(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】撮像装置およびカメラ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240112BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240112BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240112BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240112BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240112BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240112BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L29/78 301S
H01L29/78 301C
H01L27/088 C
H01L27/088 B
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2021170467
(22)【出願日】2021-10-18
(62)【分割の表示】P 2017145682の分割
【原出願日】2017-07-27
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 雄基
(72)【発明者】
【氏名】楠川 将司
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0157144(US,A1)
【文献】特開2008-244490(JP,A)
【文献】特開2013-084693(JP,A)
【文献】特開2016-111202(JP,A)
【文献】特開2015-109343(JP,A)
【文献】特開2014-003099(JP,A)
【文献】特開2006-032672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 21/336
H01L 21/8234
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配された光電変換部
と第2のトランジスタとを含む画素領域
と、第1のトランジスタを含む周辺領域
と、が配された撮像装置であって、
前記光電変換部を覆う窒化シリコン層と、
前記画素領域および前記周辺領域に対して共通に配された層間絶縁膜と、
前記窒化シリコン層と前記層間絶縁膜との間に配された酸化シリコン層と、
前記
第1のトランジスタのゲート電極の側面を覆い、
第1の酸化シリコンを含むサイドウォールと、
前記光電変換部と前記窒化シリコン層との間、および、前記第2のトランジスタのゲート電極の側面と前記窒化シリコン層との間に配された第2の酸化シリコン層と、
を備え、
前記第2のトランジスタのゲート電極の側面は、前記窒化シリコン層によって覆われるとともに、第1の部分と、前記第1の部分と前記基板との間に配された第2の部分と、を含み、
前記窒化シリコン層と前記第2の部分との間の距離が、前記窒化シリコン層と前記基板との間の距離以下であり、かつ、前記サイドウォールは、窒化シリコンを含まないことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記窒化シリコン層を第1の窒化シリコン層として、
前記サイドウォールが、第2の窒化シリコン層によって覆われ、
前記第2の窒化シリコン層が、前記サイドウォールおよび前記基板に接していることを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記窒化シリコン層を第1の窒化シリコン層として、
前記サイドウォールが、第2の窒化シリコン層によって覆われ、
前記第2の窒化シリコン層は、前記サイドウォールおよび前記基板に接しており、かつ、前記光電変換部をさらに覆い、
前記第1の窒化シリコン層と前記第2の窒化シリコン層との間に、前記第2の酸化シリコン層が配され、
前記第1の窒化シリコン層と前記第2の窒化シリコン層との間の距離が、前記第2のトランジスタのゲート電極の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記サイドウォールが、前記
第1のトランジスタのゲート電極の側面と前記第2の窒化シリコン層との間に配され、前記ゲート電極の側面に接していることを特徴とする請求項
