(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240112BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20240112BHJP
G02B 25/00 20060101ALI20240112BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20240112BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20240112BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B26/12
G02B25/00
G02B17/00
G02B17/08
G03H1/22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021106832
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2018071902の分割
【原出願日】2011-11-04
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】102011053710.4
(32)【優先日】2011-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102011078027.0
(32)【優先日】2011-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102010043557.0
(32)【優先日】2010-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507230267
【氏名又は名称】シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェッテラー, ゲラルド
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-520994(JP,A)
【文献】特表2002-506590(JP,A)
【文献】特表2009-545762(JP,A)
【文献】特開平06-284444(JP,A)
【文献】特表2008-512698(JP,A)
【文献】特開2002-098928(JP,A)
【文献】特表2010-512551(JP,A)
【文献】特開2001-264684(JP,A)
【文献】特開2005-348382(JP,A)
【文献】特開2001-281594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0109819(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0081207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
G02B 30/00-30/60
H04N 13/30
G03H 1/08,1/26
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの空間光変調器と少なくとも1つの結像光学系とを備える、2次元及び/又は3次元の情報を提示するための表示デバイスであって、
前記少なくとも1つの空間光変調器と前記少なくとも1つの結像光学系とは、ビューボリュームにおいて前記情報をセグメント化して提供するように設計され、
2次元情報及び/又は立体3次元情報と、ホログラム3次元情報との結合が提供され、
前記ホログラム3次元情報の生成は、観察者
が表示された前記情報を
高解像度で知覚する立体角度範囲内で提供される、表示デバイス。
【請求項2】
2次元情報及び/又は立体3次元情報と、ホログラム3次元情報との前記結合は、立体角に関して可変である、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項3】
前記2次元情報及び/又は前記立体3次元情報の生成は、観察者
が表示された前記情報を
低解像度で知覚する立体角度範囲内で提供される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項4】
前記2次元情報及び/又は前記立体3次元情報は、前記ホログラム3次元情報に重畳される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項5】
前記2次元情報及び/又は前記立体3次元情報の提示、及び、前記ホログラム3次元情報の提示は、交互配置されるように、互いにフェードインするように、あるいは、隣接するように結合される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項6】
観察者の眼球の位置、及び/又は、観察方向が検出可能であって、前記ホログラム3次元情報は、眼球運動の発生時に観察者の眼球運動を追跡可能である、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項7】
前記ホログラム3次元情報を有する前記立体角度範囲が、0度から±13度の角度範囲で提供される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項8】
前記2次元情報及び/又は立体3次元情報を有する前記立体角度範囲が、+13度から+39度、及び、-13度から-39度の間の角度範囲において提供される、請求項3に記載の表示デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの空間光変調器が前記ホログラム3次元情報を符号化するために提供され、少なくとも1つの空間光変調器が2次元情報及び/又は立体3次元情報を符号化するために提供される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項10】
前記ビューボリュームにおいて前記情報をセグメント化して提供することは、時間的及び/又は空間的に実行される、請求項1又は9に記載の表示デバイス。
【請求項11】
前記ホログラム3次元情報を符号化するための前記少なくとも1つの空間光変調器は、少なくとも1つの光源により照射され、
前記2次元情報及び/又は立体3次元情報を符号化するための前記少なくとも1つの空間光変調器は、少なくとも1つの他の光源により照射される、請求項9に記載の表示デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの空間光変調器の多重画像が生成されるように設計された、光偏向デバイスを更に備え、前記多重画像は複数セグメントから構成される、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項13】
前記多重画像は、少なくとも所定数のセグメントを含み、かつ、観察者のために符号化情報が再構成されるビューボリュームの大きさを規定する、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項14】
前記光偏向デバイスは、前記少なくとも1つの空間光変調器の前記多重画像の前記複数セグメントが実質的に間隙なく結合される、或いは、部分的に重複して結合されるように設計され、重複領域は、前記情報を生成する際に許容される、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項15】
前記光偏向デバイスは、前記少なくとも1つの空間光変調器の前記多重画像を生成する複数セグメントの数及び/又は大きさが可変となるように設計されている、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項16】
前記光偏向デバイスは、可変格子周期の制御可能な液晶格子を含む少なくとも1つの制御可能な光偏向手段を備える、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項17】
眼球の運動により制御された眼球の運動に対する仮想ビューイングウィンドウの追跡を行う制御可能な追跡デバイスを更に備えるか、又は、光偏向デバイスが、前記眼球の運動に従った仮想ビューイングウィンドウの制御された追跡を提供する、請求項1又は12に記載の表示デバイス。
【請求項18】
前記光偏向デバイスは、前記少なくとも1つの空間光変調器のセグメント化された多重複合画像が、対物レンズの面において生成されるように設計されている、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項19】
前記光偏向デバイスによる複数セグメントで構成される前記少なくとも1つの空間光変調器の前記多重画像が更なる拡大方式で結像される追加の結像手段が光軸上に提供される、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの空間光変調器により変調された波面の高次の回折次数をフィルタするために、光軸上に少なくとも1つのフィルタが配置された、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項21】
観測者の眼球の瞳位置に手動または自動で仮想ビューイングウィンドウを調節し、個々の眼球についての分離を提供する調整手段が提供された、請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項22】
前記光偏向デバイス、及び、前記少なくとも1つの空間光変調器の前記多重画像の複数セグメントを生成及び/又は結像するための前記結像光学系の更なる光学部材が、複数セグメントで構成される該多重画像が湾曲した方式で生成及び/又は結像され、該湾曲が3次元シーンの符号化の際に許容されるように設計される、請求項12に記載の表示デバイス。
【請求項23】
ヘッドマウントディスプレイとして設計されている、請求項1に記載の表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的広大な再構成空間(ビューボリューム)において、空間光変調器(SLM:spatial light modulator)による多重複合画像を用いたホログラム再構成を生成する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に視覚表示装置は、例えば2次元の映像情報、コンピュータにより生成された立体画像、ホログラム生成された3次元シーンの情報をユーザに見せている。
【0003】
生成された画像又は再構成された3Dシーンを直接、即ち光学倍率なしに実画像として表示できる表示装置に加え、仮想的に生成された画像が表示される多数の表示装置が当該技術分野において知られている。このような表示装置は、バーチャル画像ディスプレイ(VID:virtual image display)としても知られている。
【0004】
バーチャル画像を生成するディスプレイは、眼球の近くに配置される表示装置、いわゆるニアツーアイディスプレイにおいてしばしば使用される。このような表示装置は、例えばヘッドマウントディスプレイ(HMD:head-mounted display)又はヘルメットマウントディスプレイ(HMD:helmet-mounted display)として知られている。それらはしばしば「データグラス」とも呼ばれる。
【0005】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、ユーザが眼鏡のように装着する、あるいはヘルメットと同様に頭にかぶる表示装置である。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、観察者の一方の眼球(単眼HMD)又は両方の眼球(両眼HMD)として動作されうる。
【0006】
本発明はヘッドマウントディスプレイに限定されるべきではない。また本発明は、眼球の近くに位置している拡大レンズ(接眼レンズ)を介して、観察者が少なくとも1つのディスプレイパネルの拡大提示又は表示装置により再構成されたような3次元シーンの拡大提示を閲覧するいかなる固定型あるいは携帯型の表示装置に関する。以下、電子「覗きからくり」に類似しているこのようなホログラム表示装置を「ホキュラー(hocular)」と呼ぶ。HMDとは対照的に、この種の装置は、サイズ及び重量に関する要求は大きくない。疲労を引き起こさせずに広大な空間深度を有する3Dデータセットを長期間にわたり閲覧する場合は必ず、この種の装置が使用できることが好ましい。これは、例えば3次元計算されたトモグラフィ、磁気共鳴式トモグラフィ、共焦点顕微鏡検査、あるいは超音波画像データを観察させる医療機器の場合に当てはまる。
【0007】
本発明は、正面図ディスプレイとして観察者の視野上に配置され、且つ拡大されたバーチャル画像又は実画像も生成する表示装置(ヘッドアップディスプレイ)にも適用されうる。
【0008】
また本発明は、拡大実画像を生成する表示装置に適用されうる。
【0009】
明示的に示されない限り、一般に以下の説明は、ヘッドマウントディスプレイ又はホキュラーディスプレイ等のバーチャル画像を生成する表示装置に当てはまる。簡略化するために、以下HMDという用語のみを使用するが、拡大実画像を生成する装置が除外されるわけではない。
【0010】
HMDでは、観察者は、実際の環境から完全に遮蔽されうるため、いわゆる仮想現実(VR:virtual reality)の形式で表示された情報のみを知覚する。他の装置では、実際の環境が例えば半透過型ミラーを介して表示された情報と重畳されるため、拡張現実(AR:augmented reality)が実現される。
【0011】
ホキュラー装置では、例えば現実の環境は、マイクロスコープの追加の光路を通して生成される、現実オブジェクトの微細画像を含みうる。装置の中には、制御可能な手段の影響を受ける程度の重畳を許可するものもある。完全に遮蔽された装置は、眼球の近くに配置される少なくとも1つのカメラを有していてもよい。また、カメラ画像と表示される情報の重ね合わせが、ARの応用例において可能であってよい。
【0012】
眼鏡型及びヘルメット型を含む様々な種類のヘルメットマウントディスプレイは、多くの文献において開示されている。
【0013】
例えば米国特許出願公開第2009/0180194号明細書において3Dシーンの立体表現用のHMD装置が知られている。
【0014】
3次元シーンのホログラム再構成用のHMD型の表示装置は、例えば出願人により出願された国際公開第2008/071588号A1パンフレットにより知られている。このようなHMDでは、3Dシーンは、小さなビューボリュームにおいてのみ再構成できる。この装置において作成される、「スイートスポット」とも呼ばれるビューイングウィンドウ(VW:viewing window)は、ほぼ瞳孔の直径しか有さない。一般にビューイングウィンドウは、実際の開口により形成されるのではなく、仮想的に生成されるだけである。
【0015】
ホログラム情報がSLM上で1次元符号化されると、生成されたビューイングウィンドウは非干渉及び可干渉の方向を有する。可干渉方向は、変調器セルの有効グリッドにより生成される2つの回折次数間の距離で規定される。有効グリッドは、観察者の眼球により知覚されるようなSLMマトリクスである。ホログラム再構成は、選択された2つの回折次数間で閲覧されうる。それらの距離は、二重像を防止するように観察者の眼球の瞳孔の直径より大きい必要がある。垂直符号化の場合、回折次数は水平方向に生成される。非干渉方向におけるビューイングウィンドウのサイズは、照明光の角度スペクトルにより規定される。
【0016】
ビューイングウィンドウの頻繁な追跡を回避するために、ビューイングウィンドウは、例えば15mm×15mm等、瞳孔より実質的に大きい必要がある。これには、系において使用される空間光変調器が小さなピッチを有することが必要となり、このために必要な大きさの回折角が作成されうる。従って、広い視野を同時に実現しつつこの条件を満たすために、高分解能の大規模の光変調器が必要である。
【0017】
観察者の瞳孔は通常、ホログラフ的なHMDのビューイングウィンドウにおいて2つの回折次数間に存在するべきである。
【0018】
人間の眼球の一般的な分解能において、所定の頂角を有し、所定の距離に生成された再構成を高品質及び高輝度で見ることができるように、HMD装置は、非常に多くの変調器セル(画素)を含む空間光変調器(SLM)を有するべきである。これは、SLMの変調器セルが1次元符号化されるだけである場合に特に重要である。例えば、HMDにおいて使用される小型SLMは、3*10^6個より少ない変調器セルの変調器セルマトリクスを有する。生成される再構成についてより大きなビューボリュームを提供できるように、SLMは、20*10^6個より多い変調器セルの変調器セルマトリクスを有するべきである。
【0019】
従って、1つの目的は、高分解能のホログラム再構成を生成できるように変調器セルマトリクスにおいて少数の変調器セルを有するHMD装置を変更することである。
【0020】
更なる目的は、可能な限り大きな再構成がマッチング距離において現実環境と重畳するように、可能な限り大きく、ホログラム直視型ディスプレイと同等のビューボリュームをホログラムHMD装置において提供することである。
【0021】
観察者により知覚される全空間の一部であるビューボリューム(VOV:volume of view)は、ピークの代わりに、観察者の眼球の入射瞳において生成される小さなビューイングウィンドウを示す平面を有する角錐台(錐台)として規定されうる。ビューボリュームは、観察者の眼球からのサイズ及び距離が水平及び垂直の頂角を規定する平面も有する。例えば該平面は、ホログラム符号化された3次元シーンを再構成するSLMの拡大バーチャル画像でありうる。ビューボリュームは、観察者の眼球から無限空間に広がる。ビューボリュームは、必ずしも正方形又は矩形の断面を有さなくてもよい。ビューボリュームは、使用されるSLMの形状及び視野を制限するあらゆる開口の形状に依存して、円形、楕円形又は六角形等の異なる断面を有しうる。
【0022】
ホログラムディスプレイ、即ち更にはホログラムHMDにおいて、一般にビューイングウィンドウ(VW)のサイズにより規定される空間帯域幅積(SBP:space-bandwidth product)は、最小限まで減少されるべきである。ビューイングウィンドウの大きさが眼球の入射瞳(EP:entrance pupil)と同一である場合、依然として最大の物体分解能を可能にする最小のSBPが実現される。ビューイングウィンドウがこのサイズを超えて拡張するとSBPは増加するが、ビューイングウィンドウを追跡する必要がないという利点がある。
【0023】
空間光変調器が複素数値で1次元符号化される場合及びビューイングウィンドウのサイズが例えばVW=15mmである場合、可干渉方向で角度(°)毎に700個を超える変調器セルが必要とされる一方で、非干渉方向では角度毎に僅か60個の変調器セルしか必要とされない。
【0024】
上述の全ての特徴のうち、例えば、大規模の3Dシーンを再構成するHMDは、大規模のビューボリューム、高コントラスト、及び観察者の眼球に至る長い距離を少なくとも有するべきである。ビューイングウィンドウは、観察者の眼球に対してビューイングウィンドウを追跡するために、ディスプレイにおいて追跡装置を起動する必要なく、観察者の瞳孔がある程度自由に移動するために少なくとも十分な大きさであるべきである。
【0025】
ビューボリュームは、HMDにおいて生成される再構成が相対的に高いコントラストで現実環境とに重畳されうるような頂角を有するべきである。従って、観察者は、3Dシーンの3次元表現がホログラム直視型ディスプレイにおいて実現されうる場合にそれを知覚する。
【0026】
可能な限り高い分解能を有する空間光変調器を提供するために、このような変調器表面を実現するように1次元又は2次元で可能な限り狭い間隙で低分解能を有する多数の空間光変調器を接合することは、当該技術分野において知られている。これは、主に空間光変調器を拡大結像することで実現される。このような構成には、大量の装置を必要とするという欠点がある。従って、HMDについてそれはあまり好適ではない。
【0027】
