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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】サーバ、システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240112BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021078458
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172567
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 圭利
(72)【発明者】
【氏名】中西 優
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光洋
【審査官】山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/071072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信網を介して移動体と通信可能であり、配信サーバから移動体への情報配信を支援するサーバであって、
複数の移動体から取得した前記移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む複数の移動体情報を複数のグループに振り分ける振り分け処理部と、
前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を並列分散処理によって計算する複数の計算処理部と、
前記複数の計算処理部の並列分散処理によって計算された前記複数のグループの前記移動体間の離隔距離の計算結果が保持され定期的に更新される情報記憶部と、
情報配信を必要とするイベントが発生した移動体の識別情報と情報配信先情報の取得要求とを前記配信サーバから受信し、前記取得要求に応じて、前記情報記憶部に保持され定期的に更新されている前記移動体間の離隔距離の計算結果に基づいて、前記イベントが発生した移動体の周辺に位置する移動体を特定し、前記特定した移動体の識別情報を、前記情報配信先情報として前記配信サーバに送信する送受信部と、
を備えるサーバ。
【請求項2】
移動通信網を介して、移動体と通信可能なサーバであって、
複数の移動体から取得した複数の移動体情報を複数のグループに振り分ける振り分け処理部と、
前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を計算する複数の計算処理部と、
前記移動体間の離隔距離の計算結果が保持される情報記憶部と、
を備え、
前記振り分け処理部において、前記複数の移動体情報は、前記複数の移動体の種類ごとに前記複数のグループに振り分けられる、サーバ。
【請求項3】
請求項1又は2のサーバにおいて、
前記振り分け処理部において、前記複数の移動体情報は、前記複数の移動体が位置する地理的エリアごとに前記複数のグループに振り分けられる、サーバ。
【請求項4】
請求項2又は3のサーバにおいて、
前記移動体間の離隔距離の計算結果に基づく配信情報の取得要求を受信し、前記配信情報を送信する送受信部を備える、サーバ。
【請求項5】
請求項1又は4のサーバにおいて、
前記移動体間の距離の計算結果に基づいて情報配信の用途別に作成された情報配信先の移動体の識別情報を含む複数の宛先テーブルを保持している、サーバ。
【請求項6】
請求項1、4又は5のサーバにおいて、
前記送受信部は、前記移動体が前記サーバを介さない通信を行う相手の移動体に関する情報の取得要求をさらに受信し、前記相手の移動体に関する情報を送信する、サーバ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかのサーバにおいて、
前記情報記憶部は、前記複数のグループの数以上である複数設けられ、
前記複数の計算処理部のうち第1の計算処理部は、前記複数のグループに属する複数の移動体情報のうち、第1グループに属する複数の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を計算し、
前記第1の計算処理部における前記計算結果は、前記複数の情報記憶部のうち第1の情報記憶部に保持され、第2の情報記憶部には保持されない、サーバ。
【請求項8】
請求項7のサーバにおいて、
前記第1の情報記憶部に保持された前記計算結果における複数の移動体が属する前記グループは、前記第2の情報記憶部に保持された計算結果における複数の移動体が属するグループとは異なるグループである、サーバ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのサーバにおいて、
前記複数の計算処理部は、前記移動体の移動方向が互いに異なる複数の経路区画部分について、同一経路区画部分内における複数の移動体間の離隔距離と、異なる経路区画部分間における複数の移動体間の離隔距離とをそれぞれ計算する、サーバ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのサーバにおいて、
前記複数の移動体間の離隔距離の計算結果は、前記移動体の移動方向における移動体間の前後関係を識別可能な符号を含む、サーバ。
【請求項11】
移動通信網を介した配信サーバから移動体への情報配信を支援サーバにより支援する方法であって、
前記支援サーバが、複数の移動体から取得した前記移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む複数の移動体情報を、複数のグループに振り分けることと、
前記支援サーバが、前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を並列分散処理によって計算することと、
前記支援サーバが、前記並列分散処理によって計算された前記複数のグループの前記移動体間の離隔距離の計算結果を保持して定期的に更新することと、
前記支援サーバが、情報配信を必要とするイベントが発生した移動体の識別情報と情報配信先情報の取得要求とを前記配信サーバから受信し、前記取得要求に応じて、情報記憶部に保持され定期的に更新されている前記移動体間の離隔距離の計算結果に基づいて、前記イベントが発生した移動体の周辺に位置する移動体を特定し、前記特定した移動体の識別情報を、前記情報配信先情報として前記配信サーバに送信することと、
を含む、方法。
【請求項12】
移動通信網を介して移動体と通信可能であり配信サーバから移動体への情報配信を支援するサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
複数の移動体から取得した前記移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む複数の移動体情報を複数のグループに振り分けるためのプログラムコードと、
前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の識別情報、位置情報及び速度情報を含む移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を並列分散処理によって計算するためのプログラムコードと、
記並列分散処理によって計算された前記複数のグループの前記移動体間の離隔距離の計算結果を保持して定期的に更新するためのプログラムコードと、
