(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】核酸送達のための第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/02 20060101AFI20240112BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240112BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240112BHJP
C07C 237/22 20060101ALI20240112BHJP
C07K 5/037 20060101ALI20240112BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C07K7/02 ZNA
A61K47/64
A61K48/00
C07C237/22
C07K5/037
C12N15/87 Z
(21)【出願番号】P 2021517865
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053655
(87)【国際公開番号】W WO2020069442
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521126302
【氏名又は名称】ナットクラッカー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マッキンレー, コリン ジェームズ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-502451(JP,A)
【文献】特表2007-514774(JP,A)
【文献】特表2003-508459(JP,A)
【文献】特表2007-528863(JP,A)
【文献】国際公開第2018/064755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00
C07K 5/00
C07C 237/22
C12N 15/87
A61K 48/00
A61K 47/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
:
[式中:
sは、1から5までの整数であり;
R
1は、-Hであり;
各R
3は、C
8-C
24-アルキルから選択され;
各R
5は、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシエーテル、及びヒドロキシヘテロアルキルから選択され;
R
7は、-H、アルキル、アシル、-OH、-OR
7a、-NH
2、-NHR
7a、又は脂質部分であり、ここで、R
7aは、アルキル、アシル、又は脂質部分であり;かつ
各R
a及びR
bは、独立して、-H、C
1-C
4-アルキル、又は天
然に存在するアミノ酸
、そのD-異性体、2-アミノアジピン酸、2-アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、若しくはオルニチンに見られる側鎖部分である]
の第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物又はその塩。
【請求項2】
sが3又は4である、請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項3】
各R
3が、独立して、C
8-C
12-アルキルである、請求項1又は2に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項4】
各R
3が、独立して、
、
、
、
、
、
、
、及び
からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項5】
各R
3が、独立して、
、
、及び
からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項6】
R
a及びR
bが、-Hである、請求項1から5のいずれか一項に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項7】
ポリアニオン性化合物と複合体を形成した、請求項1から6のいずれか一項に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物の1つ又は複数を含む複合体。
【請求項8】
ポリアニオン性化合物が核酸を含む、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
ポリアニオン性化合物がポリペプチドをコードするmRNAを含む、請求項7又は請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
ポリアニオン性化合物が核酸を含み、複合体が、少なくとも1つの第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチドと、核酸とを、0.5:1から50:1の間の質量比で含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物を、ポリアニオン性化合物と接触させることを含む、請求項7から
10のいずれか一項に記載
の複合体を形成する方法。
【請求項12】
R
7が、-NH
2である、請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項13】
sが4であり;並びに
2つのR
3が、
であり、かつ2つのR
3が、
である;又は
各R
3が、
である、
請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項14】
R
5が、ヒドロキシアルキル又はヒドロキシエーテルである、請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項15】
R
5が、ヒドロキシアルキルである、請求項
14に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項16】
R
5が、
である、請求項
15に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項17】
sが4であり;
各R
3が、独立して、
、
、又は
であり;
R
5が、ヒドロキシアルキルであり;
R
7が、-NH
2であり;かつ
各R
a及びR
bは、独立して、
-Hである、
請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項18】
各R
3が、独立して、
である、請求項
17に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項19】
式(I)の化合物が、
である、請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項20】
各R
3が、
である、請求項5に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項21】
R
5が、
、
、
、又は
である、請求項
20に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項22】
R
5が、
、
、又は
である、請求項
21に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項23】
sが4であり;
各R
3が、独立して、
、
、又は
であり;
R
5が、
、
、又は
であり;
R
7が、-NH
2であり;かつ
各R
a及びR
bが、
-Hである、
請求項1に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項24】
各R
3が、
である、請求項
23に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【請求項25】
R
5が、
である、請求項
23に記載の第三級アミノ脂質
化カチオン性ペプチド化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/738717号及び2019年8月9日に出願された米国仮特許出願第62/885036号の優先権及び利益を主張し、それらの各々の開示はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、核酸送達のための、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、より具体的には、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化ペプトイド、並びにそれらの複合体に関する。本開示はまた、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと、核酸などのポリアニオン性化合物とを含むその複合体を調製するための方法、並びにポリアニオン性化合物を細胞に送達するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
核酸を細胞に送達及び移送するための一貫した効果的な手段は、遺伝子治療、siRNA、miRNA、アンチセンス、又はmRNAに基づく治療の実際の適用のために必須であると一般に認識されている。リピトイドとしても知られるカチオン性ペプトイド-リン脂質コンジュゲート構築物は、ポリアニオン性核酸をカプセル化し、in vivoでヌクレアーゼに対して核酸を安定化させると同時に、ポリヌクレオチドの細胞内への取り込みとその後のサイトゾルへの放出を促進するために開発されたそのようなクラスの薬剤の1つである。リピトイド1(
図1に示される)などのリピトイドは、プラスミドDNA(pDNA)及び低分子干渉RNA(siRNA)などの核酸との複合体形成並びに細胞内送達のための効率的で非免疫原性のビヒクルであることが示されている。
【0004】
しかしながら、塩基対の長さ、鎖数、コンフォメーションなどが異なる多くの種類の核酸があるため、細胞への挿入を最適化しようとすると、特定の種類の核酸ごとに異なる課題が存在する。リピトイドは様々な核酸の取り込みを改善することに成功していることが示されているが、既存のリピトイド構築物は特定の種類のポリヌクレオチド、例えばpDNA及びsiRNAの送達に主に焦点を合わせており、メッセンジャーRNA(mRNA)などの他のポリヌクレオチドの細胞内取り込みを促進するためには必ずしも有効ではない場合がある。さらに、特定の種類の核酸に対して最適化されたリピトイド構築物の場合でさえ、リピトイド-核酸の複合体は、例えば、粒子の安定性及び凝集を含む、in vivoでのさらなる合併症に依然として悩まされる可能性がある。そのため、今日まで、リピトイドを使用した治療法は、ヒトにおける使用が承認されていない。
【0005】
したがって、核酸、特にmRNAを、粒子凝集などのin vivoでの合併症を少なくして、細胞内に送達するための代替剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、脂質のため、さらには他の形態のリピトイドで遭遇する困難を克服するためのより大きな適応性を有するPEG化のための代替のコンジュゲーション方法に基づくリピトイドを提供する。
【0007】
第1の態様では、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩が提供され:
式中:
mは、0から10までの整数であり;
nは、0から5までの整数であり;
sは、0から5までの整数であり;
tは、0から10までの整数であり;
ここで、m、n、s、及びtのうちの少なくとも1つは非ゼロであり;
rは、1から20までの整数であり;
各oは、独立して、0、1、又は2の整数であり;
各qは、独立して、0、1、又は2の整数であり;
各pは、独立して、1又は2の整数であり;
R
1は、-H、アルキル、アルキルアリール、-COR
1a又は脂質部分であり、
ここで、R
1aは、-H、-OH、アルキル、アリール、アルキルアリール、-O-アルキル、又は-O-アルキルアリールであり;
各R
2は、独立して、式-CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
uCH
3のエチレングリコール部分であり、ここで、各uは、独立して、2から200までの整数であり;
各R
3は、独立して、脂質部分であり;
各R
4は、独立して、中性スペーサー部分又は脂質部分であり;
各R
5は、独立して、カチオン性部分であり;
各R
6は、独立して、式-CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
vCH
3のエチレングリコール部分であり、ここで、各vは、独立して、2から200までの整数であり;
R
7は、-H、アルキル、アシル、-OH、-OR
7a、-NH
2、-NHR
7a、又は脂質部分であり、ここで、R
7aは、アルキル、アシル、又は脂質部分であり;かつ
各R
a及びR
bは、独立して、-H、C
1-C
4-アルキル、又は天然若しくは非天然に存在するアミノ酸に見られる側鎖部分である。
【0008】
この態様のいくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、n又はsの少なくとも1つが非ゼロである。この態様の特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化アミノ酸残基のブロックを含み、ここで、n及びsの少なくとも1つは、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4であり、任意選択で、2、3、又は4である。前の実施態様と組み合わせることができるこの態様のいくつかの実施態様では、各R3は、独立して、C4-C22-アルキル又はC4-C22-アルケニルであり、C4-C22-アルケニルは、任意選択でモノ又はポリ不飽和である。この態様のさらなる実施態様は、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含み、ここで、各R3は、独立してC8-C12アルキルである。前の実施態様のいずれか又は両方と組み合わせることができる、この態様の他の実施態様では、各R3は、独立して、2-エチルヘキサ-1-イル、カプロイル、オレイル、ステアリル、リノレイル、ミリスチル、及びラウリルからなる群から選択される。
【0009】
前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のさらに別の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、カチオン性部分R
5を有する少なくとも2つのカチオン性アミノ酸残基を含むカチオン性ドメインを含む。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のさらに他の実施態様では、各R
5は、独立して、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アミノアルキルアミノアルキル、グアニジノアルキル、N-ヘテロシクリルアルキル、又はN-ヘテロアリールである。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様の他の特定の実施態様では、各R
5は、独立して、
からなる群から選択される。特定の実施態様では、各R
5は、
である。
【0010】
前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のいくつかの実施態様では、各中性スペーサー部分R
4は、独立して、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、又はヒドロキシアルキルによって置換されたC
1-C
4-アルキルであり、ここで、各シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、又はヒドロキシアルキルは、1つ又は複数の置換基-OH、ハロ、又はアルコキシで置換されていてもよい。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のさらに他の実施態様では、各中性スペーサー部分R
4は、独立して、
からなる群から選択される。前述の実施態様のいずれかの特定の実施態様では、各中性スペーサー部分R
4は、
である。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のいくつかの実施態様では、各脂質部分R
4は、独立して、C
4-C
22-アルキル又はC
4-C
22-アルケニルであり、C
4-C
22-アルケニルは、任意選択でモノ又はポリ不飽和である。いくつかの実施態様では、各脂質部分R
4は、C
6-C
18アルキル又はC
6-C
18アルケニルである。特定の実施態様では、各脂質部分R
4は、C
8-C
12アルキルである。さらに他の実施態様では、各脂質部分R
4は、n-デシルなどのC
10-アルキルである。前の実施態様のいずれか又は両方と組み合わせることができるこの態様の他の実施態様では、各脂質部分R
4は、独立して、2-エチルヘキサ-1-イル、カプロイル、オレイル、ステアリル、リノレイル、ミリスチル、及びラウリルからなる群から選択される。
【0011】
本態様のさらに別の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、R
5カチオン性部分を有する少なくとも2つのアミノ酸残基を含むカチオン性ドメインを含み、ここで、そのカチオン性ドメイン内の少なくとも2つのカチオン性アミノ酸残基のそれぞれは、中性スペーサー又は脂質部分R
4を有する少なくとも1つのアミノ酸残基によって隔てられている。前述の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のさらに他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、少なくとも1つの三量体サブユニット-R
カチオン-R
中性-R
中性を含み、ここで、R
カチオンはカチオン性部分R
5を含むアミノ酸残基であり、各R
中性は中性スペーサー部分R
4を含むアミノ酸残基である。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる本態様のさらに他の実施態様では、各カチオン性部分R
5は、
であり、各中性スペーサー部分R
4は、
である。
【0012】
前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のさらに他の実施態様では、mが0から3までの整数であるとき、各uは、独立して、20から200までの整数、任意選択で30から50までの整数であり;mが4から10までの整数であるとき、各uは、独立して、2から10までの整数である。
【0013】
前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様のいくつかの実施態様では、tが0から3までの整数であるとき、各vは、独立して、30から50までの整数であり;tが4から10までの整数であるとき、各vは、独立して、2から10までの整数である。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様の他の実施態様では、mは1であり、uは40から45までの整数であり;かつ/又はtは1であり、vは40から45までの整数である。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様の他の実施態様では、Ra及びRbは、独立して、-H及び-CH3からなる群から選択される。前の実施態様のいずれか1つ又は複数と組み合わせることができる、この態様の特定の他の実施態様では、Ra及びRbは、-Hである。
【0014】
本開示の別の態様は、式(I)の第三級アミノ脂質化及びPEG化ペプチド化合物又はそれらの塩を提供し:
式中:
mは、0から10までの整数であり;
nは、0から5までの整数であり;
sは、0から10までの整数であり;
tは、0から5までの整数であり;
ここで、m及びtの少なくとも1つは非ゼロであり、n及びsの少なくとも1つは非ゼロであり;
rは、1から20までの整数であり;
各oは、独立して、0、1、又は2の整数であり;
各qは、独立して、0、1、又は2の整数であり;
各pは、独立して、1又は2の整数であり;
R
1は、-H、アルキル、アルキルアリール、-COR
1a又は脂質部分であり、
ここで、R
1aは、-H、-OH、アルキル、アリール、アルキルアリール、-O-アルキル、又は-O-アルキルアリールであり;
各R
2は、独立して、式-CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
uCH
3のエチレングリコール部分であり、ここで、各uは、独立して、2から200までの整数であり;
各R
3は、独立して、脂質部分であり;
各R
4は、独立して、中性スペーサー部分又は脂質部分であり;
各R
5は、独立して、カチオン性部分であり;
各R
6は、独立して、式-CH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
vCH
3のエチレングリコール部分であり、ここで、各vは、独立して、2から200までの整数であり;
R
7は、-H、アルキル、アシル、-OH、-OR
7a、-NH
2、-NHR
7a、又は脂質部分であり、ここで、R
7aは、アルキル、アシル、又は脂質部分であり;かつ
各R
a及びR
bは、独立して、-H、C
1-C
4-アルキル、又は天然若しくは非天然に存在するアミノ酸に見られる側鎖部分である。適用できる場合、本開示のこの態様は、第1の態様の様々な実施態様も含む。
【0015】
