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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/367 20210101AFI20240112BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/204 401H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021508775
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051124
(87)【国際公開番号】W WO2020194966
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019054578
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】江頭 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雄佑
(72)【発明者】
【氏名】武田 直
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161655(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0069003(KR,A)
【文献】特開2015-053131(JP,A)
【文献】特開2018-073559(JP,A)
【文献】特開2016-054127(JP,A)
【文献】特開2015-135763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0288186(US,A1)
【文献】国際公開第2012/147150(WO,A1)
【文献】特開2015-211025(JP,A)
【文献】特開2018-073560(JP,A)
【文献】特開2011-065906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池を有する電池積層体であって、各電池がガスを噴出する弁部を有する電池積層体と、
前記電池積層体における複数の前記弁部が配置される面を覆うダクトプレートであって、前記電池の積層方向に延びて各電池の前記弁部に接続され、噴出した前記ガスを一時的に貯留する排気ダクトを有するダクトプレートと、
前記ダクトプレートに載置されるカバープレートと、
前記ダクトプレートおよび前記カバープレートで画成され、前記排気ダクトから前記積層方向と交わる第1方向に延び、前記排気ダクト内の前記ガスを電池モジュールの外部に漏出させる流路部と、を備え、
前記カバープレートは、前記排気ダクトの前記弁部と対向する第1壁部との間に所定の隙間が設けられるように配置され、
前記排気ダクトは、前記排気ダクト内と前記隙間とを連通する開口を前記第1壁部に有することを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記第1壁部は、金属板で構成される請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記ダクトプレートは、前記弁部を挟んで並び前記第1壁部とともに前記排気ダクトを画成する一対の第2壁部を有し、
前記一対の第2壁部は、前記排気ダクトと前記流路部とを連通する開口を有する請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記カバープレートは、前記ダクトプレートおよび前記カバープレートの並ぶ方向から見て前記開口と重なる領域に、前記ガスから前記カバープレートへの伝熱を抑制する熱伝導抑制層を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記カバープレートは、前記第1方向における両端部が前記ダクトプレートに固定され、
前記排気ダクトは、前記カバープレートの前記第1方向における中央部と重なる位置に配置される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記電池モジュールは、互いに係合する係合爪および係合孔で構成されて前記ダクトプレートおよび前記カバープレートを固定するスナップフィット部を有し、
前記係合爪は、前記ダクトプレートおよび前記カバープレートの並ぶ方向に延びる支柱部と、前記支柱部から前記排気ダクトとは反対側に向かって突き出る突出部と、を有し、
前記係合爪が前記係合孔に挿入され、前記突出部が前記係合孔の周縁部に引っかかることで前記ダクトプレートおよび前記カバープレートが固定される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。一般に、電池モジュールを構成する各電池には、内圧の上昇に応じて開弁する弁部が設けられている。電池内部での化学反応によってガスが発生し、これにより電池内圧が高まると、高温高圧のガスが弁部から噴出する。このような電池を備える電池モジュールに関して、特許文献1には、複数の電池が積層された電池積層体と、電池積層体の一面に各電池の弁部と連結するように固定された排気ダクトと、を備える電池モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2013/161655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電池モジュールのさらなる高容量化が求められており、この要求を満たすために電池の高容量化が進んでいる。