常、光学要素はレンズ要素の周縁に位置決めされて、近視コントロールにおける光学要素の効果を増大させ、例えば、網膜の周縁形状に起因した周縁デフォーカスを補償し得る。
【0118】
本発明の実施形態によれば、光学要素は網目構造に位置決めされる。
【0119】
光学要素が位置決めされる網目構造は、構造化網目構造である。
【0120】
図8に示される実施形態では、光学要素は複数の同心リングに沿って位置決めされる。
【0121】
光学要素の同心リングは環状リングであり得る。
【0122】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素は少なくとも4つの光学要素を更に備え得る。少なくとも4つの光学要素は、光学要素の少なくとも2つの群に編成され、光学要素の各群は同じ中心を有する少なくとも2つの同心リングに編成され、光学要素の各群の同心リングは内径及び外径により定義される。
【0123】
光学要素の各群の同心リングの内径は、光学要素の上記群の少なくとも1つの光学要素に接する最小円に対応する。光学要素の同心リングの外径は、上記群の少なくとも1つの光学要素に接する最大円に対応する。
【0124】
例えば、レンズ要素は光学要素のn個のリングを有し得、finner1は、レンズ要素の光学中心に最も近い同心リングの内径を指し、fouter1は、レンズ要素の光学中心に最も近い同心リングの外径を指し、finner nは、レンズ要素の周縁に最も近いリングの内径を指し、fouter nは、レンズ要素の周縁に最も近い同心リングの外径を指す。
【0125】
光学要素i及びi+1の2つの連続した同心リング間の距離Dは、D=│finner i+1-fouter i│として表し得、式中、fouter iは光学要素iの第1のリングの外径を指し、finner i+1は、第1のリングに連続し、レンズ要素の周縁により近い光学要素i+1の第2のリングの内径を指す。
【0126】
本発明の別の実施形態によれば、光学要素は、光学要素が配置されたレンズ要素の表面の光学中心にセンタリングされ、各光学要素の幾何中心をリンクする同心リングに編成される。
【0127】
例えば、レンズ要素は光学要素のn個のリングを有し得、fは、レンズ要素の光学中心に最も近いリングの直径を指し、fは、レンズ要素の周縁に最も近いリングの直径を指す。
【0128】
光学要素i及びi+1の2つの連続した同心リング間の距離Dは、
【数8】
として表し得、式中、fは光学要素iの第1のリングの直径を指し、fi+1は、第1のリングに連続し、レンズ要素の周縁により近い光学要素i+1の第2のリングの直径を指し、
は光学要素の第1のリング上の光学要素の直径を指し、di+1は、第1のリングに連続し、レンズ要素の周縁により近い光学要素の第2のリング上の光学要素の直径を指す。光学要素の直径は、光学要素の輪郭形状を彫ることが可能な円の直径に対応する。
【0129】
有利なことには、レンズ要素の光学中心及び光学要素の同心リングの中心は一致する。例えば、レンズ要素の幾何中心、レンズ要素の光学中心、及び光学要素の同心リングの中心は一致する。
【0130】
本発明の意味では、一致という用語は、一緒に実際に近い、例えば1.0mm未満の離間として理解されたい。
【0131】
2つの連続した同心リング間の距離Dは、iに従って様々であり得る。例えば、2つの連続する同心円間の距離Dは、2.0mm~5.0mmと様々であり得る。
【0132】
本発明の実施形態によれば、光学要素の2つの連続した同心リング間の距離Dは、2.00mm超、好ましくは3.0mm、より好ましくは5.0mmである。
【0133】
有利なことには、2.00mm超の光学要素の2つの連続した同心リング間の距離Dにより、光学要素のこれらのリング間でより大きな屈折エリアを管理することができ、したがって、より良好な視力を提供する。
【0134】
1mm未満のレンズ要素の光学中心の距離に配置された幾何中心を有し、上記円形ゾーン内部に配置された光学要素の部分の面積の和と上記円形ゾーンの面積との比率が20%~70%、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%である、9mm超の内径及び57mm未満の外径を有するレンズ要素の環状ゾーンを考える。
【0135】
換言すれば、所与の値の上記比率について、間隔が2.0mm超の同心リングへの光学要素の編成により、光学要素がレンズ要素の表面に六角形網目構造に又はランダムに配置される場合に管理される屈折エリアよりも製造が容易な屈折エリアの環状ゾーンを提供することが可能であり、それにより、目の異常屈折のよりよい矯正、ひいてはよりよい視力を提供することを本発明者らは観測した。
【0136】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素の全ての光学要素の直径dは同一である。
【0137】
本発明の実施形態によれば、2つの連続する同心リングi及びi+1間の距離Dは、iがレンズ要素の周縁に向かって増大する場合、増大し得る。
【0138】
光学要素の同心リングは、9mm~60mmの直径を有し得る。
【0139】
本発明の実施形態によれば、レンズ要素は、少なくとも2つ、好ましくは6つ以上、より好ましくは11以上の同心リングに配置された光学要素を備える。例えば、光学要素は、レンズの光学中心にセンタリングされた11個の同心リングに配置し得る。
【0140】
光学要素は、直接表面加工、成形、鋳造若しくは注入、エンボス加工、薄膜加工、積層造形、又はフォトリソグラフィ等のような異なる技術を使用して作ることができる。
【0141】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、人の目の網膜の前に焦面を作り出すように構成された形状を有する。換言すれば、そのような光学要素は、光束がある場合、光束が集中するあらゆるセクション平面が人の目の網膜の前に配置されるように構成される。
【0142】
本発明の実施形態によれば、非球面光学機能を有する光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、多焦点屈折マイクロレンズである。
【0143】
本発明の意味では、光学要素は「多焦点屈折マイクロレンズ」であり、二焦点(2つの焦点屈折力を有する)、三焦点(3つの焦点屈折力を有する)、連続して変化する焦点屈折力を有する多焦点累進レンズ、例えば非球面累進面レンズを含む。
