(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】2ピース高強度ねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20240112BHJP
B21K 1/46 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16B35/00 H
F16B35/00 J
B21K1/46 Z
(21)【出願番号】P 2021516909
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019075992
(87)【国際公開番号】W WO2020064910
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】102018123690.5
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517209949
【氏名又は名称】カマックス ホールディング ゲーエムベーハー アンド コーポレイテッド ケージー
【氏名又は名称原語表記】KAMAX Holding GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ケルナー,マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルマイアー,シュテファン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第00156467(DE,C2)
【文献】実開昭59-121514(JP,U)
【文献】実開昭48-021057(JP,U)
【文献】実開昭57-075219(JP,U)
【文献】実開平02-118680(JP,U)
【文献】米国特許第03978758(US,A)
【文献】特開2018-179101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/02
F16B 35/00
F16B 23/00
B21K 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度ねじ(1)であって、
工具係合輪郭部(4)を有する頭部(2)と、
前記頭部(2)から遠ざかる方向を向く自由端(5)を有する胴部(3)と、
を備え、
ねじ山(7)を備えたねじ区画(6)は、前記胴部(3)に配置され、前記ねじ山(7)は、メートル系ISOねじ山、又は、インチ系ねじ山、として形成され、
前記頭部(2)と前記胴部(3)とは、実質的に別個の部品として形成され、
前記頭部(2)は、軸方向力伝達要素(9)、及び、トルク伝達要素(10)、を備え、半径方向内側に配置された、結合用凹部(8)を有し、
前記結合用凹部(8)は、少なくとも部分的に円錐形であり、
前記胴部(3)は、その外周の半径方向外側に配置され、且つ、軸方向力伝達対応要素(12)及びトルク伝達対応要素(13)を備える、結合用要素(11)を有し、
前記結合用要素(11)は、前記結合用凹部(8)に係合され、
前記軸方向力伝達要素(9)及び前記軸方向力伝達対応要素(12)は、前記胴部(3)に対する前記頭部(2)の、前記胴部(3)の自由端(5)から遠ざかる方向への軸方向並進運動が、阻止されるか又は阻止されるであろう、特に解放不可能に、ようになる方法で、圧入されて結合されるように、設計及び配置され、
前記トルク伝達要素(10)及び前記トルク伝達対応要素(13)は、前記胴部(3)に対する前記頭部(2)の、前記ねじ山(7)の締め付け方向への回転運動が、摩擦により阻止されるか又は摩擦により阻止されるであろう、ようになる方法で、結合されるように、設計及び配置されている、
上記高強度ねじ(1)。
【請求項2】
前記結合用凹部(8)は、階段状であり、且つ第1の内径(15)を備えた第1部分(14)及び第2の内径(17)を備えた第2部分(16)を有し、前記第1の内径(15)は前記第2の内径(17)よりも大きく、且つ
前記第2部分(16)は、前記第1部分(14)よりも前記胴部(3)の前記自由端(5)の近くに配置されている、請求項1に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項3】
前記第2部分(16)は、軸方向停止部の意味において前記軸方向力伝達要素(9)を形成する、請求項2に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項4】
前記結合用要素(11)は前記軸方向停止部に対応する軸方向対応停止部を形成し、その外径は、前記胴部(3)の外径よりも大きく且つ前記結合用凹部(8)の前記第2の内径(17)より大きい、請求項3に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項5】
前記第1部分(14)は、前記トルク伝達要素(10)を形成する、請求項2~4の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項6】
前記第2部分(16)は、前記トルク伝達要素(10)を形成する、請求項2~5の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項7】
前記トルク伝達要素(10)及び前記トルク伝達対応要素(13)は、圧入されて結合されるように、設計及び配置されている、請求項1~6の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項8】
前記トルク伝達要素(10)及び前記トルク伝達対応要素(13)は、前記胴部(3)に対する前記頭部(2)の、前記ねじ山(7)を緩める方向への回転運動が、また阻止されるようになる方法で、結合されるように、設計及び配置されている、請求項1~7の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項9】
前記トルク伝達要素(10)及び前記トルク伝達対応要素(13)は、それらがねじ(1)の最大締め付けトルクを決定し、且つ、最大締め付けトルクを超えた場合、前記胴部(3)に対する前記頭部(2)の、前記ねじ山(7)の締め付け方向への回転運動を、もはや妨げない、ようになる方法で、形成されている、請求項1~8の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項10】
