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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】バスバモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/507 20210101AFI20240112BHJP
   H01M 50/519 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20240112BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/519
H01M50/284
H01M50/209
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021079411
(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022173609
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 雄太
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀樹
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-087665(JP,A)
【文献】特開2019-003729(JP,A)
【文献】特開2020-013765(JP,A)
【文献】特開2020-149934(JP,A)
【文献】特開2019-057499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する電池モジュールの前記電池セルに対して固定される複数のバスバと、
複数の前記バスバに対応する複数の接続導体を有し、可撓性を有する板状の回路体と、
前記回路体および前記バスバを収容するケースと、
を備え、
前記回路体は、複数の前記電池セルが配列される第一方向に沿って延在する幹線部と、前記幹線部から分岐して前記バスバに接続される複数の枝部と、を有し、
前記枝部は、前記幹線部につながっている基部と、前記バスバに対して固定される固定部と、前記基部から前記固定部まで前記第一方向に沿って延在する中間部と、を有し、
前記第一方向における前記幹線部の第一端部は、第一貫通孔を有し、
前記ケースは、前記第一貫通孔に挿入される第一突部を有し、前記第一突部によって前記第一端部を係止することにより、前記中間部を撓み変形させた状態で前記回路体を保持し、
更に、前記ケースに対して取り付けられて前記回路体を覆うカバーを備え、
前記第一方向における前記幹線部の第二端部は、第二貫通孔を有し、
前記カバーは、前記第二貫通孔に挿入される第二突部を有し、前記第二突部によって前記第二端部を係止することにより、前記第二端部が前記第一端部へ近づくような前記幹線部の撓みを抑制する、
バスバモジュール。
【請求項2】
前記ケースは、前記第一方向に沿って並ぶ複数のバスバ収容部と、隣接する前記バスバ収容部を連結する可撓性の連結部と、を有し、
前記カバーは、前記第一方向に沿った複数の前記バスバ収容部の相対移動を許容するように前記ケースに対して連結される、
請求項に記載のバスバモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バスバモジュールがある。特許文献1には、本体と、該本体から延在する複数のL字型可撓性アームと、を含むフレキシブル回路基板を備えたバッテリ接続モジュールが開示されている。特許文献1のL字型可撓性アームは、本体から複数のバスバーに向かって外向きに延在する第1のセクションと、該第1のセクションと接続し、複数のバスバーと本体との間の方向に延在する、第2のセクションと、該第2のセクションの遠位端に位置付けられ、対応するバスバーと接続する、端部と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-23996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池セルに対するバスバの追従性を確保することについて、なお改良の余地がある。例えば、バスバに接続される枝部を有する回路体を備えたバスバモジュールにおいて、枝部を予め撓み変形させた状態としておくことができれば、電池セルに対するバスバの追従性が向上する。
【0005】
本発明の目的は、電池セルに対するバスバの追従性を向上させることができるバスバモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバスバモジュールは、複数の電池セルを有する電池モジュールの前記電池セルに対して固定される複数のバスバと、複数の前記バスバに対応する複数の接続導体を有し、可撓性を有する板状の回路体と、前記回路体および前記バスバを収容するケースと、を備え、前記回路体は、複数の前記電池セルが配列される第一方向に沿って延在する幹線部と、前記幹線部から分岐して前記バスバに接続される複数の枝部と、を有し、前記枝部は、前記幹線部につながっている基部と、前記バスバに対して固定される固定部と、前記基部から前記固定部まで前記第一方向に沿って延在する中間部と、を有し、前記第一方向における前記幹線部の第一端部は、第一貫通孔を有し、前記ケースは、前記第一貫通孔に挿入される第一突部を有し、前記第一突部によって前記第一端部を係止することにより、前記中間部を撓み変形させた状態で前記回路体を保持し、更に、前記ケースに対して取り付けられて前記回路体を覆うカバーを備え、前記第一方向における前記幹線部の第二端部は、第二貫通孔を有し、前記カバーは、前記第二貫通孔に挿入される第二突部を有し、前記第二突部によって前記第二端部を係止することにより、前記第二端部が前記第一端部へ近づくような前記幹線部の撓みを抑制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るバスバモジュールにおいて、ケースは、回路体の第一貫通孔に挿入される第一突部を有し、第一突部によって第一端部を係止することにより、中間部を撓み変形させた状態で回路体を保持する。本発明に係るバスバモジュールは、撓み変形した中間部を有することにより、電池セルに対するバスバの追従性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るバスバモジュールおよび電池モジュールの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るバスバモジュールの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る回路体およびバスバの平面図である。
