(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/56 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01R13/56
(21)【出願番号】P 2021214458
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱井 強
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛寿
(72)【発明者】
【氏名】長岡 雅和
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓矢
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-5132(JP,A)
【文献】実開昭62-17075(JP,U)
【文献】特表2009-541919(JP,A)
【文献】実開平5-36772(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続されて端子付き電線を成す端子金具と、
複数の前記端子付き電線を収容させ、かつ、隣り合う2本の前記電線をその軸線方向に対する直交方向に並べて電線保持部に保持させると共にその配列状態のままそれぞれの前記電線を前記電線保持部から外に引き出させるハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、前記端子付き電線を挿入口から収容させるハウジング本体と、前記ハウジング本体に組み付けて前記挿入口を塞ぐカバー部材と、を備え、かつ、前記ハウジング本体及び前記カバー部材の組付け完了位置で前記ハウジング本体の第1保持部と前記カバー部材の第2保持部とを結合させることによって前記電線保持部を形成し、
前記電線保持部は、前記電線を前記ハウジングの内外に亘って前記軸線方向に挿通させ且つ保持する前記電線毎の通路であり、前記軸線方向に直交する前記第1保持部及び前記第2保持部の組付け方向で接合させた第1溝と第2溝とによって形成される電線挿通路を有し、
隣り合う2本の前記電線挿通路は、前記軸線方向と前記組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、前記組付け方向へと互いにオフセットさせ、
前記第1溝は、前記組付け方向に開口させた電線挿入口から前記電線を収容させる電線収容溝として形成され、
前記第2溝は、前記第1溝よりも容積が小さく、かつ、前記電線挿入口を覆うカバー溝として形成されることを特徴としたコネクタ。
【請求項2】
前記電線挿通路は、前記第1保持部と前記第2保持部の内の一方に設けた前記第1溝とその内の他方に設けた前記第2溝とで形成されたものと、前記第1保持部と前記第2保持部の内の前記他方に設けた前記第1溝とその内の前記一方に設けた前記第2溝とで形成されたものと、に大別されることを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電線保持部は、前記電線挿通路として、前記軸線方向と前記組付け方向とに直交する方向に間隔を空けて配置させた第1電線挿通路と第2電線挿通路とを有すると共に、前記第1電線挿通路と前記第2電線挿通路の間から前記組付け方向にオフセットさせた第3電線挿通路を有し、
前記第1保持部と前記第2保持部の内の一方は、前記第1電線挿通路の前記第1溝と前記第2電線挿通路の前記第1溝と前記第3電線挿通路の前記第2溝とを有し、
前記第1保持部と前記第2保持部の内の他方は、前記第1電線挿通路の前記第2溝と前記第2電線挿通路の前記第2溝と前記第3電線挿通路の前記第1溝とを有することを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1溝は、それぞれの溝側壁から各々突出させ、それぞれの前記溝側壁の間で前記電線を挟持させる突起部を有することを特徴とした請求項1,2又は3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記突起部は、前記電線の最大外径部を跨いで前記第1溝の溝底壁側と前記電線挿入口側との間に亘って延在させることを特徴とした請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記突起部は、それぞれの前記溝側壁毎に前記軸線方向に間隔を空けて複数設けることを特徴とした請求項4又は5に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタにおいては、ハウジングの中で複数組の端子付き電線のそれぞれの電線をその軸線方向に対する直交方向に並べ、この配列状態のままそれぞれの電線をハウジングの外に引き出させたものが知られている。