前記胴部(3)は高強度鋼又は繊維複合材からなり、前記頭部(2)は、高強度鋼又は繊維複合材からなる、請求項1~
9の何れか1項に記載の高強度ねじ(1)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の前記高強度ねじ(1)を、頭部ブランク及び胴部ブランク(19)から機械的に製造するための成形方法であって、以下のステップ:
‐ ねじ(1)の頭部(2)が、半径方向内側に配置された結合用凹部(8)を有し、軸方向力伝達要素(9)とトルク伝達要素(10)とを備えて、製造されるようになる方法で、成形工具内において前記頭部ブランクを成形すること、
‐ 前記結合用凹部(8)を用いて、前記頭部(2)を胴部ブランク(19)に装着すること、
‐ 胴部(3)であって、その外周上の半径方向外側に配置され、軸方向力伝達対応要素(12)及びトルク伝達対応要素(13)を備える結合用要素(11)を有するものが生成される、ようになる方法で、成形工具内において前記胴部ブランク(19)の一部分を成形すること、
‐ 前記結合用要素(11)が前記結合用凹部(8)に圧入される、ようになる方法で、前記頭部(2)の並進移動によって前記頭部(2)と前記胴部(3)とを接合すること、
を包含する、
上記成形方法。
【請求項12】
以下のステップ:
‐ 前記装着ステップの前に、前記頭部ブランクを工具係合輪郭部(4)が作成されるように成形工具内において成形すること、及び/又は
前記接合ステップの後に、前記胴部(3)に対する前記頭部(2)の、前記胴部(3)の前記自由端(5)の方向への軸方向並進運動を阻止するように、前記頭部(2)を前記胴部(3)に固定すること、
により更に特徴づけられ、
前記成形はそれぞれの場合に冷間成形であり、及び/又は
前記胴部ブランク(19)の前記部分の成形は、並進移動パンチ(21)によって生じ、及び/又は
前記胴部ブランク(19)は、成形中、締め付け具(20)によって保持されている、
請求項11に記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具係合輪郭部を有する頭部と、上記頭部から遠ざかる方向を向く自由端を有する胴部とを備える高強度ねじに関する。ねじ山を有するねじ区画が上記胴部に配置され、上記ねじ山はメートル系ISOねじ山又はインチ系ねじ山として形成されている。
【0002】
メートル系ISOねじ山又はインチ系ねじ山を有するそのようなねじは、ナットの対応する雌ねじ又はねじ穴を有する構成品とねじ接続を作るために用いられ、木ねじやその他のセルフタッピング汎用ねじとは区別されるべきである。それらの高強度の故に、それらは、そのような強度を必要とする専門技術分野(例えば、自動車産業、航空機産業、機械工学)で特に使用され、職人部門、DIY部門、趣味部門とは区別されるべきである。
【背景技術】
【0003】
工具係合輪郭部を有する頭部と上記頭部から遠ざかる方向を向く自由端を有する胴部とを備えた高強度ねじは、欧州特許出願EP3 358 021A1から知られている。ISOメートル系ねじ山として設計されたねじ山を有するねじ区画が、上記胴部に配置されている。
【0004】
いくつかの個別の部品で構成されたねじは、中国特許出願CN 103 438 076 Aで知られている。これら部品の第1はねじの頭部である。これは、その頭部接触面から突き出ているところの、半径方向内側に配置された結合用要素を有している。結合用要素は、ほぼ星形の断面を有している。これら部品の第2は胴部である。これは、結合用要素に対応する結合用凹部を、頭部に面するその自由端面上に有する。結合用凹部もまた、半径方向内側に配置されている。頭部と胴部との接続のために、結合用要素が結合用凹部に挿入される。これら部品の第3は、別の胴部である。このようにして、様々な長さのねじが、頭部と様々な数の胴部とから組み立てられる。
【0005】
いくつかの個別の部品から成り同じように構成されたねじは、中国特許出願CN103 438 072 Aで知られている。この場合、結合用凹部は雌ねじを備える穴として形成され、結合用要素は雄ねじを備えるねじ区画として形成され、それは縮小された外径を有する胴部の領域に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、柔軟且つ経済的に製造することができる高強度ねじを提供するという目的に基づく。
【0007】
本発明の目的は、独立特許請求項の特徴を備えている本発明に従って達成される。更に好ましい本発明による実施形態は、従属特許請求項において見出されうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、工具係合輪郭を有する頭部と頭部から遠ざかる方向を向く自由端を有する胴部とを備えた高強度ねじに関する。ねじ山を有するねじ区画が、上記胴部に配置され、そのねじ山は、メートル系ISOねじ山又はインチ系ねじ山として形成されている。上部頭部及び上記胴部は、実質的に別々の部品として形成されている。上記頭部は、軸方向力伝達要素及びトルク伝達要素を備えている半径方向内側に配置された結合用凹部を有する。上記胴部は、その外周の半径方向外側に配置され、軸方向の力伝達対応要素及びトルク伝達対応要素を備える結合用要素を有している。言い換えれば、上記結合用要素は、上記胴部を半径方向外側に区切る上記胴部の一部分を形成しうる。上記結合用要素は、上記結合用凹部と係合する。換言すれば、上記結合用要素は、上記結合用凹部内に置かれた上記胴部の上記部分でありうる。上記頭部が上記胴部に対して最終的な位置又は意図された位置をとった状態、特に組み立てられた状態は決定的である。上記軸方向力伝達要素及び上記軸方向力伝達対応要素は、上記胴部に対する上記頭部の、上記胴部の自由端から遠ざかる方向への軸方向並進運動が、阻止される方法で、圧入されて結合されるように、設計及び配置されている。上記トルク伝達要素と上記トルク伝達対応要素は、上記胴部に対する上記頭部の、ねじ山の締付け方向への回転運動が、阻止される方法で、結合されるように設計及び配置されている。
【0009】
本発明は更に、高強度ねじ(特に上記及び/又は下記載のねじ)を頭部ブランク及び胴部ブランクから機械的に製造するための成形方法に関しており、以下のステップ:
