(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】眼科的薬学的組成物、その調製方法、およびその適用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/05 20060101AFI20240112BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240112BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240112BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240112BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240112BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240112BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240112BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K38/05
A61K9/10
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61P27/02
A61P27/04
(21)【出願番号】P 2020562816
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2019072664
(87)【国際公開番号】W WO2019144863
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】201810063904.7
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520274231
【氏名又は名称】セインダ ファーマシューティカル グアンジョウ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リウ ズグオ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ユーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュアン カイホン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】タン グオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ペンシャン
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/107069(WO,A1)
【文献】特開平04-225956(JP,A)
【文献】特開平05-221980(JP,A)
【文献】特表平10-506387(JP,A)
【文献】特表2006-504701(JP,A)
【文献】特表2013-544251(JP,A)
【文献】「医療用点眼剤の製剤設計・製造」,一般社団法人日本眼科用剤協会,2016年,https://web.archive.org/web/20160427093322/http://gankayozai.jp:80/manufacture/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に適した等張液中に懸濁または溶解されたL-アラニル-L-グルタミンを含む、
杯細胞密度を上昇させるための、角膜上皮のバリア機能を改善するための、角膜損傷を回復させるための、ドライアイ疾患の症状を改善するための、および/または涙液分泌量を増加させるための、眼科的薬学的組成物であって、目の
眼表面へ局所投与
される、眼科的薬学的組成物。
【請求項2】
L-アラニル-L-グルタミンの濃度が0.1~10%(w/v)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
L-アラニル-L-グルタミンの濃度が1~5%(w/v)である、請求項1または請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
L-アラニル-L-グルタミンの濃度が1%(w/v)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
等張液が、等張化剤を用いて調製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
等張化剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、2-(4-n-オクチルフェニルエチル)-2-アミノ-プロピレングリコールハイドロクロライド、およびグルコースのうちの1つまたは複数から選択される、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
等張化剤が、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのいずれかまたは両方から選択される、請求項5または請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
等張化剤が、塩化ナトリウムである、請求項5~7のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
等張化剤の濃度が0.01~3%(w/v)である、請求項5~8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
等張化剤の濃度が0.1~1%(w/v)である、請求項5~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
等張化剤の濃度が0.4~0.8%(w/v)である、請求項5~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
等張化剤の濃度が0.5%(w/v)である、請求項5~11のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
任意で静菌剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
静菌剤が、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、フェノキシエタノール、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、およびヒドロキシ安息香酸プロピルのうちの1つまたは複数から選択される、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