情報配信を必要とするイベントが発生した移動体の識別情報と情報配信先情報の取得要求とを前記配信サーバから受信し、前記取得要求に応じて、情報記憶部に保持され定期的に更新されている前記移動体間の離隔距離の計算結果に基づいて、前記イベントが発生した移動体の周辺に位置する移動体を特定し、前記特定した移動体の識別情報を、前記情報配信先情報として前記配信サーバに送信するためのプログラムコードと、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に関する情報が配信される車両等の配信先を特定するサーバ、システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行している車両に事故や故障などのイベントが発生したときに、その車両の情報を、通信網を介した広域通信により周辺の車両に配信するシステムが知られている。また、特許文献1には、複数の車両において、それぞれが自身の位置情報をGPS受信情報等により求め、それに基づいて互いの相対位置を計算する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-170268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路上には多くの車両が走行しているため、車両間の距離(相対位置)を計算しようとすると計算量が膨大になり、しかも、その計算を短い時間周期(例えば1秒周期)で実行する必要があるため、配信対象を動的に特定するための計算の負荷が増大し、適切な情報配信先の移動体を迅速に特定することができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るサーバは、移動通信網を介して、移動体と通信可能なサーバである。このサーバは、複数の移動体から取得した複数の移動体情報を複数のグループに振り分ける振り分け処理部と、前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を計算する複数の計算処理部と、前記移動体間の離隔距離の計算結果が保持される情報記憶部と、を備える。
【0006】
前記サーバにおいて、前記振り分け処理部において、前記複数の移動体情報は、前記複数の移動体が位置する地理的エリアごとに前記複数のグループに振り分けられてもよい。
【0007】
前記サーバにおいて、前記振り分け処理部において、前記複数の移動体情報は、前記複数の移動体の種類ごとに前記複数のグループに振り分けられてもよい。
【0008】
前記サーバにおいて、前記情報記憶部は、前記複数のグループの数以上である複数設けられ、 前記複数の計算処理部のうち第1の計算処理部は、前記複数のグループに属する複数の移動体情報のうち、第1グループに属する複数の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離の計算し、前記第1の計算処理部における前記計算結果は、前記複数の情報記憶部のうち第1の情報記憶部に保持され、第2の情報記憶部には保持されなくてもよい。ここで、前記第1の情報記憶部に保持された前記計算結果における複数の移動体が属する前記グループは、前記第2の情報記憶部に保持された計算結果における複数の移動体が属するグループとは異なるグループであってもよい。
【0009】
前記サーバにおいて、前記複数の計算処理部は、前記移動体の移動方向が互いに異なる複数の経路区画部分について、同一経路区画部分内における複数の移動体間の離隔距離と、異なる経路区画部分間における複数の移動体間の離隔距離とをそれぞれ計算してもよい。
【0010】
前記サーバにおいて、前記複数の移動体間の離隔距離の計算結果は、前記移動体の移動方向における移動体間の前後関係を識別可能な符号を含んでもよい。
【0011】
前記サーバにおいて、前記移動体は、車両と、自転車及び歩行者の少なくとも一方を含んでもよい。
【0012】
前記サーバにおいて、前記移動体間の離隔距離の計算結果に基づく配信情報の取得要求を受信し、前記配信情報を送信する送受信部を備えてもよい。
【0013】
前記サーバにおいて、前記移動体間の距離の計算結果に基づいて情報配信の用途別に作成された情報配信先の移動体の識別情報を含む複数の宛先テーブルを保持してもよい。
【0014】
前記サーバにおいて、前記送受信部は、第1装置から前記取得要求を受信し、さらに、前記取得要求に含まれる前記配信情報の宛先が前記第1装置の場合は、前記配信情報を第1装置に送信し、前記取得要求に含まれる前記配信情報の宛先が第2装置の場合は、前記配信情報を第2装置に送信してもよい。
【0015】
前記サーバにおいて、前記送受信部は、前記移動体が前記サーバを介さない通信を行う相手の移動体に関する情報の取得要求をさらに受信し、前記相手の移動体に関する情報を送信してもよい。
【0016】
前記サーバは、移動通信網の基地局又は前記基地局とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置であってもよい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る方法は、移動通信網を介した情報配信を支援する方法である。この方法は、複数の移動体から取得した複数の移動体情報を複数のグループに振り分けることと、前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を計算することと、前記移動体間の離隔距離の計算結果を保持することと、を含む。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、移動通信網を介して、移動体と通信可能なサーバに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、複数の移動体から取得した複数の移動体の移動体情報を複数のグループに振り分けるためのプログラムコードと、前記複数のグループのそれぞれについて、前記グループに属する複数の移動体の移動体情報に基づいて前記移動体間の離隔距離を計算するためのプログラムコードと、前記移動体間の離隔距離の計算結果を保持するためのプログラムコードと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の移動体から取得した移動体情報を複数のグループに振り分け、同一グループに属する移動体間の離隔距離計算を、それぞれのグループで並行して分散的に行うことにより、すべての移動体間の離隔距離を計算する場合に比べ、計算量を軽減し、それによって計算時間の短縮、すなわち計算の高速化が可能となる。しかも、複数の移動体について移動体間の離隔距離を事前に計算し、その計算結果を記憶しておくことにより、所定の範囲内に位置する移動体に対して移動経路に関する情報配信が必要な場合に、当該範囲及び適切な情報配信先移動体を、当該計算結果を参照して迅速に特定することができる。従って、移動経路の所定の範囲内に位置する移動体に対して移動経路に関する情報配信が必要なとき、その配信先を特定するための計算処理負荷を抑制することにより計算を高速化し、さらにその計算結果を利用して、適切な情報配信先の移動体を迅速に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る情報配信システムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】道路上で車両事故などのイベントが発生したときの情報配信先の一例を示す説明図。
図3】イベント発生時の情報配信先の特定に用いる複数の車両について計算する車両間の離隔距離の一例を示す説明図。
図4】実施形態に係る支援サーバ及び配信サーバを含む配信システムの全体構成の一例を示す説明図。
図5】実施形態に係る支援サーバの機能・構成の一例を示す説明図。
図6】実施形態に係る情報配信システムの支援サーバにおける宛先テーブル更新処理の一例を示すフローチャート。
図7】(a)は2車線の道路に位置する移動体(車両、歩行者、自転車)の位置関係の一例を示す説明図。(b)及び(c)は車両情報のみを用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図。(d)及び(e)は車両情報のみを用いた反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図である。
図8】(a)及び(b)は車両情報、歩行者情報及び自転車情報を用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図。(c)は車両情報、歩行者情報及び自転車情報を用いた反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図である。
図9】(a)及び(b)は車両情報及び歩行者情報を用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図。(c)及び(d)は反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図である。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ、図7の各車線について計算した隔離距離の計算結果に基づいて作成した宛先テーブルの一例を示す説明図である。