図4図4は、実施形態に係るバスバの斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る回路体の要部を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るケースの平面図である。
図7図7は、実施形態に係るケースの斜視図である。
図8図8は、実施形態に係るカバーの斜視図である。
図9図9は、実施形態に係る回路体の内部構成を説明する図である。
図10図10は、実施形態に係る回路体の厚肉部の断面図である。
図11図11は、実施形態に係る回路体の薄肉部の断面図である。
図12図12は、実施形態に係る回路体の断面図である。
図13図13は、実施形態に係る回路体の斜視図である。
図14図14は、実施形態に係るケースの斜視図である。
図15図15は、実施形態に係るケースの断面図である。
図16図16は、実施形態に係るケースおよび回路体の側面図である。
図17図17は、実施形態に係るケースおよび回路体の断面図である。
図18図18は、実施形態に係るバスバモジュールの断面図である。
図19図19は、実施形態に係る回路体およびバスバの断面図である。
図20図20は、実施形態に係る回路体およびバスバの断面図である。
図21図21は、実施形態に係るバスバの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係るバスバモジュールにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から図21を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、バスバモジュールに関する。図1は、実施形態に係るバスバモジュールおよび電池モジュールの斜視図、図2は、実施形態に係るバスバモジュールの分解斜視図、図3は、実施形態に係る回路体およびバスバの平面図、図4は、実施形態に係るバスバの斜視図、図5は、実施形態に係る回路体の要部を示す斜視図、図6は、実施形態に係るケースの平面図、図7は、実施形態に係るケースの斜視図、図8は、実施形態に係るカバーの斜視図、図9は、実施形態に係る回路体の内部構成を説明する図である。
【0011】
図10は、実施形態に係る回路体の厚肉部の断面図、図11は、実施形態に係る回路体の薄肉部の断面図、図12は、実施形態に係る回路体の断面図、図13は、実施形態に係る回路体の斜視図、図14は、実施形態に係るケースの斜視図、図15は、実施形態に係るケースの断面図、図16は、実施形態に係るケースおよび回路体の側面図、図17は、実施形態に係るケースおよび回路体の断面図、図18は、実施形態に係るバスバモジュールの断面図、図19および図20は、実施形態に係る回路体およびバスバの断面図、図21は、実施形態に係るバスバの斜視図である。図12には、図3のXII-XII断面が示されている。図15には、図6のXV-XV断面が示されている。図17には、図1のXVII-XVII断面が示されている。図18には、図1のXVIII-XVIII断面が示されている。図19には、図3のXIX-XIX断面が示されている。図20には、図19のXX-XX断面が示されている。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の電池パック100は、バスバモジュール1および電池モジュール110を有する。電池パック100は、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の車両に電源として搭載される。電池パック100は、複数のバスバモジュール1および複数の電池モジュール110を有していてもよい。
【0013】
電池モジュール110は、複数の電池セル120を有する。例示された電池セル120の形状は、直方体形状である。電池セル120の第一面120aには、二つの電極121が配置されている。第一面120aの形状は、略長方形である。
【0014】
複数の電池セル120は、第一方向Xに沿って配列されている。より詳しくは、複数の電池セル120は、第一面120aの長辺が隣接する他の第一面120aの長辺と第一方向Xにおいて対向するように配列されている。以下の説明では、第一面120aにおいて第一方向Xと直交する方向を「第二方向Y」と称する。第二方向Yは、第一面120aの長手方向である。第一方向Xおよび第二方向Yの何れとも直交する方向を「第三方向Z」と称する。第三方向Zは、電池セル120の高さ方向である。第一面120aは、第三方向Zと直交している。電池パック100は、例えば、第一面120aが車両上下方向の上側を向くように車両に搭載される。
【0015】
第一面120aの二つの電極121は、第二方向Yにおいて並んでいる。第一面120aの二つの電極121のうち、一方は正極であり、他方は負極である。第一面120aにおける長手方向の一端に配置されている電極121の集合体を「第一電極群121a」と称する。また、第一面120aにおける長手方向の他端に配置されている電極121の集合体を「第二電極群121b」と称する。本実施形態の電池モジュール110では、第一電極群121aにおいて、正極および負極が交互に並んでいる。また、第二電極群121bにおいて、正極および負極が交互に並んでいる。本実施形態のバスバモジュール1は、複数の電池セル120を直列に接続する。
【0016】
バスバモジュール1は、複数のバスバ2、板状の回路体3、ケース4、およびカバー5を有する。バスバ2は、銅やアルミニウム等の導電性の金属板から形成される。図2および図3に示すように、バスバモジュール1は、第一バスバ群2Aおよび第二バスバ群2Bを有する。第一バスバ群2Aおよび第二バスバ群2Bは、第一方向Xに沿って並ぶ複数のバスバ2を有する。第一バスバ群2Aのバスバ2は、電池モジュール110の第一電極群121aに対して固定される。第二バスバ群2Bのバスバ2は、第二電極群121bに対して固定される。