電池が高容量化すると電池から噴出するガスの量が増えるため、排気ダクトが受けるガスの衝撃の強さが増大する。今後、電池の高容量化がさらに進み、噴出するガスの量がより増大すると、ガスの衝撃によって排気ダクトが破損するおそれが高まり、電池モジュールの安全性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池モジュールの安全性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電池モジュールである。この電池モジュールは、積層された複数の電池を有する電池積層体であって、各電池がガスを噴出する弁部を有する電池積層体と、電池積層体における複数の弁部が配置される面を覆うダクトプレートであって、電池の積層方向に延びて各電池の弁部に接続され、噴出したガスを一時的に貯留する排気ダクトを有するダクトプレートと、ダクトプレートに載置されるカバープレートと、ダクトプレートおよびカバープレートで画成され、排気ダクトから積層方向と交わる第1方向に延び、排気ダクト内のガスを電池モジュールの外部に漏出させる流路部と、を備える。カバープレートは、排気ダクトの弁部と対向する第1壁部との間に所定の隙間が設けられるように配置され、排気ダクトは、排気ダクト内と隙間とを連通する開口を第1壁部に有する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池モジュールの安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る電池モジュールの斜視図である。
図2】電池モジュールの分解斜視図である。
図3】電池モジュールのダクトプレートおよびカバープレートを含む領域の断面側面図である。
図4】電池モジュールのダクトプレートおよびカバープレートを含む領域の断面斜視図である。
図5】変形例1に係る電池モジュールのダクトプレートおよびカバープレートを含む領域の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る電池モジュールの斜視図である。図2は、電池モジュールの分解斜視図である。電池モジュール1は、電池積層体2と、一対のエンドプレート4と、冷却プレート6と、熱伝導層8と、サイドセパレータ10と、拘束部材12と、ダクトプレート28と、カバープレート60と、を備える。
【0012】
電池積層体2は、複数の電池14と、セル間セパレータ16と、を有する。各電池14は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。また、各電池14はいわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶18を有する。外装缶18の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶18に電極体や電解液等が収容される。外装缶18の開口には、開口を塞ぐ封口板20が設けられる。
【0013】
封口板20には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子22が配置され、他端寄りに負極の出力端子22が配置される。一対の出力端子22はそれぞれ、電極体を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子22を正極端子22aと称し、負極の出力端子22を負極端子22bと称する。また、出力端子22の極性を区別する必要がない場合、正極端子22aと負極端子22bとをまとめて出力端子22と称する。
【0014】
外装缶18、封口板20および出力端子22は導電体であり、例えば金属製である。封口板20と外装缶18の開口とは、例えばレーザー溶接により接合される。各出力端子22は、封口板20に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。各出力端子22と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材(図示せず)が介在する。
【0015】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板20を電池14の上面、封口板20と対向する外装缶18の底面を電池14の下面とする。また、電池14は、上面および下面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池14が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および下面の長辺と接続される長側面である。上面、下面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池14の側面とする。この側面は、上面および下面の短辺と接続される一対の短側面である。
【0016】
また、便宜上、電池積層体2において電池14の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池14の下面側の面を電池積層体2の下面とし、電池14の側面側の面を電池積層体2の側面とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0017】