静菌剤が、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、およびヒドロキシ安息香酸エチルのうちの1つまたは複数から選択される、請求項13または請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
静菌剤が、ヒドロキシ安息香酸エチルである、請求項13~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
静菌剤の濃度が0.003~0.5%(w/v)である、請求項13~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
静菌剤の濃度が0.01~0.05%(w/v)である、請求項13~17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
静菌剤の濃度が0.02~0.035%(w/v)である、請求項13~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
静菌剤の濃度が0.03%(w/v)である、請求項13~19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
任意で増粘剤を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポビドンのうちの1つまたは複数から選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのいずれかまたは両方から選択される、請求項21または請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項21~23のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
増粘剤の濃度が0.01~0.5%(w/v)である、請求項21~24のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
増粘剤の濃度が0.05~0.2%(w/v)である、請求項21~25のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
増粘剤の濃度が0.1~0.15%(w/v)である、請求項21~26のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
増粘剤の濃度が0.1%(w/v)である、請求項21~27のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記薬学的組成物が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、およびリン酸から選択される1つまたは複数のpH調整剤を含み、
該pH調整剤が、pHの値を5.0~9.0に調整する、
請求項1~28のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
pH調整剤がpHの値を6.0~8.0に調整する、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
pH調整剤が、pHの値を6.5~7.5に調整する、請求項29または請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
pH調整剤が、pHの値を7.0に調整する、請求項29~31のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
pH調整剤が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択される、請求項29~32のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
pH調整剤が、水酸化ナトリウムである、請求項29~33のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
水酸化ナトリウムの濃度が0.25 mol/Lである請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物を調製する方法であって、
L-アラニル-L-グルタミンを、等張液中に懸濁または溶解する段階、
pHの値を5.0~9.0に調整する段階、および
得られた溶液を、微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階
を含む、方法。
【請求項37】
等張化剤を注射用水に加え、撹拌して溶解させる段階、
L-アラニル-L-グルタミンを加え、撹拌して溶解させる段階、
注射用水を加える段階、
pH調整剤を加えて、pHの値を5.0~9.0に調整する段階、
100度で煮沸して滅菌する段階、
微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階、
無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
注射用水を用い、等張化剤および静菌剤を順次撹拌して溶解させる段階、
任意で、溶解後に増粘剤を加え、溶解するまで撹拌し続ける段階、
L-アラニル-L-グルタミンを加え、撹拌して溶解させる段階、
注射用水を加える段階、
pH調整剤を加えて、最終的なpHの値を5.0~9.0に調整する段階、
100度で煮沸して滅菌する段階、
微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階、および
無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
微孔ろ過膜が、0.22μmの微孔ろ過膜である、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
pHの値が6.0~8.0に調整される、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
pHの値が6.5~7.5に調整される、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
pHの値が7.0に調整される、請求項36~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
等張化剤を注射用水において80~90度で撹拌して溶解させるか、または等張化剤および静菌剤を注射用水において80~90度で撹拌して溶解させる、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
等張化剤を、注射用水において85度で撹拌して溶解させるか、または等張化剤および静菌剤を注射用水において85度で撹拌して溶解させる、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための眼科的製剤の調製における、請求項1~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項46】
ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための、請求項1~35のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的製剤、より具体的には眼科的薬学的組成物およびその調製方法の技術分野に関連し、かつ、ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための眼科的製剤の調製における、その適用の技術分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ疾患とは、涙液層の異常または目の表面の恒常性の異常によって引き起こされる種類の疾患を指し、これは、涙液層が不安定な状態、目の不快感、および視力障害をもたらす。これは、永続する損傷を目の表面に引き起こす潜在性を有する。ドライアイ疾患は通常、乾燥感、異物感、痛み、灼熱感、目の痒み、視界のかすみ、目の充血、羞明、流涙等として現れる。長期間の目の不快感は、患者の生活の質に深刻な影響を与え得る。重篤なドライアイ疾患はまた、角膜炎、角膜血管新生、角膜潰瘍を引き起こし得、そして患者の視力をおびやかし、そして最終的に失明を引き起こす可能性すらある。現在ドライアイ疾患は、全世界で最も多い、目の表面の疾患である。疫学調査は、ドライアイ疾患の発病率は、世界において約5.5%~33.7%の範囲であり、かつ中国において約21%~30%の範囲であることを示す。中国においては、3億人超のドライアイ疾患患者がいると推測される。近年、大気汚染の悪化、ならびにビデオ端末およびデジタルスクリーンの使用の増加にともなって、ドライアイ疾患の有病率は急激に増加しており、かつ低年齢化が進行している。ドライアイ疾患は、患者に、読書、コンピューターの使用、テレビの視聴、および運転などの彼らの日々の仕事ならびに活動における困難性を、もたらし得る。したがってドライアイ疾患は、人々の仕事の効率および生活の質に対し、有意な負の影響を有する。
【0003】
ドライアイ疾患の発症および進行に影響を及ぼす、多くの因子が存在する。ドライアイ疾患を誘発する因子は、目の表面の炎症、薬物乱用、長期間のコンタクトレンズ装用、更年期、長時間のコンピューターの使用、および他の免疫因子を含む。研究は、ドライアイ疾患の主な病理症状は、涙液層の恒常性が低下した後の、乾燥環境ストレスによって引き起こされる、目の表面上皮への一連の損傷であり、これには、角膜上皮のバリア機能の障害、結膜杯細胞密度の低下、目の表面の扁平上皮化生、および目の表面の炎症が含まれることを、示している。現在、ドライアイ疾患のための主な治療方法は、人工涙液、コルチコステロイド、およびシクロスポリンA(CsA)などの免疫抑制剤を含む。しかしながら人工涙液は、天然の涙液の単なる代用品であるので、治療効果は有さない。コルチコステロイドおよびCsA等の薬物の長期間の使用は、目の表面において、一定の、毒性の副作用を有する。これまで、臨床実践においてドライアイ疾患の治療に特別に効果的な薬物は、存在していない。したがって、優れた効力を有し、長期間の使用が可能で、かつ明らかな局所性のおよび全身性の副作用を有さない、ドライアイ疾患の治療用の薬物を開発する、差し迫った必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、眼科的薬学的組成物、その調製方法、ならびにドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための眼科的製剤の調製における、その適用を提供する。本発明の眼科的薬学的組成物は、刺激性が少なく、高い安定性を有し、かつ優れた安全性を有する。
【0005】
本発明は、以下の技術スキームによって達成される:
【0006】
第一に、本発明は眼科的薬学的組成物を提供し、これは、眼科的に許容可能な等張液中に懸濁または溶解されたL-アラニル-L-グルタミンを含む。
【0007】
好ましくは、L-アラニル-L-グルタミンの濃度は0.1~10%(w/v)であり、好ましくは1~10%(w/v)であり、より好ましくは1~5%(w/v)であり、最も好ましくは1%(w/v)である。
【0008】
好ましくは、等張液は、等張化剤を用いて調製され;
好ましくは、等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、2-(4-オクチルフェニルエチル)-2-アミノ-プロピレングリコールハイドロクロライド、およびグルコースのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、等張化剤は、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのいずれかまたは両方から選択され;
好ましくは、等張化剤は、塩化ナトリウムであり;
好ましくは、等張化剤の濃度は0.01~3%(w/v)であり、好ましくは0.1~1%(w/v)であり、より好ましくは0.4~0.8%(w/v)であり、最も好ましくは0.5%(w/v)である。
【0009】
好ましくは、薬学的組成物は、任意で、静菌剤または抗菌剤を含み;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、フェノキシエチルアルコール、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸プロピルのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤は、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、およびヒドロキシ安息香酸エチルのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤は、ヒドロキシ安息香酸エチルであり;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤の濃度は0.003~0.5%(w/v)であり、好ましくは0.01~0.05%(w/v)であり、より好ましくは0.02~0.035%(w/v)であり、最も好ましくは0.03%(w/v)である。
【0010】
好ましくは、薬学的組成物は、任意で増粘剤を含み;
好ましくは、増粘剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポビドンのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、増粘剤は、ヒアルロン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのいずれかまたは両方から選択され;
好ましくは、増粘剤は、ヒアルロン酸ナトリウムであり;
好ましくは、増粘剤の濃度は0.01~0.5%(w/v)であり、好ましくは0.05~0.2%(w/v)であり、より好ましくは0.1~0.15%(w/v)であり、最も好ましくは0.1%(w/v)である。
