(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】静電容量型圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2021098881
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】井出 聡史
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄飛
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165122(JP,A)
【文献】国際公開第2020/208932(WO,A1)
【文献】特開2019-032456(JP,A)
【文献】特開2019-128315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01L 1/14
G06F 3/041、3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ面内で圧力が加えられた位置を検出する位置検出と、当該位置における圧力検出を行う静電容量型圧力センサであって、
発泡体からなる誘電体層と、
前記誘電体層の第1面に設けられて圧力を受ける透光性の第1電極と、
前記第1面の反対側である前記誘電体層の第2面に設けられ、所定の形状である複数の単位電極から構成された透光性の第2電極と、
前記第1電極と前記誘電体層の間又は前記第2電極と前記誘電体層の間に設けられた表示層と、
前記第1電極と前記第2電極の間に電位差を生じさせて前記誘電体層の静電容量に関する測定値を前記単位電極ごとに検出する測定部と、
を具備することを特徴とする静電容量型圧力センサ。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極は、それぞれ透光性材料または透光性構造によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサ。
【請求項3】
前記単位電極の電極面積を、
前記第1電極が圧力を受けた際に前記測定部によって前記単位電極ごとに検出される前記測定値の変化量と前記単位電極の電極面積との関係を示す実測データと、
前記測定部によって前記単位電極ごとに検出される圧力の検出段階数を含む条件により決定した前記測定値の変化量の最小値と、
を用いて決定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層を2つの電極で挟んだ構造を備え、一方の電極に加えられた圧力により変形した誘電体層の誘電率の変化によって圧力を検出する静電容量型圧力センサに係り、特に、高精度の位置検出と圧力検出が可能であり、係る検出機能と関連させたパターンを表示することで広い応用範囲を実現した高機能な静電容量型圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電容量型センサの発明が開示されている。この発明の静電容量型センサは、誘電層30と、誘電層30の表側に配置される表側電極部32Xと、誘電層30の裏側に配置される裏側電極部33Yとを有するセンサ部Sと、このセンサ部Sに電気的に接続され、センサ部Sに電圧を印加すると共に、センサ部Sの静電容量に関する電気量を測定する制御装置22とを備えている。この静電容量型センサ1によれば、誘電層30に半独立気泡構造の発泡体を用いているので、荷重検出範囲が広く、かつ誘電層がへたりにくい効果が得られるものとされている。
【0003】
特許文献2には、静電容量型センサの発明が開示されている。この発明の静電容量型センサは、エラストマー製の誘電層20と、誘電層20を厚さ方向に挟んで配置され各々に電極層01X~08X、01Y~08Yを有する一対の電極ユニット30、40とを備えており、電極層01X~08X、01Y~08Yが誘電層20を介して対向する部分に感圧部Dが設定されている。そして、0MPaより大きく0.015MPa以下の圧力範囲において、静電容量型センサ1の感度は7.5×10-11F/MPa以上7.5×10-10F/MPa以下であり、その圧力-ひずみ曲線は従来のように2カ所に変曲点があるようなものではなく、広い圧力範囲においてひずみが単調に増加する形態となっている。この静電容量型センサによれば、荷重検出範囲が広く、特に小荷重を精度良く検出できる効果が得られるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015―7562号公報
【文献】国際公開番号WO2017/057598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器等の入出力装置として、静電容量型のタッチパネルが広く使用されている。この静電容量型のタッチパネルは、ユーザーが触れたパネル面上の位置をX座標及びY座標で示す位置情報として出力する機能を有しているが、一般的には押圧力や圧力を検出することはできない。しかし、静電容量型のタッチパネルにおいて、X座標及びY座標を用いたパネル面上の位置情報とともに、ユーザーが触れたパネル面上の位置における押圧力や圧力を検知できれば、当該圧力がパネル面に垂直なZ座標の位置情報ともなることから、現状を越えた用途の拡大が期待できる。
