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  • 特許-有機エレクトロルミネッセンス素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/16 20230101AFI20240112BHJP
   H10K 50/82 20230101ALI20240112BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20240112BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20240112BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240112BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240112BHJP
【FI】
H10K50/16
H10K50/82
H10K50/844
H10K50/858
H10K85/60
H10K101:40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021504921
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008306
(87)【国際公開番号】W WO2020184219
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019044170
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊二
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンファン
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183625(WO,A1)
【文献】特開2015-092485(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109400485(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109400520(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107674060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/16
H10K 50/82
H10K 50/844
H10K 50/858
H10K 85/60
H10K 101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極及びキャッピング層をこの順に有し、前記キャッピング層が、陰極側から順に第一キャッピング層及び第二キャッピング層の2層を有する構造であり、波長450nm~650nmの全範囲において、前記第二キャッピング層の屈折率が、前記第一キャッピング層の屈折率より高く、前記第二キャッピング層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含み、前記電子輸送層の屈折率(n2)及び前記第一キャッピング層の屈折率(n1)が、波長450nm~550nmの全範囲において、下記一般式(I)を満たす有機エレクトロルミネッセンス素子。

0.005≦n1-n2≦0.15 (I)

【化1】

(式中、Ar、Ar、Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar、Ar、Ar、及びArの少なくとも1つは、下記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基であり、
nは0~4の整数を表す。)
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは結合部位としての連結基であり、
Xは、炭素原子又は窒素原子を表し、
Yは、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、
X及びYが窒素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
Xが窒素原子かつYが炭素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
X及びYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、及びXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合はない。)
【請求項2】
前記構造式(B)が、下記構造式(B-1)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】

(式中、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
破線は結合部位を表す。)
【請求項3】
前記構造式(B)が、下記構造式(B-2)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】

(式中、R、R及びRは、前記一般式(B-1)中のR、R及びRと同様の意味であり、
とRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Arは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
破線は結合部位を表す。)
【請求項4】
前記構造式(B)が下記構造式(B-3)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】

(式中、R、R、R及びRは前記一般式(B-1)中のR、R、R及びRと同様の意味であり、
破線は結合部位を表す。)
【請求項5】
前記構造式(B)が、下記構造式(B-4)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】

(式中、R、R及びRは、前記一般式(B-1)中のR、R及びRと同様の意味であり、
とRは、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、若しくは置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
破線は結合部位を表す。)
【請求項6】
前記構造式(B)が、下記構造式(B-5)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化7】

(式中、R、R、R及びRは前記一般式(B-1)中のR、R、R及びRと同様の意味であり、
破線は結合部位を表す。)
【請求項7】
前記構造式(B)が、下記構造式(B’)で示される1価基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
、R、R、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは結合部位としての連結基であり、
Xは炭素原子又は窒素原子を表し、
Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し、Yが酸素原子、硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、
X及びYが窒素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
X及びYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、及びXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合はない。)
【請求項8】