2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記窒化シリコン層の塩素濃度が、1.0原子%未満であることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記窒化シリコン層が、塩素を含むことを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記
第1のトランジスタは、ソース・ドレイン領域または前記ゲート電極の少なくとも一部にシリサイド層を含み、
前記基板に対する正射影において、前記窒化シリコン層と前記シリサイド層とが、重ならないことを特徴とする請求項1乃至
6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置によって得られた信号を処理する信号処理部と、
を備えることを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置において、画素領域での白点キズや暗電流などのノイズの原因の1つとして、半導体基板と絶縁膜との界面に形成される界面準位(ダングリングボンド)がある。特許文献1には、ダングリングボンドに起因するノイズを低減するために、画素領域の上に水素を多く含む窒化シリコン層を配し、フォトダイオードなどの光電変換部の表面に水素を供給することによって、ダングリングボンドを終端させることが示されている。
【0003】
特許文献1の製造方法において、画素領域に水素を供給するための窒化シリコン層を用いて、周辺領域に配されたトランジスタのゲート電極のサイドウォールを形成する。また、特許文献1では、画素領域に水素を供給するための窒化シリコン層を形成する際に、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(HCD)を用いることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、窒化シリコン層の材料によって、光電変換部で発生する暗電流などの画素領域の特性や周辺領域のトランジスタの特性が変化することを見出した。
【0006】
本発明は、撮像装置の特性を向上するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、基板に配された光電変換部と第2のトランジスタとを含む画素領域と、第1のトランジスタを含む周辺領域と、が配された撮像装置であって、前記光電変換部を覆う窒化シリコン層と、前記画素領域および前記周辺領域に対して共通に配された層間絶縁膜と、前記窒化シリコン層と前記層間絶縁膜との間に配された酸化シリコン層と、前記第1のトランジスタのゲート電極の側面を覆い、第1の酸化シリコンを含むサイドウォールと、前記光電変換部と前記窒化シリコン層との間、および、前記第2のトランジスタのゲート電極の側面と前記窒化シリコン層との間に配された第2の酸化シリコン層と、を備え、前記第2のトランジスタのゲート電極の側面は、前記窒化シリコン層によって覆われるとともに、第1の部分と、前記第1の部分と前記基板との間に配された第2の部分と、を含み、前記窒化シリコン層と前記第2の部分との間の距離が、前記窒化シリコン層と前記基板との間の距離以下であり、かつ、前記サイドウォールは、窒化シリコンを含まないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像装置の特性を向上するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の製造方法を示す断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の製造方法を示す断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る撮像装置の製造方法を示す断面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る撮像装置の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0011】
図1(a)~4(c)を参照して、本発明の実施形態による撮像装置の構造及び製造方法について説明する。
図1(a)~4(b)は、本発明の実施形態における撮像装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
図4(c)は、本発明の実施形態における撮像装置の構造を示す断面図である。説明のため、
図1(a)~4(c)では、画素領域101と周辺領域102とを隣接させて描いている。画素領域101には画素回路が配され、周辺領域102には駆動回路や信号処理回路、制御回路などの周辺回路が配される。画素回路はソースフォロワー回路で構成することできる。周辺回路はCMOS回路で構成することができる。また、撮像装置の形成される基板100をn型の導電型の半導体基板として説明するが、以下に説明する各構成要素の導電型を含め、導電型はそれぞれ逆の導電型であってもよい。