このコネクタには、互いに組み付けられた2つの保持部でそれぞれの電線を配列状態のまま保持する電線保持部が設けられている。その2つの保持部には、それぞれに電線毎の半円柱状の溝が形成されている。電線保持部においては、一方の保持部の溝と他方の保持部の溝とが対になり、この一対の溝によって形成された円柱状の電線挿通路の中で電線が保持される。この種のコネクタは、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタにおいては、それぞれの電線の軸線方向と一対の溝の接合方向とに直交する方向(つまり、それぞれの電線の配列方向)で体格の小型化を求められることもある。例えば、従来のコネクタにおいては、双方の保持部にて、隣り合う2つの溝の間の板状の隔壁を薄くし、隣り合う2本の電線の間隔を狭めることによって、それぞれの電線の配列方向での体格を小型化できる。しかしながら、従来のコネクタは、強度等の観点で、その隔壁を薄くするにも限界があるので、これ以上の体格の小型化要求に対応し難いものとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、体格の小型化に好適なコネクタを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続されて端子付き電線を成す端子金具と、複数の前記端子付き電線を収容させ、かつ、隣り合う2本の前記電線をその軸線方向に対する直交方向に並べて電線保持部に保持させると共にその配列状態のままそれぞれの前記電線を前記電線保持部から外に引き出させるハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記端子付き電線を挿入口から収容させるハウジング本体と、前記ハウジング本体に組み付けて前記挿入口を塞ぐカバー部材と、を備え、かつ、前記ハウジング本体及び前記カバー部材の組付け完了位置で前記ハウジング本体の第1保持部と前記カバー部材の第2保持部とを結合させることによって前記電線保持部を形成し、前記電線保持部は、前記電線を前記ハウジングの内外に亘って前記軸線方向に挿通させ且つ保持する前記電線毎の通路であり、前記軸線方向に直交する前記第1保持部及び前記第2保持部の組付け方向で接合させた第1溝と第2溝とによって形成される電線挿通路を有し、隣り合う2本の前記電線挿通路は、前記軸線方向と前記組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、前記組付け方向へと互いにオフセットさせ、前記第1溝は、前記組付け方向に開口させた電線挿入口から前記電線を収容させる電線収容溝として形成され、前記第2溝は、前記第1溝よりも容積が小さく、かつ、前記電線挿入口を覆うカバー溝として形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタにて、電線保持部においては、隣り合う2本の電線挿通路について、通路内の電線の軸線方向と第1保持部及び第2保持部の組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、その組付け方向へと互いにオフセットさせている。このため、この電線保持部は、その軸線方向と組付け方向とに直交する方向の体格を小さくできる。更に、第1保持部と第2保持部においては、各々、隣り合う2本の電線挿通路にて、一方の電線挿通路における第1溝と他方の電線挿通路における第2溝の間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がない。または、第1保持部と第2保持部の内の一方においては、隣り合う2本の電線挿通路にて、一方の電線挿通路における第1溝と他方の電線挿通路における第1溝の間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がなく、かつ、第1保持部と第2保持部の内の他方においては、隣り合う2本の電線挿通路にて、一方の電線挿通路における第2溝と他方の電線挿通路における第2溝の間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がない。このため、電線保持部においては、隣り合う2本の電線挿通路の間隔を狭めることができるので、通路内の電線の軸線方向と第1保持部及び第2保持部の組付け方向とに直交する方向の体格を更に小さくできる。従って、ハウジングにおいては、その直交方向での電線保持部の小型化に伴い、この直交方向に詰めて端子金具を配置できる。よって、このコネクタにおいては、その直交方向でのハウジングの小型化が可能になる。故に、本発明に係るコネクタは、その直交方向での全体の体格の小型化に好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のコネクタにてシールドシェルを取り外して示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のコネクタ(シールドシェル除く)を電線引出口側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、ハウジングの分解斜視図であり、端子付き電線と共に示している。