前記一般式(1)において、nが0である、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記一般式(1)において、nが1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記一般式(1)において、nが2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記一般式(1)において、Ar、Ar、Ar及びArのいずれか2つが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基である、請求項1~10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記一般式(1)において、Ar及びArが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基である、請求項1~10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記第一キャッピング層及び第二キャッピング層の厚さの合計が、30nm~120nmの範囲内である、請求項1~12のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記第二キャッピング層の屈折率が、波長450nm~750nmの全範囲において、1.85以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)に関するものであり、詳しくはキャッピング層を積層した有機EL素子に関するものであり、特に、効率が改善された有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自発光性素子であるため、液晶素子に比べて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは、各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより、有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度を得ている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子の底部から光を取り出すボトムエミッション構造の発光素子によって、高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
近年、高い仕事関数を持った金属を陽極に用い、上部から発光するトップエミッション構造の発光素子が用いられるようになってきた。画素回路によって光を取り出す面積が制限されてしまうボトムエミッション構造の発光素子とは違い、トップエミッション構造の発光素子では、光を取り出す面積を広くとれるという利点がある。トップエミッション構造の発光素子では、陰極にLiF/Al/Ag(例えば、非特許文献2参照)、Ca/Mg(例えば、非特許文献3参照)、LiF/MgAgなどの半透明電極が用いられる。
【0006】
このような発光素子では、発光層で発光した光が他の層に入射する場合に、ある角度以上で入射すると、発光層と他の層との界面で全反射されてしまう。このため、発光した光の一部しか利用できていなかった。近年、光の取り出し効率を向上させるために、屈折率の低い半透明電極の外側に、屈折率の高い「キャッピング層」を設けた発光素子が提案されている(例えば、非特許文献2及び3参照)。
【0007】
トップエミッション構造の発光素子におけるキャッピング層の効果は、Ir(ppy)を発光材料に用いた発光素子において、キャッピング層がない場合は電流効率が38cd/Aであったものが、膜厚60nmのZnSeをキャッピング層として使用した発光素子では64cd/Aとなり、約1.7倍の効率向上が認められた。また、半透明電極及びキャッピング層の透過率の極大点と効率の極大点とが必ずしも一致しないことが示されており、光の取り出し効率の最大点は干渉効果によって決められることが示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
キャッピング層の形成には、精細度の高いメタルマスクを用いることが提案されているが、高温条件下で使用すると熱による歪みによって位置合わせ精度が悪くなるという問題点があった。例えば、ZnSeは、融点が1100℃以上と高く(例えば、非特許文献3参照)、精細度の高いメタルマスクでは正確な位置に蒸着することができず、その他の無機物の多くも蒸着温度が高く、同様の理由で精細度の高いメタルマスクの使用は適さない。さらに、発光素子そのものにもダメージを与える可能性がある。また、スパッタ法による成膜では、発光素子にダメージを与えてしまうため、無機物を構成材料とするキャッピング層は使用に適していない。
【0009】
屈折率を調整するキャッピング層として、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alqと略称する)を使用することも提案されている(例えば、非特許文献2参照)。Alqは緑の発光材料又は電子輸送材料として一般的に使用される有機EL材料として知られており、青色発光素子に使用される450nm付近に弱い吸収を持つ。そのために、青色発光素子に使用した場合、色純度と、光の取り出し効率がともに低下するという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US5792557
【文献】US5639914
【文献】WO2015-001726
【非特許文献】
【0011】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Lett.,78,544(2001)
【文献】Appl.Phys.Lett.,82,466(2003)
【文献】Aust.J.Chem.,45,371(1992)
【文献】J.Org.Chem.,60,7508(1995)
【文献】Synth.Commun.,11,513(1981)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、有機EL素子の光の取り出し効率を改善させるため、屈折率が高く、安定性、耐久性及び耐光性に優れた第一キャッピング層と、第一キャッピング層よりも屈折率が高く、安定性、耐久性及び耐光性に優れた第二キャッピング層との2層から構成されるキャッピング層を備えた有機EL素子を提供することにある。
【0013】
本発明に適した第二キャッピング層の材料における物理的な特性としては、(1)蒸着が可能で熱分解しないこと、(2)薄膜状態が安定であること、(3)ガラス転移温度が高いこと、(4)屈折率が高いことを挙げることができる。また、本発明に適した素子の物理的な特性としては、(1)光の取り出し効率が高いこと、(2)色純度の低下がないこと、(3)経時変化することなく光を透過すること、(4)長寿命であることを挙げることができる。
【0014】
本発明者らは上記の目的を達成するために、アリールアミン系材料が薄膜の安定性や耐久性に優れていることに着目して、屈折率が高い特定のアリールアミン化合物を選別し、第二キャッピング層を構成する材料として用いた有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った結果、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
【0016】
1)少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極及びキャッピング層をこの順に有し、前記キャッピング層が、陰極側から順に第一キャッピング層及び第二キャッピング層の2層を有する構造であり、波長450nm~650nmの全範囲において、前記第二キャッピング層の屈折率が、前記第一キャッピング層の屈折率より高く、前記第二キャッピング層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0017】