別の方法によれば、低分解能空間光変調器の画像は、順次1次元又は2次元で接合される。傾斜ミラー又はポリゴンミラー等の機械的偏向手段は、通常この目的のために使用される。このような機械的偏向手段は、装置の大規模な体積を必要とし、HMDにとって非常に好適でない妨害ノイズを発生しうる。しかしながら、固定装置においては、このような機械的偏向手段は首尾よく使用されうる。国際公開第00/28369号A2パンフレットにおいて、切り替え可能な回折ブラッグ格子によりこのような接合を実現することが提案されている。これらの切り替え可能な格子の製造中、一般に、固定の格子構造は、ホログラムに露光されている間に液晶と高分子との混合の重合により作成される。液晶の屈折率は、光が妨害されていない格子を通過するように、あるいはその格子により回折、即ち偏向されるように、電極構造に供給される電圧を変更することで調整される。該構成には、固定の格子構造のために1つの回折角しか実現できないという欠点がある。また、この角度は波長に依存している。従って、広い高分解能の変調面を得るために多数の変調器画像を接合したいと考えると、部分的な画像又はセグメント毎に独立した格子を提供しなければならず、これらの格子はスタック状に配置されなければならない。光が妨害されていない非起動の他の格子を通過している間、該スタックの1つの格子のみが所望の方向に光を偏向するように常に起動される。カラーディスプレイでは、波長が回折角に依存するために、生成される変調画像のそれぞれについて、及び赤、緑及び青の各色成分について、即ち部分的な画像についての3つの格子のそれぞれについて、独立した切り替え可能な回折格子が必要とされる。このような切り替え可能な回折格子を100%の回折効率で製造することは不可能であるため、全ての格子がOFFに切り替えられている間に格子スタックを通過する非回折光は、画像の生成のために正常に使用されない。
【0028】
従って、1次元で3つの画像を接合するには、以前から種々の固定の格子定数を含む9個の切り替え可能な格子のスタックが必要である。
【0029】
各光学インタフェースが反射を発生させるため、このような厚さを有する格子スタックは、作成が困難であり且つ使用中の問題がある。また、光が多くの透明電極構造を通過しなければならないため、光の大部分は吸収又は拡散される。双方の影響は、特に多数の反射の結果、強度を低下させ、好ましくない拡散光を生じさせるため、コントラストを悪化させる。
【発明の概要】
【0030】
本発明の概念は、広範囲のシーンを生成するために大規模なビュー(錐台)が提供される必要がある一方で、少数の変調器セルを有する空間光変調器のみが使用可能であるという仮定に基づいている。
【0031】
本明細書において、空間光変調器SLMは、ホログラム情報を符号化するために変調器表面上で局所的に制御可能な方法で光の光学的性質を調整する2次元装置であると理解される。符号化の種類に応じて、振幅限定、位相限定又は位相及び振幅同時の光変調が可能である。振幅及び/又は位相の変調は、直接行われる必要はなく、即ち偏光等の光の他の特性を変更することで偏光板等の更なる構成要素を介しても実現されうる。一般に空間光変調器は、個別アドレス指定可能な変調器セル(画素)の2次元配列により形成される。例えば変調器セルは、電気的又は光学的にアドレスされうる。変調器セルは、制御可能に自身で発光し、あるいは制御可能に光を変調するように透過又は反射モードで動作しうる。変調された光の波長変換も実現可能である。
【0032】
空間光変調器は、1次元格子光弁(GLV:grating light valve)等の1次元空間光変調器の1次元走査装置、又はレーザ光源等のポイント型光変調器の2次元走査装置によっても形成されうる。
【0033】
再構成されたシーンを閲覧するために大きな頂角、即ち大きな開口数(NA:numerical aperture)を作成できるように、少なくとも1つの空間光変調器は、本発明によって横に水平に及び/又は上下に垂直に複数回結像される。このようなビューボリュームの逐次複合は、観察者により知覚されないような十分に速い速度で実行される。
【0034】
しかしながら、多数の画像は、部分的又は完全に重なりうる。
【0035】
目的は、ヘッドマウント表示装置又はホキュラーにおいて使用するためにその上で符号化された3Dシーンを含む空間光変調器を拡大するホログラムディスプレイを提供することである。対物レンズ又は拡大レンズの機能を有するレンズは、実際にあるいは制御可能な光学手段の形態で光路に導入されることが好ましい。空間光変調器は、ホログラム直視型ディスプレイの作動原理に従って変換平面にあり、あるいは変換平面のうちの1つに結像されうる。
【0036】
一般に、屈折、回折及び反射型の結像手段を備えうる結像光学系が使用可能である。
【0037】
ビューイングウィンドウは、瞳面にあり、その場所におけるSLMの画像と一致しない。
【0038】
目的は、請求項1の教示により本発明によって解決される。また、本発明の好適な実施形態及び継続は、従属請求項において規定される。
【0039】
表示装置、特にヘッドマウントディスプレイ又はホキュラーは、空間光変調器と、光偏向装置と、少なくとも1つの結像光学系とを備える。空間光変調器は、少なくとも一方向で可干渉性である波面により照射される。光偏向装置は、制御可能な方法で少なくとも1次元で順次接合されるセグメントで構成される、空間光変調器の多重画像が生成されるように設計される。セグメント化された多重画像は、少なくとも規定の数の多重画像のセグメントを含み、空間光変調器上でホログラム符号化される3Dシーンが観察者の眼球により閲覧されるように再構成されるビューボリュームのサイズを規定する。
【0040】
例えばSLMの多重画像は、焦点が観察者の眼球にある対物レンズの機能を有する結像光学系の面に存在する。焦点面は、光源が対物レンズ機能を有する結像光学系により更に結像されるSLMのフーリエ平面である。SLMに書き込まれるホログラムの逆変換は、この平面において多数の回折次数で生成される。2つの回折次数間の領域は、ビューイングウィンドウとして選択される。ホログラムにおいて符号化され且つ3Dシーンにより放射される波面に類似している波面は、観察者の眼球により知覚される。これは、観察者がビューイングウィンドウと仮想的に拡大されたSLMとの間に広がる再構成空間において3Dシーンの再構成を見ることを意味する。物体が厳密に現れる場所、即ちSLMの前方又は後方、あるいは周囲は、ホログラムにおける3Dシーンの奥行き符号化に依存する。
【0041】
一般に、対物レンズ機能を有するレンズは、複数の結像手段を備える結像光学系でありうる。結像特性は、変更可能又は制御可能でありうる。この結像光学系は、開口等の更なる光に影響を及ぼす手段を備えうることが好ましい。例えば開口は、収差の影響を最小限にしうるか、あるいは高次回折を抑制しうる。
【0042】
拡大画像を生成する表示装置の好適な一実施形態において、制御可能な光偏向装置は、空間光変調器のセグメント化された多重画像が対物レンズの平面において生成されるように設計される。
【0043】
例えば、光偏向手段として制御可能な層を含みうる制御可能な光偏向装置での、可干渉性の波面の通過後に結像されるセグメントの数は、3Dシーンの個々のビューを表すために作成されるビューイングコーンセグメントの数、及び/又はビューイングコーンにおいて指定されるそれらのサイズに依存する。空間光変調器をセグメント化する制御可能な光偏向手段は、順次又は同時に空間的且つ時間的に制御され、その場合空間光変調器は、ビューイングコーンにおいて仮想的に拡大されて生成される。変調器平面は、SLMのバーチャル画像が拡大されるビューイングコーンにおいて走査されたSLMのセグメントの数に従って拡大される。
【0044】
ビューボリュームは、各々がSLMのバーチャル画像により生成される多数のセグメントにより形成される。仮想対物レンズ及びSLMの全ての部分画像のバーチャル画像の全体像は、例えば直視型ディスプレイの平面に対応するビューボリュームの平面にある。
【0045】
対物レンズは、空間的に分離された回折次数間、即ち空間的に分離された光源画像間に仮想ビューイングウィンドウを生成する凸レンズである。対物レンズは、バーチャルSLM画像の平面において仮想対物レンズの形態で、即ち仮想位相関数として提供され、バーチャルSLM画像の距離に少なくともほぼ対応する焦点距離を有する。
【0046】
この必要な仮想位相関数は、結像光学系を適応的に設計することで実現されうる。即ち、SLM上に直接又はその近傍に実際の凸レンズがある必要はない。しかしながら、実際の凸レンズをSLMの近くに配設することもでき、その場合、双方のレンズ及びSLMはバーチャルSLM画像の平面に結像される。これは、観察者の眼球の入射瞳において最大輝度に到達するように最適化される、即ち入射瞳においてSLMの全ての光を集束する非ホログラムHMDの設計にほぼ対応する。このようなHMD装置の仮想的に仮定された対物レンズの焦点距離は、仮想観察者距離とほぼ一致する。
【0047】
制御可能な光偏向装置は、平面可干渉性の波面により照射される制御可能な空間光変調器等の小さな物体がセグメントを形成するように、少なくとも1次元で複数回結像されるように設計される。個々のセグメントは、可能な限り狭い間隙で接合され、あるいは部分的に重なり合う。該重なりは、ホログラム情報を生成する際に考慮されうる。個々の変調器セグメントの画像は拡大されることが好ましい。
【0048】
好適な一実施形態において、表示装置における光偏向装置は、空間光変調器の多重バーチャル画像のセグメントが間隙なく実質的に接合される、あるいは部分的に重なり合うように設計される。重なり領域は、ホログラム情報を生成する際に考慮されうる。
【0049】
3D表現は、光路において後続する結像手段により更に拡大されて結像されうる。従って、光偏向装置により生成される空間光変調器のセグメント化された多重画像を更に拡大する更なる結像手段は、拡大画像を生成する表示装置の光路に提供されうる。
【0050】
SLMのバーチャル複合画像は、視野の平面にあり、3D再構成の視角度範囲を限定する。従って、ビューボリューム(VOV)を形成する再構成空間は、観察者の眼球と共に規定される。このビューボリュームに位置している3Dシーンのこれらの部分のみが再構成されることが好ましい。
【0051】
本発明に関して、好ましくは反射型空間光変調器(SLM)により放射される可干渉性の波面は、対物レンズ機能を有するレンズの主平面においてSLMのセグメントを表すと仮定される。光偏向装置は、この対物レンズの平面へのセグメントとして順次又は同時に複数回SLMを結像する。
【0052】
順次又は同時に複数回表されるセグメントは、順次又は同時にビューボリュームの個々の部分を生成する。観察者の眼球及びビューイングウィンドウは、仮想対物レンズの焦点に位置している。
【0053】
ビューイングウィンドウは、バーチャル多重画像のフレネル変換に対応する平面の一部である。
【0054】
制御可能な光偏向装置は、例えば集束系の平面、特に集束系の対物レンズ平面への可干渉性の波面により並列に複数回SLMを結像する。別の実施形態において、集束系は、拡大機能を有する少なくとも1つのレンズを備えうる。
【0055】
制御可能な光偏向装置は、実際のSLMではなくSLMの中間画像を少なくとも1次元で並列に複数回更に結像しうる。
【0056】
現実又は仮想であってよいSLMは、対物レンズ平面の近く、即ちその前方又は後方に配設されうる。
【0057】
対物レンズの平面において表されたセグメントと共に、SLMは、バーチャル画像を通して少なくとも1次元で増加されうる。
【0058】
空間光変調器の多重画像を複合するために光偏向装置により生成されるセグメントの数は、例えば画像のサイズ又は内容を、実現されるビューボリュームに適応する又は所定の観察者距離、即ち瞳孔とSLMのバーチャル拡大画像との間の距離に適応するために変更可能であってよい。
【0059】
表示装置の一実施形態において、光偏向装置は、空間光変調器の多重画像が複合されるセグメントの数及び/又はサイズが変更可能でありうるように設計されうる。
【0060】
SLMは、1次元又は2次元で光偏向装置により複数回結像されうる。2次元多重結像については、例えば光偏向手段は、それらの偏向の方向が交差されるように配置される少なくとも2つの1次元の光偏向素子を含みうる。
【0061】
拡大画像を生成する表示装置は、可変格子周期を有する制御可能な液晶格子を含む、少なくとも1つの制御可能な光偏向手段を有する制御可能な光偏向装置を備えることが好ましい。この格子周期は、電極構造に印加された電圧プロファイルを調整することで制御されることが好ましい。
【0062】
制御可能な液晶格子、多重体積格子、又は可変くさび角を有する制御可能なプリズム等の光偏向装置において使用される光偏向手段は、例えば光束のアナモルフィックストレッチングを実現するために円柱レンズの機能を果たしうる。例えば1次元で光束又は波動場のアナモルフィックストレッチングを実現するためにプリズム対を使用することも可能である。
【0063】
多重体積格子は、偏向の少なくとも2つの異なる方向が製造中に刻み込まれる体積ホログラムである。偏向の所望の方向は、入射、波長又は偏光の方向等の入射光の1つ以上の特性を変更することで選択されうる。
【0064】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、従って制御可能な光偏向装置は、空間光変調器を照射する光の少なくとも2つの異なる入射角及び/又は2つの異なる波長により選択されうる、少なくとも2つの異なる回折角を有する少なくとも1つの体積ホログラムを含む。
【0065】
眼鏡フレームの側頭アーム等に取り付けられうるディスプレイのリーンデザインは、偏向光だけが画像の生成に寄与するように配置される体積格子により、SLM画像が1次元拡張することで実現されうる。体積格子は対物レンズの機能も果たしうる。配置は、SLMの複合画像が位置している平面が例えば1/10だけ1次元で拡張されるように変更されうる。しかしながら、配置は必ずしも正確に該平面でなくてもよい。既存の波面が拡張されれば十分である。
【0066】
一般にHMDのビューボリュームは、ビューイングウィンドウの所定のサイズ及び観察者の瞳孔からSLMのバーチャル多重画像までの識別可能な距離により規定されうる。例えば、この距離は1m~3mでありうる。
【0067】
更なる一実施形態において、空間周波数フィルタは、SLMにより放射された波面の高次回折を除外するHMDの光路に配設されうる。フィルタは、最も簡単な物理的形状では静的な開口マスクであるが、別の実施形態においては制御可能な開口関数であってもよく、観察者の眼球に対する画像が入射瞳を表すビューイングウィンドウを形成しうる。例えばフィルタは、望遠結像光学系の中央の焦点面に配設されうる。SLMの高空間周波数をフィルタリングすることにより、眼球上に結像されるビューイングウィンドウは、隣接する高次回折なしで現れる。このようなフィルタリングは、ビューイングウィンドウの大きさが観察者の瞳孔とほぼ同一である場合にのみ使用されうることが好ましい。
【0068】
本発明に係る表示装置の別の実施形態において、少なくとも1つのフィルタは、空間光変調器により放射された波面の高次回折光を除去する光路に配設される。
【0069】
フィルタは、望遠結像光学系の中央の焦点面に配設されることが特に好ましい。
【0070】
例えば3mmだけの小さなビューイングウィンドウでは、ビューイングウィンドウは、眼球移動により制御された該移動に対して追跡されることが好ましい。例えば眼球の位置は、HMD装置に一体化されるカメラにより検出されうる。独立した光偏向手段を有する独立した制御可能な追跡装置により追跡が行われてよく、その場合、一般に多重画像は、全体として眼球の位置に対して追跡される。液晶格子、可変プリズム機能を実現する制御可能な液滴駆動セル、液晶プリズムセル、大規模な可変プリズムセル、又はより広大な設計では走査ミラー等を含むこのような追跡装置が設計されうる。
【0071】
本発明に係る表示装置の別の実施形態において、眼球移動により制御された該移動に対してビューイングウィンドウを追跡する制御可能な追跡装置が提供される。
【0072】
しかしながら、このような追跡は、セグメントで構成される空間光変調器の多重画像を生成する光偏向装置によっても全体的又は部分的に行われうる。そして、セグメントは、多重画像が眼球移動に追従するように既に生成されている。
【0073】
本発明に係る表示装置の特に好適な一実施形態において、光偏向装置は、セグメントで構成される空間光変調器の多重画像を生成することに加え、仮想ビューイングウィンドウが眼球移動により制御された該移動に対して追跡され、あるいは制御可能な追跡装置が支持されるように設計される。
【0074】
また、例えばビューイングウィンドウを手動で又は自動的に瞳孔の位置に調整することで個々の眼球間隔を提供する調整手段があってもよい。この目的のために、表示装置の光学系が適切なアクチュエータにより眼球間隔等に適応され、観察者が3Dシーンの再構成を最適に見られるように瞳孔の中心位置を検出するセンサがあってもよい。
【0075】
本発明に係る表示装置の別の実施形態において、例えば調整手段は、ビューイングウィンドウを手動で又は自動的に観察者の眼球の瞳孔の位置に調整することで個々の眼球間隔を提供するために提供される。
【0076】
調整手段の機能は、光偏向装置又は追跡装置に部分的あるいは完全に一体化されうる。この目的のために、瞳孔の位置を検出するセンサがあってもよい。初期位相において又は表示装置の使用中に連続的に、光偏向装置及び/又は追跡装置は、観察者が3Dシーンの再構成を最適に知覚できるように固定の置換係数を導入しうる。それから、追加のアクチュエータは省略されうることが好ましい。
【0077】
本発明に係る表示装置の特に好適な一実施形態において、光偏向装置及び/又は追跡装置は、ビューイングウィンドウを制御可能な方法で瞳孔の位置に調整する、あるいは該目的にかなう他の調整手段を支持するように設計される。
【0078】
光偏向装置の光偏向手段は、多重画像で構成されるセグメントを生成するために1又は2の空間次元で湾曲される表面上にも配設されうる。そして、平面複合画像に対する空間光変調器の多重複合画像のセグメントの位置の連続的な偏差は、3Dオブジェクトが仮想ビューボリュームにおいて正確に且つバイアスなしで表されるように、それらをホログラム符号化する際に補正されうる。このような湾曲は、セグメントの生成中に更なる光学結像手段によっても発生されうる。また、セグメントで構成される多重複合画像は、拡大仮想変調器表面を得るように、光路においてカーブミラー等の更なる結像手段により湾曲して結像されうる。このような湾曲は、3D物体のホログラム符号化中に再度補償されうる。
【0079】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、空間光変調器の多重複合画像のセグメントを生成且つ/あるいは結像する光偏向装置及び/又は結像光学系の更なる光学部材は、セグメントで構成されるこの多重画像が湾曲して生成あるいは結像され、且つ3次元シーンを符号化する際にこのように湾曲が考慮されうるように設計される。
【0080】
所望の全拡大及びSLMのピッチに応じて、画像は、第1の段階において1:1で拡大、縮小又は投影されうる。アナモルフィック拡張も可能である。SLM画像は、光偏向装置によりセグメントで構成される。即ち、例えばSLMは、複合中間画像として拡大レンズを有する結像光学系のオブジェクト面に複数回結像される。ここで光偏向装置は、第1の光偏向手段の一例として可変間隔を有する制御可能な液晶格子と、第2の光偏向手段の一例として多重体積格子とを備え、個々の体積格子は、部分画像及び結像波長毎に多重体積格子に刻み込まれる。そして、特定の画像及び波長に対して必要とされる体積格子は、第1の光偏向手段の回折角及び色分割多重光変調器ユニットの波長により選択される。例えば光偏向手段が光を偏向するだけでなく同時に角度スペクトルを拡張するという点で、アナモルフィック結像は、光偏向装置によっても実行又は支持されうる。
【0081】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、結像光学系及び光偏向装置は、空間光変調器のセグメント化された多重画像がアナモルフィックに結像されるように設計される。
【0082】
1つの制御可能な光偏向手段のみを備える光偏向装置は、テレセントリック結像光学系の共通の焦点面に配設されることが好ましい。この光偏向手段は、セグメントで構成される多重画像を生成するために、ここでは制御可能な方法で光路を傾斜しさえすればよい。このような傾斜は、例えば制御可能なプリズム又は制御可能な回折偏向格子により実現されうる。光路を傾斜する光偏向手段の位置は、例えば更なる対物レンズ機能を果たすために焦点面の位置とは異なりうる。それにより発生する可能性のある光変調器画像のいかなる重なりもホログラムを生成する際に考慮されうる。