本開示のさらに別の態様は、ポリアニオン性化合物と複合体を形成した、様々な実施態様のいずれか及び全てにおける前述の態様のいずれか又は両方の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の1つ又は複数を含む複合体を提供する。この態様の特定の実施態様では、ポリアニオン性化合物は、核酸を含む。核酸を含むこの態様の特定の実施態様では、核酸は、ポリペプチドをコードするmRNAである。この態様のさらに別の実施態様では、核酸は、タンパク質をコードするmRNAである。前述の実施態様と組み合わせることができる、核酸を含むこの態様の特定の実施態様では、複合体は、少なくとも1つの第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと、核酸とを、0.5:1から50:1の間の質量比で含む。前述の実施態様のいずれか又は両方と組み合わせることができる、核酸を含むこの態様の特定の実施態様では、複合体は、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、核酸、リン脂質、構造脂質、並びにPEG脂質を含む。前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施態様では、複合体は、1つ又は複数の小分子活性剤又は原体をさらに含む。
【0016】
本開示のさらに別の態様は、その様々な実施態様のいずれか及び全てにおいて、細胞を前述の態様の複合体と接触させることを含む、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法を提供する。この態様の特定の実施態様では、接触はエンドサイトーシスによるものである。前述の態様と組み合わせることができる、この態様の他の実施態様では、細胞を、in vivo又はin vitroで接触させる。前述の実施態様のいずれか又は両方と組み合わせることができる、ポリペプチドをコードする核酸を含むこの態様の特定の実施態様では、細胞は、複合体と接触した後にポリペプチドを発現する。前述の実施態様のいずれかの1つ又は複数と組み合わせることができる、タンパク質をコードする核酸を含むこの態様の特定の実施態様では、細胞は、複合体と接触した後にタンパク質を発現する。
【0017】
本開示の追加の態様は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物をポリアニオン性化合物と接触させることによって、複合体とその様々な実施態様のいずれか及び全てに関連する態様の複合体を形成する方法を提供する。この態様の一実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含む溶液を、ポリアニオン性化合物を含む溶液と接触させることによって形成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、例示的な第二級アミンリン脂質化カチオン性ペプチド「リピトイド1」を示す。
【
図2A-2F】
図2A-2Fは、第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを一般的に示す。
図2Aは、第三級アミノ脂質化ペプトイドの一般化された構造を示す。
図2Bは、例示的な第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイドを示す。
図2Cは、例示的な脂質モノマーを示す。
図2Dは、例示的なカチオン性モノマーを示す。
図2Eは、例示的なスペーサーモノマー及びポリエチレングリコールモノマーを示す。
図2Fは、例示的な第三級アミノ脂質化カチオン性ペプトイド化合物8を示す。
【
図3A-3E】
図3A-3Eは、固相におけるアミノ酸残基の連続的な付加を介して、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を調製するための例示的なプロセスを示す。
図3Aは、樹脂結合第二級アミンのアシル化剤ブロモ酢酸への一般化されたアシル化反応を示す。
図3Bは、得られたアシル化生成物を、求核置換を介して適切なアミンと反応させ、対応するN-置換アミノ酸残基を生成する反応を示す。
図3C及び
図3Dは、所望の樹脂結合カチオン性ペプチド化合物を生成するためのアシル化反応及び求核置換反応の連続的な反復を示す。
図3Eは、固体樹脂支持体からカチオン性ペプチド化合物を切断して遊離ペプチドを提供する切断を示す。
【
図4】
図4は、ペプトイド:mRNAの質量比が2:1、3.5:1、5:1、7.5:1において、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)mRNAと個別に複合体を形成した第三級アミノ脂質化ペプトイド化合物1-18によりin vitroで処理されたHeLa細胞について測定された平均生物発光(RLU)の結果のグラフを示す。
【
図5】
図5は、リピトイド1又は本開示のアミノ脂質化ペプトイド化合物の選択物の1つを含む多成分脂質製剤によりin vitroで処理されたHeLa細胞において観察された平均生物発光(RLU)のグラフを示す。リピトイド1又は選択したアミノ脂質化ペプトイド化合物を、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)と3つの質量比(50:16:32:2、63:0:35:2、42:23:33:2)で組み合わせ、さらにペプトイド:mRNAの質量比が7:1又は10:1のいずれかでホタルルシフェラーゼ(Fluc)mRNAと混合し、試験製剤を得た。
【
図6A-6B】
図6A-6Bは、ペプトイド:コレステロール:DOPE:DMG-PEG2000の質量比が41:23:33:3、及びペプトイド:mRNAの質量比が10:1において、コレステロール、DOPE及びDMG-PEG2000を含むアミノ脂質化ペプトイドの多成分脂質製剤により処理されたHeLa細胞中のFluc mRNAのin vitro発現を示す。
図6A及び
図6Bは、製剤1-36(
図6A)及び37-72(
図6B)により処理されたHeLa細胞において観察された平均生物発光を示す。
【
図7A-7B】
図7A-7Bは、ペプトイド:コレステロール:DOPE:DMG-PEG2000の質量比が41:23:33:3、及びペプトイド:mRNAの質量比が10:1において、コレステロール、DOPE及びDMG-PEG2000を含むアミノ脂質化ペプトイドの多成分脂質製剤の皮下投与により処置されたBalb/cマウスにおけるFluc mRNAのin vivo発現を示す。
図7A及び
図7Bは、製剤1-36(
図7A)及び37-72(
図7B)による投与の6時間後に観察された平均生物発光を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
以下の記述は、例示的な方法、パラメータなどを説明する。しかしながら、そのような記述は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、例示的な実施態様の説明として提供されることを認識すべきである。
【0020】
本開示は、核酸及び他のポリアニオン種の細胞への送達のためのN-置換カチオン性ペプチド化合物、並びにそれらの組成物及び複合体を提供する。より具体的には、本開示は、メッセンジャーRNA(mRNA)及びその他のポリヌクレオチドの効率的な複合体形成及び細胞内送達を促進するために、脂質部分及び/又は(オリゴ及び/又はポリ)エチレングリコール部分でN-置換されているN末端及び/又はC末端又はその近くに1つ又は複数のアミノ酸残基を含むカチオン性ペプチド化合物に関する。
【0021】
リピトイド1などの以前のリピトイド構造とは対照的に、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、リピトイドコンジュゲートのリン脂質成分を、ペプチドのN末端及びC末端又はその近くでN-脂質化アミノ酸残基と置き換えるだけでなく、さらに、ペプチドの骨格に沿った複数の脂質部分、並びにオリゴ及び/又はポリエチレングリコール部分の取り込みを可能にする。本明細書に記載の化合物のオリゴペプチド骨格に沿って複数の脂質部分並びに/又はオリゴ及びポリエチレングリコール部分を含めることにより、単一の末端リン脂質又は他の脂質部分を含む以前のリピトイド構築物と比較して、核酸との複合体形成が改善され、したがって核酸の細胞取り込みも改善される。
【0022】
本明細書で使用される「アルケニル」は、オレフィン性不飽和の少なくとも1つの部位を有し(すなわち、式C=Cの少なくとも1つの部分を有し)、指定された炭素原子数(すなわち、C2-C10は、2から10個の炭素原子を意味する)を有する、不飽和の直鎖状又は分枝状の一価炭化水素鎖又はそれらの組み合わせを指す。アルケニル基は、「シス」又は「トランス」配置、或いは「E」又は「Z」配置であり得る。特定のアルケニル基は、2から20個の炭素原子を有するもの(「C2-C20アルケニル」)、2から8個の炭素原子を有するもの(「C2-C8アルケニル」)、2から6個の炭素原子を有するもの(「C2-C6アルケニル」)、又は2から4個の炭素原子を有するもの(「C2-C4アルケニル」)である。アルケニルの例には、限定されるものではないが、エテニル(又はビニル)、プロプ-1-エニル、プロプ-2-エニル(又はアリル)、2-メチルプロプ-1-エニル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニル、ブト-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエニル、それらの同族体及び異性体、その他同種類のものなどの基が含まれる。
【0023】
用語「アルキル」は、指定された炭素原子数(すなわち、C1-C10は1から10個の炭素を意味する)を有する、飽和した直鎖状又は分枝状の一価炭化水素構造及びそれらの組み合わせを指し、それらを含む。特定のアルキル基は、1から20個の炭素原子を有するもの(「C1-C20アルキル」)である。より具体的なアルキル基は、1から8個の炭素原子(「C1-C8アルキル」)、3から8個の炭素原子(「C3-C8アルキル」)、1から6個の炭素原子(「C1-C6アルキル」)、1から5個の炭素原子(「C1-C5アルキル」)、又は1から4個の炭素原子(「C1-C4アルキル」)を有するものである。アルキルの例には、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体及び異性体、その他同種類のものなどの基が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される「アルキレン」は、アルキルと同じ残基を指すが、二価性を有する。特定のアルキレン基は、1から6個の炭素原子(「C1-C6アルキレン」)、1から5個の炭素原子(「C1-C5アルキレン」)、1から4個の炭素原子(「C1-C4アルキレン」)、又は1から3個の炭素原子(「C1-C3アルキレン」)を有するものである。アルキレンの例には、限定されるものではないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)、その他同種類のものなどの基が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される「アルキニル」は、アセチレン性不飽和の少なくとも1つの部位を有し(すなわち、式C≡Cの少なくとも1つの部分を有し)、指定された炭素原子数(すなわち、C2-C10は、2から10個の炭素原子を意味する)を有する、不飽和の直鎖状又は分枝状の一価炭化水素鎖又はそれらの組み合わせを指す。特定のアルキニル基は、2から20個の炭素原子を有するもの(「C2-C20アルキニル」)、2から8個の炭素原子を有するもの(「C2-C8アルキニル」)、2から6個の炭素原子を有するもの(「C2-C6アルキニル」)、又は2から4個の炭素原子を有するもの(「C2-C4アルキニル」)である。アルキニルの例には、限定されるものではないが、エチニル(又はアセチレニル)、プロプ-1-イニル、プロプ-2-イニル(又はプロパルギル)、ブト-1-イニル、ブト-2-イニル、ブト-3-イニル、それらの同族体及び異性体、その他同種類のものなどの基が含まれる。
【0026】
用語「アリール」は、多価不飽和芳香族炭化水素基を指し、それらを含む。アリールは、追加の縮合アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及び/又はヘテロシクリル環を含む、追加の縮合環(例えば、1から3個の環)を含み得る。1つの変形例では、アリール基は、6から14個の環状炭素原子を含む。アリール基の例には、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、ビフェニル、その他同種類のものが含まれる。
【0027】
「カルボニル」は、基C=Oを指す。
【0028】
本明細書で使用される「複合体」は、イオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、金属-配位子配位、他の化学的力、及び前述の1つ又は複数の組み合わせによって媒介され得る、2つ以上の分子間の任意の化学的会合を含む。複合体は、例えば、ポリプレックス、コアセルベート複合体、ナノ複合体、ナノ粒子、及びマイクロ粒子を含む高次構造を形成し得る。
【0029】
用語「シクロアルキル」は、完全に飽和、モノ又はポリ不飽和である得るが、指定された炭素原子の数(例えば、C1-C10は1から10個の炭素を意味する)を有する非芳香族である、環状一価炭化水素構造を指し、これを含む。シクロアルキルは、シクロヘキシルなどの1つの環、又はアダマンタン(adamantly)などの複数の環で構成され得るが、アリール基は除外される。2つ以上の環を含むシクロアルキルは、縮合、スピロ若しくは架橋、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましいシクロアルキルは、3から13個の環状炭素原子を有する環状炭化水素である。より好ましいシクロアルキルは、3から8個の環状炭素原子を有する環状炭化水素である(「C3-C8シクロアルキル」)。シクロアルキルの例には、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル、ノルボルニル、その他同種類のものが含まれる。
【0030】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、原子番号9から85を有する第17族系列の元素を指す。好ましいハロ基には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。残基が複数のハロゲンで置換されている場合、それは結合したハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用することによって参照することができ、例えば、ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリールなどは、2つ(「ジ」)又は3つ(「トリ」)のハロ基(これらは同じハロであり得るが、必ずしも同じではない)で置換されたアリール及びアルキルを指し;したがって、4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内にある。各水素がハロ基で置き換えられたアルキル基は、「ペルハロアルキル」と称される。好ましいペルハロアルキル基は、トリフルオロアルキル(-CF3)である。同様に、「ペルハロアルコキシ」は、ハロゲンが、アルコキシ基のアルキル部分を構成する炭化水素中の各Hに取って代わるアルコキシ基を指す。ペルハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ(-OCF3)である。
【0031】
用語「ヘテロアリール」は、1から10個の環状炭素原子と、限定されるものではないが、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含む少なくとも1つの環状ヘテロ原子とを有する不飽和芳香族環状基であって、窒素及び硫黄原子は任意選択で酸化され、窒素原子は任意選択で四級化されるものを指し、それらを含む。ヘテロアリール基は、環状炭素又は環状ヘテロ原子で分子の残りの部分に結合することができる。ヘテロアリールは、追加の縮合アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及び/又はヘテロシクリル環を含む、追加の縮合環(例えば、1から3個の環)を含み得る。ヘテロアリール基の例には、限定されるものではないが、ピリジル、ピリミジル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、その他同種類のものが含まれる。
【0032】
用語「複素環」又は「ヘテロシクリル」は、1から10個の環状炭素原子と、窒素、硫黄又は酸素などの1から4個の環状ヘテロ原子とを有する飽和又は不飽和非芳香族基であって、窒素及び硫黄原子は任意選択で酸化され、窒素原子は任意選択で四級化されるものを指す。ヘテロシクリル基は、単環又は複数の縮合環を有し得るが、ヘテロアリール基は除外される。2つ以上の環を含む複素環は、縮合、スピロ若しくは架橋であるか、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。縮合環系において、1つ又は複数の縮合環は、アリール又はヘテロアリールであり得る。ヘテロシクリル基の例には、限定されるものではないが、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル、その他同種類のものが含まれる。
【0033】
「オキソ」は、部分=Oを指す。
【0034】
「チオカルボニル」は、基C=Sを指す。
【0035】
特に指定のない限り、「置換されていてもよい」とは、ある基が非置換であるか、又はその基に関して列挙された置換基のうちの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4又は5つ)によって置換されてよく、ここで、該置換基は同じであっても異なっていてもよいことを意味する。一実施態様では、置換されていてもよい基は、1つの置換基を有する。別の実施態様では、置換されていてもよい基は、2つの置換基を有する。別の実施態様では、置換されていてもよい基は、3つの置換基を有する。別の実施態様では、置換されていてもよい基は、4つの置換基を有する。いくつかの実施態様では、置換されていてもよい基は、1つから2つ、2つから5つ、3つから5つ、2つから3つ、2つから4つ、3つから4つ、1つから3つ、1つから4つ又は1つから5つの置換基を有する。
【0036】
用語「置換された」とは、部分の1つ又は複数の水素原子を一価又は二価の基(radical)で置換することを指す。「置換されていてもよい」とは、その部分が置換されていても、非置換であってもよいことを示す。適切な置換基には、例えば、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ(例えば、-NH2又はジアルキルアミノ)、イミノ、シアノ、ハロ(F、Cl、Br、Iなど)、ハロアルキル(-CCl3又は-CF3など)、チオ、スルホニル、チオアミド、アミジノ、イミジノ、オキソ、オキサミジノ、メトキサミジノ、イミジノ、グアニジノ、スルホンアミド、カルボキシル、ホルミル、アルキル、アルコキシ、アルコキシ-アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ(-OCOR)、アミノカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアラルキル-カルボニル、アルキルチオ、アミノアルキル、シアノアルキル、カルバモイル(-NHCOOR-又は-OCONHR-)、尿素(-NHCONHR-)、アリール、その他同種類のものが挙げられ、ここで、Rは任意の適切な基、例えば、アルキル又はアルキレンである。いくつかの実施態様では、置換されていてもよい部分は、記載されているように、選択された基のみで任意に置換されている。いくつかの実施態様では、上記の基(例えば、アルキル基)は、例えば、アルキル(例えば、メチル又はエチル)、ハロアルキル(例えば、-CCl3、-CH2CHCl2又は-CF3)、シクロアルキル(例えば、-C3H5、-C4H7、-C5H9)、アミノ(例えば、-NH2又はジアルキルアミノ)、アルコキシ(例えば、メトキシ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、アゼチジンとして)、ヒドロキシル、及び/又はヘテロアリール(例えば、オキサゾリル)で置換されていてもよい。いくつかの実施態様では、置換基はそれ自体置換されていてもよい。いくつかの実施態様では、置換基はそれ自体置換されない。置換基上に置換される基は、例えば、カルボキシル、ハロ、ニトロ、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノカルボニル、-SR、チオアミド、-SO3H、-SO2R又はシクロアルキルであってよく、ここで、Rは、任意の適切な基、例えば、水素又はアルキルである。
【0037】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-置換アミノ酸残基を含むペプチド鎖である。本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、オリゴペプチド骨格を含み、ここで、オリゴペプチド骨格は、N-置換中性(「スペーサー」)及び/又は脂質アミノ酸残基と任意選択で交互配置されたN-置換カチオン性アミノ酸残基の繰り返しサブユニットを含む。オリゴペプチド骨格は、そのN末端及び/又はC末端で、脂質部分でN-置換されている(「N-脂質化」)アミノ酸残基並びに/又はオリゴエチレングリコール及び/若しくはポリエチレングリコールでN-置換されている(「N-PEG化」)アミノ酸残基によってさらにキャップされる。
【0038】
一態様では、本明細書で提供されるのは、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩である:
【0039】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、ペプチド化合物に存在するアミノ酸残基の総数によって特徴づけることができ、ここで、各アミノ酸残基は一般構造体-(NR-CRaRb-C(O))-によって表される。いくつかの実施態様では、アミノ酸残基の総数は、2から40アミノ酸残基の間、2から30アミノ酸残基の間、3から25アミノ酸残基の間、5から20アミノ酸残基の間、又は7から15アミノ酸残基の間である。特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、5から20個のアミノ酸残基を含む。特定の実施態様では、アミノ酸残基の総数は、m、n、s、t、及び[r×(o+p+q)]の合計である。