【化1】
(式中、Ar、Ar、Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar、Ar、Ar、及びArの少なくとも1つは、下記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基であり、
nは0~4の整数を表す。)
【0018】
【化2】
(式中、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは結合部位としての連結基であり、
Xは、炭素原子又は窒素原子を表し、
Yは、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、
X及びYが窒素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
Xが窒素原子かつYが炭素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
X及びYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、及びXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合はない。)
【0019】
2)前記構造式(B)が下記構造式(B-1)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0020】
【化3】
(式中、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
破線は結合部位を表す。)
【0021】
3)前記構造式(B)が下記構造式(B-2)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0022】
【化4】
(式中、R、R及びRは、前記一般式(B-1)中のR、R及びRと同様の意味であり、
とRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Arは、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
破線は結合部位を表す。)
【0023】
4)前記構造式(B)が下記構造式(B-3)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0024】
【化5】
(式中、R、R、R及びRは前記一般式(B-1)中のR、R、R及びRと同様の意味であり、
破線は結合部位を表す。)
【0025】
5)前記構造式(B)が下記構造式(B-4)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0026】
【化6】
(式中、R、R及びRは、前記一般式(B-1)中のR、R及びRと同様の意味であり、
とRは、置換した同一のベンゼン環に対して、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、若しくは置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
破線は結合部位を表す。)
【0027】
6)前記構造式(B)が下記構造式(B-5)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0028】
【化7】
(式中、R、R、R及びRは前記一般式(B-1)中のR、R、R及びRと同様の意味であり、
破線は結合部位を表す。)
【0029】
7)前記構造式(B)が下記構造式(B’)で示される1価基である、上記1)記載の有機EL素子。
【0030】
【化8】
(式中、R、R、R、R、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基、又は置換若しくは無置換のアリールオキシ基を表し、
、R、R、R、R及びRは、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
Ar及びArは、相互に同一でも異なっていてもよく、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、又は置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
、R、R、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは結合部位としての連結基であり、
Xは炭素原子又は窒素原子を表し、
Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を表す。
但し、Yが酸素原子、硫黄原子である場合、YはArを有さないものとし、
X及びYが窒素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さないものとし、
X及びYが炭素原子である場合、Xが窒素原子かつYが酸素原子である場合、及びXが窒素原子かつYが硫黄原子である場合はない。)
【0031】
8)前記一般式(1)において、nが0である、上記1)~7)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0032】
9)前記一般式(1)において、nが1である、上記1)~7)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0033】
10)前記一般式(1)において、nが2である、上記1)~7)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0034】
11)前記一般式(1)において、Ar、Ar、Ar及びArのいずれか2つが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基である、上記1)~10)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0035】
12)前記一般式(1)において、Ar及びArが、前記構造式(B)で示される1価基であるか、又は該1価基を置換基として有する基である、上記1)~10)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0036】
13)前記電子輸送層の屈折率(n)及び前記第一キャッピング層の屈折率(n)が、波長450nm~550nmの全範囲において、下記一般式(I)を満たす上記1)~12)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

0.005≦n-n≦0.15 (I)
【0037】
14)前記第一キャッピング層及び第二キャッピング層の厚さの合計が、30nm~120nmの範囲内である、上記1)~13)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0038】
15)前記第二キャッピング層の屈折率が、波長450nm~750nmの全範囲において、1.85以上である、上記1)~14)のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【0039】
本発明の有機EL素子は、透明又は半透明電極の外側に設けた、該電極よりも屈折率の高い第一キャッピング層及び第二キャッピング層の積層構造であるキャッピング層を有するため、光の取り出し効率が大幅に向上している。また、第二キャッピング層に、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を使用することによって、400℃以下の温度で成膜することができるので、発光素子にダメージを与えることがなく、また、高精細マスクを用いて各色の光の取り出し効率を最適化することができるため、フルカラーディスプレイに好適に適用でき、色純度がよく鮮明で明るい画像を表示することができる。
【0040】
