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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】結び目の無い組織修復
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021511654
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019049096
(87)【国際公開番号】W WO2020047431
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】62/725,328
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ザームエル・バッハマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・スティーヴンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・グアルドーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク・ジョリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ボイル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・オシカ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0052179(US,A1)
【文献】特開2014-061380(JP,A)
【文献】特表2016-507346(JP,A)
【文献】特開2013-233434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織修復用の結び目の無い外科用構造体であって、
自由端と、前記自由端の反対側のループ端と、該自由端と該ループ端との間の修復長さ部とを備える少なくとも一つのフレキシブルストランドであって、前記修復長さ部が、前記自由端が前記ループ端を通ると連続的で調節可能な修復ループを形成するように構成され、前記修復ループが組織の断裂部を取り囲むように構成される、少なくとも一つのフレキシブルストランドと、
前記フレキシブルストランドのループ端に隣接して位置するセルフロック器具であって、前記修復ループが前記断裂部の周りで張られると結び目や固定具を使用せずに前記修復ループを固定するように構成されているセルフロック器具と、を備え、
前記フレキシブルストランドの自由端が前記セルフロック器具を通る、外科用構造体。
【請求項2】
前記セルフロック器具がフィンガートラップ縫合糸である、請求項に記載の外科用構造体。
【請求項3】
前記フィンガートラップ縫合糸が前記フレキシブルストランドと一体である、請求項に記載の外科用構造体。
【請求項4】
前記フレキシブルストランドが、前記修復長さ部が前記ループ端を通って戻ることで二重になる、請求項1に記載の外科用構造体。
【請求項5】
前記フレキシブルストランドの自由端に連結されたシャトル器具を更に備える請求項1に記載の外科用構造体。
【請求項6】
前記シャトル器具がシャトル縫合糸である、請求項に記載の外科用構造体。
【請求項7】
前記フレキシブルストランドが縫合糸である、請求項1に記載の外科用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2018年8月31日出願の米国仮出願第62/725328号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
本開示は、損傷した軟組織を修復するための結び目の無い(ノットレス)外科用構造体と、それを用いた組織の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動中等に生じた筋骨格系障害を修復するための外科手術は多く行われている。半月板の断裂は、断裂部の両側にインプラントを配置して、インプラント同士の間に縫合糸を張って、断裂部を閉じて治癒することによって、修復可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は結び目の無い外科用構造体に関し、特に、自由端と、自由端の反対側のループ端と、それらの間の修復長さ部とを備える少なくとも一つのフレキシブルストランドを備える外科用構造体に関し、修復長さ部は、自由端がループ端を通る際に連続的で調節可能な修復ループを形成するように構成され得て、修復ループは、組織の断裂部を取り囲むように構成され得て、セルフロック器具がフレキシブルストランドのループ端に隣接して位置し、セルフロック器具は、修復ループが断裂部の周りで張られると、結び目や固定具やインプラントを使用せずに修復ループを固定するように構成され得る。