【0006】
例えば、X座標及びY座標を利用してユーザーの触れたパネル面内の位置を検出するとともに、Z座標を利用してユーザーがパネル面に触れる際のジェスチャーを検知することができる。すなわち、ユーザーが所期の目的をもってパネル面上のある位置を押した場合には、タッチパネルは触れられた位置に対応する位置情報を信号として出力することができ、またユーザーによる押圧の確かさや強さ等を確認するために、ユーザーがパネル面に触れた際の圧力を検出し、その値に応じた信号を出力することができる。
【0007】
本願発明者は、上述したようなタッチパネルにおいて、その用途や機能をさらに拡大させるための課題として、ユーザーが押圧すべき箇所を示すパターン(図形や記号)をパネル面に表示できるようにするとの発想を得た。すなわち、タッチパネルのパネル面にこのようなパターンを表示できるようにしておけば、ユーザーがパネル面に触れた位置が、パネル面内にある何れのパターンに該当するかを、検出されたX座標及びY座標から判断できる。また、ユーザーが触れたパターンに何らかの機能を割り当てておけば、当該パターンに加えられた圧力の値によって、当該パターンが表す機能について、ユーザーがどの程度の操作量を望むのかが判断できる。ただし、タッチパネルの表面、すなわち誘電体層の上面側に設けられてユーザーが圧力を加える上側の電極の表面に、パターンを印刷したシールを貼るというといった単純な構造では、製造コストが低いという利点はあるものの、単に印刷されたパターンを反射光で見るだけなので表示品位が低く、周囲が暗いと視認できず、高級感はない。
【0008】
「従来の技術」で説明したように、一般的な従来の静電容量型センサでは、荷重検出範囲はある程度広いものの、パネル面内における位置の検出と圧力の検出を相当の精度で同時に実現できる機能はなかった。また、一般的な従来の静電容量型センサでは、誘電体層の両面に設けられた2つの電極がベタ状に構成されて透光性がないため、透過光で高品位の表示をパネル面に浮き上がらせるように表示できる機能もなかった。もとより、位置検出と圧力検出を同時に高精度で実現するとともに、これらの検出機能に関連させたパターンを高品位で表示できる静電容量型センサは知られていなかった。
【0009】
本発明は、以上説明した従来の技術を前提として本願発明者が見出した課題を解決するためになされたものであって、高精度の位置検出と圧力検出が可能であり、係る検出機能と関連させたパターンを高品位で表示することにより、広い応用範囲を実現した高機能な静電容量型圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された静電容量型圧力センサは、
センサ面内で圧力が加えられた位置を検出する位置検出と、当該位置における圧力検出を行う静電容量型圧力センサであって、
発泡体からなる誘電体層と、
前記誘電体層の第1面に設けられて圧力を受ける透光性の第1電極と、
前記第1面の反対側である前記誘電体層の第2面に設けられ、所定の形状である複数の単位電極から構成された透光性の第2電極と、
前記第1電極と前記誘電体層の間又は前記第2電極と前記誘電体層の間に設けられた表示層と、
前記第1電極と前記第2電極の間に電位差を生じさせて前記誘電体層の静電容量に関する測定値を前記単位電極ごとに検出する測定部と、
を具備することを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載された静電容量型圧力センサは、請求項1に記載の静電容量型圧力センサにおいて、
前記第1電極と前記第2電極は、それぞれ透光性材料または透光性構造によって構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載された静電容量型圧力センサは、請求項1又は2に記載の静電容量型圧力センサにおいて、
前記単位電極の電極面積を、
前記第1電極が圧力を受けた際に前記測定部によって前記単位電極ごとに検出される前記測定値の変化量と前記単位電極の電極面積との関係を示す実測データと、
前記測定部によって前記単位電極ごとに検出される圧力の検出段階数を含む条件により決定した前記測定値の変化量の最小値と、
を用いて決定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された静電容量型圧力センサによれば、誘電体層は発泡体から構成されているため透光性であり、誘電体層を挟む第1電極及び第2電極も透光性であるため、裏面側の第2電極に入射した光は、誘電体層と第1電極の間又は誘電体層と第2電極の間に配置された表示層を透過して第1電極から出射し、ユーザーに届くため、ユーザーは表示層に形成された表示パターンを視認することができる。表示層は、第1電極の下方に配置されているので、第2電極の下方に光源がなければ視認できないが、第2電極の下方に光源があれば透光性の第1電極の下側に表示パターンが浮かび上がるため、高級感のある品位の高い表示が得られる。