【0012】
撮像装置は、基板100および基板100の上に形成される。基板100は、上述のように、シリコンなどのn型の半導体基板であってもよい。また、撮像装置は、半導体基板に設けられたn型のウェルおよびウェルの上に形成されてもよい。また例えば、撮像装置は、ガラスやプラスチックなどの絶縁基板上に設けられたn型の半導体層および半導体層の上に形成されてもよい。
【0013】
まず、基板100には、
図1(a)に示すように、STIや選択酸化法(LOCOS)などによって形成された素子分離領域103、画素領域101及び周辺領域102に形成されたp型のウェル104、105が、それぞれ配される。また、画素領域101には、n型の半導体領域106が配される。半導体領域106は、ウェル104とpn接合を構成し、光電変換部として機能する。素子分離領域103、ウェル104、105、半導体領域106の形成後、画素領域101および周辺領域102に、それぞれ、ゲート絶縁膜107、および、ポリシリコン膜で構成されるゲート電極108を形成する。ゲート電極108は、画素領域101および周辺領域102を含む基板100の表面全体を覆うようにポリシリコン膜を成膜した後、ゲート電極108としてポリシリコン膜を残存させる部分にマスクパターンを形成する。その後、ドライエッチングなどを用いて、マスクパターンによって覆われていないポリシリコン膜を除去することによって、
図1(a)に示すように、画素領域101および周辺領域102にそれぞれゲート電極108が形成される。このとき、画素領域101と周辺領域102との両方の領域において、同時にゲート電極108が形成されてもよい。画素領域101と周辺領域102とに同時にゲート電極108を形成することによって、それぞれの領域で別々にゲート電極108を形成する場合よりも工程数を削減し、製造コストを抑制できる。
【0014】
ゲート電極108を形成した後、フォトレジストなどを用いたマスクパターンを使用し、n型の不純物を注入することによって、n型の半導体領域109を形成する。半導体領域109は、フローティングディフュージョンや、その他の画素領域に配されるトランジスタのソース・ドレイン領域の役割をなすことができる。素子分離領域103、ウェル104、105、半導体領域106、ゲート絶縁膜107、および、ゲート電極108のそれぞれは、既知の製造方法にて形成することができる。
【0015】
次に、
図1(b)に示すように、画素領域101の上および周辺領域102の上に酸化シリコン層110を形成する。次いで、
図1(c)に示すように、画素領域101および周辺領域102の上に、酸化シリコン層110を覆うように窒化シリコン層111を形成する。酸化シリコン層110は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を含む原料ガスを用いて減圧CVD法によって形成されてもよい。窒化シリコン層111は、例えばジクロロシラン(DCS)を含む原料ガスを用いて減圧CVD法によって形成されてもよい。
図1(b)、(c)に示す工程によって、画素領域101のうち少なくとも光電変換部の上および周辺領域102のうち少なくともゲート電極108の上に、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を含む絶縁体膜が形成される。
【0016】
本実施形態において、窒化シリコンとは、窒素(N)とシリコン(Si)の化合物であって、当該化合物の構成元素の組成比の上位の2つを占める軽元素以外の元素が窒素(N)とシリコン(Si)である化合物を意味する。窒化シリコンは水素(H)やヘリウム(He)などの軽元素を含むことができ、その量(原子%)は、窒素(N)およびシリコン(Si)よりも多くても少なくてもよい。窒化シリコンは、窒素(N)およびシリコン(Si)よりも低い濃度で、窒素(N)とシリコン(Si)と軽元素以外の元素を含むことができる。窒化シリコンに含まれうる典型的な元素としては、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、フッ素(F)、リン(P)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)である。窒化シリコンの構成元素のうち3番目に多い軽元素以外の元素が酸素である場合に、この窒化シリコンを酸化窒化シリコンあるいは酸素含有窒化シリコンと称することができる。同様に、酸化シリコンとは、酸素(O)とシリコン(Si)の化合物であって、当該化合物の構成元素の組成比の上位の2つを占める軽元素以外の元素が酸素(O)とシリコン(Si)である化合物を意味する。