【0004】
フレキシブルストランドの自由端はセルフロック器具を通り得て、セルフロック器具はフィンガートラップ縫合糸であり得て、及び/又は、フィンガートラップ縫合糸はフレキシブルストランドと一体であり得る。修復長さ部は、ループ端を通るシンチループを画定するように二重になり、修復ループが少なくとも二つのフレキシブルストランド長さ部を備えるようになり得る。別のシャトル器具がフレキシブルストランドの自由端に連結し得る。シャトル器具はシャトル縫合糸であり得る。例えば、フレキシブルストランドは縫合糸であり得る。
【0005】
本方法は、特に、第一方向に沿って外科用構造体の少なくとも一つのフレキシブルストランドを損傷している組織に又はその周囲に通すことと、フレキシブルストランドの自由端の反対側のループ端に自由端を糸通しすることによって、自由端とループ端との間にフレキシブルストランドの修復長さ部を有する連続的で調節可能な修復ループを形成して、修復ループが組織の断裂部を取り囲むようにすることと、自由端を引っ張って損傷した組織の断裂部の周りに修復ループを張ることと、自由端を引っ張って修復ループを張るステップの後に、フレキシブルストランドを結んだりアンカーを使用したりせずに修復ループを固定して、修復部を固定することと、を含む。
【0006】
フレキシブルストランドの自由端は組織の下位面から伸び、フレキシブルストランドのループ端は組織の上位面から伸び得る。損傷している組織は半月板であり、上位面は大腿骨面であり、下位面は脛骨面である。フレキシブルストランドは、修復ループを固定する際にセルフロックする(自ずと締まる)。フレキシブルストランドは、フレキシブルストランドのループ端に隣接するフィンガートラップ縫合糸を用いてセルフロックする。フレキシブルストランドの自由端はフィンガートラップ縫合糸を通る。
【0007】
本方法は、第二方向(第二方向は第一方向の逆方向)に沿って自由端を組織に又はその周囲に通して、修復ループが少なくとも二つのフレキシブルストランド修復長さ部を備えるように二重になるようにすることを含み得る。第二方向に沿って自由端を組織に又はその周囲に通すことは、フレキシブルストランドの自由端を引っ張って修復ループを張るステップの前に行われる。第二方向に沿って自由端を通すことは、自由端をループ端に二回通すことによって、ループ端に連結したシンチループを形成することを含む。フレキシブルストランドの自由端を損傷している組織に又はその周囲に通すことは、修復ループを形成するように組織の外側でフレキシブルストランドの修復長さ部を巻くことを含む。
【0008】
例えば、組織は半月板であり、修復ループは半月板の外側を取り囲み得る。フレキシブルストランドの自由端を損傷している組織に又はその周囲に通すことは、断裂部近傍で損傷している組織の厚みにわたってフレキシブルストランドの修復長さ部の少なくとも一部を通すことを含む。組織は半月板であり、修復ループ半月板の厚みにわたって伸び得る。フレキシブルストランドの修復長さ部の少なくとも一つの他の部分は、前記修復長さ部の少なくとも一部とは異なる箇所で組織の厚みにわたって伸び得る。組織は、包嚢や関節唇等でもあり得る。
【0009】
本開示は、組織修復用の結び目の無い外科用構造体に関し、特に、第一自由端と、その反対側の第二自由端と、それらの間の修復長さ部とを備えるフレキシブルストランドを備える外科用構造体に関し、修復長さ部は、修復長さ部内に第一接合領域と第二接合領域をそれぞれ介して調節可能に閉じた第一ループと第二ループを形成するように構成され得る。パサーが、フレキシブルストランドを組織に通すことを促進するようにフレキシブルストランドに搭載され得る。フレキシブルストランドはあらゆる固定具を欠き、調節可能な第一ループと第二ループは、結び目や固定具を使用せずに組織の断裂部を閉じるようにそれぞれ第一自由端と第二自由端によって張ることができるものである。
【0010】
フレキシブルストランドは一本のストランド、例えば一本の縫合糸等であり得る。
【0011】
調節可能に閉じた第一ループと第二ループはそれぞれのループ端において互いに連結し得て、組織の断裂部を閉じるように調節可能な二重修復ループを形成し得る。調節可能に閉じた第一ループと第二ループは、第一接合領域と第二接合領域と略対向する箇所において連結し得る。
【0012】
第一接合領域と第二接合領域は互いに隣接して位置し得る。第一接合領域と第二接合領域は6mm未満で互いに離隔され得る。
【0013】
第一接合領域と第二接合領域の各々は短縮長さを有し得て、短縮長さは例えば略3mmから略6mmであり得る。
【0014】