【0017】
図4に示すように、バスバ2は、本体20および端子21を有する。本体20および端子21は、例えば、溶接等により電気的に接続されている。本体20は、第一方向Xにおいて互いに隣接する二つの電極121を電気的に接続する。本体20は、基部20a、第一接続部20b、および第二接続部20cを有する。基部20aは、矩形の平板形状を有しており、第三方向Zと直交する。
【0018】
第一接続部20bおよび第二接続部20cは、第一方向Xに沿って隙間をあけて並んでおり、かつ基部20aから第二方向Yに向けて突出している。第一接続部20bおよび第二接続部20cは、第三方向Zと直交する。第一接続部20bは、隣接する二つの電極121のうちの一方の電極121に対して接続される。第二接続部20cは、隣接する二つの電極121のうちの他方の電極121に対して接続される。第一接続部20bおよび第二接続部20cは、溶接によって電極121に接続されてもよく、締結部材によって電極121に接続されてもよく、その他の手段によって電極121に接続されてもよい。
【0019】
端子21は、平板形状を有しており、本体20の基部20aに対して固定されている。端子21は、基部20aに対して第一接続部20bおよび第二接続部20cの側とは反対側に向けて突出している。端子21は、第一面21aおよび第二面21bを有する。第一面21aは、端子21が有する二つの主面の一方であり、第三方向Zにおいて基部20aと対向する。第二面21bは、端子21が有する二つの主面の他方である。
【0020】
端子21には、端子21を板厚方向に沿って貫通する貫通孔21cが形成されている。貫通孔21cは、端子21の先端部に配置されている。貫通孔21cは、第一面21aおよび第二面21bのそれぞれに開口している。
【0021】
回路体3は、板状の回路体であり、かつ可撓性を有している。本実施形態の回路体3は、フレキシブルプリント回路基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。回路体3は、複数のバスバ2に対応する複数の接続導体6を有する。図2および図3に示すように、回路体3は、幹線部30および複数の枝部31を有する。幹線部30および枝部31は、一体に形成されている。
【0022】
幹線部30は、平板形状を有しており、第一方向Xに沿って延在している。図3に示すように、幹線部30は、第一方向Xに沿う第一の辺30aおよび第二の辺30bを有する。第一の辺30aは、幹線部30における第二方向Yの一端の縁部である。第二の辺30bは、幹線部30における第二方向Yの他端の縁部である。枝部31は、幹線部30から分岐している。例示された回路体3は、第一の辺30aから分岐する複数の枝部31、および第二の辺30bから分岐する複数の枝部31を有する。第一の辺30aにつながっている枝部31は、第一バスバ群2Aのバスバ2に対して接続される。第二の辺30bにつながっている枝部31は、第二バスバ群2Bのバスバ2に対して接続される。
【0023】
幹線部30は、第一端部30cおよび第二端部30dを有する。第一端部30cは、幹線部30における第一方向Xの一端部である。第二端部30dは、幹線部30における第一方向Xの他端部である。第一端部30cには、コネクタ3cが接続されている。幹線部30は、コネクタ3cを介して、電池モジュール110の状態を監視する監視装置に対して接続される。監視装置は、例えば、電池セル120の電圧や温度を監視する。
【0024】
第一端部30cには、第一貫通孔30eが設けられている。第二端部30dには、第二貫通孔30fおよび第三貫通孔30gが設けられている。第一貫通孔30e、第二貫通孔30f、および第三貫通孔30gは、第三方向Zに沿って幹線部30を貫通している。第一貫通孔30e、第二貫通孔30f、および第三貫通孔30gは、例えば、幹線部30における第二方向Yの中央部に配置される。例示された第一貫通孔30eの形状は、径の大きさが一様な円形である。例示された第二貫通孔30fおよび第三貫通孔30gの形状は、第一方向Xに沿った長円形状である。第一方向Xにおいて、第三貫通孔30gの長さは、第二貫通孔30fの長さよりも大きい。
【0025】
図5に示すように、枝部31は、基部32と、中間部33と、固定部34と、を有する。基部32は、第二方向Yに向けて幹線部30から突出している。固定部34は、バスバ2に対して固定される部分であり、枝部31の先端部に位置している。中間部33は、基部32から固定部34に向けて第一方向Xに沿って延在している。
【0026】
回路体3は、複数の接続導体6を有する。本実施形態の接続導体6は、導電性を有する金属箔であり、例えば、銅箔である。接続導体6は、幹線部30に配索された第一部分61と、枝部31に配索された第二部分62と、を有する。第一部分61の端部は、コネクタ3cに接続される。第二部分62の基端は、第一部分61につながっている。第二部分62の先端は、チップヒューズ3fに接続されている。
【0027】
チップヒューズ3fは、固定部34に配置されている。チップヒューズ3fは、第二部分62とパッド35との間に介在している。チップヒューズ3fは、パッド35と接続導体6との間に過大な電流が流れた場合に両者の間を遮断するように構成されている。パッド35は、固定部34に形成された金属箔であり、外部空間に向けて露出している。バスバ2は、パッド35に対してはんだ付けされる。パッド35は、第一パッド35aおよび第二パッド35bを有する。第一パッド35aおよび第二パッド35bは、チップヒューズ3fを間に挟んで第二方向Yにおいて対向している。第一パッド35aおよび第二パッド35bは、相互に電気的に接続されている。
【0028】
本実施形態の回路体3は、枝部31の中間部33を湾曲させた状態でバスバ2に対して接続される。回路体3は、電池セル120の位置や高さ等における公差を枝部31によって吸収する。本実施形態の枝部31は、後述するように、肉厚が薄い薄肉部3bを有している。枝部31は、薄肉部3bを湾曲させた状態で幹線部30とバスバ2とを接続する。薄肉部3bが設けられた枝部31は、柔軟性があり、高い追従性を有する。よって、本実施形態のバスバモジュール1は、電池モジュール110に対する組み付け作業の作業性を向上させることができる。また、本実施形態のバスバモジュール1は、湾曲部において発生する反力を低減させて回路体3の浮き上がり等を抑制することができる。