図11】実施形態に係る情報配信システムにおける配信処理の一例を示すフローチャート。
図12図10の宛先テーブルに基づいて配信先車両IDを決定する過程の一例を示す説明図。
図13】(a)は2車線の道路に位置する車両の位置関係の他の例を示す説明図。(b)はマップマッチングを用いない場合の同一車線グループの車両間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図。(c)はマップマッチングを用いない場合の反対車線グループの車両間の離隔距離の計算結果の一例を示す説明図。
図14】車両の進行方向の判定例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るサーバは、道路又はその道路に隣接する側道等の隣接領域に位置する複数の車両、歩行者、自転車等の移動体から定期的に位置情報を含む移動体情報を取得し、取得した複数の移動体情報を複数のグループに振り分け、その複数のグループのそれぞれについて移動体間の離隔距離を分散処理で事前計算して記憶し、情報配信を必要とするイベントが発生したときに、上記記憶した計算結果に基づいて、適切な情報配信先の移動体を特定する情報配信支援サーバ(MEC装置)である。
【0022】
図1は、本実施形態に係る情報配信システムの全体構成の一例を示す説明図である。本実施形態の情報配信システムは、互いに通信することができる情報配信支援サーバ(以下「支援サーバ」という。)10及び情報配信サーバ(以下「配信サーバ」という。)11を備える。支援サーバ10及び配信サーバ11はそれぞれ、移動経路に位置する各種の移動体と間で基地局16を介した移動体通信(「Uu通信」又は「広域通信」ともいう。)を行うことができる。なお、本実施形態における移動経路は、道路90と、その道路90に隣接する側道などの隣接領域とを含む。
【0023】
支援サーバ10は、配信サーバ11による情報配信を支援するサーバであり、例えば移動通信網(セルラーネットワーク)15の基地局16に接続されて設けられたMEC(Multi-access Edge Computing)装置で構成される。これにより、支援サーバ10を、MEC装置とせず、セルラーネットワーク上の基地局から遠い位置に置かれたサーバとした場合と比較して、移動体との通信を低遅延化、高速化することができる。MEC装置からなる支援サーバ10は、基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノードや、コアネットワークの外側に設けてもよい。支援サーバ10は、道路90の車線91,92を走行している車両20の通信端末装置21と通信することにより、車両20の現在位置の位置情報を含む車両情報を取得することができる。また、支援サーバ10は、道路90の隣接領域である側道を移動したり、道路90を横断しようとして側道に位置する歩行者(以下、車椅子の運転者の場合も含む)30の通信端末装置31と通信することにより、歩行者30の現在位置の位置情報を含む歩行者情報を取得することができる。また、支援サーバ10は、道路90又はその隣接領域である側道を走行している自転車40の通信端末装置41と通信することにより、自転車40の現在位置の位置情報を含む自転車情報を取得することができる。
【0024】
配信サーバ11は、他の移動体に対して速やかな情報配信が必要となる事故、車両事故などのイベントが発生したときに、支援サーバ10から取得した配信宛先情報に基づいて、車両、歩行者、自転車等の移動体に情報を配信するサーバである。配信サーバ11は、図示のように移動通信網15に接続されて設けられてもよいし、又は、インターネットなどの外部の通信網に設けてもよい。また、配信サーバ11は、支援サーバ10と同様にMEC装置であってもよい。配信サーバ11は、車両20の通信端末装置21、歩行者30の通信端末装置31及び自転車40の通信端末装置41と通信することにより、車両20、歩行者30及び自転車40に対して情報を配信することができる。
【0025】
なお、支援サーバ10及び配信サーバ11はそれぞれ、単体のコンピュータ装置で構成してもよいし、複数のコンピュータ装置で構成してもよし、又は、通信網を介して互いに連携する複数のコンピュータ装置からなるクラウドコンピュータシステムで構成してもよい。また、支援サーバ10及び配信サーバ11は共通のサーバで一体構成してもよい。
【0026】
図1の例では、車両20が2台、歩行者30が1人、自転車40が1台の場合について示しているが、本発明は、車両が1台又は3台以上、歩行者が2人以上、及び、自転車が2台以上の場合にも適用可能であり、車両、歩行者、及び自転車の数は制限されない。また、車両20は、例えば乗用車、トラック、バスなどの3輪以上の自動車であり、本発明は車両の種類について制限はない。
【0027】
車両20は、電気自動車、燃料電池自動車、内燃機関と電動機の双方を有するハイブリッド車であってもよい。また、車両20は、当該車両が乗員又は乗客のために複数の席を有する場合、その最前列かつ最左端の席が運転席でない車両であってもよい。即ち、最前列かつ最右端の席のみが運転席である車両であってもよいし、そもそも運転席を有さない自動運転の車両であってもよい。
【0028】
基地局16は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局16は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局16は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-NodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0029】
車両20の通信端末装置21、歩行者30の通信端末装置21及び自転車40の通信端末装置41は、移動通信サービスの加入者として使用可能なユーザ装置(以下「UE」という。)である。UE21,31,41は、ユーザ端末、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。車両20のUE21は、利用者が携帯する装置を車両20に持ち込んで使用する装置でもよいし、車両20に組み込んで設置された装置(例えばナビゲーション装置の一部として組み込まれた装置)であってもよい。利用者が携帯する装置を使用する場合は、本発明における移動体の機能を有するアプリケーションソフトが当該装置に事前にインストールされ、実行可能な状態にされていることが望ましい。歩行者30のUE31は、歩行者30が携帯した状態で使用され、歩行者30と一緒に移動する。自転車40のUE41は、自転車40の運転者が携帯した状態又は自転車40に取り付けられた状態で使用され、自転車40と一緒に移動する。
【0030】
車両20のUE21は、基地局16を介して支援サーバ10及び配信サーバ11と通信可能であり、例えば支援サーバ10に対して車両情報を定期的に又は不定期に送信したり、配信サーバ11から定期的に又は不定期にイベント発生に関する情報の配信を受けたりすることができる。車両情報は、例えば、車両20(UE21)の現在位置(道路の場合は、位置する車線の情報を含む)を示す位置情報と、車両20(UE21)の速度と、車両識別情報(車両ID)とを含む。車両20の速度は、例えば、車両20の駆動制御装置やCAN(Controller Area Network)から取得することができる。車両20(UE21)の速度は、UE21に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)とに基づいて算出してもよい。ここで、車両20の「速度」は、車両20の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0031】
歩行者30のUE31は、基地局16を介して支援サーバ10及び配信サーバ11と通信可能であり、例えば支援サーバ10に対して歩行者情報を定期的に又は不定期に送信したり、配信サーバ11から定期的に又は不定期にイベント発生に関する情報の配信を受けたりすることができる。歩行者情報は、例えば、歩行者30(UE31)の現在位置を示す位置情報と、歩行者30(UE31)の平均歩行速度(平均移動速度)と、歩行者識別情報(利用者ID)とを含む。歩行者30の平均歩行速度は、例えば、UE31に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)とに基づいて算出することができる。ここで、歩行者30(UE31)の「速度」は、歩行者30(UE31)の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0032】