酸化シリコンに含まれうる典型的な元素としては、水素(H)、ヘリウム(He)、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、フッ素(F)、リン(P)、塩素(Cl)、アルゴン(Ar)である。酸化シリコンの構成元素のうち3番目に多い軽元素以外の元素が窒素である場合に、この酸化シリコンを窒化酸化シリコンあるいは窒素含有酸化シリコンと称することができる。なお、撮像装置の構成部材に含まれる元素は、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)などで分析が可能である。また、水素含有量は弾性反跳検出分析(ERDA:Elastic Recoil Detection Analysis:)法などによって、分析が可能である。
【0017】
窒化シリコン層111は、水素を多く含み、フォトダイオードなどの光電変換部の表面に水素を供給することによって、ダングリングボンドを終端させる。一方、本発明者らは、光電変換部を被覆する窒化シリコン層111の塩素濃度が低くなると、光電変換部で発生する暗電流が低減することを発見した。従って、窒化シリコン層111を形成する際、窒化シリコン層111の膜中に塩素をできるだけ含まないようなプロセス条件を用いて窒化シリコン層111の形成を行う。例えば、窒化シリコン層111を形成する際の温度や、プロセスガスに含まれる原料ガスのそれぞれの流量比、原料ガスと原料ガス以外のキャリアガスとの流量比など、種々の処理条件を調整してもよい。形成される窒化シリコン層111の塩素濃度は、例えば1.0原子%未満であってもよく、0.7原子%未満、さらに0.2原子%未満であってもよい。また、窒化シリコン層111に塩素が含まれていなくてもよい。このような方法によって形成された窒化シリコン層111は、膜中の塩素濃度が低い、または、塩素を含まない膜となりうる。これによって、画素領域101の光電変換部の暗電流を抑え、ノイズを低減することができる。窒化シリコン層111に含まれる塩素濃度は、例えばラザフォード後方散乱分析(RBS)法などによって分析することができる。
【0018】
また、基板100と窒化シリコン層111との間に窒化シリコン層111よりも屈折率の低い絶縁体膜である酸化シリコン層110を配することによって、光電変換部に適切な反射防止構造を得ることができる。反射防止構造を実現する窒化シリコン層111と酸化シリコン層110とを含む複層膜の絶縁体膜は、この構造に限られるものではない。例えば、光電変換部の半導体領域106の上において、基板100と酸化シリコン層110との間に、ゲート絶縁膜107が配されていてもよい。ゲート絶縁膜107は、例えば、酸化シリコンであってもよいし、酸窒化シリコンであってもよいし、各種の高誘電率絶縁体であってもよい。画素領域101、周辺領域102のトランジスタなどのスイッチ素子に求められる能力に応じて、適宜材料を選択すればよい。また、本実施形態において、窒化シリコン層111と基板100との間に酸化シリコン層110を配したが、これに限られることはなく、光電変換部に適切な反射防止構造を得ることができれば、他の絶縁体層を酸化シリコン層110の代わりに配してもよい。例えば、酸化シリコン層110の代わりに、窒化シリコン層111よりも屈折率の低い有機材料を用いた有機材料層などが用いられてもよい。
【0019】
酸化シリコン層110および窒化シリコン層111の形成後、
図1(d)に示すようにマスクパターン112を形成する。マスクパターン112の材料は、フォトレジストの他に、酸化シリコンなど無機材料膜を加工して形成したハードマスクを用いてもよい。マスクパターン112は、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を含む絶縁体膜のうち少なくとも画素領域101の光電変換部の上に位置する部分を覆う。本実施形態において、
図1(d)に示されるように、画素領域101の全体が、マスクパターン112によって覆われる。
【0020】
次に、
図1(e)に示すように、マスクパターン112に覆われていない部分の酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を含む絶縁体膜をウエットエッチングすることによって、当該部分の窒化シリコン層111および酸化シリコン層110を除去する。このエッチング工程において、マスクパターン112として酸化シリコンのハードマスクを用いる場合について説明する。はじめに、窒化シリコン層111の上に酸化シリコン層を形成し、その上にフォトレジストを用いたマスクパターンを形成し、マスクパターンが開口した領域の酸化シリコン層を除去する。次いで、フォトレジストを剥離することによって、酸化シリコンのマスクパターン112を形成することができる。酸化シリコンを用いたマスクパターン112を形成した後、リン酸を含む薬液を用いたウエットエッチングを行うことによって、酸化シリコンのマスクパターン112で被覆されていない領域の窒化シリコン層111を選択的に除去することができる。続けて、フッ酸処理(フッ酸を用いたウエットエッチング)を行うことで、窒化シリコン層111が開口した領域の酸化シリコン層110を除去する。これによって、周辺領域102の窒化シリコン層111および酸化シリコン層110を含む絶縁体膜が除去された、