【0040】
他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、正味のゼロ電荷又は正味の正電荷を有する。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物である特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物は、少なくとも+1の正味の正電荷を有する。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物又は第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物である他の実施態様では、カチオン性ペプチド化合物は、正味のゼロ電荷を有するか(すなわち、電荷中性である)又は正味の正電荷を有する。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物又は第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物であるいくつかの実施態様では、カチオン性ペプチド化合物は+1の正味の正電荷を有する。特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、(r×p)+の正味の正電荷を有する。
【0041】
特定の実施態様では、本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物のアミノ酸残基は、天然又は非天然に存在するアミノ酸のN-置換変異体であり、ここで、炭素側鎖はRa及びRbによって表される。アミノ酸残基は、D-又はL-配置のいずれかで存在し得る。さらに、アミノ酸残基のN位の置換がアミド結合の自由回転を制限する可能性があることを認識すべきである。そのため、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物はまた、様々な回転異性体コンフォメーション(回転異性体)で存在し得る。
【0042】
いくつかの実施態様では、各R
a及び各R
bは、独立して、天然又は非天然に存在するアミノ酸に見られる側鎖部分である。本明細書で使用される場合、用語「天然に存在するアミノ酸」とは、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Asp、Glu、Asn、Gln、Lys、Arg、Phe、Tyr、His、又はTrpを指す。用語「非天然に存在するアミノ酸」は、通常、自然界には見られないアミノ酸を指し、例えば、天然に存在するアミノ酸のD-異性体、2-アミノアジピン酸、2-アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、及びオルニチンを含む。特定の実施態様では、各R
a及びR
bは、独立して-H、-CH
3、又は
である。
【0043】
他の実施態様では、各Ra及び各Rbは、独立して、-H又はC1-C4-アルキルである。特定の実施態様では、各Ra及び各Rbは、独立して、-H又はCH3である。他の実施態様では、Ra及びRbは-Hである。Ra及びRbが-Hである実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物はまた、N-脂質化及び/又はPEG化ポリグリシン化合物又はN-脂質化及び/又はPEG化ペプトイド化合物と呼ばれ得る。特定の実施態様では、各Ra及び各Rbは、独立して、-H、C1-C4-アルキル、又は天然若しくは非天然に存在するアミノ酸に見られる側鎖部分である。
【0044】
オリゴペプチド骨格、又は繰り返しサブユニット、及び構造モチーフ
本明細書に記載されるように、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、核酸などのポリアニオン性化合物との複合体形成、及びそのようなポリアニオン性化合物の細胞への送達に有用であり得る。本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、以下の式(I)の断片に示されるように、N-置換中性スペーサーアミノ酸残基及び/又はN-脂質化アミノ酸残基と任意選択で交互配置されたN-置換カチオン性アミノ酸残基の繰り返しサブユニットのオリゴペプチド骨格を含む。
【0045】
オリゴペプチド骨格の繰り返しサブユニット中のカチオン性アミノ酸残基は、本開示の化合物に正電荷を付与し、これにより、核酸のようなポリアニオン種との好ましい静電相互作用及び電荷中和が可能になる。カチオン性残基の間に中性又は脂質化アミノ酸残基を交互配置することにより、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物全体の正電荷の空間分布をより良く制御することができ、これにより、カチオン性ペプチド化合物と、特定の長さ、電荷分布、コンフォメーションを有するポリアニオン種との複合体形成の改善が可能になる。
【0046】
オリゴペプチド骨格において、rは、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物におけるカチオン性及び中性及び/又は脂質化アミノ酸残基の繰り返しサブユニットの数を表す。いくつかの実施態様では、rは1から25までの整数である。特定の実施態様では、rは1から20までの整数である。他の実施態様では、rは1から15までの整数である。いくつかの実施態様では、rは1から5までの整数である。特定の実施態様では、rは2から4までの整数である。
【0047】
各サブユニットrは、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物全体内の他のサブユニットと厳密に同一であってもなくてもよいことを認識すべきである。例えば、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物内で、各サブユニットrは、他のサブユニットに存在するカチオン性及び中性及び/又は脂質化アミノ酸残基に関して独立して選択されるカチオン性アミノ酸残基、並びに任意選択で中性及び/又は脂質化アミノ酸残基も含み得る。
【0048】
カチオン性部分
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の各繰り返しサブユニットは、少なくとも1つのカチオン性アミノ酸残基を含む。カチオン性アミノ酸残基は、本明細書に記載のペプチド化合物が、核酸又はポリアニオン性化合物上の負電荷との相互作用によって、核酸又は他のポリアニオン性化合物と静電複合体を形成することを可能にする正電荷を提供する。核酸の複合体形成は、核酸の負電荷を部分的又は完全に遮蔽し、細胞の脂質膜を通過して細胞内への輸送を促進する。
【0049】
各サブユニットr内で、pはそのサブユニットに存在するカチオン性アミノ酸残基の数を表す。いくつかの実施態様では、各pは、独立して、1又は2の整数である。いくつかの実施態様では、pは1である。
【0050】
各カチオン性アミノ酸残基は、N位にカチオン性部分R5を含む。各カチオン性部分R5は、独立して、カチオン性ペプチド化合物の繰り返しサブユニット内だけでなく、オリゴペプチド骨格全体にわたって選択され得ることを認識すべきである。
【0051】
本明細書に記載のカチオン性部分は、生理学的に適切なpH範囲で安定した正味の正電荷を有する置換基であり得る。例えば、生理学的pHは、少なくとも約5.5、典型的には少なくとも約6.0である。より典型的には、生理学的pHは少なくとも約6.5である。通常、生理学的pHは約8.5未満であり、典型的には約8.0未満である。より典型的には、生理学的pHは約7.5未満である。カチオン性部分は、例えば、生理学的pHで正電荷を生成するのに十分である部分に存在する官能基の閾値pKa値によって特徴づけることができる。特定の実施態様では、カチオン性部分は、少なくとも7.5のpKa値を有する。他の実施態様では、カチオン性部分は、生理学的pHとより酸性のpHとの間、例えば、pH4.5ー5.5の間のpKaを有する。追加の実施態様では、複数の独立したpKa値を有する置換基が使用される。
【0052】
本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、オリゴペプチド骨格に沿って互いに近接して複数のカチオン性部分を含み得ることを認識すべきである。複数のカチオン性部分がオリゴペプチド骨格に沿って存在する場合、特定のカチオン性部分のプロトン化又は脱プロトン化状態が、近接する他のカチオン性部分のpKa値に影響を及ぼす可能性がある。この機構により、本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物の特定のカチオン性部分のpKaは、単独で測定されたそのpKa値に対して変化している可能性がある。例えば、オリゴペプチド骨格中の1つのアミンのプロトン化によりpKaが~8になると、近傍のカチオン性部分のpKa値を正常値~7.5からpKa~5-6に低下させる可能性がある。
【0053】
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が、複数のカチオン性部分を互いに様々に近接させて収容する能力は、これらのカチオン性ペプチド化合物、及びそれらの任意の複合体が、生理学的pHの変動に対して高感度で応答することを可能にする。生理学的pHの変化に対するこれらの化合物及びそれらの複合体の感受性は、エンドソーム輸送(エンドソームコンパートメントのpHは~4.5から5.5)後のサイトゾルへの核酸の送達及び放出を促進するために重要であり得る。
【0054】
カチオン性又は正に帯電した部分は、例えば、以下の官能基:アミノ、グアニジノ、ヒドラジド、及びアミジノを含むものなど、窒素ベースの置換基を含み得る。これらの官能基は、芳香族、飽和環状、又は脂肪族のいずれかであり得る。いくつかの実施態様では、各R
5は、独立して、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、アミノアルキルアミノアルキル、グアニジノアルキル、N-ヘテロシクリルアルキル、又はN-ヘテロアリールである。他の実施態様では、各R
5は、独立して、
である。
【0055】
特定の実施態様では、各R
5は、独立して、
からなる群から選択される。さらに他の実施態様では、各R
5は、
である。
【0056】
カチオン性残基がペプチド化合物全体の末端残基であるさらに別の実施態様では、合成又は脱保護条件と適合しないか(酸に不安定なリンカーなど)、或いは適切な保護基戦略が利用できない(例えばポリアミン)追加のカチオン性部分R
5を利用することができる。例えば、いくつかの実施態様では、末端カチオン性残基のカチオン性部分R
5は、ポリアミンである。末端残基のR
5がポリアミンであるいくつかの実施態様では、ポリアミンは、
である。特定の実施態様では、ポリアミンは、
からなる群から選択される。
【0057】
他の実施態様では、末端カチオン性残基のカチオン性部分R
5は、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシエーテル、アルコキシアルキル、又はヒドロキシルヘテロアルキルである。特定の実施態様では、末端カチオン性残基のカチオン性部分R
5は、
である。
【0058】
さらに特定の実施態様では、末端カチオン性残基のカチオン性部分R
5は、
である。
【0059】
ペプチド鎖の非置換窒素原子は、すなわち、R5が水素である場合、生理学的条件下でイオン化可能なカチオン性部分としても機能し得ることをさらに認識すべきである。いくつかの実施態様では、カチオン性部分R5は水素原子である。
【0060】
中性スペーサー部分
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のオリゴペプチド骨格内で、カチオン性アミノ酸残基は、N位に中性スペーサー部分を有する中性スペーサーアミノ酸残基と任意選択で交互配置され得る。中性アミノ酸残基は、カチオン性ペプチド化合物と複合体を形成するポリヌクレオチドを含むポリアニオン性化合物との静電相互作用を改善するために、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物における正電荷の空間分布を調節するのに有用であり得る。
【0061】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の各繰り返しサブユニットにおいて、中性アミノ酸残基は、カチオン性アミノ酸残基のN末端又はC末端のいずれかに1つ又は複数のR4基として存在し得る。サブユニットrが中性スペーサー部分R4を含むいくつかの実施態様では、存在する各中性スペーサー部分に対応するo及び/又はqは、サブユニットr内のカチオン性アミノ酸残基のN末端及びC末端に結合した中性スペーサー残基のそれぞれの数を表す。いくつかの実施態様では、各oは、独立して、0、1、又は2の整数である。他の実施態様では、各qは、独立して、0、1、又は2の整数である。
【0062】
各中性スペーサーアミノ酸残基は、N位に中性スペーサー部分R4を含む。本明細書に記載のカチオン性部分と同様に、各中性スペーサー部分R4は、独立して、カチオン性ペプチド化合物の繰り返しサブユニット内、並びにオリゴペプチド骨格の繰り返しサブユニットrの中から選択されることを認識すべきである。
【0063】
中性スペーサー部分は、生理学的に適切なpH範囲において中性であるか、又は正味電荷がゼロである任意の置換基を含み得ることも認識すべきである。いくつかの実施態様では、各中性部分R
4は、独立して、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、又はヒドロキシアルキルによって置換されたC
1-C
4-アルキルであり、ここで、各シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、又はヒドロキシアルキルは、1つ又は複数の置換基-OH、ハロ、又はアルコキシで置換されていてもよい。さらにいくつかの実施態様では、各中性スペーサー部分R
4は、独立して、
からなる群から選択される。特定の実施態様では、各中性スペーサー部分R
4は、
である。
【0064】
脂質部分
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のオリゴペプチド骨格内での中性アミノ酸残基とカチオン性アミノ酸残基との任意の交互配置に加えて、N位に脂質部分を有するN-脂質化アミノ酸残基はまた、任意選択で、カチオン性(及び任意選択の中性スペーサー)アミノ酸残基と交互配置されてもよい。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がN-脂質化アミノ酸残基を含むいくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物はN-脂質化されている。中性アミノ酸残基と同様に、オリゴペプチド骨格内のN-脂質化アミノ酸残基は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物における正電荷の空間分布を調節するのに有用であり得るだけでなく、ポリアニオン性物質のカプセル化と細胞内送達を改善するために、それらの親油性を増大させるためにも有用である。ペプトイド骨格に沿った脂質の間隔も、細胞への取り込みとエンドソームへの放出に影響を与えることが知られている脂質の流動性/結晶化度に影響を与え得る。
【0065】
中性スペーサー残基と同様に、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の各繰り返しサブユニットにおいて、N-脂質化アミノ酸残基は、カチオン性アミノ酸残基のN末端若しくはC末端のいずれか又は両端に1つ又は複数のR4基として存在し得る。サブユニットrが脂質部分R4を含むいくつかの実施態様では、存在する各脂質部分に対応するo及び/又はqは、サブユニットr内のカチオン性アミノ酸残基のN末端及びC末端に結合した脂質化残基のそれぞれの数を表す場合もある。いくつかの実施態様では、各oは、独立して、0、1、又は2の整数である。他の実施態様では、各qは、独立して、0、1、又は2の整数である。
【0066】
各N-脂質化アミノ酸残基は、N位に脂質部分R4を含む。本明細書に記載のカチオン性及び中性部分と同様に、各脂質部分R4は、独立して、カチオン性ペプチド化合物の繰り返しサブユニット内、並びにオリゴペプチド骨格の繰り返しサブユニットrの中から選択されることを認識すべきである。
【0067】
適切な脂質部分は、例えば、置換されていてもよい分岐若しくは直鎖脂肪族部分、又は脂肪酸、ステロール、及びイソプレノイドを含む天然脂質化合物に由来する置換されていてもよい部分を含み得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、脂質部分は、約6から約50個の炭素原子又は約10から約50個の炭素原子を有する分岐又は直鎖脂肪族部分を含み得、任意選択で1つ又は複数のヘテロ原子を含み、任意選択で1つ又は複数の二重結合又は三重結合(すなわち、飽和又はモノ若しくはポリ不飽和)を含む。特定の実施態様では、脂質部分は、置換されていてもよい脂肪族、直鎖又は分岐部分を含み得、各疎水性末端は、独立して、約8から約30個の炭素原子又は約6から約30個の炭素原子を有する。特定の実施態様では、脂質部分は、例えば、脂肪酸及び脂肪アルコールに由来する脂肪族炭素鎖を含み得る。いくつかの実施態様では、各脂質部分R4は、独立して、C8-C24-アルキル又はC8-C24-アルケニルであり、C8-C24-アルケニルは、任意選択でモノ又はポリ不飽和である。いくつかの実施態様では、各脂質部分R4は、C6-C18アルキル又はC6-C18アルケニルである。特定の実施態様では、各脂質部分R4は、C8-C12アルキルである。さらに他の実施態様では、各脂質部分R4は、n-デシルなどのC10-アルキルである。他の実施態様では、各脂質部分R4は、独立して、2-エチルヘキサ-1-イル、カプロイル、オレイル、ステアリル、リノレイル、ミリスチル、及びラウリルからなる群から選択される。
【0069】
前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに他の実施態様では、各脂質部分R
4は、独立して、
である。前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに他の実施態様では、各脂質部分R
4は、独立して、式
の脂質であり、ここで、R
8は、約6から約50個の炭素原子又は約10から約50個の炭素原子を有し、任意選択で1つ又は複数のヘテロ原子を含み、任意選択で1つ又は複数の二重結合又は三重結合を含む分岐又は直鎖脂肪族部分である。特定の実施態様では、各脂質部分R
4は、独立して、
である。
【0070】
本発明の実施において使用される天然脂質部分は、例えば、リン脂質、グリセリド(ジグリセリド又はトリグリセリドなど)、グリコシルグリセリド、スフィンゴ脂質、セラミド、飽和及び不飽和ステロール、イソプレノイド、並びにその他の同様の天然脂質から誘導することができる。
【0071】
他の適切な脂質部分は、例えばナフタレニル若しくはエチルベンジルを含む、置換されていてもよいアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、若しくはアリールアルキル部分などの親油性炭素環式若しくは芳香族基、又は、例えば、ステロールエステル及びワックスエステルを含むエステル官能基を含む脂質を含み得る。さらに他の実施態様では、脂質部分R
4は、
である。
【0072】
構造モチーフ
いくつかの実施態様では、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、互いにカチオン性、中性スペーサー、及び脂質化アミノ酸残基の特定の配列又は配置を含み得、これは、線状共重合体の様々な分類(ランダム、ブロック、交互、周期的、ステレオブロックなど)と同様に記述することができる。
【0073】
例えば、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が一般的な部分Rカチオン、R中性、及びR脂質を含むいくつかの実施態様では、アミノ酸残基は、ランダム配列、交互配列又はブロック配列に配置され得る。Rカチオン及びR中性の表示は、それぞれカチオン性部分R5及び中性部分R4を含むアミノ酸残基と同等であることを理解されたい。一般的な部分R脂質は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のN-脂質化残基の位置に応じて、脂質部分R4及び脂質部分R3を有するアミノ酸残基の両方を含むと理解され得る。
【0074】
カチオン性及び中性スペーサーアミノ酸残基の交互配列の一例は、Rカチオン-R中性-Rカチオン-R中性、又はR中性-Rカチオン-R中性-Rカチオンによって表すことができる。カチオン性及び脂質化アミノ酸残基の交互配列の別の例は、Rカチオン-R脂質-Rカチオン-R脂質又はR中性-Rカチオン-R中性-Rカチオンによって表すことができる。ブロック配列のいくつかの例は、Rカチオン-Rカチオン-Rカチオン-R中性-R中性-R中性、R中性-R中性-R中性-Rカチオン-Rカチオン-Rカチオン、Rカチオン-Rカチオン-Rカチオン-R脂質-R脂質-R脂質、又はR脂質-R脂質-R脂質-Rカチオン-Rカチオン-Rカチオンによって表すことができる。さらにいくつかの実施態様では、カチオン性部分、中性スペーサー部分、及び脂質化部分は、オリゴペプチド化合物全体内の異なる繰り返しサブユニットセグメントについてブロック配列及び交互配列中に配置され得る。例えば、いくつかの実施態様では、カチオン性ペプチド化合物内に、Rカチオン-R中性-R中性-Rカチオン-R中性-R中性などのより大きなオリゴマーユニットの繰り返しモチーフが存在し得る。他の実施態様では、カチオン性ペプチド化合物は、交互のカチオン性及び中性残基のブロックと組み合わされたN-脂質化残基のブロックを含み得る。
【0075】