【0029】
図6に示すように、ケース4は、複数のバスバ収容部40、複数の橋部41、および複数の連結部42を有する。ケース4は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。バスバ収容部40、橋部41、および連結部42は、一体に形成されている。ケース4の形状は、第一方向Xに沿って細長い矩形である。
【0030】
バスバ収容部40は、バスバ2を収容する部分であり、第三方向Zに沿った筒状の形状を有する。一つのバスバ収容部40は、一つのバスバ2を収容する。複数のバスバ収容部40は、第一方向Xに沿って並んでいる。ケース4は、第一方向Xに沿う第一の辺4aおよび第二の辺4bを有する。第一の辺4aは、ケース4における第二方向Yの一端の縁部である。第二の辺4bは、ケース4における第二方向Yの他端の縁部である。
【0031】
ケース4は、第一の辺4aに配置された複数のバスバ収容部40、および第二の辺4bに配置された複数のバスバ収容部40を有する。第一の辺4aのバスバ収容部40は、第一バスバ群2Aのバスバ2を収容する。第二の辺4bのバスバ収容部40は、第二バスバ群2Bのバスバ2を収容する。バスバ収容部40は、仕切り壁44を有する。仕切り壁44は、バスバ2の第一接続部20bと第二接続部20cとの間を仕切る。バスバ収容部40は、仕切り壁44とつながっている対向面45を有する。対向面45は、第三方向Zにおいてバスバ2の基部20aおよび端子21と対向する。
【0032】
橋部41は、第一の辺4aに配置された一つのバスバ収容部40と、第二の辺4bに配置された一つのバスバ収容部40とをつないでいる。複数の橋部41は、第一方向Xに沿って並んでいる。橋部41は、回路体3の幹線部30を支持する支持体として機能する。橋部41は、第一の辺4aの仕切り壁44から、第二の辺4bの仕切り壁44まで、第二方向Yに沿って延在している。ケース4は、第一橋部41Aおよび第二橋部41Bを有する。第一橋部41Aおよび第二橋部41Bは、複数の橋部41のうち、第一方向Xの端部に位置している橋部41である。第一橋部41Aは、回路体3の第一端部30cを支持する。第二橋部41Bは、回路体3の第二端部30dを支持する。
【0033】
連結部42は、隣接する二つのバスバ収容部40を連結する部分である。図7に示すように、連結部42の形状は、アーチ形状である。連結部42は、可撓性を有しており、隣接する二つのバスバ収容部40の相対移動を許容する。より詳しくは、連結部42は、少なくとも第一方向Xにおけるバスバ収容部40の相対移動を許容するように形成されている。連結部42は、第二方向Yおよび第三方向Zにおけるバスバ収容部40の相対移動を許容してもよい。
【0034】
ケース4は、複数の係合片43を有する。係合片43は、仕切り壁44に対して第二方向Yの内側に配置されている。例示された係合片43は、橋部41の端部に設けられている。係合片43は、第三方向Zに向けてアーム状に突出している。係合片43の先端部には、爪部43aが形成されている。爪部43aは、第二方向Yに向けて隆起している。
【0035】
図6に示すように、ケース4は、第一突部46および第三突部47を有する。第一突部46は、回路体3の第一貫通孔30eに対応する突部である。第一突部46は、第一橋部41Aから第三方向Zに向けて突出している。第三突部47は、回路体3の第三貫通孔30gに対応する突部である。第三突部47は、第二橋部41Bから第三方向Zに向けて突出している。
【0036】
カバー5は、回路体3を覆って回路体3を保護する部材である。カバー5は、ケース4と係合し、ケース4とカバー5との間に幹線部30を収容する空間を形成する。カバー5は、例えば、絶縁性の合成樹脂によって成型される。図8に示すように、カバー5は、カバー本体50、係合部51、および第二突部53を有する。カバー本体50、係合部51、および第二突部53は、一体に形成されている。
【0037】
カバー本体50は、略矩形の平板形状を有する。カバー本体50は、第一方向Xに沿う第一の辺50aおよび第二の辺50bを有する。第一の辺50aは、カバー本体50における第二方向Yの一端の縁部である。第二の辺50bは、カバー本体50における第二方向Yの他端の縁部である。図2に示すように、カバー本体50の外側面50dには、複数の補強用のリブ54が設けられている。リブ54は、第一方向Xおよび第二方向Yに沿って延在している。
【0038】
図2および図8に示すように、カバー5は、複数の係合部51を有する。係合部51は、ケース4の係合片43と係合し、カバー5をケース4に対して連結する。係合部51は、第一の辺50aおよび第二の辺50bに配置されている。図8に示すように、係合部51の形状は、係合孔52を有する角筒形状である。ケース4の係合片43は、係合孔52に挿入されて爪部43aを係合孔52から突出させる。係合部51は、係合片43の爪部43aを係止してケース4とカバー5とを連結する。
【0039】
第一方向Xに沿った係合孔52の長さは、係合片43の幅よりも十分に大きい。従って、係合部51は、係合部51に対して係合片43が第一方向Xに相対移動することを許容する。つまり、カバー5は、カバー5とケース4とが連結した連結状態において、第一方向Xに沿ったケース4の伸縮を許容する。ケース4の伸縮は、主として連結部42の弾性変形によって生じる。つまりカバー5は、連結状態において隣接する二つのバスバ収容部40が第一方向Xに沿って相対移動することを許容する。
【0040】
第二突部53は、カバー本体50の内側面50cに対して突出している。第二突部53は、回路体3の第二貫通孔30fに対応する突部である。例示された第二突部53の形状は、円柱形状である。
【0041】
回路体3の詳細について説明する。図9は、回路体3の内部構成を説明する図である。図9には、バスバ2および電池モジュール110に対して取り付けられる前の枝部31が示されている。なお、図9では接続導体6が実線で描かれているが、実際の回路体3では後述する被覆層11,12によって接続導体6が覆われており、接続導体6は露出していない。
【0042】