- 軸方向力伝達要素とトルク伝達要素とを備え半径方向内側に配置された結合用凹部を有するねじの頭部が製造されるように、上記頭部ブランクを成形工具内において成形すること、
- 上記頭部を上記結合用凹部を用いて上記胴部ブランクに装着すること、
- 胴部であって、その外周の半径方向外側に配置され且つ軸力伝達対応要素とトルク伝達対応要素とを備える結合用要素を有するものが製造されるように、上記胴部ブランクの一部分を成形工具内において成形すること、
- 上記結合用要素が上記結合用凹部に係合されるように、上記頭部の並進移動によって頭部と胴部とを接合すること、
を包含している。
これらの方法のステップは、指定された順序で実行される。ただし、上記頭部を上記胴部ブランクに装着するステップは、上記結合用要素を作成するための上記胴部ブランクを成形するステップの後に実行されうる。更なるステップが、上記ステップの間で実行されることも可能である。
定義
【0010】
高強度ねじ:本出願において、高強度ねじとは、少なくとも800N/mm2の引張強度Rm(又はRm)を有するねじであると理解される。一般的な高強度ねじは、強度クラス8.8、10.9、又は12.9に属する。しかし、本発明による高強度ねじは、引張強度Rmが少なくとも1,400N/mm2の超高強度ねじであってもよい。したがって、本発明による「高強度」ねじは、少なくとも高強度ねじであるが、超高強度ねじであってもよい。
【0011】
工具係合輪郭部:頭部の工具係合輪郭部とは、ねじの頭部に存在する輪郭部であると理解され、その輪郭部に作動工具が係合してこのねじを作動させる。輪郭部は、複数の機能面によって形成され、それら機能面は通常、隅(corner)又は半径を介して互いに接続している。本発明の分野において、工具係合輪郭部は、しばしば「駆動機能部」と呼ばれる。
【0012】
工具係合外側輪郭部:工具係合外側輪郭部とは、ねじの頭部の外側に放射状に配置された輪郭部であり、それに作動工具が係合されてこのねじを作動させる。輪郭部は、複数の機能面によって形成され、それらは通常、隅又は半径を介して互いに隣接している。本発明の分野において、工具係合外側輪郭部は、しばしば「外部駆動機能部」と呼ばれる。
【0013】
工具係合内側輪郭部:工具係合内側輪郭部とは、ねじの頭部の内側に放射状に配置された輪郭部であり、それに作動工具が係合されてこのねじを作動させる。輪郭部は、複数の機能面によって形成され、それらは通常、隅又は半径を介して相互に接続している。工具係合内側輪郭部は、ねじの頭部の中央の凹部を半径方向に区切っている。本発明の分野において、工具係合内側輪郭部は、しばしば「内部駆動機能部」と呼ばれる。
【0014】
ポリゴン:本出願において、ポリゴン(polygon:多角形)とは、ねじの頭部の工具係合外側輪郭部及びねじの胴部のトルク伝達対応要素の構造(「外側ポリゴン」)、又は、ねじの頭部の工具係合内側輪郭部及びねじの頭部のトルク伝達要素の構造(「内側ポリゴン」)であると理解される。この場合、ポリゴンの複数のサブユニットであるほぼ直線状の複数の機能面は、隅を介してサブユニット内で120°の角度で互いに隣接している。
【0015】
マルチトゥース:本出願において、マルチトゥース(multi-tooth:多数歯形)とは、ねじの頭部の工具係合外側輪郭部及びねじの胴部のトルク伝達対応要素の構成(「外側マルチトゥース」)、又は、ねじの頭部の工具係合内側輪郭部及びねじの頭部のトルク伝達要素の構成(「内側マルチトゥース」)であると理解される。この場合、マルチトゥースの複数のサブユニットのほぼ直線状の複数の機能面は、隅を介してサブユニット内で90°の角度で互いに隣接している。
【0016】
マルチラウンド:本出願において、マルチラウンド(multi-round:丸みを帯びた多角形)とは、ねじの頭部の工具係合外側輪郭部及びねじの胴部のトルク伝達対応要素の構造(「外側マルチラウンド」、又は、ねじの頭部の内側輪郭部及びねじの頭部のトルク伝達要素の構造(「内側マルチラウンド」)であると理解されており、この場合、丸みを帯びた複数の機能面は、丸い隅を介し相互に接続されている。
【0017】
スター:本出願において、スター(star:星形)とは、ねじの胴部のトルク伝達対応要素又はねじの頭部のトルク伝達要素の構造であると理解されており。この場合、スターの複数のサブユニットのほぼ直線的な複数の機能面は、隅を介してサブユニット内で60°の角度で互いに隣接している。
【0018】
形状タイプ:本出願において、形状タイプとは、工具係合輪郭部、トルク伝達要素、及びトルク伝達対応要素の基礎となる幾何学的形状であると理解されている。典型的な形状タイプは、ポリゴン、マルチトゥース、マルチラウンドである。外側輪郭部と内側輪郭部とは区別されない。これは、例えば、外側ポリゴンと内側ポリゴンとが同じ第1の形状タイプに属し、外側マルチトゥースと内側マルチトゥースとが同じ第2の形状タイプに属し、そして外側マルチラウンドと内側マルチラウンドとは、同じ第3の形状タイプに属することを意味している。
【0019】
実質的に分離された部品:ねじの頭部と胴部は、実質的に分離された部品として形成される。これは、本出願において、それらが非粘着性の、非一体性の、別個の部品として製造されていることを意味していると理解される。しかし、ねじの完成位置においては、頭部と胴部とは一緒に結合されている。したがって、この接続は、別々の製造後にのみ実現されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
メートル系ISOねじ山又はインチ系ねじ山を備えた新しい高強度ねじは、頭部と胴部とを備えた少なくとも2ピースねじとして設計され、特定の方法で接合される。接続は、自由に緩めることができるねじ山又は別のタイプの接続によっては行われない。その代わりに、接続は、頭部と胴部とが本質的に破壊的にのみ互いに分離できるようになる方法で行われる。ねじは、他の部品を備えてもよい。
【0021】
ねじの頭部と胴部との間の新しいタイプの接続で、ねじ接続を締める場合に、とりわけ以下の2つの技術的特徴が遵守されなければならない。
【0022】