【
図5】
図5は、ハウジングを別角度から見た分解斜視図であり、端子付き電線と共に示している。
【
図6】
図6は、第1保持部を内側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、第2保持部を内側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、電線保持部を電線引出口側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを
図1から
図8に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図3の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、電線Weの端末に組み付けられ、この電線Weと共にワイヤハーネスWHを構成する。このワイヤハーネスWHは、車両に搭載された複数の電気機器(図示略)の間に配置され、コネクタ1を介して電線Weを電気機器に電気接続させることによって、その電線Weを介して複数の電気機器を電気接続させる。ここでは、電気機器のシールド機能を確保するために、この電気機器と同じようにワイヤハーネスWHにもシールド機能を持たせている。よって、このワイヤハーネスWHにおいては、電線Weにおける複数のコネクタ1の間を筒状の編組等のシールド材SH(
図1)で外から覆い、かつ、コネクタ1を所謂シールドコネクタとして構成する。
【0012】
コネクタ1は、端子金具10と、電線We及び端子金具10を収容させる絶縁性のハウジング20と、を備える(
図1)。更に、コネクタ1は、ノイズ低減を図るための導電性のシールドシェル30を備える(
図1)。
【0013】
端子金具10は、金属等の導電性材料で成形される。例えば、この端子金具10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。
【0014】
この端子金具10は、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続されて端子付き電線Wtを成す(
図4及び
図5)。そして、この端子金具10は、電気機器における金属製の筐体の中の機器本体に電気接続させる(図示略)。
【0015】
この端子金具10は、その機器本体に電気接続させる端子接続部11を有する(
図1及び
図5)。この端子金具10は、その端子接続部11を電気機器の相手方端子金具(図示略)に対して物理的且つ電気的に接続させることによって、機器本体に対して間接的に電気接続させる。端子接続部11は、嵌合接続方向に沿って相手方端子金具の相手方端子接続部に嵌合接続させることによって、その相手方端子接続部に対して物理的且つ電気的に接続させる。この例示では、端子接続部11が円筒状の雌端子形状に形成され、かつ、相手方端子接続部が端子接続部11の内方に嵌入させる軸状の雄端子形状に形成されている。その端子接続部11の内方には、相手方端子接続部の挿入に伴い弾性変形させる接点部材(図示略)が組み付けられている。ここでは、相手方端子接続部を端子接続部11の中に嵌め込ませるが、端子接続部11から見た相手方端子接続部に対する接続方向を嵌合接続方向と定義する。
【0016】
また、この端子金具10は、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続部12を有する(
図4及び
図5)。この電線接続部12は、電線Weの端末の剥き出しの芯線に対して、例えば、圧着又は溶着させることによって、この電線Weに対して物理的且つ電気的に接続させる。電線Weは、この電線接続部12から引き出される。この端子金具10においては、端子接続部11の嵌合接続方向に直交する方向に電線Weを引き出させるべく、端子接続部11と電線接続部12が形成されている。
【0017】
このコネクタ1は、端子付き電線Wtを複数備えている。ここでは、3つの端子付き電線Wtを備えている(
図4及び
図5)。このコネクタ1においては、全ての端子接続部11の嵌合接続方向を同じ向きに一致させ、かつ、全ての電線Weの引出方向を同じ向きに一致させて全ての電線Weを並走させるべく、3つの端子金具10を配置する。
【0018】
ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング20には、複数の端子付き電線Wt(ここでは3つの端子付き電線Wt)を収容させる。
【0019】
このハウジング20は、筒状に形成された第1筒部20aと、この第1筒部20aにおける筒軸方向の一端から当該筒軸方向に筒軸方向を合わせて突出させた筒状の第2筒部20bと、を有する(