図1(e)に示す構造を得ることができる。
【0021】
周辺領域102の窒化シリコン層111および酸化シリコン層110を含む絶縁体膜を除去するエッチング工程において、ドライエッチングで除去する方法も選択することは可能である。しかしながら、基板100へ与えるダメージを考慮した場合、ウエットエッチングの方がドライエッチングよりもダメージを低減できる。また、このエッチング工程において、マスクパターン112は、少なくとも光電変換部を被覆していることが必要である。ここで、窒化シリコン層111や酸化シリコン層110を除去する際のダメージや、上述のようにウエットエッチングを用いる場合など窒化シリコン層111や酸化シリコン層110の端部が後退する現象などを考える。この場合、マスクパターン112は、光電変換部のみを覆う微細なパターンレイアウトよりも、画素領域101の全体を覆うような大きなパターンの方が適していると考えられる。これらを総合的に加味すると、マスクパターン112は、光電変換部だけでなく、
図1(d)、(e)に示すように、画素領域101の全体を被覆していてもよい。
【0022】
次いで、
図1(f)に示すように、周辺領域102のトランジスタのLDD(Light Doped Drain)となるn型の半導体領域113を、イオン注入法によって不純物を注入し、形成する。これらは一般的なCMOSトランジスタなどの形成方法や、その他の既知の方法によって形成されうる。また、半導体領域113を形成することは必須ではない。また、窒化シリコン層111及び酸化シリコン層110を形成する前に、半導体領域113を形成することもできる。しかしながら、周辺領域102をより微細な構造にするために、上述の順番でプロセスを行うことによって、自己整合的に半導体領域113を形成できる。また、半導体領域113はn型の半導体領域であってもよいし、p型の半導体領域であってもよいし、それらが混在していてもよい。半導体領域113を形成した後、または、半導体領域113を形成している間において、半導体領域113を形成するためのイオン注入による注入欠陥を回復するために700℃~1100℃程度の熱処理を行ってもよい。
【0023】
図1(e)に示す窒化シリコン層111および酸化シリコン層110を含む絶縁体膜のエッチング工程、
図1(f)に示す半導体領域113の形成後、
図2(a)に示すように、画素領域101および周辺領域102の上に絶縁体膜114を形成する。絶縁体膜114は、例えば酸化シリコンを用いた酸化シリコン層の単層膜であってもよい。換言すると絶縁体膜114が、絶縁体膜114を構成する材料として窒化シリコンを含まなくてもよい。絶縁体膜114が酸化シリコン層の場合、絶縁体膜114は、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料ガスとして含むプロセスガスを用いた減圧CVD法などの方法で形成してもよい。
【0024】
また、絶縁体膜114は、窒化シリコン層を含む複層膜でもよいし、窒化シリコン層であってもよい。絶縁体膜114が、窒化シリコン層を含む複層膜である場合、絶縁体膜114として、例えば酸化シリコン層と窒化シリコン層とを積層する構造などが考えられる。また、絶縁体膜114が、窒化シリコン層のみによって構成されていてもよい。絶縁体膜114として用いる窒化シリコンは、上述の窒化シリコン層111とは異なる膜質の窒化シリコンであってもよい。
【0025】
ここで、絶縁体膜114に用いる窒化シリコンについて説明する。発明者らは、塩素を含む窒化シリコンから周辺領域102のトランジスタのサイドウォールを形成する場合、窒化シリコンに含まれる塩素濃度が高くなると、トランジスタの駆動能力が向上することを見出した。このため、後述する工程において周辺領域102のゲート電極108の側面を覆うサイドウォールとなる絶縁体膜114に窒化シリコンを用いる場合、上述のように低い塩素濃度を有する窒化シリコン層111とは異なる成膜条件で窒化シリコンを形成してもよい。例えば、絶縁体膜114に用いる窒化シリコンの形成方法は、ヘキサクロロジシラン(HCD)を原料ガスとして含むプロセスガスを用いて減圧CVD法によって形成されてもよい。換言すると、窒化シリコン層111と絶縁体膜114を構成する窒化シリコン層とにおいて、成膜する際に用いられる原料ガスのうち少なくとも一部が異なっていてもよい。