本実施形態の回路体3は、図10に示す厚肉部3aと、図11に示す薄肉部3bと、を有する。厚肉部3aは、五層構造を有する。一方、薄肉部3bは、三層構造を有する。回路体3において、少なくとも幹線部30は厚肉部3aで構成されている。基層10の両面に導体層13,14が配置されることで、幹線部30の小型化と、複層化による多数の電圧検出回路の配索とが両立される。薄肉部3bは、枝部31の中間部33に設けられている。枝部31は、薄肉部3bを撓み変形させた状態で幹線部30とバスバ2とを接続する。高い可撓性を有する薄肉部3bが中間部33に設けられていることで、電池モジュール110に対してバスバ2を組み付ける作業の作業性が向上する。
【0043】
図10に示すように、厚肉部3aは、第一回路層7Aおよび第二回路層7Bを有する五層構造である。厚肉部3aは、基層10、第一被覆層11、第二被覆層12、第一導体層13、および第二導体層14を有する。基層10、第一被覆層11、および第二被覆層12は、何れも絶縁性の合成樹脂によって構成されている。基層10、第一被覆層11、および第二被覆層12は、例えば、ポリイミド樹脂によって形成される。基層10および被覆層11,12は、何れも可撓性を有するように形成される。
【0044】
第一被覆層11は、基層10の第一面10aを覆う層である。第二被覆層12は、基層10の第二面10bを覆う層である。第一導体層13は、第一面10aと第一被覆層11との間に配置された導体の層であり、可撓性を有する。例示された第一導体層13は、第一面10aに形成された金属箔である。第一導体層13は、典型的には接続導体6である。第一導体層13の一部は、後述する補強層36であってもよい。第一面10aに形成された金属箔に対するエッチングにより、接続導体6や補強層36が形成される。第一面10aに接続導体6の回路パターン等が形成された後に、第一面10aおよび第一導体層13に対して第一被覆層11が貼り付けられる。
【0045】
例示された第二導体層14は、第二面10bに形成された金属箔であり、可撓性を有する。第二導体層14は、典型的には接続導体6である。第二導体層14の一部は、補強層36であってもよい。第二面10bに形成された金属箔に対するエッチングにより、接続導体6や補強層36が形成される。第二面10bに接続導体6の回路パターン等が形成された後に、第二面10bおよび第二導体層14に対して第二被覆層12が貼り付けられる。
【0046】
図11には、第一回路層7Aによって構成された薄肉部3bが示されている。例示された薄肉部3bは、基層10、第一被覆層11、および第一導体層13の三層構造である。この場合、基層10の第二面10bには、金属箔が形成されないか、または第二面10bの金属箔がエッチングによって除去される。薄肉部3bは、厚肉部3aと比較して肉厚が薄いため、厚肉部3aよりも剛性が小さく、柔軟性を有する。なお、薄肉部3bは、第二回路層7Bによって構成されてもよい。
【0047】
図9に示すように、薄肉部3bは枝部31の中間部33に設けられている。より詳しくは、中間部33の略全体が薄肉部3bである。よって、例示された枝部31は、中間部33の全体を撓み変形させた状態で幹線部30とバスバ2とを接続することができる。平面視における薄肉部3bの形状は、略矩形である。より詳しくは、例示された薄肉部3bは、矩形の端部を外側に向けて湾曲させた形状である。枝部31において、薄肉部3bを除く部分は、厚肉部3aで構成されている。つまり、回路体3において、幹線部30、基部32、および固定部34は、厚肉部3aで構成されている。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の回路体3は、補強層36を有する。補強層36は、薄肉部3bと隣接する部分の剛性を向上させる金属箔である。補強層36および接続導体6は、例えば、同じ銅箔からエッチングにより分離される。なお、補強層36は、接続導体6よりも厚い金属箔であってもよい。補強層36は、例えば、対応する接続導体6に対して裏面側に配置される。例えば、図9に示す枝部31の接続導体6が基層10の第一面10aに配置されている場合、補強層36は、第二面10bに配置される。補強層36の幅は、接続導体6の幅よりも広い。
【0049】
補強層36は、第一補強層36aおよび第二補強層36bを有する。第一補強層36aは、幹線部30および基部32に配置されている。第二補強層36bは、固定部34に配置されている。第一補強層36aは、幹線部30に配置された第一部分36c、および基部32に配置された第二部分36dを有する。第一部分36cおよび第二部分36dは、一体である。
【0050】
第一部分36cは、幹線部30と枝部31との接続部分37から、第一方向Xの両側に向けて延在している。平面視における第一部分36cの形状は、略矩形である。第一部分36cの幅は、接続部分37において最大となっている。
【0051】
第二部分36dは、基部32の略全領域に設けられている。すなわち、第二部分36dは、接続部分37から、基部32の先端まで、第二方向Yに沿って延在している。第二部分36dの幅は、基部32の幅よりわずかに小さい。
【0052】
第一補強層36aは、接続部分37の剛性を向上させ、接続部分37の曲げや捩れを抑制する。また、第一補強層36aは、基部32の剛性を向上させ、基部32の曲げやねじれを抑制する。よって、第一補強層36aは、基部32や接続部分37の変形を抑制しつつ、中間部33を所望の形状に撓み変形させることを可能とする。
【0053】
第二補強層36bは、固定部34の略全領域に設けられている。例示された第二補強層36bは、接続導体6の第二部分62、第一パッド35a、および第二パッド35bのそれぞれと対向している。第二補強層36bは、固定部34の剛性を向上させ、固定部34の曲げやねじれを抑制する。よって、第二補強層36bは、固定部34における電気的性能の信頼性を向上させることができる。
【0054】
図12に示すように、薄肉部3bの厚さt2は、厚肉部3aの厚さt1よりも小さい。また、薄肉部3bは、中間部33の一端から他端まで設けられている。よって、枝部31は、中間部33を所望の湾曲形状に撓み変形させながら幹線部30とバスバ2とを接続することができる。例示された中間部33の湾曲形状は、S字形状である。中間部33は、第一湾曲部33aおよび第二湾曲部33bを有するように折れ曲がる。第一湾曲部33aは、第一方向Xの一方側に向けて湾曲している。第二湾曲部33bは、第一方向Xの他方側に向けて湾曲している。S字形状に湾曲している中間部33は、第一方向X、第二方向Y、および第三方向Zにおける公差を適切に吸収することができる。