パサーは、調節可能な第一ループと第二ループの一方に連結し得る。
【0015】
また、本開示は、結び目の無い組織修復方法も含み、その方法は、特に、結び目の無い外科用構造体のフレキシブルストランドの第一自由端をフレキシブルストランドの第一接合領域に糸通しして、調節可能に閉じた第一ループを形成することと、調節可能に閉じた第一ループを組織の断裂部に通して、そのループ端が組織の断裂部の一方の側に位置し、第一接合領域が断裂部の他方の側に位置するようにすることと、次いで、フレキシブルストランドの第二自由端を調節可能に閉じた第一ループのループ端に通し、第二自由端をフレキシブルストランドの第二接合領域に糸通しして、調節可能に閉じた第一ループと連結する調節可能に閉じた第二ループを形成し、調節可能に閉じた第一ループと第二ループが調節可能な二重修復ループを形成するようにすることと、フレキシブルストランドの第一自由端と第二自由端を引っ張って調節可能に閉じた第一ループの外周と第二ループの外周をそれぞれ小さくすることによって、結び目や固定具を使用せずに組織の断裂部が閉じるまで二重修復ループの外周を小さくすることと、を備える。
【0016】
本法においては、パサーが調節可能に閉じた第一ループのループ端に連結されて、それを組織の断裂部に通し得る。調節可能に閉じた第一ループを組織の断裂部に通した後に、パサーを取り外し得る。
【0017】
パサーがフレキシブルストランドの第二自由端に連結されて、第二自由端を調節可能に閉じた第一ループのループ端に通し得る。
【0018】
本方法では、フレキシブルストランドの第一自由端と第二自由端を引っ張って、調節可能に閉じた第一ループの外周と第二ループの外周を小さくする前に、二重修復ループを回転させて、調節可能に閉じた第一ループと第二ループが連結する箇所を組織の断裂部にして、その箇所から第一接合領域と第二接合領域を実質的に離し得る。
【0019】
フレキシブルストランドの第一接合領域と第二接合領域においてフレキシブルストランドの修復長さ部が自ずと締まり(self‐cinching)、第一自由端と第二自由端を張ることによって、組織の閉じた断裂部を固定し得る。
【0020】
フレキシブルストランドは一本のストランドであり、その第一接合領域と第二接合領域は互いに隣接し得る。第一接合領域と第二接合領域は互いに離隔され、例えば6mm未満で離隔され得て、第一接合領域と第二接合領域の各々は、短縮長さ、例えば、略3mmから略6mmの短縮長さを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】例示的な結び目の無い外科用構造体の図である。
図2図2A図2Cは、図1に示される外科用構造体の立面図であり、損傷した組織を断面で示す。
図3図3A図3Bは、図2A図2Cと同様の外科用構造体の立面図であり、組織の修復後に固定された外科用構造体を示す。
図4図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図5図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図6図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図7図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図8図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図9図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図10図1に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図11】他の例示的な結び目の無い外科用構造体の図である。
図12図11に示される結び目の無い外科用構造体の部分拡大図である。
図13図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図14図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図15図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図16図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図17図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