ここで、絶縁体膜114に用いられる窒化シリコン層は、膜中の塩素濃度が高くなるように、成膜温度やプロセスガスの混合ガス比などを工夫する。このようにして得られた絶縁体膜114の窒化シリコン層の塩素濃度は、例えば1.0原子%以上であってもよく、さらに1.5原子%以上や、2.0原子%以上であってもよい。つまり、絶縁体膜114に窒化シリコンを用いる場合、この窒化シリコンは、窒化シリコン層111よりも高い塩素濃度であってもよい。換言すると、絶縁体膜114に用いられる窒化シリコンは、窒化シリコン層111よりも塩素濃度が等しい、または、塩素濃度が低い窒化シリコンを含まなくてもよい。また、例えば、窒化シリコン層111と同等の条件で絶縁体膜114に用いられる窒化シリコン層を形成する場合、窒化シリコン層111とは異なる膜厚の窒化シリコン層を絶縁体膜114として形成してもよい。この場合、窒化シリコン層111よりも厚い窒化シリコン層を絶縁体膜114として成膜することによって、周辺領域102のトランジスタに、画素領域101よりも多くの塩素を供給することが可能となりうる。
【0026】
また、絶縁体膜114を形成する際、半導体領域113に注入された不純物の拡散を抑制するために、できるだけ低温な条件や短時間な条件で絶縁体膜114を形成することで、半導体領域113での不純物の拡散を抑制できる。例えば、酸化シリコン層110や窒化シリコン層111の成膜と同等か、それ以下の熱履歴となるような条件で、絶縁体膜114が形成されうる。換言すると、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を形成する条件は、半導体領域113に影響を及ぼさないため、絶縁体膜114よりも不純物の拡散長が大きくなるような条件であってもよい。例えば、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を含む絶縁体膜を形成する際の温度が、絶縁体膜114を形成する際の温度よりも高くてもよい。これによって、ゲート電極108や半導体領域106、109の形成において画素領域101に生じたダメージに起因する欠陥を効果的に回復することができる。
【0027】
絶縁体膜114の形成後、マスクパターン115を形成する。マスクパターン115は、
図2(b)に示すように画素領域101の全域を覆ってもよい。また、マスクパターン115は、
図2(b)に示すように周辺領域102を覆わなくてもよいし、また、周辺領域102のうち、ゲート電極108の側面にサイドウォールの形成を行わない一部の領域を覆っていてもよい。換言すると、周辺領域102のトランジスタに配されたゲート電極108のうち、サイドウォールとして残存させる絶縁体膜114が、マスクパターン115によって被覆されなければよい。
【0028】
マスクパターン115の形成後、マスクパターン115に覆われない開口部を通して、絶縁体膜114をドライエッチングによってエッチバックする。この工程によって、
図2(c)に示すように、絶縁体膜114をエッチングすることによって、絶縁体膜114からゲート電極108の側面を覆うサイドウォール114aが形成される。この工程において、マスクパターン115によって覆われ、エッチバックされなかった絶縁体膜114が、少なくとも画素領域101の光電変換部を被覆している。これによって、後述するシリサイド層を形成する工程において、金属が、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111によって構成される絶縁体膜中を拡散し、光電変換部に到達することを抑制する効果を高めることができる。
【0029】
本実施形態において、マスクパターン115によって画素領域101を覆う構成を説明したが、マスクパターン115を形成する工程を省略してもよい。マスクパターン115を用いずに画素領域101および周辺領域102の全面をエッチバックすることで、画素領域101の窒化シリコン層111の上に、絶縁体膜114によるサイドウォール構造が形成される。この場合、マスクパターン115を形成するためのフォトリソグラフィ工程を削減することができ、一般的に知られる製造上の工期短縮や、コスト削減の効果を得ることができる。さらには、この工程以降に構造物の上に積層する層間絶縁膜などの段差被覆性を高めるなどの効果が得られる。
【0030】
サイドウォール114aの形成後、マスクパターン115の除去し、
図2(d)に示すように、周辺領域102に配されるトランジスタのLDD構造のソース・ドレイン領域を構成するn型の半導体領域116をイオン注入法によって不純物を注入し形成する。ソース・ドレイン領域がLDD構造を有さない場合、半導体領域113を形成する際の不純物の注入量を適宜調整し、半導体領域116を形成しなくてもよい。
【0031】
次いで、