【0055】
また、中間部33の厚さt2が小さいことで、中間部33において発生する反力が低減される。例えば、中間部33が厚肉部3aで構成される場合と比較して、中間部33において発生する反力が小さくなる。よって、本実施形態のバスバモジュール1は、バスバ2を電池セル120に対して固定する作業の作業性を向上させることができる。また、バスバモジュール1は、電池セル120に対してバスバ2が固定された後の回路体3の浮き上がりや変形を抑制することができる。
【0056】
なお、回路体3の枝部31は、チップヒューズ3fとは異なる電子部品や素子に対して接続されてもよい。例えば、本実施形態の回路体3は、図13に示すように、サーミスタ3sに接続された枝部31を有する。サーミスタ3sは、電池セル120に対して固定されており、電池セル120の温度を検出する。サーミスタ3sによる検出結果は、接続導体6を介して監視装置に出力される。
【0057】
図13に示す枝部31は、サーミスタ3sに接続される延長部38を有する。延長部38は、固定部34からサーミスタ3sまで第一方向Xに沿って延出している。枝部31には、二本の接続導体6が配索されている。二本の接続導体6のうち一方は、チップヒューズ3fを介してバスバ2に接続される電圧検出線である。二本の接続導体6のうち他方は、固定部34から延長部38を介してサーミスタ3sに接続される温度検出線である。延長部38は、撓み変形した状態で固定部34とサーミスタ3sとを接続する。延長部38には、薄肉部3bが設けられてもよい。例えば、延長部38の全体が薄肉部3bであってもよい。
【0058】
本実施形態のケース4は、以下に説明するように、中間部33を撓み変形させた状態で回路体3を保持することができる。図14および図15に示すように、ケース4の第一突部46は、軸部46aおよび庇部46bを有する。軸部46aは、第一突部46における基端部であり、第一橋部41Aとつながっている。軸部46aの形状は、第三方向Zに沿った円柱形状である。庇部46bは、軸部46aの先端から突出している。庇部46bの形状は、第三方向Zに沿った円柱形状である。庇部46bの外径の値は、例えば、軸部46aの外径の値と同じである。庇部46bは、軸部46aとは別軸上に位置しており、軸部46aに対して偏心している。例示された庇部46bは、軸部46aに対して第一方向Xに向けてずれている。
【0059】
図16および図17を参照して、ケース4に対する回路体3の取り付けについて説明する。図16には、バスバ2がバスバ収容部40に収容された状態が示されている。バスバ2は、事前に固定部34に対して固定されている。作業者は、回路体3の幹線部30をケース4の橋部41に載置し、バスバ2を対応するバスバ収容部40に収容する。バスバ収容部40は、バスバ2を収容し、バスバ2および固定部34を位置決めする。このときの枝部31の中間部33の形状は、S字形状に屈曲させる前の形状である。
【0060】
作業者は、図17に矢印Ar1で示すように、幹線部30を第一方向Xに沿って引っ張りながら第一突部46を回路体3の第一貫通孔30eに挿通させる。回路体3は、第一貫通孔30eを第一突部46に位置付けたときに中間部33が所望のS字形状に湾曲するように構成されている。従って、作業者は、第一突部46を第一貫通孔30eに挿通させることにより、各中間部33をS字形状に撓み変形させることができる。
【0061】
作業者は、第一貫通孔30eを第一突部46の軸部46aに引っ掛ける。軸部46aの外径は、第一貫通孔30eの内径と同等である。従って、軸部46aは、第一方向Xにおいて幹線部30を予め定められた位置に位置付けることができる。庇部46bは、枝部31が発生させる反力F1の方向とは反対の方向に向けて突出している。よって、庇部46bは、幹線部30が第一突部46から外れてしまうことを規制する。
【0062】
第一突部46は、第一貫通孔30eに挿入された状態で、幹線部30の第一端部30cを係止する。第一突部46は、反力F1に抗して第一端部30cを係止し、第一端部30cを予め定められた位置で保持する。これにより、第一突部46は、回路体3の中間部33を撓み変形させた状態で回路体3を保持することができる。
【0063】
また、図14および図15に示すように、ケース4は、第一方向Xにおいてカバー5を位置決めする係合片48を有する。係合片48は、第一橋部41Aから第三方向Zに向けて突出している。係合片48は、第一方向Xにおいて第一突部46の近傍に配置されている。係合片48の形状は、係合片43の形状と同様である。図15に示すように、係合片48の爪部48aは、第一方向Xに向けて隆起している。カバー5は、図2に示すように、係合片48に対応する係合部55を有する。係合片48は、係合部55に対して係合し、第一橋部41Aに対するカバー5の相対移動を規制する。
【0064】
本実施形態のバスバモジュール1は、カバー5の第二突部53によって中間部33の湾曲形状を維持することができる。図18に示すように、第二突部53は、回路体3の第二貫通孔30fに挿入された状態でケース4に対して連結される。第二突部53は、第一方向Xに沿った第二端部30dの移動範囲を制限する。第二端部30dの移動可能範囲は、第二貫通孔30fの長さL1によって決められている。
【0065】
例えば、第二端部30dがカバー5に対して矢印X1の方向に相対移動した場合、第二突部53は第二端部30dを係止する。矢印X1の方向は、第二端部30dが第一方向Xに沿って第一端部30cへ近づく方向である。第二端部30dが矢印X1の方向へ移動すると、幹線部30に撓みが生じてしまう。これに対して、第二突部53は、第二端部30dの移動範囲を制限して幹線部30の撓みを抑制する。また、第二突部53は、第二端部30dの移動を制限することで中間部33の湾曲形状を所望の形状に維持させることができる。
【0066】