【0083】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、少なくとも1つのテレセントリック結像光学系は、物体側の焦点面において、制御可能な方法で空間光変調器により放射される光を傾斜する光偏向装置が配設されるように提供される。
【0084】
大規模なビューボリュームにおいて時間的及び/又は空間的にセグメント化された画像コンテンツを提供する別の相次ぐ実施形態は、動的に符号化された、少なくとも部分的に可干渉性のホログラム3D表現を有する非干渉性の2D表現及び/又は3D立体表現の、立体角に関して変更可能である組合せを特徴とする。
【0085】
該生じ得る実施形態は多くの態様に基づいている。
【0086】
眼球は、点、エッジ、又は異なる構造等の高いコントラストを有する領域に特に重点的に焦点を合わせうる。
【0087】
逆に、例えば、空間における非構造化領域は低いコントラストしか示さない。眼球がそれらに焦点を合わせることはより困難である。その結果、2D又は3Dの立体表現により少ない有効焦点を有する表面及び物体セグメントを生成しつつ、動的に符号化されたホログラム3D表現をエッジ及び構造のインスタンス、即ち高度な有効焦点に限定する手段がある。これは、動的に符号化されたホログラム3D表現及び2D又は3Dの立体表現が交互配置されることを意味する。これは、セグメント化されていない、あるいは時間的又は空間的にセグメント化されたビューボリュームの立体角度範囲全体又はそれらの一部のみを通して行われうる。
【0088】
実施形態は、中央のビューイングウィンドウの周辺領域を外側に拡張することのみに限定されてよく、それにより、3Dシーンの動的に符号化されたホログラム表現のより包括的な空間的印象を提供する。
【0089】
垂直の視角だけがここでは物事を単純に保つと考えられる簡単な一実施形態において、例えば、対物レンズの平面においてSLMの中央のセグメントに対応する0..±13°、即ち26°の中央の角度範囲は、動的に符号化されたホログラム3D表現を介して生成されうる。それぞれ上部及び下部において中央の範囲に隣接する+13°及び+39°と-13°~-39°との間の角度範囲は、2D又は3Dの立体表現を介して生成される。
【0090】
これは、ユーザが限られた立体角度範囲でのみ高分解能で自然環境の強い3D印象を知覚できるためである。ユーザが非常に大きな立体角を使用できる場合、高分解能及び強い3D印象の特徴は、全立体角の一部の領域にのみ存在する。これは、ユーザが集中できる領域である。この領域が観察者の眼球移動に応じて空間において動き回ることを可能にするために、強い焦点及び3D特徴を有するこの空間領域を変更可能な方法で提供することにも意味がある。この目的のために、眼球の位置及び/又は閲覧方向が検出されなければならない。ビューイングウィンドウのサイズが例えば15mmであるためにビューイングウィンドウ全体を追跡する必要がない場合でも、強い焦点及び3D特徴を有する空間領域がビューボリューム全体の一部しか表さないならば、この領域を観察者の眼球に対して追跡することが好ましい。
【0091】
ホログラム表現、並びに2D表現及び/又は3D立体表現は、交互配置されて互いにフェードインあるいは接するように組み合わされうる。錐台において知覚可能な妨害を除去するために、キャリブレーション及びルックアップテーブル(LUT:look-up table)が使用されうる。
【0092】
コストを考慮する限り、ホログラム符号化に対して1つのSLM、そして従来の2D表現に対して1つのSLMが提供されることが好ましい。また、ホログラム符号化用途のSLMを照射するためにレーザダイオードが、そして従来の2D表現用途のSLMを照射するために発光ダイオード(LED:light-emitting diode)が、使用のために提供されてもよい。あるいは、OLEDディスプレイ等の能動的な発光SLMは、2D又は3Dの立体表現に対して使用されうる。
【0093】
物体シーンの偏光、波長及び/又は空間間引き等の特性は、ビューボリュームにおいて知覚される隣接するオブジェクト点のスペックル及び可干渉性のクロストークを減少するために使用されうる。
【0094】
例えば、接合オブジェクト点領域を再構成する2つのSLM等を照射する照明装置の光源は、RGB色空間内の種々の狭帯域波長範囲に対して設計されうる。それにより発生する色ずれは、その後特定のSLMに割り当てられるオブジェクト点を符号化する際に考慮されうる。異なる偏光(例えば、水平及び垂直に偏光された、あるいは右側及び左側に円偏光された)による光を使用することも可能である。この場合も、オブジェクト点を符号化する際に光の部分の種々の強度が考慮されうる。
【0095】
双方の手段は組み合わされてよい。
【0096】
上述のオプションに従って体積格子がレーザダイオード等の種々の光源配置と組み合わされるため、時間的及び空間的干渉性は最低限まで減少されうる。
【0097】
特に固定装置を設定する際、これらのSLMの再構成された3Dシーンの個々の部分のオブジェクト点クラスタが交互配置される、多数のSLMを有するオブジェクト点を間引きする原理を実現することが好ましい。このように実行する際、個々のSLMは、同一の波長を有するが互いに非干渉性である光源等により照射されうる。これらの光源は、僅かに異なる波長も有しうる。これらの色差は、不偏の色再構成を得るようにホログラム情報を生成する際に考慮されるべきである。
【0098】
本発明に係る表示装置の好適な一実施形態において、別の空間光変調器の別のセグメント化された多重画像を生成する別の光偏向装置が提供される。個々の光変調器のセグメント化された多重画像は、それらが共通のビューボリュームを規定する観察者の瞳孔と共に、互いに対して交互配置及び/又はねじられ、且つ/あるいは互いに対してオフセットされ、且つ/あるいは徹底的に互い違いに配置される。それらのサブ領域は、互いに接するか、あるいは部分的又は完全に重なり合う。このような重なりは、非干渉性、部分的に可干渉性又は可干渉性でありうる。各サブ領域は、2D表現及び/又は3D立体表現、並びに/あるいはホログラム3D再構成を含む。
【0099】
好適な一実施形態において、SLMは、1つの構成要素において対物レンズ機能を有するレンズ及び制御可能な光偏向装置を備えうる制御可能な構成要素と組み合わされる。
【0100】
この制御可能な構成要素は、交互配置された方法で1つの平面において刻み込まれる、あるいは個々の平面において刻み込まれる種々の光路を有しうる静的な体積格子でもありうる。
【0101】
偏向の1つの方向の光だけが常に送信されるように、このような静的な光偏向素子は、切り替え可能又は制御可能なシャッタアレイ等の更に切り替え可能又は制御可能な光に影響を及ぼす手段と組み合わされる。
【0102】
また、集束系の対物レンズは、単一の体積格子の形態で又は液晶(LC:liquid crystal)に基づく制御可能な格子として提供されうる。
【0103】
光偏向装置、対物レンズ及び選択的に適用可能な追跡装置は、回折光偏向手段の0次の回折次数が画像の生成に寄与しないように配設されうる。これにより、低い回折効率しか有さない回折光偏向手段及び結像手段も使用可能になるため、所望の光偏向の方向が選択される場合に妨害する光の部分は0次の回折次数に留まる。
【0104】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、可変格子周期を有する制御可能な液晶格子及び/又は多重体積格子は、0次の回折次数光が未使用でそれを通過し且つ更なる能動的な光路から隔離されるように制御可能な光偏向装置に配設される。
【0105】
これらの成分の個々の機能は、制御可能な液晶格子の形態でも組み合わされうる。
【0106】
光路は、偏光分離及び/又は波長分離及び角度分離、並びにそれらの組合せのために刻み込まれうる。このような多重体積格子に刻み込まれた光路の読み出し及び分離のために、同一の特徴、即ち偏光、波長及び角度、並びに対応する技術手段が使用されうる。
【0107】
再構成幾何学が電気的に切り替えられうる体積格子の場合、該体積格子は、例えば可変制御可能な配向を有する液晶材料を備える。
【0108】
それらが実現されうる厚さのために、体積格子は、コンパクトに光路を組み合わせることに適しており、本発明に関してディスプレイのサイズ、並びに/あるいは厚さ及び重量を減少する適切な手段である。
【0109】
静的な体積格子、即ち固定の再構成幾何学又は時間的に不変の格子パラメータを有する体積格子は、重クロム酸ゼラチン(DCG:dichromate gelatine)、光屈折性ガラス又は感光性ポリマー等から成りうる。
【0110】
屈折率が奥行きにより変化する、即ち屈折率がzの関数である体積格子が使用されうることが非常に好ましい。このようなZアポディゼーションにより、角度及び波長の選択性のサイドピークが特に抑制され、角度、偏光及び/又は波長の選択性は、特に特定の設計に対して最適な関数に調整されうる。これは、透過型及び反射型の双方の体積格子に適用可能であり、例えば種々の体積格子は、直列に、即ち種々の奥行きで又は厚い層において交互配置された、即ち少なくとも部分的に重なり合う方法で刻み込まれうる。例えばアポディゼーション関数は、少なくとも角度及び波長の選択性のサイドピークが抑制され、且つSLMの多重画像の個々のセグメント間の遷移が特定の設計に対して最適化されるように選択される。
【0111】
多重体積格子は、独立した回折パターンを示す多数の層と共に接着によっても作られうる。各層は、多重体積格子を含み、且つ例えば特定の波長範囲又は角度範囲に対して最適化されうる。
【0112】
光偏向手段の制御可能な層は、光偏向装置において体積格子又は液晶格子の形態で提供され、且つ光路又は可干渉性の波面を変調し、あるいは伝播の方向を変更するために位相プロファイルに影響を及ぼす機能を果たすように制御されうる。
【0113】
例えば電気的に制御可能な体積格子は、高分子分散型液晶格子(PDLCG:polymer dispersed liquid crystal grating)として知られており、非常に速い切り替え速度を実現する。
【0114】
再構成を生成する場合、奥行きを表すパターン及び特徴による符号化は、複合変調器画像の領域に限定されうることが好ましい。この領域は、観察者の眼球の視野に存在し、例えば瞳孔の位置を検出することにより見つけられうることが好ましい。
【0115】
非干渉性の2D又は3Dの立体表現は、ホログラム再構成と重畳されうる。立体画像が他のセグメントに書き込まれている間にホログラム情報が空間光変調器の少なくとも1つのセグメントに書き込まれるという点で、このような重畳は、一致しうる、あるいは互いにフェードインしうる。例えばホログラム再構成は、中央のセグメントにおいて生成される。例えば3Dシーンは、他のセグメントにおいて2次元又は3次元に表されうる。
【0116】
HMD装置は、3Dシーンのホログラムコードが書き込まれる空間光変調器SLMを提供されるか、あるいは2D又は3Dの表現に対する立体画像を提供する空間光変調器SLMと組み合わされうる。
【0117】
独立請求項において規定されているような本発明に係るヘッドマウントディスプレイの応用例は、拡大手段を必要としないが2D HMD、立体視3D HMD及びホログラム3D HMDとして使用されるように継続されうる。
【0118】
SLM平面の可変拡張により、本発明に従って設計されるHMDは、他の立体視ディスプレイの応用例に適合するように調整され、例えばホログラム直視型表示装置又はホログラムTV受信機のディスプレイとして動作しうる。
【0119】
少なくとも1つの線形空間光変調器が走査される実施形態は、特にホキュラー装置に適している。そして、空間光変調器の多重複合画像のセグメントは、走査方向にわたり走査縞の形状で1次元に生成されることが好ましい。走査は、例えばマイクロメカニカル素子の形態でも提供されうるガルバノメータミラー、あるいはポリゴンミラーにより実行されうる。制御可能な回折格子は、この目的のためにも使用されうることが好ましい。
【0120】
本発明に係る表示装置の好適な一実施形態において、空間光変調器は、線形範囲にわたり光偏向手段により走査され、走査画像が制御可能な光偏向装置により順次線形範囲の方向に上下に複数回繰り返される線形空間光変調器の形態で提供される。
【0121】
ポリゴンミラーは、走査のために使用される場合、個々の走査ストライプが接するあるいは僅かに重なりあって接合されるよう隣接する鏡面が回転軸の方向に互いにねじられるように設計されうる。このような重なりは、ホログラム値を生成する際に考慮されうる。
【0122】
線形空間光変調器を有する、本発明に係る表示装置の特に好適な一実施形態において、ポリゴンミラーは、それらのそれぞれの走査ストライプが走査方向に対して垂直に上下に存在する、あるいは僅かに重なり合うように互いにねじられた少なくとも2つの鏡面を有して提供される。
【0123】
好適な一実施形態において、マイクロレンズアレイは、空間光変調器の発光効率を向上し、且つ/あるいは空間光変調器の個々の変調器セル間の遷移領域におけるエッジ効果を低減するために、表示装置の空間光変調器の前方又は後方に配設されうる。
【0124】
該目的のために、マイクロレンズアレイは、空間光変調器の中間画像の位置又は空間光変調器の中間複合画像の位置にも提供されうる。
【0125】
マイクロレンズアレイは、変調器セルのグリッドにより発生する高次回折を可能な限り抑制するためにアポディゼーションマスクを更に装着されうる。しかしながら、マイクロレンズの焦点が変調器セルの平面に正確に存在するのではなく、変調器セルの平面に対して僅かに調整不良にされるという点でもアポディゼーションが実現されうる。僅かな焦点ぼけは、対応するマイクロレンズの上述の影響を有効面積のサイズに適応させうる。更にレンズの形状は、その光学伝達関数に対するビューにより最適化されうる。レンズの形状は、平面であり且つ勾配率プロファイルを示しうる。
【0126】
透過型光変調器を使用する場合、マイクロレンズアレイは、変調器セルの有効面積上でバックライトにより放射される無変調光を集束するように、バックライトと変調器セルとの間の光路にも配設されうる。
【0127】
アポディゼーションマスクは、マイクロレンズが使用されない場合に高次回折を抑制するためにも適用されうる。
【0128】
本発明に係る表示装置の一実施形態において、アポディゼーションマスクは、観察者の眼球に対面する空間光変調器側に配設されうる。アポディゼーションマスクは、空間光変調器の中間画像の位置及び/又はセグメント化された中間画像の位置にも配設されうる。
【0129】
HMD装置は、カラー再構成の生成のために、例えば3原色、即ち赤、緑及び青を提供する、追加の色フィルタも光路に備えうる。
【0130】
透過型及び反射型の双方のSLMは、複素ホログラム値を書き込むために使用されうる。反射型SLMは、平坦なフロントライト又は斜角でそれを照射するする投影系を含む照明装置を必要とする。使用された光変調器は、光の振幅又は好ましくは位相を変調する系でありうる。このような系が光の振幅及び位相の双方を直接変調する複素変調器を備えることも可能である。
【0131】
例えば出願人により出願された独国特許出願公開第10 2009 044 910 A1号明細書から知られるように、符号化の種類に応じて、2つの変調器セル、又は二相符号化法等の場合にはそれを上回る数の変調器セルの光は、ビーム結合器により複素ホログラム値を形成するように複合されうる。
【0132】
以下、これが可能である限り、本発明の教示を採用及び継続する、及び/または上述の個々の実施形態を組み合わせる多くの発展性がある。該目的のために、一方では請求項1に従属する従属請求項、他方では添付の図面を含む以下の本発明の好適な実施形態の説明を参照する。概して、好ましい物理形状及び教示の継続は、本発明の好適な実施形態の説明及び添付の図面と共に説明される。図面は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1A】3つの切り替え状態の例を有する光偏向装置を示す図
【
図1B】第1の例示的な実施形態における光偏向装置の使用を示す図
【
図2】
図1Bに示された構成により生成される拡張されたビューボリュームを示す図
【
図3】4f結像系及び追加の拡大レンズにより拡大されたバーチャル光変調器画像の生成原理を示す図
【
図4】反射型SLMの使用及び追加の拡大レンズを有する4f結像系においてミラーを使用することで構造の奥行きを減少する原理を示す図
【
図5】対物レンズの機能を含む拡大光学系の前方にミラーを使用することで構造の奥行きを減少する原理を示す図
【
図6】構造の奥行きを減少するカーブミラーを有する本発明の一実施形態を示す図
【
図8】対物レンズの機能を含む拡大光学系の前方及び後方のそれぞれに光偏向装置が配設される際に必要とされる装置のサイズを比較する図
【
図9】光偏向装置が拡大レンズの後方に配設される配置において構造の奥行きを減少するための傾斜ミラーの使用を示す図
【
図10】0次の回折次数が使用されない、構造の奥行きを減少するための光偏向装置の光偏向手段の使用を示す図
【
図11】拡大レンズの後方に配設される光偏向装置と共に構造の奥行きを減少するためのカーブミラーの使用を示す図
【
図12A】光学的にアドレス可能な空間光変調器上に振幅変調型光変調器を多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図12B】光学的にアドレス可能な空間光変調器上に位相値を書き込む電気的にアドレス可能な空間光変調器と共に、読み出し中に複素光変調器を示す、光学的にアドレス可能な空間光変調器上に振幅変調型光変調器を多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図13】薄型導波路を介して多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図14】光変調器を結像する望遠結像系と拡大レンズを有する結像光学系との間に多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図15】望遠結像系及び拡大レンズを有する結像光学系を有する光変調器の二段結像の後方で多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図16】光変調器を結像する望遠結像系と拡大レンズを有する結像光学系との間に多重結像する光偏向装置における少なくとも2つの可変くさびの使用を示す図
【
図17】多重結像する光偏向装置において使用するための、制御された方式で適合的にねじられうる2つの傾斜ミラーを使用して光束の高速オフセットを実現するために使用された構成を示す図
【
図18】多重結像する光偏向装置において使用するための吊り下げられた高速ミラーを使用して光線束の高速オフセットを実現するために使用された構成を示す図
【
図19】二段結像光学系において適合的にねじられうる2つの制御可能な傾斜ミラーを有する、多重結像する光偏向装置の使用を示す図
【
図20】二段結像光学系において多重結像する、制御可能な偏向格子及び多重反射型体積格子を有する光偏向装置の使用を示す図
【
図21】2つの透過型体積格子によりSLMのアナモルフィック拡張の原理又はSLMの多重複合画像を示す図。個々の光線束の間の光路長の差異は補償される。
【
図22】二段結像光学系において多重結像する、テレセントリック結像系の開口平面における制御可能な偏向格子を有する光偏向装置の使用を示す図
【
図23】多重結像する、観察者の眼球の入射瞳(EP)のすぐ近くにある光偏向装置の使用を示す図
【
図24】多重結像する、観察者の眼球の入射瞳のすぐ近くにある少なくとも1次元に湾曲した光偏向装置の使用を示す図
【
図25】
図22に示されるような二段結像光学系において多重結像する、テレセントリック結像系の開口平面において制御可能な偏向格子を有する光偏向装置を使用する場合の色多重化する構成を示す図
【
図26】薄型導波路を介して光偏向装置を使用する垂直多重結像処理を示す図
【
図27C】1次元光変調器と組み合わせて、二段結像光学系において多重結像する、テレセントリック結像系の開口面における制御可能な偏向格子を有する光偏向装置の使用を示す図
【
図28】1次元光変調器と組み合わせて、二段結像光学系において多重結像する、テレセントリック結像系の開口平面における光偏向装置としてのポリゴンミラーの使用を示す図
【
図29】光変調器装置の拡大されたバーチャル複合画像を生成する制御可能な光偏向手段において回折光学素子を使用する場合に、0次の回折次数を回避する方法を示す図
【
図30】プリズムによりSLMの平均放射角を変更することで観察者の眼球の入射瞳の移動に対してビューイングウィンドウが追跡される方法を示す図
【
