(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】手持ち式電気パルスツール及び締結作業を行う方法
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20240112BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B25B23/14 630N
B25B23/14 610B
B25B23/14 610K
B25B21/02 F
(21)【出願番号】P 2020557158
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2019058271
(87)【国際公開番号】W WO2019201587
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アスプルンド ダニエル ペール エーリク
(72)【発明者】
【氏名】フリベルイ ヨン ロベルト クリスティアン
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/063851(WO,A1)
【文献】特開昭61-279472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 - 21/02
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ継ぎ手を締結するためにトルクがパルスで伝達される締結作業を行なう手持ち式電気パルスツール(10)であって、前記手持ち式電気パルスツール(10)は、出力シャフト(12)と、前記ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ(14、15、25)と、を備え、前記電気パルスツール(10)は、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向に、前記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供し、
第1の時間間隔の間、前記締結を一時停止し、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向に前記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供し
該弛緩方向のトルクパルスの大きさは前記第2のパラメータ値に向かって徐々に小さくなり、
第2の時間間隔の間、前記締結を一時停止し、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向に前記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する、よう作動する、
手持ち式電気パルスツール(10)。
【請求項2】
前記電気パルスツール(10)は、前記継ぎ手を調整するのに十分な弛緩方向の必要なパルスを決定するようさらに作動する、
請求項1に記載の手持ち式電気パルスツール(10)。
【請求項3】
前記センサはトルクセンサであり、前記ねじ継ぎ手の締結と関連する前記第1及び第2のパラメータ値はトルクである、
請求項1または2に記載の手持ち式電気パルスツール(10)。
【請求項4】
前記センサ(14、15、25)は角度計であり、前記ねじ継ぎ手の締結と関連する前記第1及び第2のパラメータ値は角度である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の手持ち式電気パルスツール(10)。
【請求項5】
前記電気パルスツール(10)は、前記弛緩方向の前記トルクパルスの出力を低減するようにさらに構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の手持ち式電気パルスツール(10)。
【請求項6】
ねじ継ぎ手を締結するためにトルクがパルスで伝達される手持ち式電気パルスツール(10)で締結作業を行う方法であって、前記手持ち式電気パルスツール(10)は、出力シャフトと、前記ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ(14、15、25)とを備え、前記方法は、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で前記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するステップと、
第1の時間間隔の間、締結を一時停止するステップと、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で前記出力シャフトに、複数のトルクパルスを提供するステップ
であって、前記弛緩方向のトルクパルスの大きさは前記第2のパラメータ値に向かって徐々に小さくなる、ステップと、
第2の時間間隔の間に前記締結を一時停止するステップと、
前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で前記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記方法は、継ぎ手を調整するのに十分な弛緩方向で必要なパルスを決定することをさらに含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記センサは、トルクセンサであり、前記ねじ継ぎ手の締結と関連する第1及び第2のパラメータ値は、トルクである、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記センサは角度計であり、前記ねじ継ぎ手の締結と関連する前記第1及び第2のパラメータ値は角度である、
請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記弛緩方向でトルクパルスの出力を低減するステップをさらに含む、
請求項6から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