自転車40のUE41は、基地局16を介して支援サーバ10及び配信サーバ11と通信可能であり、例えば支援サーバ10に対して自転車情報を定期的に又は不定期に送信したり、配信サーバ11から定期的に又は不定期にイベント発生に関する情報の配信を受けたりすることができる。自転車情報は、例えば、自転車40(UE41)の現在位置を示す位置情報と、自転車40(UE41)の速度と、自転車識別情報(自転車ID又は利用者ID)とを含む。自転車40の速度は、例えば、UE41に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)とに基づいて算出することができる。ここで、自転車40(UE41)の「速度」は、自転車40(UE41)の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0033】
歩行者30(UE31)の現在位置を示す位置情報及び自転車40のUE41の現在位置を示す位置情報はそれぞれ、例えば、UE31及びUE41に設けたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力(測位結果)に基づいて算出することができる。また、UE31及びUE41はそれぞれ、GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つを備える。それら出力に基づいて、UE31及びUE41はそれぞれ、歩行者30及び自転車40にUE31及びUE41とは別に設けられたGNSS受信機による現在位置の測定精度が低い場合に歩行者30及び自転車40の移動経路を算出して歩行者30及び自転車40の現在位置を精度よく推定したり、歩行者30及び自転車40の姿勢や向いている方位を推定したりしてもよい。この推定結果は、支援サーバ10に送信する歩行者情報または自転車情報に含めてもよい。
【0034】
また、本実施形態の情報配信システムは、道路90の位置、形状、幅、車線91,92、信号設置位置、横断歩道の位置、中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無、工事情報、通行止め情報などの道路に関する情報を含む地図情報を管理する地図サーバ12を備えている。図1の例では、地図サーバ12は移動通信網15に接続されて設けているが、基地局16に設けられたMEC装置、又は基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノードに設けられたMEC装置で構成してもよい。また、地図サーバ12は支援サーバ10又は配信サーバ11と一体構成してもよい。
【0035】
図2は、道路90上で車両事故などのイベントが発生したときの情報配信先の一例を示す説明図である。図2において、ネットワーク(NW)側の支援サーバ及び配信サーバから、車両20、歩行者30、自転車40(本明細書では、車両との事故に遭遇した場合に、車両と比較してより被害が大きくなると予測されることから、歩行者30や自転車40を総称して、「交通弱者」という)へ情報を配信する。情報配信先は、特に安心安全観点では、何らかのイベント(例えば,事故や故障)が発生した車両20'(又は、交通弱者)の近傍に位置する車両20及び交通弱者(歩行者30や自転車40)である。この情報配信先の車両や交通弱者を特定する処理では、イベント発生の車両(又は、交通弱者)と周辺の車両及び交通弱者との離隔距離や、イベント発生の車両(又は、交通弱者)が移動する方向を基準にした周辺の車両及び交通弱者の相対方向などを算出し、その算出結果から、配信情報を受信する者(図中の領域D内に位置する車両20、歩行者30、自転車40)を特定するのが一般的である。
【0036】
図3は、イベント発生時の情報配信先の特定に用いる複数の車両について計算する車両間の離隔距離の一例を示す説明図である。図3において、例えば、故障や事故等のイベントが発生した車両20’の“周辺にいる車両”を特定するために、当該車両20’と、その周辺で同一車線91及び反対車線92のそれぞれを走行している複数の車両20との離隔距離を総当たりで計算する。各2点間の離隔距離を計算する計算量は、例えば車がN台の場合、N(N-1)/2組の離隔距離を計算する必要がある。例えば、N=10,000(レコード)であれば、約50×10組の計算を実行する必要がある。この計算を、イベント発生車両の周辺に位置する車両及び交通弱者が、当該イベントに関する情報を受信し、その情報に応じた行動(例えば回避)を余裕をもって取れるようにするために許容される時間(例えば1~2秒程度)で処理しようとした場合、単純見積りで一組あたり0.02~0.04μ秒で計算処理を終えなければならなく、現行の一般的なサーバのコンピューティング能力を鑑みると、より多くの台数を処理する性能であるスケーラビリティに課題がある。従って、一般的なサーバのコンピューティング能力で処理するには、Nの値をできる限り小さくし、イベント発生車両の周辺に位置する車両及び交通弱者が、当該イベントに関する情報を受信し、その情報に応じた行動を余裕をもって取れるようにしなければならない。
【0037】
そこで、本実施形態の支援サーバ10は、道路90に位置する複数の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)から取得した移動体情報(車両情報、歩行者情報、自転車情報)を複数のグループに振り分け、その複数のグループのそれぞれについて移動体間の離隔距離を分散処理で事前計算し、その計算結果を記憶している。
【0038】
例えば、本実施形態の一例においては、支援サーバ10が、“ある車両の近辺に存在する車両”を特定する計算は、計算量は多いものの比較的単純なためGPU(Graphics Processing Unit)等を用いて並列計算し、その計算結果(各車両の近辺にいる車両群)をメモリテーブルとして持つことで、"近辺に存在する車両"の検索及び配信先の特定を高速化する。
【0039】
また、本実施形態の他の例においては、移動通信網15のコアネットワーク(例えば、第5世代の5GC)が、上記計算処理を実行する支援サーバ10に対して車両20(UE21)の位置を伝え、支援サーバ10が計算する前に計算対象のデータを地域別に、移動体の種類別に、又は、地域及び移動体の種類別にグルーピングしてデータベースとしておくことで、支援サーバ10によるデータベースのアクセス時間を短縮またはアクセス回数を減少させ(地理的領域に紐づくデータベースをスケールアウトさせ)、上記計算回数を減らす。
【0040】
また、本実施形態の更に他の例においては、配信処理における配信サーバ11の負荷を軽減するために、支援サーバ10または配信サーバ11の主な機能とは別に、特定のハードウェアを設けてもよい。例えば、上記計算で特定された配信対象グループをプログラマブルなレイヤ3スイッチ(L3スイッチ)に入力し、従来の配信サーバのアプリケーション層で実行していた処理をL3レイヤへ代行(オフロード)させてもよい。ここで、L3スイッチは、例えば移動通信網15のコアネットワークと基地局16との間に設けられ、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルのネットワーク層(レイヤ3)においてIPパケットを転送する機能を持つネットワークスイッチである。L3スイッチは、ホワイトボックススイッチとも呼ばれる。
【0041】
図4は、実施形態に係る支援サーバ10及び配信サーバ11を含む配信システムの全体構成の一例を示す説明図である。図4において、本実施形態の配信システムのうち支援サーバ10は、振り分け処理部101と、複数の振り分けデータ格納部(データベース、DB)102と、複数の計算処理部103と、過去データ格納部(データベース、DB)104と、複数の宛先テーブル保持部105と、制御部108を備える。
【0042】