図1及び
図3から
図5)。また、このハウジング20は、内方に端子金具10を収容させる収容室(以下、「端子収容室」という。)20cを有する(
図4)。このハウジング20においては、第1筒部20aの内方の空間20a
1と第2筒部20bの内方の空間20b
1を連通させている。このハウジング20においては、そのそれぞれの内方の空間20a
1,20b
1が端子収容室20cとして利用される。ここでは、第1筒部20aの内方の空間20a
1に電線接続部12を収容させ、第2筒部20bの内方の空間20b
1に端子接続部11を収容させる。
【0020】
第1筒部20aの内方の空間20a
1には、電線接続部12と共に電線Weの端末も収容される。第1筒部20aには、その空間20a
1から外に電線Weを引き出させる切欠き20a
2が形成されている(
図4)。ここで示す第1筒部20aは、角筒状に形成されており、その一辺に切欠き20a
2が設けられている。
【0021】
第2筒部20bの内方の空間20b
1には、その筒軸方向に相手方端子接続部への嵌合接続方向を合わせて端子接続部11が収容される。ここで示す第2筒部20bの内方の空間20b
1には、第2筒部20bの筒軸方向(端子接続部11の嵌合接続方向)と電線接続部12からの電線Weの引出方向とに対する直交方向に2つの端子金具10のそれぞれの端子接続部11を並べて収容し、この2つの端子接続部11の中間位置に対して電線Weの引出方向とは逆向きに間隔を空けて残りの1つの端子金具10の端子接続部11を収容している(
図1)。つまり、この第2筒部20bの内方の空間20b
1には、3つの端子金具10のそれぞれの端子接続部11が三角形のそれぞれの頂点位置に並べて収容されている。
【0022】
ハウジング20は、電気機器の筐体の貫通孔(図示略)に嵌合接続させる嵌合部を有する。このハウジング20においては、その嵌合部として第2筒部20bを利用する(
図1)。この嵌合部(第2筒部20b)は、相手方端子接続部に対する端子接続部11の嵌合接続方向と同じ向きの嵌合接続方向に沿って筐体の貫通孔に挿入嵌合させる。また、この嵌合部(第2筒部20b)は、その嵌合接続方向とは逆向きの抜去方向に沿って筐体の貫通孔から抜き取られる。この嵌合部(第2筒部20b)は、その貫通孔に対する挿抜方向(挿入方向、挿抜方向)を筒軸方向とする筒状に形成される。ここで示す嵌合部(第2筒部20b)は、その挿抜方向に対する直交断面が長円環状となる長円筒状に形成されている。
【0023】
コネクタ1は、この嵌合部(第2筒部20b)の外周面と筐体における貫通孔の内周面との間の環状の隙間を埋めて、その間での防水と防塵を図る環状のシール部材41を備える(
図1から
図3)。このシール部材41は、合成ゴム等の弾性部材で成形される。そして、このシール部材41は、嵌合部(第2筒部20b)の外周面に組み付けられる。
【0024】
本実施形態のハウジング20は、このような第1筒部20aと第2筒部20bとが設けられたハウジング本体21を備える(
図1から
図5)。
【0025】
このハウジング本体21においては、第1筒部20aにおける筒軸方向の端部の開口(嵌合接続方向とは逆側の端部の開口であり、以下、「挿入口」という。)20a
3(
図2、
図4、
図5及び
図7)から端子付き電線Wtを端子収容室20cに収容させる。そして、このハウジング本体21においては、端子接続部11における嵌合接続方向側の端部を嵌合部(第2筒部20b)における筒軸方向の端部の開口(嵌合接続方向側の端部の開口)20b
2(
図1、
図4及び
図5)から突出させる。端子金具10は、その端子収容室20cで保持される。
【0026】
本実施形態のハウジング20は、端子収容室20cに収容され、かつ、この端子収容室20cで端子金具10を保持する端子保持部材22を備える(
図1から
図5)。この端子保持部材22は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この端子保持部材22には、端子接続部11を収容させ且つ保持させる筒状の端子収容部22aが端子金具10毎に設けられている(
図1及び
図3から
図5)。
【0027】
この端子保持部材22は、端子収容室20cの中でハウジング本体21に保持させる。例えば、ハウジング本体21と端子保持部材22は、互いに引っ掛け合う爪部等を利用した複数箇所のロック機構51によって相互間で保持させる(
図4及び
図5)。そのロック機構51は、爪状の第1係止部(図示略)と、この第1係止部に係止させることでハウジング本体21と端子保持部材22を組付け完了位置のまま保持させる第2係止部51bと、を備える。ここでは、第1係止部をハウジング本体21に設け、第2係止部51bを端子保持部材22に設けている。
【0028】
また、本実施形態のハウジング20は、第1筒部20aの切欠き20a