図31】反射型SLMの例を有するマイクロレンズアレイにより、変調器セルのエッジ効果が最小化される方法及びSLMの曲線因子が増大される方法を示す図
【
図32】ビームコンバイナと共に反射型SLMの例を有するマイクロレンズアレイにより、変調器セルのエッジ効果が最小化される方法及びSLMの曲線因子が増大される方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0134】
図1A及び1Bの各々は、本発明に係るHMD装置において使用されるいくつかの一般的な機能を有する光偏向装置400を示す。
【0135】
図1Aを参照すると、光偏向装置400は、複数の可干渉性の波面720、730、740により空間光変調器SLM200を複数回結像する2つの制御可能な光偏向手段410、420を備える。SLM200は、照明装置(不図示)により平行光で照射される。SLM200が光を変調した後、変調された可干渉性の波面710はSLMにより放射される。
【0136】
調整された好適な一実施形態において、SLM200は収束波面により照射される。そして、選択的なビームコンバイナ(不図示)は該種類の照明に適応される。
【0137】
ビームコンバイナが、例えば独国特許出願公開第10 2009 044910 A1号明細書において出願人により提案されたような複屈折共面板(サバール板)に基づいている場合、この板の厚さは、組み合わされる隣接画素の波面が完全に一致するようにSLMの位置に応じて調整される。
【0138】
このような球面照明は、少なくとも1つの体積格子を備える平坦なフロントライトユニットにおいて容易に実現されうる。対物レンズ又はその一部は、屈折面が省略されうるように照明装置に一体化される。透過型SLMにおいて、収束バックライトユニットは、この目的のためにも使用されうる。
【0139】
図1Aの左図において、変調された平面波面710は、変調された波面730として、制御可能な光偏向手段410、420を通して渡されるだけであり、偏向されない。空間光変調器は、後続の対物レンズ平面へのセグメントとして結像されうる。他の2つの図は、2つの異なる方向に変調された波面710の偏向を変調された波面720、740として示す。偏向は、不変であり、且つ少なくとも1つの光偏向素子により影響されうる。あるいは、各々が適応的にアドレスされた場合に異なる偏向角を実現する多数の層が使用されうる。変調された波面は、制御可能な偏向ユニットの偏向素子を不変の偏向ユニットと組み合わせることでも偏向され、通過しうる。例えば制御可能な光偏向手段は、2つの制御可能な液晶材料を含みうる。
【0140】
図1Bは、
図1Aに示されたような光偏向装置400を含む、本特許により請求されるような発明に係るヘッドマウントディスプレイ(HMD)の概略的なレイアウトを示す。光路上には、複数回結像されるSLM200に後続して、互いに対して相対的に短い距離で配設される光偏向装置400及び拡大レンズ530がある。SLM200に書き込まれるホログラム情報の3D再構成は、選択的な追跡装置600により観察者の眼球1000の瞳の移動に対して追跡されうる。これは、生成されたビューイングウィンドウの直径が観察者の眼球の瞳の直径と大きく異ならない場合に特に好ましい。
【0141】
3次元シーンの種々のビューを有するサブホログラムは、波面WFiの逐次変調Miにより、個別アドレス指定可能な変調器セルを有するマトリクス等を含むSLM200により生成されうる。変調器セルは、少なくとも1つの方向で可干渉性を示し且つ平面波面を有する光源(不図示)により放射される平行光により照射される。空間光変調器200により順次変調される波面710は、変調された波面720、730、740として種々の方向に光偏向装置400により偏向される。光偏向装置400は、仮想複合又はタイル型の高分解能な空間光変調器を共に示すセグメント単位で、順次空間光変調器200を拡大レンズ530の平面に投影する。このとき、拡大レンズ530は対物レンズの機能を果たす。
【0142】
1次元又は2次元で並列に複数回示されうる空間光変調器200のセグメントにより、これらのセグメントに対応する光変調器バーチャル画像は、変調された波面720~740が光偏向装置400を介する各光偏向の時点において光変調器画像に対応するビューボリュームにおいて視認可能である。従って、観察者は、全体としてビューボリューム全体を知覚し、且つそこで3次元表現を見ることができる。ビューボリュームは、3次元再構成が知覚されうる再構成空間を規定する。
【0143】
SLM200は、変調された波面720~740が生成される、
図1Bに示されるような光偏向装置400を通過する変調された波面710により、順次あるいは静的に並行して拡大レンズ530の平面に複数回結像されうる。
【0144】
多数のレンズの系の形態で提供されることが好ましい拡大レンズ530は、一般に、観察者の眼球1000からの距離のために対物レンズではない。拡大レンズ530は、レンズ系の焦点距離内に配設される複合SLMを有する拡大レンズとして動作するにすぎない。拡大レンズ530の焦点距離が不変であるとすると、眼球により知覚される複合変調器画像のバーチャル画像の位置は、複合変調器画像の距離を拡大レンズ530の物体側の主平面に変更することで適応されうる。同時に、このことはホログラム再構成についてのビューボリュームを規定する。
【0145】
実際又は仮想の対物レンズは、実際又は仮想の(多重複合)SLMの平面に位置している。その機能は、光学系全体で実現可能であり、多数の受動的及び/又は能動的な結像素子を含みうる。
【0146】
しかしながら、拡大レンズ530は対物レンズの機能も果たすように設計されうる。この場合、複合変調器画像は、拡大レンズ530の主平面に位置しており、眼球により知覚され且つビューボリュームを規定する複合変調器のバーチャル画像を同時に表す。この場合、拡大レンズ530は、その焦点距離の距離において観察者の眼球の入射瞳の前方に配設される対物レンズにすぎず、いかなる拡大も行わない。
【0147】
これを
図2の簡略図に示す。この図は、ヘッドマウントディスプレイが上述の本発明の原理を実現するために備える最も重要な手段を示す。光伝播の方向に順に配設される光偏向装置400及び対物レンズ機能500を有するレンズによりSLM200を走査することは、非常に基本的なレイアウトで示される。
【0148】
SLM200は、対物レンズの平面において多数のセグメントを表すことで光変調器の複合画像270を生成するように、例えば少なくとも1つの制御可能な液晶格子を備える光偏向装置400を用いて、異なるホログラム情報を搬送しつつ、例えば後続の可干渉性の波面により1、2、3、4及び5の順序で順に5回少なくとも1次元で表されうる、あるいは複製されうる。
【0149】
制御可能な液晶格子は、電極配置に供給された電圧プロファイル、即ち刻み込まれた位相プロファイルを変更することで格子定数が調整されうる、当該技術分野においてこのように知られている能動的な液晶偏光格子の形態で提供されることが好ましい。
【0150】
その後生成されたセグメント化された波面720~760は、結像手段により瞳孔に向けられる。SLM200の結像されたセグメントは、瞳孔から無限空間に及ぶビューボリュームを共に生成する。
【0151】
空間光変調器200は、波面によっても統計的に走査されうる。それから、このようにセグメント化されるSLM200、即ち多重空間光変調器は、互いに近接して配設される、あるいは1つの大きな仮想高分解能光変調器を形成するように光偏向装置400により複合される。
【0152】
対物レンズ機能500を有するレンズの平面におけるSLM200の逐次多重結像の代わりに、対物レンズ機能500を有するレンズの平面における同時多重結像も可能である。これは、伝播の多数の方向が統計的に刻み込まれる体積格子等により実現されうる。例えばコードは、常に、1つのセグメントについてのみ正しく、他の4つのセグメントについては正しくない。これらのセグメントから眼球に向けての更なる光の伝播は、電気的に切り替えられたシャッター等により抑制されうる。例えばこのような切り替え可能なシャッターアレイは、液晶シャッターディスプレイの形態で提供されうる。HMD装置においてそれらを使用する利点は、SLM200及び光源と共に使用された構成要素だけがセグメント化され且つ高速な切り替えシャッターであることである。
【0153】
上述されたような本発明のHMD装置の基本的なレイアウトにより、例えば4000×2000個の変調器セルを有する制御可能な空間光変調器を5回拡大できる。ビューボリューム(VOV)は、例えば26°の頂角を有してよく、ビューイングウィンドウのサイズは、この設計で15mmであってよい。
【0154】
対物レンズ機能500を有する結像光学系は、屈折型、回折型又は反射型であってよい。屈折型系と回折補正との組合せ等の組合せも可能である。
【0155】
フリッカリング効果を低減するために、SLM200は、セグメント化するために、1、2、3、4、5の順序ではなく2、4、1、3、5の順序でアドレスされうることが好ましい。
【0156】
生成される3Dシーンの再構成シーケンスは、SLM200のセグメント及び色に対して最適化されうる。
【0157】
図3乃至5は、従来技術から知られるような拡大されたバーチャル光変調器画像を生成するいくつかの一般的な光路を概略的に示す。
【0158】
図3は、高次回折のフィルタリングを含む多重結像により、非折り返し光路の例を有するホキュラー又はヘッドマウントディスプレイ(HMD)のビューボリュームにおいてSLM200の拡大バーチャル画像220を生成する原理を示す平面図である。HMDは、制御可能な空間光変調器SLM200において平面可干渉性の波面を向ける、レーザダイオード等の光源110を含む照明装置100と、光源110により放射される光を平行にする、レンズ等のコリメータ素子120とを含む。この例において2つのレンズ系510及び520を含む4f結像系500は、SLM200に後続して配設される。4f結像系500は、SLM200を中間画像280として結像する。レンズ系500は、SLM200により動的に変調される波面の高次回折についての空間フィルタリング関数を果たすことが好ましい。高次回折が再構成の品質を著しく妨害する観察者の眼球1000の入射瞳EPに到達する可能性がある場合、SLM200の画素マトリクスにより発生する高次回折を抑制することが好ましい。例えばこのために必要なフィルタ590は、レンズ系510、520の共通の焦点に配設される開口マスクの形態で提供されうる。
【0159】
拡大レンズ800を有する結像光学系は、瞳孔に向かう光路において観察者の眼球1000がSLM200の画像280を拡大バーチャル画像220として見る4f結像系500に後続する。
【0160】
あるいは、光偏向装置により生成される複合光変調器画像は、SLM200の場所にも位置しうる。
【0161】
このような制御可能な光偏向装置は、2つの制御可能な液晶層の形状で提供されうる少なくとも2つの制御可能な層を含みうることが好ましい。層のうちの1つは、刻み込まれた光路を有する体積ホログラムを選択的に含んでよい。
【0162】
更に光偏向装置は、選択的に、他の光偏向素子を部分的又は完全に含んでよい。これらは、写真レンズでの画像の安定化に対する応用例から知られているような制御可能な可変くさび角を有する素子等を含みうる。
【0163】
2次元又は3次元の画像又は再構成は、個々の領域又はビューボリューム全体に表されうる。
【0164】
図4は、折り返し光路を有する
図3のHMDの構成を示す別の平面図である。このような折り返しを実現するために、2つの更なるミラー920及び930は、可干渉性の波面を反射する光路に配設される。ここでは、SLM200は、平坦なフロントライトユニットFLU(frontlight unit)150により照射されるシリコン基板(LCoS:liquid crystal on silicon)又はマイクロミラー構成(微小電気機械システム(MEMS:micro-electro-mechanical system)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:digital micro-mirror device)を有する反射型液晶に基づく光変調器等の反射型のものである。ここではレーザ光源等の光源110により放射される可干渉性の光は、コリメータレンズ120及び傾斜ミラー910を介して平坦なフロントライトユニット150のくさび形の導波路に入射される。位相変調型光変調器である場合のSLM200は、ホログラム再構成のための複素変調値を得るためにビームコンバイナ(BC:beam combiner)300を選択的に備えてよい。
【0165】
ここでも、光偏向装置により生成される複合光変調器画像は、SLM200の場所に代わりに位置しうる。
【0166】
光偏向装置は、SLMの共役平面に配設されうることが好ましい。
【0167】
図5は、小型HMDの構成においてSLM200の単段式仮想拡大の原理を示す。個々の構成要素が接近して一定の間隔をおいて配置されている状況、少なくとも1つの共通の制御可能な層における個々の構成要素の機能の組合せ及び大きなサイズのビューイングウィンドウのために、追跡装置は省略されうる。
図4と同様に、光源110により放射され且つコリメータレンズ120により平行にされる光は、平坦なフロントライトユニット150によりSLM200に向けられる。選択的なビームコンバイナ300は、SLM200の前方に配設され、共通の複素ホログラム値を形成するように、多数の変調器セルにより変調されている光を複合させうる。空間光変調器SLM200は、拡大結像光学系の形態で提供されることが好ましい拡大レンズの焦点距離内の平面に結像される。波面は、ミラー930を介した光路に沿って、ビューボリュームにおいて画面として動作する平面においてSLM200のバーチャル画像220を知覚する観察者の眼球1000の瞳孔に更に伝播する。体積格子の形態の回折光学系は、例えば上述の原理を実現する小型の光路に特に適している。
【0168】
図3及び4に示されるように、光偏向装置により生成される複合光変調器画像は、SLM200の場所に代わりに位置しうる。
【0169】
図4及び5のミラー930が半透過型又は制御可能に半透過型のものである場合、ARの応用例も可能である。
【0170】
図6はホログラム投影系を示す。一例を挙げると、SLM200は、光源110により放射され、且つコリメータレンズ120、傾斜ミラー910及び平坦なフロントライトユニット150を伝播する光により照射される。ビームコンバイナ300は、選択的にSLM200の前方に配設されてよい。
図6には示されないSLM200の拡大複合バーチャル画像は、例えば1mの距離において42’’ディスプレイのサイズで現れる。該平面において、SLM200の拡大複合バーチャル画像は、動的な3Dピクチャフレーム等を表す。
【0171】
光路は、ミラー950、960、970の系と、少なくとも空間光変調器SLM200を複写する制御可能な光偏向装置400とを含む。ここで、光変調器画像がオフセットされるのではなく偏向されさえすればよいため、光偏向装置400は単一の層であることが好ましい。中間画像270において、個々の光変調器画像は並列に位置している。
【0172】
光偏向装置400は、制御可能なセグメント化されたシャッターパネルと共に静的な光偏向装置を備えるようにも設計されうる。
【0173】
更に投影系は、高次回折を抑制するためにビューイングウィンドウの平面にシャッターアレイを有するようにも設計されうる。
【0174】
例えばミラー970は、屈折成分により置換されうる。SLM200から発せられ且つ該成分に達するビームは、この場合は全反射(TIR:total internal reflection)により観察者の眼球の入射瞳EPに向けて反射される。(半)透過型ディスプレイはこのように実現される。場合によってはON状態に切り替えられうるシャッターは、このオプションを起動及び停止しうる。
【0175】
例えばミラー970が反射型体積ホログラムによっても実現されうる場合の系の機能。角度及び波長の選択性は、透過型ディスプレイが実現されるように制限されうる。この場合も、追加のシャッターがここで使用されてもよい。
【0176】
図7は、光偏向装置450が対物レンズの後方に配設される別の実施形態を概略的に示す。光偏向装置450は、
図1又は2の例として、少なくとも一方が制御可能な種類のものである第1の光偏向手段460及び第2の光偏向手段470を含む。
【0177】
光偏向装置450は、光偏向及び追跡ユニットを形成するように、観察者の眼球1000の眼球又は瞳孔の移動に対してビューイングウィンドウを追跡する追跡装置とも組み合わされうる。このような構成を用いる場合、SLM200と光偏向装置450との間に配設される拡大レンズ810は、光偏向装置がレンズ系の前方に配設される構成と比較して非常に小さく維持されうる。
【0178】
SLM200の平面に実際の対物レンズを配設することも可能である。
【0179】
図8は、
図3及び4と共に説明された実施形態において使用されるような拡大レンズ800を有する結像光学系の構造サイズを示す。それが既にこの系により結像されるSLM(不図示)の複合中間画像270であるために、必要とされるレンズの直径は、類似するSLMのサイズ及び結像関係において非常に大きい。
【0180】
選択的な追跡装置600は、拡大レンズ800を有する結像光学系と観察者の眼球1000との間の光路に配設されうる。
【0181】
図9は、光偏向装置450がSLM200に対する拡大レンズ810の後方に配設される一実施形態において、2つのミラー920、930を使用することで構造の奥行きが減少されうる方法を概略的に示す。ここでも、光偏向装置450によるSLM200の多重結像がこれらの構成要素の後段でのみ実行されるため、ビーム偏向のための拡大レンズ810及びミラー920、930は、非常に小さな直径を有しさえすればよい。傾斜ミラー930は、ARの応用例を提供するために半透過型、あるいは切り替え可能又は制御可能な半透過型のものとすることができる。
【0182】
図10は、傾斜ミラーが同時に光偏向装置450の一部でもある特に好適な一実施形態を示す。光偏向装置450の少なくとも1つの光偏向手段460、470は、時分割多重化モードにおいてSLM200の多重結像を提供するために制御可能な種類のものである。構成要素470が多数の再構成配置を含む反射型ホログラムであるのに対し、これは光偏向手段460であることが好ましい。拡大レンズ810は、観察者の眼球1000が規定の仮想観察者距離において多重画像を知覚するように構成する。偏向されずに、即ち0次の回折次数で光偏向手段460、470を通過する光は使用されず、観察者の眼球1000に進まないように適切な吸収手段又はフィルタリング手段により抑制されうる。これにより、光偏向手段460、470において低い回折効率しか有さない固定又は可変の回折格子を使用できるようになる。光偏向手段460は、いくつかの偏向の方向が刻み込まれる透過型ホログラムの形態で提供される。あるいは、光偏向手段460は制御可能な方法で光を偏向しうる。これらの光偏向手段460、470は、更なる対物レンズ機能又は補正機能を有効にし且つ支持するために、1次元又は2次元で制御可能又は切り替え可能である多くのセルのマトリクス配列も含みうる。実際のSLM200の平面に実際の対物レンズを配設することも再度可能である。
【0183】
体積格子の代わりに、回折型又は屈折型の偏向手段も使用されてよい。例えばこのような層は、可変くさび機能を果たす切り替え可能又は制御可能な液滴駆動セルを含みうる。
【0184】
図11は、拡大レンズ810の後方のSLM200の多重結像する光偏向装置400と共に、構造の奥行きを減少するためのカーブミラー970の使用を概略的に示す。一例を挙げると、ここでは反射型であるSLM200は、レーザ光源等でありうる光源110により放射され、且つコリメータレンズ120、傾斜ミラー910及び平坦なフロントライトユニット150を伝播する光により照射される。SLM200は、高分解能空間光変調器を表す実際の複合中間画像270を形成するように、拡大レンズ810及び光偏向装置400により1次元又は2次元で並列に複数回結像される。複合空間光変調器により生成されるホログラム再構成は、カーブミラー970を介してより拡大されて知覚される。高品質のホログラム再構成を生成できるように、高品質の複素変調値を得るために、他の全ての実施形態と同様に、ビームコンバイナ300はSLM200に後続しうる。
【0185】
図12Aは、