封口板20には、一対の出力端子22の間に弁部24が設けられる。弁部24は、安全弁とも呼ばれ、各電池14が電池内部のガスを噴出するための機構である。弁部24は、外装缶18の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。弁部24は、例えば封口板20の一部に設けられる、他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、外装缶18の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで開弁される。各電池14の弁部24は、後述する排気ダクト38に接続され、電池内部のガスは弁部24から排気ダクト38に排出される。
【0018】
また、各電池14は、絶縁フィルム26を有する。絶縁フィルム26は、例えば筒状のシュリンクチューブであり、外装缶18を内部に通した後に加熱される。これにより、絶縁フィルム26は収縮し、外装缶18の2つの主表面、2つの側面および底面を被覆する。絶縁フィルム26により、隣り合う電池14間、あるいは電池14とエンドプレート4や拘束部材12との間の短絡を抑制することができる。
【0019】
複数の電池14は、隣り合う電池14の主表面同士が対向するようにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池14の積層には、複数の電池14を水平に並べることも含まれる。本実施の形態では、電池14は水平に積層されている。したがって、電池14の積層方向Xは、水平に延びる方向である。以下では適宜、水平で且つ積層方向Xに垂直な方向を水平方向Yとし、積層方向Xおよび水平方向Yに対し垂直な方向を鉛直方向Zとする。
【0020】
また、各電池14は、出力端子22が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池14は、出力端子22が鉛直方向上方を向くように配置される。また、各電池14は、隣接する電池14を直列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の負極端子22bとが隣り合うように積層される。また、隣接する電池14を並列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の正極端子22aとが隣り合うように積層される。
【0021】
セル間セパレータ16は、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂シートからなる。セル間セパレータ16を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。セル間セパレータ16は、隣接する2つの電池14の間に配置されて、当該2つの電池14間を電気的に絶縁する。
【0022】
電池積層体2は、一対のエンドプレート4で挟まれる。一対のエンドプレート4は、電池14の積層方向Xにおける電池積層体2の両端に配置される。一対のエンドプレート4は、積層方向Xにおける両端に位置する電池14と、外端セパレータ5を介して隣り合う。外端セパレータ5は、セル間セパレータ16と同じ樹脂材料で構成することができる。各エンドプレート4は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属で構成される金属板である。エンドプレート4と電池14との間に外端セパレータ5が介在することで、両者が絶縁される。
【0023】
各エンドプレート4は、水平方向Yを向く2つの面に締結孔4aを有する。本実施の形態では、3つの締結孔4aが鉛直方向Zに所定の間隔をあけて配置されている。締結孔4aが設けられる面は、拘束部材12の後述する平面部54と対向する。
【0024】
電池積層体2の上面には、ダクトプレート28が載置される。ダクトプレート28は、電池積層体2の上面、つまり各電池14の弁部24が配置される面を覆う板状の部材である。ダクトプレート28は、各電池14の弁部24に対応する位置に、弁部24を露出させる複数の開口32を有する。複数の開口32は、電池積層体2の上面に沿って延びるベース板33に設けられる。また、ダクトプレート28は、各電池14から噴出したガスを一時的に貯留する排気ダクト38を有する。排気ダクト38は、電池14の積層方向Xに延びて各電池14の弁部24に接続される。各弁部24は、開口32を介して排気ダクト38に連通される。
【0025】
排気ダクト38は、複数の開口32の上方を覆う第1壁部34と、各開口32の側方を囲う一対の第2壁部36と、で画成される。第1壁部34および一対の第2壁部36は、それぞれ積層方向Xに長い長尺状である。一対の第2壁部36は、複数の開口32あるいは複数の弁部24を挟んで水平方向Yに配列され、それぞれの壁面が電池14の積層方向Xと交わる第1方向(本実施の形態では水平方向Y)を向く。第1壁部34は、壁面がダクトプレート28とカバープレート60とが並ぶ方向(本実施の形態では鉛直方向Z)を向き、各弁部24と対向する。一対の第2壁部36は、ベース板33からカバープレート60に向けて突出し、排気ダクト38の両側面を構成する。第1壁部34は、一対の第2壁部36の上端に固定されて排気ダクト38の天面を構成する。
【0026】
また、ダクトプレート28は、各電池14の出力端子22に対応する位置に、出力端子22を露出させる開口40を有する。各開口40には、バスバー42が載置される。複数のバスバー42は、ダクトプレート28によって支持される。したがって、ダクトプレート28は、いわゆるバスバープレートとしても機能する。各開口40に載置されたバスバー42によって、隣り合う電池14の出力端子22どうしが電気的に接続される。