2から引き出された電線Weを引出方向のまま案内し且つ保持する保持部(以下、「電線保持部」という。)60を有する(
図1から
図8)。この電線保持部60は、隣り合う2本の電線Weをその軸線方向に対する直交方向に並べて保持させるものである。更に、この電線保持部60は、その配列状態のままそれぞれの電線Weをハウジング20の外に引き出させるものである。ハウジング本体21は、この電線保持部60の一端を担う第1保持部61を有する(
図1から
図6及び
図8)。この第1保持部61については、後で詳述する。
【0029】
また、本実施形態のハウジング20は、ハウジング本体21に組み付けて第1筒部20aの挿入口20a
3を塞ぐカバー部材23を備える(
図2から
図5)。このカバー部材23は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。
【0030】
このカバー部材23は、第1筒部20aの挿入口20a
3を塞ぐ板状の閉塞部23aを有する(
図2、
図4及び
図5)。この閉塞部23aは、第1筒部20aの矩形の挿入口20a
3を塞ぐべく、矩形の板状に形成されている。カバー部材23は、この閉塞部23aを嵌合部(第2筒部20b)の嵌合接続方向に向けて挿入口20a
3に近づけながら、ハウジング本体21に組み付ける。
【0031】
コネクタ1は、その第1筒部20aと閉塞部23aとの間の隙間を埋めて、その間での防水と防塵を図るシール部材42を備える(
図4及び
図5)。このシール部材42は、合成ゴム等の弾性部材で成形される。このシール部材42は、第1筒部20aにおける挿入口20a
3側の端部の内周面に密着させ、かつ、閉塞部23aの外周縁における端子収容室20c側の壁面に密着させて、第1筒部20aの挿入口20a
3における防水と防塵を図る第1シール部42aを有する。更に、このシール部材42は、電線Weを電線We毎に密着状態で挿通させたまま第1筒部20aの切欠き20a
2を塞ぎ、この切欠き20a
2における防水と防塵を図る第2シール部42bを有する。このシール部材42は、端子付き電線Wtと一緒に第1筒部20aに組み付けられる。
【0032】
カバー部材23は、組付け完了位置でハウジング本体21に保持させる。例えば、ハウジング本体21とカバー部材23は、互いに引っ掛け合う爪部等を利用した複数箇所のロック機構52によって相互間で保持させる(
図2、
図4及び5)。そのロック機構52は、爪状の第1係止部52aと、この第1係止部52aに係止させることでハウジング本体21とカバー部材23を組付け完了位置のまま保持させる第2係止部52bと、を備える。ここでは、ハウジング本体21に設けた第1係止部52aとカバー部材23に設けた第2係止部52bとによって構成されるロック機構52を第1筒部20a側に複数箇所設け、かつ、カバー部材23に設けた第1係止部52aとハウジング本体21に設けた第2係止部52bとによって構成されるロック機構52を第1保持部61側に複数箇所設けている。
【0033】
更に、このカバー部材23は、第1保持部61と相俟って先の電線保持部60の一端を担う第2保持部62を有する(
図2から
図5、
図7及び
図8)。
【0034】
電線保持部60は、ハウジング本体21及びカバー部材23の組付け完了位置で、そのハウジング本体21の第1保持部61とカバー部材23の第2保持部62とを結合させることによって形成される。その第1保持部61と第2保持部62は、ハウジング本体21及びカバー部材23の組付け方向と同じ向きで互いに組み付けられる。
【0035】
この電線保持部60は、電線Weをハウジング20の内外に亘って自らの軸線方向に挿通させ且つ保持する電線We毎の通路であり、その軸線方向に直交する第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向で接合させた第1溝63aと第2溝63bとによって形成される電線挿通路63を有する(
図3から
図8)。ここで示す電線保持部60は、並走させた3本の電線挿通路63を有している。
【0036】
隣り合う2本の電線挿通路63は、通路内の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、その組付け方向へと互いにオフセットさせる。ここで示す電線保持部60は、電線挿通路63として、その軸線方向と組付け方向とに直交する方向に間隔を空けて配置させた第1電線挿通路63Aと第2電線挿通路63Bとを有すると共に、この第1電線挿通路63Aと第2電線挿通路63Bの間からその組付け方向にオフセットさせた第3電線挿通路63Cを有している(
図3及び
図8)。
【0037】
第1溝63aは、第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向に開口させた電線挿入口63a
1から電線Weを収容させる電線収容溝として形成される(