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、カチオン性部分R5を有する少なくとも1つのカチオン性アミノ酸残基を含む。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の骨格は、「カチオン性ドメイン」又は「カチオン性ブロック」を含む。カチオン性ドメインは、複数のカチオン性部分R5、例えば、少なくとも2つのカチオン性残基を有するオリゴペプチド鎖内の連続するアミノ酸残基のセグメントとして広く理解され得る。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、カチオン性ドメインを含み、ここで、カチオン性ドメインは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つのカチオン性アミノ酸残基を含む。
【0076】
カチオン性ドメインは、例えば、連続する直鎖状配列に複数のR5カチオン性部分を有するアミノ酸残基のブロックを含み得る(例えば、R5R5R5又はRカチオンRカチオンRカチオン)。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、「カチオン性ドメイン」を含み、ここで、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、R5カチオン性部分を有する少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの連続するアミノ酸残基を含む。
【0077】
他の実施態様では、「カチオン性ドメイン」は、隣接するアミノ酸残基のブロックを含み得、ここで、複数のカチオン性残基は、2つのカチオン性残基の間に間隔を置いて配置された追加の非カチオン性(すなわち、中性又は脂質化)残基を特徴とし、その結果、ブロック内のカチオン性残基のいずれも、別のカチオン性残基に直接結合しない。例えば、いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、「カチオン性ドメイン」を含み、ここで、カチオン性ドメインは、カチオン性部分R5を有する少なくとも2つのカチオン性アミノ酸残基を含み、かつ、カチオン性ドメイン内の少なくとも2つのカチオン性アミノ酸残基のそれぞれは、中性スペーサー又は脂質部分R4を有する少なくとも1つ又は少なくとも2つのアミノ酸残基によって隔てられている。いくつかの実施態様では、非カチオン性残基は、カチオン性ドメイン内の2つのカチオン性残基の間に、均一な長さの規則的な間隔で交互配置される。カチオン性ドメインが、カチオン性残基の間に交互配置された非カチオン性残基を含むいくつかの実施態様では、カチオン性ドメインは、繰り返し(二量体、三量体、四量体など)サブユニットを含むドメインとして記述され得る。これらのサブユニットには、限定されるものではないが、-RカチオンR中性-、-RカチオンR中性R中性-、-RカチオンR脂質-、-RカチオンR脂質R脂質-、-RカチオンR中性R脂質-、又は-RカチオンR脂質R中性-が含まれる。他の実施態様では、非カチオン性残基は、カチオン性ドメイン内の2つのカチオン性残基の間に散在しており、カチオン性残基の各対の間に様々な数の非カチオン性残基がある。カチオン性ドメインがカチオン性残基の間に散在する非カチオン性残基を含む特定の実施態様では、カチオン性残基の各対は、少なくとも1つの非カチオン性残基によって独立して隔てられている。
【0078】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がカチオン性ドメインを含むいくつかの実施態様では、各R
5は、
である。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドがカチオン性ドメインを含む他の実施態様では、各カチオン性部分R
5は、
であり、各中性スペーサー部分は、
である。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドが、1つ又は複数の二量体又は三量体サブユニットを含むカチオン性ドメインを含む特定の実施態様では、各カチオン性部分R
5は、
であり、各中性スペーサー部分は、
である。さらに他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、1つ又は複数の三量体サブユニット-R
カチオンR
中性R
中性-を含むカチオン性ドメインを含み、各カチオン性部分R
5は、
であり、各中性スペーサー部分は、
である。
【0079】
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、1つ若しくは複数の異なるカチオン性部分(Rカチオン1、Rカチオン2、Rカチオン3など)、1つ若しくは複数の異なる中性スペーサー部分(R中性1、R中性2、R中性3など)、及び/又は1つ若しくは複数の異なる脂質部分(R脂質1、R脂質2、R脂質3、など)を含み得る。一般的なカチオン性及び中性スペーサーアミノ酸残基の配列又は配置の上記の例は、本開示のペプチド化合物に限定することを意図するものではないことを認識すべきである。上記で一般的に説明されているように、ランダム、交互、又はブロック配列中に存在し得るカチオン性、中性スペーサー、及び脂質部分は、より大きなブロック又は交互の構造モチーフ内の個々のカチオン性部分、中性部分、及び脂質部分の特定の配列中にも存在し得る。例えば、残基のいくつかの例示的な配置は、限定されるものではないが、以下を含み得る:Rカチオン1R中性1R中性1R脂質1Rカチオン1R中性1R中性1R脂質1Rカチオン1R中性1R中性1、Rカチオン1R中性1R中性1Rカチオン1R中性1R中性1Rカチオン1R中性1R中性1R脂質1R脂質1、R脂質1Rカチオン1R中性1R脂質1Rカチオン1R中性1-R脂質2Rカチオン2R中性2R脂質2Rカチオン2R中性2、R脂質1R脂質2R脂質3R脂質4R中性1R中性2Rカチオン1R中性1R中性2R脂質1R脂質2R脂質3R脂質4、又はR脂質1R脂質2R脂質1R脂質2Rカチオン1R中性1Rカチオン1R中性1R脂質1R脂質2R脂質1R脂質2。
【0080】
側鎖の機能化及びペプチドコンジュゲート化合物
上記のように、オリゴペプチド骨格は、主に、N位にカチオン性、中性スペーサー、又は脂質部分(R4及びR5)を有する天然又は非天然に存在するアミノ酸に見られる側鎖部分(Ra及びRb)を有するアミノ酸残基を含む。
【0081】
一態様では、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のRa、Rb、R4、及びR5基は、治療剤及び/又は小分子若しくは抗体などの標的要素に共有結合するために使用することができる反応性リンカー基をさらに含み得る。これらの追加の官能基はまた、合成又は脱保護条件と適合しないか(酸に不安定なリンカーなど)、或いは適切な保護基戦略が利用できない(例えば、ポリアミン)カチオン性基を含み得る。反応性基は、例えば、当技術分野で知られている化学的方法により、既存の側鎖Ra及び/若しくはRb、又はN位のR5のカチオン性部分、R4の中性スペーサー若しくは脂質部分に付加することができる。あるいは、所望の反応性部分を有するRa、Rb、R4、又はR5基が対応する遊離アミンとして商業的に入手可能である場合、対応する遊離アミンは、ペプチド鎖の一般的な合成中に(例えば、サブモノマー合成中に)組み込むことができる。
【0082】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、反応性基又はリンカー基を含む1つ又は複数のアミノ酸残基を含む。適切な反応性基には、限定されるものではないが、エステル、アミド、イソシアネート、チオール、又は「クリック」ケミストリー適合性部分(例えば、アジド、アルキニル)が含まれ得る。
【0083】
別の態様では、本開示はさらに、ペプチド化合物が治療剤及び/又は標的化要素に共有結合又はコンジュゲートしている、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を提供する。特定の実施態様では、治療剤及び/又は標的化要素は、小分子、ペプチド配列、抗体若しくは抗体断片、アプタマー、単糖若しくはオリゴ糖(例えば、ガラクトース)、又はグリカンである。
【0084】
特定の生理学的条件下で感受性であるか又は不安定なリンカー基又は結合は、特定の器官又は細胞への標的化送達と、それに続く細胞内(へ)の治療剤及び/又はポリアニオン性物質の選択的放出を可能にするために有用であり得る。さらに、不安定な結合はまた、ポリアニオン性物質の送達後に、細胞(又は器官、又は全身)からの第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性化合物の消失及びクリアランスを促進し得る。特定の実施態様では、リンカー基は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と治療剤又は標的化要素との間の共有結合が、加水分解的に不安定、化学的に不安定、pHに不安定、光に不安定、熱に不安定、又は酵素的に切断可能であるように選択される。
【0085】
末端(キャッピング)残基と保護末端基
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、そのN末端及び/又はC末端で、脂質部分でN-置換されている(「N-脂質化」)アミノ酸残基並びに/又はオリゴエチレングリコール及び/若しくはポリエチレングリコールでN-置換されている(「N-PEG化」)アミノ酸残基によって、さらにキャップされるオリゴペプチド骨格を含む。カチオン性ペプチド化合物のN-脂質化は、化合物並びに化合物とポリアニオン種との間に形成された任意の複合体に好ましい親油性を与える。N-PEG化は、in vivoでの粒子形成及び凝集に対してより良い制御を提供する。N末端及びC末端の末端アミノ及びカルボン酸部分は、保護末端基でさらにキャップされ得る。
【0086】
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化及び/又はN-PEG化されたアミノ酸残基を含み得る。本明細書で提供されるカチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化又はN-PEG化された少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物である。他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物である。さらに他の実施態様では、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化及びN-PEG化アミノ酸残基の両方を含む。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物である。
【0087】
脂質部分
上記のように、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N末端及び/又はC末端にアミノ酸残基を含み得、ここで、アミノ酸残基は脂質部分でN-置換されている、すなわち「N-脂質化」されている。本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物のN末端及び/又はC末端でのN-脂質化アミノ酸残基の組み込みは、化合物の親油性を増加させる。カチオン性ペプチド化合物の親油性の増加は、細胞膜の脂質二重層などの疎水性環境に対する親和性を増強し、したがって、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、並びにそれらのポリアニオン性化合物との任意の複合体が細胞内に輸送される傾向を高める。
【0088】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化される。いくつかの実施態様では、本開示の第三級アミン脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N末端にN-脂質化アミノ酸残基を含む。他の実施態様では、本開示の第三級アミン脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、C末端にN-脂質化アミノ酸残基を含む。特定の実施態様では、本開示の第三級アミン脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N末端及びC末端にN-脂質化アミノ酸残基を含む。
【0089】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物のN末端におけるN-脂質化アミノ酸残基の数は、nによって表される。他の実施態様では、本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物のN末端におけるN-脂質化アミノ酸残基の数は、sによって表される。
【0090】
いくつかの実施態様では、nは0から8までの整数である。特定の実施態様では、nは0から5までの整数である。他の実施態様では、nは0、1、2、3、4、5、6、又は7の整数である。さらに他の実施態様では、nは1、2、3、又は4の整数である。いくつかの実施態様では、sは0から8までの整数である。特定の実施態様では、sは0から5までの整数である。他の実施態様では、sは0、1、2、3、4、5、6、又は7の整数である。さらに他の実施態様では、sは1、2、3、又は4の整数である。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がN-脂質化されているいくつかの実施態様では、n又はsの少なくとも1つは非ゼロである。いくつかの実施態様では、nは非ゼロである。他の実施態様では、sは非ゼロである。特定の実施態様では、n及びsの両方が非ゼロである。
【0091】
いくつかの実施態様では、nとsの合計は、1から8、2から7、又は4から6の整数である。他の実施態様では、nとsの合計は、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4、任意選択で、2、3、又は4である。
【0092】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化残基のブロック、すなわち「N-脂質ブロック」を含み、ここで、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、互いに隣接する少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つのN-脂質化残基(例えば、R脂質R脂質R脂質)を含む。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化残基のブロックを含み、ここで、nは、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4である。他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、sが少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4であるN-脂質化残基のブロックを含む。
【0093】
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドのN-脂質化アミノ酸残基は、脂質部分R3でN-置換されている。本開示の脂質部分は、中性である(すなわち、電荷を持たない、又は正味荷電がゼロである)疎水性又は親油性部分を含み得る。本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性化合物の脂質部分は、天然又は合成のいずれかに由来し得る。各R3は、独立して、同じであっても異なっていてもよい脂質部分である。いくつかの実施態様では、各R3は同じである。他の実施態様では、各R3は異なる。
【0094】
N-脂質化アミノ酸残基の特定の配列又は配置は、核酸との複合体形成及び核酸の送達を改善するために特に有用であり得ることを認識すべきである。例えば、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性化合物が、2つの異なる脂質部分R3a及びR3bのうちの1つを有する混合N-脂質化アミノ酸残基のセットを含むいくつかの実施態様では、N-脂質化アミノ酸残基は、N末端又はC末端のいずれかに交互又はブロック配列中に配置され得る。N-脂質化アミノ酸残基の交互配列の1つの例は、R3a-R3b-R3a-R3b又はR3b-R3a-R3b-R3aによって表すことができる。ブロック配列の例は、R3a-R3a-R3b-R3b又はR3b-R3b-R3a-R3aによって表すことができる。他の実施態様では、N-脂質化アミノ酸残基の配列は、ランダムに順序付けられてもよい。2つのN-脂質化アミノ酸残基の配列又は配置の上記の例は、限定することを意図するものではないことを認識すべきである。さらに、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、R3の2つ以上の異なる脂質部分を含み得、これは、一般に上記のように、ランダム、交互又はブロック配列中に存在し得る。
【0095】
適切な脂質部分は、例えば、置換されていてもよい分岐若しくは直鎖脂肪族部分、又は脂肪酸、ステロール、及びイソプレノイドを含む天然脂質化合物に由来する置換されていてもよい部分を含み得る。
【0096】
いくつかの実施態様では、脂質部分は、約6から約50個の炭素原子又は約10から約50個の炭素原子を有する分岐又は直鎖脂肪族部分を含み得、任意選択で1つ又は複数のヘテロ原子を含み、任意選択で1つ又は複数の二重結合又は三重結合(すなわち、飽和又はモノ若しくはポリ不飽和)を含む。特定の実施態様では、脂質部分は、置換されていてもよい脂肪族、直鎖又は分岐部分を含み得、各疎水性末端は、独立して、約8から約30個の炭素原子又は約6から約30個の炭素原子を有する。特定の実施態様では、脂質部分は、例えば、脂肪酸及び脂肪アルコールに由来する脂肪族炭素鎖を含み得る。いくつかの実施態様では、各R3は、独立して、C8-C24-アルキル又はC8-C24-アルケニルであり、C8-C24-アルケニルは、任意選択でモノ又はポリ不飽和である。いくつかの実施態様では、各R3は、C6-C18アルキル又はC6-C18アルケニルである。特定の実施態様では、各R3は、C8-C12アルキルである。さらに他の実施態様では、各R3は、n-デシルなどのC10-アルキルである。いくつかの実施態様では、各R3は、独立して、3-エチルヘキサ-1-イル、カプリリル、カプロイル、オレイル、ステアリル、リノレイル、ミリスチル、及びラウリルからなる群から選択される。他の実施態様では、各R3は、独立して、オレイル、ステアリル、リノレイル、ミリスチル、及びラウリルからなる群から選択される。
【0097】
前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに他の実施態様では、各R
3は、独立して、
である。前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに他の実施態様では、各R
3は、独立して、式
の脂質であり、ここで、R
8は、約6から約50個の炭素原子又は約10から約50個の炭素原子を有し、任意選択で1つ又は複数のヘテロ原子を含み、任意選択で1つ又は複数の二重結合又は三重結合を含む分岐又は直鎖脂肪族部分である。特定の実施態様では、各R
3は、独立して、
である。
【0098】
本発明の実施において使用される天然脂質部分は、例えば、リン脂質、グリセリド(ジグリセリド又はトリグリセリドなど)、グリコシルグリセリド、スフィンゴ脂質、セラミド、飽和及び不飽和ステロール、イソプレノイド、並びにその他の同様の天然脂質から誘導することができる。
【0099】
他の適切な脂質部分は、例えばナフタレニル若しくはエチルベンジルを含む、置換されていてもよいアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、若しくはアリールアルキル部分などの親油性炭素環式若しくは芳香族基、又は、例えば、ステロールエステル及びワックスエステルを含むエステル官能基を含む脂質を含み得る。さらに他の実施態様では、脂質部分R
4は、
である。
【0100】
エチレングリコール部分
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、N末端及び/又はC末端に、エチレングリコールのオリゴマー又はポリマーでN-置換された、すなわち、オリゴエチレングリコール及び/又はポリエチレングリコールでN-置換されたキャッピングアミノ酸残基を含み得る。本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物へのオリゴ及び/又はポリエチレングリコール部分の組み込みは、核酸と形成された複合体の粒子安定性を促進し、in vivoでの粒子凝集を防止し得る。
【0101】
用語「PEG化」は、本明細書では、オリゴエチレングリコール、又はポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせでN-置換され得る末端アミノ酸残基を含むカチオン性ペプチド化合物を記述するために使用されることを認識すべきである。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-PEG化されている。
【0102】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、以下の式(I)の断片に示されるように、N末端にN-PEG化アミノ酸残基を含む:
【0103】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がN末端にN-PEG化アミノ酸残基を含む特定の実施態様では、mは、N末端のN-PEG化アミノ酸残基の数を表し、各R2は、独立して、式-CH2CH2O(CH2CH2O)uR2aのエチレングリコール部分であり、ここで、R2aは-H又はC1-C4-アルキルである。いくつかの実施態様では、R2aは、-H、-CH3、又はCH2CH3である。特定の実施態様では、R2aは、-Hである。他の実施態様では、R2aは、-CH3である。さらに他の実施態様では、R2aは、-CH2CH3である。
【0104】
いくつかの実施態様では、mは0から10までの整数、0から3までの整数、又は4から10までの整数である。いくつかの実施態様では、各uは、独立して、2から200のまでの整数、2から100までの整数、2から50までの整数、50から200までの整数、50から100までの整数、100から200までの整数、又は150から200までの整数である。