【0014】
このような静電容量型圧力センサにおいて、第1電極に圧力を加えると、誘電体層は第1電極から圧力を受けて変形し、これによって第1電極と第2電極の距離が変化する。このため、圧力が加えられた位置に対応する単位電極の静電容量が変化するので、当該単位電極について測定部が検出する測定値が変化し、この測定値の変化に対応する値として、当該単位電極に対応する位置での圧力が検出される。
【0015】
ここで、表示層に設けられた表示パターンと、第2電極を構成する単位電極の位置関係は製造時に固定されているため、ユーザーが特定の表示パターンに圧力を加えた場合、その位置に対応する単位電極は一義的に特定され、そのX座標及びY座標から特定の表示パターンに圧力を加えたことが判断できる。また、当該表示パターンに加えられた圧力の値によって、当該表示パターンに割り当てられた機能についてユーザーがどの程度の操作量を望むのかが判断できる。
【0016】
請求項2に記載された静電容量型圧力センサによれば、第1電極と第2電極の透光性を、それぞれ透明金属や透明シート等の透光性材料またはメッシュ構造等の透光性構造を採用することにより実現できるので、現実に適合した有利な条件で静電容量型圧力センサを製造することができる。
【0017】
請求項3に記載された静電容量型圧力センサによれば、複数の単位電極の電極面積は、第1電極が圧力を受けた際に単位電極ごとに検出される測定値の変化量と、単位電極の電極面積との関係を示す実測データから得た関係式に対し、圧力の検出段階数を含む条件により決定した測定値の変化量の最小値を代入することにより決定されている。このため、この静電容量型圧力センサにおいて第1電極に圧力が加えられた場合、検出したい圧力の検出段階数、すなわち必要な精度で圧力を検出できる単位電極の電極面積は最小の値となっている。従って、静電容量型圧力センサの圧力検出範囲内において圧力が加えられた位置を、可能な限り小さい電極面積の複数の単位電極から高精度に検出し、また当該位置における圧力を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】分図(a)は静電容量型圧力センサの模式的構造図であり、分図(b)は静電容量型圧力センサを押圧した際の誘電体層の変形を示す模式図である。
【
図2】分図(a)は実施形態の静電容量型圧力センサの構造を示す分解斜視図であり、分図(b)は実施形態の静電容量型圧力センサにおいて表示パターンが表示されている表面側から見た平面図であり、分図(c)は実施形態の静電容量型圧力センサの第2電極の平面図であり、分図(d)は実施形態の静電容量型圧力センサの単位電極の拡大写真である。
【
図3】実施形態の静電容量型圧力センサにおいて第2電極を構成する複数の単位電極の配線構造を示す平面図である。
【
図4】実施形態の静電容量型圧力センサにおいて、材質は同じで厚さが異なる複数種類の誘電体層ごとに、アイコン(表示層の表示パターン)の見え方と、光の透過率を示した表である。
【
図5】分図(a)は、実施形態の静電容量型圧力センサを含む静電容量型圧力センサにおいて誘電体層に使用可能な材料の種類と、その変形量及び比誘電率を示す比較表であり、分図(b)は、実施形態の静電容量型圧力センサに圧力を加えた場合における発泡体からなる誘電体層の変形態様を示す図であり、分図(c)は、比較例の静電容量型圧力センサに圧力を加えた場合におけるゴムからなる誘電体層の変形態様を示す図である。
【
図6】誘電体としてスポンジが使用された実施形態の静電容量型圧力センサと、誘電体としてスポンジ以外の材料が使用された比較例の2種類の静電容量型圧力センサにおいて、静電容量型圧力センサに加えられる圧力と、得られる測定値の変化量との関係を示すグラフである。
【
図7】誘電体としてスポンジが使用された実施形態の静電容量型圧力センサにおけるスポンジの押込み量と比誘電率の関係を示すグラフである。
【
図8】実施形態の静電容量型圧力センサにおいて、所定の圧力を受けた際に単位電極ごとに検出される測定値の変化量と単位電極の電極面積との関係を示す実測データに基づいたグラフである。
【
図9】実施形態の静電容量型圧力センサを含む静電容量型圧力センサにおいて誘電体層に使用可能な複数の材料と、その物性値を示す比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る静電容量型圧力センサ1を
図1~
図9を参照して説明する。
最初に
図1を参照して、静電容量型圧力センサ1による圧力の検出原理を説明する。
図1(a)に示すように、静電容量型圧力センサ1は、誘電体層2と、誘電体層2の第1面である上面に設けられた第1電極3と、誘電体層2の第2面である下面に設けられた第2電極4と、第1電極3と第2電極4の間に電位差を生じさせて誘電体層2の静電容量の変化に比例した測定値Rを検出する測定部(
図1(a)では不図示)を備えている。
【0020】