図8)。そして、第2溝63bは、第1溝63aよりも容積が小さく、かつ、電線挿入口63a
1を覆うカバー溝として形成される(
図8)。よって、電線挿通路63においては、電線Weが収容された第1溝63aの電線挿入口63a
1を第2溝63bで覆っている。
【0038】
ここで示す第1溝63aは、電線Weの外径よりも大径の半円弧状の底面を有し、電線挿入口63a
1に間隔を空けて対向配置させた溝底壁63a
2と、この溝底壁63a
2の両端から互いに同じ向きに垂設させ、その垂設方向の両端の間を電線挿入口63a
1とする溝側壁63a
3,63a
3と、を有する(
図6から
図8)。よって、この第1溝63aにおいては、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3の間隔が電線Weの外径よりも広くなっている。また、ここで示す第2溝63bは、中心角が挟角の円弧状の溝壁63b
1によって形成されている(
図8)。
【0039】
この電線挿通路63においては、第1溝63aの中で電線Weを保持している。よって、第1溝63aは、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3から各々突出させ、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3の間で電線Weを挟持させる突起部64を有する(
図6から
図8)。この突起部64は、電線Weの最大外径部を跨いで第1溝63aの溝底壁63a
2側と電線挿入口63a
1側との間に亘って延在させる。そして、第1溝63aにおいては、収容した電線Weの軸線方向に見て、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3の突起部64の間隔が電線Weの外径よりも狭くなる位置まで、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3から突起部64を突出させる。ここで示す突起部64は、溝底壁63a
2のそれぞれの端部から電線Weの最大外径部を跨いで、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3における電線挿入口63a
1側の端部まで延在させたリブ形状に形成されている。
【0040】
突起部64は、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3毎に電線Weの軸線方向に間隔を空けて複数設ける。ここで示す第1溝63aには、その突起部64として、それぞれの溝側壁63a
3,63a
3の対向配置方向で向かい合わせに配置した一方の溝側壁63a
3の第1突起部64Aと他方の溝側壁63a
3の第2突起部64Bとを設けている(
図6及び
図7)。更に、ここで示す第1溝63aには、その突起部64として、電線Weの軸線方向に間隔を空けて一方の溝側壁63a
3から突出させた2つの第3突起部64Cと、この2つの第3突起部64Cの間に向けて他方の溝側壁63a
3から突出させた第4突起部64Dと、を設けている(
図6及び
図7)。
【0041】
電線保持部60において、電線挿通路63は、第1保持部61と第2保持部62の内の一方に設けた第1溝63aとその内の他方に設けた第2溝63bとで形成されたものと、第1保持部61と第2保持部62の内の他方に設けた第1溝63aとその内の一方に設けた第2溝63bとで形成されたものと、に大別される。例えば、第1保持部61と第2保持部62の内の一方は、第1電線挿通路63Aの第1溝63aと第2電線挿通路63Bの第1溝63aと第3電線挿通路63Cの第2溝63bとを有する。そして、第1保持部61と第2保持部62の内の他方は、第1電線挿通路63Aの第2溝63bと第2電線挿通路63Bの第2溝63bと第3電線挿通路63Cの第1溝63aとを有する。ここでは、第1電線挿通路63Aの第1溝63aと第2電線挿通路63Bの第1溝63aと第3電線挿通路63Cの第2溝63bを第1保持部61に設け、第1電線挿通路63Aの第2溝63bと第2電線挿通路63Bの第2溝63bと第3電線挿通路63Cの第1溝63aを第2保持部62に設けている(
図8)。
【0042】
このように、電線保持部60においては、隣り合う2本の電線挿通路63について、通路内の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、その組付け方向へと互いにオフセットさせている。このため、この電線保持部60は、その軸線方向と組付け方向とに直交する方向の体格を小さくできる。更に、第1保持部61と第2保持部62においては、各々、隣り合う2本の電線挿通路63にて、一方の電線挿通路63における第1溝63aと他方の電線挿通路63における第2溝63bの間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がない。このため、この電線保持部60においては、隣り合う2本の電線挿通路63の間隔を狭めることができるので、通路内の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向の体格を更に小さくできる。従って、ハウジング20においては、その直交方向での電線保持部60の小型化に伴い、この直交方向に詰めて端子金具10を配置できる。よって、このコネクタ1においては、その直交方向でのハウジング20の小型化が可能になる。