【0105】
特定の実施態様では、mは0から3までの整数であり、各uは20から200まで、又は任意選択で30から50までの整数である。特定の実施態様では、mは0から3までの整数であり、uは40から45までの整数である。さらに他の実施態様では、mは1であり、uは40から45までの整数である。他の実施態様では、mは4から10までの整数であり、各uは2から10までの整数である。特定の実施態様では、mは4から10までの整数であり、uは2から5までの整数である。さらに他の実施態様では、mは7から10までの整数であり、uは3である。
【0106】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、以下の式(I)の断片に示されるように、C末端にN-PEG化アミノ酸残基を含む:
【0107】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がC末端にN-PEG化アミノ酸残基を含む特定の実施態様では、tは、N末端のN-PEG化アミノ酸残基の数を表し、各R6は、独立して、式-CH2CH2O(CH2CH2O)vR6aのエチレングリコール部分であり、ここで、R6aは-H又はC1-C4-アルキルである。いくつかの実施態様では、R6aは、-H、-CH3、又はCH2CH3である。特定の実施態様では、R6aは、-Hである。他の実施態様では、R6aは、-CH3である。さらに他の実施態様では、R6aは、-CH2CH3である。
【0108】
いくつかの実施態様では、tは0から10までの整数、0から3までの整数、又は4から10までの整数である。いくつかの実施態様では、各uは、独立して、2から200のまでの整数、2から100までの整数、2から50までの整数、50から200までの整数、50から100までの整数、100から200までの整数、又は150から200までの整数である。
【0109】
いくつかの実施態様では、tは0から3までの整数であり、各vは30から50までの整数である。特定の実施態様では、tは0から3までの整数であり、vは40から45までの整数である。さらに他の実施態様では、tは1であり、vは40から45までの整数である。他の実施態様では、tは4から10までの整数であり、各vは2から10までの整数である。特定の実施態様では、tは4から10までの整数であり、vは2から5までの整数である。さらに他の実施態様では、tは7から10までの整数であり、vは3である。
【0110】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物がN-PEG化されているいくつかの実施態様では、m又はtの少なくとも1つは非ゼロである。いくつかの実施態様では、mは非ゼロである。他の実施態様では、tは非ゼロである。特定の実施態様では、m及びtの両方が非ゼロである。
【0111】
N-脂質化及び/又はN-PEG化
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化及び/又はN-PEG化されたアミノ酸残基を含み得る。本明細書で提供されるカチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化又はN-PEG化された少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のいくつかの実施態様では、m、n、s、又はtのうちの少なくとも1つは非ゼロである。
【0112】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、n及びsの少なくとも1つが非ゼロである第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物である。特定の実施態様では、n及びsの両方が非ゼロである。さらに特定の実施態様では、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、式(Ia)の第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチド化合物であり:
式中、n及びsの少なくとも1つは非ゼロであり、R
1、R
3、R
4、R
5、R
7、R
a、R
b、o、p、q、及びrは、式(I)について定義された通りである。式(Ia)の化合物の特定の実施態様では、n及びsの両方が非ゼロである。
【0113】
他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、m及びtの少なくとも1つが非ゼロである第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物である。特定の実施態様では、m及びtの両方が非ゼロである。他の実施態様では、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、式(Ib)の第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物であり:
式中、m及びtの少なくとも1つは非ゼロであり、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7、R
a、R
b、o、p、q、及びrは、式(I)について定義された通りである。式(Ib)の化合物の特定の実施態様では、m及びtの両方が非ゼロである。
【0114】
さらに他の実施態様では、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N-脂質化及びN-PEG化アミノ酸残基の両方を含む。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物である。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物が第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物である特定の実施態様では、m及びtの少なくとも1つが非ゼロであり、n及びsの少なくとも1つが非ゼロである。
【0115】
さらに別の実施態様では、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、式(Ic)の第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物であり:
式中、m及びtの少なくとも1つは非ゼロであり、n及びsの少なくとも1つは非ゼロであり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
a、R
b、o、p、q、及びrは式(I)で定義された通りである。
【0116】
他の実施態様では、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物はまた、N末端又はC末端に、N-PEG化残基と同様の遮蔽効果を提供する他の中性遮蔽ポリマー又は部分を有するN-置換アミノ酸残基を含み得る。これらには、ヒドロキシルアルキル、ヒアルロン酸、多糖類、ポリリン酸及びポリホスホエステル、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリオール、親水性ポリペプチド、又は他の合成親水性ポリマーなどの例が含まれ得る。
【0117】
N末端及びC末端基
本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、そのN末端及びC末端がそれぞれ遊離アミン形態及び遊離酸の形態で提供されてもよく、又は保護された形態で提供されてもよい。
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N末端及び/又はC末端残基にさらに保護基又は末端キャッピング基を含む。
【0118】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、N末端残基に保護基又は末端キャッピング基R1を含む。いくつかの実施態様では、R1は、-H、アルキル、アルキルアリール、-COR1a、-CH2-COR1a、カチオン性部分、脂質部分、又はオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール部分であり、ここで、R1aは、-H、-OH、アルキル、アリール、アルキルアリール、-O-アルキル、-O-アルキルアリール、又は脂質部分である。特定の実施態様では、R1は、-H、アルキル、アルキルアリール、-COR1a、又は脂質部分であり、R1aは、-H、-OH、アルキル、アリール、アルキルアリール、-O-アルキル、又は-O-アルキルアリールである。R1が脂質部分である特定の実施態様では、脂質部分はリン脂質ではない。R1がアルキル又は-COR1aであり、R1aがアルキルであるさらに他の実施態様では、アルキルは、-OH又はハロによって置換されていてもよい。
【0119】
他の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、C末端残基に保護基又は末端キャッピング基R7を含む。いくつかの実施態様では、R7は、-H、アルキル、アシル、-OH、-OR7a、-NH2、-NHR7a、カチオン性部分、脂質部分、又はオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール部分であり、ここで、R7aは、アルキル、アシル、又は脂質部分である。いくつかの実施態様では、R7は、-H、アルキル、アシル、-OH、-OR7a、-NH2、-NHR7a、又は脂質部分であり、ここで、R7aは、アルキル、アシル、又は脂質部分である。R7が脂質部分である特定の実施態様では、脂質部分はリン脂質ではない。
【0120】
さらに別の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のN末端及びC末端は、R1及びR7が反応性リンカー基などの追加の官能基を有するように選択されるか、又はさらに修飾され得る。
【0121】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドのR1及び/又はR7は、独立して、1つ又は複数の反応性リンカー基を含む。適切な反応性基には、限定されるものではないが、エステル、アミド、イソシアネート、チオール、又は「クリック」ケミストリー適合性部分(例えば、アジド、アルキニル)が含まれ得る。
【0122】
また、反応性リンカー基は、標的化要素又は治療剤などの他の有用な化合物をペプチド化合物に共有結合させるために使用することができる。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、治療剤及び/又は標的化要素に共有結合又はコンジュゲートしている。特定の実施態様では、治療剤及び/又は標的化要素は、小分子、抗体又は抗体断片である。
【0123】
さらに、R
1及びR
7のための追加の官能基はまた、合成又は脱保護条件と適合しないか(酸に不安定なリンカーなど)、或いは適切な保護基戦略が利用できない(例えば、ポリアミン)カチオン性基を含み得る。さらに別の実施態様では、R
1はポリアミンである。R
1がポリアミンであるいくつかの実施態様では、ポリアミンは、
である。特定の実施態様では、ポリアミンは、
からなる群から選択される。
【0124】
上記のように、特定の生理学的条件下で感受性であるか又は不安定なリンカー基又は結合は、特定の細胞への標的化ポリアニオン物質の送達を促進し、消失などの特定の薬物動態特性を改善し得る。特定の実施態様では、リンカー基は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と治療剤又は標的化要素との間の共有結合が、加水分解的に不安定、化学的に不安定、pHに不安定、光に不安定、熱に不安定、又は酵素的に切断可能であるように選択される。
【0125】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の合成
別の態様では、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を調製する方法である。
【0126】
既存のリピトイド構築物は、通常、N末端での直接的な脂質結合に限られるか、又は残基側鎖上の反応性リンカー基を用いて、脂質部分をオリゴペプチド化合物に間接的にコンジュゲートさせるものに限られる。さらに、リピトイドの場合、脂質をオリゴペプチド化合物とコンジュゲートさせるための修飾は、オリゴペプチドが完全に合成された後にのみ実行される。本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、脂質部分をオリゴペプチドコアにコンジュゲートさせるための追加のリンカー種を必要とせずに合成することができる。本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物について、脂質及びエチレングリコール部分は、ペプチドそれ自体内の窒素原子、つまり、アミノ酸残基のアミド窒素又はN位に共有結合で直接結合している。したがって、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、ペプチド鎖中にN-置換残基を生成するための当技術分野で知られている方法によって、完全に合成することができる。
【0127】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、残基がN位にカチオン性、中性、脂質、又はオリゴ/ポリエチレングリコール部分を有するかどうかにかかわらず、付加される各アミノ酸残基の一連のアシル化(アミド化)及び求核置換(アミノ化)反応によって調製することができる。本明細書に記載のカチオン性ペプチド化合物は、ペプチド鎖への個々の残基の逐次付加によって合成される。残基の逐次付加は、アミノ酸の所望の配列及び長さが達成されるまで繰り返し実行され得る。
【0128】
本発明の化合物は、固相法及び液相法の両方によって合成することができる。固相合成によって、本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含むN-置換ペプチドを調製するための例示的な方法が以下に論じられ、
図3A-3Eに示される。
【0129】
図3Aに示されるように、末端第二級アミンを有する固体樹脂支持体が、合成の開始時に提供される。アシル化剤を、適切なペプチドカップリング試薬と溶媒とともに末端第二級アミンに加え、末端第二級アミンとアシル化剤との間にアミド結合を形成する。アシル化剤は、好ましくはアセチル化剤である。アシル化剤は、α炭素でのアミド化とそれに続くアミノ化を促進するために、少なくとも2つの適切な脱離基を含む。特定の実施態様では、アシル化剤はハロ酢酸である。他の実施態様では、アシル化剤はブロモ酢酸である。
【0130】
図3Bでは、
図3Aにおいて生成されたアシル化生成物は、所望の置換された第一級又は第二級アミンと反応して、対応するN-置換末端アミノ酸残基を提供する。選択された第一級又は第二級アミンは、ブロモ酢酸中の臭素などの脱離基をα炭素上に置換し、対応するアミノ化生成物を生成する。いくつかの実施態様では、第一級又は第二級アミンは、NHR
pR
2、NHR
pR
3、NHR
pR
4、NHR
pR
5、及びNHR
pR
6からなる群から選択されるアミンであり、ここで、R
pは-H又は保護基であり、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物について定義された通りである。
【0131】
アミド化及びアミノ化反応は、所望のペプチド配列が達成されるまで(
図3D)、連続して繰り返される(
図3C)。本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を調製する方法は、さらに、連続するアミド化/アミノ化反応の過程でペプチド鎖の反応性部分との望ましくない反応を防ぐための保護及び脱保護工程を含み得ることを認識すべきである。例えば、保護基R
pは、合成中に本明細書に記載のペプチド化合物に沿った任意の場所で、α炭素での側鎖及び/又はN-置換基に付加され得る。適切な保護基R
pは、当技術分野で知られている任意の保護基、特にBoc/Bzl又はFmoc/tBuなどの直交性保護スキームにおけるペプチド合成用に適した保護基を含み得る。
【0132】
N末端及びC末端での末端基の取り込み(R1及びR7)、並びにオリゴペプチド骨格に沿ったアミノ酸残基(Ra、Rb、R4、R5)の末端基及び/又は側鎖の官能化は、当技術分野で知られている方法によって行うことができる。当業者は、適切な方法の選択、及び固相合成全体に対する追加の官能化工程のタイミングは、付加される末端基及び/又はリンカー基、並びにペプチド化合物上に存在する他の部分及び/又は保護基との前記方法の適合性に依存するであろうことを認識するであろう。
【0133】
所望のペプチド化合物は、上記の合成において利用される任意の保護スキームに応じて、塩酸、臭化水素酸、又はトリフルオロ酢酸を含む酸性条件などの適切な反応条件下で固体樹脂支持体から切断される(
図3E)。固体樹脂支持体からの第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の切断は、溶液中に対応する遊離カチオン性ペプチド化合物を生成する。
【0134】
カチオン性ペプチド化合物を溶液から単離及び精製するために、例えば、固体樹脂支持体からのペプチド含有溶液の濾過及び単離された濾液の凍結乾燥を含むさらなる工程を実施して、固体生成物を提供することができる。
【0135】
樹脂の切断を引き起こすために用いられる酸性条件のため、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、対応する酸性塩の形態で存在し得ることを認識すべきである。例えば、いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、その塩形態である。特定の実施態様では、塩の形態は、酸付加塩である。いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の塩は、塩酸塩(塩酸付加塩)、臭化水素酸塩(臭化水素酸付加塩、又はトリフルオロ酢酸塩(トリフルオロ酢酸付加塩)である。特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の塩は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のトリフルオロ酢酸付加塩又はトリフルオロ酢酸塩である。
【0136】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の酸付加塩形態は、1つ又は複数の薬学的に許容される塩形態を得るために、当技術分野の方法(例えば、イオン交換)を介してさらに修飾され得る。「薬学的に許容される」という句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又は製剤が投与されている対象と、化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを示す。用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、限定されるものではないが、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸など、並びに、有機酸の脂肪族クラス、脂環式クラス、芳香族クラス、アリール脂肪族クラス、複素環式クラス、カルボン酸クラス、及びスルホン酸クラスから選択される有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、安息香酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシレート」、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸などにより形成される薬学的に許容される塩を含み得る。
【0137】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の塩は、薬学的に許容される塩である。特定の実施態様では、塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、又はサリチル酸塩である。
【0138】
ポリアニオン性化合物との第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド複合体、その製剤、並びに複合体とその製剤を調製する方法
ポリアニオン性化合物と第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド複合体
本明細書に記載されるように、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、核酸などの1つ又は複数のポリアニオン性化合物との複合体形成に有用であり得る。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性化合物との複合体を使用して、リピトイド1などの他のポリカチオン性構築物と形成される複合体と比較して改善された効率でポリアニオン性化合物を細胞内部に送達することができる。
【0139】
一態様では、本開示は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物と複合体を形成した、本明細書に記載の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩のうちの1つ又は複数を含む複合体を提供する。いくつかの実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、核酸を含む。本明細書で使用される核酸には、DNA、RNA、及び/又はそれらのハイブリッドなどの天然に存在する核酸の他、ホスホロチオエートなどの非天然骨格及び修飾骨格結合、非天然及び修飾塩基、並びに非天然及び修飾末端を有する非天然に存在するバリエーションが含まれる。例示的な核酸には、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、miRNA、及びsiRNAが含まれる。