図1(a)に示す構造は、実施形態の静電容量型圧力センサが有する複数の単位電極の一つに対応する部分を模式的に表したものであり、実際の製品としての静電容量型圧力センサは、
図2及び
図3に示すように、
図1(a)に示したような構造のセンサが縦横に複数並列され、自己容量方式となるように配線で接続された構造を有しているが、その電極構造及び配線の接続構造等については後に詳述する。便宜上、
図1(a)の構成中、
図2に示す構造と機能上対応する部分については、
図2中の符号と同一の符号を付す。
【0021】
図1(a)に示す静電容量型圧力センサ1の静電容量C
X は、次式(1)で示される。
C
X =ε
0 ε
r (S/d)=ε
0 S×(ε
r /d)=k(ε
r /d)…(1)
ここで、ε
0 :真空の誘電率
ε
r :誘電体層2を構成する誘電体の比誘電率
S:第1電極3及び第2電極4の面積
d:第1電極3と第2電極4の距離
k:定数
【0022】
実施形態の静電容量型圧力センサ1は、
図1(a)に示したような構造のセンサが前述した通り自己容量方式の配線構造で接続されているため、全体としての静電容量C
S は、次式(2)で示すように、センサの静電容量C
X と、センサに接続された配線等の静電容量(寄生容量)C
b を合計した値となる。
C
S =C
X +C
b …(2)
【0023】
従って、測定部は、次式(3)で示すように、このセンサごとに、静電容量CS に比例する測定値Rを出力する。
R=k×CS …(3)
【0024】
図1(b)に示すように、ユーザーが指等により第1電極3を押圧すると、第1電極3及び誘電体層2が変形して距離dが減少し、これに伴って式(1)から分かるように静電容量型圧力センサ1の静電容量C
X は増大する。これにより、式(2)から分かるようにC
S が増大し、式(3)から分かるように測定部による測定値Rが増大する。
【0025】
以下の説明では、測定値Rの変化量をΔRで表す。ユーザーが指又は押圧器具等により第1電極3を押圧した際の圧力の大きさは、現在の測定値Rから、基準状態にある静電容量型圧力センサ1の測定値Rを減じて得た値、すなわち変化量ΔRとして検出することができる。
【0026】
次に、
図2~
図4を参照して、実施形態の静電容量型圧力センサ1の具体的な構造を説明する。
図2(a)の分解斜視図に示すように、静電容量型圧力センサ1は、中間層である誘電体層2と、誘電体層2の第1面である上面側に設けられた表示層10と、表示層10の上面側に設けられた第1電極3と、誘電体層2の第2面である下面側に設けられた基板5と、基板5の上面、すなわち誘電体層の下面と対面する側に形成された第2電極4を有している。すなわち、誘電体層2は、第1電極3と第2電極4の間に挟まれているが、第1電極3と誘電体層2の間には表示層10が介在している。
図2中に示すように、静電容量型圧力センサ1の第1電極3の側が、ユーザーが指等で触れて圧力を加えるセンサ表面側(以後、センサ面とも称する。)となり、また同基板5の側又は第2電極4の側がセンサ裏面側となる。
【0027】
図2(a)に示す第1電極3は、可撓性又は弾性を有し、さらに透光性も備えた導電性のシート状部材、例えば導電布によって構成できる。しかしながら、第1電極3の材質、材料は特定のものには限定しない。例えば透光性の樹脂性シートの裏面に透光性金属膜(例えばITO膜等)を設けたものでもよい。さらにまた、透光性の樹脂性シートの裏面に透光性導電高分子(例えばPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))等)を塗布したものを用いることもできる。なお、第1電極3をメッシュ構造等の透光性構造で構成すれば、表示層10による表示パターンに透光性構造のパターンを重ねて表示する特殊な表示効果が得られるが、そのような効果を望まない場合、又は表示層10による表示パターンをより明瞭に表示する効果を望む場合には、第1電極3は透光性材料で構成することがより好ましい。
【0028】
図2(a)に示す表示層は、絶縁性かつ光不透過性のシートに、孔によって表示パターン(アイコンとも称する。)11を形成した部材であり、
図2(a)に示すように静電容量型圧力センサ1のセンサ裏面側に光源Lを配置すれば、
図2(b)に示すように静電容量型圧力センサ1の表面側(センサ面)において、第1電極3の下方に表示パターンを浮かび上がるように表示させることができる。すなわち、この実施形態では、センサ表面側にある第1電極3と、第1電極3の下にある誘電体層2の間に表示層10を設けたので、光源Lからの光は誘電体層を透過した後に表示層10を透過するため、表示パターン11を輪郭のはっきりした明瞭な形態で浮かび上がらせるような良好な表示効果を得ることができる。
【0029】
なお、