上述したように、本実施形態のカバー5は、平板状のカバー本体50を有している。カバー本体50は、一枚の板状に形成されており、第一方向Xの力に対して高い剛性を有する。一方で、ケース4は、バスバ2を電池セル120に追従させることができるように第一方向Xに沿って伸縮可能である。本実施形態のカバー5は、以下に説明するように、ケース4が伸縮することに起因する幹線部30の撓みを規制することができる。
【0067】
カバー5は、係合部55(図2参照)においてケース4の係合片48と係合し、第一突部46に対して位置決めされる。言い換えると、係合部55は、係合片48および第一突部46を介して回路体3の第一貫通孔30eに対して位置決めされている。更に、カバー5は、第二突部53によって回路体3の第二貫通孔30fを係止する。このように、カバー5が幹線部30の一端に対して位置決めされ、かつ幹線部30の他端を係止することで、適切に幹線部30の撓みを抑制することができる。
【0068】
図19に示すように、枝部31は、固定部34を端子21の第一面21aと対向させた状態で端子21に対して固定される。つまり、枝部31は、端子21の下側を通って配索される。固定部34は、チップヒューズ3fが実装されている面を端子21の第一面21aと対向させる。バスバ2は、チップヒューズ3fを貫通孔21cに露出させるように固定部34に重ねられる。端子21は、上述したように固定部34のパッド35に対してはんだ付けされて固定部34に対して固定される。
【0069】
端子21の貫通孔21cには、ポッティング剤8が充填される。充填されたポッティング剤8は、チップヒューズ3fを覆い、チップヒューズ3fを保護する。ポッティング剤8は、例えば、チップヒューズ3fの各側面および上面を覆うように充填される。ポッティング剤8は、パッド35と端子21との接続部を保護するように充填されてもよい。回路体3およびバスバ2は、枝部31の中間部33をS字形状に撓み変形させた状態でケース4に対して組み付けられる。バスバ2は、バスバ収容部40に収容される。
【0070】
図19に示すように、枝部31は、対向部39を有する。対向部39は、枝部31のうち、端子21の第一面21aと対向する部分である。本実施形態のバスバ2は、第一面21aに形成された溝状の凹部22を有する。以下に説明するように、凹部22を有するバスバ2は、接続導体6にダメージを与えてしまうことを抑制できる。
【0071】
図19および図20に示すように、凹部22は、枝部31の接続導体6と対向する位置に配置されている。図21に示すように、凹部22は、端子21の側面21dから貫通孔21cまで、第一方向Xに沿って延在している。第一方向Xに沿って見た場合の凹部22の形状は、矩形または台形である。図21に例示された端子21は、二つの凹部22を有する。二つの凹部22は、貫通孔21cに対して第一方向Xの両側に一つずつ配置されている。従って、端子21は、接続導体6が貫通孔21cに対して第一方向Xの何れの側に配索される場合であっても、凹部22を接続導体6と対向させることが可能である。
【0072】
上述したように、本実施形態の接続導体6は、銅箔等の金属箔である。図20に示す枝部31では、第一回路層7Aの接続導体6がバスバ2に対して接続される。例示された接続導体6は、基層10の第一面10aに形成されている。第一被覆層11は、接続導体6が形成された基層10に対して貼り付けられる。枝部31は、第一被覆層11を端子21の第一面21aに対向させ、かつ接続導体6を凹部22に対向させてバスバ2に固定される。
【0073】
接続導体6に対して凹部22が対向していることで、接続導体6がダメージを受けにくい。例えば、枝部31が振動したり屈曲したりした場合に、接続導体6が端子21からダメージを受けてしまうことが抑制される。
【0074】
第一被覆層11は、接続導体6に対応する隆起部11aを有していてもよい。凹部22の幅は、接続導体6の幅および隆起部11aの幅よりも大きい。凹部22の幅は、例えば、公差による接続導体6の位置ずれがあったとしても凹部22を接続導体6と対向させることができるように定められる。凹部22の深さは、例えば、接続導体6の厚さ以上である。凹部22の深さは、設計上における隆起部11aの高さ以上とされてもよい。
【0075】
本実施形態のバスバモジュール1は、バスバ2に凹部22が設けられていることで、ポッティング剤8の漏れを抑制することができる。端子21が凹部22を有していない比較例について検討する。比較例の場合、隆起部11aが第一面10aに接触してしまい、固定部34と第一面10aとの間に広い範囲で隙間が生じてしまう。その結果、隙間からポッティング剤8が漏れ出しやすくなる。これに対して、本実施形態のバスバモジュール1では、第一面10aにおける凹部22を除く部分を固定部34に接触させ、あるいは固定部34に十分に近接させることができる。よって、貫通孔21cに充填されたポッティング剤8の漏れが抑制される。
【0076】
ポッティング剤8の漏れを抑制する観点からは、凹部22の深さが大きすぎない方が好ましい。一方、接続導体6に対するダメージを抑制する観点からは、凹部22の深さが小さすぎないことが好ましい。凹部22の深さは、例えば、ポッティング剤8の粘度に応じてポッティング剤8の漏れを抑制できる範囲内で定められることが好ましい。一例として、凹部22の深さは、ポッティング剤8の漏れを抑制できる最大値とされてもよい。
【0077】
なお、回路体3の枝部31は、図13に示すように、サーミスタ3sに接続された枝部31を有していてもよい。この場合、二本の接続導体6は、それぞれ端子21の凹部22と対向していることが好ましい。このような構成により、電圧検出線および温度検出線が端子21からダメージを受けにくくなる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のバスバモジュール1は、複数のバスバ2と、可撓性を有する板状の回路体3と、ケース4と、を有する。複数のバスバ2は、電池モジュール110の電池セル120に対して固定される。回路体3は、複数のバスバ2に対応する複数の接続導体6を有する。ケース4は、回路体3およびバスバ2を収容する。
【0079】
回路体3は、幹線部30と、複数の枝部31と、を有する。幹線部30は、複数の電池セル120が配列される第一方向Xに沿って延在する。枝部31は、幹線部30から分岐してバスバ2に接続される。枝部31は、基部32と、固定部34と、中間部33と、を有する基部32は、幹線部30につながっている部分である。固定部34は、バスバ2に対して固定される部分である。中間部33は、基部32から固定部34まで第一方向Xに沿って延在する。