【0140】
核酸は、組換え的に生成された分子又は化学的に合成された分子であり得る。核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、及び四本鎖、並びに一本鎖及び二本鎖領域を含むより複雑な三次元形態であり得る。
【0141】
核酸の種類に応じて、核酸の長さ(必要に応じてヌクレオチド単位又は塩基対(bp)で定義される)は異なる場合がある。核酸がmRNAであるいくつかの実施態様では、mRNAは、100から10000ヌクレオチド単位、又は1000から3000ヌクレオチド単位を有し得る。核酸がDNAである他の実施態様では、DNAは、5000bpから20000bp、又は約10000bpを有し得る。
【0142】
核酸がmRNAであるいくつかの実施態様では、mRNAは、タンパク質又はペプチドをコードするmRNAである。核酸がmRNAであるいくつかの実施態様では、mRNAは、オリゴペプチド又はポリペプチドを含むペプチドをコードするmRNAである。特定の実施態様では、mRNAは、ポリペプチドをコードするmRNAである。さらに別の実施態様では、mRNAは、タンパク質をコードするmRNAである。他の実施態様では、mRNAは、ペプチドをコードするmRNAである。上記のように、mRNAは天然に存在してもよく(例えば、単離された腫瘍RNA)、又は合成であってもよい(例えば、in vitro転写によって生成される)。mRNAの合成又は非天然に存在するバリエーションの場合、mRNAは、ホスホロチオエートなどの修飾骨格結合を有する非天然骨格、非天然及び修飾塩基、並びに/又は非天然及び修飾末端を含み得る。核酸がmRNAである特定の実施態様では、mRNAは、自己増幅配列又は配列内リボソーム進入部位などの特別な配列を含み得る。
【0143】
いくつかの実施態様では、2つの以上の特定の核酸の組み合わせ送達は、治療適用に特に有用であり得る。例えば、いくつかの実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、CRISPR配列としてのsgRNA(単一ガイドRNA)及びCas9をコードするmRNAの組み合わせを含む。さらに別の実施態様では、核酸はまた、CRISPR/Cas9リボ核タンパク質複合体などのタンパク質と複合体を形成することができる。
【0144】
いくつかの実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、核酸ではないアニオン性又はポリアニオン性化合物を含み得る。適切なアニオン性化合物には、限定されるものではないが、タンパク質、ポリリン酸、又はヘパリンが含まれ得る。いくつかの実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、1つ又は複数のタンパク質を含む。一実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、Cas9タンパク質を含む。他の実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、ポリリン酸を含む。さらに他の実施態様では、1つ又は複数のポリアニオン性化合物は、ヘパリン又は他のグリコサミノグリカン誘導体を含む。
【0145】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドは、ポリアニオン性カーゴを細胞内に運び、送達するのために特に適しているが、本明細書に記載の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物はまた、細胞内への送達のために他の非アニオン性薬剤又はカーゴ(疎水性化合物を含む)と複合体を形成するために利用され得ることを認識すべきである。これらの他のカーゴは、限定されるものではないが、例えば、1つ又は複数の小分子活性剤若しくは原体(独立した治療薬として、又は核酸などの別の薬剤と組み合わせて)及び/又は免疫学的アジュバントを含み得る。これらの他のカーゴ分子は、複合体形成のために本明細書に記載のポリアニオン性化合物のいずれかと組み合わされてもされなくてもよいことをさらに認識すべきである。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の複合体は、エンドソームエスケープモジュレーター、TLRアゴニスト、及び化学療法剤を含む。他の実施態様では、本開示の複合体は、アジュバント又は免疫共刺激剤を含む。例えば、いくつかの実施態様では、複合体は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、リポ多糖(LPS)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される免疫学的アジュバントを含む。
【0146】
本明細書に記載の複合体は、核酸上のアニオン性リン酸基の数に対する、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド上のカチオン性基の数の比によって特徴づけることができる。いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸とを、カチオン:アニオン電荷比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、2:1から5:1の間のカチオン:アニオン電荷比で、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸を含む。さらに他の実施態様では、複合体は、3:1のカチオン:アニオン電荷比で、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸を含む。
【0147】
あるいは、本明細書に記載の複合体は、複合体中のポリアニオン性化合物及び/又は他のカーゴに対する第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の相対質量比によって特徴づけることができる。複合体中の成分の質量比は、複合体の調製において使用される各成分のストック溶液の既知の濃度と体積に基づいて容易に計算することができる。さらに、非アニオン性カーゴが複合体中に存在する場合、質量比は、非アニオン性物質を考慮しないカチオン:アニオン電荷比よりも、カーゴ全体に対する第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の相対量のより正確な表示を提供し得る。
【0148】
いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを、質量比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、2:1から5:1の間の質量比で、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを含む。さらに他の実施態様では、複合体は、3:1の質量比で、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを含む。
【0149】
複合体が核酸を含む特定の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸とを、質量比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸とを2:1から5:1の間の質量比で含む。さらに他の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと核酸とを3:1の質量比で含む。
【0150】
本開示の複合体は、少なくとも1つのポリアニオン性化合物若しくは他の適切なカーゴ化合物と複合体を形成した、式(I)の少なくとも1つの第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩を含むであろう。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の複合体は、1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含み得る。単一の複合体における本開示の複数のカチオン性ペプチド化合物の混合物及び組み合わせの使用は、特定の薬物動態学的及び薬力学的特性に適合した製剤の調製を可能にし得る。関連する薬物動態学的及び薬力学的特性には、限定されるものではないが、生体内分布、免疫原性、製剤安定性、カプセル化のパーセンテージ、トランスフェクション効率、血漿半減期などが含まれ得る。これらの特性の異なる組み合わせが、異なる適用のために必要になることもある。
【0151】
例えば、特定の実施態様では、複合体は、カチオンに富む1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と、高度に脂質化された1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物との組み合わせを含み得る。理論的には、そのような組み合わせは、(脂質化ペプチド化合物のおかげで)より大きな親油性遮蔽とともに(カチオンに富むペプチド化合物を介して)より大きな電荷安定化を提供することによって、ポリアニオン性化合物の改善された送達をもたらす可能性がある。さらに、個々の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物のそれぞれの個々の量は、所望の特性を達成するために調整され得ることを認識すべきである。いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物並びにポリアニオン性化合物に加えて、さらなる成分を含み得る。
【0152】
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド及び他の脂質成分と、ポリアニオン性化合物との複合体並びにその組成物
本開示はさらに、複合体を含む組成物を提供し、ここで、複合体は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び3つ以上の脂質成分を含む。前述のいくつかの実施態様では、複合体は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はカチオン性ペプチド化合物、並びに2つ以上の他の脂質成分を含む。1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物と共に、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はカチオン性ペプチド化合物を含む組成物及び複合体が2つ以上の脂質成分(本明細書に記載のリン脂質、構造脂質、及び/又は遮蔽脂質(例えば、PEG脂質)など)をさらに含むいくつかの実施態様では、組成物は脂質製剤として記述され得る。組成物が2つ以上の脂質成分を含む特定の実施態様では、脂質組成物は、多成分脂質製剤又は組成物として記述され得る。複合体が第三級アミノ脂質化及び/又はカチオン性ペプチド化合物、ポリアニオン性化合物、リン脂質、構造脂質、並びに遮蔽脂質を含む特定の実施態様では、組成物は脂質ナノ粒子を含む。組成物が脂質ナノ粒子複合体を含むさらに他の実施態様では、組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)組成物として特徴づけられ得る。
【0153】
カーゴとしてのポリアニオン性化合物の電荷中和に用いられる第三級アミノ脂質化及び/又はカチオン性ペプチド化合物に加えて、多成分脂質組成物及びその中の複合体は、構造脂質、リン脂質及び遮蔽脂質を含む他の脂質成分を含み得る。本明細書に記載の追加の脂質成分は、カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性物質の複合体に物理的構造と安定性を提供し、溶液中でのそれらの投与を容易にし、細胞内への複合体の取り込みを促進する。
【0154】
例えば、いくつかの実施態様では、本開示の組成物は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物と脂質成分との複合体を含み、ここで、脂質成分は、任意選択で、1つ又は複数の構造脂質;1つ又は複数のリン脂質、1つ又は複数の遮蔽脂質、並びに1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はそれらの塩を含む。いくつかの実施態様では、本開示の組成物は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物と脂質成分との複合体を含み、ここで、脂質成分は、任意選択で、1つ又は複数のリン脂質、1つ又は複数の遮蔽脂質、並びに1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はそれらの塩を含む。他の実施態様では、組成物は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物と脂質成分との複合体を含み、ここで、脂質成分は、1つ又は複数の構造脂質;1つ又は複数のリン脂質、1つ又は複数の遮蔽脂質、並びに1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はそれらの塩を含む。
【0155】
いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、任意選択で構造脂質、及びPEG脂質を含む。複合体が第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、任意選択で構造脂質、及びPEG脂質を含む特定の実施態様では、複合体は脂質ナノ粒子(LNP)又は両親媒性ナノ粒子(ANP)である。いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、構造脂質及びPEG脂質を含む。他の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、及びPEG脂質を含む。
【0156】
リン脂質は、本開示の複合体及び組成物に組み込まれ得る。リン脂質は、その両親媒性特性と細胞膜を破壊する能力により、溶液中の複合体をさらに安定化させるだけでなく、細胞のエンドサイトーシスを促進する。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される組成物は、脂質成分として1つ又は複数のリン脂質を含む複合体を含む。特定の実施態様では、1つ又は複数のリン脂質は、1つ又は複数の双性イオン性リン脂質を含む。
【0157】
いくつかの実施態様では、リン脂質は、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C 16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施態様では、リン脂質はDOPEである。
【0158】
エンドサイトーシスのための細胞膜の破壊を促進する、リン脂質によって提供される両親媒性特性は、リン脂質ではない双性イオン性脂質によって代替的に提供され得ることを認識すべきである。いくつかの実施態様では、組成物は、リン脂質ではない1つ又は複数の双性イオン性脂質を含む複合体を含む。さらに別の実施態様では、組成物は、1つ若しくは複数のリン脂質、1つ若しくは複数の双性イオン性脂質、又はそれらの任意の組み合わせを含む複合体を含む。多成分組成物内のポリアニオン性化合物の複合体に物理的安定性を付与し、複合体の親油性を増強して標的細胞との結合及びエンドサイトーシスを促進するために、本明細書に記載のように構造脂質を使用することができる。いくつかの実施態様では、本開示の組成物は、任意選択で、脂質成分として1つ又は複数の構造脂質を含む複合体を含む。いくつかの変形例では、組成物は、1つ又は複数の構造脂質を含む複合体を含む。
【0159】
本開示の組成物及び複合体に適した構造脂質には、ステロールが含まれ得るが、これに限定されない。いくつかの実施態様では、構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施態様では、構造脂質はコレステロールである。
【0160】
しかしながら、本開示のいくつかの実施態様では、本明細書で提供される組成物及び複合体は、構造脂質を含まないが、それでも非常に良好な送達効率を示すことに留意されたい。特定の他の実施態様では、本明細書で提供される組成物及び複合体は、構造脂質を含まない。本明細書に記載されるように、本開示の複合体及び組成物は、1つ又は複数の遮蔽脂質をさらに含み得る。PEG化脂質又はPEG脂質などの遮蔽脂質は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物に対する対電荷として、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物に電荷中和の追加層を提供し、細胞の食作用プロセスによるクリアランスを防ぐことができる。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される組成物は、脂質成分として1つ又は複数の遮蔽脂質を含む複合体を含む。
【0161】
いくつかの実施態様では、遮蔽脂質は、PEG脂質である。他の実施態様では、PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、PEG脂質は、PEG修飾DSPE(DSPE-PEG)、PEG修飾DPPE(DPPE-PEG)、及びPEG修飾DOPE(DOPE-PEG)からなる群から選択されるPEG修飾ホスファチジルエタノールである。特定の実施態様では、PEG脂質は、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DMG-PEG)、ジステアロイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DSG-PEG)、ジパルミトイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DPG-PEG)、及びジオレオイルグリセロール-ポリエチレングリコール(DOG-PEG)からなる群から選択される。特定の実施態様では、PEG脂質はDMG-PEGである。
【0162】
前述のPEG脂質中のPEG鎖の特定の分子量が、本開示の複合体への組み込みに特に有利であり得ることをさらに認識すべきである。例えば、いくつかの実施態様では、PEG鎖は、350から6000g/molの間、1000から5000g/molの間、又は2000から5000g/molの間の分子量を有する。特定の実施態様では、PEG脂質のPEG鎖は、約350g/mol、500g/mol、600g/mol、750g/mol、1000g/mol、2000g/mol、3000g/mol、5000g/mol、又は10000g/molの分子量を有する。他の特定の実施態様では、PEG脂質のPEG鎖は、約500g/mol、750g/mol、1000g/mol、2000g/mol、又は5000g/molの分子量を有する。例えば、特定の実施態様では、PEG化脂質は、ジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール2000(DMG-PEG2000)である。
【0163】
さらに別の実施態様では、1つ又は複数のPEG脂質は、少なくとも1つのオリゴ又はポリエチレングリコール部分を含む式(I)の第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物を含む。ペプチド鎖の骨格に沿って脂質部分とPEG部分の両方を収容するそれらの柔軟性のおかげで、それらの特定の置換基の性質に応じて、本開示の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、電荷中和のための脂質化カチオン性ペプチド化合物としてだけでなく、カチオン性化合物-ポリアニオン性化合物複合体を安定化するための適切な遮蔽脂質としても役立つことができる。式(I)の第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物は、式(I)の他の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と組み合わせることができることを認識すべきである。
【0164】
いくつかの実施態様では、PEG脂質は、本明細書に記載の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物であり、ここで、m及びtの少なくとも1つは非ゼロである(すなわち、N-PEG化)。さらに別の実施態様では、PEG脂質は、m及びtが、独立して、0から10までの整数であり、m及びtの少なくとも1つが非ゼロである、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物である。いくつかの実施態様では、PEG脂質は、式(Ib)の第三級アミノPEG化カチオン性ペプチド化合物である。さらに他の実施態様では、PEG脂質は、式(Ic)の第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性化合物である。
【0165】
上記のPEG脂質と同様に、前述の第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物におけるPEG鎖の特定の分子量は、本開示の複合体への組み込みに特に有利であり得る。例えば、いくつかの実施態様では、PEG鎖は、350から6000g/molの間、1000から5000g/molの間、又は2000から5000g/molの間の分子量を有する。特定の実施態様では、第三級アミノ脂質化及びPEG化カチオン性ペプチド化合物のPEG鎖は、約350g/mol、500g/mol、600g/mol、750g/mol、1000g/mol、2000g/mol、3000g/mol、又は5000g/molの分子量を有する。他の特定の実施態様では、PEG脂質のPEG鎖は、約500g/mol、750g/mol、1000g/mol、2000g/mol、又は5000g/molの分子量を有する。
【0166】