電気パルスツール(10)で実行される場合、前記電気パルスツール(10)に、請求項6から10のいずれか1項に記載の方法を行わせるコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ねじ継ぎ手を締結及び/又は弛緩するためトルクがパルスで伝達される手持ち式電気パルスツール、及び手持ち式電気パルスツールで締結作業を行なうための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式電気パルスツールは、継ぎ手を締結するために使用され、締結作業の間に、トルクが、手持ち式電気パルスツール内部に収容されたモーターによってパルスで継ぎ手に加えられる。多くの場合、特定のトルク又はクランプ力が、継ぎ手に導入されるように締結を制御することが好ましい。加えられたトルクは、トルクセンサで監視することができるが、加えられたトルクを間接的に監視するために、出力シャフトの減速度を監視する角度計、加速度計、又はジャイロによって監視することもできる。
【0003】
多くの場合、手持ち式電気パルスツールを使用する際に、高い生産性及び精度を達成することが重要である。例えば、手持ち式電動パルスツールを製造に使用する場合、各ユニットの製造にかかる時間を短縮するために生産性は重要である。従って、手持ち式電気パルスツールは、多くの場合、ネジ継ぎ手をできるだけ速くかつ正確に締結するように構成される。
【0004】
精度を上げるための1つの解決策は、締結の終わりに向かってトルクパルスの出力を低減することである。
【0005】
手持ち式電動ツールに関して、オペレーターに作用する反力ができるだけ小さいこと及び完了した締結の精度ができるだけ高いことが重要である。
【0006】
正確な締結は、一般的に、継ぎ手に導入されたクランプ力が可能な限り正確であることを意味する。しかしながら、一般的に、継ぎ手のクランプ力は測定されない。代わりに、トルクが測定され、どの位のクランプ力が継ぎ手に導入されているかの目安になる。しかしながら、トルクは、どの位のクランプ力が継ぎ手に導入されたかの間違った測定値をもたらす場合がある。これは、摩擦が異なる継ぎ手の間で変わる可能性があるためである。
【0007】
従って、導入トルクを制御することができ、可能な限り高精度で締結作業が行われる、トルクパルスを伝達するよう構成されている手持ち式電気パルスツールに対するニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、継ぎ手に導入されたクランプ力の散乱を低減できる手持ち式電気パルスツール10を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、手持ち式電気パルスツールが継ぎ手を複数回、前後に締結及び弛緩させることによって達成される。継ぎ手を複数回、前後に締結及び弛緩させることで、継ぎ手を機械的に正常化させる。表面構造での個体差は、すり減らされることになり、継ぎ手の集団がより類似することになる。これにより、異なる継ぎ手の間の少ないクランプ力の差につながることになる。
【0010】
手持ち式電気パルスツールは、トルクをパルスで伝達するので、手持ち式電気パルスツールの人間工学に影響を及ぼすことなく、締結と弛緩との間の切り替えが可能になる。
【0011】
手持ち式ツールがボルトを連続的に回転させることでボルトを締結及び弛緩させると、人間工学に深刻な影響を及ぼすことになる。これは、ツールが締結から弛緩に、又はその逆に切り替えられた場合、反力の変化をもたらすためである。
【0012】
本開示の第1の態様によれば、この目的は、ねじ継ぎ手を締結するためにトルクがパルスで伝達される締結作業を行うための手持ち式電気パルスツールによって達成される。手持ち式電気パルスツールは、出力シャフトと、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサとを備え、電気パルスツールは、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するよう作動する。次に、第1の時間間隔の間に締結を一時停止させる。その後、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。次に、電気パルスツールは、第2の時間間隔の間に締結を一時停止するよう作動する。さらに、ねじ継手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。
【0013】
第2の態様によれば、本開示は、手持ち式電気パルスツールにおける締結作業を行なうための方法に関し、トルクは、ねじ継ぎ手を締結するためにパルスで伝達され、手持ち式電気パルスツールは、出力シャフトと、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を決定するように配置されたセンサとを備え、本方法は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するステップを含む。次に、第1の時間間隔の間に締結を一時停止する。その後、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。次に、第2の時間間隔の間に締結を一時停止する。その後、ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。
【0014】
本開示のさらなる目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになり、本開示のいくつかの態様は、添付の図面を参照してより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による手持ち式電気パルスツールの概略図である。
【
図2】手持ち式電気パルスツールによって行なわれる締結の例における、作業時間の関数として供給されたトルクパルスの概略図である。
【