図2(e)に示すように、画素領域101及び周辺領域102を覆うように基板100の上にコバルトやニッケルなどの金属膜117を形成する。金属膜117の形成後、
図3(a)に示すように、基板100およびゲート電極108のうち金属膜117と接する部分をシリサイド化するシリサイド形成工程を行う。具体的には、周辺領域102のゲート電極108や半導体領域113、116と、金属膜117と、を反応させ、シリサイド層118を形成する。
図3(a)に示されるように、ゲート電極108を含むトランジスタは、半導体領域113、116によって構成されるソース・ドレイン領域またはゲート電極108の少なくとも一部にシリサイド層118を含みうる。このシリサイド層118を形成するシリサイド形成工程において、窒化シリコン層111と酸化シリコン層110とを含む絶縁体膜のうち少なくとも端部が、絶縁体膜114に覆われている。
図3(a)に示されるように、窒化シリコン層111と酸化シリコン層110とを含む絶縁体膜の全体が、絶縁体膜114に覆われていてもよい。結果として、基板100に対する正射影において、窒化シリコン層111と酸化シリコン層110とを含む絶縁体膜とシリサイド層118とが重ならず、互いに離間した構造が得られる。これによって、シリサイド化するための金属が、酸化シリコン層110および窒化シリコン層111を含む絶縁体膜中を拡散することによって光電変換部に到達することを抑制できる。結果として、光電変換部に取り込まれた金属原子によって生成される暗電流(ホワイトスポット)の増加が抑制できる。
【0032】
シリサイド層118の形成後、
図3(b)に示すように、絶縁体膜114やサイドウォール114a上の未反応の金属膜117を除去する。これらの工程によって、半導体領域113、116によって構成されるソース・ドレイン領域およびゲート電極の表面にシリサイド層118が形成される。本実施形態において、シリサイド層118は、ゲート電極108および半導体領域113、116の表面に形成されるが、例えば、ゲート電極108の表面にだけ形成されてもよいし、半導体領域113、116の表面だけに形成されてもよい。また、周辺領域102に配されるすべてのトランジスタにシリサイド層118が形成されてもよいし、一部のトランジスタにのみシリサイド層118が形成されてもよい。周辺領域102に配されるそれぞれのトランジスタに求められる性能によって、適宜、周辺領域102のうちシリサイド層118を形成する領域を選択してもよい。
【0033】
シリサイド層118を形成後、
図3(c)に示すように、周辺領域102のエッチストッパとして機能する窒化シリコン層119を画素領域101及び周辺領域102を覆うように基板100上に形成する。次いで、
図3(d)に示すように、周辺領域102を覆うマスクパターン120を形成し、画素領域101の上に配された窒化シリコン層119をドライエッチングによって除去する。画素領域101の上に配された窒化シリコン層119をエッチングした際の断面図が、
図3(e)に示される。窒化シリコン層119は、周辺領域102のトランジスタのストレスライナ膜として機能するような成膜条件で形成されてもよい。画素領域101上に配された窒化シリコン層119を除去した後、マスクパターン120を除去することによって、
図4(a)に示すような構造を得ることができる。
【0034】
図3(e)に示す構成では、画素領域101に配された窒化シリコン層119が、すべて除去されるが、これに限られるわけではない。例えば、画素領域101の光電変換部の上に光導波路が形成される場合を考える。この場合、窒化シリコン層111の上に形成される層間絶縁膜に光導波路を配するための開口部を形成する際のエッチングストッパ膜として、窒化シリコン層119が用いられてもよい。具体的には、
図4(b)に示すように、該当する部分の窒化シリコン層119が、画素領域101の上に残存してもよい。また、窒化シリコン層119は、周辺領域102の全域を覆っていなくともよい。
【0035】
次いで、層間絶縁膜121を形成する。層間絶縁膜121には、例えば高密度プラズマCVD法によって成膜された酸化シリコンを用いてもよい。また、BPSGやBSG、PSGなどの不純物を含んだ酸化シリコンを用いてもよい。
【0036】
層間絶縁膜121の形成後、画素領域101において、窒化シリコン層111をエッチングストップ膜として用い、半導体領域109やゲート電極108と電気的な接続をするためのコンタクトホールを層間絶縁膜121に開口する。コンタクトホールの開口には、例えば異方性のドライエッチングが用いられてもよい。半導体領域109に形成されるコンタクトホールは、窒化シリコン層111がサイドウォールとして機能することによって自己整合的に半導体領域109の上に形成されうる。コンタクトホールの開口後、コンタクトホールに形成されるコンタクトプラグと半導体領域109との間の電気的な接続がより確実となるように、コンタクトホールの開口部を通してイオン注入法によって、半導体領域109に不純物を注入してもよい。