振り分け処理部101は、移動通信網15の複数の基地局16A~16Cのセル160A~160Cのそれぞれに在圏する移動体(車両20、歩行者30、自転車40)の移動体情報を、UPF(User Plane Function)151及びホワイトボックススイッチ(L3スイッチ)152を介して取得する。移動体情報は、例えば、車両情報(車両ID、GNSS位置情報、速度情報)、歩行者情報(歩行者ID、GNSS位置情報、速度情報)、自転車情報(自転車ID、GNSS情報、速度情報)等である。
【0043】
振り分け処理部101は、移動通信網15のコアネットワークからNEF(Network Exposure Function)153を介して、各移動体(車両20、歩行者30、自転車40)のUE21,31,41のIDと、UE21,31,41の地域情報(ここでは、各UEが160A~160Cのどのセルに在圏するかという情報)とを取得する。なお、UEのIDと、UEの地域情報とが、予め紐づけられた状態で取得してもよい。そして、振り分け処理部101は、UPF151及びホワイトボックススイッチ152を介して得た各移動体のIDと、NEF153を介して得た各移動体のIDとを照合し、同一の移動体について、ID、GNSS位置情報、速度情報、地域情報等を紐づける。
【0044】
更に、振り分け処理部101は、それらの複数の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)について紐づけられた各情報を所定の振り分けルールに従って、複数のグループに振り分ける。振り分けルールは、例えば、地域情報が示す特定エリアや、移動体種類(車両、歩行者、自転車等)、またはそれらの組み合わせによって定められる。例えば、振り分け処理部101において、前記複数の移動体情報は、複数の移動体が位置する地理的エリアごとに複数のグループに振り分けられてもよい。また、振り分け処理部101において、前記複数の移動体情報は、前記複数の移動体の種類ごとに前記複数のグループに振り分けられてもよい。
【0045】
振り分け処理部101は、前述のNEF153からの情報収集、UPF151及びホワイトボックススイッチ152からの情報収集、同一の移動体についての情報の紐づけ、紐づけられた各情報の振り分け処理を、例えばそれぞれ所定の周期で定期的に行う。
【0046】
複数の振り分けデータ格納部(DB)102は、振り分け処理部101で振り分けられた移動体情報(ID、GNSS位置情報、速度情報、地域情報)をグループごとに格納する。
【0047】
複数の計算処理部103は、複数の振り分けデータ格納部(DB)102を参照し、複数のグループのそれぞれについて、グループに属する複数の移動体情報(ID、GNSS位置情報、速度情報、地域情報)に基づいて移動体間の離隔距離を並列処理によって計算し、移動体間の離隔距離の計算結果を図示しないメモリに一時的に保持する。複数の計算処理部103は、移動体間の離隔距離の計算及び保持の処理を、例えば所定の周期(例えば、3~4秒)で定期的に行う。離隔距離は、例えば、得られた2つのGNSS位置情報に基づき、2地点間の直線距離でもよいし、2地点をそれぞれ地図上にマップマッチングした上で示される道路距離でもよい。
【0048】
複数の計算処理部103は、移動体間の離隔距離の計算の前に、過去データ格納部(DB)104に格納されている過去計算時の移動体間の離隔距離の計算結果のデータ、地図サーバ12のマップマッチング用地図データ、交通情報格納部13の渋滞等の発生位置データ(外部情報)、又はそれらの複数を参照してもよい。
【0049】
地図サーバ12のマップマッチング用地図データは、上述のマップマッチング用途に使われるものである。また、交通情報格納部の渋滞等発生位置データは、後述するアプリケーション部111が把握するイベント発生車両の位置情報とは別に、渋滞情報や交通規制情報等を提供する他のサービスを利用することにより得られるものである。例えば、2点間の離隔距離計算において、うち1点の位置を、渋滞等発生位置データが示す位置とすることで、イベント配信を受ける移動体(ユーザ)により役立つ情報を提供することができる。
【0050】
さらに、過去データ格納部(DB)104は、計算処理部103が行った過去の離隔距離計算結果や、過去の離隔距離計算で用いた各移動体の位置情報(マップマッチング結果を含む)が格納されたものである。計算処理部103は、過去データ格納部(DB)104に格納された各種情報を参照することにより、例えば、計算対象の移動体が直前に位置した場所や、直前に計算された周辺移動体との距離をより迅速に把握することができ、計算全体をさらに高速化させることができる。
【0051】
複数の宛先テーブル保持部(情報記憶部)105は、複数の計算処理部103で計算された移動体間の距離の計算結果を情報配信先の移動体の識別情報(例えば、車両ID、歩行者ID、自転車ID)を含む複数の宛先テーブルとして保持する。この識別情報は、例えば、PF151及びホワイトボックススイッチ152を介して得た各移動体のIDや、NEF153を介して得た各移動体のIDを、そのまま用いてもよい。
【0052】
宛先テーブル保持部105は、前記複数のグループの数以上である複数設けられている。 前記複数の計算処理部103のうち第1の計算処理部は、複数のグループに属する複数の移動体情報のうち、第1グループに属する複数の移動体情報に基づいて移動体間の離隔距離の計算し、前記第1の計算処理部における計算結果は、複数の宛先テーブル保持部105のうち第1の宛先テーブル保持部105に保持され、第2の宛先テーブル保持部105には保持されなくてもよい。ここで、第1の宛先テーブル保持部105に保持された計算結果における複数の移動体が属するグループは、第2の宛先テーブル保持部105に保持された計算結果における複数の移動体が属するグループとは異なるグループであってもよい。
【0053】
制御部108は、支援サーバ10全体を制御する。例えば、計算処理部103が計算を開始するために、振り分けデータ格納部102に移動体情報が格納されたことを計算処理部103に通知する等、上記で説明した各部が連携してその各機能を効率よく発揮するための制御を行う。
【0054】
配信サーバ11は、複数のアプリケーションソフト(以下「アプリケーション」ともいう。)を選択的に実行可能なアプリケーション部111と、情報配信処理を実行する情報配信部112とを備える。アプリケーション部111は、アプリケーションソフトの実行内容に応じて、故障、事故などのイベントが発生した移動体の識別情報(例えば車両ID)、当該イベントの発生位置の情報、当該イベントの発生位置の周辺に位置する情報配信先の情報を含む各情報の要求(配信IDリクエスト)を、支援サーバ10に送信する。そして、アプリケーション部111は、配信IDリクエストに対する応答として、故障、事故などのイベントが発生した移動体の識別情報、上記イベントの発生位置の情報、上記イベントが発生した位置の周辺に位置する移動体の識別情報(例えば、車両ID、歩行者ID、自転車ID)を支援サーバ10から受信する。情報配信部112は、例えば、MQTT(MQ Telemetry Transport) broker等の所定のメッセージングプロトコルを用いて、支援サーバ10から受信した移動体の識別情報(例えば、車両ID、歩行者ID、自転車ID)に対応する車両20のUE21、歩行者30のUE31、自転車のUE41に情報を配信する。配信を受けた各UEは、各UEに備わった画面表示又は音声の手段により、当該配信情報を車両の乗員、歩行者、自転車の運転者へ通知する。
【0055】
また、配信サーバ11は、上述の情報配信の一部をホワイトボックススイッチ(L3スイッチ)152に行わせるため、NW折り返し配信リクエストを支援サーバ10に送信することもできる。NW折り返し配信は、上述の情報配信を受けた移動体(車両20、歩行者30、自転車40)が、事前に特定された移動体に対して、配信された情報を転送するものである。具体的には、転送元移動体のIPアドレスと、転送先移動体のIPアドレスを予めポリシーと呼ばれるルールに基づいて紐づけておき、転送元移動体が上述の情報配信を受けた場合に、その紐づけに従って転送先移動体に情報が自動転送される。
【0056】
図5は、実施形態に係る支援サーバ10の機能・構成の一例を示す説明図である。なお、図5において、前述の図4と共通する部分について説明を省略する。
【0057】