しかしながら、式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、少数のより長いポリエチレングリコール部分の代わりにいくつかの短いオリゴエチレングリコール部分を含み、複合体に同様の粒子安定化を提供し得ることを認識すべきである。PEG脂質が式(I)のN-PEG化カチオン性ペプチド化合物であるいくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物は、式-CH2CH2O(CH2CH2O)uR2a[ここで、各R2aは、独立して、-H又はC1-C4-アルキルである]の少なくとも1つのエチレングリコール部分R2を含む。他の実施態様では、式-CH2CH2O(CH2CH2O)vR6a[ここで、各R6aは、独立して、-H又はC1-C4-アルキルである]の少なくとも1つのエチレングリコール部分R6である。mが非ゼロである前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるいくつかの実施態様では、mは0から10までの整数であり、各uは、独立して、2から200までの整数である。tが非ゼロである前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるさらに別の実施態様では、tは0から10までの整数であり、各vは、独立して、2から200までの整数である。
【0167】
いくつかの実施態様では、PEG脂質は、本明細書に記載の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物であり、ここで、m及びtの少なくとも1つは非ゼロであり、n及びsの少なくとも1つは非ゼロである(すなわち、N-脂質化)。式(I)のN-PEG化カチオン性ペプチド化合物もN-脂質化されている特定の実施態様では、n及びsの少なくとも1つは非ゼロである。いくつかの実施態様では、nとsの合計は、少なくとも1、2、3、又は4である。いくつかの実施態様では、sは4である。さらに別の実施態様では、nは4である。
【0168】
上記のように、本開示の組成物は、1つ又は複数のポリアニオン性化合物、及び脂質成分を含む複合体を含み、ここで、脂質成分は、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、1つ又は複数のリン脂質、1つ又は複数の遮蔽脂質、並びに任意選択で1つ又は複数の構造脂質を含む。本明細書に記載の複合体及び組成物の物理的特性は、所与のポリアニオン性化合物の脂質成分の特定の選択、並びに複合体及び組成物内の各成分の量によって影響され得る。いくつかの実施態様では、複合体及びその組成物内の脂質成分は、存在する総脂質成分の質量に対する脂質成分(単独又は組み合わせ)の質量百分率、及び/又は個々の脂質成分の互いに対する質量比によって特徴づけることができる。
【0169】
いくつかの実施態様では、本開示の組成物は、存在する脂質成分の質量百分率によって特徴づけられる。本明細書に記載されるように、脂質成分の総質量又は重量は、存在する任意の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、任意の構造脂質、任意のリン脂質、並びに任意の遮蔽脂質の個々の質量の合計である。
【0170】
いくつかの実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の40-80%w/wの1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩を含む。特定の変形例では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の40-70%w/wの1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩を含む。
【0171】
本明細書に記載されるように、複合体を含む組成物は、任意選択で、1つ又は複数の構造脂質を含み得る。前述の実施態様のいずれかと組み合わせることができるいくつかの実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の0-25%w/wの1つ又は複数の構造脂質を含む。特定の変形例では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の0-25%w/wのコレステロールを含む。
【0172】
本明細書に記載の組成物及び複合体はまた、1つ又は複数のリン脂質を含む。さらに他の実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の10-60%w/wの1つ又は複数のリン脂質を含む。特定の変形例では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の20-40%w/wの1つ又は複数のリン脂質を含む。いくつかの実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の10-60%w/wの1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。特定の実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の20-40%w/wの1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0173】
さらなる実施態様では、組成物及びその中の複合体は、1つ又は複数の遮蔽脂質を含む。いくつかの実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の1-5%の1つ又は複数の遮蔽脂質を含む。特定の実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の1-5%の1つ又は複数のPEG脂質を含む。さらに他の実施態様では、組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の1-5%の1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)を含む。
【0174】
他の実施態様では、本開示の組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の40-80%w/wの1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩;0-25%w/wのコレステロール;10-60%w/wのDOPE;及び1-5%のDMG-PEG2000を含む。さらに別の実施態様では、本開示の組成物及びその中の複合体は、脂質成分の総重量の40-70%w/wの1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/若しくはPEG化カチオン性ペプチド化合物又はその塩;0-25%w/wのコレステロール;20-40%w/wのDOPE;及び1-5%のDMG-PEG2000を含む。
【0175】
複合体が、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、核酸、リン脂質、PEG脂質、並びに任意選択で構造脂質も含むいくつかの実施態様では、複合体は、個々の成分の互いに対する質量比、又は1つ若しくは複数の成分の1つ若しくは複数の他の成分に対する質量比によって特徴づけることができる。例えば、いくつかの実施態様では、本開示の組成物及び複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の、リン脂質、構造脂質(存在する場合)、遮蔽脂質に対する第1の質量比と、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の核酸に対する第2の質量比によって記述され得る。あるいは、他の実施態様では、本明細書で提供される組成物及び複合体は、総脂質成分の核酸に対する質量比によって記述され得、ここで、総脂質成分には、存在する任意の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、構造脂質、リン脂質、並びに遮蔽脂質が含まれる。
【0176】
別の態様では、本開示の複合体及び組成物は、個々の成分の互いに対する質量比によって特徴づけることができる。例えば、本明細書に記載されるように、本開示の複合体は、1つ又は複数のリン脂質、及び任意選択で1つ又は複数の構造脂質を含む。組成物が1つ又は複数の構造脂質及び1つ又は複数のリン脂質を含む複合体を含むいくつかの実施態様では、組成物は、1つ又は複数の構造脂質の1つ又は複数のリン脂質に対する質量比によって特徴づけることができる。いくつかの実施態様では、1つ又は複数の構造脂質が存在する場合、1つ又は複数のリン脂質に対する質量比は、0.5:1から2:1の間である。組成物がコレステロール及びDOPEを含む特定の実施態様では、コレステロールとDOPEとの質量比は、0.5:1から2:1の間である。
【0177】
上記のように、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、任意選択で構造脂質、並びにPEG脂質を含む複合体は、質量百分率及び/又は質量比によって特徴づけることができる。複合体が、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、任意選択で構造脂質、並びにPEG脂質を含むいくつかの実施態様では、複合体は、個々の成分の互いに対する質量比、又は1つ若しくは複数の成分の1つ若しくは複数の他の成分に対する質量比によって特徴づけることができる。例えば、いくつかの実施態様では、本開示の複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドの、リン脂質、構造脂質、PEG脂質に対する第1の質量比と、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドの核酸に対する第2の質量比によって記述され得る。
【0178】
本開示の複合体及び組成物中に存在するポリアニオン性化合物に関して、複合体内、したがって組成物内でも、ポリアニオン性化合物の量をいくつかの方法で特徴づけることができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組成物及び複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド上のカチオン性基の数の、核酸上のアニオン性リン酸基の数に対する比によって特徴づけることができる。いくつかの実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、カチオン:アニオン電荷比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、2:1から5:1の間のカチオン:アニオン電荷比で含む。さらに他の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、3:1のカチオン:アニオン電荷比で含む。
【0179】
あるいは、本明細書に記載の複合体及びその複合体を含む組成物は、複合体中のポリアニオン性化合物及び/又は他のカーゴに対する第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の相対質量比によって特徴づけることができる。複合体の成分の質量比は、複合体の調製において使用される各成分のストック溶液の既知の濃度と体積に基づいて容易に計算することができる。さらに、非アニオン性カーゴが複合体中に存在する場合、質量比は、非アニオン性物質を考慮しないカチオン:アニオン電荷比よりも、カーゴ全体に対する第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の相対量のより正確な表示を提供し得る。
【0180】
いくつかの実施態様では、複合体は、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを、質量比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを、2:1から5:1の間の質量比で含む。さらに他の実施態様では、複合体は、1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物とを、3:1の質量比で含む。
【0181】
複合体が核酸を含む特定の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、質量比が0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間で含む。特定の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、2:1から5:1の間の質量比で含む。さらに他の実施態様では、複合体は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物と核酸とを、3:1の質量比で含む。
【0182】
さらに他の実施態様では、複合体及びその組成物中に存在するポリアニオン性化合物の量は、脂質成分(第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、リン脂質、遮蔽脂質、並びに存在する場合は構造脂質)と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物との質量比によって特徴づけることができる。いくつかの実施態様では、脂質成分と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物との質量比は、0.5:1から50:1の間、0.5:1から20:1の間、0.5:1から10:1の間、0.5:1から5:1の間、1:1から20:1の間、1:1から10:1の間、1:1から5:1の間、2:1から25:1の間、2:1から20:1の間、2:1から10:1の間、又は2:1から5:1の間である。特定の実施態様では、脂質成分と、1つ又は複数のポリアニオン性化合物との質量比は、5:1から10:1の間、又は6:1から7:1の間である。
【0183】
追加の成分
ポリアニオンカーゴの高度なカプセル化及び/又はその標的化された放出制御を容易にするために、追加の成分を複合体に加えることもできる。そのような追加の成分は、例えば、ポリマー及び界面活性成分を含み得る。
【0184】
本明細書に記載の複合体へのポリマーの組み込みは、ポリマーナノ粒子ベシクル、又は追加の脂質成分の存在下で、ハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子を形成することによって、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド並びにポリアニオン性化合物を含む複合体を安定化させ得る。いくつかの実施態様では、本開示の複合体は、ポリマーを含む。適切なポリマーには、中性ポリマー(ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)又はポリグリコール酸(PGA)など)、アニオン性ポリマー(ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、及びヘパリンを含む)、及び/又はカチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、プロタミン)が含まれる。
【0185】
他の実施態様では、本明細書に記載の複合体は、標的化リガンド、安定化剤、及び/又は界面活性剤などの表面活性成分を含む。
【0186】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の複合体を含む製剤を提供する。本明細書に記載の製剤は、本明細書の複合体を調製するために使用されるストック溶液の混合物、並びに投与に使用される精製された薬学的製剤を包含する。本開示の複合体を含む製剤は、必然的に、本明細書に記載の複合体に存在する成分も含むことを理解されたい。
【0187】
いくつかの実施態様では、製剤は、溶液、懸濁液、コロイド懸濁液、スプレー、又はエアロゾルである。他の実施態様では、製剤は脂質複合体製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、経腸製剤、非経口製剤、又は局所製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、静脈内製剤、皮下製剤、筋肉内製剤、皮内製剤、眼内製剤、又は髄腔内製剤などの注射可能な製剤である。他の実施態様では、製剤は経口製剤である。さらに他の実施態様では、製剤は、例えば、経鼻製剤、肛門内製剤、頬側製剤、又は膣内製剤などを含む粘膜製剤である。
【0188】
本開示の複合体について上に記載したように、本明細書で提供される製剤は、式(I)の1つ又は複数の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物と共に含み得る。第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド並びに1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物に加えて、それらの薬物動態学的及び薬力学的特性を調整するために他の成分が製剤に含まれ得ることを認識すべきである。
【0189】
いくつかの実施態様では、複合体は、核酸カーゴ及び他の化合物の細胞への送達のために有用な追加の成分を含み得る。そのような成分には、限定されるものではないが、例えば、固体脂質ナノ粒子(LNP)又は他の同等の超複合体若しくは送達システム(例えば、ハイブリッド脂質-ポリマーナノ粒子)を一緒に形成するものが含まれ得る。いくつかの実施態様では、製剤は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質を含む。複合体が第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質を含む特定の実施態様では、製剤は脂質ナノ粒子を含む。
【0190】
1つ又は複数の式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を、1つ又は複数のポリアニオン性化合物及び/又は非アニオン性化合物と共に含む製剤が、1つ又は複数の脂質成分(本明細書に記載のリン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質など)をさらに含むいくつかの実施態様では、製剤は脂質製剤として記述され得る。脂質製剤が2つ以上の脂質成分を含む特定の実施態様では、脂質製剤は、多成分脂質製剤として記述され得る。脂質製剤が脂質ナノ粒子複合体を含むさらに他の実施態様では、脂質製剤は、脂質ナノ粒子製剤として特徴づけられ得る。
【0191】
他の実施態様では、製剤は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド、核酸、並びにポリマー(例えば、PLGA)を含む。
【0192】
本開示の複合体及び製剤を調製する際に使用される成分、並びに前記複合体又は製剤を作製するための工程パラメータは、複合体及び/又は製剤が即時使用(「ジャストインタイム」)を意図しているか、又は将来の使用のために貯蔵に配置され得るのかに応じて適合され得ることをさらに認識すべきである。特に、貯蔵に関する考慮事項には、複合体及び/又は製剤が保持される温度(例えば、室温、4℃、-20℃、-78℃)及び貯蔵期間が含まれ得る。
【0193】
適切な添加物には、限定されるものではないが、投与を容易にするか、又は貯蔵安定性を改善するもの(例えば、凍結防止剤)が含まれ得る。例えば、上記の成分に加えて、本明細書に記載の製剤は、担体、溶媒、分散剤、希釈剤、充填剤、安定剤、防腐剤などの薬学的に許容される添加物を含み得る。
【0194】
複合体及びその製剤を調製する方法
第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物並びにポリアニオン性化合物及びそれらの複合体の複合体及び製剤は、それらの物理的、化学的、及び生物学的特性を調節するための様々な物理的及び/又は化学的方法によって調製することができる。これらには典型的には、水又は水混和性有機溶媒中の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド(例えば、アミノ脂質化ペプトイド)と、水又は水性緩衝液中の所望のポリアニオン性化合物(例えば、オリゴヌクレオチド)との迅速な混合が含まれる。これらの方法には、ピペッティングによる成分の単純な混合、又はTミキサー、ボルテックスミキサー、若しくは構造の他の無秩序な混合を含むものなどのマイクロ流体混合プロセスを含み得る。
【0195】
一態様では、本開示は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物をポリアニオン性化合物と接触させることを含む、本明細書に記載の複合体を形成する方法を提供する。
【0196】
いくつかの実施態様では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物並びにポリアニオン性化合物を含む複合体を形成する方法は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含む溶液をポリアニオン性化合物を含む溶液と接触させることを含む。特定の実施態様では、ポリアニオン性化合物は、核酸を含む。
【0197】
さらに別の態様では、本開示は、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物並びにポリアニオン性化合物を含む製剤を調製するための方法を提供し、ここで、ポリアニオン性化合物は核酸であり、該方法は第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を含む溶液を、ポリアニオン性化合物を含む溶液と接触させて、製剤を提供することを含む。
【0198】
脂質ナノ粒子を形成するための脂質成分、ポリマー、界面活性剤、又は添加物など、複合体及び/又は製剤中の追加の成分を、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドをポリアニオン性化合物と混合する前又は後で、水又は水混和性有機溶媒中で、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチドと混合し、組み合わせることができる。