【0043】
ここで、第1保持部61には、隣り合う第1溝63aと第2溝63bとの間に、第1溝63aの溝側壁63a
3と第2溝63bの溝壁63b
1とを繋ぐ境界部65aが存在する(
図8)。また、第2保持部62には、隣り合う第1溝63aと第2溝63bとの間に、第1溝63aの溝側壁63a
3と第2溝63bの溝壁63b
1とを繋ぐ境界部65bが存在する(
図8)。よって、電線保持部60においては、第1保持部61及び第2保持部62の組付け完了位置で、隣り合う2本の電線挿通路63の間に第1保持部61の境界部65aと第2保持部62の境界部65bが位置することになる。従って、第1保持部61と第2保持部62は、公差ばらつきによる組み付けの不能状態を避けるべく、隣り合う2本の電線挿通路63の間の境界部65aと境界部65bの間に組付け完了位置で隙間が出来るように形成されている(
図8)。
【0044】
また、本実施形態のハウジング20は、嵌合部(第2筒部20b)の開口20b
2に嵌め込むフロントホルダ24(
図1から
図5)を備える。このフロントホルダ24は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このフロントホルダ24は、端子接続部11が収容された端子収容部22aを露出させたまま嵌合部(第2筒部20b)の開口20b
2に嵌め込む(
図1)。
【0045】
このフロントホルダ24は、組付け完了位置でハウジング本体21に保持させる。例えば、ハウジング本体21とフロントホルダ24は、互いに引っ掛け合う爪部等を利用した複数箇所のロック機構53によって相互間で保持させる(
図4及び
図5)。そのロック機構53は、爪状の第1係止部53aと、この第1係止部53aに係止させることでハウジング本体21とフロントホルダ24を組付け完了位置のまま保持させる第2係止部53bと、を備える。ここでは、第1係止部53aをハウジング本体21に設け、第2係止部53bをフロントホルダ24に設けている。
【0046】
シールドシェル30は、ハウジング20の中へのノイズの侵入を抑えると共に、シールド材SHに乗ったノイズを電気機器の筐体から車体に逃がすべく設ける。よって、このシールドシェル30は、金属等の導電性材料で成形される。そして、このシールドシェル30は、ハウジング20に外から被せて当該ハウジング20を収容する収容室(以下、「ハウジング収容室」という。)30aを有する(
図1及び
図2)。更に、このシールドシェル30は、シールド材SHを物理的且つ電気的に接続させると共に、固定対象物としての筐体に対して物理的且つ電気的に接続させる。
【0047】
このシールドシェル30は、互いに組み付けられる第1シールドシェル部材31と第2シールドシェル部材32とを備える(
図1及び
図2)。
【0048】
ハウジング収容室30aは、第1シールドシェル部材31に形成される(
図2)。この第1シールドシェル部材31は、ハウジング20を嵌合部(第2筒部20b)とは逆側から覆う主壁体31aと、その嵌合部(第2筒部20b)の嵌合接続方向に向けて主壁体31aの周縁から垂設させ、ハウジング20を側方から覆う周壁体31bと、を有する(
図1及び
図2)。この第1シールドシェル部材31は、その主壁体31aと周壁体31bとで囲まれた空間をハウジング収容室30aとして利用する。
【0049】
ここで示す周壁体31bにおいては、電線Weの引出方向側を切り欠いており、この切欠き31b
1(
図2)からハウジング20の電線保持部60を外に飛び出させている。
【0050】
第2シールドシェル部材32は、その第1シールドシェル部材31の切欠き31b
1から外に飛び出させた電線保持部60を外から囲う筒状の筒部32aと、カバー部材23の閉塞部23aと第1シールドシェル部材31の主壁体31aとの間に介在させ、その主壁体31aに対して物理的且つ電気的に接続させる板状の接続部32bと、を有する(
図2)。
【0051】
シールド材SHは、その端部を筒部32aの外周面に被せ、その更に外側から被せた環状の加締め部材33を加締め圧着させることよって、筒部32aの外周面に対して物理的且つ電気的に接続させる(
図2)。接続部32bは、弾性変形可能な弾性接点部32cを有しており(
図2)、第1シールドシェル部材31と第2シールドシェル部材32が組付け完了位置のときに、その弾性接点部32cを弾発力で主壁体31aの壁面に押し付ける。