本発明の有機EL素子は、第二キャッピング層の材料として、屈折率が高く、薄膜の安定性、耐久性及び耐光性に優れた有機EL素子用の材料を用いているため、従来の有機EL素子に比べて、色純度を保持し、光の取り出し効率を大幅に向上することができる。さらに、高効率、長寿命の有機EL素子を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】実施例10から15、比較例1から3の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、スピロフルオレニル基及びカルボリニル基などを挙げることができる。
【0043】
一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基;アリル基などのアルケニル基;ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロフルオレニル基などの芳香族炭化水素基若しくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;スチリル基、ナフチルビニル基などのアリールビニル基;アセチル基、ベンゾイル基などのアシル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基若しくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;ジアリルアミノ基などのジアルケニルアミノ基;アルキル基、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、アラルキル基、芳香族複素環基又はアルケニル基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに前記例示した置換基が置換していてもよい。また、これらの置換基同士は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基及び2-ブテニル基などを挙げることができ、これらの基同士は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0045】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」又は「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0046】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基及び2-アダマンチルオキシ基などを挙げることができ、これらの基同士は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0047】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状若しくは分岐状のアルキルオキシ基」又は「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0048】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0049】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0050】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換若しくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などを挙げることができ、これらの基同士は、単結合、置換若しくは無置換のメチレン基、置換若しくは無置換のアミノ基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0051】
構造式(B)、(B-1)、(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)及び(B’)中のR、R、R、R、R、R、R及びRで表される、「置換アリールオキシ基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0052】
構造式(B)、(B-2)、(B-4)及び(B’)中のAr及びArで表される、「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換若しくは無置換の芳香族複素環基」又は「置換若しくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」又は「縮合多環芳香族基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0053】
構造式(B)、(B-2)、(B-4)及び(B’)中のAr及びArで表される、「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、上記一般式(1)中のAr、Ar、Ar及びArで表される「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」又は「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0054】
前記構造式(B)中のR、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは、結合部位としての連結基である。すなわち、前記構造式(B)中のR、R、R、R、Ar及びArの少なくとも1つは、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の窒素原子と前記構造式(B)で表される基とを結合している連結基であるか、又は、アリールアミン化合物の窒素原子に結合している基と前記構造式(B)で表される基とを結合している連結基である。結合部位としての連結基には、単結合も含まれる。
【0055】
一般式(1)において、nは0~4の整数を表し、屈折率、薄膜の安定性及び耐久性の観点から、nは0、1又は2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0056】
一般式(1)において、Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも1つは前記構造式(B)で示される1価基であるか、前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する基である。例えば、Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも1つが前記構造式(B)で示される1価基であり、かつAr、Ar、Ar及びArの少なくとも1つが前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する態様、Ar、Ar、Ar及びArのいずれか2つが前記構造式(B)で示される1価基である態様、Ar、Ar、Ar及びArのいずれか2つが前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する基である態様、を挙げることができる。
【0057】
本発明においては、屈折率、薄膜の安定性及び耐久性の観点から、Ar及びArが前記構造式(B)で示される1価基である態様、Ar及びArが前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する基である態様、及びArが前記構造式(B)で示される1価基であり、Arが前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する基である態様が好ましく、Ar及びArが、前記構造式(B-1)、(B-3)又は(B-5)で示される1価基を置換基として有する基である態様、及び前記構造式(B-2)又は(B-4)で示される1価基である態様がより好ましく、Ar及びArが、前記構造式(B-1)、(B-3)又は(B-5)で示される1価基を置換基として有する基である態様が特に好ましい。