図18図11に示される結び目の無い外科用構造体を用いて損傷した組織を修復するための例示的な方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は概して結び目の無い外科用構造体10、100と、それを用いた組織修復方法、例えば、断裂した軟組織を修復する又は閉じるため等の方法に関する。例えば、外科用構造体10、100と方法は、全て内側での(オールインサイド)縫合に基づいた関節鏡視下半月板修復(フレキシブルストランド(柔軟な糸)又は縫合糸が断裂した半月板又はその周囲を垂直又は平行に通る)に適用可能であり、及び/又は、半月板等の軟組織の断裂部又は断裂領域を閉じることによって、断裂部を取り囲むことに適用可能であり、アンカーやインプラント等の固定具を必要とせず、関節鏡視下で結んだ結び目や予め結んだ結び目等の結び目を必要としない。結び目の無い外科用構造体10、100と方法は、修復を単純にし、また、修復部の不具合(固定結び目が弱くて修復部を解いてしまうことに起因することが多い)を減らすように設計される。また、結び目の無い外科用構造体10、100と方法は、より柔軟な手術中の取り扱いのために構造体の最終的な引張状態の多重調節を可能にし、損傷した組織の断裂部の周りにおける再現可能な引張を達成する。外科用構造体10、100の柔軟な引張は、外科医が修復の最終段階において構造体の安全性を標準化することを可能にする。組織の厚みにわたって配置される外科用構造体の連続的で圧縮性の修復ループは、修復部に強い保持強度を与え、周期的に負荷がかかることに応じた不具合に対して荷重を最大にするように設計される。
【0023】
図1図10を参照すると、外科用構造体10は概して少なくとも一つのフレキシブルストランド12(縫合糸等)を備え、そのフレキシブルストランドは、損傷した軟組織90の断裂部92(例えば、断裂した半月板)を取り囲むように構成されるが、その取り囲みは、損傷した組織に又はその周囲にフレキシブルストランドを通して、連続的で調節可能な修復ループ14を形成することによって行われる(図1及び図2A図2Cを参照)。外科用構造体10の最終的な引張は、修復ループ14を短くし、また、セルフロック器具20を用いて、組織を圧迫し、構造体10を固定することによって達成され、アンカーやインプラントや結び目(予め結ばれてスライドする結び目や、関節鏡視下で結ばれる結び目等)を使用しない。
【0024】
フレキシブルストランド12は、自由端16と、自由端の反対側のループ端18とを備え、修復ループ14を閉じるようになっていて、ストランド12の修復長さ部15が両端16、18の間の修復ループ14を形成する長さとして画定される。ループ端18は、ストランド12の最遠位端のループとして画定され、ストランド12の自由端16を受けるように構成される(図2Aを参照)。セルフロック器具20は、ループ端18に隣接して位置し、ストランド12の自由端16に係合して、構造体10をロックすることによって、修復部を適所に固定するように構成される。ループ端18以外の他の機構を用いて修復ループ14を閉じて、その点にシンチ(cinch,鞍帯状部)を形成することもでき、例えば、小さな縫合テープ部が穴開けされ得る。
【0025】
セルフロック器具20は、例えば、チャイニーズフィンガートラップと同様の摩擦に基づいた係合具であり得る。一実施形態では、セルフロック器具20は、ストランド12に組み込まれた又は一体のフィンガートラップ縫合糸であり、そこを通って自由端16が伸びる。セルフロック器具20を締めるか引っ張ると、セルフロック器具が長く細くなり、自由端16が更に引っ張られ、器具20の外周がストランド12の周りで更に縮んで、トラップが堅く締まって、修復ループが断裂部の周りで張られると修復ループ14を固定し、結び目や固定具を使用しない。
【0026】
図2A図2Cに示されるように、外科用構造体10は、断裂部92にわたって延在するというよりもむしろ、断裂部92を取り囲むように位置する。ストランド12の自由端16は、まず、断裂部92に隣接又は近接して組織90の第一面又は下位面94を通る方向に伸び、組織90の厚み98を通って、第一面94に対向する組織90の第二面又は上位面96から出て行く。自由端16が組織90の第二面96から出て行くと、自由端16がストランド12のループ端18に糸通しされ得る(図2Aを参照)。自由端16をストランド12のループ端18に糸通しするこのステップは、断裂部92の周りに初期の連続的な修復ループ14を形成し、自由端16がループ端18を通って伸びている。
【0027】