図2(a)及び(b)に示した表示パターン11は、一例として、2個の独立した三角形が、それぞれ頂点を左右に向けた姿勢で左右に並んだパターンと、2個の三角形の間に配置された座席のパターンと、座席のパターンの下に配置された双方向の矢印のパターンを含んでいる。このような表示パターンが設けられた静電容量型圧力センサ1は、自動車に搭載されて座席の前後方向の位置調整の操作手段として用いられる。すなわち、右側の三角形が制御対象たる座席の後方への移動を表し、左側の三角形が制御対象たる座席の前方向への移動を表す。各三角形の表示パターン11に加える圧力は、座席の前後方向への移動量を表すものとして検出される。ユーザーがタッチパネルに表示された2個の三角形の何れかを選択して所望の圧力で押圧することにより、座席を前又は後に所望の量だけ移動させる信号が出力され、これを駆動源のモータに与えて座席の位置を調整することができる。
【0030】
なお、自動車の座席の前後位置を調整するための操作手段は、静電容量型圧力センサ1の有用な応用例であるが、あくまで一例にすぎず、実施形態の静電容量型圧力センサ1の用途を特に限定するものではない。
【0031】
なお、表示層10として、有色で光難透過性のシートを用いることにより、表示パターン11の形状を有色の背景中に光源色で表示させることもできる。なお、表示パターン11を備えた表示層10は必ずしもシート状である必要はなく、誘電体層2の上面又は第1電極3の下面に印刷で形成してもよい。
【0032】
図2(a)に示す誘電体層2は、ポリエチレンの発泡体であるスポンジから構成されている。スポンジは、空気を内包した多数の空洞を内部に有しているため、所定の光透過性を備えている。なお、前記表示層10による表示に関係するスポンジの光透過性と厚さとの関係や、静電容量型圧力センサ1に用いられる誘電体としての物性等については、後に詳述する。
【0033】
図2(a)に示すように、誘電体層2の下面には、誘電体層2と略同一の外形である剛性を備えた絶縁性の基板5が取り付けられている。第2電極4は、この基板5の上面、すなわち誘電体層2の下面と対面する側に設けられている。基板の材質は特に限定しないが、絶縁性及び透光性を有する板材、例えば透明な樹脂板を使用できる。
図2(a)を参照して以上説明したように、第1電極3と、表示層10と、誘電体層2と、基板2は、平面視で同一の矩形状であり、静電容量型圧力センサ1は全体として矩形のパネル状に構成されている。
【0034】
図2(a)及び(c)と、
図3の配線構造図に示すように、第2電極4は、正方形の複数の単位電極6が、3行×4列の配置で規則的に配置された合計12個の単位電極6から構成されている。なお、単位電極6の12個の個数は例示にすぎず、単位電極6は必要に応じて12個未満でもよいし、13個以上でもよく、また単位電極6の形状は正方形以外の形状でもよい。
【0035】
図2(c)は、12個の単位電極6から構成された第2電極4の模式的平面図であり、
図2(d)は1個の単位電極6を拡大した平面視の写真である。これらの図に示すように、単位電極6は、その全面に形成された多数の貫通孔からなるメッシュ状の透光性構造を有している。第2電極4の各単位電極6におけるメッシュ状の透光性構造は、基板の表面に、多数の孔が並ぶ金属膜のメッシュパターンをスクリーン印刷などの薄膜形成技術で形成することで得られる。又は、多数の孔が並ぶメッシュパターンのマスクを基板に重ね、スパッタ法によりターゲット金属をマスクの開口部から基板上に被着させることでも得られる。なお、第2電極4はITOやPEDOT等の透光性材料で構成してもよいが、第2電極4は、センサの応答速度の観点からは抵抗率が低い方が好ましいため、銅などの抵抗率の低い材料をメッシュ状の透光性構造に形成して構成することがより好ましい。
【0036】
図3に示すように、3行(横方向の4個の単位電極6の並び)×4列(縦方向の3個の単位電極6の並び)で縦横に配置された12個の単位電極6は、自己容量方式と呼ばれる配線構造を介して基板5外にある図示しない測定部に接続されている。12個の単位電極6には、図中全箇所には符号を付していないが、専用の配線7(
図2には不図示)が個々に接続されており、12本の配線7は相互に接触しないように基板5上を引き回され、基板5外に導出されて基板5外の図示しない測定部に接続されており、それぞれGNDとの間に所定の電圧を加えられるようになっている。また、自己容量方式の配線構造であるため、第1電極はGNDに接地されている。第2電極4を構成する個々の単位電極6の静電容量C
S は、前述した式(2)で示したように、単位電極6で構成されるセンサ部分の静電容量C
X と配線7等の静電容量(寄生容量)C
b を合計した値となり、測定部は前述した式(3)で示したように静電容量C
S に比例する測定値Rを出力する。このような自己容量方式の配線構造によれば、単位電極6及び配線7の構造が単純であり、測定部における静電容量C
S 及び測定値Rの計算が容易である。すなわち、
図1を参照して説明した静電容量型圧力センサ1の原理に従い、単位電極6ごとに測定値R(又はその変化量をΔR)を得ることができる。
【0037】
なお、実施形態では、単位電極6の構造及び配線7による接続構造を自己容量方式としたが、単位電極及び配線による接続構造を相互容量方式の構造で構成してもよい。すなわち、