ねじ接続で所望のロッキング効果を実現するためには、十分に大きな軸方向の予負荷力が、ねじの頭部を介して、より正確にはねじの頭部の頭部接触面を介して加えられる必要がある(「軸方向力伝達」)。この予負荷力を実現するには、頭部と胴部とは、ねじの締め付け方向に一緒にねじ込まれる必要がある。このために必要なトルクは、頭部の工具係合輪郭部を介して作動工具によって加えられ且つ胴部に伝達される(「トルク伝達」)。しかし、頭部と胴部とは実質的に分離されるように設計されているので、このトルク伝達では、胴部に対する頭部の、胴部の自由端から遠ざかる方向への移動が、阻止されることが必要である。
【0023】
新しい2ピース高強度ねじは、軸方向力の伝達とトルク伝達との2つの機能を実現するために、結合用凹部を頭部に、且つ対応する結合用要素を胴部に有する。次に、結合用凹部は、軸方向力伝達要素及びトルク伝達要素を有する。胴部の結合用要素は、対応する軸方向力伝達対応要素及びトルク伝達対応要素を有する。軸方向力伝達要素と軸方向力伝達対応要素とは、必要な予負荷力を達成できるように協働する。したがって、軸方向力伝達要素と軸方向力伝達対応要素が互いに係合されるときに、ボルトの頭部の、胴部の自由端から遠ざかる方向への移動が阻止される。トルク伝達要素とトルク伝達対応要素は、所望のトルクが頭部から胴部に伝達されその結果ねじが操作されうるように協働する。このことは、少なくともねじの締め付け方向に当てはまる。
【0024】
ねじは、比較的細く且つ長いものでありうる。長さ対厚みの比(L/T)が大きなそのようなねじは、従来技術では比較的少数のサイクルでのみ製造されうる。この少ないサイクル数は、多段プレスにおいて製造されるべきねじが多段プレスの各段階において胴部の全長にわたって排出され且つ押し込められる必要があるという事実に起因している。さらに、ねじの長さが長くなるにつれてねじと成形工具との座屈剛性が低下するので、このようなねじの製造における品質上の問題もある。
【0025】
頭部と胴部からなる新しい分離ねじにより、ねじの胴部が比較的細くて長い場合でも、高強度のねじを経済的かつ高品質に製造できるようになった。本ねじの新しい設計は、他のねじの形状にも適用可能である。
【0026】
ねじの頭部は別に製造されるので、頭部の製造において胴部の長さが長いことによる悪影響はない。一方、結合用要素を作成するための胴部の形成は、1ステップの処理で可能であり、弾塑性変形されるべき材料もはるかに少なくて済む。したがって、実行されるべき成形に対する、従来技術のサイクル数が少なく且つ座屈剛性が低すぎるという問題は存在しない。ねじの長さは、プレスの設置スペースによって制限されない。サイクル数は、ねじの長さに依存しない。高強度ねじは、事前に硬化された材料を用いることにより製造されうる。これは、その後の焼入れと焼き戻しを不要にし、さらに製造コストを削減する。新しい2ピースねじは、標準化に適しており、セットアップ時間を短縮できる。
【0027】
結合用凹部は階段状であり得、第1の内径を有する第1部分と、第2の内径を有する第2部分とを有しうる。有利には、第1部分、及び/又は、第2部分は、円筒形又は円錐形の側面によって形成されており、特に組み立てられた状態において胴部の伸長方向に関して回転対称である。有利には、階段状領域は、第1部分と第2部分との間に提供される。第1の内径は、第2の内径よりも大きい。第2部分は、第1部分よりも胴部の自由端の近くにある。これは、第2部分が、軸方向停止部の意味で軸方向力伝達要素を形成することを可能にするか、又はそれに隣接して配置されることを可能にする。有利には、軸方向力伝達要素は、階段状領域によって少なくとも部分的に、好ましくは完全に形成される。この軸方向停止部を超えて、胴部の自由端の方向への頭部の移動は不可能であるか、この停止部によって確実に阻止される。しかし頭部は、反対方向に停止部から遠ざかるように、移動可能である。しかし、そのような動きはまた、特に第1部分及び/又は第2部分の特に胴部の部分との押圧適合部によって阻止されうる。代わりに又は更に好ましくは、これはまた、刻み目(undercut)、超過寸法(oversize)、コーキング(caulking)、又はその他の弾塑性変形によって実現されうる。しかし、そのような個別の固定が実現されない可能性もありるが、この固定はねじ区画によって実現される。
【0028】
結合用要素は、有利には、少なくとも第1区画及び第2区画を含む。上記第1区画、及び/又は、第2区画は、有利には、それぞれ上記結合用要素を半径方向外側に区切り又は制限する外側側面を有している。第1区画、及び/又は、第2区画は、有利に、胴部の伸長方向に関して回転対称に形成されている。言い換えれば、第1区画は、例えば、胴部が延びる方向の周りで円錐形、円筒形、又は樽形でありうる。これは、特に簡単で費用効果の高い生産をもたらす。胴部の伸長方向は、特に、胴部が伸長している方向、及び/又は、胴部の長さが測定される方向である。便宜上、第1区画の外径は、第2区画の外径よりも大きい。第1又は第2区画の平均外径が、この寸法取りにおいて決定的である。第1及び第2区画のこれら異なる外径は、特に省スペースな方法で軸方向力伝達対応要素を作成することを可能にする。
【0029】
有利には、第1区画は、結合用凹部の第1部分に接触し、及び/又は、第2区画は、結合用凹部の第2部分に接触する。便宜上、第1区画は、結合用凹部の第1部分と押圧適合部を形成し、及び/又は、第2区画は、結合用凹部の第2部分と押圧適合部を形成する。押圧適合部は、胴部と頭部との間の、即ち、第1部分と結合用凹部の第1区画との間の、及び/又は、第2区画と結合用凹部の第2部分との間の、摩擦トルク伝達を提供しうる。換言すれば、トルク伝達対応要素は、結合用要素の第1部分、及び/又は、第2部分によって形成され得、トルク伝達は、1又はこれら複数の押圧適合部を介した摩擦係合によって、特に排他的にもたらされる。このタイプのトルク伝達は、特に費用効果が高い。なぜなら、形状適合手段が、第1区画に且つ結合用凹部の第1部分に、及び/又は、第2区画に且つ結合用凹部の第2部分に、作成される必要がないからである。代わりに好ましくは、トルク伝達の一部分はまた形状適合手段によってもたらされ、そしてトルクの別の部分は摩擦接続によってもたらされうる。
【0030】
有利な実施形態において、結合用要素の第1区画と結合用凹部の第1部分との間の押圧適合部は、この押圧適合部が胴部の自由端に向かう方向に増大するものである。言い換えれば、これは、押圧適合部によって結合用要素の第1区画の表面と結合用凹部の第1部分の表面とに起こされたこれら圧力の大きさが、胴部の自由端に向かって増加するようなものであることを意味しうる。このようにして、特に強い押圧適合部が実現され得て、それはまた高トルクを確実に伝達することができる。