【0011】
好ましくは、薬学的組成物はまた、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、およびリン酸から選択される1つまたは複数のpH調整剤を含み、
該pH調整剤は、pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整し;
好ましくは、pH調整剤は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択される。
【0012】
好ましくは、pH調整剤は、水酸化ナトリウムであり;
好ましくは、水酸化ナトリウムの濃度は0.25 mol/Lである。
【0013】
第二に、本発明は、上述の薬学的組成物を調製するための方法もまた、提供する。方法は、
L-アラニル-L-グルタミンを、等張液中に懸濁または溶解する段階;pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;および、得られた溶液を、微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階
を含み;
好ましくは、方法は、
等張化剤を、注射用水において、好ましくは80~90度で、最も好ましくは85度で、撹拌して溶解させる段階;L-アラニル-L-グルタミンを加える段階;撹拌して溶解させる段階;注射用水を加える段階;pH調整剤を加えて、pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;100度で煮沸して滅菌する段階;微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階;および、無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
を含み;
好ましくは、方法は、
等張化剤、および静菌剤または抗菌剤を、注射用水において、好ましくは80~90度で、最も好ましくは85度で、順次撹拌して溶解させる段階;任意で、溶解後に撹拌しながら増粘剤を加え、そして溶解するまで撹拌し続ける段階;L-アラニル-L-グルタミンを加える段階;撹拌して溶解させる段階;注射用水を加える段階;pH調整剤を加えて、最終的なpHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;100度で煮沸して滅菌する段階;微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階;ならびに、無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
を含む。
【0014】
第三に、本発明はまた、ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための眼科的製剤の調製における、上述の薬学的組成物の適用を提供する。
[本発明1001]
眼科的に許容可能な等張液中に懸濁または溶解されたL-アラニル-L-グルタミンを含む、眼科的薬学的組成物。
[本発明1002]
L-アラニル-L-グルタミンの濃度が0.1~10%(w/v)であり、好ましくは1~10%(w/v)であり、より好ましくは1~5%(w/v)であり、最も好ましくは1%(w/v)である、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1003]
等張液が、等張化剤を用いて調製され;
好ましくは、等張化剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、マンニトール、グリセリン、プロピレングリコール、2-(4-オクチルフェニルエチル)-2-アミノ-プロピレングリコールハイドロクロライド、およびグルコースのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、等張化剤が、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのいずれかまたは両方から選択され;
好ましくは、等張化剤が、塩化ナトリウムであり;
好ましくは、等張化剤の濃度が0.01~3%(w/v)であり、好ましくは0.1~1%(w/v)であり、より好ましくは0.4~0.8%(w/v)であり、最も好ましくは0.5%(w/v)である、
本発明1001または1002の薬学的組成物。
[本発明1004]
前記薬学的組成物が、任意で静菌剤または抗菌剤を含み;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、フェノキシエチルアルコール、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸プロピルのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤が、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、およびヒドロキシ安息香酸エチルのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤が、ヒドロキシ安息香酸エチルであり;
好ましくは、静菌剤または抗菌剤の濃度が0.003~0.5%(w/v)であり、好ましくは0.01~0.05%(w/v)であり、より好ましくは0.02~0.035%(w/v)であり、最も好ましくは0.03%(w/v)である、
本発明1001~1003のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1005]
前記薬学的組成物が、任意で増粘剤を含み;
好ましくは、増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポビドンのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのいずれかまたは両方から選択され;
好ましくは、増粘剤が、ヒアルロン酸ナトリウムであり;
好ましくは、増粘剤の濃度が0.01~0.5%(w/v)であり、好ましくは0.05~0.2%(w/v)であり、より好ましくは0.1~0.15%(w/v)であり、最も好ましくは0.1%(w/v)である、
本発明1001~1004のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1006]
前記薬学的組成物が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、およびリン酸から選択される1つまたは複数のpH調整剤を含み、
該pH調整剤が、pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整し;
好ましくは、pH調整剤が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択され;
好ましくは、pH調整剤が、水酸化ナトリウムであり;