【0058】
前記構造式(B-1)、(B-3)及び(B-5)で示される1価基が置換している基としては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基がより好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基が特に好ましく、フェニル基が最も好ましい。
【0059】
すなわち、本発明においては、Ar及びArが、前記構造式(B-1)、(B-3)又は(B-5)で示される1価基を置換基として有する、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基であることが好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基であることがより好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基であることが特に好ましく、フェニル基であることが最も好ましい。
【0060】
前記構造式(B)で示される1価基、及び前記構造式(B)で示される1価基をその置換基として有する基以外のAr、Ar、Ar及びArとしては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基がより好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基が特に好ましく、フェニル基が最も好ましい。
【0061】
前記構造式(B)、(B-2)、(B-4)及び(B’)中のAr及びArとしては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチエニル基がより好ましい。
【0062】
前記構造式(B)において、R、R、R、R、Ar、Arのいずれか1つのみが連結基であることが好ましい。
前記構造式(B)及び(B’)において、Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Yは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表す。ここで、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合、YはArを有さない(Arが存在しない)ものとし、X及びYが窒素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さない(Ar又はArのいずれかが存在しない)ものとし、Xが窒素原子かつYが炭素原子である場合、X又はYはAr又はArを有さない(Ar又はArのいずれかが存在しない)ものとする。
【0063】
前記構造式(B)及び(B’)において、Xが窒素原子である場合、Yは窒素原子であることが好ましく、この場合において、Ar又はArが連結基となって、Ar、Ar、Ar又はArで表される基の炭素原子と結合する(構造式(B)又は(B’)で示される1価基が、Ar、Ar、Ar又はArの置換基となる)ことが、化合物の安定性の観点から好ましい。
【0064】
前記構造式(B)及び(B’)において、Xが炭素原子である場合、Yは炭素原子、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子であることがより好ましい。構造式(B)及び(B’)において、Xが窒素原子、かつYが酸素原子又は硫黄原子である場合は本発明から除かれる。
【0065】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、特に好ましい化合物の具体例を以下に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0066】
【化9】
【0067】
【化10】
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
上述したアリールアミン化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献3参照)。
【0071】
これらの化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行うことができる。本発明においては、これらの精製を行った後、最終的に、昇華精製による精製を行うことが好ましい。
これらの化合物の物性値として、ガラス転移点(Tg)及び屈折率の測定を行うことが好ましい。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となるものであり、屈折率は光の取り出し効率の向上に関する指標となるものである。
【0072】
ガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって測定できる。
【0073】
屈折率は、シリコン基板の上に80nmの薄膜を作製して、分光測定装置(フィルメトリクス社製、F10-RT-UV)を用いて測定できる。
【0074】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子阻止層又はキャッピング層の構成材料として使用することができる。
【0075】
本発明の有機EL素子の構造としては、トップエミッション構造の発光素子であって、ガラス基板上に順次に、金属からなる陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、半透明陰極、第一キャッピング層及び第二キャッピング層からなるもの、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有するものが挙げられる。これらの多層構造においては、1つの有機層が何層かの役割を兼ねることが可能であり、例えば1つの有機層が、正孔輸送層と電子阻止層を兼ねた構成、電子輸送層と正孔阻止層を兼ねた構成とすることもできる。有機EL素子の各層の膜厚の合計は、200nm~750nm程度が好ましく、350nm~600nm程度がより好ましい。また、第一キャッピング層及び第二キャッピング層の膜厚の合計は、例えば、30nm~120nmが好ましく、40nm~80nmがより好ましい。この場合、良好な光の取り出し効率が得られる。なお、第一キャッピング層及び第二キャッピング層の膜厚は、発光素子に使用する発光材料の種類、キャッピング層以外の有機EL素子の厚さなどに応じて、適宜変更することができる。
【0076】
本発明の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0077】
本発明の有機EL素子の正孔注入層の材料として、分子中に、トリフェニルアミン構造を3個以上、単結合又はヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料や銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料などを用いることができる。
【0078】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層の材料として、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(以後、TPDと略称する)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)などを用いることができ、特に、分子中に、トリフェニルアミン構造を2個、単結合又はヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどを用いるのが好ましい。また、分子中にトリフェニルアミン構造を3個以上、単結合又はヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、例えば、種々のトリフェニルアミン3量体及び4量体などを用いるのが好ましい。
【0079】