図3】手持ち式電気パルスツールで行なわれる方法の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の態様を、添付の図面を参照して以下でより完全に説明する。しかしながら、本明細書に開示される装置、方法、及びコンピュータープログラムは、多くの異なる形態で実現することができ、本明細書に明記される態様に限定されると見なされるべきではない。図面内の同様の番号は、全体を通して同様の要素を指している。
【0017】
本明細書で使用される専門用語は、本開示の特定の態様を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の名詞は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も同様に含むことを意図している。
【0018】
図1には、本開示の特定の実施形態による手持ち式電気パルスツール10が概略的に示されている。手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手(screw joint)を締結するためにトルクがパルスで伝達される締結作業を行なうように構成される。この目的のために、手持ち式電気パルスツール10は、2つの反対の回転方向、すなわち時計回りと反時計回りにトルクを伝達するように配置された双方向性電気モーター11を備えている。
【0019】
手持ち式電気パルスツール10は、図示の実施形態においてピストルタイプのハンドル22をさらに備える。しかしながら、本開示は、何らかのタイプの手持ち式パルスツールをカバーすることを意図している。本開示は、手持ち式の手持ち電気パルスツールに限定されず、他のタイプの電気パルスツールで実施することもできる。バッテリーなどの電源24はハンドルの下部には配置されており、トリガー23が、電気モーター11に電力を供給するオペレーターの操作のために配置されている。電源は、電気ケーブルに接続することもできる。
【0020】
さらに、手持ち式電気パルスツールは、出力シャフト12及びねじ継ぎ手の締結に関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ14、15、25を備える。センサは、トルクセンサ、角度センサ、加速度計、ジャイロ、又は同様なものとすることができる。図示の実施形態において、回転センサ部14及び静止センサ部15を用いて入力シャフト17の回転を監視する角度センサからなる第1のセンサ14、15が存在する。トルクセンサの形態の第2のセンサ25が出力シャフト12に配置されている。本開示に関して、角度センサ又はトルクセンサのいずれか一方が必要であり、両方は必要ではない。しかしながら、高い精度又は冗長性を提供するために、両方のセンサを設けることができる。
【0021】
図示の実施形態は、ピストン作動ローター19を収容する慣性体18を備えるパルスユニット13をさらに含む。慣性体18は、入力シャフト17にしっかりと結合され、モーター11の回転子20によって駆動される。図示の実施形態において、回転子20は、モーター11の固定子21の内部に同軸に配置されている。パルスは、当技術分野で知られている従来の方法で回転子19を回転させるように、慣性体18の内部のカム表面(図示されず)がピストンと相互作用して発生する。
【0022】
しかしながら、本開示は、パルスユニットを備えたパルスツールに限定されない。パルスツールのモーターの出力をパルス化することで、モーターと出力シャフトとの間の直接接続を備えたパルスツールでパルスを生成することもできる。また、本開示は、多くの場合インパクトレンチとして知られているようなパルスツール及び打撃パルスツールもカバーする。
【0023】
パルスユニットを含むパルスツールに関して、ねじの締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ14、15、25は、慣性体19の回転と慣性体19の減速度の両方を監視するように配置することができる。減速度は、継ぎ手に導入されたトルクを計算するために使用することができる。ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ14、15、25がトルクセンサ25である場合、センサ25は、トルクを直接測定できる。従って、トルクセンサ25は、伝達されたトルクを監視するために継ぎ手に可能な限り近い出力シャフト12に配置される。
【0024】
本開示の目的は、継ぎ手に導入されたクランプ力の散乱を低減できる電気パルスツール10を提供することである。この目的は、継ぎ手を複数回、前後に締結及び弛緩させることによって達成される。継ぎ手を複数回、前後に締結及び弛緩させることで、継ぎ手は機械的に正常化されることになる。表面構造での個体差は、すり減らされることになり、継ぎ手の集団がより類似することになる。これにより、異なる継ぎ手の間の少ないクランプ力の差につながることになる。
【0025】
本開示による本発明の方法の別の利点は、継ぎ手は、作業に起因する何らかの緩和効果も得ることができる点である。緩和効果は、継ぎ手に関する経時的なクランプ力のより少ない変化にもつながることになる。
【0026】
ハンドルの反力に起因して、この方法は、連続締結手持ち式ツールには適していない。これは、締結作業の間にハンドルの高反力が方向を変える締結ツールを管理することが実現不可能だからである。
【0027】
本開示による手持ち式電気パルスツールでは、反力が無視できる。従って、オペレーターに対する人間工学的問題又は他の全体的な不快感なしに、締結方向を変えることができる。
【0028】
従って、本開示の例示的な実施形態によれば、この目的は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを供給するように作動する手持ち式電気パルスツールによって達成される。次に、手持ち式電気パルスツールは、第1の時間間隔の間に締結を一時停止するよう作動する。次に、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。次に、手持ち式電気パルスツールは、第2の時間間隔の間に締結を一時停止する。次に、ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。