好ましくは、水酸化ナトリウムの濃度が0.25 mol/Lである、
本発明1001~1005のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1007]
本発明1001~1006のいずれかの薬学的組成物を調製する方法であって、
該方法は、
L-アラニル-L-グルタミンを、等張液中に懸濁または溶解する段階;pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;および、得られた溶液を、微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階
を含み;
好ましくは、該方法が、
等張化剤を、注射用水において、好ましくは80~90度で、最も好ましくは85度で、撹拌して溶解させる段階;L-アラニル-L-グルタミンを加える段階;撹拌して溶解させる段階;注射用水を加える段階;pH調整剤を加えて、pHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;100度で煮沸して滅菌する段階;微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階;および、無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
を含み;
好ましくは、該方法が、
等張化剤、および静菌剤または抗菌剤を、注射用水において、好ましくは80~90度で、最も好ましくは85度で、順次撹拌して溶解させる段階;任意で、溶解後に撹拌しながら増粘剤を加え、そして溶解するまで撹拌し続ける段階;L-アラニル-L-グルタミンを加える段階;撹拌して溶解させる段階;注射用水を加える段階;pH調整剤を加えて、最終的なpHの値を5.0~9.0に、好ましくは6.0~8.0に、より好ましくは6.5~7.5に、最も好ましくは7.0に、調整する段階;100度で煮沸して滅菌する段階;微孔ろ過膜を用いてろ過して滅菌する段階;ならびに、無菌的な製造環境下で、滅菌された点眼瓶へと分注する段階
を含み;
好ましくは、微孔ろ過膜が、0.22μmの微孔ろ過膜である、
方法。
[本発明1008]
ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための眼科的製剤の調製における、本発明1001~1006のいずれかの薬学的組成物のいずれかの適用。
[本発明1009]
ドライアイ疾患に罹患した患者において、ドライアイ疾患の症状を緩和および/もしくは改善するための、ならびに/またはドライアイ疾患を治療するための方法であって、本発明1001~1006のいずれかの眼科的製剤を、前記患者に投与する段階を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、マウスにおける涙液分泌量の統計学的分析を示す。NSは正常群を表し、DS5はドライアイ群を表し、DS5 + ビヒクルは溶媒対照群を表し、そしてDS5 + AGは治療群を表す;* P < 0.05; ** P < 0.01; *** P < 0.001。
【
図2】
図2は、マウスにおける結膜杯細胞の数の統計学的分析を示す。NSは正常群を表し、DS5はドライアイ群を表し、DS5 + ビヒクルは溶媒対照群を表し、そしてDS5 + AGは治療群を表す;* P < 0.05 ; ** P < 0.01; *** P < 0.001。
【
図3】
図3は、マウスにおける角膜上皮の損傷の分析を示す。
図3Aは、マウス角膜のOGD染色の典型的な画像である。
図3Bは、マウス角膜のOGD染色の蛍光強度の統計である。NSは正常群を表し、DS5はドライアイ群を表し、DS5 + ビヒクルは溶媒対照群を表し、そしてDS5 + AGは治療群を表す;* P < 0.05; ** P < 0.01; *** P < 0.001。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本発明の技術的解決法は、以下において、実施例の形で詳述されるが、しかしながら、以下の実施例も調製例も、本発明の範囲を制限するものではない。
【0017】
別途特定される場合を除き、以下の実施例における実験方法は、慣用的な方法である。別途特定される場合を除き、以下の実施例において使用される原料および試薬材料等は、すべて市販品である。
【0018】
【0019】
2. 調製方法
塩化ナトリウムおよびヒドロキシ安息香酸エチルを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、撹拌しながらヒアルロン酸ナトリウムを加え、そして溶解するまで撹拌し続け、次にL-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5 ml/瓶として無菌的に分注する。
【0020】
【0021】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0022】
【0023】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0024】
【0025】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0026】
【0027】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0028】
【0029】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0030】
【0031】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0032】
【0033】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0034】
【0035】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0036】
【0037】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0038】
【0039】
2. 調製方法は、調製例1と同様である。
【0040】
【0041】
2. 調製方法
塩化カリウムおよび塩化ベンザルコニウムを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、撹拌しながらカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、そして溶解するまで撹拌し続け、次にL-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5 ml/瓶として無菌的に分注する。
【0042】
【0043】
2. 調製方法
塩化カリウムおよび臭化ベンザルコニウムを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、撹拌しながらカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、そして溶解するまで撹拌し続け、次にL-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5 ml/瓶として無菌的に分注する。