【0031】
代わりの又は追加の好ましい実施形態において、結合用要素の第2区画と結合用凹部の第2部分との間の押圧適合部は、この押圧適合部が胴部の自由端に向かう方向に減少するものである。言い換えれば、これは、押圧適合部によって結合用要素の第2区画の表面と結合用凹部の第2部分の表面とへ引き起こされた圧力の大きさが、胴部の自由端に向かって減少するようなものであることを意味しうる。これにより、胴部の自由端に向かう結合用要素の第2区画の接触部分の端部で、応力ピークが発生しないことが実現されうる。例えば、これは、結合用要素の第2区画が円錐形であり、この円錐の直径が胴部の自由端に向かって減少することによって実現できる。このようにして、特に強力な押圧適合部が実現され得て、それはまた高トルクを確実に伝達することができる。
【0032】
有利には、中間区画が結合用要素の第1区画と第2区画との間にあり、ここで有利には、上記中間区画は、特に完全に軸方向力伝達対応要素を形成する。このようにして、特にコンパクトな胴部が実現されうる。有利には、この中間区画は部分的に円錐形であり、そのため特に簡単な製造が可能になる。
【0033】
便宜的に、胴部の第1区画は、中間区画の第1の遷移領域によって、胴部の自由端に向かう方向において境界付けられている。言い換えれば、これは、中間部分が第1区画の最も近くに第1の遷移領域を有することを意味しうる。例えば、この第1の遷移領域は、面取りされた面(chamfer)又は階段である。しかし、有利には、第1の遷移領域は、丸めによって形成され、前記丸めは、第1の丸め半径を有する。この第1の丸め半径の第1区画の外径に対する比は、有利には、0.01~0.4の範囲、好ましくは0.02~0.25の範囲、より好ましくは0.04~0.15の範囲である。0.01~0.4の比率は、中間区画の特に簡単な製造をもたらす。一方、0.02~0.25の比率で、特に低い刻み目(notch:ノッチ)効果が達成され得、その結果ねじの強度が高めるられうる。0.04~0.15の範囲の比率で、出願人は驚くべきことに、ねじの振動抵抗(特に脈動荷重下での)とねじの静的強度との間で特に有利な比が生じることを発見した。
【0034】
代替的又は追加的に好ましくは、胴部の第2区画は、中間区画の第2の遷移領域によって、胴部の自由端に向かう方向と反対方向に境界付けられる。言い換えれば、これは、中間区画が第2区画の最も近くに第2の遷移領域を有することを意味しうる。例えば、この第2の遷移領域は、面取り面(chamfer)又は階段である。しかし、有利には、第2の遷移領域は、丸めによって形成され、この丸めは第2の丸め半径を有している。この第2の丸め半径と第2区画の外径との比は、有利には0.01~0.4の範囲、好ましくは0.02~0.25の範囲、より好ましくは0.04~0.15の範囲である。0.01~0.4の比率は、中間区画の特に簡単な製造をもたらす。一方、0.02~0.25の比率で、特に低い刻み目効果を達成することができ、その結果、ねじの強度を高めることができる。本出願人は、0.04から0.15の範囲の比率で、驚くべきことに、ねじの振動抵抗(特に脈動荷重下での)とねじの静的強度との間に特に有利な比率が生じることを発見した。
【0035】
第2の丸め半径の第1の丸め半径に対する比が、0.8~1.8の範囲にある場合に、これらの丸めを特に容易に生成することが可能になるので、これは特に便利である。第2の丸め半径の第1の丸め半径に対する比が1.01~1.6の範囲にある場合、特に最適な刻み目効果比が達成されうる。
【0036】
結合用要素は、軸方向停止部に対応する軸方向対応停止部を形成することができ、その外径は、胴部の外径よりも大きく、結合用凹部の第2の内径よりも大きい。この対応停止部は、有利には円錐区画を有しうる。停止部と対応停止部とのこの対は、頭部の、胴部の自由端の方向への軸方向並進運動を阻止するが、これは、予負荷力を加えるためには阻止されるべきものである。
【0037】
結合用凹部の第1部分は、トルク伝達要素を形成しうる。しかし、第2部分がトルク伝達要素を形成することも可能である。両方の部分がトルク伝達要素を形成する可能性もある。これらの2つの部分は、互いに直接隣接している必要はない。他の部分が間に配置されうるが、それは他の機能を実行するか又は全く何もしない。
【0038】
トルク伝達要素及びトルク伝達対応要素は、圧入されて結合されるように設計され配置されうる。そのような結合は、特に、トルク伝達要素及びトルク伝達対応要素がポリゴン、マルチトゥース、マルチラウンド、又はスターの形状タイプに属するような方法で実現されうる。ただし、所望の結合を提供する別の幾何学的構造も可能である。一例としては節(knurl)である。ただし、別のタイプのトルク伝達要素を選択することも可能である。1つの可能性は摩擦接続部である。これは、特に負の余裕度適合部(negative-allowance fit)という意味において実現されうる。
【0039】
トルク伝達要素及びトルク伝達対応要素は、胴部に対する頭部の、ねじ山の回転を緩める方向への回転運動が、また阻止されるようになる方法で、結合するように設計及び配置されうる。これは、ねじが制限なしに両回転方向に平等に作動させられうるという通常の場合を表す。
【0040】
トルク伝達要素及びトルク対応伝達要素は各々、円周方向に対称的に形成されうる。この対称性は、トルク伝達要素とトルク対応伝達要素とが、―ねじ接続の緩みが一方向の回転で起こり、且つねじ接続の締め付けがもう一方の回転で起こるという事実は別として―回転方向に関係なく同じように動作するような方法で形成されることを意味すると理解されるべきである。
【0041】
トルク伝達要素及びトルク伝達対応要素はまた、円周方向に非対称に形成されうる。このようにして、回転方向に応じて異なる相互作用が実現されうる。例えば、非対称性は、胴部に対する頭部の、ねじ山を緩める方向への回転運動が、阻止されないように、設計されうる。これは、許可されていない第三者によって又は少なくとも追加の手段がない限り、緩めることができない安全なネジ接続部を実現する。
【0042】