【0029】
手持ち式電気パルスツールが作動することは、トリガーの作動時に、手持ち式電気パルスツールが様々な実施形態に従って締結及び弛緩パルスを自動的に提供することを意味する。
【0030】
本開示の例示的な実施形態において、手持ち式電気パルスツール10は、継ぎ手を調整するのに十分な、弛緩方向の必要なパルスを決定するようにさらに作動する。本開示の別の例示的な実施形態において、センサはトルクセンサであり、ねじ継ぎ手の締結に関連する第1及び第2のパラメータ値は、トルクである。本開示のさらに別の例示的な実施形態において、センサは角度計であり、ねじ継ぎ手の締結に関連する第1及び第2のパラメータ値は、角度である。本開示のさらに別の例示的な実施形態において、手持ち式電気パルスツールは、弛緩方向でトルクパルスの出力を低減するようにさらに構成される。例示的な一実施形態において、第1のパラメータ値、第2のパラメータ値、及び第3のパラメータ値は、例えば、トルク、角度、又はパルス数によって個別に規定することができる。また、第1の時間間隔及び第2の時間間隔は、個別に規定することができる。例示的な一実施形態において、第1の時間間隔及び第2の時間間隔は、ゼロに設定することができる。第1のパラメータ値、第2のパラメータ値、第3のパラメータ値、第1の時間間隔、及び第2の時間間隔のための個別の設定値は、個別に監視及び制御することができる。
【0031】
例示的な一実施形態によれば、第1のパラメータ値、第2のパラメータ値、第3のパラメータ値、第1の時間間隔、及び第2の時間間隔は、個別に監視して、トルクの増加及び/又は低下、角度の増加及び/又は低下、及び/又は、締結方向及び/又は弛緩方向でのパルス数によって制御することができる。
【0032】
従って、本開示による手持ち式電気パルスツール10の利点は、手持ち式電気パルスツール10が、導入されたクランプ力の変動が少ない状態で締結を提供できる点である。締結の大部分は、同じクランプ力を有することになる。従って、異なる継ぎ手に導入されたクランプ力に関して、品質の向上が達成される。
【0033】
図1に戻って参照すると、手持ち式電気パルスツール10は、電気モーター11を制御するように配置されたプロセッサ16をさらに備える。また、手持ち式電気パルスツール10は、プロセッサ16によって実行可能な命令を含むメモリ26を備える。プロセッサ16は、中央演算処理装置、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、DSP、又はコンピュータプログラムコードを実行することができる何らかの他の適切なタイプのプロセッサである。メモリ26は、ランダムアクセスメモリ、RAM、読み取り専用メモリ、ROM、又は永続記憶装置、例えば、単一の磁気メモリ、光メモリ、又はソリッドステートメモリ、又は遠隔に取り付けられたメモリ、もしくはこれらの組み合わせである。
【0034】
一態様によると、本開示はさらに、上記のコンピュータプログラムに関し、手持ち式電気パルスツール10で実行される場合に、手持ち式電気パルスツール10、32に、本明細書に記載の開示の何らかの態様を実行させるコンピュータ可読コードを含む。
【0035】
上記のコンピュータプログラムコードが手持ち式電気パルスツール10のプロセッサ16で実行される場合に、これは、手持ち式電気パルスツール10に、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するように作動させる。
【0036】
さらに、これは、手持ち式電気パルスツール10に、第1の時間間隔の間に、締結を一時停止させる。次に、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で上記出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。次に、手持ち式電気パルスツールに第2の時間間隔の間に締結を一時停止させる。次に、手持ち式電気パルスツール10に、ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。
【0037】
本開示の一態様によれが、プロセッサ16は、
-ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するように構成された第1の提供モジュール161、
-第1の時間間隔の間に締結を一時停止させるように構成された一時停止モジュール162、
-ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するように構成された第2の提供モジュール163、
-第2の時間間隔の間に締結を一時停止させるように構成された第2の一時停止モジュール164、
-ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供するように構成された第3の提供モジュール165、
のうちの1又は複数を備える。
【0038】
第1の提供モジュール161、一時停止モジュール162、第2の提供モジュール163、第2の一時停止モジュール164、及び第3の提供モジュール165は、ハードウェア又はソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実施される。一態様によれば、モジュール161、162、163、164、及び165は、プロセッサ16で実行されるメモリ26に格納されたコンピュータプログラムとして実施される。手持ち式電動ツール10は、本明細書に記載されるように、本開示のすべての態様を実施するようにさらに構成される。
【0039】
図2には、例示的な実施形態による、手持ち式電気パルスツール10によって行われる締結の一例が示されている。
図2において、ねじ継ぎ手の締結に関連して決定されたパラメータが時間tの関数として示される。この例において、締結作業は、13個のトルクパルス1~13を含むものとして示されている。しかしながら、締結作業は、より少なく、又はより多くのトルクパルスを必要とする可能性がある。締結方向で各トルクパルスは、トルクを追加して、結果としてねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータを増加させることになる。また、弛緩方向で各トルクパルスは、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータを低減させることになる。