【0052】
このシールドシェル30においては、嵌合部(第2筒部20b)の嵌合接続方向を螺子軸方向とする2箇所の雌螺子部34Aが第1シールドシェル部材31に形成されており、第2シールドシェル部材32の固定部32dの雌螺子部34A毎の貫通孔に挿通させた雄螺子部材34Bを雌螺子部34Aに螺合させることによって、第1シールドシェル部材31と第2シールドシェル部材32が螺子止め固定される(
図2)。ここで示すシールドシェル30においては、その固定部32dと雌螺子部34Aの間にハウジング本体21の固定部21aを挟み込み、それぞれの固定部32d,21aの貫通孔に挿通させた雄螺子部材34Bを雌螺子部34Aに螺合させることによって、ハウジング本体21を共締め固定する(
図1及び
図2)。
【0053】
このシールドシェル30は、第1シールドシェル部材31の周壁体31bを電気機器の筐体に螺子止め固定させることによって、その筐体に対して物理的且つ電気的に接続させる。例えば、筐体の取付面には、2箇所の雌螺子部(図示略)が形成されており、周壁体31bを嵌合部(第2筒部20b)の嵌合接続方向に直交する螺子軸で螺子止め固定させる。周壁体31bには、その雌螺子部毎に、この雌螺子部に螺合させる雄螺子部材(図示略)の挿通用の貫通孔35が形成されている(
図1及び
図2)。
【0054】
以上示したように、本実施形態のコネクタ1は、電線挿通路63の中の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向でハウジング20の体格を小さくできるので、その直交方向での全体の体格の小型化に好適なものとなる。
【0055】
尚、図示を省略するが、全ての電線挿通路63は、第1保持部61と第2保持部62の内の一方に設けた第1溝63aとその内の他方に設けた第2溝63bとで形成されたものであってもよい。つまり、電線保持部60においては、第1保持部61と第2保持部62の内の一方に全ての電線挿通路63の第1溝63aを設け、その内の他方に全ての電線挿通路63の第2溝63bを設けてもよい。例えば、先の具体例に照らし合わせるならば、第1保持部61には、第1電線挿通路63Aと第2電線挿通路63Bと第3電線挿通路63Cのそれぞれの第1溝63aを設けることになる。そして、第2保持部62には、第1電線挿通路63Aと第2電線挿通路63Bと第3電線挿通路63Cのそれぞれの第2溝63bを設けることになる。
【0056】
この場合でも、電線保持部60においては、先の例示と同じように、隣り合う2本の電線挿通路63について、通路内の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向へと互いにオフセットさせ、かつ、その組付け方向へと互いにオフセットさせている。このため、この電線保持部60は、その軸線方向と組付け方向とに直交する方向の体格を小さくできる。更に、この場合の第1保持部61と第2保持部62の内の一方においては、隣り合う2本の電線挿通路63にて、一方の電線挿通路63における第1溝63aと他方の電線挿通路63における第1溝63aの間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がない。そして、この場合の第1保持部61と第2保持部62の内の他方においては、隣り合う2本の電線挿通路63にて、一方の電線挿通路63における第2溝63bと他方の電線挿通路63における第2溝63bの間に従来のような板状の隔壁を設ける必要がない。このため、この電線保持部60においては、隣り合う2本の電線挿通路63の間隔を狭めることができるので、通路内の電線Weの軸線方向と第1保持部61及び第2保持部62の組付け方向とに直交する方向の体格を更に小さくできる。従って、この場合でも、ハウジング20においては、その直交方向での電線保持部60の小型化に伴い、この直交方向に詰めて端子金具10を配置できる。よって、このコネクタ1においては、その直交方向でのハウジング20の小型化が可能になる。故に、本実施形態のコネクタ1は、第1保持部61と第2保持部62の内の一方に全ての電線挿通路63の第1溝63aを設け、かつ、その内の他方に全ての電線挿通路63の第2溝63bを設けたとしても、先の例示と同じように、その直交方向での全体の体格の小型化に好適なものとなる。
【符号の説明】
【0057】
1 コネクタ
10 端子金具
20 ハウジング
20a3 挿入口
21 ハウジング本体
23 カバー部材
60 電線保持部
61 第1保持部
62 第2保持部
63 電線挿通路
63A 第1電線挿通路
63B 第2電線挿通路
63C 第3電線挿通路
63a 第1溝
63a1 電線挿入口
63a2 溝底壁
63a3 溝側壁
63b 第2溝
64 突起部
64A 第1突起部
64B 第2突起部
64C 第3突起部
64D 第4突起部
We 電線
Wt 端子付き電線