トルク伝達要素及びトルク伝達対応要素は、それらがねじの最大締め付けトルクを決定するように、そして最大締め付けトルクを超えた場合には、胴部に対する頭部の、ねじを締め付ける方向への回転運動を妨げないように形成されうる。このようにして、トルク安全機能がねじ自体によって提供される。これは、最大締め付けトルクを超えるネジ接続部の締め付けを阻止する。
【0043】
ねじの胴部は、高強度鋼又は繊維複合材(例えばCFRP)で構成されうる。ねじの頭部も、高強度鋼又は繊維複合材(例えばCFRP)で製作されうる。ねじの2部品構造の故に、多くの異なる材料の組み合わせが、高強度ねじという意味における強度要件が満たされている限り、原則として考えられる。材料の選択はまた、頭部と胴部とに特定の導電性又は絶縁性の特性を割り当てることによって影響を受けうる。この目的のために、例えば金属(特に鋼)はまた、絶縁プラスチックシースで囲まれうる。例えば、ねじの頭部は導電性であり得、且つねじの胴部は非導電性でありうる。反対の構成も可能である。
【0044】
この新しい方法は、上で記載された高強度ねじを製造するためのものである。上記のステップのいずれにおいても、ねじは、上記の特徴のうちの1つ以上を更に有しうる。
【0045】
結合用凹部を使用して頭部を胴部ブランクに装着するステップの前に、頭部ブランクは、工具係合輪郭部が生成されるように成形工具内で成形されうる。工具係合輪郭部は、工具係合外側輪郭部又は工具係合内側輪郭部でありうる。これは、形状タイプであるポリゴン、マルチトゥース、又はマルチラウンドでありうる。
【0046】
頭部を胴部へ接合するステップの後に、胴部に対する頭部は、胴部の自由端の方向への頭部の軸方向並進運動を阻止するために、胴部へ固定されうる。この固定は、例えば、刻み目(undercut)、超過寸法(oversize)、コーキング(caulking)、又はその他の弾塑性変形によって為されうる。ただし、そのような個別の固定が実現されない可能性もあるが、この固定がねじ区画によって実現される可能性もある。
【0047】
高強度ねじの機械的非切削製造のための成形プロセスは、特に冷間成形プロセスである。このプロセスは、成形プレス機(特に多段プレス機)の成形工具によって実行される。胴部ブランクは、その軸端部領域の成形中、締付け具によって成形プレス機内に保持されうる。胴部ブランクの軸方端部領域の成形は、並進移動パンチを用いて実行されうる。
【0048】
ねじの高強度性を実現するために、製造中に熱処理が施されうる。この熱処理は、特にベイナイト組織を生成するためのベイナイト化(中間段階の焼入れ及び焼き戻し)でありうる。
【0049】
ねじ山区画を作成するための成形は、特に圧延又はフライス加工でありうる。特にそれは冷間成形でありうる。
【0050】
高強度ねじを製造するために用いられる出発材料は、一般に「ワイヤ」と呼ばれる。新しい高強度ねじに用いられるこのワイヤは、冷間加工可能な焼き戻しされていない鋼から成り得、約0.2%~0.6%又は約0.2%~0.5%の炭素含有量を有しうる。この鋼は、合金含有量、特にCr、Mo、Mn、Ni、V、Nb、又はTiを含むことが可能で、特に合計で約1.1%を超えうる。
【0051】
新しい高強度ねじはベイナイト組織を持つことができ、これは特に少なくとも部分的にベイナイト化によって製造されている。ベイナイト組織は、非常に高い引張強度をもたらし、同様に非常に高い延性も備えている。この高い延性又は靭性は、ベイナイト組織をマルテンサイト組織(従来技術のそれは、硬化とそれに続く焼き戻しによる既知の方法で製造される)と実質的に区別する。段間焼入れ及び焼戻しの場合、硬化はその代わりに、ベイナイト段の等温微細構造変態を介するオーステナイト相からの急速な冷却によって達成される。このプロセスにおいて、部品(特にねじ)は、オーステナイトからベイナイトへの組織変化が断面全体にわたって完了するまで、等温温度で塩浴に残る。マルテンサイト硬化に必要な焼戻し工程は好ましくは省略できる。これはまた、歪みを硬化させる傾向を減少させる。
【0052】
本発明の有利な別の実施形態は、本願の特許請求の範囲、説明及び図面からもたらされる。説明に記載されている特徴の利点及びいくつかの特徴の組み合わせの利点は、単なる例示であり、本発明による実施形態によって達成されなければならない利点を必ずしも持たずに、代替の若しくは累積の効果を有しうる。この添付の請求項の主題を変更することなく、以下のことが、元の出願書類及び特許の開示内容に関して適用される。即ち、更なる特徴は、図面から取得されるもの―特に示された形状及びいくつかの構成要素の相互の相対的な寸法、並びにそれらの相対的な配置及び作動する接続―である。本発明の異なる実施形態の特徴又は異なる特許請求項の特徴の組み合わせは、また特許請求項の選択された背景関係から逸脱して可能であり、且つこれによって示唆される。このことはまた、個別の図面に示され又はその説明に記載されているそれら特徴に当てはまる。これらの特徴はまた、異なる請求項の特徴と組み合わせられうる。同様に、特許請求項に挙げられた特徴は、本発明の別の実施形態については省略されてもよい。
【0053】
特許請求項及び説明に記載された特徴は、それらの数に関して、必要とされる副詞「少なくとも」の明示的な使用がなくても、正確にこの数又は記載された数よりもより多い数が存在しているように、理解されるべきである。したがって、例えば1つのねじ山について言及される場合、これは、正確に1つのねじ山、2つのねじ山、又はそれ以上の数のねじ山が存在することを意味すると理解される。これらの特性は、別の特性によって補完されるてもよく、個々の製品が構成される唯一の特性であってもよい。
【0054】
特許請求項に含まれる参照記号は、特許請求項によって保護される対象の範囲を制限するものではない。それらは、特許請求項を理解しやすくするという目的を単に果たすだけである。
【0055】
以下において、本発明は、図面に示された好ましい実施形態を参照して、更に説明し記載される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】新しい高強度ねじの第1の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1によるねじの一部分の拡大斜視図である。
【
図3】
図2によるねじの部分的に切り取られた斜視図である。
【
図5】新しいねじの第2の例示的な実施形態の断面図である。
【