また、正孔注入層及び正孔輸送層の材料として、これらの層に通常使用される材料に対してトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンなどをPドーピングしたもの、及びTPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0080】
本発明の有機EL素子の電子阻止層の材料として、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。
【0081】
本発明の有機EL素子の発光層の材料として、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよく、ホスト材料として、前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン及びそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0082】
また、発光材料として燐光発光材料を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては、正孔注入・輸送性のホスト材料として、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。また、電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができ、これらを用いることで、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0083】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは、濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0084】
また、発光材料として、PIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である(例えば、非特許文献7参照)。
【0085】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層の材料として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。
【0086】
本発明の有機EL素子の電子輸送層の材料として、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピリドインドール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。また、これらは前記一般式(I)を満たす電子輸送層を形成できる化合物であることが好ましい。
【0087】
本発明の有機EL素子の電子注入層の材料として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択により電子注入層を省略することができる。
【0088】
さらに、電子注入層及び電子輸送層の材料として、これらの層に通常使用される材料に対してセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0089】
本発明の有機EL素子の半透明陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムカルシウム合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金やITO、IZOなどが電極材料として用いられる。
【0090】
本発明の有機EL素子の第一キャッピング層の材料として、アリールアミン化合物などを用いるのが好ましい。
【0091】
本発明の有機EL素子の第二キャッピング層として、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物などを用いるのが好ましい。
【0092】
本発明の有機EL素子を構成する各層に用いられるこれらの材料は、蒸着法、スピンコート法及びインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
また、これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、又はこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。
【0093】
なお、上記では、トップエミッション構造の有機EL素子について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ボトムエミッション構造の有機EL素子や、上部及び底部の両方向から発光するデュアルエミッション構造の有機EL素子についても、同様に適用することができる。これらの場合、光が発光素子から外部に取り出される方向にある電極は、透明又は半透明である必要がある。
【0094】
第二キャッピング層の屈折率は、波長450nm~650nmの全範囲において隣接する第一キャッピング層の屈折率よりも高いことが好ましく、第一キャッピング層の屈折率は、波長450nm~550nmの全範囲において電子輸送層の屈折率よりも高いことが好ましい。すなわち、屈折率が高い第二キャッピング層によって、有機EL素子における光の取り出し効率は向上するが、その効果は、第二キャッピング層と第一キャッピング層、及び第一キャッピング層と電子輸送層での反射率が高い方が、光干渉の効果が大きいために有効である。そのため、第二キャッピング層の屈折率は、隣接する第一キャッピング層の屈折率よりも高い方が好ましく、波長450nm~750nmの全範囲の屈折率が1.70以上であればよいが、1.80以上がより好ましく、1.85以上であることが特に好ましく、1.90以上であることが最も好ましい。
【0095】
上述のように、第二キャッピング層の屈折率は、波長450nm~650nmの全範囲において第一キャッピング層の屈折率よりも高い方が好ましく、具体的には、第一キャッピング層の屈折率よりも0.05以上高いことが好ましく、0.1以上高いことがより好ましい。
【0096】
また、上述のように、第一キャッピング層の屈折率は、電子輸送層の屈折率よりも高いことが好ましく、具体的には、電子輸送層の屈折率(n)と、第一キャッピング層の屈折率(n)が、波長450nm~550nmの全範囲において、下記一般式(I)を満たすことが好ましい。

0.005≦n-n≦0.15 (I)
【0097】
キャッピング層が上記のような第一キャッピング層及び第二キャッピング層の2層を有する構造であり、第一キャッピング層の屈折率と電子輸送層の屈折率が上記の条件を満たしていることで、本発明の有機EL素子は、色純度が保持され、光の取り出し効率が大幅に向上したものとなる。特に、本発明の有機EL素子が、青色発光素子である場合に、色純度の保持及び光の取り出し効率の向上の効果が顕著となる。
【0098】
これらの層を構成する材料は、例えば、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含む第二キャッピング層の屈折率を基準にして、それより屈折率が低い材料の中から、上記一般式(I)を満たす第一キャッピング層及び電子輸送層を構成できるものを選択すればよい。
【0099】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0100】
(実施例1)
<N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-1))の合成>