図11の実施形態と比較して僅かに調整される一実施形態を示す。ここでは、光学的にアドレス可能な空間光変調器(OASLM:optically addressable spatial light modulator)250は、中間画像270の位置に配設される。SLM200は、結像光学系810及び光偏向装置400によりその上に並列に複数回順次結像される。光偏向装置400は、結像特性を更に有し、あるいは結像光学系810全体を置換しうる。結像光学系又は更なる結像機能は、OASLM250上で狭い結像グリッドを実現するために画像を更に縮小しうる。
【0186】
OASLM250は、副次的な高分解能空間光変調器を形成する。SLM200の多重結像によりOASLM250に書き込まれるホログラム情報は、カーブミラー970を介して3次元シーンの再構成として拡大されて観察者の眼球1000により知覚される。レーザ光源であることが好ましい可干渉性の光源160は、3次元シーンをホログラム再構成するSLM200により書き込まれた複合情報を読み出すために、コリメータレンズ170、選択的な傾斜ミラー980及び平坦なフロントライトユニット170を介してOASLM250を照射する。
【0187】
透過型OASLMを使用する際には、フロントライトユニットではなくバックライトユニット(BLU:backlight unit)が使用されうる。ビームコンバイナ300は、伝播の方向でOASLMに後続しうる。
【0188】
図12Bに示される特に好適な一実施形態において、透明な位相変調型光変調器の形態であるOASLM250は、振幅変調型光変調器であり、且つOASLM250への位相値の書き込み及びSLM200に書き込まれた振幅値を有する対応する位相値の読み出しの双方の目的にかなうSLM200により読み出される。従って、双方の変調器は、共に複素値の光変調器を形成する。このため、ビームコンバイナは余剰になる。同時に、1つの複素値を書き込むためにSLM200の多数の変調器セルを使用する必要がなくなるため、空間分解能は上昇する。
【0189】
位相値の書き込みは、振幅値を有する位相値の読み出しに使用されるものとは異なる波長を使用して実行されうる。そして、OASLM250の光伝導体は、例えばUVレンジの近傍に存在しうる刻み込み波長(inscription wavelenght)にのみ敏感であってよい。SLM200が順次結像されるOASLM250の個々の領域は、書き込み動作に対して個々に敏感にされる、あるいは刻み込まれた位相情報が格納されたままである間の読み出し中に停止モードに切り替えられるように設計されてもよい。OASLM250は、読み出し動作を完了した後で削除パルスを介して完全に又は個々のセグメントにおいて削除されるように設計されることが好ましい。あるいは読み出し動作は、非常に短い光パルスを使用して実行されうる。そして、1つ又は全ての他のセグメントが書き込まれ且つ/あるいは読み出される期間中にOASLM250のこの領域が照射されないため、光伝導体は、該期間等の「古い」電荷キャリアを放出するために十分な時間を有する。好適な種類の表現である色表現において、個々の色層が更に順次生成される。
【0190】
図13は、それぞれの薄型導波路1101、1102を介して観察者の左の眼球1001及び右の眼球1002に対して垂直の高分解能複合SLM画像を生成する方法を概略的に示す。ここで示されたような両眼配置は、本明細書において説明されるホログラムHMD及び全ての実施形態の好適なオプションである。
【0191】
観察者の左の眼球1001及び右の眼球1002に対する光学部品は、ほぼ一致している、あるいは鏡面対称構造である。このため、次に、観察者の左の眼球1001に対するチャネルのみを例示的に説明する。ここでは例えば反射型であるSLM201は、平坦なフロントライトユニット151を介して照射される。この目的のために、光源(不図示)により放射される可干渉性の光は、コリメータレンズ121を介してフロントライトユニットに入射される。ビームコンバイナ301は、伝播の方向でSLM201に後続しうる。SLM201により放射される変調された波面は、拡大レンズ811を介して光偏向装置401に伝播する。全ての入力結合角の光が薄型導波路1101の2つの並列インタフェースにおいて全反射により導波路1101の方向に伝播するように、光偏向装置401は、体積格子であることが好ましい光学入力結合構成要素1111を介して平坦な角度で、従来技術においてこのように知られている導波路1101に入射される種々の角度範囲を順次生成する。導波路1101は、必ずしも完全に平面でなくてもよく、あるいは曲面も有しうる。光偏向装置401により生成される特定の角度スペクトルの光は、観察者の眼球1101に向かって、各々が異なる角度範囲を受け持つ複数の反射型体積格子1121~1123を介して導波路1101から結合される。ここで、観察者の眼球1101は、SLM201に書き込まれるホログラム情報の再構成を知覚する。この再構成は、SLM201の拡大されたバーチャル複合画像を介して順次生成される。
【0192】
ここで、光偏向装置401は、可変格子周期を有する制御可能な回折液晶格子を含むことが好ましい1つの光偏向手段のみを備えうる。反射型出力結合格子1121~1123は、光偏向装置401の第2の層を形成する。それらは誘電体積層形状でも提供されうる。それらの機能は、導波路1101に沿う規定のいかなる位置においても、規定の入射角の光に規定の出口角、即ち既定の出力結合角を与えることである。
【0193】
入力結合格子1111は、反射型であってもよく、そして光偏向装置401から見て薄型導波路1101の向こう側に配設される。また、出力結合格子1121~1123は、透過型であってよく、そして観察者の眼球に対面する薄型導波路1101の側に配設される。
【0194】
あるいは光偏向装置401は、結像光学系811とSLM201との間に配設されうるが、これにより結像光学系が拡大する。光偏向装置401は、該位置において2つの層から構成される場合に時間的及び空間的にシフトされた多重画像を直接生成しうるが、その結果より大きな入力結合格子111が必要となる。光偏向装置401が該位置において単段式設計である場合、SLMセグメントのバーチャル画像は、
図8とは対照的に、1つの平面にあるのではなく、互いに対して特定の角度だけ傾斜される。これは、ホログラム値を生成する際に考慮されなければならない。
【0195】
図13に係る構成において、複素ホログラム値を生成するビームコンバイナもSLM201、202の各々に後続しうる。
【0196】
図12と同様に、ホログラム再構成を生成するOASLMがここでも使用されうる。OASLMを刻み込む、あるいは
図12において説明されたように複素ホログラム値を生成する電気的に高速にアドレス指定可能なSLMの場合、多重結像処理は、1つの光偏向装置が電気的にアドレス指定可能なSLMと光学的にアドレス指定可能なSLMとの間に配設され、別の光偏向装置がOASLMに後続する二段も含みうる。そして、使用されたOASLMは、非常に高いスイッチング周波数も有する、即ち高リフレッシュレートで動作できなければならない。
【0197】
表示装置の特に好適な一実施形態において、光偏向装置400、401、402、450は、空間光変調器200、201、202、206、207、250の少なくとも1次元でセグメント化された多重画像が平坦な導波路において制御可能な方法で順次生成されるように設計される。
【0198】
次に、観察者の眼球が接眼レンズ(ホキュラー)の近くに位置している、固定型あるいは携帯型の表示装置に特に適している多くの更なる実施形態を概略的に説明する。これらの装置がコンパクト性に関する要求は大きくないため、好ましくは非折り返し光路及び多段結像解決策を有する系を使用することが少なくとも部分的に可能である。そして、特に非常に大きな拡大の場合、収差はより簡単に補正されうる。
【0199】
図14は、多段結像解決策を有する系における光偏向装置400の使用を概略的に示す。
【0200】
例えば
図6に更に詳細に示されたような光変調器ユニット260は、2つのレンズ配置510、520を含み、且つ共通の焦点面に開口マスク590が配設される望遠結像系の前方に配設される。この結像光学系は、
図8に示されたレンズに実質的に対応し且つ観察者の眼球1000の前方に位置している拡大レンズ800を有する結像光学系の物体面に光変調器ユニット260のSLMを結像する。
【0201】
所望の総合倍率及びSLMのピッチに応じて、画像は、第1の段階において1:1に拡大、縮小又は投影されうる。アナモルフィック結像も可能である。SLMは、光偏向装置400により複合中間画像270として拡大レンズ800を有する結像光学系の物体面に複数回結像される。ここで光偏向装置400は、第1の光偏向手段410の一例として可変間隔を有する制御可能な液晶格子と、第2の光偏向手段420の一例として多重体積格子とを備え、個々の体積格子は、部分的な画像又はセグメント及び結像波長毎に多重体積格子に刻み込まれる。その後、特定の画像セグメント及び波長に対して必要とされる体積格子は、第1の光偏向手段410の回折角及び色分割多重光変調器ユニット260の波長により選択される。光偏向装置400は、アナモルフィック結像も実行しうる、あるいは部分的に支持しうる。
【0202】
光変調器ユニット260が体積格子の形態で提供されることが好ましいホログラム光学素子(HOE:holographic optical element)等を含む場合、例えば、平行照明の代わりに、1次元のホログラム符号化に対して必要とされるような平面波面の角度スペクトルが特にコリメータユニットと共に使用されることも可能である。また、照明波動場は、光学系を伝播する発光強度が上昇するだけでなく、系において収差を補正する機会も与える球面波等を含む湾曲した波面も含みうる。例えば、SLM上で垂直な波面の局所的な偏差は、照明波面により特に補正されうる。例えば、複合光変調器画像における球面収差及び/又は誤った輝度分布はこのように補正されうる。
【0203】
一般に光偏向装置400は、更なる補正機能及び波面形成機能を果たしうる。必要とされる体積格子は、所望の出力分布が露光のための参照波として動作する組み立てられた光学構成において、直接ホログラムを刻み込むことにより製造されうる。系において発生するいかなる種類の収差も、このような現位置の露光又は刻み込み中に考慮されうる。使用された光学設計プログラムのシミュレーション等から収差が分かる場合、これらの収差及び基準値に関する情報に基づいて補正的な計算機複合ホログラム(CGH:computer-generated hologram)を得ることが可能である。例えばこれらのCGHは、体積ホログラムを刻み込む際に使用されうる、あるいは光路に直接配設されうる。
【0204】
図14とは対照的に、
図15は、光偏向装置が二段結像解決策において観察者の眼球1000と拡大レンズ810との間に配設される状況を示す。第2の結像段階の拡大レンズは、この場合
図7の拡大レンズとほぼ同一である。しかしながら、該拡大レンズは、拡大されて直接SLMを結像するのではなく、その中間画像280を結像する。光変調器ユニット260のSLMのこの中間画像280は、レンズ配置510、520を含む望遠結像系により生成される。この場合も、開口マスク590は、SLMグリッドにより発生する高次回折を抑制するために、レンズ配置510、520の共通の焦点面に配設されうることが好ましい。ここで、第1の段階は
図14の第1の段階とほぼ同一である。
【0205】
図8とは異なる
図7に示されたように、光偏向装置が該レンズ配置の後方にのみ配設されるため、
図15の第2の段階の開口数は、
図14の開口数と比較して減少されうる。
【0206】
例えば、光変調器ユニット260のSLMを結像して中間画像280を生成する第1の段階は、無限空間に補正される第1のレンズ配置510及び近年の顕微鏡において使用される筒状のレンズに類似する画像を生成する第2のレンズ配置520によっても実現されうる。例えば、ビューイングウィンドウをフィルタリングする開口マスク590は、第1のレンズ配置510の後ろの焦点面、即ちSLMの第1のフーリエ平面に配設されうる。
【0207】
3D物体がホログラムで表されるため、例えば平坦な、歪んでいない平面を表せるようにオブジェクト点を符号化する際に像面湾曲等の収差を許容できる。
【0208】
SLMの多重画像の各セグメントにおいて異なってもよい収差は、3Dシーンを符号化する、あるいはここでは示されない更なる補正素子を使用する際にも補償されうる。例えばこれらの素子は、位相を補正し且つ角偏差を局所的に発生させることに加えて、振幅も補正しうる。例えばこのような補正素子は、中間画像280の近くに配設されうる。例えばこのような補正素子は、適応された補正的な位相分布に加えて適応された補正的な振幅分布も示す位相補正板であってよい。
【0209】
多重体積格子と組み合わせても使用されうる制御可能な回折格子の好適な使用に加え、他の適切な光偏向手段は、光偏向装置400において使用されうるか又は組み合わされうる。
【0210】
例えば、画像の安定化の応用例において使用されるような、制御可能なくさび角を有するプリズムは、制御可能な光偏向素子として適切に使用されうる。3D再構成を快適に表示するにはビューイングウィンドウが小さすぎる場合、制御可能なくさび角を有するプリズムは、眼球移動に対するビューイングウィンドウの上述の追跡のためにも使用されうることが好ましい。
【0211】
図16は、可変くさび角を有する制御可能なプリズム形状で提供される、光偏向装置400において第1の制御可能な光偏向手段410及び第2の制御可能な光偏向手段420を有するこのような装置を概略的に示す。光変調器ユニット260のSLMの多重結像を実現するために、第1の制御可能な光偏向手段410及び第2の制御可能な光偏向手段420は、2つのレンズ配置510、520を含む望遠結像系と
図8に示されたような拡大レンズ800を有する結像光学系との間に配設される。多重画像は中間画像270の形式で生成される。望遠結像系は、ここでも開口マスク590を含みうる。図示されるように、順次セグメント化されたビューボリュームの生成は、屈折素子のみを用いて実現されうる。可変プリズムの制御可能なくさび角度範囲は、装置の構造の奥行きを拡張することで縮小されうる。
【0212】
光路がシフトされるのではなく傾斜されることのみを要求する装置においては、1つのこのような光偏向手段で十分である。
【0213】
制御可能にシフトされうるレンズは、更なる光偏向手段として使用されうる。これらのレンズは、低い慣性モーメント、即ち直進又は回転移動の高加速を実現するために、回折光学素子の形状でも提供されうることが好ましい。ここで、装置のサイズ、即ち重量を更に減少する目的で、SLMをシフト可能な回折光学素子上に縮小結像しうることが好ましい。
【0214】
また、同期化された照明と共にSLMの多重結像を実現するために、傾斜ミラー又はリフトミラーを有する構成、あるいは回転するポリゴンミラーを有する構成を使用することが可能である。
【0215】
図17は、高速で調和してねじられうる2つの制御可能な傾斜ミラー411、421によるビームオフセットの原理を示す。
【0216】
図18は、多重結像する光偏向装置において使用するための高速制御可能なリフトミラー414を使用して光線束の高速オフセットを実現するために使用された構成を示す。制御可能な傾斜ミラー414は、2つの傾斜ミラー412、413の前方に配設される。
【0217】
図17及び
図18に係る構成は、制御可能な方法で光路を更に傾斜させるためにも組み合わされうる。例えば、これにより更なる追跡を提供しうる。
【0218】
図19は、二段結像光学系において光偏向装置400を形成するための、ねじることができる傾斜ミラーの形態で提供される2つの光偏向手段410、420の使用を概略的に示す。2つの光偏向手段410、420は、
図17に示されたように、適合的に更にねじられるが、前者とは対照的に光伝播の方向を逆転させる。
図16に示された状況と同様に、それらは、2つのレンズ配置510、520を有する望遠結像系と
図8に示されたような拡大レンズ800を有する結像光学系との間に配設され、光変調器ユニット260のSLMの多重結像を実現する。この場合も、追加の開口マスク590がここで使用されてもよい。多重画像は中間画像270の形式で生成される。2つの傾斜ミラー410、420を有する構成により、光路を折り返すことができる、即ち装置の構造の奥行きを減少できる。
【0219】
このような折り返しが必要とされない場合、このビームオフセットを実現するために制御可能に回転可能な共面板を使用することも可能である。この板は無彩色型であることが好ましい。板の回転角、屈折力及び厚さはビームオフセットを規定する。無彩色レンズが共面板の代わりに使用される場合、1つ又は2つの方向に更なる対物レンズ機能を実現可能である。このような構成は、より低い操作速度しか必要としないため、必要に応じて眼球移動に対してビューイングウィンドウを追跡することにも非常に適している。
【0220】
図20は、二段結像光学系において多重結像する、制御可能な偏向格子及び多重反射型体積格子の形態で提供される2つの光偏向手段410、420を有する光偏向装置400の使用を示す。
図14に示されたような透過配置とは対照的に、反射型体積格子を使用することにより、ビーム伝播の方向で更なる変更を容易にする。
【0221】
図19及び
図20を参照すると、光偏向装置400の光偏向手段420、即ち観察者の眼球に対面する光偏向手段は、ARの応用例を提供するように半透過型又は制御可能な半透過型でもありうる。更に光偏向手段420は、ガラスの表面から反射される光が混合し、且つ観察者の眼球において妨害フレアを発生させる他の現実物体が、この偏光子を介して送信されることがほぼ回避されるように配向されることが好ましいワイヤグリッド型偏光子(WGP:wire grid polariser)等の偏光子を含みうる。しかしながら、ARの特性を有するホログラム表示装置の光、即ち光変調器ユニット260により変調されたような3Dシーンを再構成するホログラム情報を搬送する光の偏光は、光偏向手段420により観察者の眼球に向けられる。
【0222】
図21は、2つの透過型体積格子191、192によりSLM200のアナモルフィックストレッチングの原理又はSLMの多重複合画像270を示す。個々の光線束間の光路長の差異は補償される。光路の差異をこのように補償することにより、光源110により放射され且つコリメータレンズ120により平行にされる光の可干渉距離は短く維持されうる。
【0223】
このような構成は、本発明の装置の光路に一体化されうる。アナモルフィックストレッチングに対するこの構成は、必ずしもSLMの隣に配設されなくてもよく、
図21に示されるように、例えば平面波の角度スペクトルが十分に制限される光路の部分に配設されうる。体積格子が使用されるとすると、平面波の角度スペクトルは、高い回折効率で回折される場合に十分に制限されると考えられる。透過型体積格子の使用可能な角度範囲は、透過型体積格子が薄いほど広くなる。一般に反射型体積格子は、透過型体積格子より広い角度選択性を示す。
【0224】
光路長において発生する差異を補償する原理は、2つの反射型体積格子、又は反射型体積格子と透過型体積格子との組合せによっても実現されうる。
【0225】
従って、
図21に示された構成は、省スペースの光路折り返しを実現し且つ構成要素の数を最小限に維持するように、アナモルフィックストレッチングの機能を1つの光偏向手段において光線束又は波動場を偏向する機能と組み合わされうる。
【0226】
能動的な光学素子の数は、系の光学設計を最適化することで減少されうる。
【0227】
図22は、ここでも2つのレンズ配置510、520を含むテレセントリック結像系の共通の焦点面に配設される制御可能な偏向格子を有する光偏向装置400の使用を概略的に示す。開口マスク590は、光変調器ユニット260のSLMのグリッドにより生成される望ましくない回折次数を除外するために、2つのレンズ配置510、520の共通の焦点面に配設されうることが好ましい。光偏向装置400のテレセントリック設計及び2つのレンズ配置510、520の共通の焦点面におけるその配設により、ただ単に光偏向装置400の光偏向手段を制御可能な方法で傾斜させることでSLMの複合中間画像270を得ることが可能である。このような傾斜は、制御可能なプリズム等の光偏向装置400の別の制御可能な光偏向手段によっても実行されうる。光路を傾斜させる光偏向手段の位置は、例えば更なる対物レンズの機能を実現するために焦点面の外側にもありうる。それにより発生する可能性のある光変調器画像のいかなる重なりも、ホログラムを生成する際に考慮されうる。
【0228】
拡大レンズ800を有する結像光学系において、例えば複合中間画像270は、仮想表示画面の平面、即ち1~2mの距離で観察者の眼球に対して知覚可能となるように仮想的に更に大幅に拡大される。
【0229】
ここで提案された原理は、3つ以上の結像段階を含む光学系にも適用されうる。
【0230】