図6】新しいねじの第3の例示的な実施形態の断面図である。
【
図7】新しいねじの更なる別の実施形態の斜視図である。
【
図8】、
図7によるねじの部分的に切り取られた斜視図である。
【
図9】新しいねじの胴部の結合用要素の第1の実施形態の一部分の斜視図でる。
【
図10】新しいねじの胴部の結合用要素の第2の実施形態の一部分の斜視図でる。
【
図11】新しいねじの胴部の結合用要素の第3の実施形態の一部分の斜視図である。
【
図12】新しいねじの胴部の結合用要素の第4の実施形態の一部分の斜視図である。
【
図13】新しいねじの胴部の結合用要素の第5の実施形態の一部分の斜視図である。
【
図14】新しいねじの胴部の結合用要素の第6の実施形態の一部分の斜視図である。
【
図15】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第1の例示的な実施形態の図である。
【
図16】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第2の例示的な実施形態の図である。
【
図17】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第3の例示的な実施形態の図である。
【
図18】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第4の例示的な実施形態の図である。
【
図19】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第5の例示的な実施形態の図である。
【
図20】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の第6の例示的な実施形態の図である。
【
図21】新しいねじの更なる別の例示的な実施形態の部分的に切り取られた斜視図である。
【
図23】新しいねじの更なる別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図24】
図23によるねじの部分的に切り取られた斜視図である。
【
図25】結合用凹部を備えた新しいねじの頭部の別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図28】
図25~27による頭部に所属する、新しいねじの胴部の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図30A】新しいねじを製造するための新しい方法の例示的な実施形態の第1ステップを示す。
【0057】
図の説明
図1~4は、新しい高強度ねじ1の第1の例示的な実施形態の様々な図面を示す。ねじ1は、少なくとも800N/mm
2の引張強度を有する高強度ねじ1、特に、少なくとも1400N/mm
2の引張強度を有する超高強度ねじ1である。同じことが、ねじ1の他の実施形態にも当てはまる。
【0058】
ねじ1は、頭部2及び胴部3を有する。頭部2及び胴部3は、最初に別々に製造され且つその後にのみ一緒に結合されるところの別個の構成要素として設計されている。
【0059】
頭部2は、工具係合輪郭部4を有し、上記工具係合輪郭部4は、ねじ1により為されたねじ接続を締めたり緩めたりするという意味において上記頭部に作動するために用いられる。この場合、これは工具係合外側輪郭部である。しかし、これは代わりに工具係合内側輪郭部であってもよい。両方のタイプの輪郭部の組み合わせも可能である。示されている例において、工具係合輪郭部の幾何形状のタイプは六角形である。しかし、別の幾何形状のタイプも可能である。
【0060】
胴部3は、頭部2から遠ざかる方向を向く自由端5を有する。ねじ山7を備えたねじ区画6は、胴部3上に配置されている。この場合、それは、自由端5の領域に配置されている。しかし、それは代替的又は追加的に胴部3の別の点に配置されることもできる。示された例において、ねじ山7はメートル系ISOねじである。しかし、インチ系ねじの場合もありうる。
【0061】
ねじ1の頭部2及び胴部3は、実質的に別個の部品として設計されている。この目的のために、頭部2は、軸方向力伝達要素9及びトルク伝達要素10を備えた半径方向内側結合用凹部8を有している。胴部3は、軸方向力伝達対応要素12及びトルク伝達対応要素13を備えた、上記胴部3の外周の半径方向外側に配置された対応する結合用要素11を有している。上記結合用要素11は、頭部2と胴部3との間の接続を確立するように、上記結合用凹部8に係合される。それにより、トルク伝達対応要素13は、形状適合手段(例えば、ポリゴン、マルチトゥース、又はマルチラウンド)を含みうる。あるいは、トルク伝達対応要素はまた、摩擦係合トルク伝達を達成するために、トルク伝達要素との押圧適合部を形成することによって形成されうる。
【0062】
軸方向力伝達要素9及び軸方向力伝達対応要素12は、胴部3に対する頭部2の、胴部3の自由端5から遠ざかる方向への軸方向並進運動を、阻止するように、圧入されて結合され、且つ、配置されている。上記トルク伝達要素10及び上記トルク伝達対応要素13は、胴部3に対する頭部2の、ねじ7の締め付け方向への回転運動が、阻止されるようになる方法で、結合されるように、設計され配置されている。この場合、この結合は、形状適合方式で行われる。しかし、トルク伝達の別のタイプ-例えば力の伝達又は摩擦による係合-も可能である。
【0063】
上記結合用凹部8は、階段状であり、且つ第1の内径15を有する第1部分14と第2の内径17を有する第2部分16とを有している。第1の内径15は第2の内径17よりも大きい。ここで、第2部分16は、第1部分14よりも胴部3の自由端により近く配置されている。このようにして、第2部分16は、軸方向停止部の意味において軸方向伝達要素9を形成しうる。しかし、
図4に示された状態において、軸方向伝達要素9は、軸方向力伝達対応要素12と接触する階段状領域によって形成され、軸方向力伝達対応要素12は、結合用要素の第1区画14aと第2区画16aとの間に位置する中間区画によって形成されている。第1部分14は、結合用要素11の第1区画14aに接触し、第2部分16は、結合用要素11の第2区画16aに接触している。
【0064】
結合用要素11は、上記停止部に対応する軸方向対応停止部を形成する。その外径は、胴部3の外径よりも大きく、且つ結合用凹部8の第2の内径17よりも大きい。