【0037】
次に、周辺領域102においても、窒化シリコン層119をエッチングストップ膜として用い、周辺領域102のトランジスタのゲート電極108やソース・ドレイン領域と電気的に接続するためのコンタクトホールを開口する。画素領域101のコンタクトホールの開口と同様に、ドライエッチングを用いてコンタクトホールを形成してもよい。
【0038】
画素領域101と周辺領域102とで、コンタクトホールを形成する順番は、本実施形態の順番に限られることはなく、周辺領域102の方が先であってもよい。また、画素領域101と周辺領域102とで、同時にコンタクトホールが形成されてもよい。
【0039】
続いてコンタクトホールの中に導電体を充填し、コンタクトプラグ122を形成する。その後、層間絶縁膜121およびコンタクトプラグ122の上に、金属などの導電体を用いた配線層123および層間絶縁膜124を既知の方法で順次形成し、
図3に示す構造を得ることができる。複数の配線層123および層間絶縁膜124を積層した多層配線構造を得ることができる。絶縁体膜114、窒化シリコン層111、酸化シリコン層110、窒化シリコン層119およびサイドウォール114aは、コンタクトプラグ122が設けられた層間絶縁膜121と基板100との間に配される。そのため、絶縁体膜114、窒化シリコン層111、酸化シリコン層110、窒化シリコン層119およびサイドウォール114aと基板100との距離は、基板100と配線層123との距離よりも小さい。本実施形態は、このように基板100に近接した絶縁体膜114、窒化シリコン層111、酸化シリコン層110、窒化シリコン層119およびサイドウォール114aの構成に特徴がある。これらの特徴により、撮像装置の特性を向上するために有利な技術を提供することができる。
【0040】
さらに、層間絶縁膜124の上に、窒化シリコン層を含むパッシベーション膜(不図示)、カラーフィルタ(不図示)、マイクロレンズ(不図示)などを形成し、撮像装置が完成する。なお、層間絶縁膜124、121に開口を形成して、当該開口の中に酸化シリコンや窒化シリコン、樹脂などの誘電体材料を埋め込んでもよい。
図4(b)に示すように画素領域101の上に残存した窒化シリコン層119を、層間絶縁膜121への開口形成時のエッチングストッパとして用いることができる。パッシベーション膜はプラズマCVD法によって形成できる。パッシベーション膜は層内レンズとして成形されてもよい。また、パッシベーション膜を形成した後で画素領域101および周辺領域102に配されたトランジスタへの水素供給を促進させるための水素アニール工程を追加してもよい。
【0041】
以上、説明した方法によってもたらされる構造の撮像装置は、画素領域101においては、水素を含み、また、塩素濃度が低い窒化シリコン層111が光電変換部を被覆することで暗電流を低減する。また、酸化シリコン層110と窒化シリコン層111とによって構成される絶縁体膜によって、光電変換部における反射防止の効果を得ることができる。周辺領域102においては、サイドウォール114aが窒化シリコン層111とは異なる膜で構成され、酸化シリコン層のみである場合と、塩素濃度が高い窒化シリコン層である場合とを取り得る。このように画素領域101と周辺領域102とをそれぞれ覆う絶縁体の構成を最適化することによって、光電変換部の暗電流の低減と、トランジスタの駆動力の向上とを両立させることができる。さらに、以上で説明した方法によると、窒化シリコン層111を周辺領域102にも一旦、配することによって、窒化シリコン層111は、周辺領域102においても、ダングリングボンドの終端に寄与することができる。
【0042】
以下、上記の実施形態に係る撮像装置の応用例として、該撮像装置が組み込まれたカメラについて例示的に説明する。カメラの概念には、撮影を主目的とする装置のみならず、撮影機能を補助的に備える装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末)も含まれる。カメラは、上記の実施形態として例示された本発明に係る撮像装置と、該撮像装置から出力される信号に基づく情報を処理する信号処理部とを含む。該信号処理部は、画像データであるデジタルデータを処理するプロセッサを含みうる。また、デジタルデータである画像データを生成するA/D変換器は、撮像装置が備えることができる他、撮像装置とは別に設けることができる。
【0043】
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0044】
100:基板、101:画素領域、102:周辺領域、108:ゲート電極、111:窒化シリコン層、114a:サイドウォール