3D再構成を快適に表示するにはビューボリュームが小さすぎる場合、
図8に示されるように、光学追跡装置は、例えば眼球に近接して配設されうる。
【0231】
追跡装置は、角度を導入する要素により表される場合に複合光変調器バーチャル画像、即ちビューボリュームをシフトさせる。追跡装置は、特にその作動原理が光の入射角に依存する場合に間隙なく接合される光変調器画像を得るように光偏向装置400と同期されるべきである。複合光変調器画像のシフトは、再構成される3Dシーンを符号化するホログラムを生成する際に考慮されうる。
【0232】
1次元の符号化法が使用される場合、ビューボリュームにおいて非干渉方向に平面波の角度スペクトルを拡張する、あるいは平面波の角度スペクトルを必要とされる大きさまで拡大する移動拡散板は、開口マスク590の平面に配設されうる。その結果、これは、ビューイングウィンドウにおける平面波のこの完全な角度スペクトルが、光変調器ユニット260のSLMを照射する際に必ずしも既に存在していなくてもよいことを意味する。
【0233】
光偏向装置400は、収差を最小限にするための補正機能又は再生スケールのアナモルフィックストレッチングを実現するための円柱レンズの機能も果たしうる。
【0234】
観察者の眼球の入射瞳に近接して位置付けられる場合、単一の制御可能な光偏向手段は、順次ビューボリュームを生成するために使用されうる。観察者の眼球の入射瞳までのこの光偏向手段の距離が長いほど、実際に使用可能なビューイングウィンドウの面積は狭くなる。ビューイングウィンドウが十分に大きい、即ち例えば20mmである場合、例えば、角度を順次導入する単一の制御可能な液晶格子は、複合光変調器画像を得るために観察者の眼球から10mmの距離に配設されうる。観察者の眼球からの格子の正確な距離は、観察者の眼球からの画像の距離、観察者の眼球の入射瞳の平面における非傾斜ビューイングウィンドウのサイズ、所望のビューボリューム及び観察者の眼球の瞳に対してビューイングウィンドウを追跡する選択的に提供された追跡装置の精度に依存する。
【0235】
これを
図23に概略的に示す。
図7とは対照的に、光偏向装置450が
図23では観察者の眼球1000に非常に近接して配設されるため、多数のセグメントで構成される、ビューボリュームにおいて光変調器ユニット260で符号化される3Dシーンを見ることができるように制御された観察者の眼球1000に対するビームオフセットではなく、そのように制御されたビーム傾斜のみが必要とされる。光変調器ユニット260により放射され且つ光偏向装置450により制御可能に偏向される光は、拡大レンズ810により所望の観察者距離において複合光変調器バーチャル画像を生成する。選択的な開口580はSLMの高次回折光を除去する。選択的な開口580は、ビューイングウィンドウを限定し、高輝度のレーザ放射が高次回折において発生しうるためにそれを眼球に近づけない。
【0236】
光偏向装置450の光偏向手段は、それぞれ1次元又は2次元で多数のセグメントのビューボリュームを複合するために、1次元又は2次元で湾曲される表面上にも配設されうる。これは、
図23とは対照的な
図24に示される。
【0237】
平面複合面とは対照的な湾曲された仮想複合光変調器表面の順次発生する位置偏差は、3D物体のホログラム符号化中に補正されうるため、仮想ビューボリュームにおいて常に補正され且つ偏りなく示される。
【0238】
仮想SLMを複合する機能及び観察者の眼球の入射瞳に対して仮想SLMを追跡する機能の双方は、観察者の眼球の入射瞳に対して仮想SLMを追跡する機能が適応的に設計される場合に光偏向手段により実現されうる。特に光偏向手段の速度及び有効角度範囲がその制限された速度のためにSLMにより提供されうるよりも大きな複合変調器面積を許容する場合、これは意味をなす。そして、複合光変調器画像は、表される再構成された3Dシーンの部分が適応されうる有効角度範囲内に全体としてシフトされる。
【0239】
ビューボリュームの単なる逐次複合は、使用された空間光変調器のリフレッシュレートに関する要求が大きい。
【0240】
ビューボリュームの複合は、主に以下の理由から非常に重要である。観察者及び表示装置の双方が固定の位置に位置している場合に観察者追跡が必要ないサイズである15mmのビューイングウィンドウを生成するために、可干渉方向で角度毎に約725個の変調器セルが必要とされる。観察者追跡が実行される場合、約5mmのサイズの観察者の眼球の入射瞳を覆うように、この数を約1/3まで減少できる。しかしながら、この場合、可干渉方向でビューボリューム頂角の角度毎に依然として約250個の変調器セルが必要とされる。比較すると、2次元の又は立体表現は、HD分解能においてもビューボリューム頂角の角度毎に60個の変調器セルしか必要としない。現在市販されている空間光変調器の変調器画素数では、大きなホログラムビューボリュームを与えるには不十分である。所望の大きなビューボリュームは、特に可干渉方向で多数のセグメントを順次接合することにより生成されうる。しかしながら、同時に、光変調器の速度に対する要求は、3原色、即ち赤色、緑色及び青色も順次表される場合にはますます、逐次作動原理のためにより高まる。
【0241】
スペックルとして明らかとなるクロストーク、即ち隣接画像点間の干渉を減少するために、可干渉性の画像コンテンツは、間引きされた形式で順次表されうる、即ち多数の間引きされたオブジェクト点クラスタは互いに表される。これにより、使用された空間光変調器のリフレッシュレートに対する要求は再度高まる。
【0242】
特に、装置の体積及び重量に対する要求がいくらかより少ない固定型のホログラム表示装置において、多数の空間光変調器を同時に使用できることが好ましい。例えば3原色、即ち赤色、緑色及び青色は、同時に示されて、同時にあるいは時分割多重化処理において複合ビューボリュームを与えうる。
【0243】
空間分割多重化と時分割多重化とを組み合わせることも可能である。例えば大きなビューボリュームは、一方の次元では多数の光変調器を介して空間的に複合されうるが、他方の次元ではこれらの空間光変調器の時分割多重化により複合される。
【0244】
異なる色を有する3つの空間光変調器の光路は、ダイクロイックミラー、プリズムアレイ、偏光感受型光学系等の当該技術分野において知られているビーム結合手段又は回折光偏向手段と組み合わされうる。
【0245】
図25は、
図22おいて色多重化せずに概略的に示したような二段結像光学系において異なるスペクトル分布の3つの光変調器手段261、262、263の3つの空間光変調器を多重結像する、テレセントリック結像系の共通の焦点面における制御可能な光偏向手段として制御可能な偏向格子を有する光偏向装置400を使用する際に色多重化する構成を概略的に示す。光変調器ユニット261、262、263の3つの光変調器画像のビーム結合は、ここでは、光変調器ユニット261、262、263の各々に対して独立した物体側のレンズ配置511、512、513、並びに光偏向装置400の後方に共通の画像側のレンズ配置520を含むテレセントリック結像系の共通の中間画像平面において実行される。この場合も、選択的な開口マスク590は、テレセントリック結像系の焦点面に配設されうる。
【0246】
レンズ配置520は、より大きな開口数に対して設計される。一例を挙げると、示された配置において、青色の光変調器ユニット262は直接光路に存在する。光偏向装置400は、ある角度でそれぞれ2つの光変調器ユニット261、263により放射された緑色及び赤色の光により照射される。赤色の光の光路は、ここでも単なる例示的な構成である、光路を折り返す反射型体積格子990を更に特徴的に示す。この構成において、体積格子990の角度選択性は、赤色のSLMのサイズ、又はこのサイズが与えられる場合にはSLMの後方に直接配設される第1のレンズ配置513の有効焦点距離を規定する。
【0247】
あるいは、色ビームスプリッタキューブ(Xキューブとも呼ぶ)は、光偏向装置400の前方に配設されうる。個々の色によりSLMを照射する光変調器ユニット261、262、263の光源は、光偏向装置400により同期される。この構成において、光偏向装置400は、無彩色型として設計可能でない限り、3つのSLMの3倍の切り替え速度を少なくとも有するべきである。それから個々のSLMは、リフレッシュレートの1/3のタイムシフトでアドレスされ、且つそれに対応してタイムシフトされた短光パルスにより、即ち対応する情報が完全にそれらに書き込まれる場合に照射されることが好ましい。例えば制御可能な液晶格子は、1.8kHzで動作可能であり、LCoSパネル等の位相変調型SLMは600Hzで実行される。
【0248】
あるいは、赤色、緑色及び青色の光の光路は、多重結像後に複合中間画像270の平面においても組み合わされうる。この場合、赤色、緑色及び青色の光の3つの光路の各々fが独立した光偏向装置を有するため、それらの切り替え速度に対する要求はそれほど高くない。
【0249】
図26は、
図13の下で既に説明されているように、薄型導波路1100と組み合わせて垂直多重結像するHMDの一実施形態を示す。一例を挙げると、ここでも、反射型SLM200は平坦なフロントライトユニット150を介して照射される。この目的のために、光源(不図示)により放射される可干渉性の光は、コリメータレンズ(不図示)を介して平坦なフロントライトユニットに入射される。二相符号化を可能にするSLM200の隣接変調器セルの2つの位相値を常に光学的に結合するビームコンバイナ300は、SLM200に選択的に後続してよい。SLM200、フロントライトユニット150及びビームコンバイナ300は、制御ユニット(不図示)から3Dシーンのホログラム符号化のためのデータを受信する光変調器ユニット260の一部である。光変調器ユニット260は、拡大レンズ800の物体側の焦点面に配設されることが好ましい。光変調器ユニット260により変調される変調された波面は、光偏向装置400の第1の制御可能な光偏向素子410上に入射する。制御可能な光偏向手段410は、電極構造に印加される電圧プロファイルが可変回折偏向格子を生成する制御可能な液晶格子の形態で提供されることが好ましい。制御可能な光偏向手段410は、SLM200の光を垂直方向で順次少なくとも2つの異なる角度範囲に向ける。
図26を参照すると、例えば4つの異なる垂直方向は、4つの異なる垂直角度スペクトルにより生成される。第2の光偏向手段420は、相互にシフトされたセグメントが時分割多重化処理において垂直方向に生成されるように特定の角度スペクトルの光を偏向する。例えば、光偏向装置400の光偏向手段420は、光偏向手段として制御可能な液晶格子も備えうる。光偏向装置400の光偏向手段420は、異なる入射角度スペクトルの各々を対応する出口角度スペクトルに変換する多重体積格子も備えうる。好適なカラーHMDでは、この多重体積格子は、波長多重化に対しても設計可能であり、その後配置された多数の体積格子及び/又は多重体積格子も備えうる。2つの光偏向手段410と420との間の距離は、とりわけ光偏向手段410の最大偏向角及び垂直方向に生成されるセグメントの数に依存する。全ての入力結合角の光が薄型導波路1100の2つの並列インタフェースにおいて全反射により導波路1100の方向に伝播するように、順次生成された垂直セグメントは、体積格子を備えることが好ましい光学入力結合構成要素1110を介して平坦な角度で導波路1100に入射される。
図26は、導波路1100の側方インタフェースへの入射を示す。あるいは、透過型体積格子等を介して光偏向装置400と対面する導波路1100の側又は反射型体積格子等を介して向きが光偏向装置400から逸れている導波路1100の側に入力結合構成要素1110を介して光が入射されることも当然可能である。入力結合構成要素1110は、少なくとも1つの多重体積格子を備えうることが好ましい。
図13に示されているものと同様に、入力結合構成要素1110を介した導波路1100への光の入射は、ここでは光変調器ユニット260の変調器セルの共通の水平範囲を分割する複数、例えば5個の水平角度スペクトルの形式でも実行されうる。
図26に係る構成では、導波路1100は完全に平面である必要はなく、その表面は、湾曲され且つ/あるいは小さなくさび角を有してよい。第2の光偏向手段420及び入力結合構成要素1110は、光の偏向及び入射のために1つの構成要素においても組み合わされうる。出力結合構成要素1130は、平面導波路1100から出射される光を結合し、観察者の眼球1000に向ける。観察者の眼球1000の瞳孔が位置しているビューイングウィンドウ(不図示)は、そのように生成される。SLM200の拡大複合バーチャル画像230は、ビューボリュームに垂直に配置されたセグメントI~IVの形式でこのビューイングウィンドウにおいて可視である。妨害フリッカリングを最小限にするために、セグメントI~IVの時系列は変動及び最適化されうる。セグメントはランダムシーケンスでも生成されうる。ランダム分布は、フリッカリングが最大限抑制されるように選択されるべきである。そのように実行している間、同一のセグメントが表されるまでの遅延は、この場合も長すぎるべきではない。
【0250】
観察者の眼球1000からのセグメント化された多重バーチャル画像230の見掛けの距離は、とりわけSLM200の有効面積のサイズ及び拡大レンズ800の拡大率に依存する。例えば、見掛けの距離は2mでありうる。光路における一次拡大レンズ800に続いて、アナモルフィックストレッチング又は圧縮等の更なるレンズ効果及び/又は波動場形成機能は、上述したようなそれぞれの主な機能に加え、個々の構成要素、即ち例えば第1の制御可能な光偏向手段410、第2の制御可能な光偏向手段420、入力結合構成要素1110、薄型導波路1100及び出力結合構成要素1130において実現されうる。
【0251】
SLM200のビューイングウィンドウ及び複合バーチャル画像230は、3次元シーンのオブジェクト点が光変調器ユニット260に書き込まれたようなホログラムの振幅及び/又は位相の分布により再構成されるビューボリュームを規定する。2次元シーンが観察者の眼球からの任意の距離においてホログラム生成されることも当然可能である。ホログラム符号化のためにブルクハルト符号化法等を使用する振幅変調型光変調器を有する装置では、シーンは、複合バーチャル画像230の平面においてホログラム符号化ではなく2次元に及び直接符号化されてもよい。
【0252】
SLM200の水平変調器領域が入力結合構成要素1110により種々の水平入射角度範囲に分割される場合、出力結合構成要素1130は、各々が特定の水平入射角度範囲を対応する水平出口角度範囲に変換することにより、水平セグメントa~eを含むSLM200の複合画像230を生成する多数の水平セグメントA~Eを含むように設計される。これらの水平領域は、出射された垂直セグメントI~IVの光を同時に結合する。水平セグメントa~e及び垂直セグメントI~IVの双方は、間隙なく接合される、あるいは僅かに重なり合う。セグメントの重畳又は重なりは、再構成されたオブジェクト点に対するホログラム値を生成する際に考慮されうる。
【0253】
薄型導波路1100は、最適な位置からの拡大複合バーチャル画像260の個々の水平セグメントa~e及び/又は垂直セグメントI~IVの偏差を検出する位置センサ1140を有しうる。これらのセンサは、導波路1100の周辺領域、特に観察者の閲覧範囲の外側に配設されることが好ましい。光変調器200は、これらの位置センサ1140を照射するために、ホログラム情報を書き込むためではなく補正値を発見するためだけに使用される更なる変調器セルを周辺に有しうる。温度の変動等によっても発生したようなドリフト効果を補償できる装置の動作中、補正値は永続的に判定されうる。
【0254】
より大きな最大偏向角が光偏向手段410及び420により光偏向の方向に実現されることも可能であるため、このような調整のために光変調器200上に透明なセンサ及び更なる変調器セルは必要ない。そして、この更なる領域は、例えば装置をON状態に切り替えて補正値を判定した後の初期位相中にのみ使用される。一般にこの更なる領域は、可視領域ではなく、例えば眼鏡フレームにより表されるような視野限定開口の領域に存在する。位置センサ1140は、ほとんど知覚されないように透明な形状で提供され且つ観察者の眼球1000の視野に位置していてもよい。それにより、光変調器上の更なる変調器セルを用いずに実行することが可能である。それらにより発生したいかなる吸収も、ホログラム値を生成する際に考慮されうる。装置がON状態に切り替えられる場合、補正値は、適切なテストパターンを生成することで判定されうる。
【0255】
例えば適切な位置センサ1140は、フォトダイオード又はフォトトランジスタ、あるいはCCDセンサ又はCMOSセンサ等の感光素子の1次元又は2次元の配列を含む。それらは単純なエッジ検出等に利用されうる。位置敏感型写真要素は、1つ又は複数の光分布の中心が側電極構造を介して判定されうる場合にも使用されうることが好ましい。位置センサ1140は、例えば薄膜技術を使用して作られる場合には平面導波路1100上に直接設けられうる。
【0256】
垂直調整不良は、使用された液晶格子により能動的に補償されうる。第2の交差した制御可能な液晶格子は、水平調整不良を補正するために提供されうる。
【0257】
更に出力結合構成要素1130は、透過型体積格子の形態で提供され、且つ観察者の眼球1000に対面する薄型導波路1100の側に配設されうる。
【0258】
拡大レンズ800の開口数は分解能を規定する。分解能は、SLM200の少なくとも0次及び1次回折が一般に一次拡大レンズ800を越えて伝播するように選択される。
【0259】
拡大レンズ800の後方に配設される光学部品は、減少された許容確度を有しうる。これは、例えば体積格子においての例である。拡大レンズ800の後方に存在することが好ましい平面波の角度スペクトルは、拡大レンズ800の後方に配設される光学部品の許容確度又は角度選択性により規定される。
【0260】
拡大レンズ800の後方に存在することが好ましい平面波の角度スペクトルは、その前方で使用される光変調器ユニット260のサイズ、即ち拡大レンズ800の後方に提供される第1の制御可能な光偏向手段410の必要とされるサイズも規定する。
【0261】
使用されたSLM200又は光変調器ユニット260のサイズは、拡大レンズ800の焦点距離を延長することで拡大されうる。
【0262】
一般に、使用された拡大レンズ800の開口数は、再構成された3次元シーンの符号化された全てのオブジェクト点を分解できるようにする開口数以上であるべきである。
【0263】
制御可能な光偏向手段410及び420は、有効高次回折が示す回折効率が低すぎる場合にそれらの0次回折光を除去でき、且つ高次回折が選択される際に0次の回折次数の妨害部分がそこに留まるように、互いに側方偏位においても配置されうる。
【0264】
光変調器ユニット260の拡大されたバーチャル複合画像230は、アナモルフィックに生成されうることが好ましい。アナモルフィックストレッチングは、例えば拡大レンズ800及び/又は入力結合構成要素1110により実行されうる。しかしながら、円柱レンズ、格子、即ち体積格子等の更なる要素は、光変調器ユニット260と平面導波路1100との間の光路にも配設されうる。この目的のために、例えば円柱レンズは、第2の制御可能な光偏向手段の後方に配設されうる。
【0265】
それぞれ、入力結合構成要素1110及び出力結合構成要素1130により平面導波路1100に入射され且つ平面導波路1100から出射された光の結合は、連続した出力結合構成要素が規定の位置の外側の特定の角度を規定の方向に結合するために提供されるセグメント化されていない方法でも実現されうる。
【0266】
この目的のために、透過型又は反射型の体積格子は、角度選択性が最適化される厚さで提供されうる。一般に反射型体積格子は、透過型体積格子よりも広範な許容確度を示す。透過型体積格子の許容確度は、特にそれらの厚みを増加することで減少されうる。反射型体積格子において、許容確度は、変調強度、即ち屈折率の差異を変動することで影響を及ぼされうる。
【0267】
そのように実行する際、角度選択性のいかなるサイドピークも抑制することが好ましい。例えばOLEDが使用される従来の2D又は立体視3DのHMD装置の場合と同様にスペクトル的により広範な波長範囲を使用する場合、例えば角度及び/又は波長の選択性のサイドピークを抑止することが好ましい。
【0268】