【0065】
第1部分14は、トルク伝達要素10を形成するが、トルク伝達要素10はまた、追加的又は代替的に、第2部分17又は別の部分によって形成されうる。
【0066】
この場合、トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、形状タイプのポリゴン、特に六角形に属する。しかし、別の形状タイプも可能である。
【0067】
トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、胴部3に対する頭部2の、ねじ7の緩み方向への回転運動もまた阻止される仕方において、結合するように設計及び配置されている。この場合、トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、それぞれ円周方向に対称に設計されている。その結果、トルク伝達は、回転方向に関係なく同じように行われる。しかし、トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、それぞれ円周方向に非対称であることも可能である。このことは、
図25~29を参照して以下でより詳細に説明される。
【0068】
新しいねじ1の更なる実施形態についての以下の説明において、不必要な繰り返しを避けるために、
図1~4によるねじ1の第1の例示的な実施形態に関して説明された全てのことが繰り返されるわけではない。参照は、実施形態間のそれぞれの違いに対してなされない限り、これらの説明全体について為される。
【0069】
図5は、新しいねじ1の第2の例示的な実施形態の、
図4に対応している図を示す。結合用凹部8及び結合用要素11は、ここでは異なるように設計されている。トルク伝達要素10は、第1部分14ではなく、第2部分16に配置されている。こうして、トルク伝達は、胴部3の自由端5の方へ向いている、頭部2の端部の部分で行われる。
【0070】
新しいねじ1の第3の例示的な実施形態が
図6に示されている。ここで頭部2はまた、軸方向に長い襟部18を有しうることが分かる。この場合、トルク伝達の大部分は、頭部2の襟部18の領域において行われる。
【0071】
図7及び
図8は、新しいねじ1の更に別の例示的な実施形態の図を示している。この場合、それは2つのねじ区画6を有するねじ1である。頭部2は、これら2つのねじ区画6の間に配置される。結合用要素11は、上記のねじ1の第1の実施形態と同じ方法で形成される。
【0072】
図9~14は、胴部3の結合用要素11の設計の様々な例を示している。
図9において、トルク伝達対応要素13は、六角形として設計されている。
図10において、トルク伝達対応要素13は、12個の機能面を備えた別の構造として設計されている。
図11において、トルク伝達対応要素13は、12個のエッジとして設計されている。
図12において、トルク伝達対応要素13は、12個の歯形として設計されている。
図13において、トルク伝達対応要素13は、12個の先端点を持つ星形として設計されている。
図14において、トルク伝達対応要素13は、六角形として設計されている。
【0073】
図15~20は、新しいねじ1の頭部2の様々な実施形態を示している。
図15において、頭部2の結合用凹部8のトルク伝達要素10は、六角形である。
図16においては、12個の先端点を持つ星形である。
図17においては、12個の歯形である。
図18においては、それは12個のエッジである。
図19は、12個の機能面を備えた別の構造を示している。
図20は、丸みを帯びた六角形(six-round)を示している。
【0074】
図21及び22において、新しいねじ1の例示的な実施形態が示されており、そこではトルク伝達は、形状適合部によってではなく、力適合部によって実現される。こうして、結合用要素11は、結合用凹部8に比べて或る過大な寸法を有し、そして負の許容部適合部を実現するという意味で結合用凹部8内に導入される。示された例において、この押圧適合部は、第1部分14と第1区画14aとの間、及び第2部分16と第2区画16aとの間の両方に存在し、その結果、トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、これらの若しくはこの押圧適合部に関与する表面、又は対応する表面を形成する表面によってそれぞれ形成される。
【0075】
図23及び24は、新しいねじ1の別の例示的な実施形態を示す。この場合、ねじ1の工具係合輪郭4は、工具係合内側輪郭部として設計されている。
【0076】
図25~29は、新しいねじ1の、並びに頭部2及び胴部3の、更なる例示的な実施形態の様々な図を示す。この場合、トルク伝達要素10及びトルク伝達対応要素13は、円周方向において非対称にそれぞれ形成されている。この非対称性は、トルクがねじ山7の締付け方向に確実に伝達されるように選択される。一方、そのようなトルク伝達は、トルク伝達要素10の傾斜の故に、ねじ山7の緩む方向には伝達されない。
【0077】
図30A~30Eは、上記の高強度ねじ1の機械的製造のための例示的な成形方法の簡略化した表示を示す。
図30Aは、胴部ブランク(19)を示す。
図30Bにおいて、頭部2は、その結合用凹部8によってこの胴部ブランク19に装着される。この頭部2は、予め頭部ブランクから成形工具内において製造されている。ただし、頭部2はまた、後の処理ステップにおいて胴部ブランク19又は胴部3に装着されうる。
図30Cにおいて、胴部ブランク19は、締付け具20によって保持され、そして結合用要素11が成形されるように、並進移動パンチ21によって一部分が成形される。このことは次の
図30Dに示される。このようにして、胴部ブランク19は胴部3となった。
図30Eはまた、結合用要素の領域への頭部2の並進移動によって、頭部2と胴部3とが一緒に接合された後に起こる工程を示している。
【符号の説明】
【0078】
1 ねじ
2 頭部
3 胴部
4 工具係合輪郭部
5 自由端
6 ねじ山区画
7 ねじ山
8 結合用凹部
9 軸方向力伝達要素/階段領域
10 トルク伝達要素
11 結合用要素
12 軸方向力伝達対応要素/中間区画
13 トルク伝達対応要素
14 第1部分
14a 第1区画
15 第1の内径
16 第2部分
16a 第2区画
17 第2の内径
18 襟
19 胴部ブランク
20 締付け具
21 パンチ