図5において、移動通信網15のコアネットワーク150からNEF153を介して受信されたUEのIDと地域情報は、各移動体(車両20、歩行者30、自転車40)のUE21,31,41のIDと地域情報とが紐付いたテーブル106として保持され、振り分け処理部101から任意のタイミングで参照される。振り分け処理部101は、UPF151及びホワイトボックススイッチ152を介して得た各移動体のIDと、テーブル106に保持された各移動体のIDを照合し、同一の移動体について上述の紐づけを行う。
【0058】
複数の振り分けデータ格納部(DB)102は、複数の地域エリアA,B,C,・・・及び移動体の複数の属性である移動体種類(車両、歩行者、自転車、・・・)について、地域エリア別に且つ属性別にDBがスケールアウトされて形成されている。これにより、振り分け処理部101から振り分けデータ格納部(DB)102へのアクセス時間、アクセス回数と、後段の計算処理部103(103A,103B,・・・)の計算の負荷とを削減することができる。なお、地域エリアA,B,Cは、例えば、上述の複数の基地局の各セル160A、160B、160Cという地理的なエリアに対応する。上記のDBは、地域エリアと移動体種類に加えて、さらにその移動体が位置する道路の属性(高速道路、自動車専用道路、一般道、歩行者・自転車専用道等)別や、交通事情(一方通行、速度制限あり、通行止め等)別に分かれたDBとしてもよい。
【0059】
また、図5において、複数の計算処理部103は、地域エリアA,B,C,・・・及び移動体種類(車両、歩行者、自転車、・・・)が異なる複数のグループに対応させて、地域エリアごとに且つ属性ごとに設けられている。例えば、地域エリアAについて3種類の移動体種類(車両、歩行者、自転車)に対応する3つの計算処理部103Aが設けている。また、地域エリアB、・・・以降の地域エリアについても3種類の移動体種類(車両、歩行者、自転車)に対応する3つの計算処理部103Bが設けている。このように地域エリアごとに且つ属性ごとに計算処理部103を設け、地域エリアごとに且つ属性ごとに移動体間の離隔距離を並列処理によって計算することにより、対象の道路に位置するN個のすべての移動体について移動体間の離隔距離を計算する場合の計算量オーダーO(N2)を大幅に削減することができる。従って、一般的なサーバコンピュータであっても、そのスケーラビリティを確保することができるので、高性能なサーバコンピュータを要さずに、イベント発生の移動体周辺に位置する他の移動体に対して、迅速に情報配信を行うことができる
【0060】
また、図5において、複数の宛先テーブル保持部105は、複数の計算処理部103で計算された移動体間の距離の計算結果に基づいて定期的(例えば3~4秒ごと)に更新され、イベントが発生した移動体の進行方向後方に位置する移動体に配信する後方配信、イベントが発生した移動体の進行方向前方に位置する移動体に配信する前方配信、移動体の属性(種類)別などの情報配信の用途別に、情報配信先の移動体の識別情報(例えば、車両ID、歩行者ID、自転車ID、MQTT Topic名)を含む複数の宛先テーブルを作成して保持している。このように用途別に作成されて保持された複数の宛先テーブルの検索処理の計算量オーダーはO(logN)になるので、前述のスケーラビリティをさらに確保することができる。
【0061】
また、図5において、支援サーバ10は、外部インターフェース部(送受信部)としてのAPI(Application Programming Interface)107を備えている。API107は、情報配信を必要とするイベントの発生位置情報又は識別情報(例えばイベントが発生した車両ID)とともに情報配信宛先情報の取得要求を、配信サーバ11等から受信する。そして、API107は、前記取得要求に応じて、イベントの発生位置の周辺に位置する移動体の識別情報(例えば、車両ID、歩行者ID、自転車ID)を情報配信宛先情報として、配信サーバ11等に返信する。
【0062】
図6は、実施形態に係る情報配信システムの支援サーバ10における宛先テーブル更新処理の一例を示すフローチャートである。図6におけるS11~S16の処理は、イベントの発生に関係なく、所定の周期(例えば、50、60、70、80、. . . .970、980、990、1000[msec]。ここで例示したいずれか2つの数値の間の値であってもよい)で実行される。
【0063】
S11:支援サーバ10内の振り分け処理部101は、基地局16A~16C、コアネットワーク(5GC)150及びNEF153を経由して、各移動体のID(I1)と、当該IDの地域情報(当該IDがどのセルに在圏するかの情報)(I2)とを取得する。更に、振り分け処理部101は、基地局16A~16C、UPF151及びホワイトボックススイッチ152を経由して、各移動体のID(I3)と、当該IDのGNSS位置情報(I4)と、当該IDの速度情報(I5)とを取得する。
S12:支援サーバ10内の振り分け処理部101は、上記S11で得たI1~I5の情報について、各移動体のID(I1,I3)を照合することにより、同一移動体についてI2~I5の情報を紐づける。
S13:支援サーバ10内の振り分け処理部101は、上記S12で紐づけた結果を、所定の振り分けルールに従って複数のグループに振り分け、グループごとに振り分けデータ格納部102に格納する。
S14:支援サーバ10内の計算処理部103は、制御部108から、振り分けデータ格納部102にデータが格納されたことが通知されると、グループごとに分かれた振り分けデータ格納部102を参照して、グループ内の各移動体について移動体間の距離を計算する。計算の際に、外部地図データを参照して、実際の道路距離を計算してもよい。
S15:支援サーバ10の制御部108は、上記S14の計算結果を、グループごとに宛先テーブル保持部105にテーブル形式で保存する。
S16:支援サーバ10の制御部108は、上記S11~S15の処理を周期的に繰り返す目的で、振り分け処理部101に上記S11の各種情報の取得を再度指示する。
【0064】
図7(a)は、進行方向が右側の車線91と、進行方向が左側の車線92を有する道路90に位置する移動体(車両、歩行者、自転車)の位置関係の一例を示す。図7(b)及び(c)は車両情報のみを用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果例を示し、図7(d)及び(e)は車両情報のみを用いた反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果例を示している。図7(b)~(e)に示される計算結果は、それぞれ、前述した宛先テーブル保持部105に保持された宛先テーブルの一例となる。(以下の図8~10、12、13においても同様)。
【0065】
なお、図7(a)~(e)における識別記号(V0,V1,B2,P4,V5,P6,V7,B8,V9)は実施形態の説明のために付したものであり、前述の宛先テーブルでは各識別記号に対応する移動体ID(車両ID,歩行者ID,自転車ID)が保持される。当該識別記号中の「V」、「P」及び「B」はそれぞれ車両、歩行者及び自転車を示し、識別記号中の数字は各車線における移動方向に従って位置の順番を示している(以下の図8図10図12図13においても同様)。
【0066】
図7(a)において、例えば、車線91における車両V3が事故を起こした(イベントが発生した)場合、その情報の配信がより求められる車両は、イベント発生時において車両V3とより近い位置にいる車両V5やV7ではなく、車両V3と同一の進行方向である車線91上の後続のV0、V1である。なぜなら、車両V5、V7は、イベント発生時において車両V3との距離が車両V0やV1に比べて短かったとしても、進行方向が異なる反対車線92に位置しているので、イベントの発生後、車両V3から離れて行くことが想定され、配信を受けた後にイベントを回避するための行動を取る必要性が低いからである。従って、道路90に位置する全ての移動体の距離を1つのテーブルにまとめるのではなく、進行方向が異なる車線別にテーブルを設けると、イベント情報の配信先特定の精度が向上し、イベント情報を不要とする移動体には配信しないので、支援サーバ10、配信サーバ11の負荷も削減することができる。
【0067】
一方で、道路に隣接する側道は進行方向が定められていない場合があるため、側道に位置する歩行者、又は道路上に位置しても側道に進路変更する可能性がある自転車は、仮にイベント発生時に車両V3から離れて行く方向に移動していたとしても、その後すぐに、側道において進行方向を変更したり、側道を出て道路を横断したり可能性が考えられる。従って、歩行者及び自転車を含めたテーブルを作成する場合は、その進行方向を考慮してもよいが、敢えて考慮せずに作成してもよい。