均一な記録媒体を2つの相互に可干渉性の平面波に露光することで生成された透過型体積格子において、屈折率変調の包絡線は矩形関数であり、記録媒体におけるいかなる吸収も無視する。透過型及び屈折型の体積格子において、屈折率変調の包絡線は、特に露光のために使用される波動場の適切な可干渉性を選択することでも適応可能であるが、例えばガウス分布、ハミング窓又はカイザーベッセル窓の形式を有しうる。これにより、角度及び波長の選択性のサイドピークは著しく最小化される。これは、例えば種々の再構成幾何学の角度及び/又は波長の感度が互いに近接して存在する場合に好ましい。これは、角度及び/又は波長の選択性のサイドピークにより発生した、示されたビューボリュームにゴースト像が現れるのを回避するためである。
【0269】
本発明に係る表示装置の好適な一実施形態において、従って制御可能な光偏向装置は、特に製造中に露光のために使用された波動場の適切な可干渉性を選択することで屈折率変調の包絡線が設定された、体積格子及び/又は多重体積格子を備える。
【0270】
2次元モードで動作し、且つ変調器セルが2次元変調器セルマトリクスに配置される空間光変調器に加え、1次元光変調器は、HMD又はホキュラーにおいて大きな高分解能のビューボリュームを生成するためにも使用されうることが好ましい。このような1次元又は線形の光変調器は、1つ又は非常に少ない変調器セルの列のみを有する。このような光変調器は、マトリクスでアドレスされることを必要としないため、列の方向に高分解能で安価に製造されうる。電子制御ユニットと変調器セルとの間の電線延長が非常に短いため、とりわけこれらの光変調器は、非常に速い切り替え速度を有しうる。例えば適切な線形SLMは、回折格子ライトバルブ(GLV)又は格子電気機械系(GEMS:grating electro-mechanical system)等の制御可能な回折格子を備える変調器セルの1次元構成を含む。それらは、反射モードで動作し、入射光の位相を変調できるようにする。1次元LCoS又は1次元の透明な液晶変調器も使用されうる。
【0271】
2次元の画像平面を生成するために、これらの光変調器は、変調器セルの線形範囲に対して垂直な方向に並列に複数回順次結像される。とりわけビューボリュームのサイズを規定する規定の角度範囲において連続した偏向角を許容する制御可能な光偏向装置が使用される場合、既に上述されているSLMの拡大されたバーチャル複合画像を生成する装置は特にこれに適している。1次元SLMは、変調器列の方向に、即ち走査方向にわたりホログラム値の1次元符号化に特に十分に適している。3Dシーンの色再構成のために装置において、2次元SLMに類似しているSLMは、個々の色成分、即ち赤色、緑色及び青色により順次照射される、あるいは各色成分は、独立したSLMにより変調される。この場合光路は、例えば
図25に示されたように、拡大複合バーチャル画像が生成されるように設計される。
【0272】
図27Aは、単なる一例として、1次元SLMが制御可能な光偏向手段410により走査される方法を示す。光学構成は、
図22に示されるものにほぼ対応する。しかしながら、光変調器ユニット260は、少なくとも1つの線形SLMを備える。線形SLMは、ここではテレセントリックレンズ配置の平均の焦点面の領域において光偏向手段410により走査される。光偏向手段は、格子定数が電極構造に印加される電圧プロファイルにより規定の範囲において非常に精細に変更可能である制御可能な回折液晶格子を備えることが好ましい。最大偏向角は、ひいては電極構造の精細度により規定される可能な限り小さな格子定数により規定される。テレセントリックレンズ配置は、光変調器ユニット260により放射される光を平行にする投影系として動作する第1のレンズ系510と、光学Fθ系の機能に対応する第2のレンズ系520とを含む。光偏向手段410により形成された走査角がこのレンズ系520により側方偏位に変換されることにより、以下の拡大結像光学系に対する仮想2次元SLMとして動作する複合中間画像270を生成する。このような結像光学系は、
図8の下で既に説明されている。ここでも、開口マスク590は、テレセントリック結像系の共通の焦点面に配設されうる。高次回折は、ここでは変調器セルの方向にのみ発生しうる。
【0273】
図27Bは、例えば
図27Aに示されたように、少なくとも1つの線形SLM205を備える光変調器ユニット260の例示的な物理的形状を示す。線形SLM205は、コリメータレンズ120及びビームスプリッタキューブ130を介して十分に可干渉性の光で、フロントライトの目的にかなうレーザ光源等の少なくとも1つの光源110により照射される。十分な可干渉性とは、ここでは、光源110の平行にされた光の空間可干渉性が、少なくともホログラム再構成されたオブジェクト点に対するコードが書き込まれるSLM205のサブ領域、即ちサブホログラムの領域を照射するために十分な大きさであることを意味する。二相符号化法が使用される場合、線形SLM205は、複素ホログラム値を得るために、位相変動型光変調器であるSLM205の2つの常に隣接する変調器セルの光を複合するビームコンバイナを提供されることが好ましい。しかしながら、2つの変調器セルは、厳密には直接隣接する変調器セルでなくてもよい。2つの変調器セル間の距離は、異なる、即ち直交偏光の光が遅延板300において相互にシフトされる経路の長さにより規定される。この目的のために、当該2つの変調器セルの光は、構造化された遅延板320により局所的に異なる、即ち直交偏光を与えられる。非構造化偏光子310は、異なる、即ち直交偏光の2つの重畳された光の部分から共通の偏光部分を選択する。直交偏光は、垂直(TE)及び水平の線形(TM)偏光光であるが、左側及び右側に円偏光された光でもありうる。
【0274】
SLM205の線形方向で隣接していない2つの画素が組み合わされるが、線形SLM205が変調器セルの少なくとも2つの隣接列を含む場合、それは特に好ましい。線形SLM205が変調器セルの少なくとも2つの隣接列を含む場合には互いに対する距離も更に長くなりうるため、例えば電気制御ユニットは2つの隣接列の間に位置しうる。それから、構造化された遅延板320は、2回通過の後に入射光の偏光に直交する偏光を生成する複屈折材料の1つのストライプのみを列毎に備える。SLMの隣接列の偏光の直交化の収色性を向上させるために、例えば、組み合わされる隣接反射型SLM列上で+λ/4遅延列及び-λ/4遅延列を使用することが可能である。
【0275】
遅延板330における2つの偏光部分の光路の相互シフトは、2つの変調器セル列の距離に対応する。SLM205が時分割多重化処理において種々の色部分により照射される場合、偏光に影響を及ぼす要素310、320及び30はほぼ収色性であるべきである。偏光に影響を及ぼす要素310、320及び30は、波長と同期される制御可能な偏光に特有の位相シフトも有しうる。制御可能な複屈折を有する液晶層は、これに特に十分に適している。
【0276】
図27Cは、
図27Aに示された構成において使用されうる例示的な光変調器ユニット260の別の実施形態を示す。複素変調値は、ここでは線形SLM206、207の対応する変調器セルの各々の位相変調光をビームスプリッタキューブ130と重畳することで生成される。この目的のために、線形SLM206、207の各々は、例えば2つの直交面の前方のビームスプリッタキューブ130の表面の前方に及びそれに平行に配設される。2つのSLM206、207は、共通の光源110により、且つコリメータレンズ120及びビームスプリッタキューブ130を介して十分に可干渉性の光により照射される。この目的のために、コリメータレンズ120は、ビームスプリッタキューブ130の別の表面の前方に配設される。2つのSLM206、207の組み合わされた光は、ビームスプリッタキューブ130の第4の表面を介して結合出力される。
【0277】
図27Aを参照すると、制御可能な光偏向手段410は、再生スケールのアナモルフィックストレッチングを実現するための補正機能及び/又は円柱レンズの機能も果たしうる。
【0278】
少なくとも1つの線形SLMが機械的に走査されてSLMの拡大複合バーチャル画像を生成する実施形態は、ホキュラー装置に特に十分に適している。これは、マイクロメカニカル素子の形状でも設計されうるガルバノメータミラー及び/又はポリゴンミラー等により実行されうる。
図28は、
図27A乃至Cに示されたように、2つのレンズ配置510、520を含むテレセントリック結像系の共通の焦点面において光変調器ユニット260の変調された光を走査するポリゴンミラー415を有する例示的な一実施形態を概略的に示す。光変調器ユニット260を含む光路は、
図27A乃至Cの光路にほぼ対応するため、ここでは詳細な説明は省略する。ポリゴンミラー415は、走査ストライプにおいて線形範囲の方向にわたり線形光変調器ユニット260を走査することで中間画像平面270において仮想SLMを生成する制御可能な光偏向手段として動作する。少なくとも2つの重畳された拡大走査ストライプを含む結像光学系(不図示)を介して中間画像270の拡大されたバーチャル複合画像を生成するために、ポリゴンミラー415の動きの方向にわたり光変調器ユニット260の変調された光を偏向する光偏向装置(不図示)は、該平面に配設されうる。この目的のために、光偏向装置は、系コントローラ(不図示)によりポリゴンミラー415の動き及び光変調器ユニット260と同期される。
【0279】
光路の必要な傾斜を実現するために、このような光偏向装置は、レンズ配置510とポリゴンミラー415との間又はポリゴンミラー415とレンズ配置520との間にも配設されうる。例えば、可変格子周期を有する切り替え可能又は制御可能な液晶格子、切り替え可能な液晶偏光格子又は切り替え可能な体積格子は、この目的のために使用されうる。
【0280】
それとは対照的に、必要な傾斜は、レンズ配置520と複合画像270の平面との間に配設される光偏向装置によっても実現されうる。この構成では、例えば、2つの制御可能な液晶格子又は2つの切り替え可能な体積格子要素等の2つの制御可能な光偏向手段は、中間画像270の平面において多数の走査ストライプで構成される複合画像を生成するために、走査ストライプの必要とされる側方偏位が2つの角度導入部材により発生されるように順次配設される。2つの角度導入部材の構成は、レンズ配置510の前方、即ち光変調器ユニット260とレンズ配置510との間にも配設されうる。これらの構成は、1つの角度導入要素が一次SLMとレンズ配置510との間に配設され、別の角度導入要素がレンズ配置520と複合画像270との間に配設されるという点でも組み合わされうる。
【0281】
光変調器ユニット260のSLMの2次元拡大複合バーチャル画像を生成する拡大機能を有する光学結合系(不図示)は、複合中間画像270に後続する。
【0282】
3Dシーンの色再構成のための装置の実現を容易にする1つのポリゴンミラー415は、僅かに無彩色型に設計されうる。
【0283】
反射面は、高次回折を抑制するために回転の方向にわたり吸収開口を含みうる。この開口機能は、構造の高さを制限することでも実現されうる。
【0284】
特に好適な一実施形態において、ポリゴンミラー415の隣接面は、光変調器ユニット260のSLMの線形範囲の方向でも多重画像複合が実現されるように、互いに対して傾斜されるように設計される。互いに対して傾斜される表面の数は、SLMの線形範囲の方向の多重画像の数を規定する。傾斜シーケンスは、反射面の数を増加する、即ちポリゴンミラー415の必要とされる回転速度を低下するためにSLMにおいて複数回繰り返されうる。個々の反射面の傾斜シーケンスは、フリッカリングを最小限にするために、各通過中にも変動されうる。
【0285】
あるいは、多重結像のために、ポリゴンミラー415の反射面は、回転の方向における種々の方向に光を偏向する反射型体積ホログラムの形態で設計されうる。各反射面は、1つの反射角、並びに色が時分割多重化処理において生成される場合には、多重体積ホログラムを不要にする1つの波長範囲のみに適合するように選択されなければならない。このような反射型体積格子の形態の反射面のシーケンスは、ポリゴンミラー415上で複数回繰り返されうる。
【0286】
反射型体積格子は、更なるレンズ機能又は再生スケールの変化がこの方向で実現される、あるいは光路における1つ以上の結像光学系の収差がこの偏向装置により更に補正されるように、偏向の方向の偏向角が変動するように設計されうる。回転の方向に反射面上で偏向角を変動させることにより、光路における1つ以上の結像光学系の収差は、回転の方向で補正されうる。いずれかの方向での小さな収差は、オブジェクト点の符号化中に補正されうる。
【0287】
個々の変調器セル間に相対的に長い距離又は大きな間隙を有する線形SLMを使用することも可能である。この場合、ポリゴンミラー415の個々の反射面は、時系列により間隙のない拡大された高解像度のバーチャル複合画像が生成されるように、互いに対して僅かに傾斜されうるだけである。実現可能な最大回折角がホログラム符号化中に減少されるため、このような一実施形態は好ましくなく、技術的な理由により変調器セル間の間隙が回避不可能な場合にのみ有利である。
【0288】
個々の画像ストライプは、制限された最大回折角のために、オブジェクト点のホログラム符号化のために重なり領域において十分な数の可干渉光で照射された変調器セルが使用可能である程度に、SLMの線形範囲の方向に重なり合わされることが好ましい。
【0289】
第1のポリゴンミラーが第2のポリゴンミラー上に結像される状態で2つの直交ポリゴンミラーが使用されるという点で、2次元での多重化も実現されうる。これにより光路が拡張するが、これは、固定型のホログラム表示装置においては問題ない。
【0290】
線形SLMが多数の変調器セル列を有する場合、隣接する再構成されたオブジェクト点は、スペックルを減少するように種々の列において符号化されうる。個々の列の個々の変調器セルは、画素マトリクスに対して僅かに互いに対してシフトされることが好ましい。このような構成は、光変調器範囲の方向で分解能を増加する目的にもかないうる。
【0291】
観察者の左右の眼球の各々に対して少なくとも1つの光変調器ユニット260を走査する1つのポリゴンミラーのみが必要とされるように、光路は、観察者の2つの眼球に対して設計されうる。
【0292】
個々の画像セグメントの相対位置又は絶対位置は、例えば感光センサによる従来技術において知られている方法で発見あるいは規定されうる。いかなる必要な補正も、ホログラム値を生成する際に考慮されうる。
【0293】
個々の色が、時分割多重化処理においてではなく、個々の線形SLMにより生成される場合、共通のポリゴンミラー415は、必要とされる全ての色に対して提供されうる。
図25に示されるものと同様に、例えば独立した光変調器ユニット260は色毎に含まれ、且つ独立したレンズ配置510は光変調器ユニット260毎に提供されうる。光路は、ポリゴンミラー415の回転の方向に僅かにシフトして位置しており、且つポリゴンミラー415の種々の重なり走査領域を使用しうる。光変調器ユニット260の線形SLMの共通の拡大されたバーチャル複合画像のサイズを規定する色再構成は、共通の重なり領域においてのみ実現される。
【0294】
個々の光路は、回転の方向にわたりシフトして配置されうる。この場合、反射面は、色成分毎に反射面上の変調器画像縞のシフトに依存して、色成分が共通のレンズ配置520の後方に重畳されるような、ポリゴンミラー415の回転の方向にわたる偏向の方向を有する反射型多重体積格子の形態で提供されることが好ましい。このオフセットなしで実行することも可能である。即ち、個々の色成分は互いに対して傾斜されるだけである。
【0295】
あるいは、各反射面は、色成分毎に回転の方向にわたり、個々の色成分がレンズ配置520の後方にほぼ重畳するように互いに対して傾斜される個々のセグメントを含みうる。その場合、反射面上に反射型体積ホログラムは必要ない。
【0296】
反射面は、更なるレンズ機能又は補正機能を果たすために湾曲面を含みうる。
【0297】
線形光変調器ユニット260は、全ての色成分が線形光変調器ユニット260において組み合わされるように更に設計されうることが好ましい。これは、例えば結像光学系として動作するレンズ配置510の前方に配設される色ビームスプリッタにより実現されうる。
【0298】
図29は、本明細書において説明する殆どの実施形態において適用可能であるような、制御可能な光偏向手段410、420において回折光学素子を使用する場合に0次の回折次数が抑制されうる方法を再度明示する。高次回折が使用される際に残りの強度が妨害となる場合、0次の回折次数は常に抑制されなければならない。光変調器ユニット(不図示)の光は、光偏向手段410により制御可能に回折される。0次の非回折光は、回折されることなく、例えば光軸の方向に、制御可能な液晶格子等でありうる光偏向手段410を通過する。0次の非回折光は、拡散光の存在を回避するように吸収開口480により吸収される。そして、制御可能な光偏向手段410により光軸から回折される光は、第2の光偏向手段420を通過する。ここで、一例を挙げると、光は、ある角度で第2の制御可能な光偏向手段420に達する。この場合も、0次の回折次数に留まる非回折光は、吸収フィルタ490により吸収される。例えば光偏向手段420は、制御可能な液晶格子又は多重体積格子でもありうる。複合中間画像270は、回折光によってのみ生成され、0次の回折次数の部分を全く含まない。図中の2つの光偏向手段410、420の並列な配設は例示的なものにすぎない。これらの構成要素は、例えばより大きな最大偏向角を実現するために、光路の要求に応じて互いに対して傾斜されうる。
【0299】
ビューイングウィンドウが入射瞳の移動の自由より小さい場合、観察者の眼球の入射瞳に対してビューイングウィンドウを追跡する必要がある。HMD又はホキュラーにおいて、例えば入射瞳の移動の範囲は、水平方向に15mm及び垂直方向に10mmでありうる。1次元符号化法が使用される場合、15mmの垂直範囲及び20mmの水平範囲を有するビューイングウィンドウは、追跡装置なしで実行するために使用されうる。
【0300】
しかしながら、ビューイングウィンドウを5mmに縮小することにより、HD TVの応用例の密度の4倍だけの画素密度に対応する、変調器セルの密度を角度毎に725個の変調器セルから角度毎に約240個の変調器セルに低下できる。変調器セルの密度に加え、変調器セルの総数は、変調器セルの密度がいずれかの次元で同様に低下される場合には1/9だけ更に減少される。SLM、即ち他の光学部品の表面積の実質的な減少に加え、これは、SLM自体における著しい節電効果にもつながる。
【0301】
従って、ビューイングウィンドウは、小さく維持され且つ観察者の眼球の入射瞳に対して追跡されることが好ましい。
【0302】
ビューイングウィンドウは、観察者の眼球又はその入射瞳の移動に追従するために種々の方法でシフトされうる。例えば、ビューイングウィンドウは側方にシフトされうる。固定型の表示装置において、これを実現するためにビューイングウィンドウフィルタリング平面を導入することは実用的であると考えられる。例えば、ビューイングウィンドウはこのフィルタリング平面の後方にシフトされうる。あるいは、ビューイングウィンドウ開口マスクは、例えば機械的に移動された開口マスク又は制御可能な液晶シャッターアレイの形態で能動的にシフトされうる。例えば、制御可能な液晶シャッターアレイの形態は、電気的又は光学的にアドレスされうる。動的に移動するビューイングウィンドウを光学的にアドレスすることにより、ビューイングウィンドウ開口マスクの平面における変調器セルのマトリクスを省略できる、即ち動的開口の平面において変調器セルのこのマトリクスの妨害回折の影響を回避できる。
【0303】
観察者の眼球の入射瞳の平面でのビューイングウィンドウの傾斜は、該時点で結像されている仮想SLMの領域のシフトに対応する。従って、ビューイングウィンドウの追跡のために導入されるビューイングウィンドウのとり得るチルト角が考慮されることが確認されるべきである。画像平面において個々の仮想SLMセグメントが十分に重なり合っているために、再構成が位置しているビューボリュームにおいて間隙がない場合、観察者の眼球の運動している入射瞳に対するビューイングウィンドウの追跡がユーザに知覚されることなく導入されるように3Dシーンの生成されたホログラムコードを調整する、即ち再構成された物体が空間において同一の位置に留まるように見える一方で、仮想SLMセグメントにおけるそれらの実際の位置が変更されるように符号化が実行されることで十分である。ビューイングウィンドウの僅かな、即ち1°未満の傾斜は、SLM上に生成されるサブホログラムの小さな、即ち725画素未満だけのシフトにより補償されうる。
【0304】
しかしながら、一般にこの方法は、観察者追跡のために導入される角度が大きくなりすぎる場合には十分でない。従って、この方法は、観察者追跡のために導入されるビューイングウィンドウのチルト角が補償されることに向いている。これにより、画像平面において個々の仮想SLMセグメント間で提供されなければならない重なりが減少し、ビューボリュームのサイズを最小化できる。
【0305】