【0027】
本実施の形態のダクトプレート28は、第1壁部34を除いてポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂で構成される。第1壁部34は、鉄やアルミニウム等の金属板で構成される。また、一対の第2壁部36は、ベース板33と一体成形される。第1壁部34は、ねじ等の締結部材(図示せず)により一対の第2壁部36に固定される。
【0028】
バスバー42は、銅やアルミニウム等の金属で構成される略帯状の部材である。バスバー42は、一方の端部が一方の電池14の出力端子22に接続され、他方の端部が他方の電池14の出力端子22に接続される。バスバー42は、隣接する複数個の電池14における同極性の出力端子22どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0029】
積層方向Xにおいて両端に位置する電池14の出力端子22に接続されるバスバー42は、外部接続端子44を有する。外部接続端子44は、外部負荷(図示せず)に接続される。また、ダクトプレート28には、電圧検出線46が載置される。電圧検出線46は、複数の電池14に電気的に接続されて各電池14の電圧を検出する。電圧検出線46は、複数の導線(図示せず)を有する。各導線は、一端が各バスバー42に接続され、他端がコネクタ48に接続される。コネクタ48は、外部の電池ECU(図示せず)等に接続される。電池ECUは、各電池14の電圧等の検知、各電池14の充放電等を制御する。
【0030】
冷却プレート6は、積層方向Xおよび水平方向Yに延在する平板状であり、アルミニウム等の熱伝導性の高い材料で構成される。冷却プレート6は、電池積層体2に熱的に接続されて、つまり電池積層体2に熱交換可能に接続されて、各電池14を冷却する。本実施の形態では、冷却プレート6の主表面に電池積層体2が載置される。電池積層体2は、下面が冷却プレート6側を向くようにして、冷却プレート6に載置される。したがって、電池積層体2と冷却プレート6とは鉛直方向Zに並ぶ。冷却プレート6は、電池モジュール1の外部、例えば電池モジュール1が搭載される車両の車体等に熱交換可能に接続されてもよい。また、冷却プレート6は、水やエチレングリコール等の冷媒が流れる流路を内部に有してもよい。これらにより、電池積層体2と冷却プレート6との熱交換効率をより高めることができ、ひいては電池14の冷却効率をより高めることができる。
【0031】
熱伝導層8は、電池積層体2と冷却プレート6との間に介在する絶縁性の部材である。つまり、冷却プレート6は、熱伝導層8を介して電池積層体2に熱的に接続される。熱伝導層8は、電池積層体2の底面全体を覆っている。熱伝導層8の熱伝導率は空気の熱伝導率よりも高い。熱伝導層8は、例えばアクリルゴムシートやシリコーンゴムシート等の、良好な熱伝導性を有する公知の樹脂シート等で構成することができる。また、熱伝導層8は、良好な熱伝導性および絶縁性を有する公知の接着剤、グリス等で構成されてもよい。なお、外装缶18が絶縁フィルム26等で十分に絶縁されている場合には、熱伝導層8は絶縁性を有しなくてもよい。
【0032】
熱伝導層8を電池積層体2と冷却プレート6との間に介在させることで、各電池14と冷却プレート6との熱的な接続をより確実に得ることができる。このため、各電池14の冷却効率を高めることができるとともに、各電池14をより均一に冷却することができる。また、熱伝導層8が絶縁性を有する場合には、電池積層体2と冷却プレート6とが電気的に接続されてしまうことをより確実に回避することができる。さらに、熱伝導層8によって、電池積層体2と冷却プレート6とのずれを抑制することができる。
【0033】
サイドセパレータ10は、絶縁性を有し、拘束部材12と電池積層体2とを絶縁するための部材である。本実施の形態では、水平方向Yに一対のサイドセパレータ10が配列される。各サイドセパレータ10は、電池14の積層方向Xに長い長尺状である。一対のサイドセパレータ10の間には、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6および熱伝導層8が配置される。各サイドセパレータ10は、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。サイドセパレータ10を構成する樹脂としては、セル間セパレータ16と同様に、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。
【0034】
本実施の形態のサイドセパレータ10は、第1部分50と、第2部分52と、第3部分53と、を有する。第1部分50は、矩形の平板状であり、電池積層体2の側面に沿って電池14の積層方向Xに延びる。第2部分52は、積層方向Xに延びる帯状であり、第1部分50の下辺から電池積層体2側に突出する。第3部分53は、積層方向Xに延びる帯状であり、第1部分50の上辺から電池積層体2側に突出する。したがって、第2部分52および第3部分53は、電池積層体2および冷却プレート6の配列方向で互いに対向する。第2部分52および第3部分53の間には、電池積層体2、冷却プレート6および熱伝導層8が配置される。
【0035】
拘束部材12は、バインドバーとも呼ばれ、電池14の積層方向Xに長い長尺状の部材である。本実施の形態では、水平方向Yに一対の拘束部材12が配列される。各拘束部材12は金属製である。拘束部材12を構成する金属としては、鉄やステンレス鋼等が例示される。一対の拘束部材12の間には、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6、熱伝導層8および一対のサイドセパレータ10が配置される。