【0144】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、光学要素の好ましくは50%超、より好ましくは80%超は非球面マイクロレンズである。本発明の意味では、非球面マイクロレンズは、表面にわたり連続屈折力進化を有する。
【0145】
非球面マイクロレンズは、0.1D~3Dの非球面性を有し得る。非球面マイクロレンズの非球面性は、マイクロレンズの中心において測定される光学屈折力とマイクロレンズの周縁で測定される光学屈折力との比率に対応する。
【0146】
マイクロレンズの中心は、マイクロレンズの幾何中心にセンタリングされ、0.1mm~0.5mm、好ましくは2.0mmに等しい直径を有する球面エリアによって定義し得る。
【0147】
マイクロレンズの周縁は、マイクロレンズの幾何中心にセンタリングされ、0.5mm~0.7mmの内径及び0.70mm~0.80mmの外径を有する環状ゾーンにより定義し得る。
【0148】
本発明の実施形態によれば、非球面マイクロレンズは、絶対値で2.0D~7.0Dの光学屈折力を幾何中心において有し、絶対値で1.5D~6.0Dの光学屈折力を周縁において有する。
【0149】
光学要素が配置されたレンズ要素の表面をコーティングする前の非球面マイクロレンズの非球面性は、上記レンズ要素の光学中心からの半径方向距離に従って可変である。
【0150】
さらに、光学要素が配置されたレンズ要素の表面をコーティングした後の非球面マイクロレンズの非球面性は、上記レンズの光学中心からの半径方向距離に従って更に可変である。
【0151】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズは環状面を有する。環状面は、曲率中心を通らない回転軸(最終的に無限遠に位置決めされる)の回りで円又は弧を回転させることによって作成することができる回転面である。
【0152】
環状面レンズは、互いに対して直角において2つの異なる半径方向プロファイルを有し、したがって、2つの異なる焦点屈折力を生み出す。
【0153】
円環レンズの環状面成分及び球面成分は、単一焦点とは対照的に、非点収差光線を生み出す。
【0154】
本発明の実施形態によれば、非球面光学機能を有する光学要素の少なくとも1つ、例えば光学要素の全ては、円環屈折マイクロレンズである。例えば、0ジオプタ(δ)以上且つ+5ジオプタ(δ)以下の球面度数値及び0.25ジオプタ(δ)以上の円柱度数値を有する円環屈折マイクロレンズ。
【0155】
特定の実施形態として、円環屈折マイクロレンズは純粋な円筒体であり得、最小子午線屈折力がゼロであり、一方、最大子午線屈折力が厳密に正であり、例えば5ジオプタ未満であることを意味する。
【0156】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、複屈折材料で作られる。換言すれば、光学要素は、光の偏光方向及び伝搬方向に依存する屈折率を有する材料で作られる。複屈折性は、材料が示す屈折率間の最大差として定量化し得る。
【0157】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、不連続面、例えばフレネル面及び/又は不連続性を有する屈折率プロファイルを有する等の不連続性を有する。
【0158】
図3は、本発明に使用し得る光学要素のフレネル高さプロファイルの一例を表す。
【0159】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては回折レンズで作られる。
【0160】
図4は、本発明に使用し得る光学要素の回折レンズ半径方向プロファイルの一例を表す。
【0161】
回折レンズの少なくとも1つ、例えば全ては、国際公開第2017/176921号パンフレットに開示されるようなメタ表面構造を有し得る。
【0162】
回折レンズは、図5に見られるように、位相関数ψ(r)が公称波長においてπ位相ジャンプを有するフレネルレンズであり得る。明確にするために、位相ジャンプが2πの倍数である単焦点フレネルレンズとは対照的に、これらの構造に「πフレネルレンズ」という名称を与え得る。位相関数が図5に表示されるπフレネルレンズは、主に、ジオプタ度数0δ及び正のジオプタ度数P、例えば3δに関連する2つの回折次数で光を回折する。
【0163】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、多焦点バイナリ構成要素である。
【0164】
例えば、図6aに表されるようなバイナリ構造は、-P/2及びP/2で示される主に2つのジオプタ度数を示す。ジオプタ度数がP/2である図6bに示されるような屈折構造に関連する場合、図6cに表される最終構造はジオプタ度数0δ及びPを有する。示された事例はP=3δに関連する。
【0165】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては画素化レンズである。多焦点画素化レンズの一例は、Eyal Ben-Eliezerら、APPLIED OPTICS,Vol.44,No.14,10 May 2005において開示されている。
【0166】
本発明の実施形態によれば、光学要素の少なくとも1つ、例えば全ては、高次光学収差を有する光学機能を有する。例えば、光学要素は、ゼルニケ多項式により定義される連続面で構成されるマイクロレンズである。
【0167】
本発明の実施形態によれば、光学要素少なくとも1つ、例えば少なくとも70%、例えば全ては、光学レンズコントローラデバイスによりアクティブ化し得るアクティブ光学要素である。
【0168】
アクティブ光学要素は、光学レンズコントローラにより制御される可変屈折率を有する材料を含み得る。
【0169】
本発明について、全般的な本発明の概念を限定せずに、実施形態を用いて上述した。
【0170】
例示的な上記実施形態を参照して、多くの更なる変更及び変形が当業者に明らかになり、例示的な上記実施形態は単なる例として与えられ、本発明の範囲の限定を意図せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【0171】
特許請求の範囲において「備える、有する、含む(comprising)」という言葉は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。異なる特徴が相互に異なる従属クレームに記載されているという事実だけでは、これらの特徴の組合せが有利に使用することができないことを示さない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8