図3に示す構造例において、3行(横方向又はX方向の4個の単位電極6の並び)×4列(縦方向又はY方向の3個の単位電極6の並び)で縦横に配置された12個の単位電極6を、それぞれ外側の矩形枠部と、矩形枠部の内部に矩形枠部と絶縁して設けた矩形部とで構成する。横(X)方向の4個の単位電極6の並びについては、それぞれ共通の配線(合計3本)で4個の矩形枠部を接続し、また縦(Y)方向の3個の単位電極6の並びについては、それぞれ共通の配線(合計4本)で3個の矩形部を接続する。横(X)方向の配線と、縦(Y)方向の配線の交差部分は絶縁構造とする。そして、横(X)方向の3本の配線と縦(Y)方向の4本の配線を、相互に接触しないように基板5上を引き回し、基板5外に導出して基板5外の図示しない測定部に接続する。なお、自己容量方式の場合は第1電極3をGNDへ接続したが、相互容量方式の場合にはその必要はない。この相互容量方式は、単位電極及び配線の構造が自己容量方式に較べてやや複雑であり、測定部における静電容量C
S 及び測定値Rの計算もやや複雑である。しかしながら、単位電極の数が多い場合には、実施形態で採用した自己容量方式では配線の引き回し等に限界があるため、相互容量方式を採用してもよい。
【0038】
次に、前記表示層10による表示に関係するスポンジの光透過性と、スポンジの厚さとの関係について
図4を参照して説明する。前述したように、静電容量型圧力センサ1は、透光性の第1電極3と、透光性の表示パターン11において光を透過する表示層10と、スポンジの誘電体層2と、透光性の第2電極及び基板5が積層された構成のパネルであって、センサ裏面側の光源からの光がパネル内を透過してセンサ表面側にいるユーザーに到達して表示パターン11が視認されるようになっている。ここで、静電容量型圧力センサ1の構成部分のうち、第1電極3と、表示層10の表示パターン11と、透光性の第2電極及び基板5は、透光性の材料又は孔(表示パターン11)であって光の透過性は十分であるが、誘電体層2のスポンジは、透光性はあっても、あまり厚いと表示パターン11が視認できないくらいに光を遮ってしまうことが予想される。
【0039】
そこで本願発明の発明者等は、実施形態の静電容量型圧力センサ1において、厚さが2mmのポリエチレンのスポンジのシートを複数枚用意し、これを1~6の各枚数だけ使用した6種類の静電容量型圧力センサ1を製造し、
図1(a)に示すようにセンサ裏面側を一定の明るさの光源Lで照らし、各静電容量型圧力センサ1の光透過率(%)を測定するとともに、アイコン11の見え方を○(良)、△(可)、×(不可)の三段階で評価して
図4の一覧表にまとめた。
【0040】
図4に示すデータによれば、スポンジ3枚までは実用上許容される表示が得られるが(△)、1枚の場合の表示が最も好ましい結果となった(○)。スポンジが4枚以上であると透過率が0.2%未満となり、アイコン11は略見えなくなってしまう。
【0041】
次に、
図5~
図7を参照して、実施形態の静電容量型圧力センサ1における誘電体層2の材質について説明する。
実施形態の静電容量型圧力センサ1では、誘電体層2を構成する材料として、以下に説明するように発泡体(スポンジ)を採用した。
図5(a)は、静電容量型圧力センサ1において、誘電体層2に使用可能な材料の種類(3種類)と、その変形量及び比誘電率と、その評価を示す記号○(良)又は△(可)を示した比較表である。一般的な従来の静電容量型圧力センサでは、中間層である誘電体層としては空気(エアギャップ)や弾性変形するゴムが使われる場合が多い。しかしながら、この表に示すように、発泡体に較べ、空気の場合は比誘電率が低く、またゴムは変形しにくく、いずれも感度が低いため、高精度な圧力検出を目的の一つとする実施形態では採用できず、実施形態では誘電体層2の材料には発泡体を採用した。なお、上述のように発泡体が変形しやすく、ゴムが変形しにくいのは、
図5(b)に示すように、発泡体(誘電体層2)は圧力を加えられると内部の気泡(空隙)が潰れて体積が減少するのに対し、
図5(c)に示すように、ゴム(誘電体層2a)は圧力を加えられると横方向へ移動するため、体積が移動するだけで減少しないからである。実施形態では、気泡を持つ発泡体で誘電体層2を構成したので、比較例の物質に較べ、比誘電率及び圧力に対する変形量が大きくなり、これによって静電容量の変化が大きくなるため、高感度の静電容量式圧力センサが実現可能となった。
【0042】
図6は、誘電体層2がスポンジ(3)である実施形態の静電容量型圧力センサ1と、誘電体層がスポンジ以外の材料(シリコーンゲル(2)及びシリコーンゴム(1))である比較例の2種類の静電容量型圧力センサにおいて、静電容量型圧力センサに加えた圧力と、得られた測定値の変化量ΔRとの関係を実験結果に基づいて示すグラフである。なお、実施形態と比較例の静電容量型圧力センサの材料、構造等は、誘電体層の材質以外は同一である。
【0043】