【0036】
本実施の形態の拘束部材12は、平面部54と、一対の腕部56と、を有する。平面部54は矩形状であり、電池積層体2の側面に沿って積層方向Xに延びる。一対の腕部56は、鉛直方向Zにおける平面部54の両側の端部から電池積層体2側に突出する。つまり、一方の腕部56は平面部54の上辺から電池積層体2側に突出し、他方の腕部56は平面部54の下辺から電池積層体2側に突出する。したがって、一対の腕部56は、電池積層体2および冷却プレート6の配列方向で互いに対向する。一対の腕部56の間には、電池積層体2、冷却プレート6、熱伝導層8およびサイドセパレータ10が配置される。
【0037】
平面部54における各エンドプレート4と対向する領域には、コンタクトプレート68が溶接等により固定される。コンタクトプレート68は、鉛直方向Zに長い部材である。コンタクトプレート68には、エンドプレート4の締結孔4aに対応する位置に、コンタクトプレート68を水平方向Yに貫通する貫通孔70が設けられる。また、平面部54は、コンタクトプレート68の貫通孔70に対応する位置に、平面部54を水平方向Yに貫通する貫通孔58を有する。
【0038】
各拘束部材12の平面部54に一対のエンドプレート4が係合することで、複数の電池14が積層方向Xに挟み込まれる。具体的には、複数の電池14と複数のセル間セパレータ16とが交互に配列されて電池積層体2が形成され、電池積層体2が外端セパレータ5を介して一対のエンドプレート4で積層方向Xに挟まれる。また、電池積層体2の下面に熱伝導層8が配置され、さらに熱伝導層8を挟んで電池積層体2と対向するように冷却プレート6が配置される。この状態で、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却プレート6および熱伝導層8が一対のサイドセパレータ10で水平方向Yに挟まれる。さらに、一対のサイドセパレータ10の外側から、一対の拘束部材12が全体を水平方向Yに挟み込む。
【0039】
一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とは、締結孔4a、貫通孔70および貫通孔58が重なり合うように、互いに位置合わせされる。そして、ねじ等の締結部材59が貫通孔58および貫通孔70に挿通され、締結孔4aに螺合される。これにより、一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが固定される。一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが係合されることで、複数の電池14は、積層方向Xにおいて締め付けられて拘束される。これにより、各電池14は、積層方向Xにおいて位置決めされる。
【0040】
また、拘束部材12は、複数の電池14を積層方向Xに挟み込むとともに、電池積層体2、熱伝導層8および冷却プレート6をこれらの配列方向に挟み込む。具体的には、拘束部材12は、電池14の積層方向Xにおける平面部54の両端部が一対のエンドプレート4と係合することで、複数の電池14を積層方向Xに挟み込む。また、拘束部材12は、一対の腕部56で電池積層体2、熱伝導層8および冷却プレート6を鉛直方向Zに挟み込む。つまり、拘束部材12は、複数の電池14を締結する機能と、電池積層体2と冷却プレート6とを締結する機能とを兼ね備えている。したがって、電池積層体2と冷却プレート6とは、従来の構造とは異なり、ねじで非締結である。
【0041】
一対の拘束部材12が一対のエンドプレート4に固定された状態で、サイドセパレータ10の第1部分50は、電池積層体2の側面と拘束部材12の平面部54との間に介在する。これにより、各電池14の側面と平面部54とが電気的に絶縁される。サイドセパレータ10の第2部分52は、冷却プレート6と拘束部材12の下側の腕部56との間に介在する。これにより、冷却プレート6と下側の腕部56とが電気的に絶縁される。サイドセパレータ10の第3部分53は、電池積層体2の上面と拘束部材12の上側の腕部56との間に介在する。これにより、各電池14の上面と上側の腕部56とが電気的に絶縁される。
【0042】
一対の腕部56によって電池積層体2、熱伝導層8および冷却プレート6が鉛直方向Zに挟み込まれた状態で、熱伝導層8は、電池積層体2および冷却プレート6に押圧されて、弾性変形または塑性変形する。これにより、電池積層体2と冷却プレート6との熱的な接続をより確実に得ることができる。また、電池積層体2全体の冷却の均一化を図ることができる。さらに、電池積層体2と冷却プレート6とのXY平面方向のずれをより一層抑制することができる。
【0043】
一例として、これらの組み付けが完了した後に、電池積層体2にダクトプレート28が載置される。例えば、ダクトプレート28は、一対のサイドセパレータ10の第3部分53が係合することで電池積層体2に対して固定される。そして、各電池14の出力端子22にバスバー42が取り付けられて、複数の電池14の出力端子22どうしが電気的に接続される。例えばバスバー42は、溶接により出力端子22に固定される。
【0044】