図30は、制御可能な光偏向手段610として動作する、可変プリズム角を有するプリズムを使用して光変調器ユニット260の平均放射角を変更することにより、観察者の眼球1000の入射瞳の移動に対してビューイングウィンドウ1200が追跡される構成を概略的に示す。光変調器ユニット260のSLMの拡大複合バーチャル画像を生成する構成は、
図23に示された構成にほぼ対応する。ここで、この画像は、拡大レンズ810と併用して、観察者の眼球1000の近くに位置している光偏向装置450により更に生成される。観察者の眼球1000が転じると、光変調器ユニット260において変調される波面は、光変調器ユニット260に近接する平面に配設されうる制御可能な光偏向手段610により偏向されうる。制御可能な光偏向手段610は、後続の拡大レンズ810の物体側の焦点面に配設される。制御可能な光偏向手段610は、波面の偏向をビューイングウィンドウ1200の側方偏位に変換する。例えば、このシフトは5mmであってよく、ビューボリュームがこの距離だけ更にシフトされることを意味する。次に、このシフトは、3Dシーン内の静的オブジェクトの視位置が観察者の知覚において変化しないように、適応的に同期された3次元シーンの符号化により補償されうる。シーンが再符号化を必要とせずに同一の角度において可視のままであるように、光偏向ユニット450において同期的に補正角を導入することも可能である。
【0306】
例えば、制御可能な光偏向手段610は、制御可能な回折偏向格子の形態でも提供されうる。制御可能な光偏向手段610は、拡大レンズ810の後方に配設され且つそこで光路をオフセットしてもよい。収色性の構成要素として容易に提供されうる回転可能な共面板は、この目的に非常に適している。
【0307】
二相符号化のために使用されることが好ましいような光変調器ユニット260において選択的なビームコンバイナの後方に制御可能な光偏向手段610を配設することには、SLMを照射するビームの入射角が影響を受けないままであるために、光路長がこのようなビームコンバイナによる影響を受けないという利点がある。
【0308】
SLMを照射する平行光の入射角を変更することでSLMにより変調される波面を偏向することは、ビューイングウィンドウを追跡する目的にもかないうる。3Dシーンの再構成品質がある角度で照射されるとしても影響を受けないままであるように複素値SLM又は位相シフトSLMが設計される場合、光変調器ユニット260と拡大レンズ810との間の光偏向手段410は省略されうる。例えばこれは、多数の位相シフト画素が最適な位相値の反復計算と組み合わされる場合に可能である。例えば、実現された追跡ステップの数が少ない場合、ビューイングウィンドウの少数のシフトされた位置に対する位相値は事前に算出されうる。ビームコンバイナは、光線の斜めの通過により発生した位相シフトの変化を補償する制御可能な位相遅れ手段を選択的に備えてもよい。例えば、このような制御可能な位相遅れ手段は、制御可能な複屈折液晶層を含みうる。
【0309】
しかしながら、一般に、例えば、SLMにより放射される波動場がSLMを出た後にのみねじる、即ち光変調器ユニット260のビームコンバイナの後方に非常に近接してSLMを配設することがより好ましい。しかしながら、光変調器ユニット260は、制御可能な光偏向手段610にも結像されうる。
【0310】
図30を参照すると、例えば光路は、非常に短いためにHMD装置に適用可能であることが好ましい。固定装置では、光路は、ビューイングウィンドウフィルタリング開口平面を提供する、あるいはSLMを光偏向手段610上に結像することに向いている。
【0311】
観察者の眼球1000の入射瞳の移動が相対的に低速であるため、光偏向手段610は、観察者の眼球1000の入射瞳の移動よりほんの僅かに高速である偏向素子を含みうる。これにより、例えば画像安定化プリズムのように動作する屈折型光偏向手段610を使用することが可能である。
【0312】
例えば、観察者の眼球1000の入射瞳に対してビューイングウィンドウを追跡することに関連して、入射瞳の位置は、入射瞳をCMOSカメラ検出器上に結像する結像光学系及びビームスプリッタ等により検出されうる。その結果、観察者の眼球1000、即ちより正確にはその入射瞳の移動又は位置は、適切な画像処理アルゴリズムを使用して検出される。
【0313】
強い光源により放射された光が全ての画像セグメントにわたり分布されるため、光源は、再構成されたシーンの十分な輝度を実現するために、SLMの拡大バーチャル画像の逐次複合によるホログラム符号化された3Dシーンの再構成のために必要とされる。従って、当該全ての光学部品の高発光効率が特に重要視されるべきである。
図31は、マイクロレンズアレイ290により、SLM200の曲線因子が増加されうる方法及びそのエネルギー効率がそれにより改善される方法を示す一実施形態を概略的に示す。同時に、エッジ効果は、ブラックマトリクスにより既に抑制されていない限り最小化される。このようなエッジ効果は、例えば変調器セルの有効面積の周辺又はこれらの面積間の領域における漂遊磁界により発生する。漂遊磁界は、所望の位相及び/又は強度の値を偏らせる。
【0314】
反射型SLM200は、平坦なフロントライトユニット150により平面波面140で照射される。マイクロレンズアレイ290の個々のレンズは、光をSLM200の反射型変調器セルに集中させ、変調器セル間の遷移領域は、妨害する迷光を全く生成できないように可能な限り少ない光を受光する。個々の変調器セルにより変調される光は、マイクロレンズアレイ290のレンズにより拡張され、変調された波面240として平坦なフロントライトユニット150を通過する。
【0315】
マイクロレンズアレイ290の個々のレンズの各々は、SLM200の変調器セルに割り当てられる。マイクロレンズアレイ290のグリッドは、SLM200の変調器セルのグリッドに一致しうる。双方の構成要素は、個々のマイクロレンズの焦点が対応する変調器セルの中心にあるように互いに対して調整されうる。この構成は、照射されるSLM画素のエッジを最小化する、あるいは完全に回避する。2つの隣接する画素間の遷移領域は、位相に対して正確に規定されない、即ち2つの隣接位相値の遷移領域を表す。再構成を害するこれらの領域は照射されない。
【0316】
また、振幅アポディゼーション関数は、マイクロレンズの焦点における強度分布により実現されうる。また、余弦型又はガウスの振幅分布が個々のSLM画素において効率的に実現されるように、例えば更なる振幅マスクが最適化のために使用されうる。例えばカイザーベッセル窓を更に含むこのようなフィルタリング関数は、SLMの高次回折の強度を低下させる。
【0317】
マイクロレンズアレイ290は、変調器セルのグリッドにより発生する高次回折を可能な限り抑制するためにアポディゼーションマスクを更に装着されうる。しかしながら、マイクロレンズの焦点が変調器セルの平面に正確に存在するのではなく、それに対して僅かに調整不良にされるという点で、アポディゼーションも実現されうる。僅かな焦点ぼけは、対応するマイクロレンズの上述の効果を有効面積のサイズに適応させうる。更にレンズの形状は、その光学伝達関数に対するビューにより最適化されうる。レンズの形状は、平面であり且つ勾配率プロファイルを示しうる。
【0318】
透過型光変調器を使用する場合、マイクロレンズアレイは、変調器セルの有効面積上でバックライトにより放射される無変調光を集束するように、バックライトと変調器セルとの間の光路にも配設されうる。
【0319】
アポディゼーションマスクは、マイクロレンズを使用せずに適用されてもよい。しかしながら、マイクロレンズは有効透過率を向上しうる。
【0320】
図32は、構造化された遅延板320、遅延板330及び偏光子310を含むビームコンバイナと共に、マイクロレンズアレイ290の使用を示す。
【0321】
レーザ光が使用される場合、光線束のくびれ(waist)は、マイクロレンズアレイ290のマイクロレンズの焦点面に位置している。光の位相は、このウエストライン上の平面である。複素値変調は、ビームコンバイナにおいて2つの隣接変調器セルの光を複合することで実現される。構造化された遅延板320は、例えばマイクロレンズアレイ290の基板上に配置され、変調器列に交互の直交偏光を与える。
【0322】
この目的のために、フロントライトユニット150は、変調されていない波面140によりマイクロレンズアレイを照射する。光源(不図示)により放射される光は、例えば45°の角度で例えばジグザグのコースで、厚い設計でもありうるフロントライトユニット150を伝播する。例えば、84.26°等の非常に平坦な角度で照射される体積格子をフロントライトユニットとして使用することにより、0°に近い出口角を実現することも可能である。体積格子が十分に厚い場合、SLMの僅かに斜めの照明は、反射型SLM構成においてその後ろからのSLMに対する光路をSLMから隔離するように、低い許容角度と組み合わされうる。
【0323】
変調されていない波面140は、1回目に構造化された遅延板320を通過し、そして反射型変調器セルにより変調され、2回目に構造化された遅延板320を通過し、交互に直交偏光された列を有する変調された波面240として最終的にフロントライトユニット150を出る。これらの交互に直交偏光された列は、構造化されていない遅延板320において対にされる。直交偏光の投影を45°の角度の下で通過させる偏光フィルタ310は、遅延板320に後続する。偏光フィルタ310の後方には、ホログラム符号化された3次元シーンの情報を搬送する変調された複素値波面350がある。
【0324】
一般に、画像平面の複合は、能動素子を使用せずに実現されうる。例えば、バーチャル画像平面において垂直に傾斜される5個のLCoS型SLMを使用することが可能である。LCoS型SLMは、RGBコンテンツにより順次書き込まれうる。あるいは、各々が5個のLCoS型SLMを備える3つのユニットは、同時の色表現のためのRGB-LCoSユニットとして動作しうる。これは、色で大きな画像平面を表す、全部で15個のLCoSパネルがあることを意味する。
【0325】
この多重化法はサブカラーにも適用されうる。例えば、2つのSLMは、5nmだけしか異ならない種々の青色の波長で照射されうる。
【0326】
順次結像される当該SLMのビューボリュームが少なくとも部分的に一致する場合、これは、いわば3D物体シーンを間引きするようなものとしても考慮されうる。そして、1つのSLMが3Dシーンのオブジェクト点のうちのいくつかだけを表すのに対し、別の又は他のSLMは、隣接する画素間のスペックル及び干渉を減少するために、共通のビューボリュームにおいて他のオブジェクト点を表す。従って、間引きすることにより、隣接画素間の可干渉性のクロストークを減少する。
【0327】
この種の間引きは、各実施形態において必ずしも波長スタガリング(staggering)を必要としない。例えばSLMは、種々のレーザ又はより一般的には種々の光源において生じる同一の波長の光により照射されうる。例えば、角分割又は偏光分割の多重化により個々の光変調器画像を接合する、あるいは間引きの例のように部分的に一致する個々のビューボリュームの総ビューボリュームを複合するために体積格子を使用することが可能である。偏光分割多重化は、例えば偏光ビームスプリッタキューブ、偏光ビームスプリッタ板、ワイヤグリッド型偏光子及び規定の回折角を有する体積格子を含む従来の多数の光学部品を行使しうる。
【0328】
HMDのコンパクト設定の別の実施形態は、拡大系と対物レンズとの組合せを含みうる。空間光変調器は、空間光変調器の画像が観察者に仮想的に非常に近接して表されうるように僅かに拡大されるだけである。追跡装置は必要ない。殆ど拡大せずに且つ眼球まで僅かな距離で複素値SLMを仮想的に結像することは、2D符号化されたサブホログラムについての好適な一実施形態である。
【0329】
光偏向装置は、前述の教示を継続する更なる一実施形態において、例えばセグメントにおいて並列に空間光変調器により放射される変調された波面の多数のインスタンスを接合する規定の数の屈折層を含む光偏向素子を含みうる。そして複合画像は、直接又は別の結像段階の後、即ち画素がその透過率に対して制御可能であるシャッタアレイに達する。SLMにより放射され且つ現在結像されているセグメントに対する補正値を搬送する光は、適応的にアドレス可能なシャッタセグメントにより瞳孔に対して規定の順序で表される立体角領域に対する多重複合画像の特定のセグメントを介して運ばれる。
【0330】
光偏向装置は、ビームコンバイナを得るように対物レンズ機能を有するレンズと組み合わされうる。
【0331】
本発明に係るホログラムディスプレイは、HMD装置だけでなく、3D表現用の他の表示装置にも適用されうる。
【0332】
上述のホログラムディスプレイの実施形態は、観察者の両方の眼球を受け持つようにHMD装置において2回提供されうる。
【0333】
特に仮想SLMが非常に拡大される場合、例えば制御可能な液晶格子、液滴駆動(EW:electrowetting)原理に基づく制御可能なプリズムセル、制御可能な液晶プリズムセル、制御可能な大きなプリズムセル又はより広々とした設計では走査ミラーを含む追跡装置が設計されうる。
【0334】
色再構成を生成する更なる色フィルタは、例えばLCoS変調器でありうる空間光変調器においてリフレッシュレートを1/3に低下させるが、SLM上で必要とされる変調器セルの数を1/3増加させる。従って、原色、RGBの各々に対する独立したSLM、即ち赤色のSLM、緑色のSLM及び青色のSLMを使用することには意味がありうる。それから、これらの3つの独立したSLMは、例えば屈折型色コンバイナキューブ(Xキューブ)と組み合わされうる。
【0335】
HMD装置が軽量でコンパクトな設計のものでありうるように、ホログラム光学素子(HOE)は、LCoS及びRGB LCoSの変調器に対して使用される場合に2つのLCoSのオプションに対する組合せで使用されるべきである。また、反射型又は反射屈折型の成分は、コンパクトな設計を保証するためにHMD装置において使用されうる。
【0336】
3つ以上の色を順次表すために、2つのSLM、即ち2つのLCoS型SLM又は2つのMEMSリフトミラー型SLMを使用することも可能である。例えば時系列は、R_SLM1、G_SLM2、B_SLM1、R_SLM2、G_SLM1、B_SLM2及びR_SLM1等でありうる。これは、使用可能なリフレッシュレート及び構造の奥行きの妥協でありうる。そして、逐次照明は、各SLMが各色により照射されうるように編成される。
【0337】
光偏向装置は、SLMをセグメント化するために、1つの能動制御可能な層と、1つ又は2つの受動制御可能な層とを含みうる。
【0338】
例えば、SLMにより変調される波面は、液晶格子により、1、2、3、4及び5の順序で対物レンズの平面に1次元偏向されうる。この場合、例えば指標3は、偏向を全く発生させない、即ち位相格子は、指標3について液晶格子において刻み込まれない。それから、規定の距離で後続する別の体積格子は、観察者の眼球に対する対物レンズの平面において指標1~5に対応する入射角で波面を偏向しうる。SLMを走査する変調された波面の単なる偏向に加え、体積格子は、対物レンズの機能を同時に果たしうる。これにより、HMD装置において必要とされる構成要素の数を減少できる。この例において、光偏向装置は、1つの切り替え可能な光偏向素子しか含まない。制御可能又は切り替え可能な光偏向の機能は、可変格子周期を有する制御可能な液晶格子だけでなく、PDLC格子又は他の切り替え可能な構成要素によっても果たされうる。
【0339】
SLMは、対物レンズ機能を既に搬送している波面によっても照射されうる。これらの波動場は凹状又は凸状の湾曲を有しうる。これらの波動場は、妨害する迷光を回避するために、波面を生成する要素又はSLMの変調器セル構造により回折される光の0次回折が画像の生成に寄与しないようにSLMを照明しうる。
【0340】
切り替え可能又は制御可能な回折特性を有する拡散素子は、3D表現から2D表現に切り替え可能であるが提供されうる。この目的のために、SLM又はSLMのセグメント、並びに/あるいは一方ではSLMの多重複合画像のバーチャル画像及び他方では拡散素子は、(ほぼ)1つの平面上に存在するべきである。
【0341】
光偏向装置においてシャッターアレイを有するSLMの静的表現では、例えばSLMは、対物レンズの平面においてセグメントとして5回表されうる。シャッターアレイ上の所望の領域は、常に、該領域に対応するホログラム再構成についての情報がSLMに書き込まれる間に透過型に切り替えられる。シャッターアレイは、1つの大きな切り替え可能な領域又は少ない数の個々に切り替え可能なサブ領域のみを含むディスプレイパネルである。しかしながら、シャッターアレイは、特定の所望の領域が透過型に切り替えられる、あるいは切り替えられないように変調器セルがアドレスされる高分解能ディスプレイパネルでもありうる。
【0342】
多重化SLMは錐台全体又はその一部を充填でき、錐台は、並列に又は少なくとも部分的に重なり合っている3D又は2D/3Dシーンの表現を含みうる。
【0343】
例えば、多重結像の原理は、各SLMが例えば再構成された3次元シーンのオブジェクト点クラスタの50パーセントしか示さないという点で、少なくとも2つのSLMを有する構成において調整されうる。R1G1B1及びR2G2B2等の原色の各々に対する多数の狭帯域波長範囲又は2つの直交偏光、あるいはそれら2つを組み合わせて使用することは、ここでも可能である。
【0344】
それから、間引きされたオブジェクト点クラスタは、交互配置された方法で表される。例えば、体積ホログラム等の波長、偏光及び/又は角度に特有の光学部品は、使用されたSLMのビーム経路を組み合わせるために備えられうる。
【0345】
また、所定の1次元符号化、符号化方向が直角等のある角度で設定されるように少なくとも2つのSLMが配設されることも可能である。これにより、観察者により見られたオブジェクト点の知覚された拡張が減少しうる。重畳は、非干渉性、部分的に可干渉性又は可干渉性であってよく、即ち干渉を生成できる。
【0346】
この設定は、同時に、再構成においてシーンの点間の光学クロストークを減少し且つスペックルパターンを最小限にしうる。
【0347】
1次元符号化の場合、ビューイングウィンドウを生成するために必要とされる1D拡散は、能動型又は受動型でありうる。液晶格子、即ち例えば、可変格子周期及び種々の格子周期の重畳を生成しうる偏光格子等の能動拡散素子により、非常に可干渉性の光源が使用される場合でもビューイングウィンドウの方向でスペックルを十分に減少できるため、それらは好まれる。
【0348】
例えば、格子の平面において回転する、即ち回転された複屈折セグメントに対応する液晶を有する液晶偏光格子の電極は、拡散機能を実現するように、十分に高速に且つ統計的に変動する電圧で供給されうる。拡散機能の放射特性は、合成位相格子の既存の空間周波数を介して適応又は最適化されうる。
【0349】
能動拡散素子は、空間可干渉性を適応するために光源の平面においても使用されうる。
【0350】
例えば順次配設される切り替え可能又は制御可能な液晶拡散器を使用することも可能である。また、1つだけの液晶層において位相の高速時間ゆらぎを実現する液晶拡散器を使用することも可能である。
【0351】
光源の平面において回転、即ちより一般的には移動する拡散板を配設することは、固定型の表示装置において適している。
【0352】
しかしながら、圧電セラミック(PZT:piezo-ceramic)アクチュエータ等の電気的に制御されたアクチュエータ又はソレノイドドライブを有する非常に薄型の1D又は2Dの拡散片(diffuser foil)がHMD装置において使用されうるように、十分に高速な速度で且つ十分に低い振動でそれらを移動することも可能である。
【0353】
平坦なバックライト、フロントライト及びエッジ照明装置は、HMD装置に実現されうる。
【0354】
更に表示装置は、切り替え可能又は制御可能な全ての構成要素を制御及び必要に応じて同期させる制御手段を有するように提供される。
【0355】
また、個々の構成要素は、HMD装置の重量を減量するために独立したモジュールを形成するように組み合わされうる。例えば、電子ユニット、光源ユニット及び/又はバッテリーボックスが観察者に別個に装着されることが可能である。
【0356】
上述のディスプレイの実施形態は、本明細書においては明示的に示されない更なるホログラム及び/又は裸眼立体視の表示装置において適用可能である。
【0357】
最後に、上述の実施形態は請求された教示を示すためだけに理解され、且つ請求された教示はこれらの実施形態に限定されるものではないことを述べておく。特に、上述の実施形態は可能な限り互いに対して組み合されうる。