次いで、自由端16の方向(向き)を反転させることによって、修復ループ14を二重にして、修復ループが少なくとも二つの修復長さ部15aと15bを有するようにし得る。つまり、自由端16がループ端18を通って糸通しされると、自由端16を、組織90の第二面96を通って戻し、組織90の厚みを通って戻し(例えば、自由端16を最初に組織に通した時と同じ経路に沿って)、そして、組織90の第一面94を通って戻すように伸びし得る(図2Bを参照)。シンチ状ループ22がストランド12に形成され、ストランドのループ端18を通って連結する。組織の第一面94から出た後に、自由端16は、ストランド12のループ端18近傍でセルフロック器具20を通って伸びる。そして、ストランド12の自由端16を引っ張って、構造体10を締め付けて、組織90とその断裂部92の周りに修復ループ14を固定し、セルフロック器具20が構造体10を適所にロックして修復部を固定し、アンカーや結び目等を必要としない(図2Cを参照)。必要であれば、構造体10を断裂部92の周りで回転させ得る(図2Cを参照)。
【0028】
例えば、半月板は、概して三角形の断面形状を有する。下位面94は脛骨に隣接する脛骨面であり、上位面96は大腿骨に隣接する大腿骨面であり、それらの間に外面97が延在している。図2A図2Cに見て取れるように、構造体10のストランドの自由端16は、脛骨面94から出て行き、ストランドのループ端18は大腿骨面96から出て行く。ストランドの自由端16がまず組織90の下位面94に入るものとして修復が説明されているが、代わりに自由端16が組織の上位面96に最初に入り、上述と同じように断裂部92を
取り囲んでもよい。
【0029】
図3A及び図3Bは、修復ループ14で組織90と断裂部92を取り囲む代替法を示す。例えば、上述のようにストランド12の自由端16を組織90の厚みにわたって通す代わりに、図3Aに示されるように、ストランド12の自由端16が組織のどの表面に入り込むこともなく、組織の外側、つまり表面94、96、97の外側の周りで修復ループ14が巻かれ得る。代わりに、図3Bに示されるように、ストランド12の自由端16は、組織90の厚みにわたって、一箇所よりも多く、例えば、断裂部92の両側等で、厚み98aと98bにわたって通り得る。このように、ストランド12の自由端16は、第一面94と第二面96の各々を二回通って入って出て行き、自由端16とループ端18の両方が、同じ側又は表面、例えば下位面94から組織を出て行く。
【0030】
図4図10は、外科用構造体10を用いて、例えば断裂した半月板90を修復する例示的な組織修復方法を示す。まず、図1及び図4に示されるように、シャトル器具40を用いて、半月板の厚みにわたってストランドの自由端16を通す。シャトル器具40は、例えば、ストランド12の自由端16と統合された又は一体のシャトル縫合糸であり得る。次いで、図5に示されるように、ストランド12の修復長さ部を半月板に通す。次いで、図6に示されるように、ストランドの自由端16をループ端18に通す。別のシャトル器具42を用いて、自由端16をループ端18に糸通しすることを促進し得る。次いで、図7に示されるように、ストランド12の自由端16と修復長さ部を半月板を通して戻し得る。次いで、図8に示されるように、ストランドの自由端16をフィンガートラップ縫合子20に通すことによって、図9に示されるように、二重のストランド修復長さ部で連続的な修復ループ14を形成する。次いで、図10に示されるように、ストランドの自由端16を引っ張ることによって構造体10を締め付けて、修復ループを縮ませ、組織90を圧迫し、セルフロックによって構造体10を適所に固定することによって、修復部を固定する。
【0031】
図11図18を参照すると、外科用構造体100は概してフレキシブルストランド102(縫合糸等)を備え、そのフレキシブルストランド102は、損傷した軟組織190の断裂部192を閉じるように構成されるが、これは、損傷した組織又はその周囲にフレキシブルストランドを通し、フレキシブルストランド102に搭載されたパサー106を用いて、調節可能な二重修復ループ104(図17)を形成することによって行われる。外科用構造体100の最終的な引張は、修復ループ104の外周を短くして又は小さくして、軟組織を圧迫し、構造体100を確実に閉じること(図18)によって達成され、アンカーや固定具やインプラントや結び目(予め結ばれてスライドする結び目や、関節鏡視下で結ばれる結び目等)を使用しない。
【0032】
フレキシブルストランド102は一本のストランド(一本の縫合糸等)であり得て、対向する第一自由端110a及び第二自由端110bと、それらの間の修復長さ部112を備える(図11及び図12を参照)。修復長さ部112は第一接合領域114と第二接合領域116を有し得る。構造体100の設計と使用方法が、従来の構造体よりも修復長さ部112の接合領域114及び116の長さを短くすること及び互いに近づけることの両方を可能にする。例えば、接合領域114と116は互いに隣接し得て、つまり、これら接合領域が隣同士で配置され、それらの間の間隔が減少又は小さくなり得る。一実施形態では、第一接合領域114と第二接合領域116との間の間隔は6mm未満であり、略2mmから5mmとなり得る。また、各接合領域114、116は、略3mmから6mmとなり得る短縮長さを有し得る。