【0199】
本明細書に記載の複合体及び製剤を調製するための特定のプロセス条件は、複合体及び製剤の所望の物理的特性を提供するために、適切に調整又は選択することができる。例えば、最終的な複合体又は製剤に影響を及ぼし得る複合体及び/又は製剤の成分を混合するためのパラメータは、限定されるものではないが、混合の順序、混合の温度、混合速度/率、流量、ストック溶液の濃度、成分(例えば、ペプチド:カーゴ)の質量比、及び溶媒を含み得る。
【0200】
複合体及びその製剤を使用する方法
上記のように、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物、ポリアニオン性化合物とのそれらの複合体、並びにそれらの製剤は、細胞、特に細胞内環境へのポリアニオン性化合物の送達を容易にする。このように、ペプチド化合物、そのポリアニオンカーゴとの複合体、及びそれらの製剤は、多くの臨床適用並びに研究適用において使用され得る。細胞へのポリアニオン性化合物の送達は、予防的、診断的、及び/又は治療的方法に関連するものなどの臨床適用に使用することができる。例えば、いくつかの実施態様では、適切な臨床適用は、ワクチン接種、がん免疫療法、タンパク質補充療法、及び/又はin vivo遺伝子編集、ex vivo細胞療法トランスフェクション、ex vivo幹細胞誘導を含み得る。ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法は、生物学的アッセイ及び試薬を含む、研究又は非臨床適用にも有用であり得る。
【0201】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法である。いくつかの実施態様では、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法は、細胞を、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性化合物とを含む複合体と接触させることを含む。他の実施態様では、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法は、細胞を、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性化合物とを含む製剤と接触させることを含む。前述の方法のいくつかの実施態様では、接触はエンドサイトーシスによるものである。
【0202】
いくつかの実施態様では、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法は、細胞を、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性化合物とを含む複合体と接触させることを含み、ここで、細胞は、in vitro、ex vivo、又はin vivoで接触される。いくつかの実施態様では、ポリアニオン性化合物を細胞に送達する方法は、細胞を、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とポリアニオン性化合物とを含む製剤と接触させることを含み、ここで、細胞は、in vitro、ex vivo、又はin vivoで接触される。
【0203】
細胞がin vitroで接触されるいくつかの実施態様では、細胞はHeLa細胞である。細胞がin vivoで接触される他の実施態様では、本開示の複合体又は製剤は、哺乳動物対象に投与される。哺乳動物の対象には、限定されるものではないが、ヒト又はマウスの対象が含まれ得る。細胞がex vivoで接触されるさらに他の実施態様では、細胞は、ヒト又はマウスの対象から得られる。
【0204】
細胞がin vivoで接触される前述の方法のいくつかの実施態様では、本明細書に記載の複合体及び製剤は、注射によって投与され得る。特定の実施態様では、本明細書に記載の複合体及び製剤は、注射(静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)、髄腔内)によって投与され得る。いくつかの実施態様では、複合体及び製剤は、静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)又は髄腔内注射によって投与される。他の実施態様では、本明細書に記載の複合体及び製剤は、ボーラス注射又は静脈内注入によって投与される。細胞がin vivoで接触される他の実施態様では、本開示の複合体及び製剤は、経鼻又は経口吸入によって投与される。細胞がin vivoで接触されるいくつかの実施態様では、本明細書に記載の複合体及び製剤は経口投与される。細胞がin vivoで接触されるさらに他の実施態様では、複合体及び製剤は、粘膜への吸収を介して投与される(局所、肛門内、頬側、膣内などを含む)。
【0205】
上に開示された診断、予防及び治療例などの臨床適用は、使用されている特定の複合体及び/若しくは製剤に応じて適切に変更され得る投与計画(例えば、投与量レベル及び投与のための時間経過)、投与経路、複合体及び/若しくは製剤が投与されている対象、並びに/又は所望の生理学的効果を含み得る。例えば、いくつかの実施態様では、本開示の方法は、複合体又は製剤を、0.0001mg/kgから約10mg/kg体重の用量で投与することを含む。
【0206】
本発明を一般的に説明してきたが、特定の具体的実施例を参照することにより、同じことがよりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本発明をさらに説明するために本明細書に含まれ、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0207】
本開示は、以下の実施例においてさらに詳細に記述されており、これらは、請求された開示の範囲を限定することを決して意図するものではない。
添付の図は、本明細書及び本開示の記述に不可欠な部分とみなされることを意図している。以下の実施例は、説明するために提供されるが、特許請求された開示を制限するものではない。
【0208】
実施例1-核酸送達のための例示的な第三級アミノ脂質化カチオン性ペプチドの合成
以下の実施例は、本明細書に記載される式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物の合成のための一般的なプロトコルを記述する。
【0209】
以下の記述では、全てのR
aとR
bは-Hである。全てのポリマーは、ブロモ酢酸と第一級アミンを使用して合成される。
図2B-2Eは、本開示の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を調製するための、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6での第一級アミンの例示的な置換基のいくつかを提供する。
【0210】
固体支持体として、Fmoc-Rinkアミド樹脂を使用する。樹脂上のFmoc基を、20%(v/v)ピペリジン-ジメチルホルムアミド(DMF)で脱保護する。次いで、アミノ樹脂をブロモ酢酸でアミド化する。続いて、臭化物を一級アミンで求核置換することにより、α炭素をアミノ化する。2つのステップが連続的に繰り返され、所望のカチオン性ペプチド配列が生成される。
【0211】
全ての反応と洗浄は、特に断りのない限り、室温で行われる。樹脂の洗浄とは、洗浄溶媒(通常はDMF又はジメチルスルホキシド(DMSO))を樹脂に添加し、樹脂を攪拌して均一なスラリーが得られるようにし、続いて樹脂から溶媒を完全に排出することを指す。樹脂が乾燥しているように見えるまで、反応容器のフリット底を通して真空濾過により溶媒を除去する。全ての合成において、樹脂スラリーは、フリット容器の底からアルゴンをバブリングすることによって攪拌される。
【0212】
最初の樹脂脱保護フリット反応容器にFmoc-Rinkアミド樹脂を充填する。樹脂にDMFを添加し、この溶液を攪拌して樹脂を膨潤させる。次いで、DMFを排出する。DMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加し、樹脂を攪拌し、樹脂を排出することによって、Fmoc基を除去する。DMF中の20%ピペリジンを樹脂に添加し、15分間撹拌し、次いで排出する。次いで、樹脂をDMFで6回洗浄する。
【0213】
アシル化/アミド化。次いで、DMF中のブロモ酢酸を樹脂に添加し、続いてDMF中のN、N-ジイソプロプリカルボジイミド(DIC)を添加することにより、脱ブロックされたアミンをアシル化する(
図3A)。この溶液を室温で30分間撹拌し、次いで排出する。このステップを2回繰り返す。次いで、樹脂をDMFで2回、DMSOで1回洗浄する。これが1つの完了した反応サイクルである。
【0214】
求核置換/アミノ化。アシル化された樹脂は、所望の第一級又は第二級アミンで処理され、α炭素上の臭素脱離基で求核置換を受ける(
図3B)。このアシル化/置換サイクルは、所望のペプチド配列が得られるまで(
図3D)繰り返される(
図3C)。
【0215】
樹脂からのペプチド切断。乾燥させた樹脂を、テフロン(登録商標)でコーティングされたマイクロスターバーの入ったガラスシンチレーションバイアルに入れ、水中の95%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加する。溶液を20分間撹拌し、次いでポリエチレンフリットを装着した固相抽出(SPE)カラムを通して濾過し、ポリプロピレンコニカル遠心チューブに入れる。
【0216】
樹脂を1mLの95%TFAで洗浄する。次に、合わせた濾液を、1:1のアセトニトリル:水から3回凍結乾燥する。凍結乾燥ペプチド(
図3E)を、無水エタノールに5mg/mLの濃度で、又はDMSOに10mg/mLの濃度で再溶解する。
【0217】
精製及び特徴づけ。再溶解した粗ペプチドを、分取HPLCによって精製する。精製されたペプチドは、LC-MS分析によって特徴づけられる。
【0218】
実施例2-代表的なアミノ脂質化ペプトイドの合成及び特徴づけ
アミノ脂質化ポリグリシン化合物(「ペプトイド」)は、ブロモ酢酸及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、上記の実施例1に記載のサブモノマー法によって合成された。固体支持体として、ポリスチレン支持MBHA Fmoc-保護Rinkアミド(200mg代表スケール、0.64mmol/gローディング、Protein Technologies)樹脂を使用した。ブロモアセチル化のために、樹脂を2Mブロモ酢酸と2MのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)の1:1混合物と5分間混合した。アミン置換は、DMF中のアミンの1M溶液を使用して1時間行った。合成後、95:2.5:2.5のトリフルオロ酢酸(TFA):水:トリイソプロピルシランの混合物5mLを使用して、室温で40分間、粗ペプトイドを樹脂から切断した。樹脂を濾過により除去し、濾液をBiotageV10エバポレーターを使用して濃縮した。粗ペプトイドは、MeCNの25%水溶液からの凍結乾燥によってさらに濃縮された。純度及び同一性は、Acquity Diode Array UV検出器とWatersSQD2質量分析計を備えたWaters Acquity UPLCシステムで、Waters Acquity UPLCペプチドBEH C4カラムを用いて5-95%の勾配でアッセイした。選択した粗ペプトイドは、Waters XBridge BEH300 Prep C4カラムを用いて、Waters2489 UV/可視検出器を備えた分取WatersPrep150LCシステムにより、0.1%TFAを含む水中5-40%アセトニトリルの勾配を使用して30分かけて精製した。
【0219】
表1Aは、実施例2に記載の方法によって調製された代表的なアミノ脂質化ペプトイド化合物1-72を示す。表1Bは、表1Aの調製されたアミノ脂質化ペプトイド化合物1-72の特性評価データを示しており、予測される分子量、保持時間(分単位、λ=218nmでUPLC-UV測定によって決定)、及び一次観測された質量電荷比(m/z、MH+、エレクトロスプレーイオン化-質量分析による)を含む。アミノ脂質化及びPEG化ペプトイド化合物48、56、64、及び72のそれぞれについて、質量スペクトルには、ペプトイドに結合したPEG部分(平均分子量2000g/mol)の多分散性に起因するピークのいくつかの分布が含まれていた。これらのアミノ脂質化及びPEG化ペプトイド化合物について報告された質量電荷比のピークは、ピークのMH22+分布の中心値であり、有効モノマー分離δ~22m/z(-OCH2CH2-、エチレングリコール 分子量44g/mol)である。
【0220】
【0221】
【0222】
実施例3-ナノ粒子組成物を形成するための代表的なアミノ脂質化ペプトイドとオリゴヌクレオチドとの製剤
以下の実施例は、本明細書に記載される式(I)の第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物とオリゴヌクレオチドとの製剤のための一般的なプロトコルを記述する。
【0223】
標準的な製剤では、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を、無水エタノールに0.5mg/mL(in vitro実験用)又は5mg/mL(in vivo実験用)の濃度で溶解する。得られた溶液は、室温では安定しているが、-20℃で保存する必要がある。核酸カーゴは、DNAse又はRNAseを含まない水に、最終濃度0.2mg/mL(in vitro実験用)又は1mg/mL(in vivo実験用)で溶解する。これらの溶液は、-20℃又は-78℃で長期間保存する必要がある。
【0224】
ナノ粒子製剤を調製するために、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物を、核酸と約1:1(ペプチド化合物:カーゴ)と20:1の間の質量比でピペッティングすることによって混合する。製剤化の前に、第三級アミノ脂質化及び/又はPEG化カチオン性ペプチド化合物並びにカーゴ(核酸など)を、エタノール及び酸性緩衝液(0.1MのHClでpH5.5に調整されたPBS)でそれぞれ体積比1:3に希釈し、最終的なカーゴ濃度を約0.05mg/mLから0.2mg/mLにすることを目標とする。
【0225】
実施例4-代表的なmRNA/ペプトイド製剤の物理的特性の特徴づけ
実施例2に記載の例示的なアミノ脂質化カチオン性ペプトイド1-36をホタルルシフェラーゼ(Fluc)mRNAと組み合わせてナノ粒子組成物を形成させ、治療及び/又は予防目的のためにin vitro又はin vivoで評価した。実施例3のプロトコルに従って製剤を調製し、単純なピペッティングによって混合した。
【0226】
mRNA/ペプトイド複合体の体積平均粒子サイズ/直径(nm)及び製剤内のサイズ多分散指数(PDI)を決定するために、ペプトイド:カーゴの質量比が5:1のmRNA/ペプトイド製剤を、動的光散乱(DLS)によって評価した。例示的な化合物の各製剤のmRNAカプセル化のパーセンテージを、TritonX-100による粒子の溶解の前後のQubit RNA HS(Invitrogen)色素の蛍光によって決定した。結果を以下の表2に示す。
【0227】
【0228】
実施例5-代表的なFluc mRNA/アミノ脂質化カチオン性ペプトイド製剤による処理後のホタルルシフェラーゼ(Fluc)のin vitro発現
mRNA/アミノ脂質化ペプトイド製剤の有効性を、培養細胞にホタルルシフェラーゼ(Fluc)レポーター遺伝子を送達する能力に基づいてin vitroで評価した。実施例2のアミノ脂質化カチオン性ペプトイド1-36を、Fluc mRNAと5:1のw/w比で個別に組み合わせ、得られた粒子を(100μLの総量中)100ng/ウェルの用量で培養HeLa細胞に添加した。得られたルシフェラーゼ発現(RLU)を、処理の6時間後と24時間後に発光プレートリーダーによって測定した。以下の表3は、Fluc mRNA/アミノ脂質ペプトイド製剤について、2つの時点で観察されたルシフェラーゼの発現を示している。
【0229】
【0230】
また、実施例2の例示的なアミノ脂質化カチオン性ペプトイド化合物1-18について、ペプトイド:mRNA質量比が2:1、3.5:1、5:1及び7.5:1において、in vitroでのルシフェラーゼ発現測定を実施した。観察されたルシフェラーゼの発現は、発光プレートリーダーによって、
図4に示される平均生物発光量(RLU)として測定された。
【0231】
実施例6-多成分脂質製剤中の代表的なFluc mRNA/アミノ脂質化ペプトイド複合体による処理後のホタルルシフェラーゼ(Fluc)のin vitro発現
多成分脂質製剤中のmRNA/アミノ脂質化ペプトイドの有効性を、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)レポーター遺伝子をin vitroで培養HeLa細胞に送達する能力に基づいて評価した。脂質成分の質量百分率が異なる3つの脂質製剤を、アミノ脂質化ペプトイドに対してコレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)(ペプトイド:コレステロール:DOPE:DMG-PEG2000、50:165:32:2、63:0:35:2及び42:23:33:2)を使用して調製した。次いで、アミノ脂質化ペプトイドの基本製剤の各々を、7:1又は10:1の質量比(ペプトイド:カーゴ)でmRNAと組み合わせた。この実施例で評価された6つの脂質製剤の組成を以下の表4に示す。アミノ脂質化カチオン性ペプトイド化合物の代わりにリピトイド1を使用する製剤を、比較のために表4と同じ質量百分率で調製した。
【0232】
【0233】
細胞培養:HeLa細胞を、処理の18時間前に、10%のFBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む100μLのDMEMの10,000ウェルに播種し、付着させた。トランスフェクションの直前に、培地を100μLの新鮮な血清含有DMEMに交換した。
【0234】
mRNAの調製:トランスフェクション実験のためのFluc mRNAは、標準的なin vitro転写(IVT)法を使用して社内で調製した。
【0235】
mRNA製剤:脂質混合物は、アミノ脂質化ペプトイド(化合物2、及び6-18)又はリピトイド1(エタノール中5mg/mL)、コレステロール(5mg/mL)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE、5mg/mL)、及び2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000、0.5mg/mL)のマスターストックを使用して、上記の比率に従って調製した。残りの量を考慮して(かつ総脂質とmRNAの有効比率を調整するために)、100%エタノールを加えた。次いで、この脂質混合物の8μLを、酸性化PBS(pH5.5)に溶解された15ng/μLの濃度のmRNAの24μLに添加した。混合後、得られた溶液10μLを、96ウェルプレートの対応するウェルに添加した。全ての処理は三通りで行われ、値は平均値として表した。HeLa細胞を得られた溶液で6時間処理し、その後培地を新しいDMEMに交換した。陰性対照として、HeLa細胞をmRNAのみの溶液で処理した。Lipo条件のために、mRNAは、製造者の指示に従ってLipofectamine 2000(Thermo Fisher)を用いて製剤化された。
【0236】
in vitroイメージング:イメージングの前に、D-ルシフェリンの30mg/mL溶液10μLを各ウェルに添加し、37℃で10分間インキュベートした。この後、SpectraMax iD3プレートリーダー(MolecularDevices)を使用してプレート全体の発光を測定した。
図5は、脂質製剤の各々について観察された平均生物発光(RLU)の棒グラフを示している。
【0237】
実施例7-多成分脂質製剤中の代表的なFluc mRNA/アミノ脂質化ペプトイド複合体による処理後のホタルルシフェラーゼ(Fluc)のin vitro発現
アミノ脂質化ペプトイド1-72と、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)との製剤のin vitro送達効率を評価するために、HeLa細胞に対して41:23:33:3のペプトイド:コレステロール:DOPE:DMG-PEG2000の質量比、及び10:1のペプトイド:Fluc mRNA比で追加の実験を行った。
【0238】
実施例6に記載のプロトコルを、多成分脂質製剤のアミノ脂質化ペプトイド1-72の全パネル評価に利用した。簡潔には、HeLa細胞を製剤により6時間処理し(ウェルあたり50ngのFluc mRNA)、その後培地を新しいDMEMに交換した。イメージングの前に、D-ルシフェリンの30mg/mL溶液10μLを各ウェルに添加し、37℃で10分間インキュベートした。この後、SpectraMax iD3プレートリーダー(MolecularDevices)を使用してプレート全体の発光を測定した。アミノ脂質化ペプトイド化合物1-72について観察された平均発光(RLU)を
図6A(化合物1-36)及び
図6B(化合物37-72)に示す。全ての処理は三通りで行われ、値は平均値として表した。
【0239】
実施例8-代表的なFluc mRNA/アミノ脂質化多成分脂質製剤の皮下投与後のホタルルシフェラーゼ(Fluc)のin vivo全身発現。
アミノ脂質化ペプトイド化合物を、皮下注射投与によるBalb/cマウス(n=3)へのFluc mRNAのin vivo送達効率についてさらに評価した。Fluc mRNA 2μg、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)を含むアミノ脂質化ペプトイド1-72を含む多成分脂質製剤は、41:23:33:3のペプトイド:コレステロール:DOPE:DMG-PEG2000の質量比及び10:1のペプトイド:Fluc mRNA比で調製された。製剤を0.1mg/kgの用量で尾静脈注射を介して投与し(約2μgのFluc mRNA/用量)、得られた生物発光を6時間後に定量化した。
【0240】
図7A及び7Bは、平均生物発光(RLU)として定量化された試験マウスにおけるFlucのin vivo全身発現を示す。