図6のデータによれば、どの静電容量型圧力センサであっても、圧力を加えると測定値Rの変化量ΔRは略一定の比例定数で上昇するが、圧力と変化量ΔRの比例定数は、誘電体層2にスポンジを用いた実施形態の静電容量型圧力センサ1が最も大きかった。そして、詳細は後述するが、一定の現実的な条件を前提として、静電容量型圧力センサ1を指で押圧して圧力を有効に検知することができる変化量ΔRを100とした場合、実験結果によれば、この変化量ΔR=100を越えるのは実施形態の静電容量型圧力センサ1のみであり、誘電体層2をスポンジ(3)以外の物質で構成した2つの比較例(1)(2)では、圧力を上昇させても変化量ΔR=100を越えることはなかった。これは、静電容量型圧力センサ1に現実に加えられることが想定される程度の圧力を越えた圧力を加えた場合、比較例の静電容量型圧力センサでは圧力を有効に検知できる変化量ΔRが得られず、高精度な圧力検知ができないが、実施形態の静電容量型圧力センサ1ではそれが可能であることを示している。
【0044】
図7は、実施形態の静電容量型圧力センサ1において、誘電体層2であるスポンジの押込み量(
図4に示した変形量と同じ)と比誘電率との関係を、理論値と実測値で示したものである。
【0045】
図7のデータによれば、押込み量の増加、すなわちスポンジの厚さである前記距離dの減少に伴い、理論値と実測値の双方とも静電容量は増加するが、理論値は押込み量が1mmで2.00×10
-12 であるが、比誘電率の実測値の増大は理論値よりも急であり、押込み量が1mmで3.88×10
-12 となった。
【0046】
先に
図5(b)で示したように、発泡体は圧力を加えられると内部の気泡が潰れて体積が減少する。
図7に表れた理論値に対する実測値の差は、圧力を加えられて発泡体の内部の気泡が潰れることで空気の占める割合が減少し、全体としての比誘電率が増加したためと考えられる。以上の結果から見て、発泡率が大きく潰れやすいため、第1電極3と第2電極4の距離dが減少しやすく、また気泡の潰れによって比誘電率が大きくなりやすい発泡材料は、実施形態の静電容量型圧力センサ1の誘電体層2として適している。
【0047】
次に、
図8に示す実測データを参照して、実施形態の静電容量型圧力センサ1における単位電極6の電極面積と圧力の検出段階数との関係について説明する。以下の説明は、実施形態の静電容量型圧力センサ1において、単位電極6に圧力が加えられた場合に、必要な精度で圧力を検出しつつ、センサ面における位置情報を高精度で検出するために、単位電極6の最小の電極面積を決定する方法に関するものである。
【0048】
図8に示す右上がりの直線は、実施形態の静電容量型圧力センサ1において、所定の圧力を受けた際に単位電極6ごとに検出される測定値Rの変化量ΔRと、単位電極6の電極面積(mm
2 )との関係を示す2つの実測値(◇印で示す)から得た実測データであるグラフである。
【0049】
ここでは、静電容量型圧力センサ1のセンサ面を指で押圧することを想定し、圧力の検出に最低限必要な変化量ΔR、すなわち前記測定値の変化量ΔRの最小値を求め、この変化量ΔRの最小値が得られるような単位電極6の最小限の電極面積を決定する。
【0050】
まず、測定条件を規定する。センサ面を押圧する荷重として、一般的なメカスイッチを指で操作する際に必要とされる荷重(max)である5[N]を想定する。また、センサ面を押圧する器具又はユーザーの指の直径を10[mm]と想定する。これらの想定値からセンサ面を押圧する際の圧力(max)は、0.064[MPa]となる。
【0051】
次に、圧力を検出する際に要求される検出段階として5段階を想定する。また、測定時のノイズに起因する変化量ΔRの測定値のばらつきを求め、その実測値におけるばらつきの程度から変化量ΔRの標準偏差σを5と定め、±2σの値から圧力測定で区別すべき一段階を20とした。その結果、5段階×(±2σ)=100を、変化量ΔRの最小値とした。
【0052】
次に、第2電極4が複数の8.3mm角(電極面積が約68.9mm
2 )の単位電極6で構成された静電容量型圧力センサ1と、第2電極4が複数の10mm角(電極面積が100mm
2 )の単位電極6で構成された静電容量型圧力センサ1をそれぞれ作製し、それぞれにおいて、直径を10[mm]の指等で5[N]の荷重を加え、実際に0.064[MPa]の圧力を単位電極6に与えて各静電容量型圧力センサ1の各測定部で変化量ΔRの測定結果を得た。
図8に示す電極面積(横軸、mm
2 )と変化量ΔR(縦軸)の関係を示す座標面に、8.3mm角の単位電極6の電極面積68.9mm
2 と、対応する変化量ΔRの値から第1の点(図中左下側の◇)をプロットし、また10mm角の単位電極6の電極面積の値100mm
2 と、対応する変化量ΔRの値から第2の点(図中右上側の◇)をプロットし、これら2つの点を通過する直線を引く。この直線のグラフを表す式が電極面積とΔRの関係式である。これら2つの点は実際に測定して得た実測データであり、これら2つの点から得た直線のグラフと、当該グラフを表す式も、また実測データと言える。
【0053】
次に、先に計算した最低限必要な変化量ΔR=100となる電極面積を計算する。
図8に示す直線のグラフ又はその関係式において、変化量ΔR(変化量ΔRの最小値)=100となる点の電極面積を読み取り又は算出すると、62mm
2 となる。従って、電極面積が62mm
2 である単位電極6が正方形であるとすれば、その1辺の長さは、√62(mm