図2で分かるように、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフト12にトルクパルス1から5を提供する。次に、手持ち式電気パルスツール10は、第1の時間間隔の間に、締結を一時停止する。その後、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフト12にトルクパルス6から8を提供する。次に、手持ち式電気パルスツール10は、第2の時間間隔の間に、締結を一時停止する。その後、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフト12にトルクパルス9から13を提供する。
【0040】
従って、
図2に示される締結において、手持ち式電気パルスツール10は、最初に締結方向でトルクパルスを供給する。
【0041】
次に、弛緩方向でトルクパルスを提供する。最後に、再び締結方向でトルクパルスを提供する。
【0042】
従って、継ぎ手は機械的に正常化されることになる。表面構造での個体差は、すり減らされることになり、継ぎ手の集団がより類似することになる。これにより、異なる継ぎ手の間の少ないクランプ力の差につながることになる。
【0043】
しかしながら、第1及び第2の時間間隔をゼロに設定することができる、手持ち式電気パルスツール10の他の例示的な実施形態が存在する。従って、方向転換の間に一時停止せずに締結作業を行うことができる。
【0044】
電気パルスツール10の例示的な一実施形態によれば、センサ14、15、25は、トルクセンサ25であり、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値はトルクである。この例示的な実施形態において、
図2は、y軸上でトルクを示す。
【0045】
電気パルスツール10の別の例示的な実施形態において、センサ14、15、25は、角度計であり、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値は、角度である。この例示的な実施形態において、
図2は、y軸上で角度を示す。
【0046】
電気パルスツール10の別の例示的な実施形態において、手持ち式電気パルスツール10は、さらに弛緩方向でトルクパルスの出力を低減するように構成される。
【0047】
図2に示すように、第1のパラメーター値は、第3のパラメーター値を下回ってもよい。これらの例示的な実施形態において、手持ち式電気パルスツール10は、締結作業のもっと後の段階で第3のパラメータ値に達した場合に、締結を提供することができる。
【0048】
図3は、上記の例示的な実施形態による締結作業を行うために、手持ち式電気パルスツール10で行われる方法のステップを示す。上記の例示的な実施形態のように、トルクは、ねじ継ぎ手を締めるためにパルスで伝達される。同様に、上記のように、手持ち式電気パルスツール10は、出力シャフト12、ねじ継ぎ手の締結と関連するパラメータ値を測定するように配置されたセンサ14、15、25を備える。
【0049】
最初のステップ30において、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1のパラメータ値に到達するまで、締結方向で出力シャフト12に複数のトルクパルスを提供する。次のステップ40において、手持ち式電気パルスツール10は、第1の時間間隔の間に、締結を一時停止する。その後、次のステップ50において、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第2のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを提供する。次のステップ60において、手持ち式電気パルスツール10は、第2の時間間隔の間に、締結を一時停止する。その後、次のステップ70において、手持ち式電気パルスツール10は、ねじ継ぎ手の締結と関連する第3のパラメータ値に到達するまで、弛緩方向で出力シャフトに複数のトルクパルスを与える。
【0050】
この方法の一つの例示的な実施形態によれば、この方法は、継ぎ手を調整するのに十分な弛緩方向で必要なパルスを決定することをさらに含む。
【0051】
この方法の別の例示的な実施形態において、センサはトルクセンサであり、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1及び第2のパラメータ値は、トルクである。
【0052】
この方法の別の例示的な実施形態によると、センサは角度計であり、ねじ継ぎ手の締結と関連する第1及び第2のパラメータ値は、角度である。
【0053】
この方法のさらにもう一つの例示的な実施形態において、この方法は、弛緩方向でトルクパルスの出力を低減することをさらに含む。
【0054】
本開示の態様は、図面、例えば、ブロック図及び/又はフローチャートを参照して説明される。図面の複数のエンティティ、例えばブロック図のブロック、また図面のエンティティの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施することができ、この命令はコンピュータ可読メモリに格納することができることを理解されたい。
【0055】
図面及び明細書には本開示の例示的な態様が開示されている。しかしながら、本開示の原理から実質的に逸脱することなく、これらの態様に対して多くの変形及び修正を行うことができる。従って、本開示は、限定的ではなくむしろ例示的と見なされるべきであり、上述の特定の態様に限定されると見なされるべきではない。従って、特定の用語が使用されているが、これらは包括的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的として使用されていない。