窒素置換した反応容器に、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール4.2g、N,N’-ジフェニルベンジジン2.3g、tert-ブトキシナトリウム2.0g、トルエン50mlを加え、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。酢酸パラジウム62.0mg、トリ-tert-ブチルホスフィン0.2mlを加えて加熱し、91℃で5時間攪拌した。室温まで冷却した後、トルエン50mlを加え、抽出操作を行うことによって有機層を採取した。有機層を濃縮した後、カラムクロマトグラフ(担体:NHシリカゲル、溶離液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製し、さらに、n-ヘキサン100mlを用いた分散洗浄を行うことによって、N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-1))の黄色粉体3.3g(収率66%)を得た。
【0101】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(THF-d)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.26(4H)、7.89(4H)、7.60(4H)、7.39(4H)、7.33(4H)、7.24(4H)、7.21(8H)、7.10(2H)
【0102】
【化13】
【0103】
(実施例2)
<N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-2))の合成>
窒素置換した反応容器に、4,4’’-ジヨード-1,1’:4’,1’’-ターフェニル14.0g、{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミン18.3g、炭酸カリウム13.2g、銅粉0.3g、亜硫酸水素ナトリウム0.9g、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸0.7g、ドデシルベンゼン30mlを加えて加熱し、210℃で44時間撹拌した。室温まで放冷した後、トルエン50mlを加え、析出物をろ過によって採取した。析出物に1,2-ジクロロベンゼン230mlを加え、加熱することによって溶解し、熱時ろ過によって不溶物を除去した。ろ液を濃縮し、1,2-ジクロロベンゼンを用いた晶析精製を行った後、メタノールを用いた分散洗浄を行うことによって、N,N’-ビス{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-2))の黄色粉体22.2g(収率96%)を得た。
【0104】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.24(4H)、7.99-7.92(4H)、7.72-7.58(7H)、7.50-7.12(23H)
【0105】
【化14】
【0106】
(実施例3)
<N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-22))の合成>
実施例3において、{4-(2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミンに代えて、{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミンを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-22))の黄色粉体12.4g(収率47%)を得た。
【0107】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.13(4H)、7.80-7.55(11H)、7.50-7.16(23H)
【0108】
【化15】
【0109】
(実施例4)
<N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-23))の合成>
実施例1において、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾールに代えて、2-(4-ブロモフェニル)-ベンゾオキサゾールを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾオキサゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-23))の淡黄色粉体8.8g(収率54%)を得た。
【0110】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.12(4H)、7.80-7.72(2H)、7.60-7.53(5H)、7.41-7.14(23H)
【0111】
【化16】
【0112】
(実施例5)
<N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-25))の合成>
実施例1において、2-(4-ブロモフェニル)-2H-ベンゾ[1,2,3]トリアゾールに代えて、2-(4-ブロモフェニル)-ベンゾチアゾールを用い、同様の条件で反応を行うことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(化合物(1-25))の淡黄色粉体9.3g(収率62%)を得た。
【0113】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の34個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.10-7.88(8H)、7.60-7.13(26H)
【0114】
【化17】
【0115】
(実施例6)
<N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-27))の合成>
窒素置換した反応容器に、N-{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}フェニルアミン9.3g、4,4’’-ジヨード-1,1’:4’,1’’-ターフェニル7.1g、tert-ブトキシナトリウム4.6g、トルエン140mlを加え、30分間超音波を照射しながら窒素を通気した。酢酸パラジウム0.20g、tert-ブチルホスフィンの50%(v/v)トルエン溶液0.5gを加えて加熱し、攪拌しながら3時間加熱還流した。室温まで冷却し、ろ過によって析出物を採取した後、1,2-ジクロロベンゼン/メタノールの混合溶媒を用いた晶析精製を繰り返すことによって、N,N’-ビス{4-(ベンゾチアゾール-2-イル)フェニル}-N,N’-ジフェニル-4,4’’-ジアミノ-1,1’:4’,1’’-ターフェニル(化合物(1-27))の緑色粉体7.0g(収率58%)を得た。
【0116】
得られた緑色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
H-NMR(CDCl)で以下の38個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.05(2H)、7.98(4H)、7.90(2H)、7.70(4H)、7.61(4H)、7.50(2H)、7.42-7.31(6H)、7.30-7.11(14H)
【0117】
【化18】
【0118】
(実施例7)
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によってガラス転移点を求めた。結果を表1に示した。
【0119】
【表1】
【0120】
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【0121】
(実施例8)
前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いて、シリコン基板の上に膜厚80nmの蒸着膜を作製して、分光測定装置(フィルメトリクス社製、F10-RT-UV)を用いて、屈折率nを測定した。比較のために、Alq及び下記構造式の比較化合物(2-1)、比較化合物(2-2)についても測定した。測定結果を表2にまとめて示した。
【0122】
【化19】
【0123】
【表2】
【0124】
このように一般式(1)で表されるアリールアミン化合物はAlq及び比較化合物(2-1)、比較化合物(2-2)の屈折率より大きな値を有している。また、比較化合物(2-1)はAlqよりも屈折率が小さな値を有しており、上記一般式(I)を満たしている。