【0033】
外科用構造体100とその使用方法は、フレキシブルストランド102内にそれぞれ第一接合領域114、第二接合領域116を介して調節可能に閉じた第一ループ120と第二ループ122を形成することができる。調節可能に閉じたループ120と122は互いに連結して二重修復ループ104を形成し得る。調節可能に閉じたループ120と122は第一接合領域114及び第二接合領域116と略対向する箇所115(第一ループ120のループ端124、第二ループ122のループ端126等)において連結し得る。二つのループ、つまり調節可能に閉じたループ120と122で構成される二重修復ループ104は、一本のストランド、つまりフレキシブルストランド102のみを使用しながら、修復ループ104、つまりは組織修復部を補強し強度を与える。そして、構造体100を用いて断裂した組織を閉じるのにボタン等の固定具を必要としない。このように、フレキシブルストランド102はあらゆる固定具を欠くものである。調節可能な第一ループ120、第二ループ122はそれぞれ第一自由端110a、第二自由端110bを引っ張ることによって、張った状態になり、二重修復ループ104を小さくして、結び目や固定具を使用せずに組織の断裂部を閉じる。
【0034】
図13図18は、外科用構造体100を用いた例示的な組織修復法、例えば、断裂した股関節包を修復する方法を示す。まず、既知の糸通し器具(ニードル128等)を用いて、フレキシブルストランド102の第一自由端110aを第一接合領域114に糸通しして、調節可能に閉じた第一ループ120を形成し得る(図13を参照)。次に、ループ120に連結され得るパサー106を用いて、調節可能に閉じた第一ループ120を組織190の断裂部192に通し得る。パサー106は既知のパサーやシャトル器具、例えばワイヤ等であり得る。調節可能に閉じた第一ループ120は断裂部192にわたるように断裂部192に通され、つまり、そのループ端124が断裂部192の一方の側194に位置し、第一接合領域114が断裂部の他方の側196側に位置するようにする(図14を参照)。
【0035】
調節可能に閉じた第一ループ120が断裂部192に通されると、別のパサーや同じパサー106を用いて、フレキシブルストランド102の第二自由端110bを調節可能に閉じた第一ループ120のループ端124に通し得る。(図15を参照)。次いで、第二自由端110bをフレキシブルストランド102の第二接合領域116に糸通しして、調節可能に閉じた第二ループ122を形成して、調節可能に閉じた第一ループと例えばループ端124と126において連結するようにし得る。連結した調節可能に閉じた第一ループ120と第二ループ122は調節可能な二重修復ループ104を形成する(図16を参照)。
【0036】
二重修復ループ104を形成した後に、図17に示されるように、フレキシブルストランド102の第一自由端110aと第二自由端110bを引張り、調節可能に閉じた第一ループ120と第二ループ122の各々の外周を小さくすることによって、結び目や固定具を使用せずに、組織の断裂部が閉じるまで二重修復ループ104の外周を小さく又は短くし得る(図18を参照)。構造体100は自ずと締まるもの(self‐cinching)となり得るが、これは、フレキシブルストランド102の修復長さ部112が接合領域114と116を通り、ストランドの第一自由端110aと第二自由端110bによって構造体が張られ、修復部を固定し、断裂した組織を閉じたままにするからである。
【0037】
「側方」、「中位」、「遠位」、「近位」、「上位」、「下位」等の用語は当該分野で使用されている通りに使用されているものである。更に、これらの用語は、本願において説明目的で使用されているものであって、限定的なものではない。「概して」、「実質的に」、「略」等の用語は、曖昧な用語ではなく、当業者が解釈する通りに解釈されるものである。
【0038】
種々の例が例示されている特定の構成要素を有するものであるが、本開示の実施形態はこうした具体的な組み合わせに限定されるものではない。一つの例の構成要素や特徴を他の例の構成要素や特徴と組み合わせて使用することが可能である。
【0039】
当業者は上述の実施形態が例示的なものであって限定的なものではないことを理解するものである。つまり、本開示の修正も特許請求の範囲内に在るものである。従って、添付の特許請求の範囲を検討することにより真の範囲と要旨が決定されるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 外科用構造体
12 フレキシブルストランド
14 修復ループ
15 修復長さ部
16 自由端
18 ループ端
20 セルフロック器具
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18