ダクトプレート28の上面には、カバープレート60が載置される。カバープレート60は、ダクトプレート28の上方を覆う板状の部材である。本実施の形態のカバープレート60は、電池モジュール1の外郭の一部、具体的には電池モジュール1の上面を構成する、いわゆるトップカバーである。カバープレート60により、電池14の出力端子22や弁部24、バスバー42等への結露水や塵埃等の接触が抑制される。カバープレート60は、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。カバープレート60は、鉛直方向Zで外部接続端子44と重なる位置に絶縁カバー部62を有する。
【0045】
カバープレート60は、第1方向(本実施の形態では水平方向Y)における両端部がダクトプレート28に固定される。本実施の形態のカバープレート60は、スナップフィットによりダクトプレート28に固定される。具体的には、ダクトプレート28は、水平方向Yにおける両端部に、積層方向Xに間隔をあけて複数の係合爪72を有する。また、カバープレート60は、鉛直方向Zから見て各係合爪72と重なる位置に係合孔74を有する。係合爪72および係合孔74によりスナップフィット部71(図3および図4参照)が構成される。カバープレート60がダクトプレート28に載置されると、各係合孔74に各係合爪72が挿入される。これにより、係合爪72および係合孔74が互いに係合して、カバープレート60の水平方向Yにおける両端部がダクトプレート28に固定される。カバープレート60がダクトプレート28に載置された状態で、外部接続端子44が絶縁カバー部62で覆われる。
【0046】
図3は、電池モジュール1のダクトプレート28およびカバープレート60を含む領域の断面側面図である。図4は、電池モジュール1のダクトプレート28およびカバープレート60を含む領域の断面斜視図である。図3および図4では、電池14の内部構造の図示を省略している。
【0047】
電池モジュール1は、流路部76を備える。流路部76は、排気ダクト38内のガスを電池モジュール1の外部に漏出させる流路である。流路部76は、ダクトプレート28およびカバープレート60で画成され、排気ダクト38から積層方向Xと交わる第1方向(本実施の形態では水平方向Y)に延びる。本実施の形態では、排気ダクト38を挟んで水平方向Yの両側に流路部76が配置される。各流路部76は、排気ダクト38の水平方向Yを向く第2壁部36に接続される。より具体的には、第2壁部36には開口78が設けられ、各流路部76の一方の端部は開口78に接続される。各流路部76の他方の端部は、電池モジュール1の水平方向Yの端部に配置される流路出口80に接続される。
【0048】
第2壁部36には積層方向Xに所定の間隔をあけて複数の開口78が設けられ、流路部76の一方の端部は複数の開口78に接続される。また、流路出口80は、積層方向Xに長い開口である。したがって、流路部76は、積層方向Xおよび水平方向Yに拡がる平面状の流路である。
【0049】
カバープレート60は、排気ダクト38の弁部24と対向する第1壁部34との間に所定の隙間Gが設けられるように配置される。つまり、第1壁部34とカバープレート60とは、隙間Gだけ鉛直方向Zに離間している。また、排気ダクト38は、排気ダクト38内と隙間Gとを連通する開口82を第1壁部34に有する。本実施の形態では、第1壁部34の全体に複数の開口82が均等に配列されている(図2参照)。また、隙間Gは、水平方向Yの両端部が流路部76に接続される。したがって、排気ダクト38と流路部76とは、第2壁部36の開口78を介して連通されるだけでなく、第1壁部34の開口82および隙間Gを介しても連通される。開口82は、例えば第1壁部34を構成する金属板へのパンチング加工等により形成することができる。
【0050】
なお、図3および図4に示された開口78は、第2壁部36における他の領域よりも背の低い領域の上端(上端の一部が切り欠かれた部分ともいえる)と第1壁部34との間の隙間によって形成されているが、特にこの構造に限定されない。例えば開口78は、第2壁部36を水平方向Yに貫く貫通孔で構成されてもよい。また、開口78は、第2壁部36の上端から下端まで達する大きさであってもよい。つまり、第2壁部36は、開口78によって複数に分断されていてもよい。
【0051】
弁部24から電池14内のガスが噴出すると、ガスは弁部24と対向する第1壁部34に衝突する。第1壁部34に衝突したガスの大分部は、第1壁部34に沿って流れて開口78から流路部76に流入する。流路部76に流入したガスは、流路部76内を水平方向Yおよび積層方向Xに流れ、流路出口80から電池モジュール1の外部に漏出する。また、第1壁部34に衝突したガスの一部は、第1壁部34が有する開口82から隙間Gに流入する。隙間Gに流入したガスは、隙間Gから流路部76に流入して流路出口80から電池モジュール1の外部に漏出する。
【0052】
電池14から噴出するガスの少なくとも一部は、可燃性のガスである。また、電池14から噴出するガスには、電池構造物の破片等の微粒子も含まれる。電池モジュール1の外部に高温の可燃性ガスと高温の微粒子とが排出されると、電池モジュール1の外部での発火の規模が増大し得る。これに対し、本実施の形態では弁部24から噴出したガスを一旦排気ダクト38で受け、その後に流路部76を経由して電池モジュール1の外部に放出している。これにより、ガスや微粒子が電池モジュール1の外部に放出されるまでに、その温度を下げることができる。
【0053】
また、排気ダクト38に噴出したガスの一部を開口82から隙間Gに流出させることで、排気ダクト38の内圧が過度に上昇することを抑制することができる。また、開口82よりも大きい微粒子は開口82で捕捉される。これにより、一部の微粒子とガスとを分離することができる。
【0054】