【0125】
(実施例9)
第一キャッピング層としてAlqを、第二キャッピング層として前記化合物(1-22)を使用した場合の光特性シミュレーションを、Semiconducting Emissive Thin Film Optics Simulation(Setfos 3.2)プログラムを用いて、下記実施例11の素子構造に関し行った。電子輸送層と第一キャッピング層との屈折率の相関性を調べるため、第一キャッピング層の屈折率は固定した後、電子輸送層の屈折率の値を化合物(2-1)、化合物(2-2)及び屈折率が異なる化合物AからEを用いて、青色発光ドーパントのピーク波長460nmでの換算効率を計算した。計算結果を表3にまとめて示した。
【0126】
【表3】
【0127】
このように、波長460nmでの屈折率が低い電子輸送層は、換算効率が大きな値を有しており、屈折率の低い電子輸送層を用いれば光の取り出し効率が向上することを示している。
【0128】
(実施例10)
有機EL素子は、図1に示すように、ガラス基板1上に金属陽極2として反射ITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8、第一キャッピング層9、第二キャッピング層10の順に蒸着して作製した。
【0129】
具体的には、膜厚50nmのITO、膜厚100nmの銀合金の反射膜、膜厚5nmのITOを順に成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、250℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を2分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように、正孔注入層3として、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(3-1)を、蒸着速度比が(Acceptor-1):化合物(3-1)=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。
この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として下記構造式の化合物(3-1)を膜厚140nmとなるように形成した。
この正孔輸送層4の上に、発光層5として下記構造式の化合物(EMD-1)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比が(EMD-1):(EMH-1)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。
この発光層5の上に、電子輸送層6として下記構造式の化合物(2-1)と下記構造式の化合物(ETM-1)を、蒸着速度比が(2-1):(ETM-1)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。
この電子輸送層6の上に、電子注入層7としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。
この電子注入層7の上に、陰極8としてマグネシウム銀合金を膜厚12nmとなるように形成した。
陰極8の上に第一キャッピング層9としてAlqを膜厚30nmとなるように形成し、最後に第二キャッピング層10として実施例3の化合物(1-1)を膜厚30nmとなるように形成した。
作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表4にまとめて示した。
【0130】
【化20】
【0131】
(実施例11)
実施例10において、第二キャッピング層10として実施例1の化合物(1-1)に代えて実施例2の化合物(1-2)を膜厚30nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0132】
(実施例12)
実施例10において、第二キャッピング層10として実施例1の化合物(1-1)に代えて実施例3の化合物(1-22)を膜厚30nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0133】
(実施例13)
実施例10において、第二キャッピング層10として実施例1の化合物(1-1)に代えて実施例4の化合物(1-23)を膜厚30nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0134】
(実施例14)
実施例10において、第二キャッピング層10として実施例1の化合物(1-1)に代えて実施例5の化合物(1-25)を膜厚30nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0135】
(実施例15)
実施例10において、第二キャッピング層10として実施例1の化合物(1-1)に代えて実施例6の化合物(1-27)を膜厚30nmとなるように形成した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0136】
(比較例1)
比較のために、実施例10において、第一キャッピング層9としてAlqを膜厚60nmとなるように形成し、第二キャッピング層10を含まない有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0137】
(比較例2)
比較のために、実施例12において、電子輸送層6として化合物(2-1)に代えてAlqを用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0138】
(比較例3)
比較のために、実施例12において、電子輸送層6として化合物(2-1)に代えて化合物(2-2)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0139】
実施例10から実施例15及び比較例1から比較例3で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表3にまとめて示した。素子寿命は、10mA/cmの定電流駆動を行った時、初期輝度を100%とした時の95%減衰に減衰するまでの時間として測定した。
【0140】
【表4】
【0141】
表4に示すように、電流密度10mA/cm時における駆動電圧は、第二キャッピング層を用いない比較例1の素子と第二キャッピング層として一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を用いた実施例10から15の素子ではほぼ同等であるのに対し、輝度、発光効率、電力効率、換算効率及び寿命においては、実施例10から15の素子はいずれも向上した。このことは、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含む第二キャッピング層を積層した積層構造により、光の取り出し効率を大幅に改善できることを示している。また、電子輸送層としてAlq及び化合物(2-2)を用いた比較例2及び比較例3の素子と実施例10から15の素子では輝度、発光効率、電力効率、換算効率及び寿命において、実施例10から15の素子はいずれも向上した。このことは、積層構造による素子では、電子輸送層の屈折率が第一キャッピング層の屈折率より低いことで、光の取り出し効率を大幅に改善できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、一般式(I)を満たす電子輸送層と第一キャッピング層、及び一般式(1)で表されるアリールアミン化合物を含む第二キャッピング層を積層した有機EL素子は、高い効率を得ることができる。また、青、緑及び赤それぞれの波長領域において吸収を持たない該化合物を用いることにより、色純度がよく鮮明で明るい画像を表示したい場合に、特に好適である。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
図1