2 )=7.9(mm)となる。これは通常のユーザーの指と同程度の形状、サイズに相当する。
【0054】
このように、変化量ΔR=100を元にして決めた電極面積の電極(面積62mm2 、一例として1辺7.9(mm)の角形)であれば、想定した規定圧力(0.064[MPa])において、センサ面に加わった圧力を5段階の精密さで確実に検出することができる。
【0055】
以上説明した単位電極6の電極面積と圧力の検出段階数との関係によれば、検出したい圧力の検出段階数、すなわちユーザーが求める圧力の検出精度を担保できる範囲で、単位電極6の電極面積は最小の値となっている。単位電極6の電極面積が小さければ小さいほど、センサ面内における位置検出の精度は高くなる。すなわち、本発明によれば、静電容量型圧力センサ1のセンサ面内において圧力が加えられた位置の検出を、可能な限り小さい電極面積の複数の単位電極6から高精度に検出できると同時に、当該位置における圧力をユーザーが求める段階数で高精度に検出することができる。
なお、以上説明した単位電極6の形状は正方形であるものとしたが、その形状には特に限定はなく、例えば菱形、長方形、円形等であってもよい。
【0056】
なお、先に
図5~6を参照して、変形量と比誘電率が大きい誘電体層2の構成物質として発泡体(スポンジ)を説明したが、単位電極6の電極面積をより小さくするためにも、誘電体層2の材料には、圧力を受けた際の変形量が大きく、比誘電率が高い材料を選ぶ必要がある。
【0057】
図9は、
図5~
図8を参照して行った説明の一部も加味して、実施形態の静電容量型圧力センサ1の誘電体層2を構成するスポンジ(ポリウレタン)と、比較例であるシリコーンゴム及びシリコーンゲルについて、それぞれの物質の比誘電率と規定圧力での変形量を含む各種物性値を並べて示した比較表である。
【0058】
掲示した具体的な物理量は、比誘電率と、40%圧縮荷重[MPa]と、
図8の説明で想定したセンサ押圧時の規定圧力(0.064[MPa])における変形量[mm]と、圧力印加前における密度[kg/cm
3 ]と、規定圧力(0.064[MPa])における密度[kg/cm
3 ]と、規定圧力(0.064[MPa])における変化量ΔRと、
図8を参照して説明した変化量ΔR=100となる単位電極6の最小電極面積である。
【0059】
図9の比較表の各数値を検討することにより、実施形態の静電容量型圧力センサ1において誘電体層2の構成材料としてスポンジ(ポリウレタン)が適していることを以下に説明する。スポンジは、気泡を多く含むため、他のシリコーンゴム及びシリコーンゲル(以下、「2つの比較例」と称する。)に較べて比誘電率は小さい。しかし、スポンジの40%圧縮荷重[MPa]は、2つの比較例の10分の1以下の小ささであり、センサ押圧時の規定圧力(0.064[MPa])における変形量[mm]は2つの比較例の8倍以上となる。このようにスポンジは変形しやすいため、静電容量型圧力センサ1において高感度を得やすい。またスポンジは、容易に押し込まれて変形するため気泡が潰れて(
図4(b)参照)比誘電率が増加し、この点においても高感度が得やすい。またスポンジは、圧力印加前における密度[kg/cm
3 ]は、2つの比較例に較べて小さいが、規定圧力(0.064[MPa])における密度[kg/cm
3 ]は、2つの比較例では変化がないのに対し、スポンジでは1.35倍にもなり、圧縮により気泡が潰れて変形量が大きくなることを示している。そして、スポンジは、規定圧力(0.064[MPa])における変形量ΔRの値が2つの比較例に較べて概ね3倍以上となっており、また変形量ΔR=100における単位電極6の最小電極面積はスポンジが最も小さく、単位電極6が角形であるとすると、スポンジの場合は辺長が7.9mmであり、シリコーンゴムの場合は辺長が15.0mmであり、シリコーンゲルの場合は辺長が12.0mmであり、スポンジを採用した実施形態の場合が単位電極6を最もコンパクトに設定できている。
【0060】
以上説明した実施形態によれば、第1電極3と誘電体層2の間に表示層10を配置することにより表示パターン11の形態を明瞭に表示する効果を得ていたが、他の実施形態として、第2電極4と誘電体層2の間に表示層10を配置してもよい。この場合には、光源Lからの光は表示層10を透過した後に誘電体層2を透過しながら拡散するので、表示パターン11の輪郭を明瞭にする効果は得られないが、逆に表示パターン11の輪郭をぼかすような特殊な表示効果を得ることができる。このように、表示層10を誘電体層2の上下何れに配置するかは、表示の内容や目的に応じて任意に選択すればよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、センサ面内の位置と、当該位置に加えられた圧力の両方について高精度な検知機能を備え、しかもこの検知機能と関連した高品位の表示機能も備えた静電容量型圧力センサ1を実現することができた。
【符号の説明】
【0062】
1…静電容量型圧力センサ
2…誘電体層
3…第1電極
4…第2電極
5…基板
6…単位電極
7…配線
10…表示層
11…表示パターン
L…光源