また、鉛直方向Zから見て、排気ダクト38は、カバープレート60の第1方向(本実施の形態では水平方向Y)における中央部と重なる位置に配置される。また、上述の通り、カバープレート60は、第1方向における両端部がダクトプレート28に固定される。このため、電池14から噴出したガスの量が増大すると、カバープレート60は、中央部が膨らむように変形する。前記「中央部」とは、例えば第1方向におけるカバープレート60の一端側で最も外側に位置する係合孔74と、他端側で最も外側に位置する係合孔74とのそれぞれに対し、第1方向で等しい距離にある中間点を含む領域である。
【0055】
スナップフィット部71の係合爪72は、支柱部72aと、突出部72bと、を有する。支柱部72aは、ダクトプレート28およびカバープレート60が並ぶ鉛直方向Zに延びる。突出部72bは、支柱部72aの先端において支柱部72aから排気ダクト38とは反対側に向かって突き出る。つまり、水平方向Yにおいて、排気ダクト38は電池モジュール1の中央部に配置され、突出部72bは電池モジュール1の外側に向けて突出している。ダクトプレート28およびカバープレート60は、係合爪72が係合孔74に挿入され、突出部72bが係合孔74の周縁部に引っかかることで固定される。
【0056】
カバープレート60の中央部が膨らむように変形すると、係合孔74は電池モジュール1の中央部に近づくように変位する。この変位にともなって、係合爪72の支柱部72aは、先端が電池モジュール1の中央部に近づくように弾性変形する。一方、突出部72bは、電池モジュール1の外側に向けて突出している。これにより、支柱部72aが電池モジュール1の中央部に近づくように変形した場合でも、係合孔74の周縁部に引っかかった状態を維持しやすくすることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に係る電池モジュール1は、積層された複数の電池14を有する電池積層体2と、電池積層体2に載置されるダクトプレート28と、ダクトプレート28に載置されるカバープレート60と、ダクトプレート28およびカバープレート60で画成される流路部76と、を備える。電池積層体2の各電池14は、ガスを噴出する弁部24を有する。ダクトプレート28は、排気ダクト38を有し、電池積層体2における複数の弁部24が配置される面を覆う。排気ダクト38は、電池14の積層方向Xに延びて各電池14の弁部24に接続され、噴出したガスを一時的に貯留する。流路部76は、排気ダクト38から電池14の積層方向Xと交わる第1方向に延び、排気ダクト38内のガスを電池モジュール1の外部に漏出させる。カバープレート60は、排気ダクト38の弁部24と対向する第1壁部34との間に所定の隙間Gが設けられるように配置される。排気ダクト38は、排気ダクト38内と隙間Gとを連通する開口82を第1壁部34に有する。
【0058】
各弁部24を排気ダクト38に接続することで、噴出したガスの衝撃や圧力を排気ダクト38で受けることができる。特に、ガスの噴出初期に生じる大きな衝撃や急激に上昇する圧力を排気ダクト38で受けることができる。また、排気ダクト38に噴出したガスは、流路部76から徐々に電池モジュール1の外部に漏出する。これにより、電池モジュール1の外部にガスが勢いよく噴出することを抑制することができる。また、流路部76から徐々にガスを漏出させることで、ガスや微粒子が流路出口80に至るまでにその温度を下げることができる。これにより、電池モジュール1の外部での発火を抑制することができる。
【0059】
また、排気ダクト38の第1壁部34に開口82を設けることで、排気ダクト38の内圧が過度に上昇することを抑制することができる。これにより、電池14からのガスの噴出によって排気ダクト38が破損することを抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、電池モジュール1の安全性を高めることができる。また、電池モジュール1の安全性を維持しながら電池モジュール1の高容量化を図ることができる。
【0060】
また、開口82よりも大きい微粒子は開口82で捕捉される。このため、この微粒子が電池モジュール1の外部に放出されることを抑制することができ、モジュール外部での発火を抑制することができる。また、開口82で微粒子を捕捉することで、当該微粒子とガスとを分離することができる。これにより、ガスの温度をより早く下げることができるため、モジュール外部での発火を抑制することができる。
【0061】
また、本実施の形態の第1壁部34は、金属板で構成される。つまり、第1壁部34は、高い熱伝導性を有する。これにより、電池14から噴出するガスの熱をより迅速に拡散させることができる。この結果、電池モジュール1から漏出するガスの温度を下げることができ、モジュール外部での発火をより抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態のダクトプレート28は、弁部24を挟んで並び第1壁部34とともに排気ダクト38を画成する一対の第2壁部36を有する。そして、一対の第2壁部36は、排気ダクト38と流路部76とを連通する開口78を有する。したがって、電池モジュール1は、排気ダクト38から第2壁部36の開口78を介して流路部76に至るガスの流路と、排気ダクト38から第1壁部34の開口82を介して流路部76に至るガスの流路と、を有する。このように、ガスを複数の流路に分けることで、より早くガスの温度を下げることができる。また、第2壁部36の開口78からガスを流出させることで、第1壁部34の開口82からガスを流出させる場合よりも、ガスを排気ダクト38内に留めておく時間を延ばすことができる。