【0044】
【0045】
2. 調製方法
塩化ナトリウムおよびヒドロキシ安息香酸エチルを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、L-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5 ml/瓶として無菌的に分注する。
【0046】
【0047】
2. 調製方法
塩化ナトリウムを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、撹拌しながらヒアルロン酸ナトリウムを加え、そして溶解するまで撹拌し続け、次にL-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5ml/瓶として無菌的に分注する。
【0048】
【0049】
2. 調製方法
塩化ナトリウムを計量し、次に800 mLの注射用水(85度)を加え、そして撹拌して溶解させる。溶解後、L-アラニル-L-グルタミンを加え、そして撹拌して溶解させる。全量が1000 mLとなるまで注射用水を加え、次に水酸化ナトリウムを加えてpHの値を7.0に調整する。100度で30分間煮沸して滅菌し、次に0.22μmの微孔ろ過膜を用いてろ過し、そして滅菌された点眼瓶へと、5 ml/瓶として無菌的に分注する。
【実施例】
【0050】
実験例
動物実験方法:
(1) マウスにおけるドライアイ疾患モデルの確立、および群に分けられたその処置
10~12週齢の健康な雌のC57/BLマウスは、4つの群に無作為に分割された:正常群(NS)、ドライアイ群(DS5)、溶媒対照群(DS5 + ビヒクル)、および治療群(DS5 + AG)。
【0051】
ドライアイ疾患マウスモデルの確立方法:マウスは、乾燥環境(相対湿度:40%未満、温度:21~23度)において飼育され、そして臭化水素酸スコポラミンの皮下注射(0.5 mg/0.2 ml、連続した5日間にわたり、1日に4回、毎回200μl)を受けて、ドライアイ疾患マウスが成功裏に誘導された。
【0052】
正常群のマウスの処置方法:正常群は、正常なマウスを含んでいた。この群のマウスは、点眼処置はされなかった、そして21~23度の温度、および50~60%の相対湿度という、標準的な環境において飼育された。
【0053】
ドライアイ群のマウスの処置方法:ドライアイ群のドライアイ疾患マウスは、点眼処置は受けなかった、それらは、21~23度の温度、および40%未満の相対湿度という環境において飼育され、そして臭化水素酸スコポラミンの皮下注射(0.5 mg/0.2 ml、連続した5日間にわたり、1日に4回、毎回200μl)を受けた。
【0054】
溶媒対照群のマウスの処置方法:ドライアイ疾患マウスの眼部には、L-アラニル-L-グルタミンを含まない、本発明の製剤の溶媒が、滴下された(5日間の連続処置、毎回4時間の間隔で、1日に4回、毎回1滴)。マウスは、乾燥環境(相対湿度:40%未満、温度:21~23度)において飼育された。
【0055】
治療群のマウスの処置方法:ドライアイ疾患マウスの眼部には、調製例1~16において調製された眼科的製剤が、滴下された(5日間の連続処置、毎回4時間の間隔で、1日に4回、毎回1滴)。マウスは、乾燥環境(相対湿度:40%未満、温度:21~23度)において飼育された。
【0056】
実験中の動物の取り扱いは、科学技術部により発行された「実験動物の取り扱いに関する指導的意見」に従った。
【0057】
(2) 関連する指標の測定
各群におけるマウスの処置後、マウスは検査された。各検査は、同一人物によって実施され、かつ時間、場所、照明、および温度は、各検査で同一であった。
【0058】
涙液分泌量、角膜OGD染色、および結膜杯細胞の数は、各群のマウスにおいて分析された。
【0059】
[1] フェノールレッド綿糸法による、涙液分泌量の計測
マウスの涙液分泌量は、フェノールレッド綿(Zone-Quick; Lacrimedics, Eastsound, WA)によって計測された。スリットランプのもとで、フェノールレッド綿糸を、眼科用鉗子を用いて、マウスの外眼角の下結膜円蓋に置いた。15秒後、フェノールレッド綿糸の染色の長さを、ミリメートル定規で測定して、記録した。結果は、表1に示される。
【0060】
【0061】
[2] OGD染色による、角膜上皮のバリア機能の計測:
0.5μlのオレゴングリーン-デキストラン(OGD、50 mg/ml、分子量70,000;Invitrogen)をマウスの下結膜嚢に適用し、マウスを屠殺し、結膜を、1 mLの生理的食塩水を用いて洗浄し、その後、実体蛍光顕微鏡(AZ100, Nikon)のもとで、角膜上皮の蛍光染色を観察して、写真撮影した。角膜染色の蛍光強度を、NIS-elementソフトウェアを用いて、測定し、記録した。結果は、表2に示される。
【0062】
【0063】
[3] 杯細胞の数の測定:
目の組織標本を、10%ホルマリンを用いて固定して、パラフィン中に包埋し、そして薄切した。切片は、過ヨウ素酸シッフ(PAS)試薬を用いて染色された。Nikon Eclipse 50iを使用して画像を収集して、結膜杯細胞の数を計数した。結果は、表3に示される。
【0064】
【0065】
実験結果の分析:
加えて、上述の実験に関し、この発明はまた、
図1~3に示されるように、以下のように調製例1、9~11のデータを分析する:
【0066】
図1の結果は、ドライアイ群(DS5)中のマウスの涙液分泌は、ドライアイ疾患誘導後に顕著に低下したこと、3つの治療群の涙液分泌は、溶媒群のそれよりも、顕著に多かったこと、および1%のL-アラニル-L-グルタミン濃度(調製例1)で治療された治療群(DS5+1%AG)は、最も顕著な効果を有していたことを示した、*** P < 0.001。
【0067】
図2の結果は、ドライアイ群(DS5)中のマウスの結膜杯細胞の数は、ドライアイ疾患誘導後に顕著に低下したこと、3つの治療群の結膜杯細胞の数は、溶媒群のそれよりも、顕著に多かったこと、および1%の濃度の群(調製例1)は、最も顕著な効果を有していたことを示した、* P < 0.05。
【0068】
図3の結果は、ドライアイ群中のマウスの角膜におけるOGD染色は、ドライアイ疾患誘導後に明瞭であったこと、3つの治療群のOGD染色は、溶媒群のそれよりも、可視性が顕著に低下したこと、および1%の濃度の群(調製例1)は、最も顕著な効果を有していたことを示した、* P < 0.001。
【0069】
本明細書において記載される本発明は、特定の方法論にも、プロトコルにも、試薬にも、限定されるものではなく、これらは変更可能であることが、理解されるべきである。本明細書において提供される議論および実施例は、特定の態様を例示するために提示されるものであるが、本発明の範囲を限定することが意図されたものではなく、本発明は、請求の範囲によってのみ、特定される。