【0080】
第一方向Xにおける幹線部30の第一端部30cは、第一貫通孔30eを有する。ケース4は、第一貫通孔30eに挿入される第一突部46を有する。ケース4は、第一突部46によって第一端部30cを係止することにより、中間部33を撓み変形させた状態で回路体3を保持する。本実施形態のバスバモジュール1は、中間部33を撓み変形させた状態で回路体3を保持することができ、電池セル120に対するバスバ2の追従性を向上させることができる。
【0081】
本実施形態のバスバモジュール1は、ケース4に対して取り付けられて回路体3を覆うカバー5を有する。第一方向Xにおける幹線部30の第二端部30dは、第二貫通孔30fを有する。カバー5は、第二貫通孔30fに挿入される第二突部53を有する。カバー5は、第二突部53によって第二端部30dを係止することにより、第二端部30dが第一端部30cへ近づくような幹線部30の撓みを抑制する。本実施形態のバスバモジュール1は、幹線部30の撓みを抑制することで、電池セル120に対するバスバ2の追従性を向上させることができる。
【0082】
本実施形態のケース4は、複数のバスバ収容部40と、可撓性の連結部42と、を有する。複数のバスバ収容部40は、第一方向Xに沿って並んでいる。連結部42は、隣接するバスバ収容部40を連結している。カバー5は、第一方向Xに沿った複数のバスバ収容部40の相対移動を許容するようにケース4に対して連結される。より詳しくは、カバー5は、ケース4の係合片43と係合する複数の係合部51を有する。係合部51は、係合片43が係合部51に対して第一方向Xに相対移動することを許容する。本実施形態のカバー5は、第二突部53によって幹線部30の撓みを抑制しつつ、電池セル120に対するバスバ2の追従性を向上させることができる。
【0083】
なお、回路体3は、フレキシブルプリント回路基板に限定されるものではなく、フラットケーブル(所謂FC)やフレキシブルフラットケーブル(所謂FFC:Flexible Flat Cable)等であってもよい。
【0084】
バスバ2が電池セル120に固定された状態における中間部33の撓み形状は、例示されたS字形状には限定されない。中間部33は、公差に起因する位置ずれを吸収できるように撓み変形していればよい。
【0085】
回路体3において、導体が複層化されていなくてもよい。例えば、回路体3の全体が第一回路層7Aまたは第二回路層7Bの一方で構成されていてもよい。
【0086】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。第一被覆層11や第二被覆層12の厚さを小さくすることにより薄肉部3bにおける剛性の低下が図られてもよい。例えば、薄肉部3bが第一回路層7Aで構成される場合、薄肉部3bにおける第一被覆層11の厚さは、厚肉部3aにおける第一被覆層11の厚さよりも小さくされてもよい。
【0087】
回路体3は、第一回路層7Aおよび第二回路層7Bに加えて、他の回路層を有していてもよい。言い換えると、回路体3は、六層以上の多層構造を有していてもよい。例えば、厚肉部3aは、第一回路層7Aまたは第二回路層7Bに対して積層された第三回路層を有していてもよい。第三回路層は、例えば、第三導体層および第三被覆層を有する。この場合の厚肉部3aは、七層構造となる。
【0088】
ケース4における第一突部46の配置および形状は、例示された配置および形状には限定されない。例えば、第一突部46は、第二橋部41Bに配置されてもよい。この場合、回路体3の第二端部30dに第一貫通孔30eが配置され、第一端部30cに第二貫通孔30fが配置される。カバー5の第二突部53は、第二貫通孔30fに対応する位置に配置される。
【0089】
凹部22の配置および形状は、例示された配置および形状には限定されない。例えば、凹部22の断面形状は、円弧形状や三角形であってもよい。
【0090】
枝部31の金属箔が接続される接続対象は、電子部品や素子には限定されない。例えば、枝部31の金属箔は、電子部品や素子を介さずにバスバ2の端子21に対して接続されてもよい。
【0091】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 バスバモジュール
2:バスバ、 2A:第一バスバ群、 2B:第二バスバ群
3 回路体
3a:厚肉部、 3b:薄肉部
3c:コネクタ、 3f:チップヒューズ、 3s:サーミスタ
4:ケース、 4a:第一の辺、 4b:第二の辺
5 カバー
6 接続導体
7A:第一回路層、 7B:第二回路層
8 ポッティング剤
10:基層、 11:第一被覆層、 11a:隆起部、 12:第二被覆層
13:第一導体層、 14:第二導体層
20:本体、 20a:基部、 20b:第一接続部、 20c:第二接続部
21:端子、 21a:第一面、 21b:第二面、 21c:貫通孔
21d:側面、 22:凹部
30:幹線部、 30a:第一の辺、 30b:第二の辺
30c:第一端部、 30d:第二端部
30e:第一貫通孔、 30f:第二貫通孔、 30g:第三貫通孔
31:枝部、 32:基部、 33:中間部、 33a:第一湾曲部
33b:第二湾曲部、 34:固定部
35:パッド、 35a:第一パッド、 35b:第二パッド
36:補強層、 36a:第一補強層、 36b:第二補強層
36c:第一部分、 36d:第二部分
37:接続部分、 38:延長部、 39:対向部
40:バスバ収容部、 41:橋部、 41A:第一橋部、 41B:第二橋部
42:連結部、 43:係合片、 43a:爪部、 44:仕切り壁、 45:対向面
46:第一突部、 47:第三突部、 48:係合片
50:カバー本体、 50a:第一の辺、 50b:第二の辺、 50c:内側面
50d:外側面
51:係合部、 52:係合孔、 53:第二突部、 54:リブ
55:係合部
61:第一部分、 62:第二部分
100:電池パック、 110:電池モジュール、 120:電池セル
121:電極、 121a:第一電極群、 121b:第二電極群
X:第一方向、 Y:第二方向、 Z:第三方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21