このため、モジュール外部での発火をより抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態のカバープレート60は、第1方向における両端部がダクトプレート28に固定される。また、排気ダクト38は、カバープレート60の第1方向における中央部と重なる位置に配置される。これにより、電池14から噴出したガスの量が増大した際に、カバープレート60を中央部が膨らむように変形させることができる。このため、カバープレート60が電池モジュール1から外れることを回避しながら電池モジュール1内でガスが滞留する空間の容積を増加させることができる。よって、電池モジュール1の内部に一時的に留めておくことができるガスの量を増やすことができ、また留めておく時間を延ばすことができる。この結果、モジュール外部での発火をより抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態の電池モジュール1は、互いに係合する係合爪72および係合孔74で構成されてダクトプレート28およびカバープレート60を固定するスナップフィット部71を有する。係合爪72は、ダクトプレート28およびカバープレート60の並ぶ方向に延びる支柱部72aと、支柱部72aから排気ダクト38とは反対側に向かって突き出る突出部72bと、を有する。ダクトプレート28およびカバープレート60は、係合爪72が係合孔74に挿入され、突出部72bが係合孔74の周縁部に引っかかることで固定される。突出部72bを排気ダクト38とは反対側に突出させることで、カバープレート60が変形した際に、係合爪72と係合孔74との引っかかりが解除されてしまうことを抑制することができる。よって、ダクトプレート28に対してカバープレート60をより安定的に固定することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0066】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る電池モジュール1のダクトプレート28およびカバープレート60を含む領域の断面側面図である。図5では、電池14の内部構造の図示を省略している。変形例1の電池モジュール1では、カバープレート60がダクトプレートおよびカバープレートの並ぶ方向(本実施の形態では鉛直方向Z)から見て第1壁部34の開口82と重なる領域に、熱伝導抑制層84を有する。熱伝導抑制層84は、電池14から噴出したガスからカバープレート60への伝熱を抑制する。
【0067】
熱伝導抑制層84は、例えば断熱性を有するシートであり、カバープレート60における開口82側を向く面に設けられる。例えば、熱伝導抑制層84は接着剤等でカバープレート60の表面に貼り付けられる。本実施の形態では、カバープレート60の開口82側を向く表面に凹部が設けられ、この凹部に熱伝導抑制層84が嵌め込まれている。これにより、熱伝導抑制層84を容易に位置決めすることができる。
【0068】
電池14から噴出して開口82を通過した高温のガスは、熱伝導抑制層84に衝突する。このため、噴出したガスの熱を熱伝導抑制層84で受けることができる。したがって、熱伝導抑制層84により、ガスの熱がカバープレート60に伝導することを抑制することができる。この結果、カバープレート60の耐熱性を高めることができ、ガスの熱でカバープレート60が変形や損傷するおそれを低減することができる。例えば熱伝導抑制層84は、カバープレート60を構成する材料よりも熱伝導性の低い材料で構成される。また、熱伝導抑制層84は、空気よりも熱伝導率が低い。熱伝導抑制層84を構成する材料としては、有機繊維や無機繊維などが集積された繊維集積体や、断熱材およびラミネートフィルムで構成される熱伝導抑制シートが例示される。
【0069】
なお、熱伝導抑制層84は、アルミテープや鉄板等の高い熱伝導率を有する部材であってもよい。この場合には、熱伝導抑制層84によってガスの熱を迅速に分散させることで、カバープレート60への伝熱を抑制することができる。
【0070】
(その他)
電池モジュール1が備える電池14の数は特に限定されない。サイドセパレータ10の形状や、エンドプレート4と拘束部材12との締結構造を含む、電池モジュール1の各部の構造は特に限定されない。電池14は、円筒状等であってもよい。電池積層体2と冷却プレート6との間の熱伝導と摩擦力とが十分に確保できる場合には、熱伝導層8を省略し、PETやPCからなる絶縁シートを電池積層体2と冷却プレート6との間に介在させてもよい。排気ダクト38は、第2壁部36に開口78を有しなくてもよい。この場合、排気ダクト38の全てのガスが開口82および隙間Gを経由して流路部76に流入する。
【0071】
実施の形態や変形例では、ダクトプレート28が係合爪72を有し、カバープレート60が係合孔74を有するが、特にこの構成に限定されず、ダクトプレート28が係合孔74を有し、カバープレート60が係合爪72を有してもよい。つまり、係合爪72はダクトプレート28およびカバープレート60の一方に設けられ、係合孔74はダクトプレート28およびカバープレート60の他方に設けられる。
【符号の説明】
【0072】
1 電池モジュール、 2 電池積層体、 14 電池、 24 弁部、 28 ダクトプレート、 34 第1壁部、 36 第2壁部、 38 排気ダクト、 60 カバープレート、 76 流路部、 82 開口、 84 熱伝導抑制層、 G 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5