【0068】
図7において移動体間の相対距離(離隔距離)を計算する隣接特定計算は、例えば次のS21~S25の手順で行う。この隣接特定計算は、前述した計算処理部103において行われる。
S21:ある地域に関する車両データDB102から、車両ID、位置及び速度の車両データを読み出す。
S22:各車両の最新のデータをマップマッチングし、マップマッチングして得られるリンク情報などから車線91,92と進行方向を特定する。マップマッチング処理速度の向上のため、過去に計算したマップマッチング結果の位置情報を、過去データ格納部(DB)104から読み出し、地図サーバ12においてその位置情報を基に近辺の地図データを検索する。最新のデータについてマップマッチングが完了したら、計算処理部103内の図示しない一時メモリ及び過去データ格納部(DB)104に結果を保存する。
S23:各車両データについて、車線毎にグルーピングする。
S24:同一車線グループの各車両の相対距離と、反対車線グループの各車両の相対距離とをそれぞれ算出する。
S25:上記S24の計算で、もし相対距離を計算する相手の車両が自車両の進行方向後方に位置していれば、相対距離にマイナス(-)を乗じて、結果を保存する。
【0069】
図8(a)~(c)は、図7(a)の位置関係において、他の計算結果例を示す。図8(a)及び(b)は車両情報、歩行者情報及び自転車情報を用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果例を示し、図8(c)は車両情報、歩行者情報及び自転車情報を用いた反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算結果例を示している。
【0070】
図8において移動体間の相対距離(離隔距離)を計算する隣接特定計算は、例えば次のS31~S35の手順で行う。この隣接特定計算は、前述した計算処理部103において行われる。
S31:ある地域に関する車両データDB102から、車両ID、位置及び速度の車両データを読み出し、歩行者データDB102から、歩行者ID、位置及び速度の歩行者データを読み出し、自転車データDB102から、自転車ID、位置及び速度の自転車データを読み出す。
S32:各車両及び各自転車の最新のデータをマップマッチングし、マップマッチングして得られるリンク情報などから車線91,92と進行方向を特定する。マップマッチング処理速度の向上のため、過去に計算したマップマッチング結果の位置情報を、過去データ格納部(DB)104から読み出し、地図サーバ12においてその位置情報を基に近辺の地図データを検索する。最新のデータについてマップマッチングが完了したら、計算処理部103内の図示しない一時メモリ及び過去データ格納部(DB)104に結果を保存する。
S33:各車両データ、各歩行者データ及び各自転車データについて、車線毎にグルーピングする。
S34:同一車線グループの各移動体間の相対距離と、反対車線グループの各移動体の相対距離とをそれぞれ算出する。
S35:上記S24の計算で、もし相対距離を計算する相手が自身の進行方向後方に位置していれば、相対距離にマイナス(-)を乗じて、結果を保存する。
【0071】
図9(a)~(d)は、図7(a)の位置関係において、他の計算結果例を示す。図9(a)及び(b)は車両情報及び歩行者情報を用いた同一車線グループの移動体間の離隔距離の計算例を示し、図9(c)及び(d)は車両情報及び歩行者情報を用いた反対車線グループの移動体間の離隔距離の計算例を示している。
【0072】
図9において移動体間の相対距離(離隔距離)を計算する隣接特定計算は、例えば次のS41~S45の手順で行う。
S41:ある地域に関する車両データDB102から車両情報としての車両ID、位置及び速度の車両データを読み出し、歩行者データDB102から歩行者情報としての歩行者ID、位置及び速度の歩行者データを読み出す。
S42:各車両の最新のデータをマップマッチングし、マップマッチングして得られるリンク情報などから車線91,92と進行方向を特定する。マップマッチング処理速度の向上のため、過去に計算したマップマッチング結果の位置の近辺の地図データから検索する。最新のデータについてマップマッチングが完了したら、一時メモリに結果を保存する。
S43:各車両データ及び各歩行者データについて、車線毎にグルーピングする。
S44:同一車線グループの各移動体間の相対距離と、反対車線グループの各移動体間の相対距離を算出する。
S45:上記S44の計算で、もし相対距離を計算する相手が自身の後方に位置していれば、相対距離にマイナス(-)を乗じて、結果を保存する。
【0073】
図10(a)は、図8の一方の車線91について計算した隔離距離の計算結果に基づいて作成した宛先テーブルの一例を示す説明図である。図10(b)は、図8の他方の車線92について計算した隔離距離の計算結果に基づいて作成した宛先テーブルの一例を示す説明図である。前述の図8(a)及び(b)のテ-ブルを宛先テーブルとして用いることができる。図10(a)及び(b)のそれぞれにおいて枠で囲んだ各行が、車線91,92それぞれにおける車両Vx、歩行者Px及び自転車Bxについての配信宛先IDの候補となる。
【0074】
図11は、実施形態に係る情報配信システムにおける配信処理の一例を示すフローチャートである。図11において配信処理はS51~S55の手順で実行される。
S51:《イベント発生前》配信サーバ11内の所定のアプリケーションは、UPF151及びホワイトボックススイッチ152を経て、車両20とアプリケーションに基づく情報の送受信を行っている。その情報送受信には、配信サーバ11が車両20から受信する情報に車両IDが含まれる。
S52:《イベント発生》イベントが発生した車両20は、配信サーバ11内のアプリケーションに対して、上記S51で送信する車両IDに加えて、自車両からイベントが発生した旨の情報を追加し送信する。配信サーバ11内のアプリケーションは、当該イベントが発生した車両20からの情報を受信する。
S53:《イベント発生後》配信サーバ11のアプリケーションは、上記S52で受信した、イベントが発生した旨の情報を追加し送信してきた車両の車両IDを、支援サーバ10に送信し、同時に、支援サーバ10に対して、当該車両IDの周辺車両IDを配信サーバ11に送信するよう要求する。(ここでいう「周辺」は配信サーバ11のアプリケーションが独自に指定した範囲で、例えば、「イベント発生車両と同一車線上でイベント発生車両の後方100m以内にいる車両」のように指定される)
S54:支援サーバ10は、上記S53の要求に基づいて、指定された周辺車両IDを前述の図6の支援サーバ10における宛先テーブルの更新処理で準備していた宛先テーブル保持部105から制御部108が検索し、対象の周辺車両IDを配信サーバ11に送信する。
S55:配信サーバ11のアプリケーションは、上記S54で得た周辺車両IDに対して、イベントが発生した車両が周辺に存在する旨を通知する。
【0075】
なお、上記図11のS53において配信対象の移動体に関する条件は「イベント発生車両と同一車線上でイベント発生車両の後方100m以内にいる車両」のように指定されるが、当該条件を満たさない特定の移動体に対して、例外的に配信を行いたい場合がある。例えば、複数車両が集団で隊列走行等を行っている場合、集団内のある車両が事故を起こし、上記の条件に基づいて、その後方の車両に対しては事故情報の配信が行われたとしても、集団内の事故車よりも前方の車両はその配信を受けることができない。そのような場合に備えて、配信サーバ11のアプリケーション部111で実行されているアプリケーションは、ある移動体で起きたイベントは、他の特定の移動体に対して、当該他の特定の移動体の位置等に関係なく、必ず配信するよう支援サーバ(第1装置)10に要求(NW折り返し配信要求)することができる。
【0076】
具体的には、集団で走行する複数車両は、まず集団を構成するそれぞれの車両のID及びIPアドレスをポリシー情報としてまとめ、NEF153又はUPF151を経て事前に支援サーバ10に通知しておく。そして、配信サーバ11が、その集団を構成する車両の1台からイベントが発生した旨の情報を受け取ると、支援サーバ10に対して、イベント発生車両ID、及びその周辺車両IDを配信サーバ11に送信する要求と共に、通常配信の条件を満たさない特定車両にもイベントを配信するようNW折り返し配信要求を行う。NW折り返し配信要求を受けた支援サーバ10は、前述のポリシー情報を参照し、イベント発生車両のIPアドレス、配信先となる同集団内の他の車両のIPアドレス、及び配信サーバ11から受信したイベント情報をホワイトボックススイッチ(第2装置)152に送信する。ホワイトボックススイッチ152は、受信した各IPアドレスに従って、イベント情報の送信を行う。
【0077】
また、上記図11のS55において、配信サーバ11から配信を受けた移動体は、その後、イベント発生の移動体や、自身の周辺に位置する移動体(既に配信サーバ11から配信を受けた移動体も含む)と直接無線通信方式による通信を行うこともできる。具体的には、配信を受けた移動体が、通信を行いたい相手の移動体条件(相手の位置は自身から見て前後左右のどの方向か、相手は車両か歩行者か等)を支援サーバ10に送信し、支援サーバ10が宛先テーブル保持部105の宛先テーブルを参照して当該条件を満たす移動体IDを特定し、配信を受けた移動体に返信する。配信を受けた移動体は、返信された移動体IDに対して、直接通信を試みる。
これにより、例えば、配信サーバ11からイベント情報の配信を受けた移動体が、そのイベントに応じてどのような行動を取るかを周辺の移動体に直接通知することができ、二次的な事故を回避することができる。
【0078】
図12は、図10の宛先テーブルに基づいて、配信先車両IDを決定する過程の一例を示す説明図である。支援サーバ10は、外部アプリケーションから、例えば、イベント発生IDとしての車両V3の車両IDと、配信範囲(20m)と、配信方向(後方)とを受信すると、まず車両IDにもとづき、図12の枠で囲んだ車両及び自転車の各識別情報(車両ID、自転車ID)を配信先候補とする。この候補のうち、さらに配信範囲20mかつ後方の方向の条件を満たす移動体の識別情報を検索し、車両V1の車両ID及び自転車B2の自転車IDに決定される。なお、外部アプリケーションが示す条件に応じて、各テーブルから対象となる配信先候補を抽出するが、イベントが発生した移動体そのものは配信先から除かれる。
【0079】
図13(a)は2車線の道路に位置する車両の位置関係の他の例を示し、図13(b)はマップマッチングを用いない場合の同一車線グループの車両間の離隔距離の計算結果の一例を示し、図13(c)はマップマッチングを用いない場合の反対車線グループの車両間の離隔距離の計算結果の一例を示している。
【0080】
図13において車両間の相対距離(離隔距離)を計算する隣接特定計算は、計算処理部103において、例えば次のS61~S64の手順で行う。
S61:各車両の現在の位置データと、過去データ格納部(DB)104に格納された過去の当該車両の位置データとの差分から進行方向ベクトルを算出する。
S62:各車両間の進行方向ベクトルのなす角度が例えば120度以下であれば同一進行方向と判定し、上記角度が120度よりも大きい場合は反対進行方向と判定する。例えば、図14の枠W1で囲んだエリアを走行している2台の車両は上記角度が90度であるので同一進行方向と判定し、図14の枠W2で囲んだエリアを走行している2台の車両は上記角度が0度であるので同一進行方向と判定する。一方、図14の枠W3で囲んだエリアを走行している2台の車両は上記角度が180度であるので反対進行方向と判定する。
S63:同一進行方向であれば、どの車両がより前方に位置するか判定する。前方に位置している車両については、車両間の相対距離(離隔距離)を算出して結果を保存する。後方に位置している車両については、車両間の相対距離(離隔距離)を算出し、その算出値にマイナス(-)を乗じて、結果を保存する。
S64:計算の対象になっているすべての車両データについて、上記S52及びS53を繰り返す。
なお、上記S62において、進行方向が同一か反対かを判定するための基準となる角度は120度に限定されるものではなく、任意に設定される。例えば、当該複数の車両がらせん状の道路上に位置するとの情報を支援サーバ10が得た場合は、各車両の進行方向ベクトルのなす角度が120度より大きい場合でも、同一進行方向と判定することができる。
以上、何らかの原因で地図データにアクセスできず、マップマッチングを行うことができない場合でも、上記の方法により、離隔距離の計算を行い、マップマッチングを行った場合と同様の計算結果を得ることができる。
【0081】
以上、本実施形態によれば、複数の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)が位置する道路90において情報配信を必要とするイベントが発生したときの情報配信先の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)を特定する計算処理の負荷を抑制でき、適切な情報配信先の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)を迅速に特定することができる。また、情報配信対象の移動体(車両20、歩行者30、自転車40)の数が増加したときにも対応可能である。
また、本実施形態においては、イベントが移動体の事故または故障である例を示したが、車両において、例えば右折の方向指示器が操作されたことをイベントとして検知してもよい。これにより、例えば交差点を右折する場合や、合流車線から本線へ合流する場合等に、周辺の移動体に対して自車がこれから右側へ移動することを迅速に通知することができる。従って、通知を受けた移動体がそれに応じた行動を余裕をもって取ることが可能となるので、接触事故等を回避できる可能性が高まる。
【0082】
また、本発明では、少なくとも支援サーバと各移動体を繋ぐ通信手段として、既に十分に普及し、カバーするエリアも広い移動通信網を利用するので、少なくとも移動体及び基地局に備えられる通信設備は、既存設備の利用で十分な効果が期待できる。従って、DSSS(Driving Safety Support Systems)、ITS Connect(Intelligent Transport Systems Connect)、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)、ETC 2.0(Electronic Toll Collection System 2.0)等、路上設備と移動体との通信を実現するために大規模投資が新たに必要となる通信手段と比較して、発明の実施が比較的容易である。
【0083】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0084】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0085】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。なお、上述した複数の宛先テーブル保持部105は、例えばRAMの半導体チップを複数設けることにより実現してもよいし、同一のRAMの半導体チップにおいて、複数のバンク(区画)を設けることにより実現してもよい。
【0086】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0087】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0088】
10 :支援サーバ
11 :配信サーバ
12 :地図サーバ
13 :交通情報格納部
15 :移動通信網
16(16A~16C) :基地局
20 :車両
21 :通信端末装置(UE)
30 :歩行者
31 :通信端末装置(UE)
40 :自転車
41 :通信端末装置(UE)
90 :道路
91,92 :同一車線
101 :振り分け処理部
102 :歩行者データDB
102 :自転車データDB
102 :車両データDB
103 :計算処理部
103A :計算処理部
103B :計算処理部
104 :過去データ格納部(DB)
105 :宛先テーブル保持部
106 :UE ID-地域情報テーブル
107 :API
108 :制御部
111 :アプリケーション部
112 :情報配信部
160A :セル
160B :セル
160C :セル
図1
図2
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